JP5092122B2 - 新規ステロイド配糖体、ngf関連活性物質、その製造方法及び探索方法、並びに脳機能障害予防薬 - Google Patents
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Description
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、オニヒトデの研究を通じて明らかになった新規ステロイド配糖体及び新規ステロイド配糖体の研究により明らかになった有効利用法を提供する。
(1)(a)すなわち、本発明の新規ステロイド配糖体は、下記一般式(1)又は式39Aに示す構造を有する化合物である。
(式(1)中、XはX1又はX2;YはXがX1のときY1及びY3の一方、XがX2のときY1〜Y3のうちのいずれか1つである。なお、X1〜2及びY1〜3は*の部分にて結合する置換基である。)
(b)また、本発明のその他の新規ステロイド配糖体は、下記一般式(1’)若しくは(1”)、又は、式64−3、65−3、69−11若しくは101−3で表されるステロイド配糖体である。
(式(1’)中、YはY4〜7のうちのいずれか1つである。RはYがY4の場合は水素、Y5〜7の場合はメチル基である。なお、Y4〜7は*の部分にて結合する置換基である。)
(式(1”)中、YはY4、6〜8のうちのいずれか1つである。RはYがY4の場合は水素、Y5〜7の場合はメチル基である。なお、Y4、6〜8は*の部分にて結合する置換基である。)
(c)これら(a)及び(b)に示す化合物は、従来、オニヒトデからは単離されていない化合物であり、ステロイド骨格の一端又は両端に1つの単糖が結合した構造を有している。一般的にヒトデが含有するステロイド配糖体は強い毒性を有することが知られているが、これら化合物は毒性が表れる濃度以下で強いNGF様活性及び/又はNGF増強活性を示すものである。従って、一般式(1)、(1’)及び(1”)並びに式39A、64−3、65−3、69−11及び101−3で表されるステロイド配糖体はNGF関連活性物質として提供することができる。なお、本明細書において「NGF関連活性物質」などのような「物質」とは、純粋な化合物を示す他、複数の化合物を含む混合物であっても良い。ところで、一般式(1)中、XがX1で、YがY2である化合物もNGF関連活性(少なくともNGF増強活性)を有することは十分に予想できる。また、一般式(1’)及び(1”)中、Yの種類にかかわらず、Rを水素及びメチル基から自由に選択した化合物もNGF関連活性(少なくともNGF増強活性)を有することは十分に予想できる。
また、公知のオニヒトデ由来のステロイド配糖体と、NGF関連活性を示す本発明のステロイド配糖体との構造を比較した結果、NGF関連活性を示すための条件を推測することに成功し、以下の発明を完成した。
すなわち、本発明のNGF関連活性物質は、下記式(2)に記載の4環式縮合核を骨格とし、A核及びD核のそれぞれに1又は2の単糖が直接又は間接的に結合するステロイド配糖体を含むことを特徴とする。
(式(2)中、A〜Dの各核は二重結合を有することができ、且つ、任意の水素原子を−OR基(Rは水素、アルキル基又はアシル基)又はメチル基にて置換することができる。)
なお、「単糖がA核(D核)に直接的に結合する」とは、1又は2つの単糖(2つの場合は単糖同士で結合した二糖類も含む)がその単糖におけるOH基によってA核などに結合していることをいう。そして、「単糖がA核(D核)に間接的に結合する」とは、1又は2つの単糖(2つの場合は単糖同士で結合した二糖類も含む)が間に1以上の炭素原子などからなる基を介してその単糖におけるOH基によってA核などに結合していることをいう。間に介される基としてはアルキレン基のほか、ケトン、エーテル、二重結合などを一部乃至全部に有していても良い。
ここで、A核及びD核の双方に1つずつの単糖が結合している化合物はNGF様活性 及びNGF増強活性を示し、A核及びD核のいずれか一方に1又は2つの単糖が結合している化合物は、主にNGF増強活性を示すことが判明している。
従って、NGF増強活性をもつステロイド配糖体としては、前記A核又は前記D核のいずれか一方に1又は2の単糖が直接又は間接的に結合している化合物である。
そして、前記のNGF増強活性を主に示すステロイド配糖体としては、下記式33B、34B2、39A2、39A3、74−2及び74−4のうちの少なくとも一種が例示できる。これらの化合物は全てオニヒトデ以外のヒトデから単離されている既知の化合物であるが、今回、本発明者らによりNGF関連活性を有することが明らかにされたものである。
ここで、前記ステロイド配糖体はヒトデ綱に属する生物からの抽出物に含有される化合物であることができる。
(2)そして、オニヒトデからの抽出物はNGF関連活性を発現する分画を含むことが判明している。これらの分画は、上述の新規ステロイド配糖体を単離することなくNGF関連活性を示す。また、上述の新規ステロイド配糖体はオニヒトデ抽出物の一部分画から単離されたものであり、上述した新規ステロイド配糖体が含まれないと予想される分画についても高いNGF関連活性を示すことが判明している。これら知見に基づいて以下の発明を完成した。
すなわち、NGF関連活性物質を得る方法としては、アルコール又はアセトンからなる有機溶媒にて抽出したオニヒトデの有機溶媒抽出物から疎水分画を分離する工程と、
シリカゲル及び/又はデキストラン系担体を用いたクロマトグラフィ法にて該疎水分画を分画する工程と、を有することを特徴とする。
有機溶媒抽出物から疎水分画を分離することでステロイド配糖体を含む分画を得ることができ、その後のクロマトグラフィ法にてNGF関連活性を有するステロイド配糖体を含む分画を得ることができるものと推測される。
特に、クロマトグラフィ法としては、TLC(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール=8/2)にて測定したRf値が0.20以上、0.64以下の範囲内に含まれる分画を該疎水分画からクロマトグラフィ法にて分離する工程を採用することができる。このRf値を示す分画を分離することで高いNGF関連活性を示すNGF関連活性物質を得ることができる。
更に、クロマトグラフィ法としては、TLC(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール=8/2)にて測定したRf値が0.20未満の分画を該疎水分画からクロマトグラフィ法にて除外する工程を採用することができる。このRf値を示す分画を除外分離することで毒性の高い分画が除去できる。
また、前記クロマトグラフィ法にて分離する工程として、前記Rf値が0.52以上の分画を分離する工程を含むことで、より高いNGF関連活性を示すNGF関連活性物質を得ることができる。更に、前記クロマトグラフィ法にて分離する工程は、前記Rf値が0.39以下の分画を分離する工程を含むこともできる。
これら製造方法にて得られたNGF関連活性物質は、上述の新規ステロイド配糖体からなる群のうちの少なくとも一の化合物を含有するものが望ましい。
(3)更に、NGF関連活性物質を効率的に探索する手法を発明した。
すなわち、本発明のNGF関連活性物質の探索方法は、上記式(2)に記載の4環式縮合核を骨格とし、A核及びD核の少なくとも一方に1又は2の単糖が直接又は間接的に結合するステロイド配糖体を含むか否かによりNGF関連活性の有無を判別することを特徴とする。
式(2)で示される4環式縮合核と単糖とが結合した化合物は、サポニンなどで代表されるように、含有するか否かの判定が容易な化合物である。その後、単糖の結合位置及び結合数を判別して上述の式(2)で示される4環式縮合核と所定個の単糖とが結合した化合物に該当するか否かを判断すればよい。ここで、単糖の結合数や結合位置も比較的容易に判別することができるので、従来の広くNGF関連活性物質をスクリーニングする方法と比較しても全体として簡便な方法である。
従って、4環式縮合核に糖が結合した配糖体(ステロイド配糖体など)の検出という比較的容易な操作により、NGF関連活性物質及びその原料動物(植物)になりうる有望な候補を大まかに絞り込むことができ、探索に要する時間を大きく短縮することができる。
つまり、サポニン等のステロイド配糖体を含む生物材料を従来の方法などで効率的に絞り込むことで、その後に構造解析を行う化合物の数を減らすことが可能になり、NGF関連活性物質の探索が容易になる。その後、絞り込みを行った生物材料などから、目的成分を分離して構造解析した物質について、その構造が前述の構造を有するか否かを判断することで、PC12細胞アッセイを行うことなく、NGF関連活性物質を探索することができる。また、これまでに発見されている多数のステロイド配糖体についてもその構造が前述の構造を有するか否かを判断することで、PC12細胞アッセイを行うことなく、NGF関連活性物質を探索することができる。
特に、前記ステロイド配糖体はヒトデ綱からの抽出物から探索されることが望ましい。
そして、本発明のNGF関連活性物質の探索方法は、しらみつぶしに天然資源中の有効成分を探索する以外で、簡単にNGF関連活性物質を探索することができる効果を有する。
図2 アカンタステロサイド40A及びNGFをPC12細胞に添加した様子を示した顕微鏡写真のコピーである。
図3 実施例で得られたオニヒトデ抽出物から得られた活性画分fr.CをHPLC(第1回目)にて分析した結果と、それぞれのピークに対応するステロイド配糖体を示した図である。
図4 実施例の老齢雄性マウスにおける学習記憶障害に対する作用の評価結果を示すグラフである。
本発明の新規ステロイド配糖体は下に示すアカンタステロサイド(acanthasteroside)34A、34B、34C、39A、40A及び40Bの6個の化合物、並びに、下記式80−3、92−2、78−3、101−3、64−3、65−2、65−3、76−3、62−3、69−11、42−2(アカンタステロサイド39B)、35−2(アカンタステロサイド39A4)の12個の化合物である。
(NGF関連活性物質)
本発明のNGF関連活性物質としては上述の新規ステロイド配糖体が挙げられる。そして、上記式(2)にて示された4環式縮合核({ペルヒドロ}シクロペンタフェナントレン環及びその誘導体)を骨格とする化合物であり、A核及びD核のそれぞれに1又は2の単糖が直接又は間接的に結合するステロイド配糖体を含むものである。式(2)中、A〜Dの各核はそれぞれ独立して二重結合を有することができる。また、任意の水素原子を−OR基(Rは水素、アルキル基又はアシル基)又はメチル基にて置換することができる。アルキル基としては炭素数1〜3程度、特にメチル基が好ましく、アシル基としては炭素数1〜3程度、特にアセチル基が好ましい。また、4環式縮合核に直接結合した−OSO3H基(Na塩、K塩なども含む)を有しないことが望ましい。
更に、式(2)で表される4環式縮合核はステロイドの核となる部分なので、任意の水素が任意の基にて置換されることが可能である。例えば、多数の公知のステロイドが有するように、シクロペンタフェナントレン環の17位に下記式(A)で示したような骨格をもつ置換基が結合した化合物が例示できる。
具体的には、式(2)にて表される4環式縮合核を有するステロイド配糖体としては上述の式33B、34B2、39A2、39A3、74−2及び74−4にて表される化合物が例示される。
ここで、NGF様活性を示す化合物を得たい場合には、単糖がA核及びD核の双方に結合した化合物を用いる。NGF増強活性を示す化合物を得たい場合には、単糖または二糖類がA核及びD核のいずれか一方に結合した化合物を用いる。単糖が結合する部位も特に限定せず、単糖がもつ炭素のどの部位にて結合しても良い。単糖はA核やD核に結合する際に直接的、間接的を問わずに結合している。間接的に結合する場合、間に介される基としては、アルキレン基のほか、ケトン、エーテル、二重結合などを一部乃至全部に有する基でも良い。
単糖の種類は特に限定しない。ペントース、ヘキソースなどどのような炭素数のものでもよい。また、2つの単糖が結合した二糖であってもよく、更には一部OH基がOR基(Rはアルキル基(例えば炭素数1〜3程度、特にメチル基が好ましい)又はアシル基(例えば炭素数1〜3程度、特にアセチル基が好ましい)にて置換されていても良い。)及び/又は水素にて置換されていてもよい。単糖としては、キシロース、などが例示できる。
ここで、前記ステロイド配糖体はヒトデ綱に属する生物からの抽出物に含有される化合物であることが望ましい。
(NGF関連活性物質の製造方法)
本発明のNGF関連活性物質を得る方法としては、アルコール又はアセトンからなる有機溶媒にて抽出したオニヒトデの有機溶媒抽出物から疎水分画を分離する工程と、シリカゲル及び/又はデキストラン系担体を用いたクロマトグラフィ法にてその疎水分画を分画する工程とを有することを特徴とする。本製造方法にて得られたNGF関連活性物質は、上述の新規ステロイド配糖体からなる群のうちの少なくとも一の化合物を含有することが望ましい。
・抽出操作
有機溶媒抽出物は、オニヒトデをすりつぶしたり粉砕したりした後に有機溶媒に浸漬することで、又は、有機溶媒の存在下にオニヒトデをすりつぶしたり粉砕することによって得ることができる。後の操作を容易に行うためにろ過を行って夾雑物を除去することが望ましい。オニヒトデはそのまま、凍結状態、乾燥状態などどのような状態で抽出操作に供しても良い。特に、取扱性の向上、含有する成分の劣化・損失の抑制などの目的で、凍結乾燥を採用することが好ましい。有機溶媒はメタノール、エタノール、n−,iso−プロパノールなどのアルコールやアセトンなどから適宜選択できる(好ましくはメタノールを選択する)。
・疎水分画の分離
疎水分画を分離できる方法ならどのような方法を採用しても良い。例えば、逆相系の担体を用いて疎水分画を吸着させて分離する工程である。逆相系の担体としてはODS系などが例示できる。化学構造、製品名などを例示すると、ODS(C18)、ODS以外の逆相系担体、およびDIAION、SEPABEADSなど合成吸着樹脂が挙げられる。
逆相系の担体に吸着させる方法を採用する場合、前述の有機溶媒抽出物中に水などを加えて極性を調節し担体に疎水分画が吸着されるようにする。例えば、ODS系の担体を採用し、且つ、メタノール−水系の展開溶媒を採用する場合に、メタノール:水=1:1程度の割合で混合した後に担体と接触させることで疎水分画は概ね吸着分離される。
その後、展開溶媒中のメタノール濃度を上昇させていくことで、担体に吸着した疎水分画を速やかに溶出・分離することができる。上記条件下においては、特に、70%−90%メタノールで溶離される分画に含まれる成分を疎水性成分として採用することが望ましい。
・疎水分画を更に分画する工程
先の工程で得られた疎水分画をシリカゲル及び/又はデキストラン系担体(順相系)を用いたクロマトグラフィ法にて分画する工程である。溶媒の極性を順次変化させることで疎水分画中に含まれる成分を速やかに分離できる。好ましい担体として化学構造及び製品名を例示すると、シリカゲル、Sephadex LH20などのデキストラン系担体が挙げられる。
(a)分離の程度を判断する手法としては原理的には得られたフラクション中のNGF関連活性の強度及び毒性の強度を判定することで行うことができる。NGF関連活性の測定は、PC12細胞など一般的な細胞を用いた試験系を用い、神経突起伸長を誘導するかどうかで判断する。単独で神経突起伸長を誘導する場合にはNGF様活性を示す分画であり、NGFの活性を増強する場合にはNGF増強活性を示す分画である。PC12細胞が損傷を受ける場合には毒性があるものと判断できる。
(b)簡易的に分離の程度を判断する手法としてはTLCのRf値により判断する方法がある。TLCの条件としては、担体がシリカゲル、溶離液がクロロホルム/メタノール=8/2を採用する。分離した分画のRf値が0.20以上、0.64以下の範囲内に含まれる場合に目的の分画であると判断することができる。このRf値を示す分画を分離することで高いNGF関連活性を示すNGF関連活性物質を得ることができる。
また、同様のTLC条件を採用し、Rf値が0.20未満の分画を前述の疎水分画から除外して残った分画を目的の分画とすることができる。具体的にはRf値が0.20未満の成分が混入しないように分離条件を制御することができる。
ここで、Rf値が0.52以上の分画を含むようにすることで、より望ましいNGF関連活性を有する分画を得ることができる。また、Rf値が0.39以下の分画を含むことも望ましい。
・その他
必要に応じて、その他の分離方法を追加することができる。例えば、上述の操作を繰り返し適用したり、他の担体を用いたクロマトグラフィ法にて分離したり、HPLCを用いて分離したりすることができる。
(NGF関連活性物質の探索方法)
本発明のNGF関連活性物質の探索方法は、上記式(2)に記載の4環式縮合核を骨格とし、A核及びD核の少なくとも一方に1又は2の単糖が直接又は間接的に結合するステロイド配糖体を含むか否かによりNGF関連活性の有無を判別する。これらの化合物については前述のNGF関連活性物質の欄にて説明した事項がそのまま妥当するので更なる説明は省略する。
特に、ヒトデ綱に属する生物から探索することが効率的である。式(2)で示される4環式縮合核と単糖とが結合した化合物(4環式縮合核を有するアグリコン)は、サポニンなどで代表されるように、含有するか否かの判定が容易な化合物である。従って、4環式縮合核を有するアグリコンの検出という比較的容易な操作によりNGF関連活性物質及びその原料動物(植物)になりうる有望な候補を大まかに絞り込むことができ、探索に要する時間を大きく短縮することができる。
その後、単糖の結合位置及び結合数を判別して上述の式(2)に該当する化合物であるか否かを判断すればよい。ここで、単糖の結合数や結合位置も比較的容易に判別することができるので、従来の広くNGF関連活性物質をスクリーニングする方法と比較しても全体として簡便な方法である。例えば、単糖の含有割合を測定し、その値をこれらステロイド配糖体の濃度などと比較することで式(2)で表される4環式縮合核に対する単糖の結合数を算出できる。また、−OSO3H基(Na塩、K塩なども含む)を有していない化合物を探索することが望ましい。
(抽出)
沖縄で採集したオニヒトデ4.5kg(湿質量)を凍結乾燥し、乾燥品1.2kgをメタノール16.5Lとともにミキサーで破砕し、ポリタンク中、室温で1週間放置した。混合物を、ろ紙を用いて吸引ろ過し、残渣をメタノールで洗浄し、ろ液に合わせた。ろ液19Lを減圧濃縮してメタノール抽出物314gを得た。
(疎水分画の分離)
上記メタノール抽出物314gを50%メタノール水溶液1Lに溶解し、逆相カラム(Cosmosil 140 C18−OPN、ナカライテスク、1kg、φ105×200mm)を用いてクロマトグラフィーを行った(流速は自然落下速度)。溶離液と体積、フラクション(fr)番号は以下のとおり:50%MeOH(1.5L、fr.1−3)、60%MeOH(1.5L、fr.4−6)、70%MeOH(3L、fr.7−12)、80%MeOH(2.1L、fr.13−17)、90%MeOH(1.5L、fr.18−20)、MeOH(1.5L、fr.21−24)。
70%−90%メタノールで溶離されるフラクション(fr.11−19)を合わせ減圧濃縮してステロイド配糖体(サポニン)含有部4.76gを得た。
(クロマトグラフィ法)
上記ステロイド配糖体含有部4.76gをクロロホルム−メタノール(95:5)100mLに溶解し、シリカゲルカラム(Hi−Flash2L、山善、165g、φ48x170mm)を用いてクロマトグラフィーを行った(流速20mL/min)。溶出液は、クロロホルム−メタノール(95:5)から同(45:55)の直線グラジエント(120分)を用い、3分(60mL)ごとに分取した。fr.24−26(69−78分)を合わせ減圧濃縮し、神経突起伸張活性を示す画分fr.A277mgを得た。
この物質(5μg/mL)はPC12細胞の26%に神経突起の伸張を誘導し、神経突起を伸張しない程度の微量のNGF(1.5ng/mL)の存在下では神経突起伸張活性は77%に増強された。
また、fr.B(572mg、fr.27−29)、fr.C(930mg、fr.30−34)は単独では突起伸張活性を示さなかったが、NGF(1.5ng/mL)の活性を27%(fr.B)、45%(fr.C)まで増強した。以降の高極性画分fr.D(231mg)、fr.E(988mg)はNGF関連活性を示す前に細胞毒性を示した。
(NGF関連活性の測定方法)
ラット副腎髄質褐色細胞腫由来PC12細胞は、理研セルバンクから入手した。
凍結保存細胞(2x104細胞)を培地(MEME−10%牛胎児血清−5%馬血清)で洗浄し、培地10mLとともに9cmシャーレに撒き、5%CO2雰囲気下、37℃、1週間静置培養した。細胞を収穫し新しい培地で2x105細胞/シャーレになるように希釈して1週間培養する継代培養操作を4回繰返した後、収穫した細胞を試験に用いた(継代操作は12回まで)。以下、培養とは5%CO2雰囲気下、37℃で行うものとする。
24穴マイクロタイタープレートの各ウエルに、2x104細胞のPC12細胞を含む培地1mLを入れ、24時間静置培養した。培地を、適当な濃度のサンプルを含む無血清MEME培地1mL(1%DMSO含有)に交換し、24時間ごとに1週間、細胞の様子を観察した。約100細胞が観察できる視野3つを無作為に選択し、突起長が細胞径より長い細胞数を計測して、その割合をパーセントに換算して、神経突起伸張活性とした。
単独で添加した場合の神経突起伸長活性をNGF様活性の値とし、神経突起伸長を誘導しない濃度(1.5ng/mL)のNGFを添加した状態で更に添加した場合の神経突起伸長活性をNGF増強活性の値とした。
〔試験2:fr.Aから新規ステロイド配糖体を単離する方法〕
・HPLC(1回目)
上記の活性画分fr.A277mgをHPLCで精製した。条件は次のとおり:カラムTSK gel ODS−120T(φ20x250mm、YMC)、溶媒70%MeOH、流速8mL/min、検出波長205nm、1/3づつ注入。ピークごとに分取し、25画分を得た。
・HPLC(2回目以降)
上記の画分のうちfr.21(17.6mg)をHPLC(溶媒40%MeCN、カラムなどその他の条件は同上)で精製し、新規ステロイド配糖体であるアカンタステロサイド40B(15.0mg)を得た。また、fr.22(52.5mg)をHPLC(同条件)で精製し、新規ステロイド配糖体であるアカンタステロサイド40A(10.7mg)を得た。同様に、fr.13(12.6mg)から新規ステロイド配糖体であるアカンタステロサイド34C(5.6mg)を、fr.20(29.2mg)から2種の新規ステロイド配糖体であるアカンタステロサイド34B(4.3mg)及び39A(10.2mg)を得た。さらに、fr.12(11.4mg)、fr.17(7.8mg)、fr.19(14.8mg)、fr.22(52.5mg)から、4種の既知物質を得た。以上の結果を図1に示す。図1には一回目のHPLCにて得られたチャートとそれぞれのピークから単離されたステロイド配糖体及びそのNGF関連活性の値を示す。図1では、ステロイド配糖体が単離されたピークから線を引き出して示している。これらのステロイド配糖体が単離されたピークは、上記条件下において、左(保持時間が小さい)から、peak1(fr.12):53−56分;peak2(fr.13):56−60分;peak3(fr.17):77−81分;peak4(fr.19):87−90分;peak5(fr.20):90−96分;peak6(fr.21):96−105;peak7(fr.22):106−125分程度の範囲に現れる大きなピークであることから識別できる。これら保持時間を参考にピークを分離することで目的の化合物を容易に単離できる。
また、アカンタステロサイド40A及びNGFを用いて、PC12細胞の神経突起伸長を誘導した後の様子を示した顕微鏡写真を図2に示す。図2の右上がコントロールであり、何も添加しなかった場合、細胞の形状が変化しないのに対して、アカンタステロサイド40A(左下)及びNGF(右下)を添加した場合には、細胞から多数の突起が伸長していることが判る。
以下に、得られた新規ステロイド配糖体の旋光度、1H−NMR、13C−NMR及び質量分析の結果を以下に示す。なお、ここには詳細を示さないが上記34Aに示される化合物についてもその存在を確認している。
アカンタステロサイド40A:[α]25 D−20(c0.06,MeOH);1H NMR(600MHz,CD3OD)δ 0.89(6H,d,J=7.2Hz),0.93(3H,d,J=6.6Hz),0.95(1H,m),0.96(1H,m),1.00(1H,m),1.05(1H,d,J=10.8Hz),1.10(3H,s),1.16(3H,s),1.19(1H,m),1.20(2H,m),1.22(1H,m),1.37(1H,m),1.49(1H,m),1.50(1H,m),1.55(1H,dd,J=14.4,3.0Hz),1.58(1H,m),1.59(1H,m),1.72(1H,m),1.74(1H,m),1.80(1H,m),1.81(1H,m),1.82(1H,m),1.83(2H,m),1.96(1H,m),2.43(1H,dd,J=14.7,2.4Hz),2.81(1H,dd,J=9.0,7.8Hz),2.81(1H,dd,J=9.0,7.8Hz),3.01(1H,t,J=9.0Hz),3.18(2H,m),3.22(1H,m),3.29(1H,m),3.41(1H,m),3.46(1H,m),3.53(1H,m),3.57(3H,s),3.61(3H,s),3.68(1H,m),3.80(2H,m),3.83(1H,m),3.87(1H,m),3.98(1H,dd,J=7.2,2.4Hz),4.15(1H,dd,J=10.8,2.4Hz),4.17(1H,d,J=7.8Hz),4.40(1H,d,J=6.6Hz);13C NMR(150MHz,CD3OD)δ 15.8(q),16.7(q),18.6(q),19.6(t),19.9(q),20.1(q),26.0(t),29.5(d),30.3(t),31.2(d),33.2(t),34.8(t),36.8(s),41.3(t),43.1(t),45.2(s),45.4(t),46.1(d),49.9(d),57.1(d),60.5(d),60.9(q),61.0(q),63.7(d),66.8(t),66.9(t),70.9(d),71.3(d),72.0(t),74.1(d),74.6(d),76.9(s),77.5(d),80.3(d),80.9(d),83.0(d),84.9(d),87.6(d),103.6(d),105.3(d).HR ESI−TOF−MS found m/z 797.4653(M+Na),calcd.for C40H70O14Na 797.4658.
アカンタステロサイド40B:[α]25 D−35(c0.81,MeOH);1H NMR(600MHz,CD3OD)δ 0.89(6H,d,J=6.6Hz),0.93(3H,d,J=6.6Hz),0.99(1H,m),1.01(1H,d,J=10.8Hz),1.02(1H,m),1.11(3H,s),1.17(1H,m),1.19(1H,m),1.20(1H,m),1.28(1H,m),1.36(3H,s),1.37(1H,m),1.47(1H,dd,J=12.6,3.0Hz),1.49(2H,m),1.62(1H,m),1.75(1H,m),1.79(1H,m),1.81(2H,m),1.86(1H,dd,J=13.2,3.0Hz),1.96(1H,m),1.98(1H,m),2.58(1H,dd,J=15.0,2.4Hz),2.82(1H,dd,J=9.0,7.8Hz),3.01(1H,t,J=9.0Hz),3.18(1H,m),3.18(1H,m),3.22(1H,m),3.29(1H,m),3.40(1H,dd,J=9.6,6.3Hz),3.46(1H,m),3.53(1H,m),3.57(3H,s),3.61(3H,s),3.80(2H,m),3.98(1H,dd,J=7.8,2.4Hz),4.15(1H,dd,J=10.8,2.4Hz),3.83(1H,m),4.17(1H,d,J=7.8Hz),4.18(1H,m),4.30(1H,s),4.41(1H,d,J=7.8Hz),5.63(1H,s);13C NMR(150MHz,CD3OD)δ16.7(q),18.6(q),19.5(t),19.9(q),20.1(q),22.7(q),26.0(t),27.9(t),29.5(d),31.2(d),34.8(t),37.7(s),39.7(t),43.0(t),44.4(t),45.0(s),46.0(d),57.8(d),60.5(d),60.9(q),61.1(q),63.6(d),66.8(t,2C),70.9(d),71.2(d),72.0(t),74.6(d),76.2(s),76.4(d),77.4(d),77.5(d),80.9(d),83.0(d),84.9(d),87.6(d),104.6(d),105.3(d),126.9(d),148.5(s).HR ESI−TOF−MS found m/z 795.4544(M+Na),calcd.for C40H68O14Na795.4525.
アカンタステロサイド34C:[α]23 D−25(c0.42,MeOH);1H NMR(600MHz,CD3OD)δ0.94(3H,d,J=6.6Hz),1.02(1H,d,J=9.6Hz),1.03(1H,m),1.05(3H,d,J=6.0Hz),1.12(3H,s),1.18(1H,m),1.19(1H,m),1.22(1H,dd,J=12.0,5.4Hz),1.28(1H,m),1.36(3H,s),1.49(1H,dd,J=14.4,3.0Hz),1.49(1H,m),1.72(1H,m),1.75(1H,m),1.78(1H,m),1.86(1H,m),1.87(1H,m),1.97(1H,m),1.98(2H,m),2.12(1H,m),2.29(1H,m),2.57(1H,dd,J=14.7,2.7Hz),2.82(1H,dd,J=8.7,8.1Hz),3.16(1H,m),3.30(1H,m),3.35(1H,m),3.47(1H,m),3.56(1H,m),3.57(3H,s),3.81(1H,dd,J=11.4,5.4Hz),3.98(1H,dd,J=7.2,2.4Hz),4.15(1H,dd,J=10.8,2.4Hz),4.18(1H,m),4.30(1H,dd,J=4.8,2.4Hz),4.41(1H,d,J=9.6Hz),4.74(1H,s),4.81(1H,s),5.63(1H,s);13C NMR(150MHz,CD3OD)δ16.8(q),17.2(q),18.4(q),19.5(t),22.7(q),27.9(t),30.6(d),32.9(t),35.5(t),37.7(s),39.7(t),43.0(t),43.4(d),44.4(t),45.1(s),57.8(d),60.5(d),61.1(q),63.7(d),66.8(t),67.5(t),71.3(d),76.2(s),76.4(d),77.5(d,2C),80.9(d),82.8(d),84.9(d),109.2(d),104.6(d),126.9(d),148.6(s),154.0(s).HR ESI−TOF−MS found m/z647.3765(M+Na),calcd.for C34H56O10Na 647.3706.
アカンタステロサイド34B:[α]25 D−16(c0.11,MeOH);1H NMR(600MHz,CD3OD)δ0.89(6H,d,J=6.6Hz),0.93(3H,d,J=6.6Hz),1.01(1H,m),1.02(1H,m),1.04(1H,m),1.11(3H,s),1.16(1H,m),1.17(1H,m),1.20(1H,m),1.22(1H,m),1.28(1H,m),1.36(3H,s),1.45(1H,m),1.49(2H,m),1.61(1H,m),1.75(1H,m),1.79(1H,m),1.81(1H,m),1.83(1H,m),1.87(1H,m),1.96(1H,m),1.98(1H,m),2.58(1H,dd,J=15.0,3.0Hz),2.82(1H,dd,J=9.0,7.8Hz),3.18(1H,m),3.29(1H,m),3.46(2H,m),3.53(1H,m),3.57(3H,s),3.80(1H,m),3.98(1H,dd,J=7.2,2.7Hz),4.14(1H,dd,J=10.8,2.4Hz),4.17(1H,br t,J=7.8Hz),4.30(1H,br s),4.41(1H,d,J=7.8Hz),5.63(1H,s);13C NMR(150MHz,CD3OD)δ16.7(q),18.6(q),19.7(t),19.9(q),20.1(q),22.7(q),25.6(t),27.9(t),29.0(d),31.2(d),35.8(t),37.7(s),39.7(t),43.0(t),44.4(t),45.0(s),48.5(d),57.8(d),60.6(d),61.1(q),63.6(d),63.9(t),66.8(t),71.3(d),76.2(s),76.4(d),77.5(d,2C),80.9(d),83.0(d),84.9(d),104.6(d),126.9(d),148.5(s).HR ESI−TOF−MS found m/z 649.3939(M+Na),calcd.for C34H58O10Na 649.3922.
アカンタステロサイド39A:[α]25 D−25(c0.13,MeOH);1H NMR(600MHz,CD3OD)δ0.90(9H,m),0.94(1H,m),0.95(3H,s),1.00(2H,m),1.12(3H,s),1.19(1H,d,J=9.6Hz),1.22(1H,m),1.26(1H,m),1.30(2H,m),1.35(1H,m),1.50(1H,m),1.54(1H,m),1.56(1H,m),1.57(1H,m),1.58(2H,m),1.73(2H,m),1.75(1H,m),1.79(1H,m),1.83(1H,m),1.86(1H,m),1.89(1H,m),2.00(1H,m),2.38(1H,dd,J=14.7,2.7Hz),2.86(1H,dd,J=9.0,7.8Hz),3.10(1H,t,J=10.8Hz),3.17(1H,m),3.34(1H,m),3.38(1H,t,J=9.0Hz),3.46(3H,s),3.57(3H,s),3.59(1H,m),3.63(1H,dd,J=12.0,5.7Hz),3.76(1H,dd,J=12.0,3.0Hz),3.85(1H,d,J=2.4Hz),3.94(1H,m),3.97(1H,m),3.99(1H,m),4.04(1H,dd,J=3.6,0.6Hz),4.27(1H,td,J=9.6,3.6Hz),4.40(1H,d,J=7.8Hz),5.07(1H,s);13C NMR(150MHz,CD3OD)δ15.4(q),15.9(q),18.4(q),19.0(q),19.8(t),31.5(d),31.7(t),32.9(t),36.3(t),36.3(d),36.7(s),41.4(t),41.7(d),42.9(t),45.5(t),45.5(s),49.0(d),56.0(d),57.2(d),59.1(s),61.2(s),62.5(t),64.4(t),66.6(d),70.1(d),72.4(d),74.2(d),76.5(d),77.2(s),77.8(d),80.8(d),83.8(d),84.4(d),84.9(d),92.7(d),105.2(d),107.8(d).HR ESI−TOF−MS found m/z 767.4558(M+Na),calcd.for C39H68O13Na 767.4552.
〔試験3:fr.Cから新規ステロイド配糖体を単離する方法〕
・HPLC(1回目)
上記の活性画分fr.C(930mg)をHPLCで精製した。条件は次のとおり:カラムODS Develosil−UG−5(φ28x250mm),溶媒70%MeOH,流速18ml/min,検出波長205nm,2回に分けて注入。図3に示すように、クロマトピークに基づき5画分(Fr.C−1〜C−5)を得た。
・HPLC(2回目以降)
上記の画分のそれぞれについて表1に示すように分離精製した。
fr.C−2(tR=51−62min,114.7mg)をHPLC(条件D,E,F)で精製し化合物62−3(3.5mg)を、HPLC(条件D,I,J)で精製し化合物65−2(4.5mg)、化合物65−3(2.1mg)及び化合物64−3(5.4mg)を、HPLC(条件D,F)で精製し化合物76−3(3.0mg)を得た。
fr.C−3(tR=73−82min,57.9mg)をHPLC(条件A,E,F,G)で精製し化合物69−11(2.0mg)を、HPLC(条件A,H)で精製し2種の化合物74−2及び74−4を得た。
fr.C−4(tR=82−103min,66.7mg)をHPLC(条件B,C,D)で精製し化合物42−2(14.2mg)を得た。
fr.C−5(tR=103−126min,24.8mg)をHPLC(条件A)で精製し化合物35−2(19.7mg)を得た。
HPLC条件
A:Develosil−ODS−5(φ20x250mm),40% MeCN,8ml/min,RI detector
B:Develosil−ODS−5(φ20x250mm),40% MeCN,8ml/min,UV 205nm
C:Develosil−ODS−5(φ20x250mm),35% MeCN,8ml/min,UV 205nm
D:Capcell pak(φ20x250mm),35% MeCN,8ml/min,UV 205nm
E:Develosil−ODS−UG−5(φ10x250mm),35% MeCN,2ml/min,RI detector
F:Develosil−ODS−UG−5(φ10x250mm),70% MeOH,2ml/min,RI detector
G:Develosil−ODS−UG−5(φ10x250mm),53% EtOH,1.5ml/min,RI detector
H:Develosil−ODS−SR−5(φ20x250mm),70% MeOH,8ml/min,RI detector
I:Capcell pak(φ20x250mm),70% MeOH,8ml/min,RI detecter
J:Develosil−ODS−SR−5(φ20x250mm),35% MeCN,8ml/min,RI detector
K:Develosil−ODS−SR−5(φ20x250mm),35% MeCN,8ml/min,UV
・各化合物について1H−NMRデータ(CD3OD,600MHz)を示す。
(1)図1に示した各ステロイド配糖体について、NGF様活性及びNGF増強活性を測定した結果を表5に示す。なお、表5に示す化合物タイプにおけるステロイド核とは、式(2)に示した4環式縮合核に対応する構造であり、各化合物毎に僅かに異なっている。そして、表5の上から、式(2)に示すA核に単糖が1つ結合したもの(α)、A核及びD核の双方に1つずつ単糖が結合したもの(β)、そして、D核に2つの単糖(二糖類)が結合したもの(γ)、の大きく3つのタイプに分類できる。
また、(1)NGF様活性を有する化合物を必要とする場合には、タイプβの構造を有する化合物を探索すれば得られること、(2)NGF増強活性を有する化合物を必要とする場合には、ステロイド核に単糖又は二糖類が1つ結合した化合物を探索すれば得られること、が推測できる。
そして、本発明の新規ステロイド配糖体(アカンタステロサイド40A、B、34B、C及び39A)は、毒性を示さずに、40μM程度まで活性が認められている。また、20μM程度の濃度でも充分な効果が発揮されている。なお、これらのステロイド配糖体が示すNGF関連活性は従来からNGF関連活性が知られている化合物よりも高い活性を示している。
(2)化合物35−2及び化合物42−2についても(1)と同様にNGF様活性とNGF増強活性とを測定した。結果を表6に示す。
また、タイプγに相当する化合物64−3も高いNGF様活性及びNGF増強活性を示している。しかしながら、表5より予測できるように、NGF様活性についてはタイプβに相当する化合物よりも僅かに弱くなっている。
〔高齢雄性マウスにおける学習記憶障害に対する作用の評価〕
上述のfr.A(以下、「試験試料」と称する)をマウスに投与した場合の学習記憶障害に対する作用を検討した。
(方法)
8〜10ヶ月齢のICR系雄性マウス(aged群)を用いた。毎夕、体重測定後に、各群に皮下投与した。試験試料の投与量は、体重1kg当たり1mg又は10mgとなるように試験試料を生理食塩液に溶解した群(各10匹)、及び、生理食塩水をそのまま投与する群(10匹)とした。投与は14日間行った。14日間投与を行った後、常法に従いY字型迷路試験を行った。なお、対照群として6週齢のICR系雄性マウス(Young群:10匹)を用い、同様に生理食塩水を皮下投与した。
(結果および考察)
結果を図4に示す。図4左方から明らかなように、Young群(対照:Sal)に比べ、生理食塩水投与のaged群(Sal)では短期記憶の障害が観察された。試験試料を10mg/kg投与したaged群(OJK10)では短期記憶の障害は認められなかった。また、試験試料を1mg/kg投与したage群(OJK1)でもaged群のSalとOJK10との中間程度の短期記憶障害の程度を示し、ある程度の改善傾向が認められたことから試験試料の濃度としては体重1kg当たり1mg未満でも効果が発揮できる可能性も充分に考えられる。
Y字型迷路試験中の試行内の行動量を示す総アーム進入数(total armentries)も同様な傾向を示した。すなわち、図4右方から明らかなように、OJK10の群はもちろん、試験試料の投与量が1mg/kgであるOJK1の群においてもYoung群と同程度にまで回復することが明らかになった。
以上、試験試料をマウスに投与することで、成長・老化に伴い発生する脳機能障害に効果をもたらすことが明らかになった。また、詳細は示さないが、本試験試料を投与することによる行動異常などの顕著な副作用の発生は認められないことから、本試験試料は予防的な使用方法に供される可能性があることが明らかになった。
Claims (12)
- 下記一般式(1)又は式39Aで表されるステロイド配糖体。
- 下記一般式(1’)若しくは(1”)、又は、式64−3、65−3、69−11若しくは101−3で表されるステロイド配糖体。
- 請求項1又は2に記載のステロイド配糖体を含むことを特徴とするNGF関連活性物質。
- 下記式33B、34B2、39A2、39A3、74−2及び74−4のうちの少なくとも一種であるNGF関連活性物質。
- 前記ステロイド配糖体はオニヒトデからの抽出物に含有される化合物である請求項3又は4に記載のNGF関連活性物質。
- アルコール又はアセトンからなる有機溶媒にて抽出したオニヒトデの有機溶媒抽出物から疎水分画を分離する工程と、
シリカゲル及び/又はデキストラン系担体を用いたクロマトグラフィ法にて該疎水分画を分画する工程と、を有することを特徴とする、請求項1〜5に記載のステロイド配糖体のうちの少なくとも一の化合物を含むNGF関連活性物質の製造方法。 - アルコール又はアセトンからなる有機溶媒にて抽出したオニヒトデの有機溶媒抽出物から疎水分画を分離する工程と、
TLC(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール=8/2)にて測定したRf値が0.20以上、0.64以下の範囲内に含まれる分画を該疎水分画からクロマトグラフィ法にて分離する工程と、を有することを特徴とする、請求項1〜5に記載のステロイド配糖体のうちの少なくとも一の化合物を含むNGF関連活性物質の製造方法。 - アルコール又はアセトンからなる有機溶媒にて抽出したオニヒトデの有機溶媒抽出物から疎水分画を分離する工程と、
TLC(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/メタノール=8/2)にて測定したRf値が0.20未満の分画を該疎水分画からクロマトグラフィ法にて除外する工程と、を有することを特徴とする、請求項1〜5に記載のステロイド配糖体のうちの少なくとも一の化合物を含むNGF関連活性物質の製造方法。 - 前記クロマトグラフィ法にて分離する工程は、前記Rf値が0.52以上の分画を分離する工程を含む請求項7又は8に記載のNGF関連活性物質の製造方法。
- 前記クロマトグラフィ法にて分離する工程は、前記Rf値が0.39以下の分画を分離する工程を含む請求項7又は8に記載のNGF関連活性物質の製造方法。
- 請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法にて製造されうることを特徴とする、請求項1〜5に記載のステロイド配糖体のうちの少なくとも一の化合物を含むNGF関連活性物質。
- 請求項3〜5及び11のいずれかに記載のNGF関連活性物質を有し、老化に伴い発生する脳機能障害を予防乃至治療する医薬であることを特徴とする脳機能障害予防薬。
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