JP5100992B2 - ポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリアミド樹脂の結晶化と離型性を改良し、成形サイクルを短縮する目的で使用するポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法に関するものである。
ポリアミド樹脂は、機械的特性や耐熱性に優れているので、自動車や電気製品などの部品として幅広く利用されている。しかし、ポリアミド樹脂は融点が高いため、射出成形時に溶融温度を高くする必要があり、このため金型から押出された溶融樹脂が固化するまでの時間が長くなり、生産性が劣るという問題があった。
ポリアミド樹脂の射出成形において、1サイクルの時間を短縮する方法として、タルク、カオリンなどの結晶核剤を添加して結晶化(固化)を促進する方法(特許文献1)や、有機系離型剤を添加する方法(特許文献2、3)などが提案されている。結晶核剤や離型剤を添加する方法としては、ポリアミド樹脂の重合時に原料と一緒に添加する方法や、重合後に溶融混錬で添加する方法などがある。
一方、成形サイクルの時間を短縮する方法として、結晶核剤と離型剤の両方を添加することが効果的であるとされている。
しかし、多岐にわたるのポリアミド樹脂グレードの成形性を改良するために、それぞれの重合時に結晶核剤と離型剤とを添加するとなれば、重合時の銘柄が増えて在庫が増えるばかりか、銘柄変更に伴うロスも発生する。さらに、溶融混錬で添加すれば、新たに、そのための加工費が加わり経済的ではなく、別途用意したいわゆるマスターチップを前記各グレードのポリアミド樹脂に配合することが好適である。しかし、成形サイクルの時間短縮と成形品の引張強度を同時に満足するポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法は未だ提案されていない。
特開平7−41669号公報 特開昭61-188457号公報 特開昭61-188458号公報
本発明は、上記の現状に鑑みなされたものであり、ポリアミド樹脂の結晶化と離型性とが改良されて成形サイクルを短縮でき、かつ成形品の引張強度が良好となるマスターチップを、簡便、かつ、経済的に得ることができるポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、結晶核剤としてのタルクが配合されたポリアミド樹脂に離型剤を添加し、溶融混錬すればよいことを知見して本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の構成を要旨とするものである。
(1)5〜30倍希釈後のタルクが0.01〜0.5質量%、離型剤が0.01〜1質量%となるように結晶核剤としてのタルクと離型剤が配合されたポリアミド系マスターチップを製造するに際し、タルク配合ポリアミド樹脂に離型剤を添加して溶融混錬することを特徴とするポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法。
(2)離型剤が脂肪族アミン、脂肪酸金属塩、エチレンビスアミド化合物からなる群より選ばれた少なくとも1 種であることを特徴とする上記(1)記載のポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法。
本発明によれば、ポリアミド樹脂の物性を損なうことなく、成形サイクルを飛躍的に短縮でき、かつ成形品の引張強度が良好となるマスターチップを容易に安定して製造することが可能となり、単一のマスターチップで分子量の異なるポリアミド樹脂の成形性改良に利用することができるので、産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における成形性改良マスターチップの製造に際しては、結晶核剤のタルクがあらかじめポリアミド樹脂中に分散している状態のところに、離型剤を添加して溶融混錬することが必要である。ポリアミド樹脂にタルクと離型剤とを同時に添加してブレンドし、溶融混錬すると、離型剤の影響でタルクがポリアミド樹脂に分散できず、そのマスターバッチを用いると、成形サイクルの短縮効果が得られないばかりか、成形品の引張伸度が低下するため好ましくない。
溶融混錬の方法は特に限定されるものではないが、2軸押出機を用いて、基部より高濃度にタルクが配合されたポリアミド樹脂と非配合のポリアミド樹脂と離型剤とを均一ブレンドした混合物を投入して溶融混錬する方法、もしくは、基部より、ポリアミド樹脂とタルクの粉末を均一ブレンドして投入して溶融混錬し、シリンダーの中流乃至下流部分から離型剤を別途投入する方法などが適用できる。一般的に離型剤は融点が低く、途中投入することが困難であるため、前者の方法が好適に使用できる。
本発明におけるポリアミド樹脂としては、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、及びこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。中でもナイロン6やナイロン66が特に好ましい。
結晶核剤としてのタルクは、粉末状のものが好ましく、その平均粒子径は50μm以下のものである。タルクの粒子径が50μmを超える場合には分散性が悪くなる場合があり、結晶核剤としての効果が低下する場合や、引張伸度の低下を招き好ましくない場合がある。
次に、本発明における離型剤としては、脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、エチレンビスアミド化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が用いられる。次に、これらの離型剤について説明する。
まず、高級脂肪族アミン類は式(A)、
1−NH2…(A)
(式中、R1 は炭素数8〜20のアルキル基を示す。)で表され、R1 としてはオクチル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基、オレイル基などの脂肪族基が好ましい。前記の高級脂肪族アミンとしては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、1−テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミンなどを挙げることができる。
次に、脂肪酸の金属塩は式(B)、
CH3(CH2)nCOOX …(B)
(式中、Xは周期律表第I〜III族の金属原子を示し、nは9〜30の整数を示す。)で表され、例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、アラギジン酸、ベヘニン酸、モンタン酸などの高級脂肪酸のカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム塩などを挙げることができる。
さらに、エチレンビスアミド化合物は式(C)、
CH3(CH2)mCONH(CH22NHCO(CH2)nCH3 …(C)
(式中、m及びnは9〜30の整数を示す。)で表され、例えば、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミドなどを挙げることができる。
本発明で得られるポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップは、5〜30倍希釈、好ましくは10〜20倍希釈となるようにして使用することが好ましい。希釈が5倍未満であると、希釈倍率が小さすぎて、マスターチップを用いる経済効果が実質的に発現せず好ましくない。また、30倍を超えると、タルクがポリアミド樹脂中に均一に分散することが困難となり、成形品の引張伸度の低下を招く場合があるので好ましくない。
また、マスターチップを使用する際、5〜30倍希釈後に、ポリアミド樹脂中のタルクの配合量は0.01〜0.5質量%、好ましくは0.03〜0.1質量%になることが望ましい。タルクの配合量が0.01質量%未満であると、結晶化速度の向上に効果がでない場合があり、0.5質量%を超える場合には、引張伸度の低下を招き、樹脂物性を大きく変えてしまう場合があるため好ましくない。
同様に、マスターチップを使用する際、5〜30倍希釈後に、ポリアミド樹脂中の離型剤の配合量は0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%になることが望ましい。離型剤の配合量が0.01質量%未満であると、離型抵抗の軽減の効果が小さく成形サイクルの短縮ができない場合があり、1質量%を超える場合には、成形サイクルの短縮の効果が飽和してしまう上に、得られる成形体の物性が低下する場合があるため好ましくない。
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例並びに比較例での評価方法及び使用材料は次の通りである。
(1)評価方法
(a)ポリアミド樹脂の引張特性
ASTM D-638に基づいて測定した。引張伸度は50%以上であることが好ましい。
(b)ポリアミド樹脂の相対粘度(分子量)
96質量%濃硫酸中に、ポリアミド樹脂の乾燥ペレットの濃度が1g/dlになるように溶解させ、G-3ガラスフィルターにより無機成分を濾別した後測定に供した。測定はウベローデ型粘度計を用い、25℃で行った。
(c)成形サイクル評価(離型性)
内径50mm、肉厚1.5mmのカップ型試験片の底面の突き出しピンの跡を観察し、離型具合を評価した。シリンダー温度260℃、金型温度80℃、射出時間3秒、冷却時間4秒の条件で突き出しのピンの跡がなければ○、ピン跡が膨らむ場合は△、ピンが突き抜ける場合は×とし、○を合格と判定した。
(2)使用材料
(d)ポリアミド樹脂(P−1)
ポリアミド6 ユニチカ社製 A1030BRL(相対粘度2.5)
(f)ポリアミド樹脂(P−2)
ポリアミド6 ユニチカ社製 A1030BRT(相対粘度3.5)
(g)タルク
日本タルク社製 MICRO ACE K−1 (平均粒子系7.4μm)
(h)離型剤(L−1) ステアリルアミン
花王社製 ファーミン86T
(i)離型剤(L−2) モンタン酸カルシウム
クラリアント社製 リコモントCaV
(j)離型材(L−3) エチレンビスステアリルアミド
日本化成社製 スリパックスE
(参考例1)
タルク配合ポリアミド樹脂(T−1)の製造
シリンダー温度を250〜260℃に設定し、スクリュー回転数を200rpmに設定した2軸押出機(東芝機械社製、TEM−37BS)の基部より、ポリアミド樹脂P−1を60質量部投入し、次いでサイドフィーダーからタルク40質量部を投入し、ストランド状に押出し冷却した後、切断することによりペレットを作製した。
(実施例1)
P−1、T−1、L−1を表1に示す比率で均一ブレンドし、前述の2軸押出機の基部から投入して、ストランド状に押出し冷却した後、切断することによりマスターチップ(M−1)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-1にマスターチップ(M−1)を5質量%ブレンドし、IS-80G射出成形機でシリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で試験片を作製した。
(実施例2)
P−1、T−1、L−2を表1に示す比率で均一ブレンドし、実施例1と同様にしてマスターチップ(M−2)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-2にマスターチップ(M−2)を10質量%ブレンドし、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(実施例3)
P−1、T−1、L−3を表1に示す比率で均一ブレンドし、実施例1と同様にしてマスターチップ(M−3)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-1にマスターチップ(M−3)を5質量%ブレンドし、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例1)
マスターチップを用いず、ポリアミド樹脂P-1で実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例2)
P−1、タルク、L−1を表1に示す比率で均一ブレンドし、実施例1と同様にしてマスターチップ(M−4)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-1にマスターチップ(M−4)を5質量%ブレンドし、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例3)
P−1、T−1を表1に示す比率で均一ブレンドし、実施例1と同様にしてマスターチップ(M−5)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-1にマスターチップ(M−5)を5質量%ブレンドし、実施例1と同様にして試験片を作製した。
(比較例4)
P−1、L−1を表1に示す比率で均一ブレンドし、実施例1と同様にしてマスターチップ(M−6)を得た。次いで、ポリアミド樹脂P-1にマスターチップ(M−6)を5質量%ブレンドし、実施例1と同様にして試験片を作製した。
実施例1〜3と比較例1〜4で得られた試験片の評価結果を併せて表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜3は、本発明の要件を満足するため、物性を損なうことなくポリアミド樹脂の成形性が改良された。
一方、比較例1は、マスターチップを使用せず、ポリアミド樹脂中にタルク、離型剤の両方を含有していないため、成形サイクル評価が低いものであった。また、比較例2は、ポリアミド樹脂とタルク及び離型剤を同時にブレンドして作成したマスターチップを使用したため、成形サイクル評価がやや低いものであった。次に、比較例3は、離型剤を含有しないマスターチップを使用したため、また、比較例4は、タルクを含有しないマスターチップを使用したため、いずれも成形サイクル評価が低いものであった。

Claims (2)

  1. 5〜30倍希釈後のタルクが0.01〜0.5質量%、離型剤が0.01〜1質量%となるように結晶核剤としてのタルクと離型剤が配合されたポリアミド系マスターチップを製造するに際し、タルク配合ポリアミド樹脂に離型剤を添加して溶融混錬することを特徴とするポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法。
  2. 離型剤が脂肪族アミン、脂肪酸金属塩、エチレンビスアミド化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂用成形性改良マスターチップの製造方法。
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