本発明は、伝動ベルトを作製する際に、母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維であって、複数本のガラス繊維フィラメントを集束させたガラス繊維コードにアルコール化合物(G)を加えて溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを含有する1次被覆層を形成し、その上層にクロロルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維である。
その製造は、アルコール化合物(G)を加えて溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとを混合してなる1次被覆用塗布液を塗布後、乾燥させて、ガラス繊維コードへの水の浸透を防ぐ働きを有する1次被覆層を設けた後、その上層にクロロルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)とを有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後、乾燥させて、母材ゴムとの接着のための更なる2次被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維となす。有機溶剤としては、例えば、キシレンが用いられる。
クロロフェノール(E)にホルムアルデヒド(F)を反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)は水に対する溶解性が低く、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を水中で縮合反応させるとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)は沈殿として生成する。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆用塗布液の組成物として、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を使用するには、生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる必要がある。
発明者らが鋭意検討を行った結果、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿した反応液にアルコール化合物(G)を加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解後、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンとを混合すると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の析出が起こり難いことがわかった。
詳しくは、クロロフェノール(D)とホルムアルデヒド(E)を水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿に、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物から選ばれる少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物(G)を加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させると、1次被覆用塗布液を調製する際に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンを加え混合したとしても、混合後にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出しないことがわかった。
即ち、クロロフェノール(D)とホルムアルデヒド(E)の混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿が生成した反応液に水溶性のアルコール化合物(G)を加え、さらに攪拌することによって該沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を得る。
このように、水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させるためには、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物から選ばれる少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物(G)を加える必要がある。尚、本発明において、アルコール化合物(G)とは炭化水素の水素原子をOH基で置換した化合物を指し、OH基を1個有するモノアルコール化合物、OH基を2個有するグリコール(ジオール)化合物、OH基を3個有するトリオール化合物が含まれる。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿した反応液に、モノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物から選ばれる、水と相溶性のアルコール化合物(G)を加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンとを混合させた1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布した後、乾燥させて得られた。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液が水溶性のアルコール化合物を加えることで安定し、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出しなくなるのは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)のOH基とアルコール化合物(G)のOH基とが3次元的に強い水素結合を形成することによると思える。且つ、アルコール化合物(G)は、双極子モーメントと誘電率の値が高いので分散力など遠距離相互作用が強く働き、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を水溶液中で安定化させる効果、さらに、配位結合的(電荷移動的)相互作用エネルギーが大きいので、溶媒−溶質間だけでなく溶媒−溶媒間で会合を起こして強い溶媒和が生じ、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出することなきように水溶液中で安定化させる効果があると思える。この安定化させる効果はOH基の個数が多いグリコール化合物、トリオール化合物の方がモノアルコール化合物より大きく、特にグリコール化合物が安定化させる効果に優れている。
ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が50℃より低いアルコール化合物(G)を用いるとアルコール化合物(G)が揮発しやすく扱い難い。アルコール化合物(G)が揮発するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出する。ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が250℃より高いアルコール化合物(G)を用いると、ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し被覆する際、被覆層よりアルコール化合物(G)が揮発しにくい。被覆層よりアルコール化合物(G)を除去しないと、ガラス繊維コードを耐熱ゴムに埋め込んで伝動ベルトとした際の、伝動ベルトの耐熱性、耐水性が低下する。よって、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に用いるアルコール化合物(G)には、沸点、50℃以上、250℃以下の水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物またはトリオール化合物から少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物(G)を選んで用いることが好ましい。
アルコール化合物(G)を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、G/A=50重量%以上、500重量%以下である。言い換えれば、加えるアルコール化合物(G)の重量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量に対して、G/A=1/2以上、5以下である。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、アルコール化合物(G)を加える量が、G/A=50重量%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる効果が小さく、G/A=500重量%より多く含有させる必要はない。アルコール化合物(G)を加える量が、G/A=500重量%より多くなると、ガラス繊維コードの1次被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)およびビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)の濃度が低下し、ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布してなるゴム補強用ガラス繊維が柔軟でなくなる。
尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)と水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の重量より求められる。この際、未反応のクロロフェノール(E)およびホルムアルデヒド(F)は揮発除去される。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させるために使用するアルコール化合物(G)には、メタノール(CH3OH)沸点65℃、エタノール(C2H5OH)沸点78℃、n−プロピルアルコール(C3H8O)沸点97℃、イソプロピルアルコール(C3H8O)沸点82℃、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C3H8O2)沸点124℃、プロピレングリコール(C3H8O2)沸点188℃、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C7H16O3)沸点190℃、1−メトキシ−2−プロパノール(C4H10O2)沸点120℃、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C2H6O2)沸点196℃、ジエチレングリコール(C4H10O3)沸点244℃、1,2−ジエトキシエタン(C6H14O2)沸点123℃、グリセリン(C3H8O3)沸点171℃が挙げられ、好ましくは、n−プロピルアルコール(C3H8O)、イソプロピルアルコール(C3H8O)、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C3H8O2)、プロピレングリコール(C3H8O2)、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C7H16O3)、1−メトキシ−2−プロパノール(C4H10O2)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C2H6O2)、ジエチレングリコール(C4H10O3)、1,2−ジエトキシエタン(C6H14O2)である。特に、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、1次被覆用塗布液を塗布後乾燥してガラス繊維コードに1次被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアルコール化合物(G)である。
OH基2個のグリコール(ジオール)化合物の中には、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる目的で本発明の1次被覆用塗布液に使用する際、塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成されるものもあるが、必要領域における濃度調整において、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ともにその懸念はなく、加えて、火気に対して安全性があり、毒性も低く、沸点が低いことより作業者が吸引する懸念もなく、環境安全性に優れ、市販価格も安く、実用性が高く、本発明のガラス繊維被覆用塗布液に用いるに、特に好ましいアルコール化合物(G)である。
OH基1個のモノアルコール化合物に含まれるメタノールおよびエタノール、およびOH基3個のトリオール化合物に含まれるグリセリンは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる目的で1次被覆用塗布液に使用した際、1次被覆用塗布液が高濃度の状態では、ガラス繊維コードに塗布被覆することが可能である。しかしながら、塗布時に塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成析出しやすくなり、濃度調整がし難く扱い難い。
また、ゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に使用する1次被覆用塗布液は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)とを水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿した反応液に、アミン化合物(H)を加えることで、当該沈殿を溶解させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとを混合させても得られることがわかった。
尚、前記アミン化合物(H)には、塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物(H)を用いた。
即ち、1次被覆用塗布液は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿した前記反応液に、塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物(H)を加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させた後、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンとを混合させて調製した。
塩基性度定数(Kb)とは、アルカリが水素イオンを溶液から受け入れる度合いを測定し、塩基性度として表したものであり、化1の式の平衡定数である。
通常、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を水に溶解させる場合には、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿した反応液にアンモニアまたは水酸化ナトリウム等のアルカリを加える。
しかしながら、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させるために、アンモニアのように塩基性度定数(Kb)が小さいアルカリを加えると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させた後、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとを混合するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出し、1次被覆用塗布液としての用をなさない。
また、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を水に溶解させるために、水酸化ナトリウムのように塩基性度定数(Kb)が大きいアルカリを加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させた後、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンとを混合すると、混合後にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の析出が抑制される。しかしながら、水酸化ナトリウムは強アルカリであるため、ガラス繊維を劣化させて、引っ張り強度を弱めてしまい使用し難い。
ところが、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿した反応液にアミン化合物(H)を加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解後、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとを混合すると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の析出が起こり難く、ガラス繊維を劣化させて、引っ張り強度を弱めてしまうことがないことがわかった。
即ち、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)の混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿が生成した反応液に、アミン化合物(H)を加え、さらに攪拌することによって該沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を得る。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿が生成した反応液に、沈殿を溶解させ且つ沈殿溶解後も析出なきよう安定させるために加えるアミン化合物(H)の塩基性度定数(Kb)は5×10−5以上、1×10−3以下である。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に加えるアミン化合物(H)の塩基性度定数(Kb)が5×10−5より小さいと、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとを混合すると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が経時により析出する、1×10−3より大きいとガラス繊維被覆用塗布掖とし、ガラス繊維コードに被覆し耐熱ゴムに埋め込み際のガラス繊維コードと耐熱ゴムの接着性に劣る。
アミン化合物(H)を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、H/A=50重量%以上、500重量%以下である。言い換えれば、加えるアミン化合物(H)の重量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量に対する重量比で表して、H/A=1/2以上、5.0倍以下である。
アミン化合物(H)を加える量が、H/A=50重量%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させる効果が小さく、H/A=500重量%より多く含有させる必要はない。アミン化合物(H)を加える量が、H/A=500重量%より多くなると、ゴム補強用ガラス繊維の1次被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)およびビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンの濃度が低下し、ガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させてなるゴム補強用繊維が柔軟でなくなる。
尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)と水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の重量より求められる。この際、未反応のクロロフェノール(E)およびホルムアルデヒド(F)は揮発除去される。
参考発明において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させるために加えるアミン化合物(H)にはメチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノ−ルアミンが挙げられる。この中でも、ジメチルアミンおよびジエチルアミンは価格が安く入手し易いこと、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンはアミン特有の臭いがなく取り扱いが容易であることより本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアミン化合物(H)である。
これらアミン化合物(H)の塩基性度定数(Kb)は、有機化学(中)第3版(東京化学同人)および有機化学用語辞典(第2刷)朝倉書店、167頁〜175頁等に示されており、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は1.0×10−4.5である。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆に使用するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)としては、クロロフェノール(E)に対するホルムアルデヒド(F)のモル比がF/E=0.5以上、3.0以下で、塩基性の触媒で反応させた水溶性もしくは水溶媒レゾール型樹脂が挙げられる、ホルムアルデヒド(F)のモル比がF/E=0.5未満では、ゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムとの接着強さに劣り、F/E=3.0を越えると1次被覆用塗布液は、ゲル化し易い。好ましくは、F/E=0.5以上、1.2以下の範囲である。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層の組成物であるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)には、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの比が、重量比で10〜20:10〜20:80〜60の範囲で重合させてなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)を用いることが好ましく、市販の日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテクス、JSR株式会社製、商品名、0650、および日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol、型番、1218FS等が挙げられる。尚、前記重量比を外れたビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)を用いた1次被覆を設け、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)を含有する2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維は、母材ゴムとの接着強さに劣る。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層および2次被覆層の組成物として用いるクロロスルホン化ポリエチレン(C)は、重量百分率で表して、塩素含有量が20.0重量%以上、40.0重量%以下、スルホン基中の硫黄含有量が0.5重量%以上、2.0重量%以下のものが好適に用いられ、例えば、固形分約40重量%のラテックスとして、住友精化株式会社製、商品名、CSM−450が市販されており、本発明に好適に使用される。尚、前述の塩素含有量及びスルホン基中の硫黄含有量を外れたクロロスルホン化ポリエチレン(C)を用いた1次被覆用塗布液または2次被覆用塗布液を使用し、ガラス繊維コードに1次被覆または2次被覆を施し作製したゴム補強用ガラス繊維は、母材であるHNBRとの接着性に劣る。
伝動ベルトに使用した際のゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムに、所望の接着強さを得るには、本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に含まれるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=1.0重量%以上、15.0重量%以下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=45.0重量%以上、82.0重量%以下、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=3.0重量%以上、40.0重量%以下の範囲で含まれることが好ましい。
本発明のゴム補強用ガラス繊維において、1次被覆層中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有量が1.0重量%より少ないと、ガラス繊維コードの被覆材とした際に、ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐水性、耐熱性が得難い。クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有量が15.0重量%を超えると、凝集沈殿を起こし易く1次被覆用塗布液の調製が困難となる。よって、本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層における好適なクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有範囲は、1次被覆層に含まれるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、A/(A+B+C)=1.0重量%以上、15.0重量%以下の範囲である。好ましくは、A/(A+B+C)=2.0重量%以上、12.0重量%以下の範囲である。
また、本発明のゴム補強用ガラス繊維において、1次被覆層中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の含有量が45.0重量%より少ないと、ガラス繊維とHNBRとの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の含有量が82.0重量%を超えると、ガラス繊維コードの被覆とした際に、被覆に粘着性が生じ被覆層が転写し易くなり、工程が汚れる等の不具合が生じる。よって、本発明のゴム補強用ガラス繊維におけるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の好適な含有範囲は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、B/(A+B+C)=45.0重量%以上、82.0重量%以下の範囲である。さらに、好ましくは、B/(A+B+C)=55.0重量%以上、75.0重量%以下の範囲である。
1次被覆層中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)が、3.0重量%より少ないと、伝動ベルトにした際に所望の耐熱性が得難く、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が40.0重量%より多いと、ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層において、好適なクロロスルホン化ポリエチレン(C)の含有範囲は、1次被覆層中に含まれるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、C/(A+B+C)=3.0重量%以上、40.0重量%以下の範囲である。さらに、好ましくは、C/(A+B+C)=20.0重量%以上、35.0重量%以下の範囲である。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層の組成物の一つであるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の一部を、他のゴムエラストマーに替えても良い。ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のみでは、ゴム補強用ガラス繊維の被覆に粘着性が生じ被覆層が転写し易くなり、工程が汚れたりして作業性が悪くなる。他のゴムエラストマーとしてカルボキシル基変性スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム等も挙げられるが、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)との相性が良いスチレン−ブタジエン共重合体(I)が特に好適に使用され、本発明のゴム補強用ガラス繊維の特徴である母材ゴムとの接着性、および母材ゴムとしての耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとした際の耐熱性を損なわない。
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、スチレン−ブタジエン共重合体(I)を、I/B=5.0重量%〜80.0重量%の範囲で、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)に替えて使用できる。I/B=5.0重量%未満では、ゴム補強用ガラス繊維の被覆に粘着性が生じ、被覆層が転写し易くなることを抑制する効果が小さい。好ましくは、I/B=25.0重量%以上である。I/B=80.0重量%を超えると、母材ゴムとの接着性および母材ゴムとしての耐熱ゴムに埋設し、伝動ベルトとした際の耐熱性が失われる。好ましくは、I/B=55.0重量%以下である。
このようなスチレン−ブタジエン共重合体(I)として、例えば、日本エイアンドエル株式会社から、商品名、J−9049が市販されており、本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆に使用される。
本発明のゴム補強用ガラス繊維は、従来のゴム補強用ガラス繊維に比較して、母材ゴムとしての耐熱ゴム、例えばHNBRに埋設して伝動ベルトとした際に、ガラス繊維コードへの水の浸透を防ぐことで伝動ベルトに優れた耐水性を与え、耐水性および耐熱性を併せ持たせる。
尚、本発明において、伝動ベルトとは、エンジン、その他機械を運転するために、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるベルトのことであり、かみ合い伝動で駆動力を伝える歯付きベルト、摩擦伝動で駆動力を伝えるVベルトが挙げられる。自動車用伝動ベルトとは自動車のエンジンルーム内で用いられる耐熱性の前記伝動ベルトのことである。自動車用タイミングベルトとは、前記自動車用伝動ベルトの中で、カムシャフトを有するエンジンにおいて、クランクシャフトの回転をタイミングギヤに伝えカムシャフトを駆動させバルブの開閉を設定されたタイミングで行うための、プーリーの歯とかみ合う歯を設けた歯付きベルトのことである。
従来、耐熱性の伝動ベルトは、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンからなるガラス繊維被覆用塗布液を用いガラス繊維コードに塗布後乾燥させたゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムとしてのHNBRに埋設し作製された。また、該ゴム補強用ガラス繊維に更なる2次被覆層を設け耐熱ゴムとしてのHNBRに埋設し作製された。
従来の伝動ベルトに比較して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とを含有する1次被覆層を形成し、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)とからなる2次被覆層を設けてなる本発明のゴム補強用ガラス繊維をHNBRゴムに埋設し作製した伝動ベルトは、多湿下および高温下おける長時間の走行後も、2次被覆層によるガラス繊維とHNBRの初期の接着強さが持続され、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れており、耐水性、耐熱性を併せ持つ。
その際、2次被覆層の重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の含有が10.0重量%以上、70.0重量%重量以下、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量を基準とする重量百分率で表して、ビスアリルナジイミド(D)の含有を、D/C=0.3重量%以上、10.0重量%以下となるように2次被覆用塗布液を調製し、残部を無機充填剤および加硫剤とすることが好ましい。無機充填剤としてはカーボン、酸化マグネシウム、加硫剤としてはニトロソ化合物、例えば、p−ニトロソベンゼン、ニトロソベンゼンが挙げられる。
2次被覆層中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)の含有が、10.0重量%より少ないと、前述の優れた耐熱性が得難い。70.0重量%を超えると、ガラス繊維コードと母材ゴムとの接着強さが弱くなり作製した伝動ベルトは耐久性に劣る。好ましくは、25.0重量%以上、60.0重量%以下である。
また、2次被覆中のビスアリルナジイミド(D)の含有は、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、D/C=0.3重量%以上、10.0重量%以下である。
ビスアリルナジイミド(D)の含有が、D/C=0.3重量%より少ないと、前述の優れた耐熱性が得難い。D/C=10.0重量%を超えると、ガラス繊維コードと母材ゴムとの接着強さが弱くなり作製した伝動ベルトは、耐久性に劣る。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層に使用するビスアリルナジイミド(D)は熱硬化性イミドの一種であり、低分子量のビスアリルナジイミド(D)は他の樹脂との相溶性に優れており、硬化後のビスアリルナジイミド樹脂は、ガラス転移点が300℃以上で、前記伝動ベルトの耐熱性を高める効果がある。
ビスアリルナジイミド(D)は、その硬化前において化2の構造式で表され、化2の構造式のアルキル基は、化3または化4の構造式等で示され、特に、N−N'−ヘキサメチ
レンジアリルナジイミドが好適に使用される。
ビスアリルナジイミド(D)は、丸善石油化学株式会社よりBANI−M、BANI−H、BANI−X等の商品名で市販され好適に使用される。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の耐熱性のためには、2次被覆の組成物として、クロロスルホン化ポリエチレン(C)を用いることが好ましい。さらに、加硫剤としてのニトロソ化合物、例えば、p−ニトロソベンゼン、無機充填剤、例えばカーボンブラックまたは酸化マグネシウムを前記2次被覆用塗布液に添加し、2次被覆層に加えることは、該ゴム補強用ガラス繊維をゴムに埋設して作製した伝動ベルトの耐熱性を高める一層の効果がある。
2次被覆用塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、加硫剤を0.5重量%以上、20.0重量%以下、無機充填材を10.0重量%以上、70.0重量%以下の範囲で添加すると、作製した伝動ベルトは、いっそうの耐熱性を発揮する。加硫剤の含有が0.5重量%より少ない、無機充填材の含有が10.0重量%より少ないと耐熱性を向上させる効果が発揮されず、加硫剤を、20.0重量%を超えて、無機充填材を、70.0重量%を超えて加えると、ガラス繊維コードと母材ゴムとの接着強さが弱くなり作製した伝動ベルトは、耐久性に劣る。
本発明のゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層、2次被覆層を形成する際の1次被覆用塗布液および2次被覆用塗布液に、さらに、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニアが挙げられる。
クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を水中で縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿が生成した反応液に、アルコール化合物(G)としての2−メトキシエタノールまたプロピレングリコールを加え、該沈殿を溶解させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)水溶液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンを混合させてなる1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させ、その上層に、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)を有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後乾燥させて、さらなる2次被覆層とした本発明のゴム補強用ガラス繊維を作製した。(実施例1〜4)。
次いで、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を水中で縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿が生成した反応液に、アミン化合物(H)としてのジメチルアミンまたジエタノールアミンを加え、該沈殿を溶解させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)水溶液にビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)エマルジョンを混合させてなる1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させ、その上層に、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とビスアリルナジイミド(D)を有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後乾燥させて、さらなる2次被覆層とした本発明のゴム補強用ガラス繊維を作製した。(参考例5〜8)。
次いで、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維を作製した。(比較例1〜3)。これら本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜4)、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜3及び参考例5〜8)の耐熱ゴムに対する接着強さ評価試験を行い、評価結果を比較した。
また、これら本発明のゴム補強用ガラス繊維、または従来のゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設させた伝動ベルトを作製した。次いで、これら伝動ベルトをプーリーにセットして、耐水性を評価するために、伝動ベルトに水をかけつつ長時間の走行をさせて、被覆層が初期の接着強さを持続した結果として長時間走行後も引っ張り強さが変化せず、寸法安定性に優れることを評価するための耐水走行疲労性能評価試験を行い、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜4)を埋設した伝動ベルト、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜3及び参考例5〜8)を埋設した伝動ベルトにおける評価結果を比較した。
また、耐熱性を評価するために、伝動ベルトに高温下複数のプーリーを用いて、長時間の屈曲走行をさせて、被覆層が初期の接着強さを持続した結果として長時間走行後も引っ張り強さが変化せず、寸法安定性に優れることを評価するための耐熱耐屈曲走行疲労性能評価試験を行い、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例2、4)を埋設した伝動ベルト、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1、2及び参考例6,8)を埋設した伝動ベルトにおける評価結果を比較した。
以下、詳細に述べる。
実施例1
(アルコール化合物を用いた1次被覆用塗布液の調製)
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の合成、および生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿のアルコール化合物(G)による溶解について述べる。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール(E)、128重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド(F)水溶液、80重量部(モル比で表せば、F/E=1.0)、濃度、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、水で全体が1000重量部になるように希釈した後、80℃に加熱した状態で5時間攪拌した。この反応溶液中に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿物となって重合された。
この反応溶液100重量部に対して、アルコール化合物(G)に属する2−メトキシエタノールを加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を作製した。この際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に対して2−メトキシエタノールを加えた量は200重量%、即ち、重量比で、G/A=2.0であった。
尚、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とするための触媒として縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。
尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用い、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、2−メトキシエタノールを添加してクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿を溶解させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、42重量部に、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70の重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体(B)のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)476重量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)206重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
1次被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=3.6重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=67.8重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%である。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆層となる。
尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量は、前記ピラテックスおよびCSM450の固形分濃度から、固形分に換算して求めた。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトソロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(D)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとにカーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、クロロスルホン化ポリエチレン(C)としての東ソー株式会社製、商品名、TS−430、100重量部と、p−ジニトソロベンゼン、40重量部と、N−N'−ヘ
キサメチレンジアリルナジイミドである丸善石油化学株式会社製、商品名、BANI−H、0.5重量部とに、カーボンブラック、30重量部を加え、キシレン、1315重量部に分散させて2次被覆用塗布液を調製した。即ち、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量に対して、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドを0.5重量%、加硫剤であるp−ジニトソロベンゼンを40.0重量%、無機充填材であるカーボンブラックを30.0重量%となるようにして、2次被覆用塗布液を調製した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で2次被覆となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのガラス繊維フィラメントに集束剤をアプリケーターで塗布し200本を集束させてなるガラス繊維コード3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した1次被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて1次被覆層を設けた。この時の固形分付着率、即ち、1次被覆層の重量割合は、1次被覆層を設けたガラス繊維束の全重量に対して19.0重量%であった。
前記被覆層を設けたガラス繊維コードを、2.54cm当たり2.0回の下撚りを与え、さらに13本引き揃えて下撚りと逆方向に2.54cm当たり2.0回の上撚りをする作業を施した。その後、前述の手順で作製した2次被覆用塗布液を塗布した後、110℃で1分間の乾燥を行い、2次被覆層を設け、本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1)を作製した。
このようにして、下撚りと上撚りの方向を各々逆方向とした2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。各々、S撚り、Z撚りと称する。
この時の固形分付着率、即ち、2次被覆層の重量割合は、1次被覆層および2次被覆層を設けたガラス繊維束の重量に対して、3.5重量%であった。
実施例2
実施例1の1次被覆用塗布液に対して、前記クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の添加量を83重量部、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合となるように重合してなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0重量%)の添加量を451重量部に変えた以外は、実施例1と同様に1次被覆用塗布液を調製した。即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=7.2重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=64.2重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%とした、ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆となる。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、参考例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例2)を作製した。
実施例3
実施例1の1次被覆用塗布液に対して、前記クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の添加量を124重量部、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合となるように重合してなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0重量%)の添加量を426重量部に変えた以外は、実施例1と同様に、1次被覆用塗布液を調製した。即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=10.8重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=60.6重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%となるよう調整した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆となる。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、参考例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例3)を作製した。
実施例4
1次被覆用塗布液の調製において、アルコール化合物(H)に、プロピレングリコールを用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の合成について述べる。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール(C)、128重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド(F)水溶液、80重量部(モル比で表せば、F/E=1.0)、濃度、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、水で全体が1000重量部になるように希釈した後、80℃に加熱した状態で5時間攪拌した。この反応溶液中に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿物となって重合された。この反応溶液100重量部に対して、プロピレングリコールを加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を作製した。この際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量に対してプロピレングリコールを加えた量は200重量%、即ち、重量比で、G/A=2.0であった。
尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とするための触媒として縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用い、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、プロピレングリコールを添加して溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、42重量部に、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70の重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)476重量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)206重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=7.2重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=64.2重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%となるように調整した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆層となる。
尚、1次被覆用塗布液中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量は、前記ピラテックスおよびCSM450の固形分濃度から、固形分に換算して求めた。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、参考例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例4)を作製した。
参考例5
(アミン化合物を用いた1次被覆用塗布液の調製)
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の合成、および生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿のアミン化合物(H)による溶解について述べる。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール(E)、128重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド(F)水溶液、80重量部(モル比で表せば、F/E=1.0)、濃度、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、水で全体が1000重量部になるように希釈した後、80℃に加熱した状態で5時間攪拌した。この反応溶液中に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿物となって重合された。
この反応溶液100重量部に対して、アミン化合物(H)に属するジメチルアミンを加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を作製した。尚、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4である。この際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に対してジメチルアミンを加えた量は200重量%、即ち、重量比で、H/A=2.0であった。
尚、濃度、1.0重量%の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とするための触媒として縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。
尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用い、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、ジメチルアミンを添加して溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、42重量部に、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70の重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体(B)のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)476重量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)206重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次塗布液を調製した。
1次塗布液中の各成分の含有割合は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=3.6重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=67.8重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%である。
尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量は、前記ピラテックスおよびCSM450の固形分濃度から、固形分に換算して求めた。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトソロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(D)に属するヘキサメチレンジアリルナジイミドとにカーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、クロロスルホン化ポリエチレン(C)としての東ソー株式会社製、商品名、TS−430、100重量部と、p−ジニトソロベンゼン、40重量部と、N−N'−ヘ
キサメチレンジアリルナジイミドである丸善石油化学株式会社製、商品名、BANI−H、0.5重量部とに、カーボンブラック、30重量部を加え、キシレン、1315重量部に分散させて2次被覆用塗布液を調製した。即ち、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量に対して、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドを0.5重量%、加硫剤であるp−ジニトソロベンゼンを40.0重量%、無機充填材であるカーボンブラックを30.0重量%となるようにして、2次被覆用塗布液を調製した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で2次被覆となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのガラス繊維フィラメントに集束剤をアプリケーターで塗布し200本を集束させてなるガラス繊維コード3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した1次被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて1次被覆層を設けた。この時の固形分付着率、即ち、1次被覆層の重量割合は、1次被覆層を設けたガラス繊維束の全重量に対して19.0重量%であった。
前記被覆層を設けたガラス繊維コードを、2.54cm当たり2.0回の下撚りを与え、さらに13本引き揃えて下撚りと逆方向に2.54cm当たり2.0回の上撚りをする作業を施した。その後、前述の手順で作製した2次被覆用塗布液を塗布した後、110℃で1分間の乾燥を行い、2次被覆層を設け、本発明のゴム補強用ガラス繊維(参考例5)を作製した。
このようにして、下撚りと上撚りの方向を各々逆方向とした2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。各々、S撚り、Z撚りと称する。
この時の固形分付着率、即ち、2次被覆層の重量割合は、1次被覆層および2次被覆層を設けたガラス繊維束の重量に対して、3.5重量%であった。
参考例6
参考例5の1次被覆用塗布液に対して、前記クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の添加量を83重量部、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合となるように重合してなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0重量%)の添加量を451重量部に変えた以外は、実施例5と同様に1次被覆用塗布液を調製した。即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=7.2重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=64.2重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%とした、ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆となる。
次いで、実施例5に示した手順で、実施例5と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(参考例6)を作製した。
参考例7
実施例5の1次被覆用塗布液に対して、前記クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の添加量を124重量部、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合となるように重合してなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0重量%)の添加量を426重量部に変えた以外は、実施例5と同様に、1次被覆用塗布液を調製した。即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=10.8重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=60.6重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%となるよう調整した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆となる。
次いで、実施例5に示した手順で、実施例5と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(参考例7)を作製した。
実施例8
1次被覆用塗布液の調製において、アミン化合物(H)に、ジエタノールアミンを用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の合成について述べる。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール(C)、128重量部、37.0重量%の濃度のホルムアルデヒド(F)水溶液、80重量部(モル比で表せば、F/E=1.0)、濃度、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、水で全体が1000重量部になるように希釈した後、80℃に加熱した状態で5時間攪拌した。この反応溶液中に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が沈殿物となって重合された。この反応溶液100重量部に対して、ジエタノールアミンを加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を作製した。尚、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は、1×10−4.5である。この際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の重量に対してジエタノールアミンを加えた量は200重量%、即ち、重量比で、H/A=2.0であった。
尚、1.0重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノール(E)とホルムアルデヒド(F)を縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とするための触媒として縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。
次いで、前述の手順で合成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用い、市販のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、ジメチルアミンを添加して溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、42重量部に、ビニルピリジン、スチレン、ブタジエンを、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエン=15:15:70の重量比となるように重合したビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体のエマルジョンとしての日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分濃度、41.0重量%)476重量部と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)のエマルジョンとしての住友精化株式会社製、商品名、CSM450(固形分濃度、40.0重量%)206重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0重量%)22重量部とに、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
即ち、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)を合わせた重量を100%基準とする重量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=7.2重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=64.2重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が、C/(A+B+C)=28.6重量%となるように調整した。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で1次被覆層となる。
尚、1次被覆用塗布液中のビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)、クロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量は、前記ピラテックスおよびCSM450の固形分濃度から、固形分に換算して求めた。
次いで、実施例5に示した手順で、実施例5と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例5と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明のゴム補強用ガラス繊維(参考例8)を作製した。
比較例1
従来のレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(C)とからなる1次被覆用塗布液を調製した。
実施例1〜4及び参考例5〜8と異なり、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に替えてレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂(レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比、1.0:1.0で反応させたもの、固形分、8.7重量%)を239重量部使用し、ビニルピリジンとスチレンとブタジエンとを、15:15:70の重量割合で含有するビニルピリジン−スチレン−ブタジエンエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0重量%)の添加量を451重量部に変えた以外は、実施例1と同様に1次被覆用塗布液を調製し、実施例1に示した手順で、従来の1次被覆用塗布液を調製した。即ち、1次被覆用塗布液中のレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)合わせた重量を基準とする重量百分率で表して、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂が7.2重量%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)が64.2重量%、クロロスルホン化ポリエチレン(C)が28.6重量%、となるように調整した。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ガラス繊維コードに更なる2次被覆層を設け本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1)を作製した。
比較例2
実施例1と同じ1次被覆用塗布液を用い、次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(C)(東ソー株式会社製、商品名、TS−430)、100重量部と、4、4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、40重量部と、カーボンブラック、30重量部と、キシレン、1315重量部からなる2次被覆用塗布液を用い、実施例1に示した手順で作業を行い、1次被覆層および2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維(比較例2)を作製した。即ち、2次被覆用塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(C)の重量に対して、40.0重量%の4、4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、30.0重量%のカーボン
ブラックを用いた。ガラス繊維コードに塗布し乾燥させると、ほぼこのままの重量割合で2次被覆となる。
比較例3
実施例2と同じ1次被覆用塗布液を用い、次いで、比較例2と同じ2次被覆用塗布液を調製し、参考例5に示した手順で、1次被覆層および2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維(比較例3)を作製した。
(接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用した耐熱ゴムを説明する。
母材ゴムとしてのHNBR(日本ゼオン株式会社製、型番、2020)、100重量部に対して、カーボンブラック、40重量部と、亜鉛華、5重量部と、ステアリン酸、0.5重量部と、硫黄、0.4重量部と、加硫促進剤、2.5重量部と、老化防止剤、1.5重量部とを配合してなるHNBR用耐熱ゴム(以後、耐熱ゴムAとする)、またHNBR(日本ゼオン株式会社製、型番、2010)、100重量部に対して、カーボンブラック、40重量部と、亜鉛華、5重量部と、ステアリン酸、0.5重量部と、1、3−ジ(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン、5重量部と、老化防止剤、1.5重量部とを配合してなるHNBR用耐熱ゴム(以後、耐熱ゴムBとする)を接着強さの評価試験に使用した。
試験片は耐熱ゴムAまたは耐熱ゴムBからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜4、比較例1〜3及び参考例5〜8)を20本並べ、その上から布をかぶせ、耐熱ゴムAについては、温度、150℃下、196ニュートン/cm2(以後
、ニュートンをNと略す)、また耐熱ゴムBについては、温度、170℃下、196N/cm2の条件で端部を除き押圧し、30分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のため
の試験片、言い換えればゴムシートを得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、剥離強さとした。剥離強さが大きいほど接着強さに優れる。
(接着強さの評価結果)
接着強さの評価結果を表1に示す。
表1において、ガラス繊維とゴムが界面から剥離していない破壊状態をゴム破壊とし、界面から一部のみでも剥離している破壊状態を界面剥離とした。ゴム破壊の方が、界面剥離より接着強さに優れる。
1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアルコール化合物(G)として2−メトキシエタノールを用いた実施例1の本発明のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては332Nであり、耐熱ゴムBについては312Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
同様に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解に2−メトキシエタノールを用いた実施例2の本発明のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては329Nであり、耐熱ゴムBについては316Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
同様に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解に2−メトキシエタノールを用いた実施例3の本発明のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては326Nであり、耐熱ゴムBについては310Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアルコール化合物(G)としてプロピレングリコールを用いた実施例4の本発明のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、耐熱ゴムAについては330Nであり、耐熱ゴムBについては319Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアミン化合物(H)としてジメチルアミン用いた参考例5のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては318Nであり、耐熱ゴムBについては284Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
同様に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にジメチルアミンを用いた参考例6のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては321Nであり、耐熱ゴムBについては317Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
同様に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にジメチルアミンを用いた参考例7のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、剥離強さを測定したところ、耐熱ゴムAについては325Nであり、耐熱ゴムBについては302Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアミン化合物(H)としてジエタノールアミンを用いた参考例8のゴム補強用ガラス繊維は、表1に示すように、耐熱ゴムAについては343Nであり、耐熱ゴムBについては345Nであり、双方のゴムに対して接着性は良好であり、接着強さに優れていた。
また、破壊状態は、本発明の実施例1〜4のゴム補強用ガラス繊維は、表1の実施例1〜4に示すように、耐熱ゴムAを使用した場合、耐熱ゴムBを使用した場合ともにゴム破壊であり、接着強さに優れていた。
比較例1の本発明の範疇に属さないゴム補強用ガラス繊維は、前述の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価を行ったところ、表1の比較例1に示すように、耐熱ゴムAについては323N、耐熱ゴムBについては314Nであり、双方のゴムに対して接着特性は良好であり、接着強さに優れていた。破壊状態は、耐熱ゴムAを使用した場合、耐熱ゴムBを使用した場合、ともに破壊状態はゴム破壊であり、接着強さに優れていた。
比較例2の本発明の範疇に属さないゴム補強用ガラス繊維は、前述の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価を行ったところ、表1の比較例2に示すように、耐熱ゴムAについては294Nで良好な接着強さであったが、耐熱ゴムBについては127Nであり、接着力が弱く接着強さに劣っていた。
比較例3の本発明の範疇に属さないゴム補強用ガラス繊維は、前述の手順で、試験片をつくり、接着強さの評価を行ったところ、表1の比較例3に示すように、耐熱ゴムAについては315Nで良好な接着強さであったが、耐熱ゴムBについては120Nであり、接着力が弱く接着強さに劣っていた。
(耐水性評価)
実施例1、2、4、参考例5、6、8および比較例1〜3で作製したゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前記耐熱ゴムBを用い、巾19mm、長さ876mmの伝動ベルトを各々作製し、耐水性を評価するための耐水走行疲労試験を実施した。耐水性は、注水下、伝動ベルトを、歯車、即ち、プーリーを用いて走行させ、一定時間経過の引っ張り強さ保持率、即ち、耐水走行疲労性能で評価する。
図1は、ゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設させて作製した伝動ベルトを切断した際の斜視図である。
伝動ベルト1はプーリーに噛み合わせるための高さ3.2mmの突起部1Aを多数有し、突起部を除く背部1Bの厚みが2.0mmで、伝動ベルトの該背部1Bには、断面に見られるように上撚りと下撚りの撚り方向が異なるS撚り、6本Z撚り、6本、合わせて12本の各ゴム補強用ガラス繊維2が、S撚りとZ撚りとが交互になるように埋設されている。
図2は、伝動ベルトの耐水走行疲労試験機の概略側面図である。
図2に示すように、各々の伝動ベルト1を図示しない駆動モーターと発電機を備えた耐水走行疲労試験機に装着し耐水性を測定する。
伝動ベルト1は図示しない駆動モーターにより回転駆動される駆動プーリー3の駆動力により、従動プーリー4および5を回転させつつ走行する。従動プーリー5には図示しない発電機に連結されており、発電機を駆動し1kwの電力を発生させる。アイドラー6は、耐水走行疲労試験における走行中に回転しつつ伝動ベルト1を張る役割を有し、伝動ベルト1を張るための荷重として50Nを伝動ベルト1に与える。従動プーリー4、5は、径、60mm、歯数、20Tであり、駆動プーリー3は、径120mmであり、歯数、40Tである。耐水走行疲労試験中の駆動プーリー3の1分間あたりの回転数は、3000rpm、従動プーリー4、5の1分間あたりの回転数は、6000rpmである。回転方向は、伝動ベルト1に平行な矢印で示す。
常温において、図2に示すように、1時間当たり6000mlの水7を、駆動プーリー3と従動プーリー4の間において、伝動ベルト1に均等に滴下させつつ、駆動プーリー3を3000rpmで回転させ、伝動ベルト1を従動プーリー4および5、アイドラー6を用いて走行させた。このようにして、36時間、伝動ベルト1を走行させる耐水走行疲労試験を実施した。耐水走行疲労試験前の伝動ベルト1の引っ張り強さ、および耐水走行疲労試験後の引っ張り強さを測定し、数1の式により試験前に対する試験後の伝動ベルト1の引っ張り強さ保持率を求め、実施例1、2、4、参考例5、6、8および比較例1〜3のゴム補強用ガラス2を用いて作製した伝動ベルト1の耐水性を比較評価した。
(引張り強さ測定)
引張り強さ測定に供する試験片の長さは257mmであり、1本の伝動ベルトから3本切り取り得られる。これら試験片の端部各々をクランプ間距離145mmのクランプにてはさみ、引張り速度を50mm/分とし、ベルトが破壊されるまでの最大の抵抗値を引張り強さとした。1本のベルトから3回、抵抗値を測定し、その平均値を伝動ベルトの引張り強さとした。尚、試験前の引っ張り強さは、同様に作製した10本のベルトから各3回、抵抗値を測定して、その平均値を初期値として用いた。
数1の式を用いて、耐水走行疲労試験後の引張り強さ保持率を算出した。
各々の伝動ベルトの耐水走行疲労試験後の引張り強さ保持率を表2に示す。
表2に示すように、実施例1、2、4及び参考例5、6、8のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを組成物とした1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させた1次被覆層およびさらなる2次被覆層を有し、2次被覆層の組成物がクロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトソロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとカーボンブラックからなるゴム補強用ガラス繊維2次被覆用塗布液を用いた伝動ベルト1の走行試験後の引っ張り強さ保持率は、1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアルコール化合物(G)を用いた実施例1のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は67%であり、実施例2のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は64%であり、実施例4のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は66%であった。また、1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアミン化合物(H)を用いた参考例5のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は67%であり、参考例6のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は62%であり、参考例8のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は68%であった。
それに対して、比較例1および比較例2に示すように、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いない替わりにレゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂を用いて作製した、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを組成物とした1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させた1次被覆層および更なる2次被覆層を有するゴム補強用ガラス繊維2の引っ張り強さ保持率は、比較例1のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は47%であり、比較例2のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合は39%であり、耐水性に劣っていた。
また、比較例3が示すように、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(C)とを組成物とした1次被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布後乾燥させた1次被覆層であっても、2次被覆層に、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドを含有させない場合は51%であり、参考例5のゴム補強用ガラス繊維2を用いた場合には引っ張り強さ保持率は67%に比較して小さい。
この耐水走行疲労試験の結果より、従来のゴム補強用ガラス繊維に比較して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とを組成物とした1次被覆用塗布液を塗布後乾燥させてなる1次被覆層を有し、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ハロゲン含有ポリマーとしてのクロロスルホ
ン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトソロベンゼンとを組成物とした更なる2次被覆層を有した本発明のゴム補強用ガラス繊維2を用いた伝動ベルト1が優れた耐水性を有することが判った。
(耐熱性評価)
次いで、実施例2、4、参考例6、8及び比較例1、2で作製したゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前記耐熱ゴムBを用い、前述の耐水性評価と同様に、巾19mm、長さ876mmの伝動ベルトを各々作製し、耐熱性を評価するための耐熱耐屈曲走行疲労試験を実施した。耐熱性は、高温下、伝動ベルトを、複数の歯車、即ち、プーリーを用いて、屈曲させつつ走行させ、一定時間経過の引っ張り強さ保持率、即ち、耐熱耐屈曲走行疲労性能で評価する。
図3は、伝動ベルトの耐熱耐屈曲走行疲労試験機の概略側面図である。
図3に示すように、各々の伝動ベルト1を図示しない駆動モーターを備えた耐熱耐屈曲走行疲労試験機に装着し耐熱性を測定する。伝動ベルト1は駆動モーターにより回転駆動される駆動プーリー8の駆動力により、3個の従動プーリー9、9´、9〃を回転させつつ走行する。アイドラー10は、耐熱耐屈曲走行疲労試験における走行中に伝動ベルト1を張るためのもので、伝動ベルト1を張る役割を有し、伝動ベルト1を張るための荷重として50Nを伝動ベルト1に与える。駆動プーリー8は、径、120mm、歯数、40Tであり、従動プーリー9、9´、9〃は、径60mmであり、歯数、20Tである。耐熱耐屈曲走行疲労試験中の駆動プーリー8の1分間あたりの回転数は、3000rpm、従動プーリー9、9´、9〃の1分間あたりの回転数は、6000rpmである。回転方向は、伝動ベルト1に平行な矢印で示す。
温度、130℃の環境下で、図3に示すように、駆動プーリー8を、3000rpmで回転させ、伝動ベルト1を従動プーリー9、9´、9〃、アイドラー10を用いて屈曲させつつ走行させた。このようにして、50時間、伝動ベルト1を走行させ耐熱耐屈曲走行疲労試験を実施した。耐熱耐屈曲走行疲労試験前の伝動ベルト1の引っ張り強さ、および耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さを測定し、数1の式より試験前に対する試験後の伝動ベルト1の引っ張り強さ保持率を求め、実施例2、4、参考例6、8及び比較例1、2のゴム補強用ガラス繊維2を用いて作製した伝動ベルト1の耐熱耐屈曲走行疲労性能、即ち、耐熱性を比較評価した。
各々の伝動ベルトの耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率を表3に示す。
表3に示すように、1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアルコール化合物(G)を用いた実施例2、4のゴム補強用ガラス繊維2を用い作製した伝動ベルト1の耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率は、各々95%、93%であり、1次被覆液の調製において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の沈殿の溶解にアミン化合物(H)を用いた参考例6、8のゴム補強用ガラス繊維2を用い作製した伝動ベルト1の耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率は、各々96%、95%であり、比較例1、2のゴム補強用ガラス繊維2を用いた伝動ベルト1の、耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率、各々90%、80%より優れており、優れた耐熱性を有する。
この耐熱耐屈曲走行疲労試験の結果より、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(C)とを組成物とした1次被覆用塗布液を塗布後乾燥させてなる1次被覆層を有し、ビスアリルナジイミド(D)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジ
イミド、ハロゲン含有ポリマーに属するクロロスルホン化ポリエチレン(C)と、p−ジニトソロベンゼンとを組成物とした更なる2次被覆層を有した本発明のゴム補強用ガラス繊維2を用いた伝動ベルト1が、優れた耐熱性を有することが判った。
実施例1〜4のゴム補強用ガラス繊維2はHNBRとの優れた接着強さを有し、実施例1〜4のゴム補強用ガラス繊維2を用い作製した伝動ベルトは、優れた耐水性、耐熱性を有することより、高温多湿下で長時間使用するタイミングベルト等の自動車用伝動ベルトの芯線として使用するに好適である。