JP5089874B2 - プラズマ処理装置用部材およびその製造方法 - Google Patents
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本発明に係る溶射皮膜被覆部材は、パーティクルの付着、堆積機能および再飛散防止機能に優れるほか、耐プラズマエロージョン性に優れる酸化物セラミック材料からなるものであるため、耐プラズマエロージョン性が要求される半導体加工処理装置用部材の他、昨今の特に重要視されている半導体の精密加工部材あるいはこれらの装置の構造部材(加工室の壁面)などの分野で利用が可能である。
これらの装置によって薄膜を形成する場合、上記装置に用いられている各種の治具や部材の表面にも、薄膜材料の一部が微細な粉体(パーティクル)となって付着する。治具や装置部材への薄膜材料の付着は、その量が少ない場合には問題となることが少ない。しかし、最近、薄膜形成処理時間が長くなるに従って、治具や部材表面へのパーティクルの付着量が増加する一方、操業時の温度変化や治具や部材に対する機械的負荷が変動することが多くなってきた。その結果、薄膜形成処理中に治具や部材表面に付着していた薄膜の一部が、剥離して飛散し、それが半導体ウエハに付着して製品の品質を悪くするという問題がある。
例えば、特許文献2および3では、治具や部材の表面をサンドブラストし、ホーニングやニッティングなどを行って表面を粗面化し、このことによって、有効表面積を増加させて、付着した薄膜粒子が剥離飛散しないようにする技術が開示されている。
(1)薄膜成形プロセスにおける課題
(a)薄膜形成プロセスにおける治具や装置部材に対する薄膜粒子の付着とその飛散現象を防止のため、先行の特許文献1〜8に開示された技術、すなわち、薄膜粒子の付着面積を各種の手段によって拡大する方法は、薄膜形成作業の長時間操業と、それによる生産効率の向上に一定の効果は認められるものの、最終的には付着堆積した薄膜粒子が再飛散するので、根本的な解決策にはなり得ない。
(b)多量の薄膜粒子が付着堆積した治具や装置部材の表面に形成または処理されている表面処理膜は、金属質の膜であるため、酸やアルカリによって薄膜粒子を除去する際に、同時に溶解し、そのため再生して使用できる回数が少なく、製品のコストアップ原因となっている。
(c)従来技術における薄膜粒子の付着堆積面積の拡大策は、単に面積の拡大のみを目的としており、付着堆積した薄膜粒子の飛散を防止する方法についての提案でない。
プラズマエッチングプロセスで使用される治具や装置部材における対策技術は、特許文献9に開示されているように、石英基材の表面にAl2O3、TiO2の溶射皮膜を形成するとともに、その溶射皮膜の表面粗さをRsk(粗さ曲線のスキューネス)の0.1未満の負の値に制御することによって、スパッタリング現象によって発生する微細なパーティクルを、この粗さ曲線を有する皮膜表面で受けとめることを提案している。しかし、この技術が開示しているTiO2は、ハロゲンガスを含むプラズマエッチング加工環境では、自らが腐食されたりエッチングされて、却って汚染源となってパーティクルを多量に発生する。一方、Al2O3の溶射皮膜は、TiO2皮膜に比較すると、耐食性、耐プラズマエッチング性に優れているものの、寿命が短く、また、Rsk:0.1未満の負の値を示す表面形状は、環境汚染物質の付着・堆積量が少なく、短時間内に飽和するため、その残りがパーティクルの発生源となる欠点がある。
本発明の他の目的は、ハロゲンガスを含む腐食環境における半導体加工精度を高めると共に、長期に亘って安定して加工ができる他、半導体製品の品質の向上とコスト低減に効果のあるプラズマ処理装置用部材とその製造方法を提案するところにある。
(1)基材の表面に、皮膜表面の算術平均粗さ(Ra)が3.30〜28.0μmを示すと同時に、粗さ曲線のスキューネス値(Rsk)が正の値を示しかつその割合が80%以上である表面形状を有する、Al2O3、Y2O3またはAl2O3−Y2O3のうちから選ばれる酸化物による厚さ50〜2000μmの溶射皮膜が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置用部材。
(2)基材の表面に、金属質アンダーコートが形成され、そのアンダーコートの上には、算術平均粗さ(Ra)が3.30〜28.0μmを示すと同時に、高さ方向の粗さ曲線のスキューネス値(Rsk)が正の値を示しかつその割合が80%以上である表面形状を有する、Al 2 O 3 、Y 2 O 3 またはAl 2 O 3 −Y 2 O 3 のうちから選ばれる酸化物による厚さ50〜2000μmの溶射皮膜が積層形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置用部材。
基材の表面に直接、または該基材表面に形成した金属質アンダーコートの上に、Al2O3、Y2O3またはAl2O3−Y2O3複酸化物などの酸化物セラミックスの溶射皮膜を、50〜2000μmの厚さに形成する。この溶射皮膜の膜厚が50μmより薄いと、トップコートとしての寿命が短くなり、一方、2000μmより厚いと、溶射成膜時に発生する熱収縮に起因する残留応力が大きくなって、皮膜の耐衝撃性や基材との密着力が低下する。
本発明において、基材表面に直接、または金属質アンダーコートを施工した上に形成される前記酸化物セラミック溶射皮膜は、その表面形状、即ち、表面粗さ、とくに高さ方向の粗さ曲線を、以下に述べるようにする。
半導体加工装置、例えば、プラズマ処理装置に用いられる治具や部材等は、表面積の大きいものが用いられる。その理由は、薄膜粒子やプラズマエッチングによって発生するパーティクルなどの環境汚染物を、なるべく多く、この部材表面に付着(吸着)させると同時に、その堆積状態を永く維持させるためであり、この付着、堆積した環境汚染物質が基材表面から再飛散することを防止するためである。
この平均粗さ(Ra)に着目した理由は、皮膜の品質管理上簡便であるほか、皮膜表面の形状、特に粗さ状態を定性的に把握するのに便利だからである。
また、Raの上限を28.0μm以下に限定する理由は、これが本発明に係る溶射粉末材料の最大粒径80μmで得られる表面粗さの上限値になるからである。
なお、Raの好ましい範囲は、5μm〜15μmである。
このスキューネス値は、図1に示すように、山に対して谷の部分が、広い粗さ曲線では、確率密度関数が谷の方へ偏った分布となる。この場合のスキューネス値Rskは正の値を示す。Rskが正側に大きいほど確率密度関数が谷側に片寄り、例えば、環境汚染物質が谷に付着しやすく、堆積しやすいものとなる。
一方、このスキューネス値が負の値を示す場合、図1に示すように、谷の部分が著しく狭い粗さ曲線となり、パーティクルなどの環境汚染物質が谷の部分に付着しにくく、堆積量も少ないものになる。
なお、このRskは、基準長(lr)における高さ(Z(x))の三乗平均を二乗平均率方根の三乗(Rq3)で割ったものと定義されている。
溶射皮膜は、このような熱履歴と溶射粉末材料の粒度の異なるセラミック粒子から構成されているため、結果的には扁平度の異なる粒子が無秩序に堆積することとなる。従って、溶射皮膜の表面粗さは、このような不均等な粒子が堆積した結果、形成されるものであり、一定の溶射条件の下で、溶射粉末材料として5〜80μmの粒径の酸化物セラミック溶射粉末材料を溶射して、RaとRskを上述した範囲内の値になるように制御することができる。
この実施例では、Al基材(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ5mm)の表面に、溶射法によって、アンダーコート(80mass%Ni−20mass%Cr)を80μm、その上にトップコートとしてAl2O3、Y2O3またはAl3O3−Y2O3複酸化物の皮膜を250μmを形成した。その後、この皮膜表面を粗さ計を用いて、高さ方向の粗さ曲面のRsk値を測定し、Rsk>0、Rsk<0に区別して供試溶射皮膜試験片を準備した。
(1)雰囲気ガス条件
CHF380:O2100:Ar160(数字は1分間当りの流量cm3)
(2)プラズマ照射出力
高周波電力:1300W
圧力 :4Pa
温度 :60℃
この実験では、比較例のトップコートとして、TiO2および8mass%Y2O3−92mass%ZrO2の酸化物セラミック皮膜を同じ条件で試験した。
この実施例では、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS304)、石英の3種類の基材(いずれも、幅20mm×長さ50mm×厚さ5mm)を用い、Al2O3のブラスト材(WA#80)を吹き込み粗面化した後、直接または80mass%Ni−20mass%Crのアンダコート(80μm厚)を施工したものの上に、Al2O3を大気プラズマ溶射法によって、厚さ120μmの皮膜を形成した。その後、形成された皮膜表面の粗さのRa(算術的平均高さ)とスキューネス値(Rsk)を測定するとともに、それぞれの溶射皮膜の気孔率、ミクロ硬さ、耐熱衝撃性の試験を実施した。
なお、気孔率は、皮膜断面を画像解析装置を用いて気孔部の面積と観察視野面積の割合から求め、熱衝撃試験は、500℃の電子炉中で15分間加熱した後、これを23℃の空気中で放空する操作を5回繰返すことによって実施した。
この実施例は、Al2O3、Y2O3およびAl2O3−Y2O3複酸化物の大気プラズマ溶射皮膜の耐プラズマエッチング性について、それぞれの皮膜表面のRsk値との関係を調査した。試験片基材としてステンレス鋼(寸法:幅30mm×長さ50mm×厚さ3.5mm)を用い、この表面に酸化物セラミック皮膜を、直接120μmの厚さに形成した。その後、この皮膜表面のRsk値を求めてRsk>0のものと、Rsk<0を区別した試料を準備した。
試験装置として、反応性プラズマエッチング装置を用い、環境ガス成分としてCF4ガスを60ml/min、O2を2ml/min流通させながら、プラズマ出力80W、照射時間500分の連続試験を行い、その後、電子顕微鏡で皮膜表面を観察した。
この実施例では、アルミニウム基材(直径70mm×厚さ12mm)の片面に対して、直接、大気プラズマ溶射法によって、Al2O3およびY2O3の皮膜を120μm厚みに形成した。その後、この皮膜表面のRaとRsk値を10ヶ所測定して、Rsk>0とRsk<0の割合を区別した試験片を準備した。
この後、この試験片を実施例1と同じ条件でプラズマエッチングする一方、その周辺にも試験片を並べ(この試験片はプラズマエッチング作用を受けず、エッチングによって発生するパーティクルのみが付着する)、500分の連続エッチングによって発生するパーティクルを皮膜表面に付着させた。
次いで、以上のような条件で皮膜表面にパーティクルを付着させた試験片を、加熱機構を有する真空槽中で基材を300℃に15分間加熱した後、アルゴンガスを700hPaになるように、真空槽中に導入する操作を行い、皮膜表面に付着しているパーティクルの飛散状況を真空槽の底部に配設して、シリコンウエハー(直径5インチ)表面に落下する直径0.2μm以上の粒子数から判定した。
Claims (3)
- 基材の表面に、皮膜表面の算術平均粗さ(Ra)が3.30〜28.0μmを示すと同時に、粗さ曲線のスキューネス値(Rsk)が正の値を示しかつその割合が80%以上である表面形状を有する、Al 2 O 3 、Y 2 O 3 またはAl 2 O 3 −Y 2 O 3 のうちから選ばれる酸化物による厚さ50〜2000μmの溶射皮膜が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置用部材。
- 基材の表面に、金属質アンダーコートが形成され、そのアンダーコートの上には、算術平均粗さ(Ra)が3.30〜28.0μmを示すと同時に、高さ方向の粗さ曲線のスキューネス値(Rsk)が正の値を示しかつその割合が80%以上である表面形状を有する、Al 2 O 3 、Y 2 O 3 またはAl 2 O 3 −Y 2 O 3 のうちから選ばれる酸化物による厚さ50〜2000μmの溶射皮膜が積層形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置用部材。
- 基材の表面に、直接または金属質アンダーコートを介して、Al2O3、Y2O3またはAl2O3−Y2O3複酸化物からなる粒径:5〜80μmの溶射粉末材料を溶射し、算術平均粗さ(Ra)が3.30〜28.0μmを示すと同時に、高さ方向の粗さ曲線のスキューネス値(Rsk)が正の値を示しかつその割合が80%以上である表面形状を有する、Al 2 O 3 、Y 2 O 3 またはAl 2 O 3 −Y 2 O 3 のうちから選ばれる酸化物による厚さ50〜2000μmの溶射皮膜を、膜厚50〜2000μmの厚さに形成することを特徴とするプラズマ処理装置用部材の製造方法。
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