JP5095462B2 - 車両のエンジン冷却装置 - Google Patents

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Description

この発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に好適な水冷式のエンジン冷却装置に関する。
従来、エンジンと連動するウォータポンプの吐出部が該エンジンのウォータジャケットの流入部に接続され、該ウォータジャケットの流出部がサーモスタットを介してラジエータの上流側タンクに接続され、該ラジエータの下流側タンクが前記ウォータポンプの吸入部に接続される車両のエンジン冷却装置において、エンジン冷間時には前記サーモスタットが冷却水の流れを停止させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
特公平5−81729号公報
しかしながら、上記従来の構成では、エンジン冷間時には冷却水路内での冷却水の滞留による温度バラツキが生じ、エンジン温度としての冷却水温の正確な管理が困難であった。
他方、近年の水冷エンジンの中には、エンジン温間時にはサーモスタットの主流出部から延びる主流出路を介してラジエータの上流側タンクに冷却水を流す一方、エンジン冷間時には前記主流出部が閉じると共にサーモスタットの副流出部から延びる副流出路を介してウォータポンプの吸入部に冷却水を流すものもある。この場合、ウォータポンプの吸入部にラジエータの下流側タンクからの流出路と前記副流出路とが並列に接続されることとなり、これら各流出路の重複による冷却水路の煩雑化が生じていた。
また、上記水冷エンジンの中には、水温計等の制御に対応する水温センサをサーモスタットに設ける一方、ラジエータファンの制御に対応する水温センサをラジエータの下流側タンクに別途設けたものがあり、これら複数の水温センサの統合が要望されていた。
そこでこの発明は、車両のエンジン冷却装置において、エンジン冷間時の冷却水温のバラツキを抑え、冷却水路の簡素化を図り、水温センサを合理的に統合することを目的とする。
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、エンジン(例えば実施例のエンジン21)と連動するウォータポンプ(例えば実施例のウォータポンプ34)の吐出部(例えば実施例の吐出部35)が該エンジンのウォータジャケット(例えば実施例のウォータジャケットW)の流入部(例えば実施例の流入部37)に接続され、該ウォータジャケットの流出部(例えば実施例の流出部38)がサーモスタット(例えば実施例のサーモスタット41)を介してラジエータ(例えば実施例のラジエータ31)の熱交換部(例えば実施例のラジエータコア31c)の上流側である上流側タンク(例えば実施例の上流側タンク31a)に接続され、該ラジエータの熱交換部の下流側である下流側タンク(例えば実施例の下流側タンク31b)が前記ウォータポンプの吸入部(例えば実施例の吸入部50)に接続される車両のエンジン冷却装置において、エンジン温間時には前記サーモスタットの主流出部(例えば実施例の主流出部45)から延びる主流出路(例えば実施例のラジエータ導入ホース46)を介して前記ラジエータの上流側タンクに冷却水を流す一方、エンジン冷間時には前記主流出部を閉じると共に前記サーモスタットの副流出部(例えば実施例の副流出部51)から延びる副流出路(例えば実施例のバイパスホース52)を介して前記ラジエータの下流側タンクに冷却水を流し、前記サーモスタットには前記ウォータジャケットからの流入部(例えば実施例の流入部44)側の冷却水温を検出する水温センサ(例えば実施例の水温センサ54)を設け、該水温センサの検出結果に基づきラジエータファン(例えば実施例のラジエータファン31d)を駆動し、前記サーモスタットが前記ウォータポンプに対してよりも前記ラジエータの下流側タンクに対して近付いて配置されることを特徴とする。
請求項1に記載した発明はさらに、ヘッドパイプの後方に左右メインフレームが左右に分岐するように延びる車体フレームを備える自動二輪車に適用され、前記ラジエータの上部には上支持ブラケットが固設され、該上支持ブラケットは前記左右メインフレームの前端部下側に支持され、前記ラジエータは冷却水が左右方向に流れる横流れ型であり、前記上流側タンクは車両左右方向一側に配され、前記下流側タンクは車両左右方向他側に配され、前記下流側タンクには、冷却水を前記ウォータポンプへと導くラジエータ導出ホースが車両側面視で前記メインフレームから下方に離間した位置で接続される下流側流出部と、該下流側流出部の直ぐ上方に位置して前記副流出路から冷却水が導かれる下流側流入部とが設けられることを特徴とする。

本発明によれば、エンジン冷間時にもサーモスタットが冷却水の流れを停止させず、エンジンのウォータジャケットを通過した冷却水を熱交換部を介さずに循環させることで、エンジンの暖機を促進して良好な運転状態へと速やかに移行できる。
また、エンジン冷間時における冷却水路内での冷却水の滞留をなくし、該冷却水の温度バラツキを解消することで、エンジン温度としての冷却水温の管理をより正確に行うことができる。
さらに、サーモスタットの副流出部から延びる副流出路をラジエータの下流側タンクに接続することで、ウォータポンプの吸入部周辺におけるラジエータの下流側タンクからの流出路と前記副流出路との重複をなくし、冷却水路の簡素化を図ることができる。
また、本発明によれば、サーモスタットに設けた単一の水温センサにより、エンジン冷間時及び温間時の何れの場合にも、エンジンのウォータジャケットを通過した直後のラジエータで放熱する前の冷却水温を検出できると共に、従来の如くラジエータの下流側タンク及びサーモスタットの両方に水温センサを設ける場合と比べて、部品点数削減によるコストダウンを図ることができる。
また、ラジエータの下流側タンクに従来設けていたラジエータファン駆動用の水温センサをなくすことが可能となり、既存のラジエータの下流側タンクに設けた水温センサ取り付け用の開口を、前記副流出路の接続部として利用することができ、既存のラジエータを少ない加工で流用可能としてコストダウンを図ることができる。
また、本発明によれば、従来の如くサーモスタットの副流出部から延びる副流出路をウォータポンプの吸入部に接続する場合と比べて、該副流出路の長さを短縮でき、かつその配管を簡素化できる。

以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
図1に示すように、自動二輪車(鞍乗り型車両)1の前輪2を軸支する左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して車体フレーム5前端部のヘッドパイプ6に操向可能に枢支される。ステアリングステム4には操向用のバーハンドル4aが取り付けられる。ヘッドパイプ6の後方には左右メインフレーム7が左右に分岐するように延びる。
左右メインフレーム7は、ヘッドパイプ6の上下から斜め下後方に延びるアッパパイプ7a及びロアパイプ7bと、両パイプ間にトラス状に渡設される複数の連結パイプ7cとを一体に溶接結合してなる。左右メインフレーム7の後端部には、所定形状にプレス成形された左右ジョイントプレート8がそれぞれ一体に溶接結合される。
左右ジョイントプレート8の下端部には左右ピボットプレート9の上端部がボルト結合され、該左右ピボットプレート9の上下中間部にはスイングアーム11の前端部がピボット軸11aを介して上下揺動可能に枢支される。スイングアーム11の後端部には後輪12が軸支され、スイングアーム11の前部と左右ジョイントプレート8の上端部との間にはリヤクッション13が介設される。左右ジョイントプレート8の上部後側には、乗員着座用のシート14を支持する左右シートフレーム15の前端部がボルト結合される。シート14の前方には燃料タンク16が配設される。
図2を併せて参照し、車体略中央には、自動二輪車1の原動機であるエンジン(内燃機関)21が配設される。エンジン21は、クランク軸22aを車体幅方向(左右方向)に沿わせたV型二気筒エンジンであり、そのクランクケース22上には前傾シリンダ23及び後傾シリンダ24(以下、単に前後シリンダという)がそれぞれ立設される。前後シリンダ23,24内にはピストンが往復動可能に嵌装され、該各ピストンの往復動がコンロッドを介して前記クランク軸22aの回転動に変換される(何れも不図示)。なお、図2中符号C1,C2は前後シリンダ23,24の起立方向に沿うシリンダ中心軸線をそれぞれ示す。
前後シリンダ23,24のバンク間の上方には、前後気筒に対応する一対のスロットルボディ25a,25bが前後に並んで配置され(図2参照)、該各スロットルボディ25a,25bの下端部(下流側端部)が前シリンダ23のシリンダヘッド23aの後部及び後シリンダ24のシリンダヘッド24aの前部にそれぞれ接続される。前シリンダ23のシリンダヘッド23aの前部及び後シリンダ24のシリンダヘッド24aの後部には、各気筒に対応する前後排気管26a,26bの基端部がそれぞれ接続される。
ここで、自動二輪車1は、エンジン21の吸気系(燃料供給系)に電子制御式の燃料噴射装置を備えており、スロットル開度、エンジン回転数及び車速等の各種車両情報に基いて、不図示の電子制御ユニットが前記各スロットルボディ25a,25bに設けたインジェクタを作動させて燃料噴射量や噴射時期等を制御する。
図2を参照し、前排気管26aは、前シリンダ23のシリンダヘッド23aの前部から斜め前下方に延出した直後に湾曲して斜め後下方に延び、クランクケース22の下方かつ該クランクケース22下に取り付くオイルパン22bの側方を通過した後にさらに屈曲して略水平となって後方に延びる。
一方、後排気管26bは、後シリンダ24のシリンダヘッド24aの後部から斜め後下方に延出した後にスイングアーム11のピボット軸11aの後方で湾曲して下方に延び、左右ピボットプレート9の下端部近傍(前排気管26aの後端部(延出先端部)近傍)で湾曲して略水平となって前方に延びた後、さらに後方に折り返すように湾曲して延びる。
前後排気管26a,26bの延出先端側は互いに合流して一本の集合管27となり、該集合管27が斜め上後方に延びて、後輪12右側に配設されたサイレンサ28の前端部に接続される。前記集合管27内及びサイレンサ28の前部内には、排ガス浄化用の触媒コンバータ27a,28aがそれぞれ内蔵される。集合管27における触媒コンバータ27aの直ぐ上流側には排気ガスセンサ(酸素濃度センサ)29が設けられる。前記各触媒コンバータ27a,28a及び排気ガスセンサ29は、共に白金等の触媒を所定の反応温度に加熱することでその機能を発揮する。
ここで、前記後排気管26bは一重管とされるのに対し、前排気管26aは二重管とされ、前シリンダ23からの排気ガスが走行風により冷却され難くしている。これにより、前後シリンダ23,24からの排気ガスによる各触媒コンバータ27a,28a及び排気ガスセンサ29の温度上昇が促進され、排気ガスセンサ29の検出精度を速やかに高めると共に、各触媒コンバータ27a,28aを速やかに活性化させて良好な排ガス浄化性能を得ることができる。
前シリンダ23の後部は左右メインフレーム7の下部に支持され、クランクケース22の後部上側は左右ジョイントプレート8の下端部及び左右ピボットプレート9の上端部に支持され、クランクケース22の後部下側は左右ピボットプレート9の下端部に支持される。
クランクケース22の後部内には不図示のクラッチ機構及び変速機が収容され、該クラッチ機構及び変速機を介して、前記クランク軸22aの回転動力がクランクケース22の後部左側に出力され、かつ例えばチェーンドライブ式の伝動機構を介して後輪12に伝達される。
図2,4を参照し、前シリンダ23のヘッドカバー23bの直ぐ前方には、エンジン21冷却用のラジエータ31が配設される。ラジエータ31は横長の長方形状をなし、上部が前方に位置するように側面視でやや傾斜した起立姿勢で配置される。ラジエータ31の上部には上支持ブラケット32が固設され、該上支持ブラケット32が左右メインフレーム7の前端部下側とヘッドパイプ6の下端部後側とに渡るガセット6aに形成された支持部32aに弾性支持される。一方、ラジエータ31の下部には下支持ブラケット33が固設され、該下支持ブラケット33が前シリンダ23のヘッドカバー23bの固定ボルトに突設された支持ピン33aに弾性支持される。
以下、自動二輪車1のエンジン冷却装置の全体構成について図3を併せて参照して説明する。
クランクケース22の下部左側には、エンジン冷却水(クーラント)を循環させるウォータポンプ34が取り付けられる。ウォータポンプ34は、ハウジング34a内に羽根車を収容した渦巻ポンプであり、エンジン21の運転(クランク軸22aの回転)に伴い回転駆動し、冷却水を吸入、吐出してこれを循環させる。
ウォータポンプ34のハウジング34aの上部には吐出部35が設けられ、該吐出部35には冷却水導入パイプ36の一端側が接続される。冷却水導入パイプ36は、上方に延びた後に斜め上前方に屈曲し、さらに前後シリンダ23,24間に入り込むように左右内側に屈曲した後、該前後シリンダ23,24間に設けられた流入部37に他端側を接続する。流入部37は、前後シリンダ23,24内に適宜形成されたウォータジャケットW(図3参照)に連通し、該流入部37を通じて、ウォータポンプ34から圧送された冷却水が前後ウォータジャケットW内に流入し、前後シリンダ23,24が発する熱を吸収する。
前シリンダ23の後側及び後シリンダ24の前側には、前後ウォータジャケットWからの冷却水の前後流出部38がそれぞれ設けられ、該前後流出部38には、前後冷却水導出ホース39の一端側がそれぞれ接続される。前後冷却水導出ホース39は、前シリンダ23の後側に沿うようにしてそのヘッドカバー23bの上端近傍まで延び、該ヘッドカバー23bの直ぐ上方に配置されたサーモスタット41に他端側を接続する。
サーモスタット41は、中空のケーシング42内にサーモスタット本体43を収容してなる(図3参照)。サーモスタット41のケーシング42の後部には、左右に並ぶ流入部44が後方に向けて突設され、該各流入部44に前後冷却水導出ホース39の他端側がそれぞれ接続される。サーモスタット41のケーシング42の上部には、主流出部45が前方に向けて突設され、該主流出部45には、ラジエータ導入ホース46の一端側が接続される。ラジエータ導入ホース46は、サーモスタット41の前方で上方に屈曲して延びた後、その右側に折り返すようにして下方に延び、適宜屈曲した後に、ラジエータ31右側の上流側タンク31aに接続される。サーモスタット41は、左右メインフレーム7の前部間(ヘッドパイプ6寄り)に位置し、メインフレーム7における最もヘッドパイプ6に近い連結パイプ7cにブラケットBを介して支持される(図2参照)。
ラジエータ31は、その中央部を構成する熱交換部であるラジエータコア31cの右側部にこれに沿うように縦長の上流側タンク31aを一体的に設けると共に、ラジエータコア31cの左側部に同じくこれに沿うように縦長の下流側タンク31bを一体的に設けてなり、ラジエータコア31cの上流側である上流側タンク31a(右側)からラジエータコア31cの下流側である下流側タンク31b(左側)に向けて冷却水を流す際にラジエータコア31cで放熱させる所謂クロスフロー型(横流れ型)とされる。ラジエータコア31cの後面側(背面側)にはラジエータファン31dが取り付けられる。
上流側タンク31aの上部後面側には上流側流入部47が設けられ、該上流側流入部47にラジエータ導入ホース46の他端側が接続される。
なお、ラジエータ導入ホース46におけるサーモスタット41から上方に延びた後の折り返し部分には、リザーバ用パイプジョイント46aが介装される(図4参照)。リザーバ用パイプジョイント46aは左右メインフレーム7の前部間に配設された不図示のリザーバタンクに接続され、冷却水路内の冷却水が増加した際にはこれを前記リザーバタンクに戻し、冷却水が減少した際にはその分をリザーバタンクから補給可能とする。
下流側タンク31bの下部後面側には下流側流出部48が設けられ、該下流側流出部48にラジエータ導出ホース49の一端側が接続される。ラジエータ導出ホース49は、前シリンダ23の左側に沿うように斜め下後方に向けて延びた後に下方に湾曲し、さらに後方に湾曲して前記ウォータポンプ34に他端側を接続する。ウォータポンプ34のハウジング34aの前部には吸入部50が前方に向けて突設され、該吸入部50にラジエータ導出ホース49の他端側が接続される。
そして、サーモスタット41のケーシング42の下部には、副流出部51が下方に向けて突設され、該副流出部51には、バイパスホース52の一端側が接続される。バイパスホース52は、サーモスタット41の下方で左右外側に屈曲した後に前方に屈曲し、その他端側をラジエータ31の下流側タンク31bに接続する。下流側タンク31bにおいて、前記下流側流出部48の直ぐ上方には下流側流入部53が設けられ、該下流側流入部53にバイパスホース52の他端側が接続される。
サーモスタット41は、そのケーシング42の内部を冷却水路の一部として利用すると共に、前記サーモスタット本体43の作動により冷却水の流れの経路を切り替える。
図3を参照し、サーモスタット本体43は、冷却水の温度変化により熱膨張又は収縮する熱膨張体を内蔵し、該熱膨張体の体積変化により主弁体43a及び副弁体43bを一体的に往復動させることで、前記主流出部45及び副流出部51をそれぞれ開閉する温度感知式の自動弁である。
サーモスタット本体43は、エンジン21の始動時等のエンジン冷間時(冷却水温(エンジン温度)が外気と同等の温度にあるとき)には、主弁体43aが主流出部45を閉塞すると共に副弁体43bが副流出部51を開放し(図3(a)参照)、エンジン21の暖機後のエンジン温間時(冷却水温(エンジン温度)がエンジン21の運転に適した温度まで上昇したとき)には主弁体43aが主流出部45を開放すると共に副弁体43bが副流出部51を閉塞する(図3(b)参照)。
すなわち、サーモスタット41において、エンジン冷間時には流入部44(エンジン21のウォータジャケットW)と主流出部45(ラジエータ31の上流側タンク31a)との連通が遮断されると共に、流入部44と副流出部51(ラジエータ31の下流側タンク31b)とが連通する。また、エンジン温間時には、流入部44と主流出部45とが連通すると共に、流入部44と副流出部51との連通が遮断される。
これにより、サーモスタット41のケーシング42内に流入した冷却水が、エンジン冷間時には副流出部51より下流側タンク31bに向けて流出し、エンジン温間時には主流出部45より上流側タンク31aに向けて流出する。
次に、上記エンジン冷却装置の作用について説明する。
まず、エンジン21の運転に伴いウォータポンプ34が作動して冷却水を吐出すると、該冷却水が冷却水導入パイプ36を介して前後シリンダ23,24のウォータジャケットW内に導入され、前後シリンダ23,24が発する熱を吸収した後に、前後冷却水導出ホース39を介してサーモスタット41のケーシング42内に導入される。
このとき、エンジン21が冷間状態にあれば、図3(a)に示すように、サーモスタット41において主流出部45が閉塞すると共に副流出部51が開放し、ケーシング42内に導入された冷却水がバイパスホース52を介してラジエータ31の下流側タンク31b内に導入され、ラジエータコア31cを通過することなくラジエータ導出ホース49を介してウォータポンプ34に戻される。このような経路を循環することで、冷却水が前後シリンダ23,24の熱を吸収するもののラジエータ31で放熱せずに速やかに昇温してエンジン21の暖機を促進する。
一方、エンジン21が冷間状態から温間状態に移行すると、図3(b)に示すように、サーモスタット本体43が作動して主流出部45が開放すると共に副流出部51が閉塞し、ケーシング42内に導入された冷却水がラジエータ導入ホース46を介してラジエータ31の上流側タンク31a内に導入され、ラジエータコア31cを通過しつつ放熱した後にラジエータ31の下流側タンク31bに至り、その後にラジエータ導出ホース49を介してウォータポンプ34に戻される。このような経路を循環することで、冷却水が前後シリンダ23,24の熱を吸収すると共にラジエータ31で放熱し、エンジン21が良好な運転状態に適した温度に保たれる。
なお、長時間の停車等により冷却水温が所定の上限値を超えると、前記ラジエータファン31dが作動してラジエータコア31cに強制的に外気を導入し、冷却水の放熱を促進してエンジン21のオーバーヒートを抑止する。
ここで、図2,4に示すように、前シリンダ23のヘッドカバー23bの直ぐ上方に位置するサーモスタット41と、前シリンダ23のヘッドカバー23bの直ぐ前方に位置するラジエータ31の下流側タンク31bとは、互いに比較的近接して配置されている。一方、前記サーモスタット41と、クランクケース22の下部左側に配設されたウォータポンプ34とは、互いに比較的離間して配置されている。さらにいうと、サーモスタット41の副流出部51は、ウォータポンプ34の吸入部50に対してよりも、ラジエータ31の下流側タンク31bの下流側流入部53に対して近付いて配置されている。
これにより、サーモスタット41の副流出部51からウォータポンプ34の吸入部50に副流出路を延ばした場合(この場合の副流出路を図4に符号52’で示す)と比べて、バイパスホース52の長さが短縮され、かつ該バイパスホース52とラジエータ導出ホース49とのウォータポンプ34近傍での重複が解消される。
また、ラジエータ31においては、下流側タンク31bに従来設けていた水温センサをなくし、該水温センサ取り付け用の開口を利用して下流側流出部48を設けている。すなわち、前記開口にノズルを設置する等によりバイパスホース52を接続可能とし、該バイパスホース52からの冷却水を下流側タンク31b内に流入可能としている。
そして、自動二輪車1において、エンジン温度としての冷却水温を検出する水温センサは、サーモスタット41のケーシング42にのみ設けている(図3に符号54で示す)。サーモスタット41のケーシング42の内部は冷却水路の一部を構成しており、該ケーシング42の内部における流入部44と連通する空間内(エンジン側水路内)には、前記水温センサ54の検出部が臨んでいる。すなわち、水温センサ54は、エンジン冷間時及び温間時の何れにおいても、エンジン21のウォータジャケットWを通過した直後のラジエータ31で放熱する前の冷却水温を検出可能である。
サーモスタット41は、エンジン冷間時にはケーシング42内に流入した冷却水を副流出部51から流出させ、エンジン温間時にはケーシング42内に流入した冷却水を主流出部45から流出させる。すなわち、エンジン冷間時においてサーモスタット41近傍で冷却水の滞留が発生することがなく、該冷却水の温度バラツキが抑えられ、水温センサ54による冷却水温(エンジン温度)の検出精度が高められる。この水温センサ54の検出情報は、水温計、ラジエータファン31d及び燃料噴射装置等の複数の機器の制御に用いられる。
以上説明したように、上記実施例における車両のエンジン冷却装置は、エンジン21と連動するウォータポンプ34の吐出部35が該エンジン21のウォータジャケットWの流入部37に接続され、該ウォータジャケットWの流出部38がサーモスタット41を介してラジエータ31のラジエータコア(熱交換部)31cの上流側である上流側タンク31aに接続され、該ラジエータ31の下流側タンク31bが前記ウォータポンプ34の吸入部50に接続されるものにおいて、エンジン温間時には前記サーモスタット41の主流出部45から延びる主流出路(ラジエータ導入ホース46)を介して前記ラジエータ31の上流側タンク31aに冷却水を流す一方、エンジン冷間時には前記主流出部45を閉じると共に前記サーモスタット41の副流出部51から延びる副流出路(バイパスホース52)を介して前記ラジエータ31のラジエータコア31cの下流側である下流側タンク31bに冷却水を流すものである。
この構成によれば、エンジン冷間時にもサーモスタット41が冷却水の流れを停止させず、エンジン21のウォータジャケットWを通過した冷却水をラジエータコア31cを介さずに循環させることで、エンジン21の暖機を促進して良好な運転状態へと速やかに移行できる。
また、エンジン冷間時における冷却水路内での冷却水の滞留をなくし、該冷却水の温度バラツキを解消することで、エンジン温度としての冷却水温の管理をより正確に行うことができる。
さらに、サーモスタット41の副流出部51から延びる副流出路(バイパスホース52)をラジエータ31の下流側タンク31bに接続することで、ウォータポンプ34の吸入部50周辺におけるラジエータ31の下流側タンク31bからの流出路と前記副流出路との重複をなくし、冷却水路の簡素化を図ることができる。
また、上記エンジン冷却装置は、前記サーモスタット41に前記ウォータジャケットWからの流入部44側の冷却水温を検出する水温センサ54を設け、該水温センサ54の検出結果に基づきラジエータファン31dを駆動することで、サーモスタット41に設けた単一の水温センサ54により、エンジン冷間時及び温間時の何れの場合にも、エンジン21のウォータジャケットWを通過した直後のラジエータ31で放熱する前の冷却水温を検出できると共に、従来の如くラジエータ31の下流側タンク31b及びサーモスタット41の両方に水温センサを設ける場合と比べて、部品点数削減によるコストダウンを図ることができる。
また、ラジエータ31の下流側タンク31bに従来設けていたラジエータファン31d駆動用の水温センサをなくすことが可能となり、既存のラジエータ31の下流側タンク31bに設けた水温センサ取り付け用の開口を、前記副流出路の接続部として利用することができ、既存のラジエータ31を少ない加工で流用可能としてコストダウンを図ることができる。
さらに、上記エンジン冷却装置は、前記サーモスタット41が、前記ウォータポンプ34に対してよりも前記ラジエータ31の下流側タンク31bに対して近付いて配置されることで、従来の如くサーモスタット41の副流出部51から延びる副流出路をウォータポンプ34の吸入部50に接続する場合と比べて、該副流出路の長さを短縮でき、かつその配管を簡素化できる。
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、ラジエータ31がダウンフロー型(縦流れ型、バーチカルフロー型)であってもよく、サーモスタット41がエンジン温間時にも副流出部51を閉じきらないものであってもよい。
また、二気筒を超えるV型多気筒エンジンや並列複数気筒エンジン、単気筒エンジン、クランク軸を車両前後方向に沿わせた縦置きエンジン等、各種形式のエンジンに適用してもよい。
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、三輪又は四輪の車両にも適用できることはもちろん、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
この発明の実施例における自動二輪車の左側面図である。 図1の要部拡大図である。 上記自動二輪車のエンジン冷却装置の構成図であり、(a)はエンジン冷間時、(b)はエンジン温間時をそれぞれ示す。 上記エンジン冷却装置の一部構成の斜視図である。
符号の説明
1 自動二輪車(車両)
21 エンジン
31 ラジエータ
31a 上流側タンク
31b 下流側タンク
31c ラジエータコア(熱交換部)
31d ラジエータファン
34 ウォータポンプ
35 吐出部
37 流入部
38 流出部
41 サーモスタット
44 流入部
45 主流出部
46 ラジエータ導入ホース(主流出路)
50吸入部
51 副流出部
52 バイパスホース(副流出路)
54 水温センサ
W ウォータジャケット

Claims (1)

  1. ヘッドパイプ(6)の後方に左右メインフレーム(7)が左右に分岐するように延びる車体フレーム(5)を備える自動二輪車(1)に適用され、
    エンジン(21)と連動するウォータポンプ(34)の吐出部(35)が該エンジン(21)のウォータジャケット(W)の流入部(37)に接続され、該ウォータジャケット(W)の流出部(38)がサーモスタット(41)を介してラジエータ(31)の熱交換部(31c)の上流側である上流側タンク(31a)に接続され、該ラジエータ(31)の熱交換部(31c)の下流側である下流側タンク(31b)が前記ウォータポンプ(34)の吸入部(50)に接続される車両のエンジン冷却装置において、
    エンジン温間時には前記サーモスタット(41)の主流出部(45)から延びる主流出路(46)を介して前記ラジエータ(31)の上流側タンク(31a)に冷却水を流す一方、エンジン冷間時には前記主流出部(45)を閉じると共に前記サーモスタット(41)の副流出部(51)から延びる副流出路(52)を介して前記ラジエータ(31)の下流側タンク(31b)に冷却水を流し、
    前記サーモスタット(41)には前記ウォータジャケット(W)からの流入部(44)側の冷却水温を検出する水温センサ(54)を設け、該水温センサ(54)の検出結果に基づきラジエータファン(31d)を駆動し、
    前記サーモスタット(41)が前記ウォータポンプ(34)に対してよりも前記ラジエータ(31)の下流側タンク(31b)に対して近付いて配置され
    前記ラジエータ(31)の上部には上支持ブラケット(32)が固設され、該上支持ブラケット(32)は前記左右メインフレーム(7)の前端部下側に支持され、
    前記ラジエータ(31)は冷却水が左右方向に流れる横流れ型であり、
    前記上流側タンク(31a)は車両左右方向一側に配され、前記下流側タンク(31b)は車両左右方向他側に配され、
    前記下流側タンク(31b)には、冷却水を前記ウォータポンプ(34)へと導くラジエータ導出ホース(49)が車両側面視で前記メインフレーム(7)から下方に離間した位置で接続される下流側流出部(48)と、該下流側流出部(48)の直ぐ上方に位置して前記副流出路(52)から冷却水が導かれる下流側流入部(53)とが設けられることを特徴とする車両のエンジン冷却装置。
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