JP2004315476A - ヒアルロニダーゼ阻害剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する、ヒアルロニダーゼ阻害剤を提供すること。
【解決手段】松樹皮抽出物を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤であって、該松樹皮抽出物がプロアントしアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含む、阻害剤。該阻害剤中の松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%の割合で含有することが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】松樹皮抽出物を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤であって、該松樹皮抽出物がプロアントしアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含む、阻害剤。該阻害剤中の松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%の割合で含有することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒアルロニダーゼ阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸は、コラーゲンやエラスチンなどと同様に、哺乳動物の結合組織に含まれる成分であり、皮膚の保水、潤滑性、および柔軟性を保っている。近年では、慢性リュウマチ等の炎症反応、I型アレルギー等のアレルギー反応、腫瘍の成長などにも関与していることが考えられるようになった。
【0003】
ヒアルロン酸は、炎症や加齢に伴い、ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)の活性が亢進することによって、その分解量が増加する。ヒアルロン酸の合成と分解とのバランスが崩れるため、炎症反応の亢進、あるいは老化による皮膚のシワ、関節痛などが引き起こされる。
【0004】
このようなヒアルロニダーゼ活性の亢進を調整するために、様々な植物抽出物を用いたヒアルロニダーゼ阻害剤が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0005】
しかしながら、このような植物抽出物は、そのほとんどが皮膚外用剤として利用されているにすぎない。外用剤のみならず、食品としても安全なヒアルロニダーゼ阻害剤として用いられる植物抽出物は少ない。さらに、植物抽出物は、植物の種類および抽出方法により得られる効果が異なり、ヒアルロニダーゼ阻害効果が十分な抽出物を含むヒアルロニダーゼ阻害剤は、得られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−9371号公報
【特許文献2】
特開平7−138180号公報
【特許文献3】
特開平9−67266号公報
【特許文献4】
特開2000−26306号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全性の高い天然素材由来の新規のヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ヒアルロニダーゼの作用を阻害する天然素材の探索を行った結果、プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物が、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有することを見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、松樹皮抽出物を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤を提供し、該松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含む。
【0010】
好ましい実施の態様においては、上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%の割合で含有する。
【0011】
好ましい実施の態様においては、上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物に比べて、3倍以上のヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
【0013】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、松樹皮抽出物を含有し、該松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを含む。
【0014】
このような松樹皮抽出物の原料となる松樹皮としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどの樹皮が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮が好ましく用いられる。
【0015】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、後述のプロアントシアニジン(proanthocyanidin)に加えて、有機酸、ならびにその他の生理活性成分等を含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンには、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0016】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、上記の松の樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、メチルエチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等が好ましく用いられる。
【0017】
抽出方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0018】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0019】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0020】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%(重量対容量百分率)程度添加し、この流体で超臨界流体抽出を行うことによって、プロアントシアニジンなどの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0021】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0022】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0023】
松樹皮の抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0024】
上記抽出により得られた松樹皮抽出物は、プロアントシアニジン含量を増加させる目的で精製してもよい。精製には、通常、酢酸エチルなどによる分液などが用いられるが、エタノールまたは熱水による抽出の場合には、安全の観点から、限外ろ過、あるいは合成吸着剤などを用いたカラム法またはバッチ法により精製することが好ましい。
【0025】
上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、一般的に、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。
【0026】
上記松樹皮抽出物は、水への溶解性およびヒアルロニダーゼ阻害効果の観点から、プロアントシアニジンとして重合度の低い縮重合体を多く含むことが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が吸収性や浸透性に優れることから、さらに好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではオリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin、以下OPCという)という。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質であり、OPCの効果は、外部から摂取しなければ、得られない。
【0027】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含み、好ましくは10重量%〜80重量%、より好ましくは20重量%〜70重量%、さらに好ましくは30重量%〜70重量%の割合で含有する。さらに、プロアントシアニジンの中でも、OPCを松樹皮抽出物中に乾燥重量換算で20重量%〜80重量%含有することが特に好ましい。通常、プロアントシアニジンには様々な機能があるため、該プロアントシアニジンを高い割合で含有する抽出物が好適に用いられるが、ヒアルロニダーゼ阻害剤に用いる場合は、プロアントシアニジン以外の松樹皮抽出成分(主に水可溶性成分)を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜70重量%の割合で含有する抽出物が好ましい。
【0028】
松樹皮抽出物には、プロアントシアニジン以外の成分として、カテキン(catechin)類を5重量%以上含有することが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、アフゼレキンなどが知られている。上記松樹皮抽出物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。
【0029】
カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。さらに、カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質を有し、さらにOPCの安定化にも寄与し得る。
【0030】
上述のプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物、特にプロアントシアニジンと他の成分とを含む松樹皮抽出物は、同量のプロアントシアニジンを含む植物抽出物(例えばブドウ種子抽出物)と比較して、1/3〜1/8の量でヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害することができる、すなわち3倍〜8倍の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。さらに、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満、そしてプロアントシアニジン以外の成分を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%の割合で含む松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物と比較して、3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。
【0031】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、OPCを20重量%〜80重量%含有し、かつ、カテキン類を5重量%以上含有することが最も好ましい。カテキン類が上記の含有量を満たさない場合は、カテキン類を所定の含有量となるように添加してもよい。
【0032】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤には、上記松樹皮抽出物以外のプロアントシアニジンを含有する成分を含有してもよい。例えば、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶葉などからの抽出物、あるいはこれに由来するプロアントシアニジンが含有されてもよい。特にこれらの抽出物、あるいはプロアントシアニジンは、OPC含量が高い。
【0033】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、目的に応じて、種々の形態で利用される。例えば、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用される。この阻害剤に含有される松樹皮抽出物の量もヒアルロニダーゼ阻害剤の利用形態に応じて適宜設定される(後述)。
【0034】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤を医薬品、化粧品などの一形態である皮膚外用剤として用いる場合に、該皮膚外用剤の形態は、特に制限はなく、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤などの当業者が皮膚外用剤に通常用いる形態であればいずれでもよい。これらの皮膚外用剤は、上記松樹皮抽出物に加え、その形態に応じて必要とされる成分を含有し得る。例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤などの化粧品、医薬品などの皮膚外用剤に用いられる成分を含有し得る。
【0035】
上記皮膚外用剤における、松樹皮抽出物の含有量は、該皮膚外用剤の形態、使用目的などにより異なるが、通常、松樹皮抽出物を乾燥重量換算で好ましくは0.005重量%〜20.0重量%、より好ましくは0.01重量%〜10.0重量%の割合で含有する。0.005重量%未満であるとヒアルロニダーゼ阻害効果が十分に発揮されにくく、20.0重量%を超えると製剤化が難しい。一般には、10.0重量%を超えても、それ以上のヒアルロニダーゼ阻害効果は得られにくい。
【0036】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤を食品、医薬品、医薬部外品などとして用いる場合に、その形態は、特に制限はなく、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤;錠剤;丸剤;あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、飴状、液体、またはペースト状などの当業者が通常用いる形態であればいずれでもよい。これらは、形状または好みに応じて、そのまま摂取してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良く、成分を浸出させたものを摂取しても良い。これらは、上記松樹皮抽出物に加え、その形態に応じて必要とされる成分を含有し得る。例えば、食品の場合、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤を含有し得る。これらのうち、食品添加物としては、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム含有材料(卵殻カルシウムなど)、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末など;調味料としては、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などが挙げられる。
【0037】
上記食品においては、松樹皮抽出物は、通常、該松樹皮抽出物の一日の摂取量に換算して、好ましくは5mg〜2000mg、より好ましくは20mg〜1000mgの範囲内となるように該食品中に含有され得る。
【0038】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、皮膚に塗布した場合、あるいは適切な量を摂取した場合には、いずれも、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。本発明の阻害剤に含有される松樹皮抽出物は、同量のプロアントシアニジンを含む植物抽出物(例えばブドウ種子抽出物)と比較して、3倍〜8倍の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。さらに、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満、そしてプロアントシアニジン以外の成分を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%の割合で含む松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物と比較して、3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。このような松樹皮抽出物を含有する本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、炎症、アレルギー、慢性リュウマチや関節痛、肌のシワなどを改善するための食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用され得る。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0040】
(製造例1:松樹皮抽出物の調製)
松樹皮100gに1Lの精製水を加え、破砕し、100℃で10分間加熱した。次いで、直ちに濾過し、濾過後の不溶物を精製水200mLで洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせて1.2Lの抽出液を得た。この抽出液の一部(5mL)を減圧濃縮し、得られた抽出物粉末の重量を測定した(39mg)。
【0041】
次いで、上記抽出物粉末を残りの抽出液に加え、湯で全量1.2Lに調整した後、25℃まで放冷し、次いで塩化ナトリウムを飽和量(34g)添加して攪拌した後、4℃にて24時間静置した。静置後、この溶液を濾過し、粗プロアントシアニジン含有液を得た。この粗プロアントシアニジン含有液へ30gのダイアイオンHP−20を加え、3時間攪拌した後に、濾過し、プロアントシアニジンが吸着した固形分を回収した。この固形分を250mLの精製水で洗浄し、150mLの20%(V/V)エタノール水溶液を加え、1時間攪拌した後に濾過し、濾液を回収し、プロアントシアニジン含有液とした。このプロアントシアニジン含有液を減圧濃縮乾固して、1.6gのプロアントシアニジン含有乾燥粉末を得た。上記方法によって、40重量%のプロアントシアニジン(OPCとして20重量%)およびカテキン類を5重量%含有する松樹皮抽出物を得た。
【0042】
(実施例1)
松樹皮抽出物から所定の割合でプロアントシアニジンを含有する粉末を調製し、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。
【0043】
A.松樹皮抽出物中の成分の分離
得られた松樹皮抽出物を、以下の方法によりプロアントシアニジン含有乾燥粉末と非プロアントシアニジン含有乾燥粉末とに分離した。
【0044】
まず、40重量%のプロアントシアニジン(OPCとして20重量%)およびカテキンを5重量%含有する松樹皮抽出物(商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬;上記製造例で得られた抽出物と同等の成分を含む)100mgを2mLのエタノールに溶解した。この溶液を、水で膨潤させたセファデックスLH−20(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)25mLを充填した15×300mmのカラムに通液して、フロースルーを回収した。さらにカラムにエタノールを通液して5mLずつ分画した。得られた画分をそれぞれシリカゲルクロマトグラフィー(TLC)にかけ、カテキンの標品(Rf値:0.8)および2量体のOPCの標品(プロシアニジンB−2(Rf値:0.6))を指標として、カテキンおよび2量体のOPCを検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co., Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/蟻酸エチル/蟻酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0045】
上記画分のうち、2量体のOPCを含まない画分をフロースルーとあわせ、セファデックスLH−20の非吸着成分を含む溶液とした。この非吸着成分を含む溶液を凍結乾燥して57.5mgの非吸着成分の乾燥粉末を得た。
【0046】
次に、カラムに吸着した成分を、300mLの50%(v/v)水−アセトン溶液を通すことにより溶出させた。この溶出液と上記の2量体のOPCを含む画分とをあわせて吸着成分を含む溶出液とした。得られた吸着成分を含む溶出液を凍結乾燥し、41.7mgの吸着成分の乾燥粉末を得た。
【0047】
得られた非吸着成分の乾燥粉末および吸着成分の乾燥粉末1mgをそれぞれ1mLのメタノールに溶解した。各溶液をTLCにかけ、カテキンの標品(Rf値:0.8)および2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロシアニジンB−2(Rf値:0.6)、3量体:プロシアニジンC−1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、カテキンおよびOPCの有無を検出した。TLCの条件は上記と同様である。
【0048】
検出の結果、非吸着成分を含む溶液には、カテキンが検出されたが、OPCは全く検出されず、このことから非吸着成分には、プロアントシアニジンが含有されていないことが確認された。他方、吸着成分を含む溶液には、多量のOPCが検出されたが、カテキンは検出限界以下であった。さらに、分離前の松樹皮抽出物の重量(100mg)に対して、非吸着成分の乾燥粉末(57.5mg)および吸着成分の乾燥粉末(41.7mg)の回収率は99.2%であり、ほぼ全量回収されていた。したがって、松樹皮抽出物中のプロアントシアニジンは、全て吸着成分の乾燥粉末に含まれるとして、非吸着成分の乾燥粉末を非プロアントシアニジン含有粉末、吸着成分の乾燥粉末をプロアントシアニジン含有粉末とした。このプロアントシアニジン含有粉末のプロアントシアニジン含有量をR.B.Broadhurstらの方法(J.Sci.Fd.Agric.,1978,29,788〜794頁)を用いてプロシアニジンB−2を標品として測定したところ、95.9重量%であった。
【0049】
さらに、上記プロアントシアニジン含有粉末には、カテキンが検出されなかったことから、カテキンは、すべて非プロアントシアニジン含有粉末に含まれているものとした(約8.7重量%)。
【0050】
B.所定割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末の調製上記で得られたプロアントシアニジン含有粉末および非プロアントシアニジン含有粉末を表1に記載の割合で混合し、所定の割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末を調製した。なお、表1に各松樹皮抽出物乾燥粉末のプロアントシアニジン含有量を示す。
【0051】
C.ヒアルロニダーゼ阻害効果が得られる抽出物量の測定
以下に示すように、上記松樹皮抽出物乾燥粉末を含むサンプル溶液、酵素溶液、基質溶液、および活性化剤溶液を調製した。
【0052】
松樹皮抽出物乾燥粉末を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解させ、次いでこれを希釈して、松樹皮抽出物乾燥粉末の最終濃度が0.1〜0.0001重量/容量%の3倍希釈系列になるように調整し、これをサンプル溶液とした。
【0053】
酵素溶液としては、ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、最終酵素活性が400U/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0054】
基質溶液としては、ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、0.8mg/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0055】
活性化剤溶液としては、Compound48/60(シグマ社製) を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、0.1mg/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0056】
サンプル溶液0.2mLに酵素溶液0.1mLを加えて、37℃にて20分間インキュベートした後、さらに活性化剤溶液を0.2mL添加し、37℃にて20分間インキュベートした。これに基質溶液を0.5mL添加して、37℃にて40分間インキュベートした。次いで、0.4N水酸化ナトリウム溶液を0.2mL添加して、氷を用いて0℃に冷却した。この反応液に0.2mLのホウ酸緩衝液(pH9.1)を添加して3分間煮沸した。煮沸後、p−DAB試薬6mLを添加して、37℃にて20分間インキュベートした後、585nmにおける吸光度を測定した(吸光度a)。これとは別に上記工程において、0.4N水酸化ナトリウム溶液と基質溶液の添加する順序を逆にしたこと以外は、同様の操作を行ない、これをブランクとした。上記585nmでの吸光度の測定により、反応液中に存在するヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の分解によって生じるN−アセチルヘキソサミン量が測定される。
【0057】
さらに、対照として、サンプル溶液の代わりに0.1M酢酸緩衝液を用いたこと以外は上記と同様の操作を行い、585nmにおける吸光度を得た(吸光度b)。
【0058】
得られた吸光度aおよびbを用いて、以下の式から、ヒアルロニダーゼ阻害率を算出した。さらに、ヒアルロニダーゼ阻害率の値が50%であるサンプル溶液の濃度から、ヒアルロニダーゼ1ユニットあたりの50%阻害効果が得られる抽出物乾燥粉末量をそれぞれ算出した。結果を表2に示す。表2において、抽出物乾燥粉末量が少ない程、ヒアルロニダーゼ阻害効果が高いことを示す:
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)={1−(吸光度a/吸光度b)}×100。
【0059】
(実施例2および3)
表1に記載の割合でプロアントシアニジン含有粉末と非プロアントシアニジン含有粉末とを混合し、所定の割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末を得た。これを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例1)
非プロアントシアニジン含有粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例2および3)
実施例1の松樹皮抽出物乾燥粉末の代わりに表1に記載のブドウ種子抽出物1(プロアントシアニジン38重量%含有:キッコーマン株式会社)の乾燥粉末またはブドウ種子抽出物2(プロアントシアニジン90重量%含有:常盤植物化学研究所)の乾燥粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表2の結果からわかるように、プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物乾燥粉末を用いた実施例1および2においては、高いヒアルロニダーゼ阻害効果が得られた。例えば、プロアントシアニジンを38.2重量%含有する松樹皮の抽出物乾燥粉末(実施例1)がヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害するのに必要とする抽出物乾燥粉末量は、10ngであった。これに対して、プロアントシアニジンを38重量%含有するブドウ種子の抽出抽出物(比較例2)がヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害するのに必要とする抽出物乾燥粉末量は、78ngであった。さらに、比較例3のプロアントシアニジンを90重量%以上含有するブドウ種子抽出物乾燥粉末では、103ngを必要とした。実施例1と比較例2とを比較すると、松樹皮抽出物乾燥粉末は、同量のプロアントシアニジンを含むブドウ種子抽出物乾燥粉末に比べて約1/8の量で、さらにプロアントシアニジンを90重量%以上含有するブドウ種子抽出物乾燥粉末に比べて約1/10の量で同等のヒアルロニダーゼ阻害効果が得られる。他方、プロアントシアニジンを全く含まない松樹皮抽出物乾燥粉末(比較例1)は、ヒアルロニダーゼ阻害効果が全く認められなかった。これらのことは、松樹皮抽出物乾燥粉末が、他の植物抽出物乾燥粉末に比べて優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有することを示し、この優れたヒアルロニダーゼ阻害効果が、プロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物によって得られることを示す。
【0065】
これらのプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物乾燥粉末(実施例1〜3)の中でも、特にプロアントシアニジンを38.2重量%および67.1重量%含む松樹皮の抽出物乾燥粉末(実施例1および2)は、高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有していた。
【0066】
(実施例4)
松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)および以下の各成分を均一に混合・攪拌して化粧水を調製した:
<化粧水の組成>
松樹皮抽出物 3g
グリセリン 6g
プロピレングリコール 4g
オレイルアルコール 0.1g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1g
エタノール 5g
フェノキシエタノール 0.1g
アスコルビン酸 1g
精製水 79.8g
【0067】
(実施例5)
実施例4と同じ松樹皮抽出物および以下の各成分を均一に混合・攪拌してW/O型エモリエントクリームを得た:
<エモリエントクリームの組成>
松樹皮抽出物 0.1g
マイクロクリスタリンワックス 3g
ラノリン 3g
ワセリン 5g
スクワラン 9g
オリーブ油 12g
セスキオレイン酸ソルビタン 3g
トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1g
ソルビトール 9g
アスコルビン酸 0.1g
精製水 54.8g
防腐剤 適量
香料 適量
【0068】
このエモリエントクリームは、保湿効果および角質柔軟効果に加えて、ヒアルロニダーゼ阻害効果を有するため、皮膚外用剤として有用であった。
【0069】
(実施例6)
実施例4と同じ松樹皮抽出物および以下の各成分を均一に混合し、(株)菊水製作所の打錠機(Cleanpress)を用いて打錠し、1錠220mgの錠剤を得た。この錠剤は、健康食品として用いられる。
<錠剤の組成>
松樹皮抽出物 20g
結晶セルロース 10g
ショ糖エステル 5g
二酸化ケイ素 2g
卵殻カルシウム 63g
【0070】
【発明の効果】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、松樹皮抽出物を含有する。この松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含有し、他の植物抽出物に比べて、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。特に、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%含有する松樹皮抽出物を用いた場合には、極めて優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。この抽出物は天然物由来であるから、該抽出物を含む阻害剤を皮膚外用剤、あるいは健康食品として使用しても安全である。このような松樹皮抽出物を含むヒアルロニダーゼ阻害剤は、炎症、アレルギー、慢性リュウマチ、関節痛、肌のシワなどの改善に効果を有し、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして幅広く用いられ得る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒアルロニダーゼ阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸は、コラーゲンやエラスチンなどと同様に、哺乳動物の結合組織に含まれる成分であり、皮膚の保水、潤滑性、および柔軟性を保っている。近年では、慢性リュウマチ等の炎症反応、I型アレルギー等のアレルギー反応、腫瘍の成長などにも関与していることが考えられるようになった。
【0003】
ヒアルロン酸は、炎症や加齢に伴い、ヒアルロン酸分解酵素(ヒアルロニダーゼ)の活性が亢進することによって、その分解量が増加する。ヒアルロン酸の合成と分解とのバランスが崩れるため、炎症反応の亢進、あるいは老化による皮膚のシワ、関節痛などが引き起こされる。
【0004】
このようなヒアルロニダーゼ活性の亢進を調整するために、様々な植物抽出物を用いたヒアルロニダーゼ阻害剤が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0005】
しかしながら、このような植物抽出物は、そのほとんどが皮膚外用剤として利用されているにすぎない。外用剤のみならず、食品としても安全なヒアルロニダーゼ阻害剤として用いられる植物抽出物は少ない。さらに、植物抽出物は、植物の種類および抽出方法により得られる効果が異なり、ヒアルロニダーゼ阻害効果が十分な抽出物を含むヒアルロニダーゼ阻害剤は、得られていない。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−9371号公報
【特許文献2】
特開平7−138180号公報
【特許文献3】
特開平9−67266号公報
【特許文献4】
特開2000−26306号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、安全性の高い天然素材由来の新規のヒアルロニダーゼ阻害剤を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ヒアルロニダーゼの作用を阻害する天然素材の探索を行った結果、プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物が、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有することを見出して、本発明を完成した。
【0009】
本発明は、松樹皮抽出物を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤を提供し、該松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含む。
【0010】
好ましい実施の態様においては、上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%の割合で含有する。
【0011】
好ましい実施の態様においては、上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物に比べて、3倍以上のヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤について説明する。なお、以下に説明する構成は、本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができる。
【0013】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、松樹皮抽出物を含有し、該松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを含む。
【0014】
このような松樹皮抽出物の原料となる松樹皮としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダなどの樹皮が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮が好ましく用いられる。
【0015】
フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、後述のプロアントシアニジン(proanthocyanidin)に加えて、有機酸、ならびにその他の生理活性成分等を含有し、その主要成分であるプロアントシアニジンには、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0016】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、上記の松の樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、メチルエチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水および有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等が好ましく用いられる。
【0017】
抽出方法は、特に限定されないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0018】
超臨界流体抽出法は、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)などが用いられ、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0019】
超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体とを分離する分離工程からなる。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、または吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0020】
また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、超臨界流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、またはケトン類を2〜20W/V%(重量対容量百分率)程度添加し、この流体で超臨界流体抽出を行うことによって、プロアントシアニジンなどの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0021】
超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点;抽出流体が残留しないという利点;および溶媒の循環利用が可能であり、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0022】
また、松樹皮からの抽出は、上記の方法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法などにより行ってもよい。
【0023】
松樹皮の抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0024】
上記抽出により得られた松樹皮抽出物は、プロアントシアニジン含量を増加させる目的で精製してもよい。精製には、通常、酢酸エチルなどによる分液などが用いられるが、エタノールまたは熱水による抽出の場合には、安全の観点から、限外ろ過、あるいは合成吸着剤などを用いたカラム法またはバッチ法により精製することが好ましい。
【0025】
上記松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを含有する。プロアントシアニジンとは、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体からなる化合物群をいう。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、一般的に、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。
【0026】
上記松樹皮抽出物は、水への溶解性およびヒアルロニダーゼ阻害効果の観点から、プロアントシアニジンとして重合度の低い縮重合体を多く含むことが好ましい。重合度の低い縮重合体としては、重合度が2〜30の縮重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮重合体(2〜4量体)が吸収性や浸透性に優れることから、さらに好ましい。この重合度が2〜4の縮重合体を、本明細書ではオリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin、以下OPCという)という。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質であり、OPCの効果は、外部から摂取しなければ、得られない。
【0027】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含み、好ましくは10重量%〜80重量%、より好ましくは20重量%〜70重量%、さらに好ましくは30重量%〜70重量%の割合で含有する。さらに、プロアントシアニジンの中でも、OPCを松樹皮抽出物中に乾燥重量換算で20重量%〜80重量%含有することが特に好ましい。通常、プロアントシアニジンには様々な機能があるため、該プロアントシアニジンを高い割合で含有する抽出物が好適に用いられるが、ヒアルロニダーゼ阻害剤に用いる場合は、プロアントシアニジン以外の松樹皮抽出成分(主に水可溶性成分)を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%、より好ましくは30重量%〜70重量%の割合で含有する抽出物が好ましい。
【0028】
松樹皮抽出物には、プロアントシアニジン以外の成分として、カテキン(catechin)類を5重量%以上含有することが好ましい。カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称である。カテキン類としては、(+)−カテキン(狭義のカテキンといわれる)、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、アフゼレキンなどが知られている。上記松樹皮抽出物からは、上記の(+)−カテキンの他、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンの3−ガロイル誘導体およびガロカテキンの3−ガロイル誘導体が単離されている。
【0029】
カテキン類には、発癌抑制作用、動脈硬化予防作用、脂肪代謝異常の抑制作用、血圧上昇抑制作用、血小板凝集抑制作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用、抗菌作用、虫歯予防作用、口臭防止作用、腸内細菌叢正常化作用、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用などがあることが知られている。さらに、カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。カテキン類は、OPCの存在下で水溶性が増すと同時に、OPCを活性化する性質を有し、さらにOPCの安定化にも寄与し得る。
【0030】
上述のプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物、特にプロアントシアニジンと他の成分とを含む松樹皮抽出物は、同量のプロアントシアニジンを含む植物抽出物(例えばブドウ種子抽出物)と比較して、1/3〜1/8の量でヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害することができる、すなわち3倍〜8倍の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。さらに、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満、そしてプロアントシアニジン以外の成分を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%の割合で含む松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物と比較して、3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。
【0031】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、OPCを20重量%〜80重量%含有し、かつ、カテキン類を5重量%以上含有することが最も好ましい。カテキン類が上記の含有量を満たさない場合は、カテキン類を所定の含有量となるように添加してもよい。
【0032】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤には、上記松樹皮抽出物以外のプロアントシアニジンを含有する成分を含有してもよい。例えば、樫、山桃などの樹皮、ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子、大麦、小麦、大豆、黒大豆、カカオ、小豆、トチの実の殻、ピーナッツの薄皮、イチョウ葉、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶葉などからの抽出物、あるいはこれに由来するプロアントシアニジンが含有されてもよい。特にこれらの抽出物、あるいはプロアントシアニジンは、OPC含量が高い。
【0033】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、目的に応じて、種々の形態で利用される。例えば、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用される。この阻害剤に含有される松樹皮抽出物の量もヒアルロニダーゼ阻害剤の利用形態に応じて適宜設定される(後述)。
【0034】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤を医薬品、化粧品などの一形態である皮膚外用剤として用いる場合に、該皮膚外用剤の形態は、特に制限はなく、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤などの当業者が皮膚外用剤に通常用いる形態であればいずれでもよい。これらの皮膚外用剤は、上記松樹皮抽出物に加え、その形態に応じて必要とされる成分を含有し得る。例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤などの化粧品、医薬品などの皮膚外用剤に用いられる成分を含有し得る。
【0035】
上記皮膚外用剤における、松樹皮抽出物の含有量は、該皮膚外用剤の形態、使用目的などにより異なるが、通常、松樹皮抽出物を乾燥重量換算で好ましくは0.005重量%〜20.0重量%、より好ましくは0.01重量%〜10.0重量%の割合で含有する。0.005重量%未満であるとヒアルロニダーゼ阻害効果が十分に発揮されにくく、20.0重量%を超えると製剤化が難しい。一般には、10.0重量%を超えても、それ以上のヒアルロニダーゼ阻害効果は得られにくい。
【0036】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤を食品、医薬品、医薬部外品などとして用いる場合に、その形態は、特に制限はなく、ハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤;錠剤;丸剤;あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、飴状、液体、またはペースト状などの当業者が通常用いる形態であればいずれでもよい。これらは、形状または好みに応じて、そのまま摂取してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良く、成分を浸出させたものを摂取しても良い。これらは、上記松樹皮抽出物に加え、その形態に応じて必要とされる成分を含有し得る。例えば、食品の場合、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などの添加剤を含有し得る。これらのうち、食品添加物としては、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム含有材料(卵殻カルシウムなど)、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末など;調味料としては、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液などが挙げられる。
【0037】
上記食品においては、松樹皮抽出物は、通常、該松樹皮抽出物の一日の摂取量に換算して、好ましくは5mg〜2000mg、より好ましくは20mg〜1000mgの範囲内となるように該食品中に含有され得る。
【0038】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、皮膚に塗布した場合、あるいは適切な量を摂取した場合には、いずれも、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。本発明の阻害剤に含有される松樹皮抽出物は、同量のプロアントシアニジンを含む植物抽出物(例えばブドウ種子抽出物)と比較して、3倍〜8倍の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。さらに、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満、そしてプロアントシアニジン以外の成分を乾燥重量換算で10重量%〜90重量%の割合で含む松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物と比較して、3倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上の高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。このような松樹皮抽出物を含有する本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、炎症、アレルギー、慢性リュウマチや関節痛、肌のシワなどを改善するための食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして利用され得る。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0040】
(製造例1:松樹皮抽出物の調製)
松樹皮100gに1Lの精製水を加え、破砕し、100℃で10分間加熱した。次いで、直ちに濾過し、濾過後の不溶物を精製水200mLで洗浄し、濾液と洗浄液とを合わせて1.2Lの抽出液を得た。この抽出液の一部(5mL)を減圧濃縮し、得られた抽出物粉末の重量を測定した(39mg)。
【0041】
次いで、上記抽出物粉末を残りの抽出液に加え、湯で全量1.2Lに調整した後、25℃まで放冷し、次いで塩化ナトリウムを飽和量(34g)添加して攪拌した後、4℃にて24時間静置した。静置後、この溶液を濾過し、粗プロアントシアニジン含有液を得た。この粗プロアントシアニジン含有液へ30gのダイアイオンHP−20を加え、3時間攪拌した後に、濾過し、プロアントシアニジンが吸着した固形分を回収した。この固形分を250mLの精製水で洗浄し、150mLの20%(V/V)エタノール水溶液を加え、1時間攪拌した後に濾過し、濾液を回収し、プロアントシアニジン含有液とした。このプロアントシアニジン含有液を減圧濃縮乾固して、1.6gのプロアントシアニジン含有乾燥粉末を得た。上記方法によって、40重量%のプロアントシアニジン(OPCとして20重量%)およびカテキン類を5重量%含有する松樹皮抽出物を得た。
【0042】
(実施例1)
松樹皮抽出物から所定の割合でプロアントシアニジンを含有する粉末を調製し、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。
【0043】
A.松樹皮抽出物中の成分の分離
得られた松樹皮抽出物を、以下の方法によりプロアントシアニジン含有乾燥粉末と非プロアントシアニジン含有乾燥粉末とに分離した。
【0044】
まず、40重量%のプロアントシアニジン(OPCとして20重量%)およびカテキンを5重量%含有する松樹皮抽出物(商標名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬;上記製造例で得られた抽出物と同等の成分を含む)100mgを2mLのエタノールに溶解した。この溶液を、水で膨潤させたセファデックスLH−20(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)25mLを充填した15×300mmのカラムに通液して、フロースルーを回収した。さらにカラムにエタノールを通液して5mLずつ分画した。得られた画分をそれぞれシリカゲルクロマトグラフィー(TLC)にかけ、カテキンの標品(Rf値:0.8)および2量体のOPCの標品(プロシアニジンB−2(Rf値:0.6))を指標として、カテキンおよび2量体のOPCを検出した。TLCの条件は、以下のとおりである:
TLC:シリカゲルプレート(Merck & Co., Inc.製)
展開溶媒:ベンゼン/蟻酸エチル/蟻酸(2/7/1)
検出試薬:硫酸およびアニスアルデヒド硫酸
サンプル量:各10μL
【0045】
上記画分のうち、2量体のOPCを含まない画分をフロースルーとあわせ、セファデックスLH−20の非吸着成分を含む溶液とした。この非吸着成分を含む溶液を凍結乾燥して57.5mgの非吸着成分の乾燥粉末を得た。
【0046】
次に、カラムに吸着した成分を、300mLの50%(v/v)水−アセトン溶液を通すことにより溶出させた。この溶出液と上記の2量体のOPCを含む画分とをあわせて吸着成分を含む溶出液とした。得られた吸着成分を含む溶出液を凍結乾燥し、41.7mgの吸着成分の乾燥粉末を得た。
【0047】
得られた非吸着成分の乾燥粉末および吸着成分の乾燥粉末1mgをそれぞれ1mLのメタノールに溶解した。各溶液をTLCにかけ、カテキンの標品(Rf値:0.8)および2〜4量体のOPCの各標品(2量体:プロシアニジンB−2(Rf値:0.6)、3量体:プロシアニジンC−1(Rf値:0.4)、4量体:シンナムタンニンA2(Rf値:0.2))を指標として、カテキンおよびOPCの有無を検出した。TLCの条件は上記と同様である。
【0048】
検出の結果、非吸着成分を含む溶液には、カテキンが検出されたが、OPCは全く検出されず、このことから非吸着成分には、プロアントシアニジンが含有されていないことが確認された。他方、吸着成分を含む溶液には、多量のOPCが検出されたが、カテキンは検出限界以下であった。さらに、分離前の松樹皮抽出物の重量(100mg)に対して、非吸着成分の乾燥粉末(57.5mg)および吸着成分の乾燥粉末(41.7mg)の回収率は99.2%であり、ほぼ全量回収されていた。したがって、松樹皮抽出物中のプロアントシアニジンは、全て吸着成分の乾燥粉末に含まれるとして、非吸着成分の乾燥粉末を非プロアントシアニジン含有粉末、吸着成分の乾燥粉末をプロアントシアニジン含有粉末とした。このプロアントシアニジン含有粉末のプロアントシアニジン含有量をR.B.Broadhurstらの方法(J.Sci.Fd.Agric.,1978,29,788〜794頁)を用いてプロシアニジンB−2を標品として測定したところ、95.9重量%であった。
【0049】
さらに、上記プロアントシアニジン含有粉末には、カテキンが検出されなかったことから、カテキンは、すべて非プロアントシアニジン含有粉末に含まれているものとした(約8.7重量%)。
【0050】
B.所定割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末の調製上記で得られたプロアントシアニジン含有粉末および非プロアントシアニジン含有粉末を表1に記載の割合で混合し、所定の割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末を調製した。なお、表1に各松樹皮抽出物乾燥粉末のプロアントシアニジン含有量を示す。
【0051】
C.ヒアルロニダーゼ阻害効果が得られる抽出物量の測定
以下に示すように、上記松樹皮抽出物乾燥粉末を含むサンプル溶液、酵素溶液、基質溶液、および活性化剤溶液を調製した。
【0052】
松樹皮抽出物乾燥粉末を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解させ、次いでこれを希釈して、松樹皮抽出物乾燥粉末の最終濃度が0.1〜0.0001重量/容量%の3倍希釈系列になるように調整し、これをサンプル溶液とした。
【0053】
酵素溶液としては、ヒアルロニダーゼ(シグマ社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、最終酵素活性が400U/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0054】
基質溶液としては、ヒアルロン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、0.8mg/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0055】
活性化剤溶液としては、Compound48/60(シグマ社製) を0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、0.1mg/mLとなるように調整した溶液を使用した。
【0056】
サンプル溶液0.2mLに酵素溶液0.1mLを加えて、37℃にて20分間インキュベートした後、さらに活性化剤溶液を0.2mL添加し、37℃にて20分間インキュベートした。これに基質溶液を0.5mL添加して、37℃にて40分間インキュベートした。次いで、0.4N水酸化ナトリウム溶液を0.2mL添加して、氷を用いて0℃に冷却した。この反応液に0.2mLのホウ酸緩衝液(pH9.1)を添加して3分間煮沸した。煮沸後、p−DAB試薬6mLを添加して、37℃にて20分間インキュベートした後、585nmにおける吸光度を測定した(吸光度a)。これとは別に上記工程において、0.4N水酸化ナトリウム溶液と基質溶液の添加する順序を逆にしたこと以外は、同様の操作を行ない、これをブランクとした。上記585nmでの吸光度の測定により、反応液中に存在するヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の分解によって生じるN−アセチルヘキソサミン量が測定される。
【0057】
さらに、対照として、サンプル溶液の代わりに0.1M酢酸緩衝液を用いたこと以外は上記と同様の操作を行い、585nmにおける吸光度を得た(吸光度b)。
【0058】
得られた吸光度aおよびbを用いて、以下の式から、ヒアルロニダーゼ阻害率を算出した。さらに、ヒアルロニダーゼ阻害率の値が50%であるサンプル溶液の濃度から、ヒアルロニダーゼ1ユニットあたりの50%阻害効果が得られる抽出物乾燥粉末量をそれぞれ算出した。結果を表2に示す。表2において、抽出物乾燥粉末量が少ない程、ヒアルロニダーゼ阻害効果が高いことを示す:
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)={1−(吸光度a/吸光度b)}×100。
【0059】
(実施例2および3)
表1に記載の割合でプロアントシアニジン含有粉末と非プロアントシアニジン含有粉末とを混合し、所定の割合でプロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物乾燥粉末を得た。これを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
(比較例1)
非プロアントシアニジン含有粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作して、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
(比較例2および3)
実施例1の松樹皮抽出物乾燥粉末の代わりに表1に記載のブドウ種子抽出物1(プロアントシアニジン38重量%含有:キッコーマン株式会社)の乾燥粉末またはブドウ種子抽出物2(プロアントシアニジン90重量%含有:常盤植物化学研究所)の乾燥粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ヒアルロニダーゼ阻害効果を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表2の結果からわかるように、プロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物乾燥粉末を用いた実施例1および2においては、高いヒアルロニダーゼ阻害効果が得られた。例えば、プロアントシアニジンを38.2重量%含有する松樹皮の抽出物乾燥粉末(実施例1)がヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害するのに必要とする抽出物乾燥粉末量は、10ngであった。これに対して、プロアントシアニジンを38重量%含有するブドウ種子の抽出抽出物(比較例2)がヒアルロニダーゼ1ユニットを50%阻害するのに必要とする抽出物乾燥粉末量は、78ngであった。さらに、比較例3のプロアントシアニジンを90重量%以上含有するブドウ種子抽出物乾燥粉末では、103ngを必要とした。実施例1と比較例2とを比較すると、松樹皮抽出物乾燥粉末は、同量のプロアントシアニジンを含むブドウ種子抽出物乾燥粉末に比べて約1/8の量で、さらにプロアントシアニジンを90重量%以上含有するブドウ種子抽出物乾燥粉末に比べて約1/10の量で同等のヒアルロニダーゼ阻害効果が得られる。他方、プロアントシアニジンを全く含まない松樹皮抽出物乾燥粉末(比較例1)は、ヒアルロニダーゼ阻害効果が全く認められなかった。これらのことは、松樹皮抽出物乾燥粉末が、他の植物抽出物乾燥粉末に比べて優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有することを示し、この優れたヒアルロニダーゼ阻害効果が、プロアントシアニジンを含有する松樹皮抽出物によって得られることを示す。
【0065】
これらのプロアントシアニジンを含む松樹皮抽出物乾燥粉末(実施例1〜3)の中でも、特にプロアントシアニジンを38.2重量%および67.1重量%含む松樹皮の抽出物乾燥粉末(実施例1および2)は、高いヒアルロニダーゼ阻害効果を有していた。
【0066】
(実施例4)
松樹皮抽出物(商品名:フラバンジェノール、株式会社東洋新薬)および以下の各成分を均一に混合・攪拌して化粧水を調製した:
<化粧水の組成>
松樹皮抽出物 3g
グリセリン 6g
プロピレングリコール 4g
オレイルアルコール 0.1g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル 1g
エタノール 5g
フェノキシエタノール 0.1g
アスコルビン酸 1g
精製水 79.8g
【0067】
(実施例5)
実施例4と同じ松樹皮抽出物および以下の各成分を均一に混合・攪拌してW/O型エモリエントクリームを得た:
<エモリエントクリームの組成>
松樹皮抽出物 0.1g
マイクロクリスタリンワックス 3g
ラノリン 3g
ワセリン 5g
スクワラン 9g
オリーブ油 12g
セスキオレイン酸ソルビタン 3g
トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1g
ソルビトール 9g
アスコルビン酸 0.1g
精製水 54.8g
防腐剤 適量
香料 適量
【0068】
このエモリエントクリームは、保湿効果および角質柔軟効果に加えて、ヒアルロニダーゼ阻害効果を有するため、皮膚外用剤として有用であった。
【0069】
(実施例6)
実施例4と同じ松樹皮抽出物および以下の各成分を均一に混合し、(株)菊水製作所の打錠機(Cleanpress)を用いて打錠し、1錠220mgの錠剤を得た。この錠剤は、健康食品として用いられる。
<錠剤の組成>
松樹皮抽出物 20g
結晶セルロース 10g
ショ糖エステル 5g
二酸化ケイ素 2g
卵殻カルシウム 63g
【0070】
【発明の効果】
本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤は、松樹皮抽出物を含有する。この松樹皮抽出物は、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含有し、他の植物抽出物に比べて、優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。特に、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%含有する松樹皮抽出物を用いた場合には、極めて優れたヒアルロニダーゼ阻害効果を有する。この抽出物は天然物由来であるから、該抽出物を含む阻害剤を皮膚外用剤、あるいは健康食品として使用しても安全である。このような松樹皮抽出物を含むヒアルロニダーゼ阻害剤は、炎症、アレルギー、慢性リュウマチ、関節痛、肌のシワなどの改善に効果を有し、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品などとして幅広く用いられ得る。
Claims (3)
- 松樹皮抽出物を含有するヒアルロニダーゼ阻害剤であって、該松樹皮抽出物がプロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%未満の割合で含む、ヒアルロニダーゼ阻害剤。
- 前記松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で10重量%〜80重量%の割合で含有する、請求項1に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
- 前記松樹皮抽出物が、プロアントシアニジンを乾燥重量換算で90重量%以上含有する植物抽出物に比べて、3倍以上のヒアルロニダーゼ阻害効果を有する、請求項1または2に記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
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