JP5096878B2 - 免震建物 - Google Patents
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Description
しかしながら、免震装置は一般的には引張抵抗力が小さいから、建物上部構造部の浮き上がりを防止し、免震装置に大きな引抜力が作用しないようにすることが必要となる。
そこで、この種の免震建物形成技術としては、図9、図10に示すように、建物下部構造部Baから免震層Bcの上層階空間まで立ち上がる状態に支柱20を設け、支柱20の上端部には、建物上部構造部Bbの最下段梁21の上方位置まで突出する片持ち梁部22を設け、この片持ち梁部22と、その下方の建物上部構造部Bbの最下段梁21との間に引抜力の発生に伴って圧縮力を受ける状態に浮き上がり防止用免震装置23を設け、これら支柱20と片持ち梁部22と前記最下段梁21と浮き上がり防止用免震装置23とによって、浮き上がり防止手段Hを構成してあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
また、前記浮き上がり防止手段は、免震層、及び、その上層階の空間まで達する複数の強度部材で構成されているから、この上層階空間を大きく占用することとなり、建物としての実質的な床面積が少なくなる問題点がある。
また、従来のように、高価な浮き上がり防止用免震装置を設置せずに、鉄筋コンクリート造や鉄骨造による一般的な構造部材を使用して浮き上がり防止手段を構成することができるから、建物コストの低減化を図ることが可能となる。
更には、浮き上がり防止手段そのものは、建物下部構造部と建物上部構造部との間に配置しやすいから、従来のように、免震層の上層階空間を浮き上がり防止手段によって占用して実質的な床面積が減少することを防止でき、より広く建物を使用することが可能となる。
また、建物下部構造部と建物上部構造部との相対的な横揺れが大きいほど、建物下部構造部と建物上部構造部との上下離間移動に対する拘束力の増加を図ることができ、横揺れの度合いに応じた建物上部構造部の浮き上がり防止を図ることが可能となる。
即ち、両係合構造部は、前記建物下部構造部と建物上部構造部とに振り分けて設けてあるから、例えば、地震等の発生に伴って建物下部構造部と建物上部構造部とが相対的に横揺れした場合、両係合構造部そのものも、相対的に横揺れすることになる。そして、その横方向への相対的な近接移動に伴って、一対の係合構造部が係合して、互いの上下方向への離間移動を拘束する。その一対の係合構造部が係合する際には、互いの係合が深まるに連れて前記建物下部構造部と建物上部構造部とを近接させる方向に傾斜した傾斜面として係合接当面を構成してあるから、その傾斜面に誘導されながら係合が深まるにつれて、前記建物下部構造部と建物上部構造部とを上下方向に近接させることができる。その結果、横方向への移動が大きいほど、上下方向への近接力も大きくなり、横揺れの度合いに応じた建物上部構造部の浮き上がり防止を図ることが可能となる。
また、前記係合接当面を上述のような傾斜面としてあることによって、両係合構造部どうしの係合が始まる位置での係合開先部の開口寸法を大きく確保することができ、例えば、横揺れに伴って両係合構造部どうしの係合が始まる前に、前記建物下部構造部と建物上部構造部との上下方向の多少の離間が発生していても、両係合構造部どうしの係合を可能とすることが可能となる。即ち、免震装置に対する引抜緩和をより確実に叶えることが可能となる。
また、当該免震建物Bは、平面形状が扁平な矩形形状で、且つ、短辺方向の建物幅寸法に比べて、高さ寸法が極めて大きな設計となっており、アスペクト比が大きいから、地震等の横揺れに伴って転倒モーメントが作用し易い構造となっている。従って、転倒モーメントの作用によって建物上部構造部Bbの一方が浮き上がろうとするのを防止し、前記免震装置Mに発生する引抜力の緩和を図る浮き上がり防止手段Hが設けられている。但し、当該実施形態においては、建物平面での短辺方向の揺れに伴って、特に大きな引抜力が免震装置Mに作用することが懸念され、前記浮き上がり防止手段Hは、特に大きな引抜力が作用する平面短辺方向での一端部側に位置する各免震装置Mを対象として、引抜力の緩和を図るように構成されている。
そして、免震ピット構造部2における支持杭1の直上部分には、前記免震装置Mがそれぞれ設置されている。
そして、その最下端部分は、前記複数の免震装置Mによって支持されており、地震等の横揺れに対しては、地盤からの振動を前記免震装置Mによって長周期化して建物上部構造部Bbに伝達することによる免震効果を発揮できるように構成されている。
更に詳しく説明すると、前記係合構造部3は、前記建物下部構造部Baに対して一体に形成されている第1係合構造部3aと、前記建物上部構造部Bbに対して一体に形成されている第2係合構造部3bとで構成されている。これら両係合構造部3は、建物平面短辺方向に沿って間隔をあけて配置されており、互いに係合自在なフック形状に形成してある。従って、通常時には、図2に示すように、両者は離間した位置に存在しているものの、地震等による横揺れで建物下部構造部Baと建物上部構造部Bbとが近接するに伴って、図5、図6に示すように係合する。この両者が係合することによって、両係合構造部3どうしの上下方向への離間をロックすることができる。
そして、前記第1フック部4aの下面は、第2係合構造部3bとの係合接当面4bとなるものであり、第1フック部4aの基端部より先端側ほど上方に位置する傾斜平面として構成されている。この係合接当面4bには、硬質ポリスチレン製の緩衝ボードPを貼設してあり、両係合構造部どうしが接当する際の衝撃を緩和できるように構成されている。
更には、第1フック部4aと建物下部構造部Baとの離間寸法(以後、開口寸法という)は、後述する第2係合構造部3bの第2フック部5aが、上下に余裕を持って係入できるように寸法設定されている。
そして、前記第2フック部5aの上面は、第1係合構造部3aとの係合接当面5bとなるものであり、第2フック部5aの基端部より先端側ほど下方に位置する傾斜平面として構成されている。更には、第2フック部5aと建物上部構造部Bbとの離間寸法(以後、開口寸法という)は、前記第1係合構造部3aの第1フック部4aが、上下に余裕を持って係入できるように寸法設定されている。
尚、第1係合構造部3aと建物上部構造部Bbとの間のクリアランス、及び、第2係合構造部3bと建物下部構造部Baとの間のクリアランスは、前記免震装置Mのクリープ変形をも加味して設定されている。即ち、免震装置Mのクリープ変形によって高さが減少しても、第2係合構造部3b(又は、第1係合構造部3a)と建物下部構造部Ba(又は、建物上部構造部Bb)とが接触しないようにしてあり、地震等による横揺れ時に、前記免震装置による免震機能の発揮を阻害しないように考慮されている。
尚、前記係合接当面が、上述のように傾斜平面として形成してあるから、フック部先端での前記開口寸法が、その開口に進入してくるフック部の縦厚み寸法より大きくなり、建物下部構造部Baに対して建物上部構造部Bbが多少浮き上がったにしても、両係合構造部どうしの係合代を確保でき、両者をより確実に係合させることが可能となる(図6参照)。
更には、両係合接当面どうしが接当してから更に横揺れによって係合が深まる方向に移動すると、係合接当面の傾斜によって、前記建物下部構造部Baと建物上部構造部Bbとを近接させる方向のベクトルが生まれ、より強力に建物の転倒モーメントを抑制することが可能となる。
また、当該実施形態においては、図3に示すように、第1係合構造部3aにおける建物平面長辺方向の幅寸法は、第2係合構造部3bの幅寸法より大きく形成してあり、地震等による横揺れの平面方向が、建物平面短辺方向のみならず、他の方向に沿ったものであっても、双方が係合できるように考慮されている。
このダンパーDは、一端側は、前記第1係合構造部3aに取り付けてあり、他端側は、建物上部構造部Bbから下方に突出する状態に形成されたダンパー固定部7に取り付けられている。従って、地震等による建物の横揺れに対して、このダンパーDによるダンパー効果を期待することができる。
また、浮き上がり防止手段Hとしては、鉄筋コンクリート造や鉄骨造による係合構造部で構成することができるから、特に高価なものを使用せずに、経済的に引抜力の緩和を図ることが可能となる。
更には、浮き上がり防止手段Hそのものは、免震ピット内に設置してあるから、他の階層の床面積を制限することが無く、より広く建物を使用することが可能となる。
以下に他の実施の形態を説明する。
例えば、素材に関しては、第1係合構造部3aが鉄筋コンクリート造で、第2係合構造部3bが鉄骨造に限るものではなく、何れもが、鉄筋コンクリート造であったり、又は、鉄骨造であってもよい。
また、構造に関しては、前記フック部に関して、第1・第2の両係合構造部とも、係合接当面を傾斜面として構成すること以外に、図7(a)に示すように、何れも傾斜しない面で構成したり、図7(b)に示すように、何れか一方のみ傾斜面で構成するものであってもよい。
また、左右方向の内の一方向の転倒モーメントにのみ対抗するように係合構造部3を形成することに限らず、例えば、図8に示すように、第1・第2係合構造部の一方が、左右方向の両方向の転倒モーメントに対抗できるように兼用化するものであってもよい。この場合、更に、省スペース化を推進することが可能となる。
〈2〉 前記免震建物Bは、先に説明した構造や形状に限るものではなく、適宜変更が可能である。
Ba 建物下部構造部
Bb 建物上部構造部
Bc 免震層
H 浮き上がり防止手段
M 免震装置
Claims (2)
- 建物下部構造部と建物上部構造部との間に、複数の免震装置を備えて構成された免震層が設けてあり、前記建物上部構造部の浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段が設けてある免震建物であって、
前記浮き上がり防止手段は、横方向への相対的な近接移動に伴って係合して、互いの上下方向への離間移動を拘束する一対の係合構造部で構成してあり、前記両係合構造部は、前記建物下部構造部と建物上部構造部とに設けてあり、前記両係合構造部の内の少なくとも一方の係合接当面は、他方の係合構造部を係合が深まる方向に誘導することで前記建物下部構造部と建物上部構造部とを上下方向に近接させる傾斜面として構成してある免震建物。 - 前記建物下部構造部と前記建物上部構造部との相対的な横揺れにダンパー効果を発揮自在なダンパーが、前記建物上部構造部に設けられているダンパー固定部に一端部を取り付けてあり、前記建物下部構造部に設けられている前記係合構造部に他端部を取り付けてある請求項1に記載の免震建物。
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