JP5092250B2 - ポリウレタン樹脂組成物及び水性インク組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物及び水性インク組成物に関し、詳しくは、ポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法並びに水性インク組成物及びその製造方法に関する。
インクジェットプリンタ等に用いられるインクとして顔料を用いた水性インク組成物が知られている。顔料は、染料に比べて、耐光性および耐水性に優れており、記録後より良好な発色状態をより長期間にわたって可能とするインクの着色剤として利用されている。顔料は、一般に水に不溶であるため、顔料をインクに用いる場合には、顔料をポリウレタン樹脂などの分散剤とともに混合し、水に安定分散させる必要がある。顔料を水に安定的に分散させるためには、顔料の種類、粒径、用いる樹脂の種類、および分散手段等を検討する必要があり、これまで多くの分散方法およびインクジェット記録用インク組成物が提案されている。なかでも、水性樹脂としてポリウレタン樹脂を必須成分とする水性インク組成物は、吐出安定性を向上させ良好な被膜物性を付与させる目的でその使用が検討されている(特許文献1)。また、異なる顔料濃度のブラックインク組成物を用いて良好なモノクロ画像やグレースケールを形成することも試みられている(特許文献2)。こうしたブラックインク組成物のうち顔料濃度の低いものにあっては、樹脂含有量が通常の水性インク組成物よりも高くなっている。
特開2000−1639 特開2004−225036 特開2004−225037
しかしながら、水性インク組成物において、ポリウレタン樹脂などの水に分散可能な樹脂を用いて従来どおりの方法で顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液に水溶性有機溶媒を含むインクのビヒクルを混合してインクなどの水性インク組成物を調製すると、調製直後にインクの粘度が急激に上昇しその後緩慢にインクの粘度が低下することがあった。このようなインクの粘度変化は、貯蔵安定性を損ねる可能性がある他、インクジェットプリンタ用のインク組成物として調製した場合には、ノズルからのインクの吐出安定性を損なう恐れもあった。さらに、上記のようなブラックインク組成物などの樹脂含有量の多いインクにおいてはなおさらであった。
そこで、本発明は、上記のようなブラックインク組成物などポリウレタン樹脂含有量の高い水性インク組成物の粘度変化などの物性変化を有効に回避又は抑制できるポリウレタン樹脂組成物及びその製造方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、粘度変化などの物性変化を有効に回避又は抑制できる水性インク組成物及びその製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、上記現象について種々検討した結果、粘度等の物性変化は水性インク組成物の調製時においてポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒とが混合されることで生じることを見出し、さらに、水性インク組成物の製造工程において、ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒とを予め混合して時間経過させておいたポリウレタン樹脂組成物を顔料分散液やその他のインク成分に添加することにより、粘度等の物性変化を抑制あるいは回避して安定性に優れた水性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。すわなち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の一つの態様によれば、水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物であって、水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、実質的な粘度変化を有しない組成物が提供される。この態様においては、前記水溶性有機溶媒はジオール類から選択されることが好ましい。前記水溶性有機溶媒は、1,2−ヘキサンジオールとしてもよい。また、前記水溶性有機溶媒を前記水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上50wt%以下含有することができる。
また、この態様においては、前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含むことができる。前記トリオール類はグリセリンを含むことが好ましく、また、前記トリオール類を、水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上100wt%以下含有することが好ましい。さらに、記ジオール類は1,2−ヘキサンジオールを含み、前記トリオール類はグリセリンを含むことが好ましい。
また、この態様においては、前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含むことができる。さらに、前記トリオール類はグリセリンを含めることができ、前記トリオール類は、水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上100%以下含有することができる。
この態様においては、前記ジオール類は1,2−ヘキサンジオールを含み、前記トリオール類はグリセリンを含むことができる。
この態様においては、前記水溶性有機溶媒を0.5wt%以上20wt%以下含有していてもよいし、前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有していてもよく、さらに、加熱を伴うエージングが施されて得られるものであってもよい。また、この態様においては、前記ポリウレタン樹脂組成物の所定量を密封して70℃±3℃の恒温下で24時間静置し、該静置期間開始時と終了後の粘度を測定し、これらの粘度から下記式(1)に基づいて得られる粘度変化率(ΔV)が2.5%以下であることが好ましい。
ΔV(%)=|V−V|/V×100・・・(1)
なお、こうした態様のポリウレタン樹脂組成物は、いずれも、前記水性インク組成物は、カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上である水性インク組成物用とすることができる。なかでも、濃淡のあるブラックインクセットのインク組成物の調製用として用いることが好ましい。
本発明の他の一つの態様によれば、水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含む混合物の粘度を低下させるエージング工程を備える、ポリウレタン樹脂組成物の製造方法が提供される。この態様においては、前記エージング工程は、前記混合物を60℃以上80℃以下としてもよく、また、エージング工程を120時間以上216時間以下として実施してもよい。エージング工程は、好ましくは、前記混合物を静置する工程である。さらに、前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含んでいてもよい。
また、本発明のさらに他の一つの態様によれば、上記したポリウレタン樹脂組成物の製造方法によって得られるポリウレタン樹脂組成物も提供される。
さらに、本発明の別の態様によれば、水性インク組成物の製造方法であって、以下の(a)〜(c):
(a)水と顔料とを含む顔料分散液、
(b)水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、実質的な粘度変化を有しないポリウレタン樹脂組成物、及び
(c)前記(a)及び(b)以外の前記水性インク組成物の成分
を用いて前記水性インク組成物を調製する工程を備える、製造方法も提供される。この態様において、前記(a)の顔料分散液は、水分散性スチレン−アクリル酸樹脂を含有していてもよい。また、前記ポリウレタン樹脂組成物は、前記水溶性ポリウレタン樹脂と前記水溶性有機溶媒と水とを含む混合物をエージングして得られるものであってもよい。
さらに、この態様において、前記水性インク組成物は、カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上である組成物としてもよい。
さらにまた、本発明の他の一つの態様によれば、カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上であり、上記いずれかの態様のポリウレタン樹脂組成物を含有する、組成物も提供される。
また、本発明の他の一つの態様によれば、有彩色顔料を含有するカラーインク組成物であって、前記有彩色顔料の含有量が1.5重量%以上7重量%未満のときには、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の0.04倍以上0.35倍以下であり、前記有彩色顔料の含有量が0.5重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の0.67倍以上2.5倍以下であり、上記いずれかの態様のポリウレタン樹脂組成物を含有する、カラーインク組成物が提供される。
また、本発明の他の一つの態様によれば、上記いずれかに記載の水性インク組成物の製造方法によって得られる、水性インク組成物が提供される。さらにまた、本発明の他の一つの態様によれば、水性インク組成物であって、顔料分散液に上記いずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を混合して得られる、組成物が提供される。
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物であって、水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、実質的な粘度変化を有しない組成物、当該組成物の製造方法、当該組成物を用いた水性インク組成物の製造方法および水性インク組成物に関する。
水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、実質的な粘度変化を有しない本発明の組成物を用いて水性インク組成物を調製するため、粘度変化を回避又は抑制された水性インク組成物が得られる。本発明のポリウレタン樹脂組成物は、好ましくは、水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含む混合物を当該混合物の粘度を低下させるエージング工程を実施することによって得ることができる。また、水性インク組成物は、本発明のポリウレタン樹脂組成物と、水と顔料とを含有する顔料分散液と、残余の成分とを用いて調製することができる。顔料分散液に本発明のポリウレタン樹脂組成物を混合することで、容易に粘度変化が回避又は抑制された水性インクを得ることができる。こうして製造された水性インク組成物をインクジェットプリンタ用のインク組成物として用いる場合、ノズルからの吐出安定性が確保されたインクを提供することができる。また、こうした水性インク組成物によれば、粘度等が安定化するのを待って市場に供給する必要もないため、効率的な生産及び供給が可能となる。
以下、これらの態様を含む本発明の各種の態様について説明する。
(ポリウレタン樹脂組成物)
本組成物は、水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有している。一方、本組成物は、顔料を含有していない。ここで、水溶性とは、水あるいは水を含む水性媒体に分散可能、好ましくは溶解可能であることを意味する。ポリウレタン樹脂としては、特に制限はなく、ジイソシアネート化合物とジオール化合物とを反応して得られる水溶性または水分散性のポリウレタン樹脂を使用することができる。また、ポリウレタン樹脂は一種あるいは二種以上を用いることができる。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変性物など)等が挙げられる。
ジオール化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドやテトラヒドロフラン等の複素環式エーテルを(共)重合させて得られるジオール化合物が挙げられる。かかるジオール化合物の具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。これらの中では、ポリエーテル系、ポリエステル系及びポリカーボネート系のうち1種以上が好ましい。
また、上記の他、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオール化合物も使用でき、その具体例としては、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。これらの中では、ジメチロールプロピオン酸が好ましい。これらのジオール化合物は、2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂の合成に際しては、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、ポリエステルジオールの原料として使用される、グリコール、アルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール及びそのアルキレンオキシド低モル付加物が挙げられる。また、このようにして得られたウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ(トリ)アミンで鎖延長することができる。鎖延長の際に使用されるポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂としては、望ましくは、ジオール化合物としてポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系のジオールを用いて得られるポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリウレタン樹脂の形態も特に限定されない。代表的には、エマルジョンタイプ、例えば、自己乳化エマルジョンや、自己安定化タイプが挙げられる。特に、上記の化合物のうちカルボン酸基、スルホン酸基などの酸性基を有するジオールを用いたり、低分子量のポリヒドロキシ化合物を添加したり、酸性基を導入したウレタン樹脂、中でもカルボキシル基を有するものが望ましい。さらに、後述する架橋処理により、これらカルボキシル基等の官能基を架橋させるのが、光沢向上、耐擦性向上等の点から望ましい。
ポリウレタン樹脂は、中和したものを使用することもできる。中和に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。
ポリウレタン樹脂の酸価は、ライトブラックインク組成物を用いる観点からは、好ましくは10〜300であり、一層好ましくは20〜100である。なお、酸価は、樹脂1gを中和させるのに必要なKOHのmg量である。また、水溶性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ライトブラックインク組成物に用いる観点からは、好ましくは100〜20万であり、より好ましくは1000〜5万である。Mwは、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定する。ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg;JIS K6900に従い測定)は、ライトブラックインク組成物に用いる観点からは、好ましくは−50〜200℃であり、一層好ましくは−50〜100℃である。さらに、ポリウレタン樹脂は、本発明の顔料分散液中において微粒子状に分散している場合と顔料に吸着している場合とがあるが、ライトブラックインク組成物に用いる観点からは、ポリウレタン樹脂の最大粒径は0.3μm以下であることが好ましく、平均粒径は0.2μm以下(さらに好ましくは0.1μm以下)であることが一層好ましい。なお、平均粒径とは、顔料が実際に分散液中で形成している粒子としての分子径(体積50%径)の平均値であり、例えば、マイクロトラックUPA(Microtrac Inc.社)を使用して測定することができる。
ポリウレタン樹脂組成物におけるポリウレタン樹脂は、最終的に調製しようとする水性インク組成物に含まれる当該ポリウレタン樹脂の80wt%以上であることが好ましい。80wt%未満であると、エージングの効果が十分に得られないからである。より好ましくは90wt%以上であり、最も好ましくは全量である。
また、ポリウレタン樹脂組成物におけるポリウレタン樹脂の濃度は、5wt%以上50wt%以下であることが好ましい。5wt%未満であるとエージングの効果が得られにくいからであり、50wt%を超えると安定な組成物を調製しにくくなるからである。より好ましくは、10wt%以上40wt%以下である。
ポリウレタン樹脂の好ましい具体例としては、NeoRezR−960(ゼネカ製)、NeoRez R−989(ゼネカ製)、NeoRez R−9320(ゼネカ製)、NeoRad NR−440(ゼネカ製)、ハイドランAP−30(大日本インキ工業(株)製)、ハイドランAPX−601(大日本インキ工業(株)製)、ハイドランSP−510(大日本インキ工業(株)製)、ハイドランSP−97(大日本インキ工業(株)製)、エラストロンMF−60(第一工業製薬(株)製)、エラストロンMF−9(第一工業製薬(株)製)、M−1064(第一工業製薬(株)製)、アイゼラックスS−1020(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−1040(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−1085C(保土ヶ谷化学(株)製)、アイゼラックスS−4040N(保土ヶ谷化学(株)製)、ネオタンUE−5000(東亞合成(株)製)、RU−40シリーズ(スタール・ジャパン製)、ユーコートUWS−145(三洋化成(株)製)、パーマリンUA−150(三洋化成(株)製)、WF−41シリーズ(スタール・ジャパン製)、WPC−101(日本ウレタン工業(株)製)が挙げられる。
(水溶性有機溶媒)
ポリウレタン樹脂組成物は、1種又は2種類以上の水溶性有機溶媒を含むことができる。水溶性有機溶媒としては、水と混和する有機溶媒であれば特に限定しないで用いることができるが、水性インク組成物の水性媒体を構成するものであって、ポリウレタン樹脂と混合した際、混合物の粘度が上昇又は変化するような水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。こうした水溶性有機溶媒としては、多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ピロリドン類、ジオール類が挙げられる。なかでも、ジオール類が好ましい。ジオール類としては、炭素数5〜7の直鎖アルキルジオール類が好ましく、より好ましくは、1,2−ヘキサンジオールである。1,2−ヘキサンジオールは、水性インク組成物において好ましい水溶性有機溶媒であるとともに、ポリウレタン樹脂と混合した際に粘度が上昇するからである。したがって、予めポリウレタン樹脂と1,2−ヘキサンジオールとを混合し粘度を安定化させておくことで粘度等の安定性に優れるエージング樹脂を得ることができる。なお、水性インク組成物に用いる水溶性有機溶媒の全量がポリウレタン樹脂組成物から供給される必要はなく、ポリウレタン樹脂組成物には、ポリウレタン樹脂をエージングするのに有効量の水溶性有機溶媒が含まれていればよい。
水溶性有機溶媒としては、トリオール類も好ましい。トリオール類は、水やジオール類との相溶性が良好であるほか、トリオール類は、ポリウレタン樹脂組成物を低温下で保存する場合、樹脂組成物の凍結及び凍結による粘度上昇を抑制することができるからである。こうしたトリオール類としては、炭素数3〜5の直鎖アルキルトリオール類が好ましく、より好ましくは、グリセリン(1,2,3−プロパントリオール)である。グリセリンは、水性インク組成物の保湿剤成分でもあることから、本ポリウレタン樹脂組成物を用いた水性インク組成物の組成や物性を大きく変えることなく用いることができる。
また、本ポリウレタン樹脂組成物における水溶性有機溶媒の濃度は、0.5wt%以上20wt%以下であることが好ましい。0.5wt%未満であるとエージングの効果が得られにくいからであり、20wt%を超えると安定な組成物を調製できないからである。より好ましくは、1wt%以上15wt%以下である。
ポリウレタン樹脂組成物におけるポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒との重量比は特に限定しない。最終的に得ようとする水性インク組成物における樹脂量にもよるが、本混合物における水溶性有機溶媒は、ポリウレタン樹脂の固形分に対して10wt%以上100wt%以下とすることができる。この範囲で、有効にエージングできるからである。
ジオールなどの水溶性有機溶媒は、ポリウレタン樹脂の固形分に対して50wt%以上100wt%以下とすることができる。この範囲であると、カーボンブラック等の顔料濃度が1.5wt%以上の水性インク組成物において有効な粘度安定化効果を得ることができる。より好ましくは80wt%以下であり、さらに好ましくは73wt%以下である。また、下限はより好ましくは、60wt%以上である。
また、ジオール類などの水溶性有機溶媒は、ポリウレタン樹脂の固形分に対して10wt%以上50wt%未満であることが好ましい。この範囲であると、カーボンブラック等の顔料の含有量が1.5wt%未満(特には、0.4wt%未満)の水性インク組成物において、有効な粘度安定化効果を得ることができる。こうした顔料含有量の低い水性インク組成物において相対的に多量の水溶性ポリウレタン樹脂を含有する場合、上記比率で水溶性有機溶媒を含有することで水溶性ポリウレタン樹脂による粘度変化等を有効に抑制できる。より好ましくは、15wt%以上であり、さらに好ましくは20wt%以上である。また、上限はより好ましくは40wt%以下である。なお、顔料濃度1.5wt%未満の水性インク組成物については後述する。
トリオール類などの水溶性有機溶媒は、ポリウレタン樹脂の固形分に対して10wt%以上100wt%以下であることが好ましい。より好ましくは、15wt%以上である。さらに好ましくは30wt%以上であり、一層好ましくは50%以上である。
(その他の成分)
ポリウレタン樹脂組成物は、少なくとも水溶性ポリウレタン樹脂および水溶性有機溶媒を含有し、これらのみから構成されていてもよいが、これらはともに水に分散あるいは溶解可能であることから、混合物は好ましくは水を含んでいる。例えば、本組成物は、ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とのみから構成することができる。水は水性インク組成物およびインク組成物において主要な媒体成分であり、水を含む状態でエージングすることで効果的にエージングを行なうことができる。水は、ろ過されたイオン交換水以上のグレードの水を用いることが好ましい。なお、本組成物は、顔料を含まないことが好ましい。
ポリウレタン樹脂組成物には、ポリウレタン樹脂を水に分散あるいは溶解可能とするために、アルカリやアミン類などの塩基性化合物を含んでいてもよい。また、組成物には、他に、エージング工程に悪影響を与えない範囲で、顔料以外の他の水性インク組成物の成分を含めることができる。例えば、水性インク組成物を調製するのにあたって、用いられる界面活性剤、pH調製剤などの成分を添加することも可能である。界面活性剤、pH調整剤等については後述する。
混合物の調製方法は特に限定しない。ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒との所定量を混合した後、必要に応じて水を添加することもできるし、ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とをおおよそ同時に混合することもできるし、ポリウレタン樹脂あるいは水溶性有機剤のいずれかと水との混液を調製後に、残部を添加し混合してもよい。ポリウレタン樹脂の安定性確保の観点からは、ポリウレタン樹脂の水溶液を混合物に用いることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、実質的な粘度変化を有しない。ここで実質的な粘度変化を有しないとは、粘度が時間経過に伴って大きく変化せず、ほぼ一定であることを意味している。こうした特性は、具体的には、密封可能な容器(粘度に対する蒸発等の影響を排除することができる程度の密封性容器)にポリウレタン樹脂組成物の所定量を封入して所定温度(例えば、70℃±3℃)の恒温下で所定期間静置し、該静置期間開始時と終了後の粘度を測定し、これらの粘度から下記式(1)に基づいて得られる粘度変化率(ΔV)に基づいて判断することもできる。
ΔV(%)=|V−V|/V×100・・・(1)
ただし、Vは静置期間開始時の粘度であり、Vは静置期間終了後の粘度である。なお、粘度の測定温度は20℃とすることが好ましい。
本発明のポリウレタン樹脂組成物については、静置期間を1日としたとき前記粘度変化率が3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下である。3.0%以下であれば、最終的に得ようとする水性インク組成物の粘度変化を回避又は抑制できる。
なお、ポリウレタン樹脂組成物おける粘度は、動粘度(単位Pa・s)として測定され、その測定は逆流式粘度管を用いた測定方法あるいはこれと同等の精度及び正確性が得られる測定方法によることが好ましい。具体的には、キャノンフェンスケ型の逆流式粘度管(典型的には、離合社製のVMC−252型)を用い、20℃における管内の液体(インク)の移動時間により測定することができる。
また、グリセリンなどのトリオール類を含有するポリウレタン樹脂組成物にあっては、低温において実質的な粘度変化を有しない。なお、本明細書において低温とは、5℃以下
を意味し、好ましくは0℃以下、より好ましくは−5℃以下、さらに好ましくは−10℃以下を意味している。また、実質的に粘度変化を有しないとは、既にのべたのと同義である。こうした低温時における特性は、具体的には、密封可能な容器(粘度に対する蒸発等の影響を排除することができる程度の密封性容器)にポリウレタン樹脂組成物の所定量を封入して所定の低温(例えば、−20℃±3℃)の恒温下で所定期間静置し、該静置期間開始時と終了後の粘度を測定し、これらの粘度から上記式(1)に基づいて得られる粘度変化率(ΔV)に基づいて判断することもできる。なお、粘度の測定温度は20℃とすることが好ましい。
トリオール類を含有するポリウレタン樹脂組成物については、−20℃±3℃での静置期間を4日としたとき前記粘度変化率が10.0%未満であることが好ましく、より好ましくは6.0%未満である。10.0%未満であれば、最終的に得ようとする水性インク組成物の粘度変化を回避又は抑制できる。
(ポリウレタン樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリウレタン樹脂組成物にこうした特性を付与するには、水溶性ポリウレタンと水溶性有機溶媒との混合物(以下、実質的な粘度変化のない状態に至る前のポリウレタン樹脂組成物を混合物というものとする。)の粘度を低下させるエージング工程を実施することができる。本発明において、エージングとは、物質が時間の経過とともに化学変化やその他の現象を起こす現象あるいはそのような現象を起こさせるための操作をいう。したがって、本発明におけるエージング工程は、エージングを実施しない場合と比較して水性インク組成物調製時および/または調製後において粘度などの液体の物性が改善ないし安定化できる程度に、前記混合物について時間を経過させる工程であれば足り、必ずしも外部から人為的になんらかの作用(温度等)を付与するものである必要はない。したがって、エージング工程は、工程間における待機あるいは保管時の雰囲気での一定時間の経過であってもよいし、独立する工程でなく他の工程に付随するものであってもよい。
エージング工程は、例えば、混合物自体の粘度が安定化するまで行なうか、あるいは、最終的に得ようとするインク組成物のその調製後一定期間における粘度変化が一定以下に抑制できる程度に安定化するまで行なうことができる。なお、混合物の粘度は、例えば、インクなどの分野で用いられている粘度測定法であればよく、例えば、キャノンフェンスケ型逆流式粘度管を用いる方法を用いることができる。
エージング工程の温度は40℃以上であることが好ましい。40℃以上であれば、適切な期間内でエージング工程を完了できるからである。より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは60℃以上である。また、当該温度は80℃以下であることが好ましい。80℃以下であれば、インク用としてのポリウレタン樹脂組成物の物性等が維持されるからである。したがって、エージング工程においては、40℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは60℃以上80℃以下である。最も好ましくは約70℃である。こうしたエージング温度を確保するには、エージング工程を加熱を伴って実施することが好ましい。
エージング工程の時間は、24時間以上であることが好ましい。24時間以上であれば、エージングの効果が得られるからである。より好ましくは48時間以上であり、さらに好ましくは72時間以上である。120時間以上であることが好ましい場合もある。また、エージング工程は216時間以下とすることができる。216時間以内であれば、時間に応じた効果が得られやすいからである。生産効率の観点からは、好ましくは、168時間以下である。より好ましくは144時間以下である。したがってエージング工程の好ましい所要時間の範囲の例としては、24時間以上168時間以下、48時間以上144時間以下、72時間以上216時間以下、120時間以上216時間以下等が挙げられる。
エージング工程の所要時間は、混合物中における水溶性有機溶媒量によっても相違することがある。例えば、水溶性有機溶媒量が水溶性ポリウレタン樹脂(固形分)量に対して多いほど相対的にエージング所要時間が短くなる傾向があり、水溶性有機溶媒量が少ないほど相対的にエージング所要時間が長くなる傾向がある。したがって、水溶性有機溶媒が水溶性ポリウレタン樹脂の固形分に対して10wt%以上50wt%未満の混合物には、120時間以上216時間以下であることが好ましく、168時間以上216時間であることがより好ましい。また、水溶性有機溶媒が50wt%以上100wt%以下の混合物には、24時間以上168時間以下であることが好ましく、72時間以上120時間以下であることがより好ましい。
以上のことから、好ましいエージング工程としては、約70℃で48時間以上144時間以下とすることが挙げられる。さらに好ましくは、約70℃で72時間以上120時間以下とすることが挙げられる。また、これらのエージング条件によって混合物に付与されうるエージング効果と同様の効果を付与できる限り、他のエージング条件であってもよい(以下、このような他のエージング条件を当該条件と等価なエージング条件という)。一つのエージング条件と等価なエージング条件は、時間および/または温度を変化させた条件でエージング工程を実施して得られる効果を評価することで取得できる。
また、他の好ましいエージング工程としては、約70℃で120時間以上216時間以下とすることが挙げられる。さらに好ましくは、約70℃で168時間以上216時間以下とすることが挙げられる。さらに、これらの条件と等価なエージング効果が得られるエージング条件が挙げられる。
こうしてエージング工程を経て得られるポリウレタン樹脂組成物は、エージングによって粘度等の経時変化が低減されて安定化され、単にこれらが混合されたものとは粘度等の物性を含む物理化学的特徴が相違したものとなっている。したがって、エージング工程後のポリウレタン樹脂組成物は、水性インク組成物の調製に適したポリウレタン樹脂組成物となっている。
また、トリオール類を含有する混合物をエージングして得られるポリウレタン樹脂組成物は、上記した特徴のほか、低温で保存した場合であっても、凍結及び凍結によるポリウレタン樹脂組成物の変性(例えば、粘度上昇など)を抑制して、水性インク組成物の調製に適した物性を維持することができる。
(水性インク組成物及びその製造方法)
水性インク組成物は、少なくとも、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性有機溶媒、水および顔料を含有している。また、水性インク組成物は、顔料分散液とポリウレタン樹脂組成物とこれら以外の残余のインク成分とを用いて製造することができる。
ポリウレタン樹脂組成物を用いて水性インク組成物を調製するには、特に限定しないで、従来公知の各種方法を採用することができる。典型的には、顔料と顔料の分散剤とを混合し、均一な顔料分散液を調製し、当該顔料分散液と、ポリウレタン樹脂組成物と、水、浸透促進剤、水溶性有機溶媒、pH調製剤、防腐剤、防かび剤等の残余の成分とを混合し十分に攪拌し溶解させる。十分に攪拌した後、目詰まりの原因となる粗大粒径及び異物を除去するためにろ過等を行って水性インク組成物を得ることができる。こうした水性インク組成物の調製にあたって、残余の成分は、ポリウレタン樹脂組成物に添加し混合しておくこともできる。特に、スチレン−アクリル酸樹脂にて顔料分散液を調製することが好ましい。
なお、上記典型例では、ポリウレタン樹脂組成物とは別個に顔料分散液を調製したが、ポリウレタン樹脂組成物と顔料とを用いて顔料分散液を調製し、別途調製した残余の成分を含むビヒクルと混合して水性インク組成物を調製してもよい。また、エージング樹脂と水性インク組成物を構成する他の全ての成分を任意の配合順序で適当に混合して水性インク組成物としてもよい。
なお、水性インク組成物を調製するのにあたっては、適当な分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミルなど)を用いることができる。
なお、既に説明したポリウレタン樹脂および水溶性有機溶媒以外の水性インク組成物の成分としては顔料のほか、必要に応じて、分散剤、水溶性有機溶媒、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、導電率調整剤、表面張力調整剤、分散剤、浸透促進剤、保湿剤、pH調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防カビ剤、溶解助剤等を含んでいる。
(顔料)
本インク組成物では、顔料は、好ましくは顔料分散液としてポリウレタン樹脂と混合される。顔料は、特に種類を限定しないで、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料として、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料等の有機顔料等を挙げることができる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。
ブラックインクに使用される顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの具体例としては、三菱化学製のNo.2300、No.900、HCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等、コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等、キャボット社製のRegal400R、同330R、同660R、Mogul L、同700、Monarch 800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等、デグッサ社製のColor BlackFW1、同FW2V、同FW18、同FW200、Color BlackS150、同S160、同S170、Printex 35、 同U、同V、同140U、Specisal Black 6、同5、同4A、同4等を挙げることができ、これらの1種又は2種の混合物として用いてもよい。
イエローインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、129、138、150、151、154、155、180、185等を挙げることができ、好ましくはC.I.ピグメントイエロー74、109、110、128及び138からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
また、マゼンタインク組成物及びライトマゼンタインク組成物に使用される顔料として
は、C.I.ピグメントレッド、5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、15:1、112、122、123、168、184、202、209及びC.I.ピグメントバイオレット19等を挙げることができ、好ましくはC.I.ピグメントレッド122、202、209及びC.I.ピグメントバイオレット19からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
さらに、シアンインク組成物及びライトシアンインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:34、16、22、60及びC.I.バットブルー4、60等を挙げることができ、好ましくはC.I.ピグメントブルー15:3、15:4及び60からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
顔料の具体例として、レッドインク組成物に使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264を挙げることができ、より好ましくは、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド264である。
本発明の好ましい態様によれば、顔料の平均粒径が150nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以上100nm以下程度のものである。顔料の添加量は十分な画像濃度が実現できる範囲で適宜決定されてよいが、最終製品たる水性インク組成物中においては、0.1wt%以上20wt%以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.2wt%以上10wt%以下である。
なお、顔料の配合量は濃淡インク組成物等のインク組成物の種類に応じて適宜変更することができる。顔料濃度が1.5wt%未満の水性インク組成物としては、ライトブラックインク組成物が挙げられる。ライトブラックインク組成物は、カーボンブラック1.5wt%以上のブラックインク組成物と組み合わされてインクジェット記録用等として使用されるものである。こうしたライトブラックインク組成物としては、特開2004−225036号公報及び特開2004−225037号公報に記載のカーボンブラック含有量が0.4wt%以上1.5wt%未満のライトブラックインク組成物やカーボンブラック含有量が0.01wt%以上0.4wt%未満のライトブラックインク組成物がある。
カーボンブラックの含有量が0.4wt%以上1.5wt%未満のライトブラックインク組成物としては、例えば、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下の組成物が挙げられる。このライトブラックインク組成物においては、水溶性ポリウレタン樹脂固形分量が0.2wt%以上4wt%以下、好ましくは0.5wt%以上2wt%以下であってもよい。こうしたライトブラックインク組成物では、水溶性ポリウレタン樹脂を主要樹脂とするため、エージングした水溶性ポリウレタン樹脂を用いることが効果的である。こうした、ライトブラックインク組成物中の顔料の含有量は、0.1wt%以上1.3wt%以下であることが好ましく、0.4wt%以上1.0wt%以下であることがさらに好ましい。
また、カーボンブラックの含有量が0.4wt%未満のライトブラックインク組成物としては、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上である組成物が挙げられる。このライトブラックインク組成物においては、水溶性ポリウレタン樹脂固形分量が1wt%以上10wt%以下、好ましくは2wt%以上6wt%以下であってもよい。このようなライトブラックインク組成物では、ポリウレタン樹脂ポリウレタン樹脂が主要樹脂であり、また、顔料に対して多量の水溶性ポリウレタン樹脂を含有しているため、エージングした水溶性ポリウレタン樹脂を用いることが一層効果的である。
また、顔料濃度が1.5wt%未満の水性インク組成物としては、ブラック以外の有彩色顔料を含んだライトカラークインク組成物が挙げられる。例えば、ライトマゼンタ組成物、ライトシアンインク組成物などである。これらのライトカラーインク組成物は、通常、有彩色顔料が1.5wt%以上のカラーインク組成物と組み合わされてインクジェット記録用等として使用される。
有彩色顔料の含有量が0.5wt%以上1.5wt%未満のライトカラーインク組成物としては、例えば、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の含有量の0.67倍以上2.5倍以下の組成物が挙げられる。このライトカラーインク組成物においては、水溶性ポリウレタン樹脂固形分量が0.3wt%以上4wt%以下とすることができる。こうしたライトカラーインク組成物では、水溶性ポリウレタン樹脂を主要樹脂とするため、エージングした水溶性ポリウレタン樹脂を用いることが効果的である。
なお、有彩色顔料の含有量が1.5wt%以上7wt%未満の通常濃度の各種有彩色のカラーインク組成物としては、例えば、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の含有量の0.04倍以上0.35倍以下の組成物が挙げられる。このカラーインク組成物においては、水溶性ポリウレタン樹脂固形分量が0.05wt%以上2.5wt%以下であってもよい。こうしたカラーインク組成物であっても、水溶性ポリウレタン樹脂を主要樹脂とするため、エージングした水溶性ポリウレタン樹脂を用いることが効果的である。
(分散剤)
顔料分散液等に用いられる顔料の分散剤として好ましい高分子材料としては、合成高分子が挙げられ、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのアクリル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン−アクリル酸樹脂;ポリウレタン樹脂;スチレン−マレイン酸樹脂;スチレン−無水マレイン酸樹脂;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びこれらの塩が挙げられる。これらの中で、特に、カルボキシル基(塩の形態であることが好ましい)を有する高分子化合物(例えば、上記のスチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体)、疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとの共重合体、及び疎水性基と親水性基を分子構造中に合わせ持ったモノマーからなる重合体を用いることが好ましい。より好ましくは、スチレン−アクリル酸樹脂である。上記の塩としては、ジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどの塩が挙げられる。これらの(共)重合体は、重量平均分子量が3,000〜30,000であるのが好ましく、より好ましくは5,000〜15,000である。
さらに他の好ましい高分子材料としては、天然高分子が挙げられ、その具体例としては、にかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミンなどのタンパク質類、アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類、サボニンなどのグルコシド類、アルギン酸及びアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
分散剤としては、また、脂肪酸塩類、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩類、高級アルキルスルホン酸塩、高級脂肪酸とアミノ酸の縮合物、スルホ琥珀酸エステル塩、ナフテン酸塩、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などの陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウムなどの陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。上記した界面活性剤はインク組成物に添加されることで、界面活性剤としての機能をも果たす。なお、既に述べたポリウレタン樹脂も分散剤として使用でき、また、エージングしたポリウレタン樹脂も分散剤として使用できる。
また、本発明に使用されるインク組成物には、上述した顔料に替えて、顔料粒子表面に直接分散性付与基を化学的に導入した、いわゆる表面処理顔料(自己分散顔料)を用いることもできる。
(水溶性有機溶媒)
残余の成分としての水溶性有機溶媒には、ポリウレタン樹脂組成物に含有される水溶性有機溶媒を用いてもよいし、当該水溶性有機溶媒以外の別の水溶性有機溶媒を用いても、これらを組み合わせて用いてもよい。こうした水溶性有機溶媒としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、Mw2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプ
ロピレングリコール、イソブチレングリコール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、ピロリドン類が挙げられる。なお、多価アルコール類としてはより好ましくはグリセリンである。これらの水溶性有機溶媒は、水性インク組成物中の他成分のインク組成物への溶解性を向上させ、さらに記録媒体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、さらにはノズルの目詰まりを有効に防止できるなどといった点において好ましい。こういった水溶性有機溶媒の添加量は適宜決定されてよいが、水性インク組成物中約1wt%以上約30wt%以下であることが好ましく、より好ましくは約5wt%以上約20wt%以下である。
また、他の好ましい水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、ジオール類が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。なお、低級アルキルおよび低級アルコールとは、炭素数1〜5程度の直鎖および分岐アルキル基あるいはそのアルコールをいうものとする。これらの水溶性有機溶媒は、紙などの濡れ性を高めて記録媒体への浸透性を向上させることができる。ジオール類としては、既に説明したように、例えば、炭素数5〜7の直鎖アルキルジオール類が好ましく、より好ましくは、1,2−ヘキサンジオールである。これらの水溶性有機溶媒は、水性インク組成物中、約1wt%以上約15wt%以下であることが好ましく、より好ましくは約2%以上約10wt%以下である。
また、浸透促進剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。前記浸透促進剤として、下記の一般式(1)で表わされるアセチレングリコール系化合物や、下記の一般式(2)で表されるポリシロキサン系化合物を使用することもできる。該アセチレングリコール系化合物としては、市販されているものを用いることができ、例えば、サーフィノール82,440,465,STG(商品名、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製),オルフィンY,オルフィンE1010(商品名、日信化学工業製)などが挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。また、該ポリシロキサン系化合物としては、例えば、ビッグケミー・ジャパン株式会社より市販されているシリコン系界面活性剤BYK−345、BYK−346、BYK−347、又はBYK−348が利用可能である。
該アセチレングリコール系化合物及び/又はポリシロキサン系化合物は、前記インク中、好ましくは、0.1〜5wt%、更に好ましくは、0.5〜2wt%含有される。
Figure 0005092250
(式中、0≦m+n≦50、R〜R11は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基
を表わす。)
Figure 0005092250
(式中、R1〜R7は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、j、k及びgは、それぞれ独立して、1以上の整数であり、EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基であり、p及びqは0以上の整数であるが、但しp+qは1以上の整数であり、EO及びPOは、[ ]内においてその順序は問わず、ランダムであってもブロックであってもよい)
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(Avecia社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができる。
さらに、pH調整剤または溶解助剤の例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩を挙げることができる。
酸化防止剤及び紫外線吸収剤の例としては、チバガイギー社のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、Irgacor252、153、Irganox 1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物等を挙げることができる。
本発明によれば、水溶性ポリウレタン樹脂を含有する水性インク組成物の調製時および調製後における、水性インク組成物の粘度等の物性変化を安定化することができる。したがって、特に、水溶性ポリウレタン樹脂含有量の多い水性インク組成物の粘度変化を回避又は抑制して、安定した吐出性能を発揮できるとともに画像形成能に優れたインク組成物を提供できるようになる。
また、本発明によれば、顔料を含まない状態でポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒とを含むポリウレタン樹脂組成物をエージングすることにより、小スケールおよび/または少ない時間でエージング効果が得られる。このため、効率的な製造が可能となる一方、生産調整も容易となる。
こうして得られた水性インク組成物は、ポリウレタン樹脂組成物を用いなかった場合と比較してその調製直後あるいはその後において粘度等の物性が安定化されている。したがって、例えばインクジェットプリンタ用の水性インク組成物として良好な吐出安定性を備えたものとなっている。また、本発明の水性インク組成物は、密封可能な容器に前記組成物の所定量を封入して所定温度(好ましくは目標温度±3℃)の恒温下で所定期間経過するまでの期間継続して静置し、該静置期間開始時と終了後の粘度を測定し、これらの粘度から下記式(1)から算出される粘度変化率(ΔV)が予め決められた数値以下あるいは未満となっていることが好ましい形態である。
ΔV(%)=|V−V|/V×100・・・(1)
ただし、Vは静置期間開始時の粘度であり、Vは静置期間終了後の粘度である。
なお、静置期間は、所定温度で静置を開始したときから開始できる。例えば、水性インク組成物の製造時から開始することもできる。水性インク組成物の製造時とは、水性インク組成物がタンク内等で調製された時点(第一の時点)、タンクから貯留用容器に充填された時点(第二の時点)、あるいは水性インク組成物が包装容器あるいはそれに類した容器に充填された時点(第三の時点)とすることができる。
また、本発明の水性インク組成物の評価基準としては、前記目標温度を50℃〜70℃の範囲の一つの温度とすることができる。具体的には、50℃、60℃、70℃等である。また、前記静置期間としては、適宜設定するものであるが、3日以上とすることができる。さらに、前記粘度変化率としては、水性インク組成物の用途やノズル構造に基づいて要求される特性等によって異なるが、例えば、70℃±3℃で保存する場合には6日間で10%未満とすることができ、好ましくは7%未満、より好ましくは4%未満とすることができる。
なお、水性インク組成物おける粘度は、動粘度(単位Pa・s)として測定され、その測定は逆流式粘度管を用いた測定方法あるいはこれと同等の精度及び正確性が得られる測定方法によることが好ましい。具体的には、キャノンフェンスケ型の逆流式粘度管(典型的には、離合社製のVMC−252型)を用い、20℃における管内の液体(インク)の移動時間により測定することができる。
また、水性インク組成物においては、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分が0.5wt%以上10wt%以下であることが好ましい。水溶性ポリウレタン樹脂が0.5wt%未満であるとインクジェット組成物として機能を果たせなくなり、10wt%を超えると組成物の粘度が上昇してしまい、やはりインクとしての機能を果たせなくなるからである。より好ましくは、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分が1wt%以上8wt%以下である。
特に、本発明の水性インク組成物は、上記したライトブラックインク組成物であることが好ましい。本発明の水性インク組成物は、水溶性ポリウレタン樹脂の含有量が高いほど有効であるからである。水溶性ポリウレタン樹脂を主要樹脂とするライトブラックインク組成物が良好な粘度安定性を備えていることにより、精度の高いモノクロ画像やグレースケールを再現性よく得ることができる。
本発明の水性インク組成物においては、前記水溶性有機溶媒を0.5wt%以上20wt%以下含有していることが好ましい。この範囲であると、組成物の粘度上昇を抑制するとともにエージング効果が十分に発揮されるからである。より好ましくは、水溶性有機溶媒が1wt%以上10wt%以下である。特に、本発明の水性インク組成物においては、1,2−ヘキサンジオールなどの1,2−ジオールを1wt%以上10wt%以下含有することが好ましい。また、グリセリンなどの保湿成分を5wt%以上25wt%以下含有することが好ましい。
さらに、水性インク組成物においては、水分散性スチレン−アクリル酸樹脂を分散剤として含有していることが好ましい。水分散性スチレン−アクリル酸樹脂を0.5wt%以上10wt%以下含有していることが好ましい。0.5wt%未満であると分散が不安定となり、10wt%を超えるとやはり分散が不安定となるからである。より好ましくは1wt%以上10wt%以下である。
なお、本発明によれば、インク組成物を付着させて記録媒体に印刷を行う記録方法であって、前述したインク組成物を使用する記録方法が提供される。例えば、インクジェット記録方式、ペン等の筆記具による記録方式、その他各種の印刷方式が挙げられる。特に、本発明によれば、インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、インク組成物として前述したインク組成物を用いる記録方法が提供される。さらにまた、本発明によれば、前述した記録方法によって印刷された記録物が提供される。本発明の記録物は、前述した構成からなるインクジェット記録方法を使用してなるため、優れた印字画像を形成することができる。本発明の記録物としては、普通紙上において上記のように耐光性に優れた印刷画像を有するものや、光沢性のインクジェットメディアにおいて上記のように耐光性に優れた印字画像を有するもの等を挙げることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例において特に断らない限り、実施例および比較例において、%はwt%を意味している。
(実施例I)
(エージング樹脂の調製)
水分散性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂(分子量約6000)の樹脂固形分15%のポリウレタン樹脂組成物(樹脂溶液)の試料A〜Fを表1に示す組成となるように調製した。試料A〜Cは、溶液中に1,2−ヘキサンジオールを含有する実施例試料であり、試料D〜Fは、溶液中に1,2−ヘキサンジオールを含有しない比較例試料である。これらの試料A〜Fを密閉容器に充填し、表2に併せて示す各条件で静置してエージング工程を実施して、ポリウレタン樹脂水溶液A〜Fを得た。なお、樹脂水溶液A〜Cは、1,2−へキサンジオールを水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して33.3%含有していた。
Figure 0005092250
各エージング樹脂水溶液A〜Fの粘度をPhysica社製粘弾性試験機を用いて測定した結
果(測定温度20℃)を表2に示す。表2に示すように、1,2−ヘキサンジオールとともにエージングする実施例のポリウレタン樹脂水溶液A〜Cでは、エージング工程開始前において高い粘度を示すが、その後5日間経過後には顕著に粘度が低下し、その後ほぼ安定化した。一方、比較例のポリウレタン樹脂水溶液D〜Fは、エージング開始工程時及びその後いずれの時点においても実施例より低い粘度であったが、粘度の低下程度が小さくかつ緩慢であった。
Figure 0005092250
(インク組成物の調製)
次に、表3に示す組成の水性インク組成物を調製した。なお、これらの水性インク組成物は、いずれも、カーボンブラック含有量が0.4%未満のライトブラックインク組成物である。具体的には、以下の表3に記載の各ブラックインク組成物についての各配合成分を混合し、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ〔直径=1.7mm;混合物の1.5倍量(重量)〕とともに2時間分散させることにより調製し、実施例3種及び比較例3種の計6種のブラックインク組成物とした。なお、表3に記載の水溶性樹脂(分散剤)としては、スチレン−アクリル酸共重合体(分子量=15000;酸価=100)を用いた。また、AQ593は、ポリプロピレン型エマルジョン(ビックケミージャパン株式会社製)であり、BYK348は、シリコーン系界面活性剤である。さらに、表3において、各インクには、その他に全体を100wt%とする為の純水が含まれている。
Figure 0005092250
(インク保存安定性の評価)
次に、上記のようにして調製した実施例1〜3及び比較例1〜3の水性インク組成物を用いて、インク保存安定性の評価を行った。評価方法は、水性インク組成物を調製直後にインクパックに50cc封入し、70℃の環境下で6日間(144時間)放置した。放置前後のインク組成物の粘度を、Physica社製粘弾性試験機を用いて測定(測定温度20℃)し、次式により粘度変化率(ΔV)を求めた。粘度変化率を、以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
ΔV(%)=|V−V0|/V0×100
ただし、Vは、放置時の粘度であり、Vは6日経過時の粘度である。
評価A:インクの粘度変化が4%未満であった。
評価B:インクの粘度変化が4%以上7%未満であった。
評価C:インクの粘度変化が7%以上であった。
Figure 0005092250
表4に示すように、実施例1〜3の水性インク組成物はいずれもその粘度変化率が7%未満であって、良好な安定性を示していた。なかでも、実施例2及び3は、4%未満であってさらに良好な安定性を示していた。これに対して、比較例1〜3の水性インク組成物は、いずれも7%以上の粘度変化率であった。これらのことから、本実施例によれば、水溶性ポリウレタン樹脂は、水性インク組成物に用いる水溶性有機溶媒と予め混合しエージングしておくことで、ポリウレタン樹脂と水とのみでエージングするのに比べて、水性インク組成物の調製時において当該組成物の粘度を安定化させることが示された。また、水溶性ポリウレタン樹脂をエージングするには、1,2−ヘキサンジオールとエージングすることが好ましいことが示された。
さらに、本実施例によれば、本実施例のポリウレタン樹脂組成物A〜Cを、70℃で5日(120時間)以上9日(216時間)以下エージングすることで好ましいライトブラックインク組成物が得られることが示された。また、70℃で7日(168時間)以上9日(216時間)以下エージングすることがより好ましいことも示された。
(実施例II)
(エージング樹脂の調製)
水分散性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂(分子量約6000)の樹脂固形分15%の水溶性ポリウレタン樹脂組成物(樹脂溶液)の試料2A〜2Hを表5に示す組成となるように調製した。試料2A〜2Fは、溶液中に1,2−ヘキサンジオールとグリセリンとを含有する実施例試料であり、試料2Gは1,2−ヘキサンジオールのみを含有する実施例試料であり、2Hは、溶液中に1,2−ヘキサンジオールを含有しない比較例試料である。これらの試料2A〜2Hを密閉容器に充填し、表5に併せて示す各条件で静置してエージング工程を実施して、ポリウレタン樹脂水溶液2A〜2Hを得た。なお、樹脂水溶液2A〜2Gは、1,2−へキサンジオールを水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して33.3%含有し、2A〜2Cはグリセリンを水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して33.3%含有し、2Dから2Fは同66.6%を含有していた。
Figure 0005092250
(低温保存評価)
こうしてエージングした各水溶性ポリウレタン樹脂水溶液2A〜2Hについて以下に示す方法で低温保存評価を行った。すなわち、ポリウレタン樹脂水溶液50mlをガラス瓶に封入し、−20℃の環境下で4日間放置し、放置前後のポリウレタン樹脂水溶液の粘度をPhysica社製粘弾性試験機を用いて測定し(測定温度20℃)、粘度変化率を算出した。
なお、低温評価は、以下の基準で行った。結果を表6に示す。
評価A:ポリウレタン樹脂水溶液の粘度変化が6%未満
評価B:ポリウレタン樹脂水溶液の粘度変化が6%以上10%未満
評価C:ポリウレタン樹脂水溶液の粘度変化が10%以上
Figure 0005092250
表6に示すように、1,2−ヘキサンジオールとグリセリンとを含有する2A〜2Gの水溶性ポリウレタン樹脂水溶液では、低温で保存しても良好な粘度安定性を有していたが、1,2−ヘキサンジオールのみを含有する樹脂水溶液2G及びポリウレタン樹脂のみで有機溶媒を含まない樹脂水溶液2Hは、ともに凍結から解凍時において粘度が上昇し、粘度変化率が10%を超える結果となった。
(インク組成物の調製)
次に、調製した水溶性ポリウレタン樹脂水溶液2A〜2Hを用いて表7に示す組成で水性インク組成物を調製した。なお、これらの水性インク組成物は、いずれも、カーボンブラック含有量が0.4wt%未満のライトブラックインク組成物である。具体的には、以下の表7に記載の各ブラックインク組成物についての各配合成分を混合し、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ〔直径=1.7mm;混合物の1.5倍量(重量)〕とともに2時間分散させることにより調製し、実施例3種及び比較例3種の計6種のブラックインク組成物とした。なお、表7に記載の水溶性樹脂(分散剤)としては、スチレン−アクリル酸共重合体(分子量=15000;酸価=100)を用いた。また、AQ593は、ポリプロピレン型エマルジョン(ビックケミージャパン株式会社製)であり、BYK348は、シリコーン系界面活性剤である。さらに、表7において、各インクには、その他に全体を100wt%とする為の純水が含まれている。
Figure 0005092250
(インク保存安定性の評価)
次に、上記のようにエージング工程を実施して調製した水溶性ポリウレタン樹脂水溶液2A〜2Hを用いて実施例4〜10及び比較例4の水性インク組成物を用いて、インク保存安定性の評価を行った。評価方法は、水性インク組成物を調製直後にインクパックに50cc封入し、70℃の環境下で6日間(144時間)放置した。放置前後のインク組成物の粘度を、Physica社製粘弾性試験機を用いて測定(測定温度20℃)し、次式により
粘度変化率(ΔV)を求めた。粘度変化率を、以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
ΔV(%)=|V−V0|/V0×100
ただし、V0は、放置時の粘度であり、Vは6日経過時の粘度である。
評価A:インクの粘度変化が4%未満であった。
評価B:インクの粘度変化が4%以上7%未満であった。
評価C:インクの粘度変化が7%以上であった。
Figure 0005092250
表8に示すように、実施例4〜10の水性インク組成物はいずれもその粘度変化率が7%未満であって、良好な安定性を示していた。なかでも、実施例5,6,8,9及び10は、4%未満であってさらに良好な安定性を示していた。これに対して、比較例4の水性インク組成物は、7%以上の粘度変化率であった。これらのことから、水溶性ポリウレタン樹脂は、水性インク組成物に用いるジオール類とトリオール類とともに予め混合しエージングしておくことで、ポリウレタン樹脂と水とのみでエージングするのに比べ、また、ポリウレタン樹脂と1,2−ヘキサンジオールとをエージングするのに比べて、低温保存性が優れるととともに、こうしたトリオール類を含んでいても、エージング条件を変える必要もなく、しかも、水性インク組成物の調製時において当該組成物の粘度を安定化させることが示された。
(実施例III)
(インク組成物の調製)
実施例IIで調製したエージング樹脂2E、2G及び2Hを用いて、表7に示す組成で実施例11〜20及び比較例5〜9の合計15種類の各種の水性カラーインク組成物を調製した。具体的には、以下の表9に記載の各カラーインク組成物についての各配合成分を混合し、サンドミル(安川製作所製)中でガラスビーズ〔直径=1.7mm;混合物の1.5倍量(重量)〕とともに2時間分散させることにより調製した。なお、表9に記載の水溶性樹脂(分散剤)としては、スチレン−アクリル酸共重合体(分子量=15000;酸価=100)を用いた。
Figure 0005092250
(インク保存安定性の評価)
次に、実施例11〜10及び比較例5〜9の合計15種類のカラーインク組成物について、インク保存安定性の評価を行った。
評価は、水性インク組成物を調製直後にインクパックに50cc封入し、70℃の環境下で6日間(144時間)放置して行った。放置前後のインク組成物の粘度を、Physica社製粘弾性試験機を用いて測定(測定温度20℃)し、次式により粘度変化率(ΔV)を求めた。粘度変化率を、以下の基準で評価した。結果を表10に示す。
ΔV(%)=|V−V0|/V0×100
ただし、Vは、放置時の粘度であり、Vは6日経過時の粘度である。
評価A:インクの粘度変化が4%未満であった。
評価B:インクの粘度変化が4%以上7%未満であった。
評価C:インクの粘度変化が7%以上であった。
Figure 0005092250
表10に示すように、実施例11〜20のカラーインク組成物は、いずれもその粘度変化率が4%未満であって、良好な安定性を示していた。これに対して、比較例5〜9のカラーインク組成物は、いずれも7%以上の粘度変化率であった。これらのことから、水溶性ポリウレタン樹脂は、水性インク組成物に用いるジオール類あるいはジオール類とトリオール類とともに予め混合しエージングしておくことで、ポリウレタン樹脂と水とのみでエージングするのに比べて、水性インク組成物の調製時において当該組成物の粘度を安定化させることが示された。

Claims (19)

  1. 水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物であって、
    水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、
    前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記水溶性有機溶媒を前記水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上50wt%以下含有し、加熱を伴い60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージングが施されて得られ、前記水溶性有機溶媒は、1種あるいは2種以上のジオール類である、実質的な粘度変化を有しない組成物。
  2. 前記水溶性有機溶媒は、1,2−ヘキサンジオールである、請求項に記載の組成物。
  3. 水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物であって、
    水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、
    前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含み、
    前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記トリオール類を、水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上100wt%以下含有し、加熱を伴い60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージングが施されて得られる、実質的な粘度変化を有しない組成物。
  4. 前記トリオール類はグリセリンを含む、請求項に記載の組成物。
  5. 前記ジオール類は1,2−ヘキサンジオールを含み、前記トリオール類はグリセリンを含む、請求項又はに記載の組成物。
  6. 前記水溶性有機溶媒を0.5wt%以上20wt%以下含有する、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  7. 前記ポリウレタン樹脂組成物の所定量を密封して70℃±3℃の恒温下で24時間静置し、該静置期間開始時の粘度(V 0 該静置期間終了後の粘度(V)を測定し、これらの粘度から下記式(1)に基づいて得られる粘度変化率(ΔV)が2.5%以下である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
    ΔV(%)=|V−V0|/V0×100・・・(1)
  8. 前記水性インク組成物は、カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上である水性インク組成物である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  9. 水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
    水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含み、前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記水溶性有機溶媒を前記水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上50wt%以下含有する混合物の粘度を低下させる、60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージング工程を備え
    前記水溶性有機溶媒は1種あるいは2種以上のジオール類である、製造方法。
  10. 水性インク組成物用のポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
    水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含み、前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含み、前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記トリオール類を、水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上100wt%以下含有する混合物の粘度を低下させる、60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージング工程を備える、製造方法。
  11. 請求項9又は10に記載の水性インク用ポリウレタン樹脂組成物の製造方法によって得られる水性インク用ポリウレタン樹脂組成物。
  12. 水性インク組成物の製造方法であって、
    以下の(a)〜(c):
    (a)水と顔料とを含む顔料分散液、
    (b)水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記水溶性有機溶媒を前記水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上50wt%以下含有し、加熱を伴い60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージングが施されて得られる、実質的な粘度変化を有しないポリウレタン樹脂組成物、及び
    (c)前記(a)及び(b)以外の前記水性インク組成物の成分
    を用いて前記水性インク組成物を調製する工程
    を備え
    前記水溶性有機溶媒は1種あるいは2種以上のジオール類である、製造方法。
  13. 水性インク組成物の製造方法であって、
    以下の(a)〜(c):
    (a)水と顔料とを含む顔料分散液、
    (b)水溶性ポリウレタン樹脂と水溶性有機溶媒と水とを含有し、前記水溶性有機溶媒は1種又は2種以上のジオール類と1種又は2種以上のトリオール類とを含み、前記水溶性ポリウレタン樹脂を5wt%以上50wt%以下含有し、前記トリオール類を、水溶性ポリウレタン樹脂固形分に対して10wt%以上100wt%以下含有し、加熱を伴い60℃以上80℃以下で120時間以上216時間以下静置するエージングが施されて得られる、実質的な粘度変化を有しないポリウレタン樹脂組成物、及び
    (c)前記(a)及び(b)以外の前記水性インク組成物の成分
    を用いて前記水性インク組成物を調製する工程
    を備える、製造方法。
  14. 前記(a)の顔料分散液は、水分散性スチレン−アクリル酸樹脂を含有している、請求項12又は13に記載の製造方法。
  15. 前記水性インク組成物は、カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上である、請求項1214のいずれかに記載の製造方法。
  16. カーボンブラックを含有するブラックインク組成物であって、
    前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%以上1.5重量%未満のときには、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の0.67倍以上2.5倍以下であり、前記カーボンブラックの含有量が0.4重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記カーボンブラックの含有量の7.5倍以上であ、請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を含有する、ブラックインク組成物。
  17. 有彩色顔料を含有するカラーインク組成物であって、
    前記有彩色顔料の含有量が1.5重量%以上7重量%未満のときには、水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の0.04倍以上0.35倍以下であり、前記有彩色顔料の含有量が0.5重量%以上1.5重量%未満のときには、前記水溶性ポリウレタン樹脂の固形分含有量が前記有彩色顔料の0.67倍以上2.5倍以下であ、請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を含有する、カラーインク組成物。
  18. 請求項1215のいずれかに記載の水性インク組成物の製造方法によって得られる、水性インク組成物。
  19. 水性インク組成物であって、
    顔料分散液に請求項1〜のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を混合して得られる、組成物。
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