JP5098552B2 - 2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品 - Google Patents

2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品 Download PDF

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Description

本発明は、2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品に関し、さらに詳しくは、フェライト相とマルテンサイト相とを含み、強度及び耐食性に優れた2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品に関する。
オーステナイト系ステンレス鋼は、一般に、フェライト系ステンレス鋼よりも耐食性、強度、溶接性などに優れているが、Niを多量に含んでいるので、フェライト系ステンレス鋼よりも高価である。一方、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼よりも耐食性や強度が劣るため、使用環境が限定される。そのため、ある種の用途においては、低コストで、かつ、オーステナイト系ステンレス鋼と同等の耐食性及び強度を有する鋼種が求められている。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、C:0.1〜超0.3wt%、Si:0.30〜0.52wt%、Mn:1.0超〜1.15wt%、Cr:16.5〜17.2wt%、Ni:0.10〜0.13wt%、P:0.01〜0.02wt%、S:0.002〜0.003wt%、N:0.02〜0.03wt%、O:0.002〜0.004wt%、Al:0.01〜0.14wt%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、全体積の30〜80%がマルテンサイトである中炭素フェライト・マルテンサイト複合組織ステンレス鋼が開示されている。
同文献には、Crを15wt%以上にすることによって、NiレスでSUS430並の耐食性を確保することができる点が記載されている。
特開平4−99150号公報
フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させるためには、Crの増量が有効である。しかしながら、単にCrを増量させるだけでは、強度の改善が図れない。
一方、組織をフェライトとマルテンサイトとを含む2相組織とすると、強度を改善することができる。しかしながら、2相組織を有する材料であっても、成分元素が適切でないと、耐食性の低下、強度の低下、あるいは、強度が高くなりすぎることによる冷間加工性や熱間加工性の低下を引き起こす。
本発明が解決しようとする課題は、耐食性及び強度に優れた2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、低コストであり、加工性に優れた2相ステンレス鋼、並びに、これを用いた条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る2相ステンレス鋼は、
0.080≦C≦0.120mass%、
0.20≦Si≦1.0mass%、
1.50≦Mn≦3.00mass%、
P≦0.040mass%、
S≦0.010mass%、
0.5≦Ni≦1.0mass%、
19.0≦Cr≦21.5mass%、
0.5≦Cu≦1.0mass%、及び、
N<0.03mass%、
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
フェライト相より高硬度であるマルテンサイト相の面積率が7〜60%であり、
残留オーステナイト量が3%以下であり、
次の(1)式及び(2)式を満たすことを要旨とする。
3.6≦X≦5.2 ・・・(1)
4.0≦Y≦5.5 ・・・(2)
但し、X={Cr}/{Ni}
{Ni}=[Ni]+0.3[Cu]+0.5[Mn]+25[N]+30[C]
{Cr}=[Cr]+1.5[Mo]+2[Si]+1.5[Ti]+5.5[Al]+5[V]+1.75[Nb]+0.75[W]
Y=[C]×1000/[Cr]
[]は、各元素のmass%を表す。
また、本発明に係る条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品は、本発明に係る2相ステンレス鋼を用いたことを要旨とする。
本発明に係る2相ステンレス鋼は、従来の鋼種に比べてCr量が多いので、耐食性が高い。また、これに伴い、Mn、Ni、Crなどのオーステナイト形成元素を増量し、マルテンサイトを生成させているので高強度が得られる。さらに、フェライト形成元素とオーステナイト形成元素をバランス良く添加しているので、マルテンサイト相を面積率にして7〜60%含んでいる。そのため、耐食性及び強度の双方について、良好な特性が得られる。しかも、Niを多量に含まないので、低コストである。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 2相ステンレス鋼]
[1.1 成分元素]
本発明に係る2相ステンレス鋼は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。添加元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(1) 0.080≦C≦0.120mass%。
Cは、高強度を得るために重要な元素であり、C含有量が少なすぎると、十分なマトリックス強度が得られない。従って、C含有量は、0.080mass%以上が好ましい。
一方、C含有量が過剰になると、炭化物の量が多くなるため、耐食性を劣化させる。従って、C含有量は、0.120mass%以下が好ましい。C含有量は、さらに好ましくは、0.100mass%以下である。
(2) 0.20≦Si≦1.0mass%。
Siは、鋼の脱酸剤として添加する。このような効果を得るためには、Si含有量は、0.20mass%以上が好ましい。
一方、Si含有量が過剰になると、靱性の低下を招くだけでなく、鋼の熱間加工性を低下させる。従って、Si含有量は、1.0mass%以下が好ましい。特に、冷間加工性を重視する場合には、Si含有量は、0.5mass%以下が好ましい。
(3) 1.50≦Mn≦3.00mass%。
Mnは、Ni当量を大きくし、強度上昇に寄与するマルテンサイト生成に必要な元素である。十分なマルテンサイト量を確保するためには、Mn含有量は、1.50mass%以上が好ましい。
一方、Mn含有量が過剰になると、加工硬化能が上昇し、冷間加工性を阻害する。従って、Mn含有量は、3.00mass%以下が好ましい。Mn含有量は、さらに好ましくは、2.0mass%以下である。
(4) P≦0.040mass%。
Pは、粒界に偏析し、粒界腐食感受性を高めるほか、靱性の低下を招くため、低い方が好ましい。しかしながら、必要以上の低減は、コストの上昇を招く。従って、P含有量は、0.040mass%以下が好ましい。P含有量は、さらに好ましくは、0.030mass%以下である。
(5) S≦0.010mass%。
Sは、熱間加工性を低下させるため、極力抑制すべきである。そのためには、S含有量は、0.010mass%以下が好ましい。製造コストとの兼ね合いであるが、S含有量は、さらに好ましくは、0.005mass%以下である。
(6) 0.5≦Ni≦1.0mass%。
Niは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効である。このような効果を得るためには、Ni含有量は、0.5mass%以上が好ましい。
一方、Ni含有量が過剰になると、コストの上昇を招く。従って、Ni含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Ni含有量は、さらに好ましくは、0.7mass%以下である。
(7) 19.0≦Cr≦21.5mass%。
Crは、耐食性を確保する上で必須の元素である。十分な耐食性を得るためには、Cr含有量は、19.0mass%以上が好ましい。
一方、Cr含有量が過剰になると、熱間加工性を害すると同時に、σ相の析出による靱性の低下を招く。従って、Cr含有量は、21.5mass%以下が好ましい。耐食性が十分確保でき、靱性の劣化を抑制するためには、Cr含有量は、さらに好ましくは、20.0mass%以下である。
(8) 0.5≦Cu≦1.0mass%。
Cuは、耐食性、特に還元性酸環境中での耐食性を向上させるのに有効である。また、加工硬化能を低下させ、冷間加工性を向上させる。さらに、抗菌性についても、熱処理などを施すことにより向上させることができる。このような効果を得るためには、Cu含有量は、0.5mass%以上が好ましい。
一方、Cu含有量が過剰になると、熱間加工性を劣化させる。従って、Cu含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Cu含有量は、さらに好ましくは、0.7mass%以下である。
(9) N<0.03mass%。
Nは、冷間加工性や切削性を劣化させる窒化物を形成することから極力低く抑制すべきである。そのためには、N含有量は、0.03mass%未満が好ましい。製造コストとの兼ね合いであるが、N含有量は、さらに好ましくは、0.020mass%以下、さらに好ましくは、0.015mass%以下である。
[1.2 マルテンサイト相の面積率及び残留オーステナイト量]
本発明に係る2相ステンレス鋼は、成分元素が上述の範囲にあることに加えて、フェライト相より高硬度であるマルテンサイト相の面積率が7〜60%であることを特徴とする。
マルテンサイト相の面積率が小さすぎると、高強度が得られない。従って、マルテンサイト相の面積率は、7%以上が好ましい。
一方、マルテンサイト相の面積率が大きすぎると、耐食性の劣化を招く。従って、マルテンサイト相の面積率は、60%以下が好ましい。
なお、「マルテンサイト相の面積率」とは、ミクロ組織を倍率100倍で観察したときの、1視野に含まれるマルテンサイト相の面積の割合をいう。
本発明において、マルテンサイト相以外の部分は、通常、フェライト相であるが、成分によっては、若干、オーステナイト相が残留する場合がある。高強度を得るためには、残留オーステナイト量は、3%以下が好ましい。
なお、「残留オーステナイト量」とは、X線回折により測定されたフェライト相の(200)面及び(211)面と、オーステナイト相の(200)面、(220)面及び(311)面との積分強度比を用いて算出した体積率をいう。
[1.3 成分バランス]
本発明に係る2相ステンレス鋼は、成分元素、マルテンサイト相の面積率、及び、残留オーステナイト量が上述の範囲にあることに加えて、次の(1)式及び(2)式を満たすことを特徴とする。
3.6≦X≦5.2 ・・・(1)
4.0≦Y≦5.5 ・・・(2)
但し、X={Cr}/{Ni}
{Ni}=[Ni]+0.3[Cu]+0.5[Mn]+25[N]+30[C]
{Cr}=[Cr]+1.5[Mo]+2[Si]+1.5[Ti]+5.5[Al]+5[V]+1.75[Nb]+0.75[W]
Y=[C]×1000/[Cr]
[]は、各元素のmass%を表す。
Xは、フェライト形成元素と、オーステナイト形成元素のバランスを表す。Xが大きすぎる(すなわち、フェライト形成元素が相対的に過剰になる)と、十分なマルテンサイト量を確保できず、十分な強度が得られない。従って、Xは、5.2以下が好ましい。
一方、Xが小さすぎる(すなわち、オーステナイト形成元素が相対的に過剰になる)と、マルテンサイト量が過剰となり、靱性の劣化を招く。従って、Xは、3.6以上が好ましい。
Yは、マトリックスの耐食性と強度のバランスの指標となる。Cが過剰となった結果、Yが大きくなりすぎると、炭化物が多くなり、耐食性が劣化する。また、Crが過少となった結果、Yが大きくなりすぎると、マトリックス中のCr量が少なくなり、十分な耐食性が得られない。従って、Yは、5.5以下が好ましい。
一方、Cが過少となった結果、Yが小さくなりすぎると、Cの固溶強化が不十分となり、必要なマトリックス強度が得られない。また、Crが過剰となった結果、Yが小さくなりすぎると、十分なマルテンサイト量を確保できず、強度不足となる。従って、Yは、4.0以上が好ましい。
[1.4 その他の元素]
本発明に係る2相ステンレス鋼は、上述した元素に加えて、以下のいずれか1以上の元素をさらに含んでいても良い。
(10) 0.1≦Mo≦1.0mass%。
Moは、耐食性の向上に寄与する。また、Moは、フェライト形成元素であるが、マトリックス中に固溶し、マトリックスを固溶強化させる作用がある。すなわち、Moは、強度を低下させることなく、耐食性をさらに向上させることができる。このような効果を得るためには、Mo含有量は、0.1mass%以上が好ましい。Mo含有量は、さらに好ましくは、0.2%以上である。
一方、Mo含有量が過剰になると、熱間加工性を害するだけでなく、コストの上昇を招く。従って、Mo含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Mo含有量は、さらに好ましくは、0.5mass%以下である。
(11) 0.0005≦B≦0.0050mass%。
Bは、粒界強度を高め、鋼の熱間加工性を向上させることができる。このような効果を得るためには、B含有量は、0.0005mass%以上が好ましい。
一方、B含有量が過剰になると、ホウ化物を形成し、熱間加工性を低下させる。従って、B含有量は、0.0050mass%以下が好ましい。B含有量は、さらに好ましくは、0.0030mass%以下、さらに好ましくは、0.0020mass%以下である。
(12) 0.20≦Al≦0.80mass%。
Alは、強力な脱酸元素であり、Oを極力低減するため、又は、耐酸化性を改善するために必要に応じて添加する。このような効果を得るためには、Al含有量は、0.20mass%以上が好ましい。
一方、Al含有量が過剰になると、熱間加工性を低下させる。従って、Al含有量は、0.80mass%以下が好ましい。Al含有量は、さらに好ましくは、0.50mass%以下である。
(13) O≦0.030mass%。
Oは、冷間加工性や切削性に有害な酸化物を形成することから、極力低く抑制すべきである。そのためには、O含有量は、0.030mass%以下が好ましい。製造コストとの兼ね合いであるが、O含有量は、さらに好ましくは、0.015mass%以下、さらに好ましくは、0.010mass%以下である。
(14) 0.01≦Co≦0.6mass%。
Coは、固溶強化により、高強度を得ることができる。このような効果を得るためには、Co含有量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、Co含有量が過剰になると、コストの上昇を招く。従って、Co含有量は、0.6mass%以下が好ましい。Co含有量は、さらに好ましくは、0.3mass%以下である。
(15) 0.01≦Nb≦0.6mass%。
(16) 0.01≦Ti≦0.6mass%。
(17) 0.01≦V≦0.6mass%。
(18) 0.01≦W≦0.6mass%。
(19) 0.01≦Ta≦0.6mass%。
(20) 0.01≦Hf≦0.6mass%。
Nb、Ti、V、W、Ta、Hfは、炭窒化物を形成して鋼の結晶粒を微細化し、強靱性を高める効果がある。このような効果を得るためには、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.01mass%以上が好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、コストの上昇を招く。従って、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.6mass%以下が好ましい。これらの元素の含有量は、さらに好ましくは、それぞれ、0.3mass%以下である。
なお、Nb、Ti等は、いずれか1種を添加しても良く、あるいは、2種以上を添加しても良い。
(21) 0.0001≦Ca≦0.0100mass%。
(22) 0.0001≦Mg≦0.0100mass%。
(23) 0.0001≦REM≦0.0100mass%。
Ca、Mg、REMは、いずれも鋼の熱間加工性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を得るためには、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.0001mass%以上が好ましい。
一方、これらの元素の含有量が過剰になると、効果が飽和するだけでなく、逆に熱間加工性を低下させる。従って、これらの元素の含有量は、それぞれ、0.0100mass%以下が好ましい。これらの元素の含有量は、さらに好ましくは、それぞれ、0.0050mass%以下である。
なお、REMとは、Ce、La、あるいはそれらの合金からなる。また、Ca、Mg等は、いずれか1種を添加しても良く、あるいは、2種以上を添加しても良い。
[1.5 強度]
上述したように各成分の含有量及び成分バランスを最適化すると、オーステナイト系ステンレス鋼と同等の強度及び耐食性を有する2相ステンレス鋼が得られる。
各成分の含有量及び成分バランスを最適化すると、引張強度が530MPa以上である2相ステンレス鋼が得られる。
[2. 条鋼、鋼線、線材、鋼製部品]
本発明に係る条鋼、鋼線、線材、及び、鋼製部品は、本発明に係る2相ステンレス鋼を用いたことを特徴とする。鋼製部品としては、具体的には、電子機器部品(例えば、電子機器用シャフトなど)、建材用の釘やネジ、バネ、シャフト、ボルト、厨房雑貨、キッチン用籠などがある。
[3. 2相ステンレス鋼及びこれを用いた条鋼等の作用]
本発明に係る2相ステンレス鋼は、従来の鋼種に比べてCr量が多いので、耐食性が高い。また、これに伴い、Mn、Ni、Crなどのオーステナイト形成元素を増量し、マルテンサイトを生成させているので高強度が得られる。さらに、フェライト形成元素とオーステナイト形成元素をバランス良く添加しているので、マルテンサイト相を面積率にして7〜60%含んでいる。そのため、耐食性及び強度の双方について、良好な特性が得られる。
さらに、本発明に係る2相ステンレス鋼は、Niを多量に含まないので、低コストである。また、所定の元素に加えて、さらに適量のMoを添加すると、強度を低下させることなく、耐食性を向上させることができる。さらに、各成分の添加量及び成分バランスを最適化することによって、適正な強度を維持できるので、加工性にも優れている。
(実施例1〜17、比較例1〜10)
[1. 試料の作製]
所定の比率で配合された原料を高周波誘導炉にて溶解し、冷却して50kgのインゴットを作製した。各インゴットを1000〜1200℃に加熱し、熱間鍛造により20mmの丸棒に加工した。この丸棒をさらに800℃で4時間加熱した後、空冷(焼き鈍し処理)し、各試験に供した。表1及び表2に、得られたインゴットの成分を示す。
Figure 0005098552
Figure 0005098552
[2. 試験方法]
[2.1 引張試験]
丸棒からJIS4号試験片を切り出し、引張試験を行った。
[2.2 塩水噴霧試験]
丸棒からφ10×50mmの円柱状試験片を切り出し、表面を#400まで研磨仕上げした。これを用いて、35℃、5%塩化ナトリウム水溶液噴霧環境中で、96時間の暴露試験を行った。試験後、試験片表面に生じた錆の面積の割合(発錆率)を算出した。
[2.3 マルテンサイト相の面積率]
エッチング後にミクロ組織を倍率100倍にて撮影し、エッチング腐食により変色している相(マルテンサイト相)を画像解析処理により色抽出し、1視野あたりの面積率を測定した。
[2.4 残留オーステナイト量]
X線回折により、フェライト相の(200)面及び(211)面、並びに、オーステナイト相の(200)面、(220)面及び(311)面の積分強度を測定した。残留オーステナイト量は、フェライト相の積分強度に対するオーステナイト相の積分強度の強度比から算出した体積率として求めた。
[3. 結果]
表3に、試験結果を示す。比較例1(SUS430相当)、比較例2(SUS434相当)、比較例3(SUS444相当)、及び、比較例4は、いずれもX値が高く、かつ、Y値が低いために、強度が低い。また、比較例1、2は、Cr量が少ないために、耐食性が低い。比較例5は、Y値が高いために、強度は高いが耐食性が低い。比較例6は、低Crであるため、耐食性が低い。比較例7は、高Crであるため、強度が低い。さらに、比較例8〜10は、Y値が高いために、耐食性が低い。
これに対し、実施例1〜27は、成分元素の添加量及びそのバランスが最適化されているために、強度が高く、耐食性にも優れている。また、適量のMoを添加すると、強度を低下させることなく、耐食性が向上することがわかった。
Figure 0005098552
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る2相ステンレス鋼は、電子機器部品、電子機器用シャフト、建材用の釘やネジ、バネ、シャフト、厨房雑貨などの各種の鋼製部品として用いることができる。

Claims (12)

  1. 0.080≦C≦0.120mass%、
    0.20≦Si≦1.0mass%、
    1.50≦Mn≦3.00mass%、
    P≦0.040mass%、
    S≦0.010mass%、
    0.5≦Ni≦1.0mass%、
    19.0≦Cr≦21.5mass%、
    0.5≦Cu≦1.0mass%、及び、
    N<0.03mass%、
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    フェライト相よりも高硬度であるマルテンサイト相の面積率が7〜60%であり、
    残留オーステナイト量が3%以下であり、
    次の(1)式及び(2)式を満たす2相ステンレス鋼。
    3.6≦X≦5.2 ・・・(1)
    4.0≦Y≦5.5 ・・・(2)
    但し、X={Cr}/{Ni}
    {Ni}=[Ni]+0.3[Cu]+0.5[Mn]+25[N]+30[C]
    {Cr}=[Cr]+1.5[Mo]+2[Si]+1.5[Ti]+5.5[Al]+5[V]+1.75[Nb]+0.75[W]
    Y=[C]×1000/[Cr]
    []は、各元素のmass%を表す。
  2. 引張強度が530MPa以上である請求項1に記載の2相ステンレス鋼。
  3. 0.1≦Mo≦1.0mass%
    をさらに含む請求項1又は2に記載の2相ステンレス鋼。
  4. 0.0005≦B≦0.0050mass%、及び、
    0.20≦Al≦0.80mass%
    のいずれか1以上をさらに含む請求項1から3までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼。
  5. O≦0.030mass%
    をさらに含む請求項1から4までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼。
  6. 0.01≦Co≦0.6mass%
    をさらに含む請求項1から5までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼。
  7. 0.01≦Nb≦0.6mass%、
    0.01≦Ti≦0.6mass%、
    0.01≦V≦0.6mass%、
    0.01≦W≦0.6mass%、
    0.01≦Ta≦0.6mass%、及び、
    0.01≦Hf≦0.6mass%
    のいずれか1以上をさらに含む請求項1から6までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼。
  8. 0.0001≦Ca≦0.0100mass%、
    0.0001≦Mg≦0.0100mass%、及び、
    0.0001≦REM≦0.0100mass%、
    のいずれか1以上をさらに含む請求項1から7までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼。
  9. 請求項1から8までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼を用いた条鋼。
  10. 請求項1から8までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼を用いた鋼線。
  11. 請求項1から8までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼を用いた線材。
  12. 請求項1から8までのいずれかに記載の2相ステンレス鋼を用いた鋼製部品。
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