JP5100692B2 - 果菜植物栽培方法 - Google Patents
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Description
(1)枝が成長し過ぎると先端部の果菜まで栄養が行き届きにくくなり、先端部に結実する果菜と下段に結実する果菜とが同品質になり難く、一本の枝から収穫する果菜に品質のばらつきが生ずることがある。
(2)枝を伸ばし続けて収穫するため、数ヶ月もすると枝が疲弊して収量の減少や品質の低下といった問題を招くことがある。この場合、苗を新たに植え替えなければならず、その植え替え中は収穫が出来ず、減収の一因となっている。
(3)枝を斜め横方向に誘引すると隣接する枝の隙間が狭くなり、隣接する枝、葉、果菜が相互に接触して、枝葉の損傷や果菜の落下を招くことがある。
(4)隣接枝の隙間が狭くなると通気性や日当たりが悪くなり、植物や果菜の成長、果菜の色付きが遅くなり、場合によっては収量が低減することもある。また、葉掻き・芽掻きといった作業がし難くなり、作業性が悪くなる。
(1)同時に二本又は数本の枝しか成長させないので、成長中の枝に養分が集中し、枝を順調に成長させることができ、品質の良い果菜を収穫できる。
(2)成長させる先枝と後枝の成長開始に日数差を持たせるので、両枝の葉掻き・芽掻き、消毒といった作業時期、果菜収穫時期がずれ、作業の繁忙が解消される。
(3)先枝の果菜収穫終了後はその枝を切断して新たな枝を成長させるので、成長、収穫に無関係な枝がなく、成長中の枝に養分が行き渡り易くなり、下段から上段までの花房の果菜が高品質になり、一本の枝の下段と上段の果菜に品質のばらつきがない。
(4)一本の苗から成長開始時期をずらして新たな枝を成長させ、それを繰り返すので、一本の苗から長期間に亘って果菜を収穫でき、増収を実現できる。また、苗の植え替え間隔(スパン)を長くできるので植え替えに要する手間や資材が低減し、植え替えのためのコストも低減し、植え替えに伴う収穫不能日数が減るため増収に繋がる。
(5)先枝の成長開始後から後枝の成長開始までは他の枝や芽などを摘心するので成長中の枝に養分が集中し、枝の成長が促進され、品質の良い果菜に成長させることができる。
(6)後枝用と予備枝用の双方の芽を育成させて、後枝用の芽が順調に成長しないときは予備枝用の芽を成長させて後枝とするので後枝を絶やすことなく成長させることができる。
(7)成長日数差を持って成長させる枝を栽培床の幅方向反対側に、又は栽培床の苗植え付け方向に、又は苗の周囲の所望方向に間隔をあけて誘引するので、狭いスペース内で効率良く枝間隔を確保でき、枝や果菜への日当りや枝間の通気性が良くなって枝及び果菜が成長しやすくなり、品質の良好な果菜を短期間で収穫でき収量の増加も可能となる。また、隣接する果菜同士の接触による損傷・落果を防止することができるうえ、葉掻き・芽掻き、消毒、収穫といった各種作業もしやすくなる。
(8)一般に、隣接苗の間隔(株間)は500mm程度にされるが、成長日数差を持って成長させる枝を栽培床の幅方向反対側に誘引する場合、株間を狭くしても(例えば、株間400mm程度としても)隣接苗の枝葉や果菜同士の接触を回避できるので、枝葉や果菜が接触することによる前記問題は生じない。また、株間を狭くすることができるので一栽培床Aに植える苗1の本数を増やすことができ、生産性を高めることもできる。
本願発明の果菜植物栽培方法の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本願発明の果菜植物栽培方法は一本の苗から成長させる枝を所定の成長日数差を持って成長させ、それらの枝を栽培床A(例えば畝)の幅方向反対側上方に交互に誘引する場合の例である。
図1では苗1が栽培床Aに一定間隔で定植されている。本願発明ではこの一本の苗1から一本の枝を第一成長枝2として成長させ、その第一成長枝2を栽培床Aの上方に架設した二本の支持材4a、4bから吊り下げてある紐や線材などの誘引具5に誘引する。この場合、プラスチック製のリングや紐などの連結材6で第一成長枝2を誘引具5に係止することができる。
前記第一成長枝2の成長途中までは前記苗1から出る他の芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止めておき、第一成長枝2の所望段の花房が開花する頃に、前記苗1又は第一成長枝2から出た芽のうち任意に選択した一つの芽を第二成長枝7として成長を開始させる(図2(b))。より具体的には、第二成長枝7(後枝)は、第一成長枝2(先枝)の5段目(最上段)の花房が開花する頃に第二成長枝7の1段目(最下段)の花房が開花する成長日数差(日数遅れ)を持って成長を開始することが望ましい。この成長日数差を実現するためには、第一成長枝2の2.5段目の花房が開花するタイミング(2段目の花房の開花後であって、3段目の花房の開花前のタイミング)で第二成長枝7の成長を開始することが望ましい。後枝の成長を開始させるタイミングは、最上段の段数に応じて任意に変更することができる。例えば、先枝の2〜7段目の花房が開花するタイミングで、後枝の成長を開始させることができる。また、各枝を6段以上まで成長させる場合、先枝の最上段から2〜3段下の花房が開花するタイミングで、後枝の成長を開始させることもできる。
前記第一成長枝2と第二成長枝7は、栽培床Aの幅方向両側上方に栽培床Aの長手方向に沿って架設される二本の支持材4a、4bに向けて誘引する。この場合、成長日数差を持って成長させる枝を、栽培床Aの幅方向反対側に交互に誘引する。より具体的には、前記第一成長枝2をいずれか一方の支持材4(例えば4a)に向けて誘引し、第二成長枝7を他方の支持材4bに向けて誘引する。これにより、両枝2、7が互いに栽培床Aの幅方向反対側に誘引されて両枝2、7間に間隔(空間)9ができる。このように、間隔9を設けることによって、枝、葉、花房に結実する果菜8の接触を防止することや、枝間の日当たりや風通しを良くすることができる。
前記第一成長枝2、第二成長枝7の成長中は苗1や第二成長枝7から出る芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止め、苗1や成長中の第一成長枝2、第二成長枝7に養分が行き渡るようにする。肥料管理やホルモン剤の葉面散布などにより調節することにより、第一成長枝2と第二成長枝7を確実に成長させることができる。
第一成長枝2の花房(果房)に結実した収穫適期の果菜8は下段の果房に結実したものから順次収穫する。第二成長枝7を成長させながら第二成長枝7の果房に結実して収穫適期となった果菜8も下段の花房に結実したものから順次収穫する。二本の枝を、前記成長日数差を持って成長させることにより、第一成長枝2の5段目(最上段)の果房に結実した果菜8の収穫と、第二成長枝7の一段目(最下段)の果房に結実した果菜8の収穫を同時期に行うことができ、空白期間のない連続的な果菜収穫を実現できる。
第一成長枝2は最上段の果菜8の収穫後、その根元付近Bから切断する(図2(b)、(c))。この切断の少し前又は少し後に前記第二成長枝7(先枝)から出る芽を第三成長枝11(後枝)として成長を開始させる。第三成長枝11は、苗1から出る芽のうち任意の芽を選択して成長させることもできる。この場合、なるべく栽培床Aに近い芽(苗1の下方から出る芽)を選択するのが好ましい。前記第二成長枝7と第三成長枝11の成長日数差も前記第一成長枝2と第二成長枝7の成長日数差と同様の日数差とするのがよい(図2(c))。前記第三成長枝11は切断された第一成長枝2が誘引されていた支持材4a(成長中或いは収穫中の第二成長枝7とは栽培床Aの幅方向反対側の支持材)に誘引する(図2(d))。これにより、第二成長枝7と第三成長枝11との間に間隔9を十分に確保することができる。
前記第二成長枝7、第三成長枝11の成長中は前記苗1や第二成長枝7から出る芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止め、苗1や成長中の第二成長枝7と第三成長枝11に養分が行き渡るようにする。第三成長枝11を成長させながらそれに結実した果菜8を下段の果房に結実したものから順次収穫する。
本願発明では、前記第二成長枝7はその最上段の果菜8の収穫終了後にその成長開始点付近Cから切断する(図2(d))。この切断の少し前又は少し後に前記第三成長枝11から出る芽を第四成長枝12として前記成長日数差を持って成長を開始させる(図2(d))。第三成長枝11の場合同様、第四成長枝12も苗1から出る芽のうち、任意の芽を選択して成長させることができる。その後、前記第一成長枝2と第二成長枝7、第二成長枝7と第三成長枝11の場合と同様に、成長日数差をもって先枝と後枝を成長させ、それらの果菜8を収穫し、収穫後の枝を切断する、という工程を繰り返して果菜植物を栽培する。これにより、果菜8を連続的に空白期間なく収穫することができるので果菜8の収量向上を図ることができる。
本願発明の果菜植物栽培方法の第2の実施形態は、基本的には前記実施形態1に示した栽培方法と同様であり、異なるのはその誘引方法である。この実施形態は、成長日数差を持って成長させる二本の枝を、図4(a)(b)に示すように苗1の植付け方向に沿って間隔をあけて支持材4に誘引する場合の一例である。図4(a)は栽培床Aの各苗1の二本の枝を支持材4aに間隔9をあけて誘引した場合の例であり、図4(b)は栽培床Aの複数本の苗1のうち、図中手前に定植されている苗1から前記成長日数差で成長させる二本の枝を栽培床Aの幅方向一方(左側)の支持材4aに誘引し、その苗1の隣の苗1から前記日数差で成長させる二本の枝を栽培床Aの幅方向反対側(右側)の支持材4bに誘引した場合の例である。この実施形態では便宜上、第一成長枝2と第二成長枝7についてのみ説明したが、第三成長枝11以降の枝の成長についても実施形態1と同様に所定の成長日数差をもって成長させ、それらの枝を図4(a)又は4(b)に示す方法で誘引して成長させる。
本願発明の果菜植物栽培方法の第3の実施形態を図5に基づいて説明する。この実施形態は苗1から複数本の枝を実施形態1と同様の成長日数差で成長させ、それらの枝を、図5(b)に示すように苗1を中心とする四角形の領域を想定して、その四角形の各点上方に向けて等間隔で誘引する場合の例である。具体的には図5(a)に示すように栽培床Aに定植した一本の苗1から出る第一成長枝2を栽培床Aの幅方向一方の支持材(ここでは栽培床Aの幅方向左側の支持材4a)のP方向に誘引し、次に成長を開始する第二成長枝7を栽培床Aの幅方向他方(ここでは栽培床Aの幅方向右側の支持材4b)のQ方向(前記P方向と苗1を結んだ対角線上の反対側)に誘引し、その後に成長を開始する第三成長枝11(図示しない)を前記支持材4aのR方向(前記P方向の側方)に誘引し、その後に成長を開始する第四成長枝12(図示しない)を前記支持材4bのS方向(前記Q方向の側方)に誘引して第一成長枝2から第四成長枝12まで順次等間隔で誘引する方法である。このように苗1からでる枝を四方に誘引することにより、前記枝の間隔9を広く確保することができ、栽培床Aの上方空間を有効活用することができる。誘引箇所、誘引方向、誘引順序等については前記例に限定されることはなく、作業性や日当たり等の面から他の方法で行なうこともできる。また、各枝の間隔9を広く確保できる限り、三方向や五方向以上に誘引することもできる。この実施形態では、便宜上、第一成長枝2から第四成長枝12についてのみ説明したが、それ以降の枝の成長についても実施形態1と同様に所定日数差で成長を開始させ、それらの枝を前記と同様の方向、順序で繰り返し誘引することができる。
本願発明の果菜植物栽培方法の第4の実施形態を図6に基づいて説明する。この実施形態は基本的には前記実施形態1〜3と同様であり、異なるのは、後枝の成長と並行して一又は二以上の他の芽を予備枝14として成長させることにある。予備枝14を並存させることにより、仮に後枝が順調に育たなくても予備枝14を後枝の代替枝として育てることができ、空白期間なく果菜8の収穫をすることができる。予備枝14は、後枝が順調に成長した場合には摘心して成長を止めることもできる。これにより、後枝に栄養が行き渡り、後枝が順調に成長する。
本願発明の果菜植物栽培方法の第5の実施形態は、基本的には前記実施形態1〜4と同様であり、異なるのは複数の苗1を一列の栽培床Aの幅方向に位置をずらして千鳥配列に定植することにある。この場合、栽培床Aの幅方向右側に定植した苗1から成長する枝は栽培床Aの右側上方の支持材4bに、幅方向左側に定植した苗から成長する枝は栽培床Aの左側上方の支持材4aに誘引し易く、一列の栽培床Aにその長手方向に間隔9をあけて定植する苗1の株間を狭くしても、隣接する苗1から成長する枝の間隔9を十分広く確保することができ、隣接する枝間の通風性、採光性が良好になる。
本願発明の果菜植物栽培方法は、各種果菜植物に適用でき、土耕栽培・水耕栽培のいずれにも、農業用ハウス栽培・露地栽培のいずれにも応用することができる。栽培する植物もトマト以外の果菜植物、例えば、ピーマン、ナス、キュウリ、ウリ等のウリ科の植物やナス科の植物とすることもできる。また、前記実施形態では二本仕立て、四本仕立ての場合について説明したが、枝の本数は任意数とすることができ、三本に仕立てることも、五本以上に仕立てることもできる。また、説明の便宜上、前記実施形態1乃至5は最上段を5段目とした場合を一例として説明したが、最上段は5段以上にすることも5段以下にすることもできる。この場合も、前記成長日数差をもって各枝の成長を開始させるようにする。
2 第一成長枝
4、4a、4b 支持材
5 誘引具
6 連結材
7 第二成長枝
8 果菜
9 (枝同士の)間隔
9a (側方仕切りシートと第一成長枝の間の)空間
9b (側方仕切りシートと第二成長枝の間の)空間
10 仕切りシート
10a、10b 側方仕切りシート
11 第三成長枝
12 第四成長枝
14 予備枝
A 栽培床
B 第一成長枝切断箇所
C 第二成長枝切断箇所
Claims (4)
- 定植された一本の苗から出る枝(先枝)を一本成長させ、前記苗から出た他の枝(後枝)の成長を前記枝の成長開始から所定日数遅れて開始させ、
前記先枝の成長途中までは、前記苗から出る他の芽や葉などは芽掻き、葉掻きして成長を止めておき、
前記後枝は、前記前枝の最上段又はその近くの段の花房の開花時に、後枝の最下段又はその近くの段の花房が開花する成長日数差で成長を開始させ、
成長する前枝と後枝を、間隔をあけて誘引し、
前枝の最上段又はその近くの段の花房に結実した果菜及び後枝の最下段又はその近くの段の花房に結実した果菜を収穫し、
前記前枝の最上段又はその近くの段の花房に結実した果菜まで収穫してから当該前枝をその根元付近から切断し、
前記苗又は後枝から出る新たな枝(新枝)を、前記切断の少し前又は少し後に、前記成長日数差と同様の成長日数差をもって成長を開始させ、
成長する前記後枝と前記新枝を、間隔をあけて誘引し、
前記後枝と新枝の成長途中までは、前記苗や前記後枝から出る芽や葉などは芽掻き葉掻きして成長を止めておき、
前記後枝の最上段又はその近くの段の花房に結実した果菜及び前記新枝の最下段又はその近くの段の花房に結実した果菜を収穫し、
前記後枝の最上段又はその近くの段の花房に結実した果菜まで収穫してから当該後枝をその根元付近から切断し、
以下、前記苗又は前記新枝から出る後続枝を前記工程と同様に、前記成長日数差を持たせての成長開始、両成長枝の間隔をあけての誘引、前記苗又は新枝から出る他の芽の芽掻き他の葉の葉掻き、先に成長開始した新枝の最上段又はその近くの段の果菜及び後から成長開始した後続枝の最下段又はその近くの段の果菜の収穫、当該新枝の切断、前記苗又は新枝から出る新たな後続枝の前記成長日数差を持たせての成長開始を繰り返して、一本の苗を栽培することを特徴とする果菜植物栽培方法。 - 請求項1記載の果菜植物栽培方法において、
後から成長開始させる枝は、先に成長開始した枝の2乃至7段目のいずれかの花房が開花する程度の成長日数差を持って成長を開始させることを特徴とする果菜植物栽培方法。 - 請求項1又は請求項2記載の果菜植物栽培方法において、
定植された一本の苗から出る後枝用の芽と予備芽の双方を育成し、後枝用の芽が順調に成育しないときは予備芽を後枝として成長開始させることを特徴とする果菜植物栽培方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の果菜植物栽培方法において、
成長させる先枝と後枝は、栽培床の幅方向反対側に間隔をあけて、又は苗の植え付け方向に間隔をあけて、又は苗の周囲の任意方向に間隔をあけて誘引することを特徴とする果菜植物栽培方法。
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