JP5101602B2 - 11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1の阻害剤 - Google Patents

11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1の阻害剤 Download PDF

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Description

本特許出願は、2006年4月25日に出願の米国仮特許出願第60/745565号の優先権を主張する。
本発明は11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ タイプ1(以下「11−β−HSD1」)の阻害化合物、並びにその医薬組成物及びヒト又は動物の治療への当該化合物及び組成物の使用、並びに当該阻害化合物の調製に有用な新規な中間体を提供する。本発明の化合物は、11−β−HSD1を強力かつ選択的に阻害し、それにより11−β−HSD1の変調に応答する障害(例えば糖尿病、メタボリックシンドローム、認知障害など)の治療に有用である。
肝、脂肪組織及び筋において、活性を示す糖質コルチコイドは、グルコース、脂質及びタンパク質代謝の重要なレギュレータである。慢性的な糖質コルチコイド過剰はインスリン抵抗性、内臓の肥満症、高血圧及び異脂肪血症を伴い、またメタボリックシンドロームの古典的な特徴を示す。11−β−HSD1は、不活性コルチゾンの活性コルチゾルへの転換を触媒するため、メタボリックシンドロームの進行との関連がこれまで示唆されている。特にげっ歯類及びヒトにおける研究成果から、メタボリックシンドロームと11−β−HSD1との関連が示されている。また更なる研究成果から、2型糖尿病患者において、11−β−HSD1を特異的に阻害する薬剤が、肝臓における糖新生によって、血糖を低下させ、中心性肥満を減少させ、アテローム生成的なリポタンパク質表現型を改良し、血圧を低下させ、インスリン抵抗性を低下させることが示されている。筋肉内におけるインシュリン効果が強化され、更に小島β細胞からのインシュリン分泌も増加されうる。また、動物及びヒトにおける研究成果から、糖質コルチコイドの過剰により認知機能が損なわれることが示されている。更に最近の研究成果から、11−β−HSD1の不活性化により、ヒト及びマウスにおいて、記憶が強化されることが示されている。更に、11−β−HSD阻害化合物カルベノキソロンが健康な初老の男性及び2型糖尿病患者の認知機能を改良し、また11−β−HSD1遺伝子の不活性化によりマウスの老化により誘発される障害を防止することが示されている。更に、医薬品による11−β−HSD1の選択的阻害により、マウスの記憶力が改良されることが最近示されている。
11−β−HSD1阻害剤に関する報告が、近年幾つかなされている。例えば、11−β−HSDの阻害化合物としてアダマンチルアセトアミドを開示している特許文献1、11−β−HSDの阻害化合物としてピロリジン−2−オン及びピペリジン−2−オン誘導体を開示している特許文献2、及び11−β−HSDの阻害化合物としてアダマンチルピロリジン−2−オン誘導体を開示している特許文献3を参照されたい。11−β−HSD1が関与する疾患の治療法が多く存在するにもかかわらず、現在行われている治療法に幾つかの欠点が存在する(例えば不十分な効果、許容できない副作用及び特定の患者集団における禁忌など)。
以上より、11−β−HSD1を阻害し、11−β−HSD1阻害が良好な効果をもたらしうる疾患を治療するための、代替的若しくは改良された医薬品を使用することを特徴とする、新規な治療方法に対するニーズが依然存在する。本発明は、ある新規な化合物が11−β−HSD1に対する強力かつ選択的な阻害活性を示すという発見に基づくものであり、それは当該技術分野に対する貢献となる。本発明は特定の構造及びそれらの活性において、先行技術を凌駕するものである。糖尿病、メタボリックシンドローム及び認知障害を治療するための新規な方法に対するニーズが依然存在するため、これらの及びその他のニーズを満たすことが本発明の目的である。
本発明は、以下の式Iで表される構造を有する化合物:
Figure 0005101602
又はその製薬的に許容し得る塩を提供する。式中、
は水素又はハロゲンであり、
は水素、ハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素又はハロゲンであり、

Figure 0005101602
であり、式中、点線は式IのR位置への結合部位を表し、
式中、nは0、1又は2であり、nが0であるとき“(CH)n”は結合であり、
式中、mは、1又は2であり、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−(C−C)アルキル−O−R20、−(C−C)アルキル−ピロリジニル、フェニル、−HET
−HET、−CH−フェニル、−CH−HET、−CH−HET
−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH
−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、−CH(C(O)OH)(CHOR20)、
−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
Figure 0005101602
であり、式中、点線はRにより示される位置への結合部位を示し、
HET
Figure 0005101602
であり、式中、点線はHETにより示される位置への結合部位を示し、
HET
Figure 0005101602
であり、式中、点線はHETにより示される位置への結合部位を示し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−(C−C)アルキル−O−R20であり、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)シクロアルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、
−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−C(O)−N(R20)(R20)であり、
は水素、ハロゲン、−OH、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
10は各々独立に水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又はC(O)O−(C−C)アルキルであり、
24は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
31は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル基であり、
41は各々独立に水素又は−CHである。
本発明は11−β−HSD1の強力かつ選択的な阻害にとり有用である、式Iの化合物を提供する。本発明は更に、式Iの化合物又はその製薬塩、並びに製薬的に許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は更に、メタボリックシンドローム及びそれに関係する障害の治療方法であって、かかる障害に罹患する患者に有効量の式Iの化合物又はその製薬的に許容し得る塩を投与することを含んでなる方法を提供する。
一実施形態では、本発明は上記で説明した、式Iの化合物又はその製薬的に許容し得る塩を提供する。本発明に係る化合物の全てが有用であるが、その中でも幾つかの化合物が特に興味深く、好適である。以下に幾つかの好適な化合物群を示す。
他の実施形態では、本発明は、式Iの構造式で表される化合物、又はその製薬的に許容し得る塩を提供する。詳細には、
式中、Rが水素であり、
はハロゲンであり、
はハロゲンであり、
は水素又はハロゲンであり、

Figure 0005101602
であり、式中、点線は式IのR位置への結合部位を表し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−(C−C)アルキル−O−R20、−(C−C)アルキル−ピロリジニル、
−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH
−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、−CH(C(O)OH)(CHOR20)、
−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
Figure 0005101602
であり、式中、点線はRにより示される位置への結合部位を示し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−(C−C)アルキル−O−R20
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)シクロアルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、
−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−C(O)−N(R20)(R20)であり、
は水素、−OH、ハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
10は各々独立に水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又はC(O)O−(C−C)アルキルであり、
24は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
41は各々独立に水素又は−CHである。
他の実施形態では、本発明は、式Iの構造式で表される化合物、又はその製薬的に許容し得る塩を提供する。
詳細には、式中、Rは水素であり、
はフッ素、塩素又は臭素であり、
はフッ素、塩素又は臭素であり、
は水素又はハロゲンであり、

Figure 0005101602
であり、式中、点線は式IのR位置への結合部位を表し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−(C−C)アルキル−O−R20、−(C−C)アルキル−ピロリジニル、
−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH
−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、−CH(C(O)OH)(CHOR20)、
−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
Figure 0005101602
であり、式中、点線はRにより示される位置への結合部位を示し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−(C−C)アルキル−O−R20であり、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)シクロアルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、
−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−C(O)−N(R20)(R20)であり、
は水素、ハロゲン、−OH、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は
−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
10は各々独立に水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又はC(O)O−(C−C)アルキルであり、
24は各々独立に水素であり、
41は各々独立に水素である。
他の実施形態では、本発明は、式Iの構造式で表される化合物、又はその製薬的に許容し得る塩を提供する。
詳細には、式中、Rは水素であり、
はフッ素、塩素又は臭素であり、
はフッ素、塩素又は臭素であり、
は水素であり、

Figure 0005101602
であり、式中、点線は式IのR位置への結合部位を表し、
は水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−C(O)(C−C)シクロアルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)O−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、
−S(O)−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−C(O)−N(R20)(R20)であり、
は水素、ハロゲン、−OH、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
10は各々独立に水素又はハロゲンであり、
20は各々独立に水素又は−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
21は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
22は各々独立に水素又は(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
23は各々独立に水素、−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又はC(O)O−(C−C)アルキルである。
本発明の別の実施形態は、上記の実施形態を更に限定した形態の提供に関し、それは以下から選択される。具体的には、下記の各々の形態を各々独立に、上記の実施形態の各々と組み合わせてもよく、またかかる特定の組合せを選択し、かかる選択の際に可変部分を適宜調整することにより、更に限定された他の実施形態とすることができる。
本発明の好適な実施形態は、以下の構造式で表される。
Figure 0005101602
詳細には、式中、Rはフッ素、塩素、臭素である。好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは塩素、フッ素又は臭素である。好ましくはRは塩素である。好ましくはRはハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRは−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは塩素、フッ素又は臭素である。好ましくはRは塩素である。好ましくはRはフッ素である。好ましくはRは塩素、フッ素又は臭素であり、Rは塩素、フッ素又は臭素である。好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくはRはフッ素又は塩素である。好ましくはRは水素であり、Rは塩素であり、Rは塩素であり、Rは水素である。
好ましくはR
Figure 0005101602
である。
好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。式中、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、
は水素、ハロゲン、−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)であり、R10は各々独立に水素又はハロゲンである。
好ましくはR
Figure 0005101602
であり、式中、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはR
Figure 0005101602
である。
好ましくはR
Figure 0005101602
である。好ましくは、R
Figure 0005101602
である。
好ましくは、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、
−(C−C)アルキル−O−R20、−(C−C)アルキル−ピロリジニル、フェニル、−HET、−HET、−CH−フェニル、CH−HET、−CH−HET、−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH、−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、−CH(C(O)OH)(CHOR20)、
−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
Figure 0005101602
である。好ましくは、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)、−(C−C)アルキル−O−R20
−(C−C)アルキル−ピロリジニル、−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH
−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、
−CH(C(O)OH)(CHOR20)、−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
Figure 0005101602
である。
好ましくはRは水素である。好ましくはRは−(C−C)アルキル基(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは−(C−C)アルキル−O−R20である。
好ましくはRは水素である。好ましくは、Rは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)−(C−C)アルキル、−C(O)O−(C−C)アルキル又は
−C(O)−N(R20)(R20)である。好ましくはRは−(C−C)アルキル(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくは、Rは−(C−C)アルキル−O−R20、−C(O)−(C−C)アルキル、
−C(O)O−(C−C)アルキル又はC(O)−N(R20)(R20)である。好ましくはRは−(C−C)アルキル−O−R20である。
好ましくはRは−C(O)−(C−C)アルキル基である。好ましくはRは−C(O)O−(C−C)アルキル基である。好ましくはRは−C(O)−N(R20)(R20)である。
好ましくはRは水素である。好ましくはRはハロゲンである。好ましくは、Rは−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)又は−O−CH(任意に1〜3個のハロゲンで置換されてもよい)である。好ましくはRは−CFである。好ましくはR10は水素である。好ましくはR10はハロゲンである。好ましくはRは水素であり、R10は水素である。好ましくはRはハロゲンであり、R10はハロゲンである。
本発明の好ましい実施形態は、式(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オンおよび(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オンの化合物である。本発明の別の実施形態は、本願明細書に記載の新規な中間体であって、11−β−HSD1の阻害に有用な、本願明細書に記載の式Iの化合物及びそれに関連する諸実施形態に係る化合物の調製用の中間体を提供する。本発明の他の実施形態は、本願明細書において記載されている新規な中間体の調製方法であり、(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オンおよび(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン又はその製薬的に許容し得る塩を調製するのに有用である。
2型糖尿病患者では通常、罹患率及び早熟性の死亡率の増加につながる異常なグルコースホメオスタシス及び高血糖症の原因となる「インシュリン耐性」が進行する。異常なグルコースホメオスタシスは、肥満症、高血圧、並びに脂質、リポタンパク質及びアポリポタンパク質の代謝の変調を伴う。2型糖尿病患者では、心血管性の合併症(例えばアテローム性動脈硬化症、冠状心疾患、発作、末梢血管疾患、高血圧、腎症、神経病変及び網膜症)が発症する危険性が高い。したがって、グルコースホメオスタシス、脂質代謝、肥満症及び高血圧の治療的制御は、糖尿病の抑制及び治療において、重要である。インスリン抵抗性を有するが2型糖尿病を示さない多くの患者は「X症候群」又は「メタボリックシンドローム」に罹患する危険性が高い。メタボリックシンドロームは、腹部の肥満、高インスリン血症、高血圧症、低HDL、高VLDL、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状心疾患及び慢性腎不全と共にインスリン抵抗性が示されるのが特徴である。これらの患者は、顕性の糖尿病が進行しているか否かに関わらず、上記の心血管性の合併症に罹患する危険性が高い。
本発明の化合物は、11−β−HSD1を阻害することにより、11−β−HSD1の阻害が効果的である、広範囲にわたる症状及び障害の治療に有用である。これらの障害及び症状を、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」として本願明細書では定義する。当業者であれば、11−β−HSD1活性の、障害時における病態又は障害へのホメオスタシス応答との関連性から、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」を同定することが可能である。すなわち、当該化合物は、例えば「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」の疾患、症状、関連する症候又は後遺症の予防、治療又は軽減にとり有用である。
「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」としては、限定されないが、糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、高血糖、高インシュリン血症、β細胞不全、第1段階応答の復元によるβ細胞機能の改良、食事による高血糖、アポトーシス防止、障害性の絶食時グルコースレベル(IFG)、メタボリックシンドローム、低血糖、高/低カリウム血症、標準グルカゴンレベル、改良されたLDL/HDL比率、間食の減少、摂食障害、体重減少、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、糖尿病の結果としての肥満症、成人における不顕性自己免疫性糖尿病(LADA)、インスリン症、小島移植、小児糖尿病、妊娠糖尿病、糖尿病性の遅い合併症、ミクロ/マクロアルブミン尿症、腎症、網膜症、神経病変、糖尿病性足潰瘍、グルカゴン投与による腸運動性の減少、短小腸症候群、制瀉、胃液分泌増加、血流減少、勃起障害、緑内障、手術後侵襲、虚血後の血流再潅流によって生じる器官・組織損傷の回復、虚血心障害、心臓機能不全、うっ血性心不全、発作、心筋梗塞、不整脈、早死、抗アポトーシス、癒傷、耐糖能異常(IGT)、インスリン抵抗症候群、メタボリックシンドローム、エックス症候群、高脂血症、異脂肪血症、過トリグリセリド血症、リポ蛋白過剰血症、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの動脈硬化、グルカゴノーマ、急性膵炎、循環器病、高血圧、心臓肥大症、胃腸障害、肥満症、肥満症の結果としての糖尿病、糖尿病性異脂肪血症などが挙げられる。すなわち、本発明はまた、「糖尿病性障害」及び「メタボリックシンドローム障害」の治療に伴う不必要な副作用の1つ以上を低減又は排除する、当該障害の治療方法を提供する。
本発明は更に、11−β−HSD1活性の阻害、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害、哺乳類における血糖値の減少、過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変の治療、及び損傷回復に使用するための、式Iの化合物若しくはその製薬塩、又は式Iの化合物若しくはその製薬塩並びに製薬的に許容し得る担体、希釈剤若しくは賦形剤を含有する医薬組成物を提供する。すなわち、本発明の方法には、式Iの化合物の予防的及び治療的投与が包含される。
本発明は更に、11−β−HSD1活性の阻害用薬剤の製造、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害用薬剤の製造、哺乳類における血糖値の抑制用薬剤の製造、過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療用薬剤の製造、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療用薬剤の製造、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び不良な損傷回復の治療用薬剤の製造への、式Iの化合物若しくはその製薬塩の使用方法を提供する。
本発明は更に、哺乳類における過剰な11−β−HSD1活性から生じる疾患の治療方法、哺乳類における11−β−HSD1活性の阻害方法、11−β−HSD1活性により媒介される哺乳類の細胞応答の阻害方法、哺乳類における血糖値の低減方法、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療方法、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び不良な損傷回復の治療方法であって、かかる治療を必要とする哺乳類に、11−β−HSD1活性の阻害に十分な量の、式Iの化合物若しくはその製薬的に許容し得る塩又は式Iの化合物若しくはその製薬塩、並びに製薬的に許容し得る担体、希釈剤若しくは添加剤を含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなる前記方法を提供する。
本発明は更に、式Iの化合物若しくはその製薬塩、並びに製薬的に許容し得る担体、希釈剤若しくは添加剤を含んでなる医薬組成物であって、11−β−HSD1活性の阻害、11−β−HSD1活性により媒介される細胞応答の阻害、哺乳類における血糖値の減少、哺乳類における糖尿病及び他のメタボリックシンドローム障害の治療、並びに糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満症、高血糖、アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、発作、神経病変及び不良な損傷回復の予防又は治療用に調製された、前記医薬組成物を提供する。
本発明の更なる態様では、本発明の化合物は、更なる1つ以上の活性物質と適切な比率で組み合わされて投与される。かかる更なる活性物質は、例えば抗糖尿病剤、抗肥満症剤、降圧剤、糖尿病に起因若しくは関連する合併症の治療剤、並びに肥満症に起因若しくは関連する合併症及び障害の治療剤から選択されてもよい。以下のリストにおいて、かかる組合せの幾つかのグループを列挙する。以下に名称を列挙する各々の薬剤を、同様に名称を列挙する他の薬剤と混合して、更なる組合せを提供してもよいことが理解されよう。
すなわち、本発明の別の実施形態では、本発明の化合物を、1つ以上の抗糖尿病剤との組み合わせで投与してもよい。
好適な抗糖尿病剤としては、インシュリン、インシュリンアナログ及び誘導体(欧州特許出願公開第792290号(Novo Nordisk A/S)に記載の例えばNεB29−テトラデカノイル・デス(B30)ヒトインスリン、欧州特許出願公開第214826号及び第705275号(Novo Nordisk A/S)に記載の例えばAspB28ヒトインスリン、米国特許第5504188号(イーライ・リリー)に記載の例えばLysB28ProB29ヒトインスリン、欧州特許出願公開第368187号、アベンティス)に記載の例えばLantus、登録商標、GLP−1及びGLP−1誘導体(例えば国際公開第98/08871号(Novo Nordisk A/S)に記載のもの)、並びに経口投与において、有効な血糖降下剤が挙げられる。
経口投与で有効な血糖降下剤としては、以下のものが包含される:イミダゾリン、スルホニルウレア、ビグアニド、メグリチニド、オキサジアゾリジンジオン、チアゾリジンジオン、インシュリン増感剤、インシュリン分泌促進物質(例えばグリメピリド)、α−グルコシダーゼ阻害剤、及びβ−細胞のATP依存性カリウムチャネルに作用する物質(例えば国際公開第97/26265号、国際公開第99/03861号及び国際公開第00/37474号(Novo Nordisk A/S)において開示されるようなカリウムチャネル開放物質、又はミチグリニド、又はカリウムチャネルブロッカー(例えばBTS−67582)、ナテグリニド、グリカゴン拮抗剤(例えば、国際公開第99/01423号及び第00/39088(Novo Nordisk A/S及びAgouron Pharmaceuticals, Inc.)、GLP−1アンタゴニスト、DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼ−IV)阻害剤、PTPアーゼ(チロシンホスファターゼ)阻害剤、糖新生及び/又は糖原分解の刺激に関係する肝酵素阻害剤、グルコース取り込み調節因子、グルコキナーゼ(GK)の活性剤(例えば、国際公開第00/58293号、国際公開第01/44216号、国際公開第01/83465号、国際公開第01/83478号、国際公開第01/85706号、国際公開第01/85707号及び国際公開第02/08209号(Hoffman−La Roche社)に開示されるもの、又は国際公開第03/00262号、国際公開第03/00267号及び国際公開第03/15774号(AstraZeneca社)において開示されるもの)、GSK−3(グリコゲン合成酵素キナーゼ−3)阻害剤、HMG CoA阻害剤(スタチン)などの抗脂質物質などの脂質代謝調節化合物、摂食を低下させる化合物、PPAR−α、PPAR−γ及びPPAR−δサブタイプを含むPPAR(ペルオキシソーム増殖剤で活性化する受容体)リガンド及びRXR(レチノイドX受容体)アゴニスト(例えばALRT−268、LG−1268又はLG−1069)。
更に別の実施形態では、本発明の化合物はインスリン又はNεB29−テトラデカノイル−デス(B30)ヒトインスリン、AspB28ヒトインスリン、LysB28 ProB29ヒトインスリン、Lantus(登録商標)などのインスリンアナログ又は誘導体、又はこれらの1つ又はそれ以上からなる混合製剤と併用して投与される。
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物はグリベンクラミド、グリピジド、トルブタマイド、クロロパミデム、トラザミド、グリメプリド、グリカジド及びグリブリドなどのスルホニル尿素と併用して投与される。
本発明の他の実施形態では、本発明の化合物はビグアニド例えばメトルミンと併用して投与される。
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物はメグリチニド例えばレパグリニド又はナテグリニドと併用して投与される。
本発明の更に別の実施形態では、本発明の化合物はチアゾリジンジオンインスリン抵抗性改善薬例えばトログリタゾン、シグリタゾン、ピオリタゾン、ロシグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾン、CS−011/CI−1037又はT174又は国際公開第97/41097号パンフレット、国際公開第97/41119号パンフレット、国際公開第97/41120号パンフレット、国際公開第00/41121号パンフレット及び国際公開第98/45292号パンフレット(Dr. Reddy’s Research Foundation)に開示された化合物と併用して投与される。
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は、例えばGI262570、YM−440、MCC−555、JTT−501、AR水素039242、KRP−197、GW−409544、CRE−16336、AR水素049020、LY510929、LY510929、MBX−102、CLX−0940、GW−501516などのインスリン抵抗性改善薬と、又は国際公開第99/19313号パンフレット、国際公開第00/50414号パンフレット、国際公開第00/63191号パンフレット、国際公開第00/63192号パンフレット、国際公開第00/63193号パンフレットなどに開示されるラガグリタザール(NN 622又は(−)DRF 2725)(Dr. Reddy’s Research Foundation)などの化合物、及び国際公開第00/23425号パンフレット、国際公開第00/23415号パンフレット、国際公開第00/23451号パンフレット、国際公開第00/23445号パンフレット、国際公開第00/23417号パンフレット、国際公開第00/23416号パンフレット、国際公開第00/63153号パンフレット、国際公開第00/63196号パンフレット、国際公開第00/63209号パンフレット、国際公開第00/63190号パンフレット及び国際公開第00/63189号パンフレット(Novo Nordisk A/S)に開示される化合物と併用して投与してもよい。
本発明の更なる実施形態では、本発明の化合物はα−グルコシダーゼ阻害剤、例えばボグリボース、エミグリテート、ミグリトール又はアカルボースと併用して投与される。
本発明の他の実施形態では、本発明の化合物はβ−細胞のATP−依存性のカリウムチャネルに作用する薬剤、例えばトルブタマイド、グリベンクラミド、グリピジド、グリカジド、BTS−67582又はレパグリニドと併用して投与される。
本発明の更に他の実施形態では、ナテグリニドと併用して本発明の化合物を投与してもよい。
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は抗脂血薬又は抗高脂血薬、例えばコレスチラミン、コレスチポル、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、プロブコル、デキストロチロキシン、フェノフィブレート又はアトロバスチンと併用して投与される。
本発明の更に他の実施形態では、本発明の化合物は食物摂取を低下させる化合物と併用して投与される。
本発明の他の実施形態では、本発明の化合物は一種以上の上記化合物と併用して、例えば、メトホルミンとグリブライドなどのスルホニル尿素、スルホニル尿素とアカルボース、ナテグリニドとメトホルミン、レパグリニドとメトホルミン、アカルボースとメトホルミン、スルホニル尿素、メトホルミンとトログリタゾン、インスリンとスルホニル尿素、インスリンとメトホルミン、インスリン、メトホルミン及びスルホニル尿素、インスリンとトログリタゾン、インスリンとロバスタチン等と併用して投与される。
本願明細書における化合物の説明に使用される用語は、それらの通常の意味を有する。
本発明の用語「(C−C)アルキル」、「(C−C)アルキル」又は「(C−C)アルキル」は、示された炭素原子数の直鎖又は分岐鎖状の飽和脂肪族基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなど)を指す。用語「(C−C)アルコキシ」は、酸素原子を介して結合したC−Cアルキル基を指し、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ基などが包含される。「ハロゲン」という用語はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素のことを指す。用語「(C−C)シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子数(通常3〜7個の炭素原子数)の飽和若しくは部分的に飽和した炭素環式化合物のことを指す。(C−C)シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられる「任意に置換されてもよい」又は「任意の置換基」という用語は、対象となる基が、非置換でもよく、又は1つ以上の特定の置換基で置換されてもよいことを意味する。その対象となる基が複数の置換基で置換されるとき、それらの置換基は同じでもよく、異なってもよい。更に、用語「独立に」、「独立に〜である」及び「独立に〜から選択される」とは、対象となる基が同じでもよく、あるいは異なってもよいことを意味する。本願明細書で定義される具体的な用語は構造式中で複数回用いられてもよく、また各々の用語は各々の出現の際に個別的に定義されるものとする。
例えばモルモット、イヌ、ネコ、ネズミ、マウス、ハムスター及び霊長類(ヒトを含む)は、本発明の用語「患者」の範囲内に包含されるものと理解される。好適な患者はヒトである。「患者」という用語には家畜が包含される。家畜は食糧生産のために飼育される動物である。乳牛、種牛、雌牛、去勢ウシ、ヒツジ、バッファロ、バイソン、ヤギ及びアンテロープのようないわゆる反芻動物が、家畜の例として挙げられる。家畜の他の例としては、ブタ及び鳥(家禽)(例えば鶏、カモ、シチメンチョウ及びガチョウ)などが挙げられる。治療対象となる患者は、好ましくは哺乳類(特にヒト)である。
本明細書に用いられる用語「治療」、「処置する」及び「治療する」はそれらの一般的に容認される意味を包含し、即ち、特定の症状又は病気の発現及び進行のリスクを予防・減少し、本明細書に記載の病気、疾患又は病理的状態の進行又は重症化を防止、阻害、抑制、緩和、改善、緩慢化、停止、遅延又は逆転させ、予防し、及び/又は現存する症状を治療するための、患者の管理及び看護を含み、例えば症状又は合併症の緩和又は軽減、又はその病気、疾患又は病理的状態の治癒又は排除を包含する。本発明の方法は、必要に応じて、医学的な治療及び/又は予防的治療の両方を含んでなる。
本発明の用語「治療上有効量」とは、本願明細書に記載の様々な病的症状の症候を緩和するのに十分な、本発明の化合物の量を意味する。本発明により投与される化合物の具体的な投与量は、当然ながら、例えば投与される化合物、投与経路、患者健康状態及び治療対象の病的症状などの、個別的な症状を取り巻く具体的な状況を考慮して決定される。
「組成物」とは医薬組成物を意味し、1つ以上の式Iの化合物を含有する1つ以上の主成分と、担体を構成する1つ以上の不活性成分を含んでなる医薬製剤が包含される。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物と、製薬的に許容し得る担体とを混ぜることにより調製されるあらゆる組成物が包含される。
用語「適切な溶媒」とは、反応物質を十分に溶解させ、進行中の反応に影響を与えず、所望の反応のための媒体を提供する、あらゆる溶媒又は溶媒の混合物のことを指す。
用語「ユニットドーズの形態」とは被験者及び他の非ヒト動物に対する単位の薬用量として適切な物理的に個別の単位を意味し、各単位は適当な医薬担体との組み合わせで所望の治療効果を生じると計算された活性物質の所定量を含有する。
本発明の化合物は1つ以上のキラル中心を有してもよく、種々の立体配座を有してもよい。本発明の化合物は、これらのキラル中心の結果として、ラセミ化合物として存在してもよく、個々の鏡像異性体若しくは鏡像異性体の混合物として存在してもよく、あるいはジアステレオマー若しくはジアステレオマー混合物として存在してもよい。全てのかかるラセミ化合物、鏡像異性体、ジアステレオマー及び混合物は、純粋であっても、部分的に精製されていても、未精製の混合物であっても、本発明の範囲内に包含される。本願明細書において、提供される例において、キラル中心又は周知の立体配座中心を含有する分子を示すときは、その立体化学を、化合物名と分子の構造表示を用いて示すものとする。立体化学が不明若しくは未定義である場合、その立体化学は化合物名又は分子の構造表示では示さない。本発明の実施形態には、本願明細書において、提供される実施例が含有され、その実施例においては1つのキラル若しくは立体配座の形又はその塩のみが記載されているが、当然ながら、本発明の別の実施形態には他の全ての立体異性体及び/又構造異性体、並びにその製薬的に許容し得る塩が包含される。これらの実施形態には、あらゆる単離された鏡像異性体、ジアステレオマー、及び/又はこれらの構造異性体、並びに複数の形を含んでいるいかなる混合物も包含される。
更に、分子中に、二重結合、完全若しくは部分的に飽和した環系、又は回転が制限された1以上の不斉中心又は結合が存在するとき、ジアステレオマーが形成されうる。本発明では、単離された、純粋な、部分的に精製されたジアステレオマー又はそれらの混合物としてのいかなるジアステレオマーであってもよく、本発明の範囲内に包含されることに留意すべきである。更にまた、本発明の化合物の幾つかは異なる互変異体の形として存在してもよく、当該化合物がとることができるいかなる互変異体の形態も本発明の範囲内に包含されることに留意すべきである。
本明細書で用いられる用語「鏡像異性体富化」は、一方の鏡像異性体の量の、他方の鏡像異性体と比較しての増大を指す。達成された鏡像異性体富化を表現する簡便な方法は、鏡像異性体過剰率の概念、すなわち「ee」の概念であって、以下の式を用いて表される。
Figure 0005101602
式中、Eは第1の鏡像異性体の量であり、Eは第2の鏡像異性体の量である。このようにして、二つの鏡像異性体の第一の比がラセミ体混合物に存在するように50:50であり、かつ、70:30の最終比を生じるに十分な鏡像異性体富化が達成される場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は40%である。しかしながら、最終比が90:10である場合、第1の鏡像異性体に関する上記ee(鏡像異性体過剰率)は80%である。90%を超えるeeが好ましく、95%を超えるeeが最も好ましく、99%を超えるeeが特に最も好ましい。鏡像異性体富化は当業者によりキラルカラムによるガスクロマトグラフィ又は高性能液体クロマトグラフィなどの標準の技法及び方法を使用して容易に決定される。鏡像異性体対の分離実施に必要な適切なキラルカラム、溶出液及び条件の選択は、当業者にとって公知である。更に、式Iの化合物の特異的な立体異性体及び鏡像異性体は当業者によって、J.Jacquesら、「Enantiomers,Racemates,and Resolutions」John Wiley and Sons, Inc.、1981、及びE.L.ElielとS.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds」(Wiley−Interscience 1994)、並びに1998年4月29日発行の欧州特許出願公開第838448号明細書に開示されたような周知の技法及び分離法を利用して調製できる。分離の例としては、再結晶技法又はキラルクロマトグラフィーが挙げられる。
式Iの化合物は種々の手順により当該技術の当業者により調製できるが、その幾つかに関して、以下に記載の手順及び反応式において、示すこととする。式Iの化合物の生成必要な具体的な工程の順序は、合成しようとする具体的な化合物、出発物質及び置換基の相対的反応性などにより変化する。試薬又は出発物質は当業者であれば容易に入手でき、市販品でない材料の場合には、当業者に公知の通常用いられる標準的な工程に従い、下記の種々の工程及び反応式に沿って容易に合成できる。
以下の反応式、調製、実施例及び手順は本発明の実施をより詳細に説明するために提供されるものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当事者であれば、本発明の技術思想と範囲から逸脱することなく多様な改善を実施できることを認識するであろう。本明細書で言及される全ての刊行物は、本発明が属する分野の当事者のレベルを示す。
反応式、調製、実施例及び手順における最適反応時間は、反応の進行を通常のクロマトグラフィによりモニターすることにより決定できる。更に、本発明の化学反応は、アルゴン又は特に窒素などの不活性雰囲気下で実施することが好ましい。溶媒の選択は、その使用する溶媒が進行中の反応に不活性で、かつ反応物質を十分に可溶化して所望の反応を実施するものである限り、通常問題とはならない。化合物は、その後の反応に供する前に分離・精製することが好ましい。化合物形成反応の間に反応溶液から化合物を析出させ、濾過して回収してもよいし、あるいは反応溶媒を抽出、蒸発又は流出させて除去してもよい。中間体及び式Iの最終産物は、必要に応じ、再結晶又はシリカゲル又はアルミナなどの固体支持体上のクロマトグラフィ等、通常の方法で更に精製してもよい。
熟練した当業者は全ての置換基が全ての反応条件と適合するわけではないことを認識する。これらの化合物は合成の際、公知の方法により適切なタイミングで保護又は修飾してもよい。
本明細書の反応式、調製、実施例及び工程に用いられる用語並びに略語は、特に指示されない限り通常の意味を有する。例えば、本願明細書では以下の用語はそれぞれ以下の意味を有する。「psi」は平方インチ当たりのポンド(圧力)を指す。「TLC」は薄層クロマトグラフィを指す。「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを指す。「R」は保持係数を指す。「R」は滞留時間を指す。「δ」はテトラメチルシランからのppmダウンフィールドを指す。「MS」は質量分析を指す。「MS(ES)」は電子スプレー質量分析を指す。測定された分子量は、特に明記しない限り[M+H]のことを指す。“MS(APCi)は気圧化学イオン化法のことを指す。「UV」は紫外線分光測定法を指す。「H NMR」は陽子核磁気共鳴分光測定法を指す。「LCMS」は液体クロマトグラフィ−質量分析のことを指す。「GC/MS」はガスクロマトグラフィ/質量分析のことを指す。「IR」は赤外線スペクトロメトリのことを指し、IRスペクトラムとして列挙される最大吸収は対象となる部分のみを示し、全ての最大吸収を観察したものではない。「RT」は室温のことを指す。
「THF」はテトラヒドロフランのことを指す。「LAH」は水素化アルミニウムリチウムのことを指す。「LDA」はリチウムジイソプロピルアミドのことを指す。「DMSO」はジメチルスルホキシドのことを指す。「DMF」はジメチルホルムアミドのことを指す。「EtOAc」は酢酸エチルのことを指す。「Pd−C」はパラジウム/炭素のことを指す。「DCM」はジクロロメタンのことを指す。「DMAP」はジメチルアミノピリジンのことを指す。「LiHMDS」はリチウムヘキサメチルジシリザンのことを指す。「TFA」はトリフルオロ酢酸のことを指す。「EDAC」はN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸のことを指す。「HOBT」は1−ヒドロキシベンゾトリアゾールのことを指す。「Bn−9−BBN」はベンジル−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナンのことを指す。「Pd(dppf)Cl」は、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)のことを指す。「EDCI」はN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸のことを指す。「DBU」は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のことを指す。「TBSCl」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシメチルクロリドのことを指す。「NBS」はN−ブロモスクシニミドのことを指す。「TsOH」はp−トルエンスルホン酸のことを指す。「DCE」はジクロロエタンのことを指す。「DAST」は三フッ化(ジエチルアミノ)硫黄のことを指す。「EA/H」は酢酸エチル/ヘキサン混合物のことを指す。「DAST」は三フッ化(ジエチルアミノ)硫黄のことを指す。「EA/H」は酢酸エチル/ヘキサン混合物のことを指す。「Pd(dba)」はビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムのことを指す。「BINAP」は2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ−1,1’−ビナフタレンのことを指す。「NMP」はN−メチルピロリジンのことを指す。「TMSCN」はトリメチルシリルシアニドのことを指す。「TBAF」はテトラブチルアンモニウムフルオライドのことを指す。「TfO」はトリフルオロメタンスルホン酸無水物のことを指す。「TBSO」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシのことを指す。「OTf」はトリフルオロメタンスルホネートのことを指す。「MeTi(Oi−Pr))」はトリイソプロポキシメチルチタンのことを指す。「BBr」は三臭化ホウ素のことを指す。「PBr」は三臭化リンのことを指す。「Pd(PPh」はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のことを指す。「OAc」はアセテートのことを指す。「DME」はジメチルエタンのことを指す。「EtO」はジエチルエーテルのことを指す。「(PhP)Pd」はテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)のことを指す。「DMFDMA」はN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタールのことを指す。「EtN」はトリエチルアミンのことを指す。「tBu」はt−ブチルのことを指す。「DIPEA」はジイソプロピルエチルアミンのことを指す。「EDC」は−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸のことを指す。「HOAc」は酢酸のことを指す。「boc」はt−ブトキシカルボニルのことを指す。構造式中、「Ph」はフェニル基のことを指し、「Me」はメチル基のことを指し、「Et」はエチル基のことを指し、「Bn」はベンジル基のことを指し、「MeOH」はメタノールのことを指し、「OTf」はトリフルオロメタンスルホネートのことを指し、「TIPSO」はトリイソプロピルシラニルオキシ基のことを指し、「TBSO」はtert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ基のことを指す。
本明細書に記載する実施例は本発明を例示するものであり、請求項に記載された本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。調製例及び実施例では、MDL Information Systems社製のChemDraw UltraのAutoNom 2.2又はMDL ISIS/Draw Version2.5 SP1のAutoNom 2000を使用するか、又はChemical Abstracts Servicesを利用することにより命名した。
Varian INOVA 400MHzスペクトロメータを用い、H NMRスペクトル(溶媒中)を得た。Mass Spectrometer(Agilent MSD SL)を備えたAgilent HP1100計測器を用いてLCMSを実施した。ウォーターズXterra C18(50mm、3.5ミクロン、2.1のX)が静止フェーズとして使われる。そして、標準方法はそれから50のCの柱温度および1.0mL/分の流れ率で0.5分間の100%のBで保たれる3.5分にわたる0.2%のアンモニウム・ギ酸塩を有する5−100%のアセトニトリル/メタノール(50:50)の勾配である。他の標準方法は、それから50Cの柱温度および1.0mL/分の流れ率で1.0分間の100%のBで保たれる7.0分にわたる0.2%のアンモニウム・ギ酸塩を有する5−100%のアセトニトリル/メタノール(50:50)の勾配である。Agilent MSD(ループマシン)を経た更なるMS分析は、標準的なフロー注入分析(FIA)であり、カラムを用いず、0.5ml/分の流速で、80%のMeOH(6.5mMの酢酸アンモニウムを含有)で、30秒のラン時間で処理することにより実施した。
反応式A
Figure 0005101602
反応式Aでは、任意に置換されたフェノール(1)を(例えばTBSClで)保護して化合物2を形成させ、更に化合物2をアルデヒド(3)に変換する。化合物3を、保護基(Pg)及び脱離基(Lg)を含む化合物と反応させ、エーテル化合物4を得る。Pgは−CH又は−CH−フェニルであってもよく、Lgはメシレート又はハロであってもよい。好ましくは、Lg−Pg化合物はI−CH又はBrCHフェニルである。アルデヒドを還元してアルコール(5)を形成させ、更に化合物6に変化させる。好ましくは化合物5をPBrでハロゲン化し、2−ブロモメチル化合物を調製する。
化合物の保護及び脱保護による式Iの化合物及びその他の化合物の形成は、当業者にとり公知で、文献にも記載されている。(例えばGreene及びWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,John Wiley and Sons Inc.,1999を参照)。
反応式B
Figure 0005101602
反応式Bは、中間体化合物9の立体特異的合成を示す。化合物7は、塩化4−ペンテノイルを用いて、市販の(R)−4−ベンジル−オキサゾリジン−2−オンをアシル化することにより形成される。更に、任意に置換されてもよい化合物6でアルキル化し(反応式Aを参照)、化合物8を得る。化合物8をオゾン、及びトリフェニルホスフィン又は四酸化オスミウム、及びメタ過ヨウ素酸ナトリウムなどの酸化剤を使用して酸化し、アルデヒド中間体化合物9を形成させる。
反応式C
Figure 0005101602
反応式Cは、中間体化合物9からの、式Iaの化合物の形成を示す。
調製1:
2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド
3Lのジメチルホルムアミド(DMF)中に3,5ジクロロフェノール(1kg、6.13mol)を溶解させ、0℃に冷却した。イミダゾール(918.74g、6.75mol)、更にtert−ブチルジメチルシリルクロライド(1017.13g、6.75mol)を添加した。室温に混合物を加温し、15分間撹拌した。水(6L)中に注ぎ、エーテル(4L)で抽出した。水で2回、10%の塩化リチウム水溶液、更にブラインで有機層を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、真空下で濃縮し、油状物としてtert−ブチル−(3,5−ジクロロフェノキシ)−ジメチル−シラン(1700g)を得た。
4Lの無水テトラヒドロフラン中にtert−ブチル−(3,5−ジクロロ−フェノキシ)−ジメチル−シラン(425g、1.5mol)を溶解させ、−68℃に冷却した。−68℃で、徐々に、1.1当量のsec−ブチルリチウム(103.1g、1.61mol)を添加した(〜1.75時間)。添加終了後、70℃で30分間反応液を撹拌した。ジメチルホルムアミド(168.5g、2.3mol)を添加し、反応液を−70℃で1時間撹拌した。1Mの塩酸水溶液(3.5L)を添加し、反応液を室温に加温した。
反応混合物をエーテル(5L)に注入し、水、更にブラインで洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥させ、橙色固体となるまで真空濃縮した。冷却したジクロロメタンでリンスして粉末状とし、濾過し、250g(80%)の淡黄色の固体を得た。
調製2:
2,6−ジクロロ−4メトキシベンズアルデヒド
900mLのジメチルホルムアミド中で2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(120g、628.24mmol)及び炭酸カリウム(173.65g、1256.5mmol)を混合し、ヨウ化メチル(107g、753.9mmol)で処理した。室温で3時間反応液を撹拌した。固体を濾過して除去し、6Lの水に注いだ。固体を濾過し、水で数回洗浄し、空気乾燥し、酢酸エチル中に溶解させた。水、更にブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。濾過し、〜100mLの体積となるまで真空濃縮し、固体を析出させた。更に濾過し、濾過液を濃縮し、第2の生成物を得た。ヘキサンで洗浄し、全ての固体を混合し、真空乾燥し、112.3gのオフホワイトの固体を得た:H NMR(400MHz、CDCl)δ10.41(s、1H)6.90(s、2H)3.87(s、3H)。
調製3:
2,6−ジクロロ−4−ベンジルオキシ−ベンズアルデヒド
2Lのジメチルホルムアミド中の、2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(250g、1.3mol)及び炭酸カリウム(361.8g、2.62mol)の混合物を、臭化ベンジル(268.64g、1.57mol)で処理した。室温で1時間、反応液を撹拌した。固体を濾過して除去し、12Lの水に注いだ。固体を濾過して除去し、水で数回洗浄し、空気乾燥し、酢酸エチル中に溶解させた。硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、〜1.5Lとなるまで真空濃縮した。一晩静置し、濾過した。最少量のヘキサンで固体を洗浄し、真空乾燥した。濾過液を真空下で濃縮し、ヘキサンでリンスして第2の生成物を得、それを第1の生成物と混合し、245gの白色の結晶を得た。操作を繰り返し、3度目の生成物として淡い褐色の粉末80g(88%の全収率)を得た:1H NMR(400MHz、DMSO−d6)δ10.26(s、1H)7.43(m、5H)7.28(s、2H)5.25(s、2H)。
調製4:
(2,6−ジクロロ−4−メトキシフェニル)−メタノール
2,6−ジクロロ−4メトキシベンズアルデヒド(112g、546mmol)を1500mLのエタノール中に懸濁し、アイスバスにおいて7℃に冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(20.67、546mmol)を徐々に添加し、溶液を調製した。氷浴を除去し、2時間撹拌した。反応混合物を慎重に飽和塩化アンモニウム溶液(4L〜)に添加し、完全に反応が停止するまで撹拌した。ジクロロメタン(3×1L)で抽出し、硫酸ナトリウム上で混合有機抽出液を乾燥させた。濾過し、真空濃縮し、淡い褐色固体113gを得た:1H NMR(400MHz、CDCl3)δ6.86(s、2H)4.86(s、2H)3.78(s、3H)2.07(s、1H)。
調製5:
(2,6−ジクロロ−4−ベンジルオキシ−フェニル)−メタノール
基本的に調製4の方法に従い、標記の化合物を調製した。NMR(DMSO−d)δ7.38(m、4H)7.33(m、1H)7.12(s、2H)5.14(s、2H)5.05(t、1H)4.59(d、2H)。
調製6:
2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5メトキシベンゼン
1200mLの無水THF中に(2,6−ジクロロ−4−メトキシ−フェニル)−メタノール(113g、545.76mmol)を溶解させ、窒素雰囲気下で0℃まで冷却した。窒素下でPBr(59.1g、218.3mmol)を添加し、0℃で30分間撹拌した。飽和NaHCO水溶液中に注ぎ、EtOAcで抽出した。乾燥させ、真空濃縮し、オフホワイトの固体として129.4gの製品を得た。NMR(CDCl)δ6.88(s、2H)4.73(s、2H)3.79(s、3H)。
調製7:
2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5−ベンジルオキシ−ベンゼン
基本的に調製6の方法に従い、89%の収量で標記化合物を調製した。ES MS(m/z):347(M+1)。
調製8:
(R)−4−ベンジル−3−ペント−4−エノイル−オキサゾリジン−2−オン
撹拌装置、内部温度プローブ/Nインレット及び1Lの滴下漏斗を備えた12Lの3口丸底フラスコに、20分間窒素フラッシュし、(R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン(250g、1.41mol)を添加した。テトラヒドロフラン(THF)(1.8L)で希釈し、ドライアイス/アセトン浴槽において、内部温度が−74℃となるまで冷却した。n−ブチルリチウムの1.6Mヘキサン溶液(970mL、1.552mol)を、カニューレを介して滴下漏斗へ移し、内部温度が−65℃以上とならない速度でオキサゾリジノン溶液を添加した。添加終了後、反応液を30分間、冷却浴中で撹拌した。4−ペントエノイルクロリド(175mL、1.585mol)を滴下漏斗へ移し、滴下しながら25分間にわたりアニオン溶液に添加した。冷却浴中で45分間反応液を撹拌した。冷却浴を除去し、18時間反応液を撹拌させ、徐々に室温に加温した。混合液を、1N塩酸水溶液(1.5L)及びジエチルエーテル(1L)で希釈した。層分離させ、水(2×1L)、ブライン(1L)で有機相を洗浄した。混合した洗浄水をエーテル(1L)で抽出した。無水硫酸マグネシウム上で混合有機相を乾燥させ、濾過し、淡い黄褐色の油状物390gとなるまで濃縮した。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィによって、この物質を精製し、澄んだ黄色の油状物345g(94.5%)を得た。
調製9:
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン
内部温度プローブ/窒素導入口及び滴下漏斗を有する、12Lの3口丸底フラスコ中で、窒素雰囲気下、−75℃に冷却しながら(R)−4−ベンジル−3−ペント−4−エノイル−オキサゾリジン−2−オン(345g、1.33mol)及びTHF(1.8L)の混合物を撹拌した。1M LiHMDS(1.6L)を滴下漏斗へ移し、内部温度が−60℃以上とならない速度で添加した。添加終了後、反応液を−25℃で30分間撹拌し、更に約−60℃に冷却した。この時点で、5分間にわたり固体状の2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5−ベンジルオキシ−ベンゼンを徐々に添加した。添加終了後、反応容器を−10℃アセトン浴槽に移し、1時間にわたり、10℃未満の内部反応温度を維持した。0℃まで混合物を冷却し、2Lの1N塩酸水溶液でクエンチした。混合物を22Lの分液漏斗へ移し、2.5Lの水及び2Lのエーテルで希釈した。層を分離させ、エーテルで水性層を抽出した。無水硫酸マグネシウム上で混合有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮し、濃い油状物800gを得た。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィで精製し、無色油状物597g(86%)を得た。
調製10:
(R)−4−((R)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−4−オキソ−ブチルアルデヒド
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(100g、190.68mmol)及びジクロロメタン(800mL)の混合物を−74℃に冷却した。オゾン(75%の速度でA−113オゾン発生器から発生)を、5CFMの速度でキャリアーエアーと共に反応液に供給してバブリングし、溶液が青色となるまで(約3時間)反応させた。トリフェニルホスフィン(60g、228.8mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液を添加し、反応液を撹拌し、一晩かけて室温に加温した。真空下で溶液を濃縮し、20−50%の酢酸エチル勾配/ヘキサンを使用してシリカゲルクロマトグラフィ精製し、白い泡状物として生成物82.1g(82%)を得た。:MS(m/z):526(M+)。
(R)−4−(R)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−3−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロベンジル)−4−オキソ−ブチルアルデヒドの代替的調製方法:
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−ベンジルオキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(0.96g、1.8mmol)、THF(21mL)及び水(7mL)の混合物を、2.5%四酸化オスミウムのt−ブタノール(46mg、0.18mmol)溶液で処理した。過ヨウ素酸ソーダ(1.17g、5.5mmol)を添加し、室温で4時間反応液を撹拌した。水で反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出した。1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液、更にブラインで有機相を洗浄した。硫酸マグネシウム上で有機層を乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィで粗生成物を精製し、純粋な生成物を溶出させた。真空下で生成物を含有する画分を濃縮し、所望の生成物0.46g(48%)を得た。MS(m/z):526(M+)。
調製11:
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−メトキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン
(R)−4−ベンジル−3−ペント−4−エノイル−オキサゾリジン−2−オン(5.0g、19.3mmol)及びテトラヒドロフラン(75mL)の混合物を、−75℃で250mLの丸底フラスコ中で撹拌した。シリンジを介して2M LDA(14.5mL)をフラスコへ移し、内部温度が−60℃以上にならない速度で添加した。添加終了後、反応液を−25℃で30分間撹拌し、更に約−60℃に冷却した。この時点で、2−ブロモメチル−1,3−ジクロロ−5メトキシベンゼン(7.76g、28.96mmol)のTHF(25mL)溶液を添加した。添加終了後、反応容器を徐々に0℃に加温し、内部反応温度を4時間、0℃に維持した。30mLの1N塩酸水溶液で反応をクエンチした。混合物を500mLの分離漏斗へ移し、100mLの水及び100mLのエーテルで希釈した。層を分離させ、エーテルで水性層を抽出した。無水硫酸ナトリウム上で混合有機相を乾燥させ、濾過し、濃縮し、濃い油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィを使用してヘキサン:酢酸エチルにより精製し、6.65g(76%)の淡黄色の油状物を得た。
調製12:
(R)−4−((R)−4−ベンジル−2−オキソ−オキサゾリジン−3−イル)−3−(4−メトキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−4−オキソ−ブチルアルデヒド
(R)−4−ベンジル−3−[(S)−2−(4−メトキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(6.65g、14.87mmol)、テトラヒドロフラン(140mL)及び水(45mL)の混合物を、2.5%の四酸化オスミウムのt−ブタノール(378mL、1.487mmol)中溶液で処理した。ナトリウム過ヨウ素酸塩(9.55g、44.63mmol)を添加し、室温で4時間反応液を撹拌した。水で反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出した。1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液、更にブラインで有機相を洗浄した。硫酸マグネシウム上で有機層を乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。ヘキサン:酢酸エチルを使用し、シリカゲルクロマトグラフィで粗生成物を精製し、純粋な生成物を溶出させた。真空下で生成物を含有する画分を濃縮し、所望の生成物3.35g(49%)を得た。MS(m/z):451(M+)。
調製16:
(R)−3−(2,6−ジクロロ−4メトキシベンジル)−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン塩酸塩
(R)−4−(R)−4−ベンジル−3−[2−(4−メトキシ−2,6−ジクロロ−ベンジル)−ペント−4−エノイル]−オキサゾリジン−2−オン(0.90g、2mmol)のTHF(20mL)溶液に、室温で、1−アミノピペリジン(0.40g、4mmol)及び酢酸(0.2mL)を添加した。室温で20分間反応液を撹拌し、ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド(1.69g、8mmol)を添加し、室温で12時間撹拌を継続させた。酢酸エチル(20mL)及び水(20mL)で混合物を分離させた。有機層を分離し、水で3回(各15mL)、更に塩水(15mL)で洗浄した。硫酸ナトリウム上で有機層を乾燥させた後、濾過し、真空下で濃縮した。残余物をシリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル/ヘキサン=2:3)で精製し、遊離塩基として標題化合物を得、更に1M HCl/エーテルで処理して0.34g(43%)を得た:MS(m/z):357(M+)。
調製17:
(R)−3−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン
3−(2,6−ジクロロ−4−メトキシベンジル)−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン塩酸塩(0.27g)のジクロロエタン(10mL)溶液を−20℃に冷却し、1Mの三臭化ホウ素/ジクロロメタン(2.5mL)溶液を添加した。反応液を−20℃で1時間撹拌し、更に室温で12時間撹拌した。ジクロロメタン(20mL)及び飽和重炭酸ナトリウム(15mL)で混合物を分割した。有機層を分離した。硫酸ナトリウム上で有機層を乾燥させた後、濾過し、真空下で濃縮し、標題化合物0.18g(76%)を得た。MS(m/z):343(M+)。
調製13:
(R)−トリフルオロメタンスルホン酸3,5−ジクロロ−4−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−フェニルエステル
(R)−3−(2,6−ジクロロ−4−ヒドロキシ−ベンジル)−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン(1.02g、2.98mmol)及びピリジン(2.4g、30mmol)のCHCl(20mL)溶液を、0℃で、1時間にわたり、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(2.69g、9.54mmol)で処理した。反応液をCHClで希釈し、1N HCl及び水で洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、溶媒を除去し、シリカゲルクロマトグラフィで残余物を精製し、標題の化合物0.65g(46%)を得た。MS(m/z):475(M+)。
調製14:
(R)−3’,5’−ジクロロ−4’−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−ビフェニル−4−カルボン酸メチルエステル
(R)−トリフルオロメタンスルホン酸3,5−ジクロロ−4−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−フェニルエステル(0.236g、0.5mmol)、4−メトキシカルボニルフェニルホウ酸(0.134g、0.75mmol)、炭酸ナトリウム(0.158g、1.5mmol)のTHF(20mL)及び水(5mL)混合液を60℃に加温した。60℃の混合液に、Pd(PPh(0.029g、0.025mmol)を添加し、更に反応温度を80℃に上昇させ、3時間撹拌した。反応を冷却し、酢酸エチルで希釈し、水及び塩水で洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、真空内で溶媒を除去し、粗生成物を得、更にシリカゲルカラムを用いて、25%〜50%の酢酸エチル/ヘキサン勾配で精製し、標題の化合物0.22g(95%)を得た。MS(m/z):461(M+)。
調製15:
(R)−3’,5’−ジクロロ−4’−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−ビフェニル−4−カルボン酸
(R)−3’,5’−ジクロロ−4’−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−ビフェニル−4−カルボン酸メチルエステル(0.21g)のTHF(10mL)溶液を5N NaOH(1mL)で処理し、60℃で12時間撹拌した。酢酸エチル及び水で混合物を分割させた。有機層を乾燥し(NaSO)、真空内で溶媒を除去し、標題化合物0.19g(93%)を得た。MS(m/z):447(M+)。
実施例1:
(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン
Figure 0005101602
(R)−3’,5’−ジクロロ−4’−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−ビフェニル−4−カルボン酸(0.090g、0.2mmol)のCHCl(10mL)溶液を、1,1’−カルボニルジイミダゾール(0.065g、0.4mmol)で処理し、室温で1時間撹拌した。反応液を4−トリフルオロメチルピペリジン塩酸塩(0.057g、0.3mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.039g、0.3mmol)で処理し、室温で12時間撹拌した。シリカゲルカラムを用い、25%〜75%の酢酸エチル/ヘキサンで精製し、標題化合物0.065g(55%)を得た。MS(m/z):582(M+)。
実施例2:
(R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オン
Figure 0005101602
(R)−3’,5’−ジクロロ−4’−(2−オキソ−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−3−イルメチル)−ビフェニル−4−カルボン酸(0.102g、0.228mmol)のCHCl(10mL)溶液を、1,1’−カルボニルジイミダゾール(0.074g、0.457mmol)で処理し、室温で1時間撹拌した。反応液を4−ヒドロキシピペリジン(0.065g、0.34mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.044g、0.34mmol)で処理し、室温で12時間撹拌した。シリカゲルカラムを用い、100%の酢酸エチル、及び10%のメタノール/ジクロロメタンで混合物を精製し、標題化合物0.107g(89%)を得た。MS(m/z):530(M+)。
以下のセクションにおいて、酵素的及び機能的アッセイによる本発明の化合物の評価に関して記載する。
11β−HSD 1型酵素アッセイ
ヒトの11β−HSD 1型の活性は、蛍光試験法を用い、NADPH生成をアッセイすることにより測定した。固体の化合物は、10mMの濃度となるようにDMSOに溶解させた。各々の20μLを96穴ポリプロピレン製ヌンクプレートのカラムへ添加し、そこで更に50倍に希釈し、その後二段階滴定し、それをTecan Genesis 200自動化システムを使用して更にDMSOを添加しながら、プレート全体にわたり、10回行った。プレートを更に、Tecan Temo 96穴ヘッド及びUltra 384プレートリーダーを装備したTecan Freedom 200システムへ取付けた。96穴ポリプロピレン製ヌンクプレートに試薬を添加し、以下のとおり、黒い96穴Molecular Devices High Efficiencyアッセイプレート(40μL/ウェル)に個々に添加した。基質(2.22mMのNADP、55.5μM Cortisol、10mMのトリス、0.25%のPrionex、0.1%のトリトンX−100):9μL/ウェル、水:3μL/ウェル(化合物用のウェル又はコントロール及びスタンダードウェル)、組換えヒト11β−HSD 1型酵素:6μL/ウェル、希釈した化合物:2μL/ウェル。最終的な阻害%の算出は、最小及び最大のアッセイデータを示す一連のウェルのデータを加算して行った(667μMカルベノキソロンと共に基質を含有する1セット(バックグラウンド)、及び化合物を含まず、基質及び酵素を含有する他のセット(最大シグナル)。最終的なDMSO濃度は全ての化合物、コントロール及びスタンダードにおいて、0.5%であった。次にプレートを15秒間Tecanのロボットアームによってシェーカーに配置し、カバーをかけ、室温で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、Tecanロボットアームによって、個々のスタッカから各プレートを取り出し、250μMカルベノキソロン溶液を5μL/ウェルで添加し、酵素反応を停止させた。プレートを更に15秒間振とうし、次にultra 384マイクロプレートリーダー(355EX/460EM)でNADPHの蛍光を検出した。
実施例化合物の11−βHSD1アッセイのデータを以下に示す。
Figure 0005101602
また本発明の化合物を、11−βHSD1の場合と同様のアッセイ(代わりに11−βHSD2エンザイムを用いた)で、11−βHSD2に対する選択性を解析した。11−βHSD2エンザイムを用いたアッセイは、本願明細書に記載のとおりに実施し、また公知の方法により補足できる。
ヒトの大動脈平滑筋細胞アッセイ:
ヒトの大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の初代細胞を、継代数6となるまで5%ウシ胎児血清を含有する培地中で培養し、次に遠心分離してペレット化し、11β−HSD1の発現を誘導するために、12ng/mLのhTNFαを含有する0.5%ウシ胎児血清入りの試験培地中に9×10細胞/mLの密度で再懸濁した。100μL/ウェル(9x10細胞/ウェル)で96穴の組織培養アッセイプレートに細胞を播き、37℃で48時間(5%のCO)インキュベートした。誘導後、細胞を37℃で4時間、5%のCO条件下で、試験化合物を含有するアッセイ培地中でインキュベートし、アッセイ用培地中に溶解させた10μL/ウェルの10μMコルチゾン溶液で処理し、37℃で16時間(5%のCO)インキュベートした。各ウェルの培地を、競合的蛍光共鳴時間分割イムノアッセイを使用する、コルチゾルによる次のアッセイ用のプレートへ移した。溶液中では、アロフィコシアニン(APC)−コルチゾルコンジュゲートと、遊離コルチゾル検体が、マウス抗コルチゾル抗体/ユーロピウム(Eu)−抗マウスIgG複合体との結合に関して競合する。遊離コルチゾルの濃度増加により、ユーロピウム−IgGからのAPC−コルチゾル複合体へのエネルギー移動が減少し、それによりAPC蛍光が減弱する。ユーロピウム及びAPCの蛍光輝度を、LJL Analyst ADを使用して測定した。ユーロピウム及びAPCの励起は360nmの励起により行い、各々615nm及び650nmの発光フィルターを使用して測定した。ユーロピウムの時間分割パラメータは、200μsの遅延を伴う、1000μsインテグレーション時間とした。APCパラメータは、50μsの遅延を伴う150μsインテグレーション時間とした。APCにおいて、測定する蛍光輝度は、Eu蛍光輝度で除算(APC/Eu)することにより修飾した。更にこの比率を用い、4−パラメータロジスティック方程式にフィットさせたコルチゾル標準曲線を使用して、内挿法により未知のコルチゾル濃度を測定した。更にこれらの濃度を用い、濃度対阻害%をプロットし、4−パラメータ曲線にフィットさせ、IC50濃度をレポートすることによって、化合物の活性を測定した。
人間の大動脈平滑筋細胞分析に使用した例示化合物のデータは、以下に示される:
Figure 0005101602
急性In Vivoコルチゾン転換アッセイ
化合物をマウスに経口投与し、そのマウスに、化合物投与後、所定の時点でコルチゾンを皮下注射し、その後各マウスの血液を採取した。次に単離した血清をLC−MS/MSを用いてコルチゾン及びコルチゾルのレベルを分析し、更に平均コルチゾルレベル及び各投与群の阻害%の算出を行った。具体的には、オスのC57BL/6マウス(25gの平均体重)を、Harlan Sprague Dawleyから入手した。正確な体重を到着時点で測定し、同様の体重を有するマウス群に無作為に分けた。化合物は25gの推定平均重量で、様々な投与量となるように1%(w−w)HEC、0.25%(w−w)ポリソルベート80、0.05%(w−w)ダウコーニング消泡剤#1510−US混合液中で調製した。化合物を経口投与(動物につき200μl)し、更に化合物投与後、1〜24時間において、30mg/kgのコルチゾンを、動物あたり200μlで皮下投与した。コルチゾン投与の10分後、各動物をCO室で1分間置いて安楽死させ、更に心臓穿刺を介して血清分離チューブ中に血液を採取した。完全に凝固させた後、チューブを2500×gで4℃で15分間遠心分離し、96穴プレート(Corning社、Costar #4410、クラスターチューブ、1.2ml、ポリプロピレン製)のウェルへ単離した血清を添加し、LC−MS/MS解析を行うまで、プレートを−20℃で凍結させた。解析時に血清サンプルを解凍し、アセトニトリルを含有するd4−コルチゾル内部スタンダードを添加してタンパク質を析出させた。サンプルをボルテックスして混合し、遠心分離した。加温した窒素流中で上澄を蒸発除去させた。抽出物をメタノール/水(1:1)中で再調製し、LC−MS/MSシステムへ注入した。コルチゾン及びコルチゾル濃度を、3重の四重極子質量分光光度計上で陽ACPIイオン化後に、選択的な反応モニタリングモードによりアッセイした。
実施例化合物による、急性in vivoコルチゾン転換アッセイのデータを以下に示す。
Figure 0005101602
製薬的に許容し得る塩、及びそれらを調製するための一般方法は公知である。詳細は、例えばP.Stahlら、“HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE”,(VCHA/Wiley−VCH,2002)、S.M.Bergeら、”Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.66,No.1,January 1977を参照されたい。本発明の化合物は好ましくは、種々の経路で投与される医薬組成物として製剤化される。最も好ましくは、かかる組成物は経口投与用に製剤化する。かかる医薬組成物及びその調製方法は公知技術である。かかる形態では、製剤は適切な量(例えば所望の効果を得るための有効量)の有効成分を含む適切なサイズのユニットドーズに分割する。例えば「REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY」(A.Gennaroら編、19版、Mack Publishing Co.,1995)を参照のこと。
本発明の有効量を構成するのに必要となる、式(I)の化合物又はその製薬的に許容し得る塩の具体的な量は、治療しようとする症状の具体的な状況により変化する。投与量、投与経路及び投与回数等は、主治医により決定されるのが最も好ましい。通常、経口投与又は非経口投与のための許容・有効量範囲は約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日、ヒト患者に換算すると約6mg〜600mg、より典型的には30mg〜200mgである。本願明細書に記載されている疾患の治療においては、かかる投与は、治療を必要とする患者に1〜3回/日で行うか、又は効果的である限り、必要な頻度で行う。
製剤を調製する当業者は、選択される化合物、障害又は扱われる状態、障害又は状態のステージ及び他の関連した状況の特定の特徴によって、適当な形及び投与様式を直ちに選択できる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(1990))。本願明細書に係る化合物は、種々の経路で投与できる。本願明細書に記載されている障害に罹患する、若しくはそれが進行するリスクを有する患者を治療する際、式(I)の化合物又はその製薬的に許容し得る塩を、有効量で生物学的に利用可能となる、いかなる形態又は方法(経口及び腸管外経路など)によって、投与してもよい。例えば、有効成分を直腸内、経口、吸入、皮下、筋肉注射、経静脈、経皮、鼻腔内、眼内、局所、舌下、バッカル及び他の任意の経路で投与できる。特に、経口投与が、本願明細書に記載の障害の治療においては好ましい。経口投与が不可能で、かつ望ましくない場合には、非経口的投与(例えば腹腔内、筋肉内又は経静脈)に適する形態で当該組成物を調製できる。

Claims (11)

  1. 以下の構造式で表される化合物又はその製薬的に許容し得る塩:
    Figure 0005101602
    [式中、
    は水素又はハロゲンであり、
    は水素、ハロゲン、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−CH3又は
    1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−O−CH3であり、
    は水素、ハロゲン、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−CH3又は
    1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−O−CH3であり、
    は水素又はハロゲンであり、

    Figure 0005101602
    であり、式中、点線はR位置への結合部位を表し、
    nは0、1又は2であり、nが0であるとき(CH)nは結合であり、
    mは、1又は2であり、
    は水素、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、−(C−C)アルキル−ピロリジニル、フェニル、−HET、−HET、−CH−フェニル、−CH−HET、−CH−HET、−(C−C)アルキル−N(R20)(R20)、−(C−C)アルキル−N(O)(CH、−(C−C)アルキル−C(O)N(R41)(R41)、−CH(C(O)OH)(CHOR20)、−CH(C(O)OH)(CHN(R20)(R20))、−(C−C)アルキル−C(O)O−R20
    Figure 0005101602
    であり、式中、点線はRにより示される位置への結合部位を示し、
    HET
    Figure 0005101602
    であり、式中、点線はHETにより示される位置への結合部位を示し、
    HET
    Figure 0005101602
    であり、式中、点線はHETにより示される位置への結合部位を示し、
    は水素、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキル又は−(C−C)アルキル−O−R20であり、
    は水素、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C6)アルキル、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−C(O)(C1−C6)アルキル、−C(O)(C−C)シクロアルキル、−(C−C)アルキル−O−R20、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−C(O)O−(C1−C4)アルキル、−S(O)−(C−C)シクロアルキル、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−S(O)−(C1−C3)アルキル又は−C(O)−N(R20)(R20)であり、
    は水素、−OH、ハロゲン、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−CH3又は
    1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−O−CH3であり、
    10は各々独立に水素又はハロゲンであり、
    20は各々独立に水素又は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキルであり、
    21は各々独立に水素、ハロゲン又は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキルであり、
    22は各々独立に水素又は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C6)アルキルであり、
    23は各々独立に水素、1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C4)アルキル又は−C(O)O−(C−C)アルキルであり、
    24は各々独立に水素、ハロゲン又は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキルであり、
    31は各々独立に水素、ハロゲン又は−(C−C)アルキルであり、
    41は各々独立に水素又は−CHである]。
  2. が水素であり、Rが塩素であり、Rが塩素であり、Rが水素である、請求項1記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩。
  3. が、
    Figure 0005101602
    (式中、
    は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C4)アルキルであり、
    は水素、ハロゲン又は1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−CH3であり、
    10は各々独立に水素又はハロゲンである)
    である請求項1又は2記載の化合物、又はその製薬的に許容し得る塩。
  4. が、
    Figure 0005101602
    [式中、Rは1〜3個のハロゲンで置換されてもよい−(C1−C3)アルキル]
    である請求項1から3のいずれかに記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩。

  5. Figure 0005101602
    である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩。
  6. が、
    Figure 0005101602
    である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩。
  7. (R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−トリフルオロメチル−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オンである請求項1記載の化合物、又はその製薬的に許容し得る塩。
  8. (R)−3−[3,5−ジクロロ−4’−(4−ヒドロキシ−ピペリジン−1−カルボニル)−ビフェニル−4−イルメチル]−1−ピペリジン−1−イル−ピロリジン−2−オンである請求項1記載の化合物、又はその製薬的に許容し得る塩。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩、および製薬的に許容し得る担体を含んでなる医薬組成物。
  10. 医薬の製造における使用のための、請求項1から8のいずれかに記載の化合物又はその製薬的に許容し得る塩。
  11. 請求項7又は8記載の化合物を調製するための中間体であって、
    Figure 0005101602
    である中間体。
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