ある種のホイールローダは、オペレータが、牽引力制御での最大牽引力のレベルを選択できるように構成されている。オペレータは、牽引力制御での最大牽引力のレベルを予め選択しておく。オペレータが、牽引力制御の実行スイッチを操作すると、最大牽引力が、選択されたレベルに制限される。これにより、オペレータは、例えば路面の状態に応じて、適切な牽引力のレベルを選択することができる。
しかし、掘削作業時に必要な牽引力は一定ではなく、作業の状況に応じて必要な牽引力が異なる。このため、ストールやスリップなどの現象を発生させないために、どのようなレベルの最大牽引力が最適であるのかを、オペレータが予め選択することは容易ではない。従って、上記のようなホイールローダでは、掘削作業時に作業状況が変化するごとに、オペレータが最大牽引力のレベルを選択しなおさなければならない。このため操作が煩雑となり、ホイールローダの操作性が低下する。
本発明の課題は、掘削作業時に十分な牽引力を得ることができると共に操作性の低下を抑えることができるホイールローダ及びホイールローダの制御方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に係るホイールローダは、作業機と、エンジンと、油圧ポンプと、走行用油圧モータと、アクセル操作部材と、インチング操作部材と、牽引力制御操作部材と、車速検出部と、作業局面判定部と、車速判定部と、アクセル操作判定部と、インチング操作判定部と、牽引力制御部と、を備える。作業機は、ブームとバケットとを有する。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。走行用油圧モータは、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。アクセル操作部材は、エンジンの目標回転速度を設定するために操作される。インチング操作部材は、車速を低減させるために操作される。牽引力制御操作部材は、最大牽引力を低減させる牽引力制御のオンオフを切り換えるために操作される。車速検出部は、車速を検出する。作業局面判定部は、作業局面が掘削であるか否かを判定する。車速判定部は、車速が所定の速度閾値以下であるか否かを判定する。アクセル操作判定部は、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であるか否かを判定する。インチング操作判定部は、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であるか否かを判定する。牽引力制御部は、牽引力制御がオン状態であるときには、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも最大牽引力を低減させる。牽引力制御部は、判定条件が牽引力制御中に満たされたときに、最大牽引力を増大させる。判定条件は、作業局面が掘削であることと、車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることと、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることとを含む。
本発明の第2の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、ブーム角度判定部をさらに備える。ブーム角度判定部は、ブーム角度が所定の角度閾値より小さいか否かを判定する。ブーム角度は、ブームの水平方向に対する角度である。判定条件は、ブーム角度が所定の角度閾値より小さいことをさらに含む。
本発明の第3の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、判定条件は、他の条件が満たされている状態の継続時間が所定の時間閾値以上であることをさらに含む。
本発明の第4の態様に係るホイールローダは、第1から第3の態様のいずれかのホイールローダであって、牽引力制御部は、牽引力の制御レベルを第1レベルに設定する。第1レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。牽引力制御部は、判定条件が牽引力制御中に満たされたときには、最大牽引力の制御レベルを第2レベルに変更する。第2レベルの最大牽引力は、第1レベルの最大牽引力よりも大きい。
本発明の第5の態様に係るホイールローダは、第4の態様のホイールローダであって、第2レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。
本発明の第6の態様に係るホイールローダは、第4の態様のホイールローダであって、第1レベルの最大牽引力の大きさを変更するための牽引力レベル変更部をさらに備える。
本発明の第7の態様に係るホイールローダは、第4の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、牽引力制御中に判定条件が満たされなくなったときは、牽引力の制御レベルを第1レベルに戻す。
本発明の第8の態様に係るホイールローダは、第7の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、牽引力の制御レベルを第2レベルに変更するときには、牽引力の制御レベルを第1レベルに戻すときよりも、牽引力をゆっくりと変化させる。
本発明の第9の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、作業局面判定部は、車両の走行状態と作業機の作動状態とに基づいて、作業局面が掘削であるか否かを判定する。
本発明の第10の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、走行用油圧モータの傾転角を制御することで走行用油圧モータの容量を制御する。牽引力制御部は、走行用油圧モータの容量の上限容量を制御することにより、最大牽引力の制御を行う。
本発明の第11の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、作業局面が掘削ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第12の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、車速が所定の速度閾値以下ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第13の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、アクセル操作部材の操作量が所定の操作閾値以上ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第14の態様に係るホイールローダは、第1の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第15の態様に係るホイールローダは、第2の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、ブーム角度が所定の角度閾値より小さくないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第16の態様に係るホイールローダは、第3の態様のホイールローダであって、牽引力制御部は、継続時間が所定の時間閾値以上ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。
本発明の第17の態様に係る制御方法は、ホイールローダの制御方法である。ホイールローダは、ブームとバケットとを有する作業機と、エンジンと、エンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される走行用油圧モータと、エンジンの目標回転速度を設定するために操作されるアクセル操作部材と、車速を低減させるためのインチング操作部材と、最大牽引力を低減させる牽引力制御のオンオフを切り換えるために操作される牽引力制御操作部材と、を備えるホイールローダの制御方法であって、作業機と、エンジンと、油圧ポンプと、走行用油圧モータと、アクセル操作部材と、インチング操作部材と、牽引力制御操作部材とを備える。作業機は、ブームとバケットとを有する。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。走行用油圧モータは、油圧ポンプから吐出された作動油によって駆動される。アクセル操作部材は、エンジンの目標回転速度を設定するために操作される。インチング操作部材は、車速を低減させるために操作される。牽引力制御操作部材は、最大牽引力を低減させる牽引力制御のオンオフを切り換えるために操作される。本態様の制御方法は、次のステップを備える。第1ステップでは車速を検出する。第2ステップでは、作業局面が掘削であるか否かを判定する。第3ステップでは、車速が所定の速度閾値以下であるか否かを判定する。第4ステップでは、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であるか否かを判定する。第5ステップでは、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であるか否かを判定する。第6ステップでは、牽引力制御がオン状態であるときには、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも最大牽引力を低減させる。第7ステップでは、判定条件が牽引力制御中に満たされたときに、最大牽引力を増大させる。判定条件は、作業局面が掘削であることと、車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることと、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることとを含む。
本発明の第1の態様に係るホイールローダでは、牽引力制御中に判定条件が満たされたときに、最大牽引力が自動的に増大される。判定条件は、作業局面が掘削であることと、車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることと、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることとを含む。車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることは、アクセル操作部材の操作量に対して、車速が十分に出ていないことを意味する。例えば、アクセルペダルを大きく踏み込んでいるにもかかわらず、車両が、ほぼ停止している状態であるときに、上記の条件が満たされる。インチング操作部材は、オペレータが、エンジン回転速度を低下させずに車速を低下させたいときに操作される。このため、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることは、オペレータが、車速を低減させることを意図していないことを意味する。従って、判定条件が満たされているときには、掘削作業中にオペレータが、より大きな牽引力を出そうとしてアクセル操作部材を操作しているにも関わらず、ホイールローダが、ほぼ停止している状態となっている。本態様に係るホイールローダでは、このような状態で最大牽引力が自動的に増大されることにより、掘削作業時に十分な牽引力を得ることができる。また、オペレータが最大牽引力のレベルを変更するための操作を行う必要がないので、操作性の低下を抑えることができる。
本発明の第2の態様に係るホイールローダでは、ブーム角度が所定の角度閾値より小さいか否かを判定することにより、ブームを下ろした状態を検出する。これにより、牽引力制御部は、より大きな牽引力が必要な状態であるか否かを判定することができる。
本発明の第3の態様に係るホイールローダでは、継続時間を考慮することにより、牽引力の増大が短時間に頻繁に繰り返されることを防止することができる。これにより、ホイールローダの操作性の低下が抑えられる。
本発明の第4の態様に係るホイールローダでは、牽引力制御によって、最大牽引力が第1レベルの最大牽引力に低減される。そして、判定条件が満たされたときには、最大牽引力が、第1レベルの最大牽引力から第2レベルの最大牽引力に自動的に増大される。これにより、掘削作業時に十分な牽引力を得ることができると共に操作性の低下を抑えることができる。
本発明の第5の態様に係るホイールローダでは、第2レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。従って、判定条件が満たされたときに、最大牽引力が過剰に増大されることを防止することができる。
本発明の第6の態様に係るホイールローダでは、牽引力レベル変更部によって、第1レベルの最大牽引力の大きさを変更することができる。そして、判定条件が満たされたときには、最大牽引力が、第1レベルの最大牽引力よりも大きな値に自動的に増大される。これにより、オペレータは、作業状況に応じて、必要な最大牽引力を、より細かく設定することができる。
本発明の第7の態様に係るホイールローダでは、牽引力制御中に判定条件が満たされなくなったときに、最大牽引力が第1レベルの最大牽引力に戻る。これにより、作業状況に応じた適切な最大牽引力を得ることができる。
本発明の第8の態様に係るホイールローダでは、最大牽引力を増大させるときに、急激な牽引力の増大を抑えることができる。これにより、スリップの発生、或いは、操作性の低下を抑えることができる。また、最大牽引力を低減させるときには、迅速に牽引力が低減される。これにより、例えば、ホイールローダが掘削中に牽引力の出過ぎによってブームが上がらない状態に陥ったときに、このような状態から迅速に抜け出すことができる。
本発明の第9の態様に係るホイールローダでは、車両の走行状態と作業機の作動状態とに基づいて、作業局面が掘削であるか否かを精度よく判定することができる。
本発明の第10の態様に係るホイールローダでは、走行用油圧モータの上限容量を制御することによって最大牽引力を制御することができる。
本発明の第11の態様に係るホイールローダでは、作業局面が掘削ではないときには、牽引力の増大が必要ではないので、通常の牽引力制御時の最大牽引力が維持される。
本発明の第12の態様に係るホイールローダでは、車速が所定の速度閾値以下ではないときには、牽引力の増大が必要ではないので、通常の牽引力制御時の最大牽引力が維持される。
本発明の第13の態様に係るホイールローダでは、アクセル操作部材の操作量が所定の操作閾値以上ではないときには、上述した最大牽引力の増大を行わない。これにより、牽引力の増大が必要ではないときには、通常の牽引力制御時の最大牽引力が維持される。
本発明の第14の態様に係るホイールローダでは、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下ではないときには、上述した最大牽引力の増大を行わない。これにより、牽引力の増大が必要ではないときには、通常の牽引力制御時の最大牽引力が維持される。
本発明の第15の態様に係るホイールローダでは、ブーム角度が所定の角度閾値より小さくないときには、上述した最大牽引力の増大を行わない。これにより、牽引力の増大が必要ではないときには、通常の牽引力制御時の最大牽引力が維持される。
本発明の第16の態様に係るホイールローダでは、継続時間が所定の時間閾値以上ではないときには、上述した最大牽引力の増大を行わない。これにより、牽引力の増大が短時間に頻繁に繰り返されることを防止することができる。
本発明の第17の態様に係るホイールローダの制御方法では、牽引力制御中に判定条件が満たされたときに、最大牽引力が自動的に増大される。判定条件は、作業局面が掘削であることと、車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることと、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることとを含む。車速が所定の速度閾値以下であることと、アクセル操作部材の操作量が所定のアクセル閾値以上であることは、アクセル操作部材の操作量に対して、車速が十分に出ていないことを意味する。例えば、アクセルペダルを大きく踏み込んでいるにもかかわらず、車両が、ほぼ停止している状態であるときに、上記の条件が満たされる。インチング操作部材は、オペレータが、エンジン回転速度を低下させずに車速を低下させたいときに操作される。このため、インチング操作部材の操作量が所定のインチング操作閾値以下であることは、オペレータが、車速を低減させることを意図していないことを意味する。従って、判定条件が満たされているときには、掘削作業中にオペレータが、より大きな牽引力を出そうとしてアクセル操作部材を操作しているにも関わらず、ホイールローダが、ほぼ停止している状態となっている。本態様に係るホイールローダの制御方法では、このような状態で最大牽引力が自動的に増大されることにより、掘削作業時に十分な牽引力を得ることができる。また、オペレータが最大牽引力のレベルを変更するための操作を行う必要がないので、操作性の低下を抑えることができる。
以下、本発明の一実施形態に係るホイールローダ50について、図面を用いて説明する。図1は、ホイールローダ50の側面図である。ホイールローダ50は、車体51と、作業機52と、複数のタイヤ55と、キャブ56と、を備えている。作業機52は、車体51の前部に装着されている。作業機52は、ブーム53とバケット54とリフトシリンダ19とバケットシリンダ26とを有する。ブーム53は、バケット54を持ち上げるための部材である。ブーム53は、リフトシリンダ19によって駆動される。バケット54は、ブーム53の先端に取り付けられている。バケット54は、バケットシリンダ26によってダンプおよびチルトされる。キャブ56は、車体51上に載置されている。
図2は、ホイールローダ50に搭載された油圧駆動機構30の構成を示すブロック図である。油圧駆動機構30は、主として、エンジン1、第1油圧ポンプ4、第2油圧ポンプ2、チャージポンプ3、走行用油圧モータ10、エンジンコントローラ12a、車体コントローラ12、駆動油圧回路20を有している。油圧駆動機構30では、第1油圧ポンプ4がエンジン1によって駆動されることにより作動油を吐出する。走行用油圧モータ10が、第1油圧ポンプ4から吐出された作動油によって駆動される。そして、走行用油圧モータ10が上述したタイヤ55を回転駆動することにより、ホイールローダ50が走行する。すなわち、油圧駆動機構30では、いわゆる1ポンプ1モータのHSTシステムが採用されている。
エンジン1は、ディーゼル式のエンジンであり、エンジン1で発生した出力トルクが、第2油圧ポンプ2、チャージポンプ3、第1油圧ポンプ4等に伝達される。油圧駆動機構30には、エンジン1の実回転速度を検出するエンジン回転速度センサ1aが設けられている。また、エンジン1には、燃料噴射装置1bが接続されている。後述するエンジンコントローラ12aは、燃料噴射装置1bを制御することにより、エンジン1の出力トルク(以下、「エンジントルク」と呼ぶ)と回転速度とを制御する。
第1油圧ポンプ4は、エンジン1によって駆動されることにより作動油を吐出する。第1油圧ポンプ4は、可変容量型の油圧ポンプである。第1油圧ポンプ4から吐出された作動油は、駆動油圧回路20を通って走行用油圧モータ10へと送られる。具体的には、駆動油圧回路20は、第1駆動回路20aと第2駆動回路20bとを有する。作動油が、第1油圧ポンプ4から第1駆動回路20aを介して走行用油圧モータ10に供給されることにより、走行用油圧モータ10が一方向(例えば、前進方向)に駆動される。作動油が、第1油圧ポンプ4から第2駆動回路20bを介して走行用油圧モータ10に供給されることにより、走行用油圧モータ10が他方向(例えば、後進方向)に駆動される。
駆動油圧回路20には、駆動回路圧検出部17が設けられている。駆動回路圧検出部17は、第1駆動回路20a又は第2駆動回路20bを介して走行用油圧モータ10に供給される作動油の圧力(以下、「駆動回路圧」)を検出する。具体的には、駆動回路圧検出部17は、第1駆動回路圧センサ17aと第2駆動回路圧センサ17bとを有する。第1駆動回路圧センサ17aは、第1駆動回路20aの油圧を検出する。第2駆動回路圧センサ17bは、第2駆動回路20bの油圧を検出する。第1駆動回路圧センサ17aと第2駆動回路圧センサ17bとは、検出信号を車体コントローラ12に送る。また、第1油圧ポンプ4には、第1油圧ポンプ4の吐出方向を制御するためのFR切換部5とポンプ容量制御シリンダ6とが接続されている。
FR切換部5は、車体コントローラ12からの制御信号に基づいてポンプ容量制御シリンダ6への作動油の供給方向を切り換える電磁制御弁である。FR切換部5は、ポンプ容量制御シリンダ6への作動油の供給方向を切り換えることにより、第1油圧ポンプ4の吐出方向を切り換える。具体的には、FR切換部5は、第1油圧ポンプ4の吐出方向を第1駆動回路20aへの吐出と第2駆動回路20bへの吐出とに切り換える。これにより、走行用油圧モータ10の駆動方向が変更される。ポンプ容量制御シリンダ6は、ポンプパイロット回路32を介して作動油を供給されることにより駆動され、第1油圧ポンプ4の傾転角を変更する。
ポンプパイロット回路32には、ポンプ容量制御部7が配置されている。ポンプ容量制御部7は、ポンプ容量制御シリンダ6をポンプパイロット回路32と作動油タンクとのいずれかに接続する。ポンプ容量制御部7は、車体コントローラ12からの制御信号に基づいて制御される電磁制御弁である。ポンプ容量制御部7は、ポンプ容量制御シリンダ6内の作動油の圧力を制御することにより、第1油圧ポンプ4の傾転角を調整する。
ポンプパイロット回路32は、カットオフ弁47を介してチャージ回路33と作動油タンクとに接続されている。カットオフ弁47のパイロットポートは、シャトル弁46を介して第1駆動回路20aと第2駆動回路20bとに接続されている。シャトル弁46は、第1駆動回路20aの油圧と第2駆動回路20bの油圧とのうち大きい方をカットオフ弁47のパイロットポートに導入する。すなわち、カットオフ弁47のパイロットポートには駆動回路圧が印加される。カットオフ弁47は、駆動回路圧が所定のカットオフ圧より低いときには、チャージ回路33とポンプパイロット回路32とを連通させる。これにより、作動油がチャージ回路33からポンプパイロット回路32に供給される。カットオフ弁47は、駆動回路圧が所定のカットオフ圧以上になると、ポンプパイロット回路32を作動油タンクに連通させて、ポンプパイロット回路32の作動油を作動油タンクに逃がす。これにより、ポンプパイロット回路32の油圧が低下することにより、第1油圧ポンプ4の容量が低減され、駆動回路圧の上昇が抑えられる。
チャージポンプ3は、エンジン1によって駆動され、駆動油圧回路20へと作動油を供給するためのポンプである。チャージポンプ3は、チャージ回路33に接続されている。チャージポンプ3は、チャージ回路33を介してポンプパイロット回路32に作動油を供給する。チャージ回路33は、第1チェック弁41を介して第1駆動回路20aに接続されている。第1チェック弁41は、チャージ回路33から第1駆動回路20aへの作動油の流れを許容するが、第1駆動回路20aからチャージ回路33への作動油の流れを規制する。また、チャージ回路33は、第2チェック弁42を介して第2駆動回路20bに接続されている。第2チェック弁42は、チャージ回路33から第2駆動回路20bへの作動油の流れを許容するが、第2駆動回路20bからチャージ回路33への作動油の流れを規制する。また、チャージ回路33は、第1リリーフ弁43を介して第1駆動回路20aに接続されている。第1リリーフ弁43は、第1駆動回路20aの油圧が所定の圧力より大きくなったときに開かれる。チャージ回路33は、第2リリーフ弁44を介して第2駆動回路20bに接続されている。第2リリーフ弁44は、第2駆動回路20bの油圧が所定の圧力より大きくなったときに開かれる。また、チャージ回路33は、低圧リリーフ弁45を介して作動油タンクに接続されている。低圧リリーフ弁45は、チャージ回路33の油圧が所定のリリーフ圧より大きくなったときに開かれる。これにより、駆動回路圧が所定のリリーフ圧を越えないように調整される。また、低圧リリーフ弁45の所定のリリーフ圧は、第1リリーフ弁43のリリーフ圧、及び、第2リリーフ弁44のリリーフ圧と比べて、かなり低い。従って、駆動回路圧がチャージ回路33の油圧より低くなったときには、第1チェック弁41又は第2チェック弁42を介して、作動油がチャージ回路33から駆動油圧回路20へ供給される。
第2油圧ポンプ2は、エンジン1によって駆動される。第2油圧ポンプ2から吐出された作動油は、作業機用油圧回路31を介してリフトシリンダ19に供給される。これにより、作業機52が駆動される。第2油圧ポンプ2の吐出圧は、吐出圧センサ39によって検出される。吐出圧センサ39は、検出信号を車体コントローラ12に送る。作業機用油圧回路31には、作業機制御弁18が設けられている。作業機制御弁18は、作業機操作部材23の操作量に応じて駆動される。作業機制御弁18は、パイロットポートに印加されるパイロット圧に応じて、リフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。作業機制御弁18のパイロットポートに印加されるパイロット圧は、作業機操作部材23のパイロット弁23aによって制御される。パイロット弁23aは、作業機操作部材23の操作量に応じたパイロット圧を作業機制御弁18のパイロットポートに印加する。これにより、作業機操作部材23の操作量に応じてリフトシリンダ19が制御される。作業機制御弁18のパイロットポートに印加されるパイロット圧は、PPC圧センサ21によって検出される。また、リフトシリンダ19に供給される作動油の圧力は、ブーム圧センサ22によって検出される。PPC圧センサ21及びブーム圧センサ22は、検出信号を車体コントローラ12に送る。また、リフトシリンダ19には、ブーム角度検出部38が設けられている。ブーム角度検出部38は、後述するブーム角度を検出する。ブーム角度検出部38は、ブーム53の回転角度を検出するセンサである。或いは、ブーム角度検出部38は、リフトシリンダ19のストローク量を検出し、ストローク量からブーム53の回転角度が演算されてもよい。ブーム角度検出部38は、検出信号を車体コントローラ12に送る。なお、バケットシリンダ26も、リフトシリンダ19と同様に、制御弁によって制御されるが、図2においては図示を省略している。
走行用油圧モータ10は、可変容量型の油圧モータである。走行用油圧モータ10は、第1油圧ポンプ4から吐出された作動油によって駆動され、走行のための駆動力を生じさせる。走行用油圧モータ10には、モータシリンダ11aと、モータ容量制御部11bとが設けられている。モータシリンダ11aは、走行用油圧モータ10の傾転角を変更する。モータ容量制御部11bは、車体コントローラ12からの制御信号に基づいて制御される電磁制御弁である。モータ容量制御部11bは、車体コントローラ12からの制御信号に基づいてモータシリンダ11aを制御する。モータシリンダ11aとモータ容量制御部11bとは、モータパイロット回路34に接続されている。モータパイロット回路34は、チェック弁48を介して第1駆動回路20aに接続されている。チェック弁48は、第1駆動回路20aからモータパイロット回路34への作動油の流れを許容するが、モータパイロット回路34から第1駆動回路20aへの作動油の流れを規制する。モータパイロット回路34は、チェック弁49を介して第2駆動回路20bに接続されている。チェック弁49は、第2駆動回路20bからモータパイロット回路34への作動油の流れを許容するが、モータパイロット回路34から第2駆動回路20bへの作動油の流れを規制する。チェック弁48,49により、第1駆動回路20aと第2駆動回路20bとのうち大きい方の油圧、すなわち駆動回路圧の作動油が、モータパイロット回路34に供給される。モータ容量制御部11bは、車体コントローラ12からの制御信号に基づいて、モータパイロット回路34からモータシリンダ11aへの作動油の供給方向および供給流量を切り換える。これにより、車体コントローラ12は、走行用油圧モータ10の容量を任意に変えることができる。また、走行用油圧モータ10の上限容量及び下限容量を任意に設定することができる。
油圧駆動機構30には、車速センサ16が設けられている。車速センサ16は、車速を検出する。車速センサ16は、検出信号を車体コントローラ12に送る。車速センサ16は、例えば、タイヤ駆動軸の回転速度を検出することにより、車速を検出する。車速センサ16は、本発明の車速検出部に相当する。
ホイールローダ50は、アクセル操作部材13aと、前後進切換操作部材14と、牽引力制御操作部材15と、インチング操作部27と、設定操作装置24とを備えている。
アクセル操作部材13aは、オペレータがエンジン1の目標回転速度を設定するための部材である。アクセル操作部材13aは、例えばアクセルペダルであり、オペレータによって操作される。アクセル操作部材13aは、アクセル操作量センサ13と接続されている。アクセル操作量センサ13は、ポテンショメータなどで構成されている。アクセル操作量センサ13は、アクセル操作部材13aの操作量(以下、「アクセル操作量」と呼ぶ)を示す検出信号をエンジンコントローラ12aへと送る。オペレータは、アクセル操作量を調整することによって、エンジン1の回転速度を制御することができる。
前後進切換操作部材14は、オペレータによって操作され、前進位置と後進位置と中立位置とに切り換えられる。前後進切換操作部材14は、前後進切換操作部材14の位置を示す検出信号を車体コントローラ12に送る。オペレータは、前後進切換操作部材14を操作することによって、ホイールローダ50の前進と後進とを切り換えることができる。
牽引力制御操作部材15は、例えばスイッチである。牽引力制御操作部材15は、オペレータによって操作され、牽引力制御のオンオフを切り換えるために操作される。牽引力制御は、ホイールローダ50の最大牽引力を低下させる制御である。最大牽引力とは、車速に応じて変化する牽引力(図6参照)のピークとなる値である。なお、以下の説明において、牽引力制御がオフ状態であるとは、牽引力制御が実行されていない状態を意味する。また、牽引力制御がオン状態であるとは、牽引力制御が実行されている状態を意味する。牽引力制御については後に詳細に説明する。牽引力制御操作部材15は、牽引力制御操作部材15の選択位置を示す検出信号を車体コントローラ12へ送る。
インチング操作部27は、インチング操作部材27aとインチング操作センサ27bとを有する。インチング操作部材27aは、オペレータによって操作される。インチング操作部材27aは例えばペダルである。インチング操作部材27aは、後述するようにインチング操作の機能と、プレーキ操作の機能とを兼ねる。インチング操作センサ27bは、インチング操作部材27aの操作量(以下、「インチング操作量」と呼ぶ)を検出して、検出信号を車体コントローラ12に送信する。インチング操作部材27aが操作されと、車体コントローラ12は、インチング操作センサ27bからの検出信号に基づいてポンプ容量制御部7を制御する。車体コントローラ12は、インチング操作部材27aの操作量に応じてポンプパイロット回路32の油圧を低下させる。これにより、駆動回路圧が低下して、走行用油圧モータ10の回転速度が低下する。インチング操作部27は、例えば、エンジン1の回転速度を上昇させたいが走行速度の上昇は抑えたいときなどにおいて使用される。すなわち、アクセル操作部材13aの操作によってエンジン1の回転速度を上昇させると、ポンプパイロット回路32の油圧も上昇する。このとき、インチング操作部材27aを操作することにより、ポンプパイロット回路32の油圧の上昇を制御することができる。これにより、第1油圧ポンプ4の容量の増大を抑え、走行用油圧モータ10の回転速度の上昇を抑えることができる。言い換えれば、インチング操作部材27aは、エンジン回転速度を低下させずに、車速や牽引力を低減させるために操作される。
また、インチング操作部材27aには、ブレーキ弁28が連結されている。ブレーキ弁28は、油圧ブレーキ装置29への作動油の供給を制御する。インチング操作部材27aは油圧ブレーキ装置29の操作部材を兼ねている。インチング操作部材27aの操作量が所定量に達するまではインチング操作センサ27bからの検出信号に基づいて上述したインチング操作のみが行われる。そして、インチング操作部材27aの操作量が所定量に達すると、ブレーキ弁28の操作が開始され、これにより油圧ブレーキ装置29において制動力が発生する。インチング操作部材27aの操作量が所定量以上では、インチング操作部材27aの操作量に応じて油圧ブレーキ装置29の制動力が制御される。
設定操作装置24は、ホイールローダ50の各種の設定を行うための装置である。設定操作装置24は、例えばタッチパネル機能付のディスプレイ装置である。後述するように、牽引力制御では、牽引力の制御レベルが、第1レベルに設定される。第1レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。オペレータは、設定操作装置24を操作することにより、牽引力制御における第1レベルの最大牽引力の大きさを複数段階のレベルから選択して設定することができる。設定操作装置24は、第1レベルの最大牽引力の大きさを変更するための牽引力レベル変更部に相当する。
エンジンコントローラ12aは、CPUなどの演算装置や各種のメモリなどを有する電子制御部である。エンジンコントローラ12aは、設定された目標回転速度が得られるように、エンジン1を制御する。図3にエンジン1の出力トルク線を示す。エンジン1の出力トルク線は、エンジン1の回転速度と、各回転速度においてエンジン1が出力できる最大のエンジントルクの大きさとの関係を示す。図3において、実線L100は、アクセル操作量が100%であるときのエンジン出力トルク線を示している。このエンジン出力トルク線は、例えばエンジン1の定格又は最大のパワー出力に相当する。なお、アクセル操作量が100%とは、アクセル操作部材13aが最大に操作されている状態を意味する。また、破線L75は、アクセル操作量が75%であるときのエンジン出力トルク線を示している。エンジンコントローラ12aは、エンジントルクがエンジン出力トルク線以下となるようにエンジン1の出力を制御する。このエンジン1の出力の制御は、例えば、エンジン1への燃料噴射量の上限値を制御することにより行われる。
車体コントローラ12は、CPUなどの演算装置や各種のメモリなどを有する電子制御部である。車体コントローラ12は、各検出部からの検出信号に基づいて各制御弁を電子制御することにより、第1油圧ポンプ4の容量と走行用油圧モータ10の容量とを制御する。
具体的には、車体コントローラ12は、エンジン回転速度センサ1aが検出したエンジン回転速度に基づいて指令信号をポンプ容量制御部7に出力する。これにより、ポンプ容量と駆動回路圧との関係が規定される。図4に、ポンプ容量−駆動回路圧特性の一例を示す。ポンプ容量−駆動回路圧特性は、ポンプ容量と駆動回路圧との関係を示す。図中のL11〜L16は、エンジン回転速度に応じて変更されるポンプ容量−駆動回路圧特性を示すラインである。具体的には、車体コントローラ12が、エンジン回転速度に基づいてポンプ容量制御部7の流量を制御することにより、ポンプ容量−駆動回路圧特性がL11〜L16に変更される。これにより、ポンプ容量がエンジン回転速度及び駆動回路圧に対応した大きさに制御される。
車体コントローラ12は、エンジン回転速度センサ1aおよび駆動回路圧検出部17からの検出信号を処理して、モータ容量の指令信号をモータ容量制御部11bに出力する。ここでは、車体コントローラ12は、車体コントローラ12に記憶されているモータ容量−駆動回路圧特性を参照して、エンジン回転速度の値と駆動回路圧の値とからモータ容量を設定する。車体コントローラ12は、この設定したモータ容量に対応する傾転角の変更指令をモータ容量制御部11bに出力する。図5に、モータ容量−駆動回路圧特性の一例を示す。図中の実線L21は、エンジン回転速度がある値の状態における、駆動回路圧に対するモータ容量を定めたラインである。ここでのモータ容量は、走行用油圧モータ10の傾転角に対応している。駆動回路圧がある一定の値以下の場合までは傾転角は最小(Min)である。その後、駆動回路圧の上昇に伴って傾転角も次第に大きくなる(実線の傾斜部分L22)。そして、傾転角が最大(Max)となった後は、駆動回路圧が上昇しても傾転角は最大傾転角Maxを維持する。傾斜部分L22は、駆動回路圧の目標圧力を規定している。すなわち、車体コントローラ12は、駆動回路圧が目標圧力よりも大きくなると走行用油圧モータの容量を増大させる。また、駆動回路圧が、目標圧力よりも小さくなると走行用油圧モータの容量を低減させる。目標圧力は、エンジン回転速度に応じて定められる。すなわち、図5に示す傾斜部分L22は、エンジン回転速度の増減に応じて上下するように設定される。具体的には、傾斜部分L22は、エンジン回転速度が低ければ、駆動回路圧がより低い状態から傾転角が大きくなり、駆動回路圧がより低い状態で最大傾転角に達するように制御される(図5における下側の破線の傾斜部分L23参照)。反対にエンジン回転速度が高ければ、駆動回路圧がより高くなるまで最小傾転角(Min)を維持し、駆動回路圧がより高い状態で最大傾転角(Max)に達するように制御される(図5における上側の破線の傾斜部分L24参照)。これにより、図6に示すように、ホイールローダ50は、牽引力と車速とが無段階に変化して、車速ゼロから最高速度まで変速操作なく自動的に変速することができる。なお、図5において傾斜部分L22は、理解の容易のために、傾斜を強調して示しているが、実際には略水平である。従って、駆動回路圧が、目標圧力に達すると、モータ容量は、最小値(或いは最小制限値)と、最大値(或いは最大制限値)との間で切り換わる。ただし、駆動回路圧が目標圧力に達したときに即時に指令値が変更されるのではなく、時間遅れが生じる。この時間遅れが、傾斜部L22が存在する理由である。
車体コントローラ12は、牽引力制御操作部材15が操作されることにより、牽引力制御を実行する。車体コントローラ12は、走行用油圧モータ10の上限容量を変更することによって、車両の最大牽引力を変更する。例えば、図5に示すように、上限容量をMaxからMa,Mb,Mcのいずれかに変更するように、車体コントローラ12は、モータ容量制御部11bに指令信号を出力する。上限容量がMaに変更されると、車速−牽引力特性は図6のラインLaのように変化する。このように、牽引力制御が行われていない状態の車速−牽引力特性を示すラインL1と比べて最大牽引力が低下する。上限容量がMbに変更されると、車速−牽引力特性はラインLbのように変化して、最大牽引力がさらに低下する。また、上限容量がMcに変更されると、車速−牽引力特性はラインLcのように変化して、さらに最大牽引力が低下する。
牽引力制御では、車両の最大牽引力が、予め設定された第1レベルの最大牽引力に低減される。上述した設定操作装置24は、牽引力制御における第1レベルの最大牽引力の大きさを複数のレベルから選択して設定することができる。具体的には、設定操作装置24は、レベルA、レベルB、レベルCの3段階のレベルから第1レベルとして設定するレベルを選択することができる。レベルAは、上述した上限容量Maに対応する牽引力のレベルである。レベルBは、上述した上限容量Mbに対応する牽引力のレベルである。レベルCは、上述した上限容量Mcに対応する牽引力のレベルである。
図7は、牽引力比率とアクセル操作量との関係を規定する牽引力比率情報を示している。牽引力比率とは、牽引力制御がオフ状態であるときの最大牽引力を100%としたときの牽引力制御での最大牽引力の割合を示している。図7において、Lv1は、第1レベルの牽引力比率情報(以下、「第1牽引力比率情報」と呼ぶ)である。第1牽引力比率情報Lv1において、アクセル操作量が所定の閾値A2以下であるときには、牽引力比率はR1で一定である。アクセル操作量が所定の閾値A2より大きいときには、アクセル操作量に応じて牽引力比率が増大する。車体コントローラ12は、牽引力制御において牽引力の制御レベルが第1レベルに設定されると、第1牽引力比率情報Lv1で示されるような最大牽引力が得られるように、走行用油圧モータ10の上限容量を制御する。
車体コントローラ12は、牽引力制御中に所定の判定条件が満たされたときには、牽引力の制御レベルを、第1レベルから第2レベルに変更する。図7において、Lv2は、第2レベルの牽引力比率情報(以下、「第2牽引力比率情報」と呼ぶ)である。第2レベルLv2の牽引力比率は、第1レベルLv1の牽引力比率よりも大きい。第2レベルLv2の牽引力比率は、第1レベルLv1の牽引力比率よりも所定の変化量dR分、大きい。変化量dRは、5%以上、15%以下が好ましい。変化量dRは例えば10%である。車体コントローラ12は、牽引力制御中に判定条件が満たされたときには、第2牽引力比率情報Lv2で示されるような最大牽引力が得られるように、走行用油圧モータ10の上限容量を制御する。これにより、最大牽引力が自動的に増大される。以下、牽引力制御において最大牽引力を自動的に増大させるための判定処理について詳細に説明する。
図8に示すように、車体コントローラ12は、牽引力制御部61と、作業局面判定部62と、車速判定部63と、アクセル操作判定部64と、ブーム角度判定部65と、インチング操作判定部66と、継続時間判定部67と、変更フラグ判定部68とを有する。図9は、牽引力制御中に牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに変更するための判定処理を示すフローチャートである。車体コントローラ12は、牽引力制御操作部材15を操作することにより、牽引力制御がオン状態に設定されると、図9に示す処理を実行する。
ステップS101において、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第1レベルに設定する。また、ステップS102において、牽引力制御部61は、変更フラグをオフに設定する。変更フラグは、牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに上げる場合にオンに設定される。変更フラグは、牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに上げない場合にオフに設定される。すなわち、変更フラグがオフの場合には、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第1レベルに維持する。また、ステップS103において、牽引力制御部61は、タイマー計測を開始する。タイマーは、後述する判定条件が満たされている継続時間を計測する。判定条件は、牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに上げるための条件である。
次に、ステップS104において、作業局面判定部62が、掘削フラグがオンであるか否かを判定する。掘削フラグがオンであることは、作業局面が掘削であることを意味する。作業局面判定部62は、車両の走行状態と作業機52の作動状態とに基づいて、作業局面が掘削であるか否かを判定する。作業局面判定部62は、作業局面が掘削であると判定したときに、掘削フラグをオンに設定する。作業局面判定部62は、作業局面が掘削以外の作業であると判定したときに、掘削フラグをオフに設定する。具体的な作業局面の判定処理については後述する。
ステップS105において、車速判定部63が、車速が所定の速度閾値V1以下であるか否かを判定する。車速判定部63は、車速センサ16からの検出信号に基づいて、上記の判定を行う。速度閾値V1は、車両が停止していると見なすことができる程度に小さい値である。例えば、速度閾値V1は2km/h以下である。好ましくは、速度閾値V1は、1km/h以下である。
ステップS106において、アクセル操作判定部64が、アクセル操作量が所定のアクセル閾値A1以上であるか否かを判定する。アクセル操作判定部64は、アクセル操作量センサ13からの検出信号に基づいて、上記の判定を行う。アクセル閾値A1は、アクセル操作部材13aが最大限に操作されていると見なすことができる程度に大きな値である。アクセル閾値A1は、上述した閾値A2(図7参照)よりも大きな値である。例えば、アクセル操作量の最大値を100%としたときに、アクセル閾値A1は、80%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、アクセル閾値A1は、90%以上である。
ステップS107において、ブーム角度判定部65が、ブーム角度が所定の角度閾値B1より小さいか否かを判定する。ブーム角度判定部65は、ブーム角度検出部38からの検出信号に基づいて、上記の判定を行う。ブーム角度は、図10に示すように、側面視において、水平方向を0度として、ブームピン57とバケットピン58とを結ぶ線と、水平方向との間のなす角θである。水平方向よりも下方の角度は、マイナスの値であり、水平方向よりも上方の角度は、プラスの値であるものとする。ブーム角度は、上方に向かって増大するように定義される。角度閾値B1は、掘削作業中にとりうるブーム角度に相当する。例えば、角度閾値B1は、0度以下である。好ましくは、角度閾値B1は、−10度以下である。ブーム角度が0度より大きいときには、ブームが水平よりも高い位置に持ち上げられており、そのような状態では、ブームを土砂に押し込む場合と比べて、大きな牽引力が不要であるからである。
ステップS108において、インチング操作判定部66が、インチング操作量が所定のインチング操作閾値C1以下であるか否かを判定する。インチング操作閾値C1は、インチング操作部材27aが操作されていないと見なすことができる程度に小さな値である。例えば、インチング操作量の最大値を100%としたときに、インチング操作閾値C1は、20%以下であることが好ましい。より好ましくは、インチング操作閾値C1は、15%以下である。
ステップS104からステップS108の条件のうち少なくとも1つの条件が満たされないときには、ステップS109に進む。ステップS109では、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第1レベルに設定する。すなわち、牽引力の制御レベルが第1レベルである状態でステップS104からステップS108の条件のうち少なくとも1つの条件が満たされないときには、牽引力の制御レベルが第1レベルに維持される。牽引力の制御レベルが第2レベルである状態でステップS104からステップS108の条件のうち少なくとも1つの条件が満たされなくなったときには、牽引力の制御レベルが第2レベルから第1レベルに戻される。従って、牽引力制御部61は、作業局面が掘削ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。牽引力制御部61は、車速が所定の速度閾値V1以下ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。牽引力制御部61は、アクセル操作部材の操作量が所定の操作閾値A1以上ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。牽引力制御部61は、ブーム角度が所定の角度閾値B1より小さくないときには、最大牽引力の増大を行わない。牽引力制御部61は、インチング操作部材27aの操作量が所定のインチング操作閾値C1以下ではないときには、最大牽引力の増大を行わない。なお、ステップS110において、タイマーがリセットされる。
ステップS104からステップS108の条件の全てが満たされているときには、ステップS111へ進む。ステップS111では、継続時間判定部67が、タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D1以上であるか否かを判定する。すなわち、継続時間判定部67は、ステップS104からステップS108の各条件が満たされている状態の継続時間が、所定の時間閾値D1以上であるか否かを判定する。時間閾値D1は、各条件が一時的に満たされているのではないと見なすことができる程度の時間が設定される。例えば、時間閾値D1は、1秒以下の値である。好ましくは、時間閾値D1は、0.5秒以下の値である。タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D1以上ではないときには、ステップS104からステップS112の判定が繰り返される。すなわち、牽引力制御部61は、継続時間が所定の時間閾値D1に達するまでは、最大牽引力の増大を行わない。
また、ステップS112において、変更フラグ判定部68は、変更フラグがオフであるか否かを判定する。すなわち、変更フラグ判定部68は、牽引力の制御レベルが第1レベルであるか否かを判定する。変更フラグがオフである場合、すなわち、牽引力の制御レベルが第1レベルである場合には、ステップS113に進む。
ステップS113では、牽引力制御部61は、変更フラグをオンに設定する。また、ステップS114において、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを、第1レベルから第2レベルに変更する。これにより、牽引力制御部61は、図7に示す第2牽引力比率情報Lv2に基づいて最大牽引力を制御する。ただし、図7に示すように、第2レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。
牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを、第1レベルから第2レベルに上げるときには、第2レベルから第1レベルに戻すときよりも、最大牽引力をゆっくりと変化させる。すなわち、牽引力制御部61は、牽引力制御において最大牽引力を増大させるときには、最大牽引力を低減させるときよりも、牽引力をゆっくりと変化させる。図11(a)は、モータ容量を増大させるときのモータ容量の指令値の変更速度を示している。すなわち、図11(a)は、最大牽引力を増大させるときのモータ容量の指令値の変更速度を示している。図11(b)は、モータ容量を減少させるときのモータ容量の指令値の変更速度を示している。すなわち、図11(b)は、最大牽引力を減少させるときのモータ容量の指令値の変更速度を示している。図11に示すように、時間T1は時間T2よりも大きい。従って、牽引力制御部61は、最大牽引力を増大させるときには、最大牽引力を減少させるときよりも、モータ容量の指令値をゆっくりと変化させる。
なお、図9に示すステップS112において、変更フラグがオフではない場合には、牽引力の制御レベルが第2レベルに維持されると共に、ステップS104からステップS112の判定が繰り返される。そして、ステップS104からステップS108の条件のいずれかが満たされなくなったときに、ステップS109において、牽引力の制御レベルが第2レベルから第1レベルに戻される。
図12は、掘削フラグがオンであるか否かを判定するための処理を示すフローチャートである。すなわち、図12は、作業局面が掘削であるか否かを判定するための処理を示すフローチャートである。図12に示すように、ステップS201において、作業局面判定部62は、掘削フラグをオフに設定する。ステップS202において、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグがオンであるか否かを判定する。ブーム圧低下フラグがオンであることは、バケットが空荷状態であることを意味する。ブーム圧低下フラグの判定処理については後述する。
ステップS203において、ブーム角度が所定の角度閾値B2より小さいか否かが判定される。角度閾値B2は、バケットが地面上に置かれているときのブーム角度に相当する。角度閾値B2は、上述した角度閾値B1より小さい。
S204において、作業局面判定部62は、ブーム圧が、第1ブーム圧判定値以上であるか否かを判定する。ブーム圧は、リフトシリンダ19を伸長させるときにリフトシリンダ19に供給される油圧である。ブーム圧は、上述したブーム圧センサ22によって検出される。第1ブーム圧判定値は、掘削中にとりうるブーム圧の値である。第1ブーム圧判定値は、実験或いはシミュレーションによって予め求められて設定される。第1ブーム圧判定値は、ブーム角度に応じた値である。車体コントローラ12は、第1ブーム圧判定値とブーム角度との関係を示すブーム圧判定値情報(以下、「第1ブーム圧判定値情報」と呼ぶ)を記憶している。第1ブーム圧判定値情報は、例えば、第1ブーム圧判定値とブーム角度との関係を示すテーブル或いはマップである。作業局面判定部62は、第1ブーム圧判定値情報を参照することにより、ブーム角度に応じた第1ブーム圧判定値を決定する。
ステップS202からステップS204の全ての条件が満たされたときには、ステップS205に進む。ステップS205では、作業局面判定部62は、掘削フラグをオンに設定する。すなわち、作業局面判定部62は、ステップS202からステップS204の全ての条件が満たされたときに作業局面が掘削であると判定する。ステップS202からステップS204の全ての条件が満たされたときには、ホイールローダ50が掘削の準備段階に入ったと見なすことができるからである。ステップS202,S204,S204の条件のうち少なくとも1つが満たされていないときには、ステップS202からステップS204の判定が繰り返される。
また、ステップS206において、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグをオフに設定する。次に、ステップS207において、作業局面判定部62は、FNR認識値がFであるか否かを判定する。FNR認識値は、車両が前進状態と後進状態と中立状態とのいずれであるのかを示す情報である。FNR認識値がFであることは、車両が前進状態であることを意味する。FNR認識値がRであることは、車両が後進状態であることを意味する。FNR認識値がNであることは、車両が中立状態であることを意味する。作業局面判定部62は、前後進切換操作部材14からの検出信号に基づいて、FNR認識値がFであるか否かを判定する。FNR認識値がFではないときには、ステップS209に進む。ステップS209では、作業局面判定部62は、掘削フラグをオフに設定する。すなわち、車両が後進状態又は中立状態であるときには、掘削フラグがオフに設定される。ステップS207において、FNR認識値がFであるときには、ステップS208に進む。
ステップS208では、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグがオンであるか否かを判定する。ブーム圧低下フラグがオンであるときには、ステップS209に進む。ブーム圧低下フラグがオンではないときには、ステップS207に戻る。従って、一旦、作業局面が掘削であると判定されると、その後、前後進切換操作部材14が前進位置から後進位置に切り換えられるまで、又は、前後進切換操作部材14が前進位置から中立位置に切り換えられるまでは、ステップS202からステップS204の条件が満たされなくなっても、掘削フラグがオンに維持される。なお、前後進切換操作部材14が前進位置に維持されていても、ブーム圧低下フラグがオンに設定されたときには、掘削フラグはオフに変更される。
図13は、ブーム圧低下フラグがオンであるか否かを判定するための処理を示すフローチャートである。図13に示すように、ステップS301において、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグをオフに設定する。
ステップS302において、作業局面判定部62は、第1タイマーの計測を開始する。ここでは、第1タイマーは、ブーム圧低下フラグをオンに設定するための条件が満たされている継続時間を計測する。
ステップS303において、作業局面判定部62は、ブーム圧が、第2ブーム圧判定値より小さいか否かを判定する。第2ブーム圧判定値は、バケットが空荷状態であるときに、とりうるブーム圧の値である。車体コントローラ12は、第2ブーム圧判定値とブーム角度との関係を示すブーム圧判定値情報(以下、「第2ブーム圧判定値情報」と呼ぶ)を記憶している。第2ブーム圧判定値情報は、例えば、第2ブーム圧判定値とブーム角度との関係を示すテーブル或いはマップである。作業局面判定部62は、第2ブーム圧判定値情報を参照することにより、ブーム角度に応じた第2ブーム圧判定値を決定する。第2ブーム圧判定値情報では、ブーム角度が0度より大きいときには、第2ブーム圧判定値は、ブーム角度が0度であるときの値で一定である。ブーム角度が0度以上であるときのブーム圧の増加率は、ブーム角度が0度より小さいときのブーム圧の増加率よりも小さく、ブーム角度が0度より大きいときの第2ブーム圧判定値は、ブーム角度が0度であるときの第2ブーム圧判定値で近似できるからである。
ステップS304において、作業局面判定部62は、第1タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D2以上であるか否かを判定する。すなわち、継続時間判定部67は、ステップS303の条件が満たされている状態の継続時間が、所定の時間閾値D2以上であるか否かを判定する。時間閾値D2は、ステップS303の条件が一時的に満たされているのではないと見なすことができる程度の時間が設定される。時間閾値D2は、上述した時間閾値D1よりも大きい。第1タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D2以上ではないときには、ステップS303の判定が繰り返される。ステップS304において、第1タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D2以上であるときには、ステップS305に進む。
ステップS305では、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグをオンに設定する。そして、ステップS306において、作業局面判定部62は、第1タイマーの計測を終了する。なお、ステップS303において、ブーム圧が、第2ブーム圧判定値より小さくないときには、ステップS307に進む。ステップS307において、作業局面判定部62は、第1タイマーをリセットする。
ステップS308において、作業局面判定部62は、第2タイマーの計測を開始する。そして、ステップS309において、作業局面判定部62は、掘削フラグがオンであるか否かを判定する。掘削フラグがオンであるときには、ステップS310に進む。
ステップS310では、作業局面判定部62は、第2タイマーの計測を終了する。そして、ステップS301に戻り、作業局面判定部62は、ブーム圧低下フラグをオフに設定する。
ステップS309において、掘削フラグがオンではないときには、ステップS311に進む。ステップS311では、作業局面判定部62は、ブーム圧が、第2ブーム圧判定値より小さいか否かを判定する。ブーム圧が、第2ブーム圧判定値より小さいときには、ステップS312に進む。
ステップS312において、作業局面判定部62は、第2タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D3以上であるか否かを判定する。第2タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D3以上であるときには、ステップS310に進む。上記と同様に、ステップS310において、作業局面判定部62は、第2タイマーの計測を終了し、ステップS301において、ブーム圧低下フラグをオフに設定する。ステップS312において、第2タイマーによる計測時間が、所定の時間閾値D3以上ではないときには、ステップS309に戻る。
なお、ステップS311において、ブーム圧が、第2ブーム圧判定値より小さくないときには、ステップS313に進む。ステップS313において、作業局面判定部62は、第2タイマーをリセットして、ステップS309に戻る。
本実施形態に係るホイールローダ50では、牽引力制御中に上述した判定条件が満たされたときに、牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに上げる。これにより、最大牽引力が増大される。判定条件は、掘削作業中にオペレータが、より大きな牽引力を出そうとしてアクセル操作部材13aを操作しているにも関わらず、ホイールローダ50が、ほぼ停止している状態となっているときに満たされる。従って、ホイールローダ50がこのような状態に陥ったときには、オペレータが牽引力制御を解除しなくても、最大牽引力が自動的に増大される。このため、本実施形態に係るホイールローダ50では、掘削作業時に十分な牽引力を得ることができると共に操作性の低下を抑えることができる。
上述した判定処理では、判定条件が満たされている状態の継続時間が考慮される。このため、制御レベルの変更が短時間に頻繁に繰り返されることを防止することができる。これにより、ホイールローダ50の操作性の低下が抑えられる。
判定条件が満たされたときに、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを、第1レベルから第2レベルに上げるが、第2レベルの最大牽引力は、牽引力制御がオフ状態での最大牽引力よりも小さい。従って、判定条件が満たされたときに、最大牽引力が過剰に増大されることを防止することができる。
オペレータは、設定操作装置24を操作することによって、第1レベルの最大牽引力の大きさを変更することができる。そして、判定条件が満たされたときには、牽引力制御部61は、最大牽引力を、第1レベルの最大牽引力よりも大きな値に増大する。これにより、オペレータは、作業状況に応じて、必要な最大牽引力を、より細かく設定することができる。
牽引力制御中に判定条件が満たされなくなったときには、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第1レベルに戻す。これにより、作業状況に応じた適切な最大牽引力を得ることができる。
牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第1レベルから第2レベルに上げるときには、第2レベルから第1レベルに戻すときよりも、ゆっくりとポンプ容量を変化させる。このため、牽引力の急激な増大を抑えることができる。これにより、スリップの発生、或いは、操作性の低下を抑えることができる。また、牽引力制御部61は、牽引力の制御レベルを第2レベルから第1レベルに戻すときには、第1レベルから第2レベルに上げるときよりもポンプ容量を迅速に変化させる。これにより、本実施形態に係るホイールローダ50では、例えば、掘削中に牽引力の出過ぎによってブームが上がらない状態に陥ったとしても、このような状態から迅速に抜け出すことができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、1つの油圧ポンプと走行用油圧モータ10を含む1ポンプ1モータのHSTシステムを搭載したホイールローダ50を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの第1油圧ポンプと2つの走行用油圧モータを含む、1ポンプ2モータのHSTシステムを搭載したホイールローダに対して、本発明を適用してもよい。
上記の実施形態では、インチング操作部材27aは、ブレーキペダルを兼ねている。しかし、ブレーキペダルとは別の部材としてインチング操作部材が設けられてもよい。
上記の実施形態では、設定操作装置24は、第1レベルの最大牽引力の大きさを3段階に変更することができる。しかし、設定操作装置24は、第1レベルの最大牽引力の大きさを3段階以外の複数段階に変更可能であってもよい。或いは、設定操作装置24は、第1レベルの最大牽引力の大きさを連続的に任意の大きさに変更可能であってもよい。或いは、設定操作装置24が省略されてもよい。すなわち、第1レベルの最大牽引力の大きさは、変更不能であってもよい。
判定条件は、上記の条件のみに限らず、他の条件が追加されてもよい。或いは、上述した判定条件の一部が変更されてもよい。
上記の実施形態では、牽引力制御部61は、モータ容量の上限容量を変更することによって最大牽引力を低減しているが、他の方法によって最大牽引力を低減してもよい。例えば、牽引力制御部61は、駆動回路圧を制御することに、最大牽引力を低減してもよい。駆動回路圧は、例えば、第1油圧ポンプ4の容量を制御することによって制御される。
上記の実施形態では、アクセル操作量の増大に応じて牽引力比率が増大するように牽引力比率情報が設定されているが、アクセル操作量に関わらず牽引力比率が一定となるように、牽引力比率情報が設定されてもよい。