JP5091635B2 - チロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤 - Google Patents

チロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤 Download PDF

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Description

本発明は、飲食品、医薬品、化粧品等の用途に好適なチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤に関し、より詳しくは皮膚の健康を保つのに有効なチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤に関する。
近年、健康志向が高まるなか、自然治癒力を利用した東洋医学が注目されている。また、食品、化粧品、医薬品等の安全性に対する関心が高まるにつれ、安全性の高い天然素材への回帰が認められるようになってきた。特に、日常生活に関係の深い食品、化粧品においては、天然志向が追求されている。また、様々な慢性疾患の原因とされている活性酸素についても、その消去剤に天然素材が求められている。
上記活性酸素、特にスーパーオキシドアニオン(O2 - )は、通常、生体内で発生し、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)をはじめとする種々の酵素や抗酸化剤によって消去されるが、老化等に伴って活性酸素消去物質は減少し、生体は活性酸素の攻撃を受けやすくなっていくと考えられている。そこで、従来より活性酸素消去剤を食品または医薬品の形態で摂取することが推奨されている。また、活性酸素は、食品等の変色、退色、光劣化にも大きく関与していることが指摘されている。かかる活性酸素消去剤のうち、天然素材から得られるものとしては、従来より没食子酸、フラボノイド類、カテキン類、アスコルビン酸、クロロゲン酸といったSOD様活性素材が知られている。
一方、シミ、ソバカス等の原因となるメラニン色素の生成には、チロシナーゼが大きく関与していることはよく知られている。そして、メラニン色素の生成を防止するためのチロシナーゼ阻害剤の開発も従来より行われている。また、上記チロシナーゼは、食品等の変色にも関与していることが指摘されつつある。チロシナーゼ阻害剤のうち、天然素材から得られるものとしては、アルブチンがよく知られている。チロシナーゼ阻害剤は、通常、美白化粧品や外用剤に配合して使用される。
上記各化合物は、天然素材から得られるものゆえ、安全性の高いものであるが、活性酸素消去活性、チロシナーゼ阻害活性または変色防止活性が十分でなかった。そのため、従来より、より活性の高い天然素材が求められていた。そこで、本発明の目的は、活性酸素消去活性、チロシナーゼ阻害活性、変色防止活性等に優れ、しかも高い安全性を有する、天然素材から得られるチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤を提供することである。
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ユーカリ属(Eucalyptus属) の樹木、特に葉から水、親水性有機溶媒またはそれらの混合溶媒で抽出処理して得られる水溶性抽出物が上記活性酸素消去活性、チロシナーゼ阻害活性および変色防止活性に優れているという事実を見いだし、さらに検討を重ねたところ、上記ユーカリ抽出物から単離したペドゥンクラジン(pedunculagin)またはテリマグランディンI(tellimagrandin I)が上記各活性の発現に大きく寄与しているという新たな事実を見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、皮膚保全剤(チロシナーゼ阻害剤)は上記ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。上記ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは、タンニン、特に加水分解型エラジタンニンに属する化合物である。これらの化合物は、従来、抗レトロウイルス剤としての用途が知られている(特開平4−264026号公報)。また、広くタンニン化合物群としてみると、抗ウイルス剤、免疫抑制剤として有用なNf−kB活性化抑制剤(特開平9−59151号公報)、抗B型肝炎ウイルス剤(抗HBV剤)(特開平4−36239号公報)といった用途のほか、強い止血作用を有することに着目して歯周病の予防・治療に有用であるという報告(特開昭58−38208号公報)や、皮膚炎症の治療や予防に有用であるといった報告(特開昭58−38209号公報)がある。
しかし、上記ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIが優れた活性酸素消去活性、チロシナーゼ阻害活性および変色防止活性を有することは知られていない。また、上記ユーカリ属の樹木から抽出される水溶性抽出物はそれ自体で優れたチロシナーゼ阻害活性および変色防止活性を有する。
よって、本発明は、ユーカリ属の樹木から抽出される水溶性抽出物を有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤を提供するものである。なお、上記ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは、前述のように、ユーカリ属の樹木の抽出物から単離することができるが、ユーカリ属のみならず、他の植物から単離されたものであってもよく、あるいは化学的に合成されたものであってもよい。
膚保全剤は、いずれもユーカリ属等の植物に含まれているペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIから選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有しているため、安全性に優れていると共に、活性酸素消去活性、チロシナーゼ阻害活性、変色防止活性等に優れているという効果がある。

また、ユーカリ属の樹木から抽出される抽出物を有効成分として含有した本発明のチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤は、安全性に優れ、かつチロシナーゼ阻害活性、変色防止活性等に優れているという効果がある。
上記ペドゥンクラジンは、式(1):
Figure 0005091635
で表される。
上記テリマグランディンIは、式(2):
Figure 0005091635
で表される。
各式中、グルコース部分の1位は、水酸基がアシル化されていないため、グルコースの痾体および竈体の平衡混合物(アノマー)となって存在している。そこで、上記各式では、アノマーであることを表すために、グルコース部分の1位における水酸基の結合を波線で表している。上記式(1) で表されるペドゥンクラジンおよび式(2)で表されるテリマグランディンIはこれらの各式から明らかなように、グルコース部分の2位および3位の水酸基にヘキサヒドロキシジフェノイル基またはガロイル基がエステル結合した構造を有する。
ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは、前述のようにユーカリ属の樹木、特にユーカリの葉を原料として、抽出処理から分離、精製処理を経て得ることができる。ユーカリは、フトモモ科目の植物で、シネオール(cineole) を主成分とするユーカリ油を含んでいる。本発明において原材料として使用可能なユーカリ属としては、特に制限されないが、例えばE. globulus, E. rostrata, E. robsta などがあげられる。
ユーカリからの抽出処理は、以下のようにして行う。まず、原料植物、好ましくは葉を粉砕して、水、親水性有機溶媒またはこれらの混合物を使用して有効成分を抽出する。親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、アセトン等が使用可能である。抽出方法としては、特に制限はなく、常温ホモジナイズ抽出、還流抽出などが使用可能である。抽出後、得られたエキスを水飽和n−ブタノール、酢酸エチル等でさらに抽出を行い、さらに得られた抽出エキスを水含有エタノール等で抽出処理を行ってもよい。抽出後、吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等を使用して有効成分を単離し、さらに常法に従って精製を行う。
しかし、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは、上記のようにユーカリからの抽出処理によって得られるものゆえ、精製が不十分であっても安全性に問題はなく、むしろ未精製であっても他の未検出成分との相乗作用(crude drug効果) 等が期待できる。
活性酸素消去剤は、通常の飲食品に添加して使用するほか、その高い活性酸素消去活性を利用して医薬品としても使用可能である。医薬品としては、これに通常の製薬上許容される担体を加えて、固体、半固体または液体の形態で使用することができる。具体的には、例えば錠剤、カプセル、丸剤、顆粒剤、散剤、乳濁液、懸濁剤、シロップ剤、ペレット剤等の経口投与剤、注射液、点滴液、坐薬などの非経口投与剤があげられる。さらに、活性酸素消去剤は、皮膚の老化防止等を目的として、後述のような外用剤や化粧品にも配合することができる。
製剤化に際しては、従来より使用されている界面活性剤、賦形剤、着色剤、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤などの補助剤を使用することができる。投与量は、通常1日当たりペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIとして0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.5〜50mg/kg体重であるのがよい。
次に、皮膚保全剤および本発明のチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤について説明する。皮膚保全剤は、前記と同様にしてユーカリから単離されたペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIを有効成分とし、本発明のチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤はユーカリの水溶性抽出物を有効成分として含有する。抽出物を用いる場合、活性に影響を与えない範囲で、脱臭(シネオール臭を除く)、脱色等の処理を施してもよい。また、適宜、分画処理、各種クロマトグラフィー等による分離精製処理を施して、より活性の強い皮膚保全剤を得るようにしてもよい。皮膚保全剤は、皮膚表面のメラニン色素の生成に関与するチロシナーゼの活性阻害剤として機能するゆえ、美白効果を有する。また、ペドゥンクラジン、テリマグランディンIまたはユーカリの水溶性抽出物は、チロシナーゼ阻害活性に加えて、高いヒアルロニダーゼ阻害活性をも有する。ヒアルロニダーゼは、生体内において真皮表層等の結合組織に多く分布し皮膚の保湿・保水性、潤滑性、柔軟性を保つ機能を有するヒアルロン酸の加水分解酵素である。また、ヒアルロン酸は、皮膚の坑炎症作用、坑アレルギー作用にも関与するといわれている。従って、ヒアルロニダーゼ阻害活性をも有する皮膚保全剤は、前記した美白効果に加えて、皮膚の保湿・保水性、潤滑性、柔軟性を高める効果をも有するため、健康な皮膚を保つのに有益である。そのため、皮膚保全剤は、化粧品の形態で使用されるほか、外用剤としても好適に使用可能であり、さらに必要に応じて錠剤、注射剤等の形態で経口投与してもよい。
化粧品としては、例えば化粧水、乳液、ローション、トニック、化粧クリーム、スプレー剤、口紅、ファンデーション、シャンプー、リンス、入浴剤等があげられる。これらの化粧品は、上記有効成分またはユーカリからの抽出物を、通常使用される化粧料基剤と混合して製造される。外用剤としては、例えば軟膏、クリーム、液剤、貼付剤等があげられ、従来より製薬上使用されている担体と組み合わせて製造できる。これらの化粧品および外用剤における有効成分の含有量は、ペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIとして0.1〜100mg/g、好ましくは1〜10mg/gであるのがよい。
抽出物を用いる場合、その含有量は、0.5〜100mg/g、好ましくは1〜10mg/gであるのがよい。
次に、変色防止剤について説明する。変色防止剤は、前記と同様にしてユーカリから抽出されたペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIを有効成分として用いてもよく、あるいはユーカリの抽出物を有効成分として用いてもよい。抽出物を用いる場合、活性に影響を与えない範囲で、脱臭(シネオール臭を除く)、脱色等の処理を施してもよい。また、適宜、分画処理、各種クロマトグラフィー等による分離精製処理を施して、より活性の強い変色防止剤を得るようにしてもよい。
食品等の変色の原因の1つとして、活性酸素およびチロシナーゼが関与していると考えられているため、上記ペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIを有効成分とする変色防止剤は上記活性酸素消去剤および皮膚保全剤と同じ機能に基づいていると推測される。変色防止剤は、固体、半固体または液体の形態で食品に添加される。固体としては粉状、粒状、ペレット状、錠剤などが、半固体としては、ゼリー状、シロップ状などが、液体としては乳剤、懸濁剤などがそれぞれあげられる。変色防止剤の添加量は、ペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIとして、食品1gに対して0.01〜50mg、好ましくは0.1〜10mgであるのがよい。抽出物の場合は、該抽出物が食品1gに対して0.05〜50mg、好ましくは0.1〜10mgで添加されているのがよい。
色防止剤は、例えば蓄肉加工品、魚肉加工品、飲料等の食品に添加することにより、変色、退色、光劣化等を防止することができる。
以下、参考例、実施例および試験例をあげて本発明のチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤を詳細に説明する。
参考例1
ユーカリの乾燥葉500gを40%エタノール3kgで2時間還流を行い、室温冷却後、ろ過し、ろ液を一晩冷蔵放置した。ついで、ろ液をさらにろ過し、得られたろ液をユーカリエキスとした。
このエキスを300mlまで減圧濃縮し、ついで濃縮液についてエーテル、酢酸エチル、水飽和n−ブタノールおよび水で順次抽出を行った。得られた各抽出エキスについて、減圧濃縮を行い、さらに凍結乾燥して、乾燥抽出物を得た。上記ユーカリエキスおよび各乾燥抽出物について活性酸素消去活性およびチロシナーゼ阻害活性を調べた。測定方法は以下の通りである。
(1) 活性酸素消去活性の測定法
0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)20ml、5mMジエチレントリアミン5酢酸(DETAPAC)30ml、0.75mMニトロブルーテトラゾリウム(NBT)10mlおよび0.3mMキサンチン30mlからなる混和液0.9mlに、所定濃度に調整した試料物質の水溶液0.2mlを加え、よく混和した後、25℃で10分間攪拌した。これに0.08U/mlキサンチンオキシダーゼ(XOD)0.1mlを添加することにより反応を開始させた。反応開始後、25℃、560nmでの吸光度を約2分間連続記録し、そのうちの直線部より1分間の吸光度変化値を求めた(Oberley, L. W. and Spitz, D. R., "Methods inEnzymology", 105, 457 (1984) に記載のOberley らの改良法) 。一方、これとは別に295nmの吸光度を測定することにより尿酸生成率を求め、この値で上記吸光度変化値を補正した値を活性酸素消去率とした。そして、試料物質の濃度を段階的に変更して上記活性を測定し、消去率が50%を示す濃度を50%有効濃度(EC50)とした。この値が小さいほど、活性は強いことを示している。
(2) チロシナーゼ阻害活性の測定法
1/15Mリン酸緩衝液(pH6.8)0.4ml、0.05%L−ドーパ溶液0.1mlおよび所定濃度に調整した試料物質の水溶液0.4mlを混和し、25℃で5分間攪拌した。これに300U/mlチロシナーゼ0.1mlを加え、反応を開始させた。反応開始から1分後および6分後の吸光度を475nm、25℃で測定した。そして、その差5分間の吸光度変化値(A1 )を求めた。また、試料物質を添加しない場合についても同様にして吸光度変化値(A0 )を求め、下記式よりチロシナーゼ阻害率を算出した。
チロシナーゼ阻害率(%)=[(A0 −A1 )/ A0 ]×100
試料物質の濃度を段階的に変更して上記活性を測定し、阻害率が50%を示す濃度を50%阻害濃度(IC50)とした。この値が小さいほど、活性は強いことを示している。
各測定結果を表1に示す。
Figure 0005091635
表1から、n−ブタノールの抽出エキスが最も活性が高く、ユーカリエキスについても高い活性が認められた。
参考例2
参考例1で得られたn−ブタノールの抽出エキスについて、ダイアイオンHP−20(直径3.3cm、長さ20cm、三菱化学社製)を使用してカラムクロマトグラフィーを行い、水、20%エタノール、40%エタノール、60%エタノール、エタノールの順で各1リットルずつ順次溶出を行った。得られたエキスについて減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、乾燥抽出物とした。各抽出物について、参考例1と同様にして活性酸素消去活性およびチロシナーゼ阻害活性を調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0005091635
表2に示すように、活性酸素消去活性およびチロシナーゼ阻害活性は20%エタノール溶出部および40%エタノール溶出部で活性が強かった。
実施例1
参考例1および2において、酢酸エチル抽出エキスおよびn−ブタノール抽出エキスについてのカラムクロマトグラフィーで得られた20%および40%エタノール抽出エキスについて、上記ダイアイオン、トヨパールHW−40(微細グレード品、直径2.2cm、長さ20cm、50%エタノールで溶出、東ソー社製)およびMCI−gelCHP−20P(直径1.1cm、長さ20cm、水、10%エタノール、20%エタノールおよび30%エタノールで順次溶出、三菱化学社製)の順にカラムクロマトグラフィーを繰り返し、数種の活性物質を単離することができた。
これらはNMR等の同定試験の結果、没食子酸(単離収量90mg)、エラグ酸(単離収量86mg)、ペドゥンクラジン(単離収量30mg)およびテリマグランディンI(単離収量261mg)であることが判明した。ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIのNMRによる同定試験結果を以下に示す。
(I) ペドゥンクラジンの 1H-NMR(600MHz, アセトン-d6 +D2 O, J in Hz):
Figure 0005091635
(II)テリマグランディンIの 1H-NMR(600MHz, アセトン-d6 +D2 O, J in Hz):
Figure 0005091635
試験例1
実施例1で単離した各化合物について、参考例1と同様にして活性酸素消去活性を調べた。また、比較のため、活性酸素消去活性物質として知られているケルセチン、カテキン、エピカテキンおよびアスコルビン酸についても、同様にして活性を調べた。それらの試験結果を表に示す。
Figure 0005091635
表5から、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIはいずれも他の比較活性物質や他の単離物質(没食子酸、エラグ酸)に比べて顕著な活性酸素消去活性を有していることがわかる。
試験例2
実施例1で単離した各化合物について、参考例1と同様にしてチロシナーゼ阻害活性を調べた。また、比較のため、阻害活性物質として知られているアルブチンについても、同様にして活性を調べた。それらの試験結果を表に示す。
Figure 0005091635
表6から、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIはいずれもアルブチンや他の単離物質(没食子酸、エラグ酸)に比べて顕著な活性酸素消去活性を有していることがわかる。
試験例3
天然色素のシコニンの0.5%エタノール溶液100mlに、変色防止剤として、ユーカリ乾燥葉の40%エタノール抽出により得られたユーカリエキスの乾燥物、実施例1で得たペドゥンクラジンまたはテリマグランディンIを0.1g加え、515nmにおける吸光度を指標に変色の経時変化を測定し、これから下記式より変色抑制率を求めた。なお、一日の照射量は750ルクスに設定した。
変色抑制率(%)=[(z−y)/(x−y)]×100
x:光照射前のシコニンの515nmでの吸光度
y:供試変色防止剤を共存させない状態での光照射後のシコニンの515nmでの吸光度
z:供試変色防止剤を共存させた状態での光照射後のシコニンの515nmでの吸光度
この変色抑制率が大きいほど、活性が強いことを示している。また、比較のため、従来より変色防止効果が知られている没食子酸、クロロゲン酸およびアスコルビン酸についても同様にして変色抑制率を求めた。これらの試験結果を表に示す。
Figure 0005091635
表7から、比較対照化合物に比べて、ユーカリエキス、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは高い活性を有し、特にユーカリエキスは顕著な変色防止効果を有していることがわかる。
試験例4
シコニンに代えて、ベニバナ黄色素を使用し、400nmにおける吸光度にて変色抑制率を求めたほかは、試験例3と同様にして変色抑制率を求めた。その結果を表に示す。
Figure 0005091635
表8から、ベニバナ黄色素を使用した場合も、シコニンと同様に、ユーカリエキス、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは高い活性を有し、特にユーカリエキスは顕著な変色防止効果を有していることがわかる。
試験例5
参考例1で得たユーカリエキスの乾燥抽出物、実施例1で得たペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIについて、ヒアルロニダーゼ阻害活性を測定した。試験は、牛睾丸由来のヒアルロニダーゼ(シグマ社製のタイプIV)を用いて、コンパウンド48/80による、不活性型酵素の活性化段階の阻害作用を中心に測定した。酵素活性は、ヒアルロン酸の加水分解により生成するN−アセチルヘキソサミンを還元末端とする四糖の還元力の増加を585nmにおける吸光度で比色定量することにより測定した(食衛誌、31巻、233〜237頁、1990)。
まず、適量の被検試料を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)100μlに溶解して試験管にとり、同緩衝液50μlに溶解した酵素0.10mg(100NFユニット)を加え、37℃で20分間培養した。ついで、上記と同じ緩衝液100μlに溶解したコンパウンド48/80の50μgを加え、さらに37℃で20分間培養した。
さらに、0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)250μlに溶解した、微生物由来のヒアルロン酸ナトリウム塩200μgを加えて、37℃で40分間培養した。ついで、0.4NのNaOH100μlを加えて、氷冷後、ホウ酸緩衝液(pH9.1)100μlを加えて3分間煮沸し、氷冷後、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド試液3mlを加えて、37℃で20分間培養した後、585nmにおける吸光度を測定した。
対照には、試料溶液に代えて上記酢酸緩衝液を用いた。また、それぞれのブランクとして、酵素溶液に代えて上記酢酸緩衝液を用いた。
阻害活性は次の式から求められるヒアルロニダーゼ阻害率で表した。
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)=
{[(A−B)−(C−D)]/(A−B)}×100
A:対照溶液の585nmでの吸光度
B:対照溶液のブランクの585nmでの吸光度
C:試料溶液の585nmでの吸光度
D:試料溶液のブランクの585nmでの吸光度
試料物質の濃度を段階的に変更して上記活性を測定し、阻害率が50%を示す濃度を50%阻害率(IC50)とした。この値が小さいほど、活性が強いことを示している。試験結果を下記に示す。
(被検試料) (IC50
ペドゥンクラジン 0.16mg/ml
テリマグランディンI 0.10mg/ml
ユーカリエキス 0.54mg/ml
上記試験結果から、ユーカリエキス、ペドゥンクラジンおよびテリマグランディンIは、高いヒアルロニダーゼ阻害活性を有していることから、保湿・保水作用等を有し、チロシナーゼ阻害活性と相まって皮膚の健康を保つうえで有用であることがわかる。

Claims (1)


  1. ユーカリ属の樹木から抽出される水溶性抽出物を有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼおよびヒアルロニダーゼ阻害活性剤。
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