本発明は、伝動ベルトを作製する際に、母材であるゴムに芯線として埋設し補強を行うためのゴム補強用ガラス繊維を、補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルトに関する。本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、特に、自動車用タイミングベルトの補強用芯線として有用である。
伝動ベルト、タイヤ等のゴム製品に引っ張り強さおよび寸法安定性を与えるために、ガラス繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維およびポリエステル繊維等の引っ張り強さの大きい繊維を母材ゴムに補強材として埋設することは一般的に行われ、母材ゴムに埋設するゴム補強用繊維には、母材であるゴムとの界面が強固で剥離しないことが必要とされる。しかしながら、多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤および樹脂等を含有する集束剤を散布し集束させたガラス繊維コード、言い換えれば、ストランドをそのまま母材ゴムに埋め込んでも、界面が剥離してしまい補強材としての用をなさない。そのため、伝動ベルトを製造する際に母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムと接着するための被覆材をストランドに被覆した被覆層を設ける。
例えば、自動車用伝動ベルトは高温のエンジンル−ム内で使用されるため、前記被覆処理を行ったゴム補強用ガラス繊維を埋設し芯線とした伝動ベルトであっても、高温下において屈曲し続ける過酷な走行状況において、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さが持続されず、長時間の走行においては、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの界面の剥離をきたすこともある。
自動車用伝動ベルトには、高温下のエンジンルーム内、水がかかり、エンジンオイル、潤滑油等の油が付着する過酷な環境下における長時間の屈曲走行後において、引っ張り強さを持続し伸びがなく寸法安定性に優れていることが要求される。特に、タイミングベルトは、エンジンのカムシャフトおよびクランクシャフトを連結し、バルブの開閉をピストンの上下動に連動させるもので歯付きベルトが使用され、過酷な条件下の長時間の屈曲走行において、破損は言うにおよばず、少しの伸びも許されない。タイミングベルトの母材ゴムは、耐熱ゴムである水素化ニトリルゴム(以下、HNBRと略する)が用いられ、芯線には耐久性が有り、アラミド繊維に比べ安価なことからゴム補強用ガラス繊維が用いられ、さらなる耐久性の向上が望まれている。
伝動ベルトとし高温下長時間屈曲走行させてもゴム補強用繊維と母材ゴムの初期の接着強さを持続する耐熱性に加え、伝動ベルトに水をかけつつ長時間走行させても、被覆層がガラス繊維コードへの水の浸透を防ぐことで初期の接着強さを持続する耐水性を伝動ベルトに与えるゴム補強用ガラス繊維を芯線とした伝動ベルトの開発が待たれている。
母材ゴムとしてのHNBRとガラス繊維コードとの初期の接着強さを持続し界面の剥離をきたさず、高温下の屈曲走行においても長期信頼性のある伝動ベルトを提供するための被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維として、ガラス繊維コードに1次被覆層を設け、該1次被覆層上に異なる組成のガラス繊維2次被覆用途塗布液を塗布乾燥させて、さらなる2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が特許文献1〜4に開示されている。
従来、自動車のタイミングベルト等の耐熱性の伝動ベルトは、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンからなるガラス繊維被覆用塗布液を用いガラス繊維コードに塗布乾燥させたゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムとしてのHNBRに埋設し作製された。また、ガラス繊維コードとHNBRの接着性、引いては耐熱性を高めるために、該ゴム補強用ガラス繊維にさらなる2次被覆層を設け耐熱ゴムとしてのHNBRに埋設し作製された。
例えば、特許文献1において、ハロゲン含有ポリマーとイソシアネートを含む第2液で処理する方法が開示されている。
また、特許文献2には、繰返し、屈曲応力を受けるような高温の条件下で使用していても、時間の経過とともに接着力が低下することなく、耐熱性も大きく、しかも製造コストも低く、HNBR補強用として好適なゴムの補強用繊維、特に歯元強度の大きい歯付ベルトを得るのに好適な、ゴムの補強用繊維として、ガラス繊維よりなる芯線上にレゾルシン−ホルムアルデヒドの水溶性縮合物、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスおよびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスを含む層を形成させたゴムの補強用繊維が開示されている。
また、特許文献3には、ゴムラテックス、レゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物及びトリアジンチオールを含有するゴム補強用繊維処理剤が開示されている。
また、本出願人の特許出願に係る特許文献4には、ガラス繊維コードにアクリル酸エステル系樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とを含有する1次被覆層を設け、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
さらに、本出願人の特許出願に係る特許文献5には、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とゴムラテックスと含有する1次被覆層を設け、ビスアリルナジイミドとゴムエラストマーと加硫剤と無機充填材とを含有する2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、伝動ベルトとした際の耐水性の向上を目的として、本出願人の特許出願に係る特許文献6には、ガラス繊維コードに被覆するための、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とクロロスルホン化ポリエチレンとを水に分散させエマルジョンとしたガラス繊維被覆用塗布液が開示されている。
さらに、本出願人の特許出願に係る特許文献7〜11には、特許文献6に記載のガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し1次被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとマレイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンと、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛とを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、および該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとトリアジン系化合物を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
さらに、本出願人の特許出願に係る特許文献12〜14には、ガラス繊維コードに被覆するための、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解しビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体を水に分散させたエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレンを水に分散させエマルジョンを含有するガラス繊維被覆用塗布液が開示されている。水に難溶のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の溶解にアルコール化合物またはアミン化合物を用いる。
さらに、本出願人の特許出願に係る特許文献15〜18には、特許文献12〜14に記載のガラス繊維被覆用塗布液をガラス繊維コードに塗布し1次被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとマレイミドを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンと、有機ジイソシアネートおよびメタクリル酸亜鉛とを含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維、および該1次被覆層の上層にクロロスルホン化ポリエチレンとトリアジン系化合物を含有する2次被覆層を設けてなるゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性、雨天走行における耐水性に加え、エンジン内部のエンジンオイルがシリンダーヘッドのガスケットから滲みでそれが付着する等のことより、耐油性も必要である。
そこで、特許文献19には、極めて長い時間使用できるタイミングベルトを得ることが可能な、耐油性に優れたゴム製品の補強繊維として、 レゾルシンとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物、固形状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、および液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスを含有する処理剤による被膜がされたガラス繊維コードが開示されている。
また、特許文献20には、耐油性を改善するレゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物およびソープフリーのアクリロニトリル−ブタジエン 共重合体ラテックスを含有する処理剤で被覆処理を施したゴム補強用ガラス繊維が開示されている。
また、特許文献21には、耐油性を改善するガラス繊維処理剤レゾルシン−ホルムアルデヒド水溶性縮合物およびブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックスのみからなり、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ラテックスは、その固形分質量を基準として、アクリロニトリルの含有率が31〜55質量%のものであるゴム補強用ガラス繊維処理剤が開示されている。
また、特許文献22には、優れた耐油性、タック性および耐屈曲疲労性を有し、過酸化物を加硫剤とする水素化ニトリルゴムを用いたタイミングベルト等のゴム製品の製造にも適した補強繊維として、第1の被覆層が、レゾルシンとホルムアルデヒドとの水溶性縮合物、固形状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックス、および液状アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のラテックスを含有し、その上層の第2の被覆層が、未硬化フェノール樹脂およびゴムを含有する補強繊維が開示されている。
また、特許文献23および24に記載されるように、ガラス繊維の材料として引張強度が大きい高強度ガラス繊維が知られ、その成分はSiO
2 60質量%〜65質量%、Al
2O
3 23質量%〜26質量%、 MgO 7質量%〜11質量%、B
2O
3 0〜1質量%、その他、Ca0 Fe
2O
3、TiO
2等の不純物を含み、Uガラス繊維(日本板硝子株式会社製)、Kガラス繊維(日本板硝子株式会社製)、Tガラス繊維(日東紡績株式会社製)、Rガラス繊維(Vetrotex社製)、Sガラス繊維、S−2ガラス繊維、ZenTronガラス繊維(3種ともOwens- Corning Fiberglas社製)等が市販される。
特公平2−4715号公報
特開平4−103634号公報
特開平10−25665号公報
特開2004−203730号公報
特開2004-244785号公報
特開2006−104595号公報
国際公開WO/2006/038490のパンフレット
特開2007−63726号公報
特開2007−63727号公報
特開2007−63728号公報
特開2007−63729号公報
国際公開WO/2007/114228のパンフレット
特開2007-291589号公報
特開2008-169532号公報
特開2008-138347号公報
特開2008-137881号公報
特開2008-137882号公報
特開2008-137883号公報
特開2002−339255号公報
特開2003−253569号公報
特開2003−268678号公報
特開2004−100059号公報
特開平11−158744号公報
特許第3427714号公報
従来のゴム補強用ガラス繊維を芯線として、HNBRに埋設させて作製された伝動ベルトは、屈曲走行させ続けると伝動ベルトに伸びが発生するとともに耐熱性に乏しい。特に、高温下のエンジンルーム内で屈曲走行し続ける自動車用伝動ベルトであるタイミングベルトには、少しの伸びも許されなく、引っ張り強さが大きく寸法安定性に優れていること、加えて優れた耐熱性、耐水性、耐油性をバランスよく合わせ持つことが要求される。
また、高温下におけるエンジンオイル等との接触浸透によって、自動車用伝動ベルトに埋設したゴム補強用ガラス繊維の被覆層は変質し易く、ゴム補強用ガラス繊維とHNBRの接着力低下および界面の剥がれに繋がることがある。この変質は、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体が耐油性に劣るために起こる。
そこで、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の存在下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体の替わりに、耐油性に優れるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体をガラス繊維被覆用塗布液に用い、ガラス繊維フィラメントを収束させたストランドに塗布被覆し被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を作製したところ、それを埋設した伝動ボルトの耐油性は向上するものの耐水性は低下する問題があった。
このように、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の存在下、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体の替わりに、耐油性に優れるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体をガラス繊維被覆用塗布液に含有させて、ストランドに塗布被覆し、ゴム補強用ガラス繊維の被覆材としたとしても、それが埋設された伝動ベルトの屈曲走行において、耐水性と耐油性のバランスが保てなく、また、ガラス繊維コードと母材ゴムにおいて初期の接着力を保てなく、屈曲走行させる走行時間の経過に伴って伝動ベルトが伸びて不具合が発生するのが早い。
特に、タイミングベルトとして使用すると、伸びにより、クランクシャフトとカムシャフトの連動によるピストンの上下動とバルブの開閉タイミングを合わせる等の動力伝達機構の機能に支障をきたすのが早いという問題があることがわかった。
本発明は、ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに芯線として埋設して伝動ベルトを作製した際に、高温下、水がかかり、オイルが付着する屈曲走行後にあって、引っ張り強さに優れ寸法変化の小さい、即ち、伸びが少ないという、伝動ベルトに優れた寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性を与えるゴム補強用ガラス繊維を提供することを目的とする。
また、本発明は、従来の伝動ベルトに比較して、伝動ベルトに水をかけつつ長時間屈曲走行させても被覆層が初期の接着強さを持続する耐水性に加え、高温下において長時間屈曲走行させても被覆層が初期の接着強さを持続する耐熱性、オイル接触下において長時間屈曲走行させても被覆層が初期の接着強さを持続する耐油性をバランスよく合わせ持ち、過酷な屈曲走行を長時間行った後においても、引っ張り強さに優れ伸びが極めて少なく寸法安定性に優れた伝動ベルトを提供することを目的とする。
前記問題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤および樹脂等を含有する集束剤を塗布し集束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを混合したガラス繊維被覆用塗布液を塗布乾燥させると、その被覆層がエンジンオイルと高温下、接触しても変質が抑えられることがわかった。
本発明において、ガラス繊維フィラメントに収束剤を塗布した後に収束させてなるストランドに母材ゴムとの接着のための被覆層を設けたものをゴム補強用ガラス繊維と称する。尚、フェノール類とは、ベンゼン環にOH基が付加した化合物を言い、例えば、ベンゼン環にOH基が1個付加した1価フェノールであるモノヒドロキシベンゼン、クロロフェノール、OH基が2個付加した2価フェノールであるレゾルシンである。
通常、ガラス繊維フィラメントには、アルミノホウケイ酸ガラスであるEガラスが使用される。Eガラスの組成は、例えば、質量%で表して、SiO2 53%、Al2O3 15%、CaO 21%、MgO 2%、B2O3 8%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%である(影山 尚義著「硝子長繊維」影山技術士事務所 昭和51年8月1日発行、3頁の表1より引用)。
本発明で使用する高強度ガラス繊維フィラメントには、例えば、Sガラスを使用する。Sガラス繊維はEガラス繊維に比較して、引っ張り強さが35%程大きく、弾性係数が20%程高い。Sガラスの組成は、例えば、質量%で表して、SiO2 64%、Al2O3 25%、MgO 10%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%である(影山 尚義著「硝子長繊維」影山技術士事務所 昭和51年8月1日発行、3頁の表1より引用)。
Sガラスを使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトは、Eガラスを使用した通常のガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトに比較して、引っ張り強さが10%〜20%大きい。
よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に使用するガラス繊維フィラメントには、例えば、Sガラスによる高強度ガラス繊維フィラメントを用いることとした。
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を成分として含有し、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有しない1次被覆層を形成したゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトに比較して、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を必須の成分として含有する1次被覆層を形成したゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトは、屈曲走行時の寸法安定性に優れる。
また、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を成分として含有し、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有しない1次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトに比較して、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を必須の成分として含有する1次被覆層を形成したゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルトが寸法安定性に優れることは、前記ストランドにレゾルシン―ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有する1次被覆用塗布液を塗布加熱し水分を蒸発させ硬化させる際、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)がニトリル基を持つことで3次元架橋による硬化が促進し、強靭な高分子マトリクスとなり、ゴム補強用ガラス繊維に優れた被覆層を与え、ゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動べルトは屈曲走行させても寸法安定性に優れる、即ち、伸びないことによる。
しかしながら、ゴム補強用ガラス繊維にレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とを主成分として含有する1次被覆層を形成したのみでは、耐熱性、耐水性が得られない。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に使用するガラス繊維被覆用塗布液において、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に換えて、モノヒドロキシベンゼンをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させたモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、またはクロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を組合せて被覆層とすることで、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の耐熱性、耐水性が向上した。
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は、ベンゼン環に親水性基であるOH基が2コ付加した2価フェノールであるレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させてなる水溶性の縮合物である。
また、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物は、ベンゼン環に親水性基であるOH基が1コ付加した1価フェノールであるモノヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドを縮合させてなる水溶性の縮合物であり、本発明において、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを加えて、ガラス繊維被覆用塗布液とし、高強度ガラス繊維を用いたゴム補強用ガラス繊維の被覆層とした。
また、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、ベンゼン環に親水性基であるOH基、疎水性基であるCl基が各1コ付加した1価フェノールであるクロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合させてなる水に難溶な縮合物である。クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を可溶化剤としてのアルコール化合物またはアミン化合物を加え溶解させることで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得、本発明において、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを加えてガラス繊維被覆用塗布液とし高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の被覆層に使用した。
レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に比べ、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物がより疎水性であり、さらに、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物がより疎水性である。このように疎水性を比較すると、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物 < モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物 < クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物となる。
以上の理由で、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に使用するガラス繊維被覆用塗布液として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)に加え、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に換えて、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を用いることなく、疎水性のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物を用いることで、伝動ベルトにした際の耐水性、耐油性がともに向上した。また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)に加え、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物に換えて、さらに疎水性のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を用いたガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布被覆した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を芯線として埋設した伝動ベルトの寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性がバランスよく向上した。
このように、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製する際のガラス繊維被覆用塗布液の含有物として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)に加え、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物に比較して、疎水性のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることで、伝動ベルトにした際の寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性がともに向上した。
このようにして、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の存在下、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体の替わりに、耐油性に優れるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)からなるガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布被覆し被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維を芯線として埋設した伝動ベルトの屈曲走行における耐油性は向上するものの耐水性は低下する問題が解決した。
被覆層にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の持つ耐水性、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の持つ耐油性をバランスよく与えるために、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液には、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とを含有させる。詳しくは、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを加える。
即ち、本発明は、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを収束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆したことを特徴とする高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを収束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)を、A/(A+B)=1.0%以上、55.0%以下、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を、B/(A+B)=45.0%以上、99.0%以下の範囲で含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布し被覆層を設けたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、ガラス繊維被覆用塗布液に、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を加え、1次被覆層の組成物として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)との組成比を選択することによって、ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムとしてのHNBRに埋設してなる伝動ベルトに、耐水性、耐油性をバランスよく得ることが可能となる。
また、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に、さらにビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を含有させたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを収束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を、A/(A+B+C)=1.0%以上、40.0%以下、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を、B/(A+B+C)=1.0%以上、55.0%以下、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を、C/(A+B+C)=10.0%以上、70.0%以下の範囲で含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布し被覆層を設けたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、ガラス繊維被覆用塗布液に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加え被覆層とすると、ゴム補強用ガラス繊維を芯線とした伝動ベルトの耐熱性が向上することがわかった。このように、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに塗布したゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設してなる伝動ベルトにさらなる耐熱性の与えるためには、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを上述のガラス繊維被覆用塗布液に加える。
また、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有させたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを収束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を、D/(A+B+D)=1.0%以上、40.0%以下の範囲で含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布し被覆層を設けたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを収束させてなるストランドに、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を、D/(A+B+C+D)=1.0%以上、40.0%以下の範囲で含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布し被覆層を設けたことを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
尚、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液において、アクリロニトリル−ブタジエン2元のみでなく、重合モノマーにスチレンを加え、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンによる3元共重合体としたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を用いたとしても、前記理由により、当該ガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布被覆したゴム補強用ガラス繊維を埋設してなる伝動ベルトの寸法安定性に同等の効果が得られる。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体を用いた方が、伝動ベルトとした際に、耐熱性および耐油性を低下させることなく耐水性が得られ、優れた伝動ベルトを得やすい。
また、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液の含有するアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体であることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に用いるガラス繊維被覆用塗布液に使用するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水溶液中でアルカリ性化合物の存在下、縮合反応させることにより生成する。しかしながら、ベンゼン環に親水性基であるOH基が2コ付加したレゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させてなるレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物は水に易溶であるが、ベンゼン環に親水性基であるOH基、疎水性基であるCl基が各1コ付加したクロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は水に難溶であり、縮合反応後に沈殿として生成する。
そこで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解し、加えてアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合後も、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が析出することなきよう水に安定に溶解させるためには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加えて溶解させ水溶液とした後、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合すればよいことがわかった。その際に、アルコール化合物)を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、50%以上、500%以下である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に含有するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアルコール化合物を加え溶解させ水溶液としたものであることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に加えるアルコール化合物の量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、50%以上、500%以下であることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に加えるアルコール化合物が、n−プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−メトキシメチルエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ジエトキシエタンから選ばれることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解し、加えてアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合後も析出することなきよう水に安定に溶解させるためには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、水溶液中での塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物を加えて溶解させた後、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合すればよいことがわかった。その際に、アミン化合物を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、E/A=50質量%以上、500質量%以下である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に含有するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿にアミン化合物を加え溶解させ水溶液としたものであることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に加えるアミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に加えるアミン化合物の量が、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、50%以上、500%以下であることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
さらに、本発明は、ガラス繊維被覆用塗布液に加えるアミン化合物が、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノ−ルアミンから選ばれることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを混合したガラス繊維被覆用塗布液を、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに塗布後乾燥させて1次被覆層とし、あるいはクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンに加えて、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを混合したガラス繊維被覆用塗布液を、ストランドに塗布後、乾燥させて1次被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)とを有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後、乾燥させた2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維をHNBRに埋設し伝動ベルトを作製したところ、ゴム補強用ガラス繊維とHNBRとに好ましい初期の接着強さを得、伝動ベルトに屈曲走行における優れた寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせる、具体的には、高温下、注水下および注油下の長時間の屈曲走行後も伸びることなく、引っ張り強さを維持し、伝動ベルトに優れた寸法安定性を与えるゴム補強用ガラス繊維が提供されることがわかった。
このように、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを必須とし、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョン、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加えたガラス繊維被覆用塗布液を、ストランドに塗布乾燥させて被覆層とする場合、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を用いるより、疎水性のモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物およびクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を用いる方が、伝動ベルトとした際に、屈曲走行における耐水性、耐油性が向上する。その上層に、耐熱性、耐水性を高める効果を有するクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)とを有機溶剤に分散させた2次被覆用塗布液を塗布後乾燥させた2次被覆層を被覆することで、伝動ベルトとした際に長時間の屈曲走行に耐える優れた寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持たせた。
このことは、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆用塗布液を塗布した2次被覆層が耐水性に優れるため、耐油性には優れるが耐水性には劣るアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とを含有する一次被覆層に水が浸透し、耐水性に劣る高強度ガラス繊維に水が浸透することを抑制したことによる。
さらに、本発明は、上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の上層に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆用塗布液を塗布し、さらなる2次被覆層を設けてなることを特徴とする高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、2次被覆層のクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)の含有が、クロロスルホン化ポリエチレンの質量を100%基準とする質量百分率で表してE/D=0.3%以上、10.0%以下であることを特徴とする上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維である。
また、本発明は、上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設させてなる伝動ベルトである。
また、本発明は、上記の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を水素化ニトリルゴムに埋設させてなる自動車用タイミングベルトである。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、引っ張り強さが極めて大きく、耐熱ゴムである、例えば、HNBRへ埋設した際に、優れた接着強さを有する。さらに、HNBRへ芯線として埋設して伝動ベルトとした際に、長時間の屈曲走行に耐える耐熱性、耐水性および耐油性をバランスよく合わせ持たせ、高温多湿下における伝動ベルトとしての長時間の屈曲走行後において、ゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムの界面が剥離する懸念がなく該伝動ベルトは引っ張り強さを維持し、少しの伸びもなく寸法安定性に優れる。
特に、伝動ベルトの中でも自動車用タイミングベルトに用いた時、高温下のエンジンルーム内、水がかかり、エンジンオイル、潤滑油等の油が付着する長時間の屈曲走行後において、引っ張り強さを持続し、少しの伸びもなく寸法安定性に優れる。
また、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿をアルコール化合物またはアミン化合物を添加することで溶解させて、安定なクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得たことにより、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維が得られた。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、高強度ガラス繊維の原料であるSガラス等を加熱したガラス溶融窯のブッシングから突出した多数本の高強度ガラス繊維フィラメントに集束剤としてのシラン系カップリング剤を含有する集束剤を散布塗布し集束させたストランドをガラス繊維被覆用塗布液中で屈曲走行させ、ガラス繊維被覆用塗布液を強制的に付着、言い換えれば塗布し乾燥させて被覆層を設けてなる。
ガラス繊維被覆用塗布液は、例えば、ガラス溶融炉のブッシングより突出させた複数本、実質的には、多数の高強度ガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤と樹脂を含有する集束剤を散布塗布した後、集束させたストランドに塗布被覆しゴム補強用ガラス繊維とする。塗布はガラス繊維被覆用塗布液中にストランドを屈曲走行させて強制的に付着させた後、乾燥させる等の手段で行う。伝動ベルトを作製する際、該ゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムであるHNBR等に埋め込んで、芯線として使用する。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液は、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を必須として含有し、モノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液またはクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを加えて調製する。
伝動ベルトに使用した際のゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムに、所望の接着強さを得るには、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)が1.0%以上、55.0%以下、即ち、A/(A+B)=1.0%以上、55.0%以下、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(B)が45.0%以上、99.0%以下、即ち、B/(A+B)=45.0%以上、99.0%以下の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、前述のフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有が、A/(A+B)=1.0%より少ないと、ゴム補強用ガラス繊維の被覆材とした際に、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と母材ゴム、例えば、HNBRとの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性、耐水性および耐油性を得難い。フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有が55.0%を超えると、ガラス繊維被覆用塗布液が凝集沈殿を起こし易く使用不能となる。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液における好適な前述のフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、A/(A+B)=1.0%以上、55.0%以下である。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有が、B/(A+B)=45.0%より少ないと、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と母材ゴム、例えば、HNBRとの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有がB/(A+B)=99.0%を超えると、耐熱性が悪くなる。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液におけるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の好適な含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、B/(A+B)=45.0%以上、99.0%以下である。
高強度ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドにガラス繊維被覆用塗布液を塗布したゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設してなる伝動ベルトに耐水性、耐油性をバランスよく合わせ持たせるには、前述のガラス繊維被覆用塗布液に、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を加え、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)との組成比を選択する。
伝動ベルトとした際の耐水性、耐熱性の調整のために、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層の組成物に加える際、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)が1%以上、40.0%以下、即ち、A/(A+B+C)=1.0%以上、40.0%以下、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が1.0%以上、55.0%以下、即ち、B/(A+B+C)=1.0%以上、55.0%以下、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)が10.0%以上、70.0%以下、即ち、C/(A+B+C)=10.0%以上、70.0%以下の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中の前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有が、A/(A+B+C)=1.0%より少ないと、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の被覆材とした際に、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と母材ゴム、例えば、HNBRとの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐水性、耐熱性、耐油性が得難い。前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有がA/(A+B+C)=40.0%を超えると、ガラス繊維被覆用塗布液が凝集沈殿を起こし易くなる。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液における好適なフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)の含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、A/(A+B+C)=1.0%以上、40.0%以下である。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有が、B/(A+B+C)=1.0%より少ないと、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と母材ゴム、例えば、HNBRとの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の含有がB/(A+B+C)=55.0%を超えると、耐熱性が悪くなる。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液におけるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の好適な含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれる前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、B/(A+B+C)=1.0%以上、55.0%以下である。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、ガラス繊維被覆用塗布液中のビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)の含有が、C/(A+B+C)=10.0%より少ないと、伝動ベルトにした際の屈曲走行において、好ましい耐水性が得難い。ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)の含有がC/(A+B+C)=70.0%を超えると、伝動ベルトにした際の屈曲走行において、好ましい耐油性が得難い。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液におけるビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)の好適な含有範囲は、前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、C/(A+B+C)=10.0%以上、70.0%以下である。
尚、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)の換わりにスチレン−ブタジエン共重合体を使用することも可能であるが、スチレン−ブタジエン共重合体を用いると母材ゴムとの接着力が低下する傾向がある、しかしながら、塗布後にべとつきがなくなるという利点がある。
また、ガラス繊維被覆用塗布液にモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を必須として含有する本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに塗布したゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設してなる伝動ベルトにさらなる耐熱性の与えるためには、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを上述のガラス繊維被覆用塗布液に加える。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に、さらに、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を加える場合、クロロスルホン化ポリエチレン(D)の含有が、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれる前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+D)=40.0%より多いと、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。D/(A+B+D)=1.0%未満では、耐熱性を向上させる効果が殆どない。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、好ましい耐熱性を得る好適なクロロスルホン化ポリエチレン(D)の含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれる前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+D)=1.0%以上、40.0%以下である。好ましくは、D/(A+B+D)=15.0%以上、35.0%以下である。
モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに塗布した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を母材ゴムに埋設してなる伝動ベルトにさらなる耐熱性の与えるためには、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを上述のガラス繊維被覆用塗布液に加える。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)を加える場合、前記中のクロロスルホン化ポリエチレン(D)の含有が、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれる前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+C+D)=40.0%より多いと、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの接着強さが弱くなり、伝動ベルトにした際に好ましい耐熱性が得難い。D/(A+B+C+D)=1.0%未満では、耐熱性を向上させる効果が殆どない。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、好ましい耐熱性を得る好適なクロロスルホン化ポリエチレン(D)の含有範囲は、ガラス繊維被覆用塗布液に含まれる前記フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+C+D)=1.0%以上、40.0%以下である。好ましくは、D/(A+B+C+D)=15.0%以上、35.0%以下である。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、クロロフェノールとホルムアルデヒドをアルカリの存在下、水中で縮合反応させてレゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿とした後、アルコール化合物を加えて溶解させて、レゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液として調製したものが好適に使用される。この様にして得られたレゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを必須の組成物として加えることによって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を調製した。また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトに、耐水性および耐油性をバランスよく合わせ持たせるには、さらに、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンを加える。耐熱性向上のためには、さらに、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加える。
ガラス繊維被覆用塗布液を調製する際、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を、アルコール化合物を加え溶解させ水溶液とした後、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンを必須とし、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合させて調製する。
本発明において、アルコール化合物とは、炭化水素の水素原子をOH基で置換した化合物を指し、OH基を1個有するモノアルコール化合物、OH基を2個有するグリコール(ジオール)化合物、OH基を3個有するトリオール化合物が含まれる。
即ち、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿に、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物のうちの少なくとも1つのアルコール化合物を加えて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させると、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を調製する際に、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加え混合したとしても、混合後にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出しないことがわかった。
このように、水中で縮合反応させてなるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させるためには、水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物、トリオール化合物のうちの少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を加える必要がある。
クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が水溶性のアルコール化合物を加えることで溶解し、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液が安定となり、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出しなくなるのは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物のOH基とアルコール化合物のOH基とが3次元的に強い水素結合を形成することによると思える。且つ、アルコール化合物は、双極子モーメントと誘電率の値が高いので分散力など遠距離相互作用が強く働き、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を水溶液中で安定化させる効果、さらに、配位結合的(電荷移動的)相互作用エネルギーが大きいので、溶媒−溶質間だけでなく溶媒−溶媒間で会合を起こして強い溶媒和が生じ、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出することなきように水溶液中で安定化させる効果があると思える。この安定化させる効果はOH基の個数が多いグリコール化合物、トリオール化合物の方がモノアルコール化合物より大きく、特にグリコール化合物が安定化させる効果に優れている。
また、ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が50℃より低いアルコール化合物を用いるとアルコール化合物が揮発しやすく扱い難い。アルコール化合物が揮発するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。ガラス繊維被覆用塗布液に、沸点が250℃より高いアルコール化合物を用いると、ガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布し被覆する際、被覆層よりアルコール化合物が揮発しにくい。被覆層よりアルコール化合物を除去しないと、ゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋め込んで伝動ベルトとした際の、伝動ベルトの耐熱性、耐水性が低下する。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に用いるアルコール化合物には、沸点、50℃以上、250℃以下の水溶性のモノアルコール化合物、グリコール化合物またはトリオール化合物から少なくとも1つの水溶性のアルコール化合物を選んで用いることが好ましい。
このように、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合しても析出なきよう安定させるために、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を有する反応液にアルコール化合物を加えて、沈殿を溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。詳しくは、クロロフェノールとホルムアルデヒドの混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたレゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液に、アルコール化合物を加え、次いで攪拌することによって該沈殿を溶解させて、レゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。
アルコール化合物を加えることにより、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる際の、アルコール化合物の量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、50%以上、500%以下である。言い換えれば、加えるアルコール化合物の質量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量に対して、質量比で1/2以上、5以下である。
アルコール化合物を加える量が50%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させる効果がなく、500%より多く含有させる必要はない。アルコール化合物を加える量が500%より多くなると、ガラス繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)またはクロロスルホン化ポリエチレン(D)の濃度が低下し、所望の被覆層の厚さを得ることができず、ガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布してなるゴム補強用ガラス繊維が柔軟でなくなる。
尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の質量より求められる。この際、未反応のクロロフェノールおよびホルムアルデヒドは揮発除去される。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させるために使用するアルコール化合物には、メタノール(CH3OH)沸点65℃、エタノール(C2H5OH)沸点78℃、n−プロピルアルコール(C3H8O)沸点97℃、イソプロピルアルコール(C3H8O)沸点82℃、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C3H8O2)沸点124℃、プロピレングリコール(C3H8O2)沸点188℃、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C7H16O3)沸点190℃、1−メトキシ−2−プロパノール(C4H10O2)沸点120℃、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C2H6O2)沸点196℃、ジエチレングリコール(C4H10O3)沸点244℃、1,2−ジエトキシエタン(C6H14O2)沸点123℃、グリセリン(C3H8O3)沸点171℃が挙げられ、好ましくは、n−プロピルアルコール(C3H8O)、イソプロピルアルコール(C3H8O)、2−メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル:C3H8O2)、プロピレングリコール(C3H8O2)、2−メトキシメチルエトキシプロパノール(C7H16O3)、1−メトキシ−2−プロパノール(C4H10O2)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール:C2H6O2)、ジエチレングリコール(C4H10O3)、1,2−ジエトキシエタン(C6H14O2)である。特に、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ガラス繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥してストランドに被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアルコール化合物である。
OH基2個のグリコール(ジオール)化合物の中には、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる目的でガラス繊維被覆用塗布液に使用する際、塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成されるものもあるが、必要領域における濃度調整において、2−メトキシエタノール、プロピレングリコールは、ともにその懸念はなく、加えて火気に対して安全性があり、毒性も低く沸点が低いことより作業者が吸引する懸念もなく環境安全性に優れ、市販価格も安く実用性が高く、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアルコール化合物である。
OH基1個のモノアルコール化合物に含まれるメタノールおよびエタノール、およびOH基3個のトリオール化合物に含まれるグリセリンは、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる目的でガラス繊維被覆用塗布液に使用した際、ガラス繊維被覆用塗布液が高濃度の状態では、ストランドに塗布被覆することが可能である。しかしながら、塗布時に塗布液の濃度調整のために水を添加するとゲル化物が形成析出しやすくなり、濃度調整がし難く扱い難い。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物には、クロロフェノールとホルムアルデヒドをアルカリ性化合物の存在下に水中で縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿とした後、アミン化合物を加えて溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液として調製したものも使用される。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液は、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとを混合することによって調製した。または、この様にして得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンとを加え混合することによって調製した。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液は、クロロフェノールとホルムアルデヒドとを水中で縮合反応させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物に塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物を加えた後、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合させて調製する。
塩基性度定数(Kb)とは、アルカリが水素イオンを溶液から受け入れる度合いを測定し、塩基性度として表したものであり、化1の式の平衡定数である。
通常、水に溶解し難いクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を水に溶解させるには、クロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させ生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が沈殿した反応液に、アンモニアまたは水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液とする。
しかしながら、アンモニアのように塩基性度定数(Kb)が小さいアルカリ性化合物を加えることで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させたとしても、得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液からガラス繊維被覆用塗布液を調製するために、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加えるとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)が析出する。
また、水酸化ナトリウムのように塩基性度定数(Kb)が大きいアルカリ性化合物を加えることで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させて、ガラス繊維被覆用塗布液とするためにアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合させると、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出が抑制される。しかしながら、強アルカリであるため、ガラス繊維を劣化させて、ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さを弱めてしまい使用し難い。
ところが、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が生成した反応液に塩基性度定数(Kb)が5×10−5以上、1×10−3以下であるアミン化合物(F)を加え沈殿を溶解させた後、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合させると、混合後もクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の析出が起こり難く、ゴム補強用ガラス繊維を劣化させず、引っ張り強さを弱めないことがわかった。
このように、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合しても析出なきよう安定させるために、クロロフェノールをホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が沈殿した反応液にアミン化合物を加えて、沈殿を溶解させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。詳しくは、クロロフェノールとホルムアルデヒドの混合水溶液に水酸化ナトリウムを縮合反応に必要な量のみを加え、余分に加えないで、30℃以上、95℃以下に加熱して、4時間以上、攪拌しつつ縮合反応させて得られたレゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が沈殿した反応液に、アミン化合物を加え、次いで攪拌することによって該沈殿を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得た。
この場合のアミン化合物の塩基性度定数(Kb)は5×10−5以上、1×10−3以下ある。
加えるアミン化合物の塩基性度定数(Kb)が5×10−5より小さいと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿が溶解せず溶解したとしても、得られたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液からガラス繊維被覆用塗布液を調製するために、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)のエマルジョンまたはクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンと混合するとクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が析出する。1×10−3より大きいとガラス繊維被覆用塗布液としてストランドに塗布被覆しゴム補強用ガラス繊維とすると、母材ゴムと接着した際の接着力が低下する。
アミン化合物を加えることにより、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させる際の、アミン化合物を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量を100%基準とする質量百分率で表して、50%以上、500%以下である。言い換えれば、アミン化合物を加える量は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量に対して、質量比で、1/2以上、5以下である。
アミン化合物を加える量が50%より少ないと、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を溶解させる効果がなく、500%より多く含有させる必要はない。アミン化合物を加える量が500%より多くなると、ガラス繊維被覆用塗布液におけるクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)またはクロロスルホン化ポリエチレン(D)の含有割合が低下し、ガラス繊維被覆用塗布液を繊維コードに塗布してなるゴム補強用ガラス繊維が柔軟でなくなる。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量は、クロロフェノールとホルムアルデヒドと水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を擁する反応液を加熱し蒸発させた残渣の質量より求められる。この際、未反応のクロロフェノールおよびホルムアルデヒドは揮発除去される。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液において、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿を溶解させるために使用するアミン化合物には、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、メタノ−ルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンが挙げられる。好ましくは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミンである。
さらに、好ましくは、ジメチルアミン、ジエタノ−ルアミンである。ジメチルアミンは価格が安く、ジエタノールアミンはアミン特有のにおいがなく取り扱いが容易である。特に、ジエタノールアミンは、ガラス繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥してゴム補強用ガラス繊維に被覆層を形成する際に、気散し被覆層中に残らないこと、およびアルコール化合物でもあり、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を安定化させる効果も高いことから、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に用いるに特に好ましいアミン化合物である。
これらアミン化合物の塩基性度定数(Kb)は、有機化学(中)第3版(東京化学同人)および有機化学用語辞典(第2刷)朝倉書店、167頁〜175頁等に示されており、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4、ジエタノールアミンの塩基性度定数(Kb)は1.0×10−4.5である。
以上、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を、複数本の高強度ガラス繊維フィラメントを集束させてなるストランドに塗布後乾燥させた被覆層を設けゴム補強用ガラス繊維とする。詳しくは、高強度ガラス繊維の原料であるSガラス等のガラス原料を溶解させた後、溶融炉下に設けたブッシュから吐出する高強度ガラス繊維フィラメントを、シランカップリング剤と樹脂等とを含有してなる集束剤を塗布しつつ集束させストランドとし、該ストランドに、前述のガラス繊維被覆用塗布液を塗布し乾燥させて、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維とする。
本発明高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に使用するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物としては、モノヒドロキシベンゼンに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5以上、3.0以下で、アルカリの存在下で反応させたレゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えるとガラス繊維被覆用塗布液が、ゲル化し易い。本発明において、レゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることでガラス繊維被覆用塗布液の液安定性が向上する。
また、本発明高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に使用するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物としては、クロロフェノールに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5以上、3.0以下で、アルカリの存在下で反応させたレゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と耐熱ゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えるとガラス繊維被覆用塗布液が、ゲル化し易い。本発明において、レゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることでガラス繊維被覆用塗布液の液安定性が向上する。
尚、前記アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等が挙げられる。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に使用されるモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物として、例えば、工業用フェノール樹脂として市販されている群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667が挙げられる。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に用いるアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)には、例えば、日本ゼオン社株式会社製、商品名、Nipol L1560、Nipol L1562、Nipol SX1503等が挙げられる。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層において、アクリロニトリル−ブタジエン2元のみでなく、重合モノマーにスチレンを加え、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体としたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を用いたとしても、前記理由により、寸法安定性において、同等の効果が得られる。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体を用いた方が、伝動ベルトとした際に、耐熱性および耐油性を低下させることなく耐水性が得られ、優れた伝動ベルトが得やすい。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層に用いるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体には、例えば、日本ゼオン株式会社、商品名、Nipol L1577K、Nipol L1571CL等が挙げられる。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液の組成物として用いるクロロスルホン化ポリエチレン(D)は、質量百分率で表して、塩素含有量が20.0%以上、40.0%以下、スルホン基中の硫黄含有量が0.5%以上、2.0%以下のものが好適に用いられ、例えば、固形分約40質量%のラテックスとして、住友精化株式会社製、商品名、CSM−450が市販されており、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液に使用される。尚、前述の塩素含有量及びスルホン基中の硫黄含有量を外れたクロロスルホン化ポリエチレン(D)を用いたガラス繊維被覆用塗布液を使用し、被覆を施し作製したゴム補強用ガラス繊維は、母材であるHNBRとの接着性に劣る。
また、ゴム補強用ガラス繊維とHNBRの接着性、引いては耐熱性および耐水性を高めるために、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布後、乾燥させて被覆層とし、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有するガラス繊維2次被覆用塗布液を塗布し乾燥させてさらなる2次被覆層を設けることが好ましい。ビスアリルナジイミド(E)を2次被覆層に含有させると本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の耐熱性および耐水性を向上させる。具体的には、ビスアリルナジイミド(E)を2次被覆層に含有させることで、耐油性には優れるが耐水性には劣るアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有する1次被覆層への水の浸透を少なくし、1次被覆層へアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有させたことによる耐水性の低下を防止する。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布後、乾燥させて被覆層としたゴム補強用ガラス繊維に、さらにクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)とを有機溶剤に分散させたガラス繊維2次被覆用塗布液を塗布し、2次被覆層を設け、種々の母材ゴム、特にHNBR等の耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとすると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの優れた接着性が得られ、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は伝動ベルトの補強材として有効に働く。さらに、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いた補強用ガラス繊維を埋設させてなる前記伝動ベルトは、高温多湿の環境下における長時間の使用において、被覆層が初期の接着強さを持続し且つ寸法安定性に優れ、即ち、耐熱性および耐水性に優れる。有機溶剤としては、例えば、キシレンが挙げられる。
クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)の他に、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液をゴム補強用ガラス繊維に塗布後乾燥した被覆層の上層に設ける2次被覆層としては、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とマレイミドを含有する2次被覆層、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と有機ジイソシアネートまたはメタクリル酸亜鉛等を含有する2次被覆層が挙げられる。しかしながら、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を設けることが、伝動ベルトとした際に、さらに耐熱性を高める効果があり好ましい。
ビスアリルナジイミド(E)は熱硬化性イミドの一種であり、低分子量のビスアリルナジイミド(E)は他の樹脂との相溶性に優れており、硬化後のビスアリルナジイミド樹脂は、ガラス転移点が300℃以上で、前記伝動ベルトの耐熱性を高める効果がある。
ビスアリルナジイミド(E)は、その硬化前において化2の構造式で表され、化2の構造式のアルキル基は、化3または化4の構造式等で示され、特に、N−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドが好適に使用される。
ビスアリルナジイミド(E)は、丸善石油化学株式会社よりBANI−M、BANI−H、BANI−X等の商品名で市販されており、本発明に好適に使用される。
従来の伝動ベルトに比較して、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を必須とし、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)およびクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を用い、ストランドに塗布乾燥させ被覆層を設けた後、クロロスルホン化ポリエチレン(D)の質量を100%基準とする質量百分率で表して、ビスアリルナジイミド(E)を0.3%以上、10.0%以下、即ち、E/D=0.3%以上、10.0%以下の範囲で加え、有機溶剤に分散させたガラス繊維2次被覆用塗布液を塗布し、さらなる2次被覆層を設けてなる本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を架橋されたHNBRゴムに芯線として埋設し作製した伝動ベルトは、高温下および多湿下おける長時間の屈曲走行後も、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と架橋されたHNBRの被覆層による初期の接着強さが持続され、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れており、耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持つ。ビスアリルナジイミド(E)の含有が、E/D=0.3%より少ないと、前述の優れた耐熱性が得難い。E/D=10.0%を超えると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの接着強さが弱くなり作製した伝動ベルトは、耐久性に劣る。
本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維に、被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液には、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニアが挙げられる。
耐熱性のためには、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層にクロロスルホン化ポリエチレン(D)を用いることが好ましい。さらに、加硫剤としてのニトロソ化合物、例えば、p−ニトロソベンゼン、無機充填剤、例えば、カーボンブラックまたは酸化マグネシウムをガラス繊維2次被覆用塗布液に添加し、ゴム補強用ガラス繊維に2次被覆層に加えることは、該ゴム補強用ガラス繊維をゴムに埋設して作製した伝動ベルトの耐熱性を高めるさらなる効果がある。ガラス繊維2次被覆用塗布液に、塗布液中のクロロスルホン化ポリエチレン(D)の質量を100%基準とする質量百分率で表して、加硫剤を0.5%以上、20.0%以下、無機充填材を10.0%以上、70.0%以下の範囲で添加すると、作製した伝動ベルトは、いっそうの耐熱性を発揮する。加硫剤の含有が0.5%より少ない、無機充填材の含有が10.0%より少ないと耐熱性を向上させる効果が発揮されず、加硫剤を、20.0%を超えて、無機充填材を、70.0%を超えて加える必要はない。
前述のガラス繊維被覆用塗布液による1次被覆層、その上層にクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有するガラス繊維2次被覆用塗布液を塗布し乾燥させてさらなる2次被覆層を設けてなる本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、種々の母材ゴム、特にHNBR等の耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとすると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの優れた接着性が得られ、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は伝動ベルトの補強材として有効に働く。
さらに、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設させてなる伝動ベルトは、高温多湿およびオイルが付着する環境下における長時間の屈曲走行において、被覆層がゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さを持続することで、寸法安定性に優れ、優れた耐熱性、耐水性および耐油性をバランスよく合わせ持たせる。
本発明において、ゴム補強用ガラス繊維は、高強度ガラス繊維の原料であるSガラス等の高強度ガラス繊維の原料を加熱したガラス溶融窯のブッシングから突出した細線である多数本の高強度ガラス繊維フィラメントに、シラン系カップリング剤を含有する集束剤を散布塗布し集束させたストランドをガラス繊維被覆用塗布液中で屈曲走行させ、ガラス繊維被覆用塗布液を強制的に付着、言い換えれば塗布した後に乾燥させて被覆層を設けてなる。
尚、本発明において、伝動ベルトとは、機械を運転するために、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるベルトのことであり、かみ合い伝動で駆動力を伝える歯付きベルト、摩擦伝動で駆動力を伝えるVベルトが挙げられる。自動車用伝動ベルトとは自動車のエンジンルーム内で用いられる耐熱性、耐水性の前記伝動ベルトのことである。タイミングベルトとは、前記自動車用伝動ベルトの中で、カムシャフトを有するエンジンにおいて、クランクシャフトの回転をタイミングギヤに伝えカムシャフトを駆動させバルブの開閉を設定されたタイミングで行うための、プーリーの歯とかみ合う歯を設けた歯付きベルトのことである。自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性および雨天走行における耐水性が必要であり、エンジンオイルにさらされるので耐油性が必要である。高温下、多湿下および油付着下での長時間の走行後において、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れていること、優れた耐熱性、耐水性および耐油性を合わせ持つことが要求される。
(実施例1)
Sガラスを加熱したガラス溶融窯のブッシングから突出した多数本の高強度ガラス繊維フィラメントに集束剤としてのシラン系カップリング剤を含有する集束剤を散布塗布し集束させたストランドにフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(実施例2、3)
次いで、実施例1と同様のストランドにフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。1次被覆層を得るためのガラス繊維被覆用塗布液を調製する際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得るのにアルコール化合物、アミン化合物を用いた各々の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例2、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例3とする。
(実施例4)
次いで、実施例1と同様のストランドにフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(実施例5、6)
次いで、実施例1と同様のストランドにフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
1次被覆層を得るためのガラス繊維被覆用塗布液を調製する際、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を得るのにアルコール化合物、アミン化合物を用いた各々の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例5、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例6とする。
(比較例1)
次いで、実施例1と同様のストランドに従来のレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上にクロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(比較例2)
次いで、実施例1と同様のストランドにモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
(比較例3、4)
次いで、実施例1と同様のストランドにクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有するガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を設けた高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を比較例3、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を塗布被覆してなる1次被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を比較例4とする。
以上、実施例1〜6、比較例1〜4の1次被覆層の組成物について、表1に纏めた。尚、2次被覆層は、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する。
最初にSガラスを用いた高強度ガラス繊維フィラメントを用いた高強度ガラス繊維フィラメントからなるゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6、比較例1〜4)の引っ張り強さを測定した。次いで、比較のために、Sガラスに替えてEガラスを用い、Eガラスを用いた通常のガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維、即ち、高強度ガラス繊維を用いていないゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さを測定した。
次いで、これらガラス繊維被覆用塗布液を塗布し被覆層を設けた本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6)、本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜4)の耐熱ゴムに対する接着強さ評価試験を行い、評価結果を比較した。
また、これら、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6)、または本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜4)をHNBRに埋設させたMIT屈曲試験用の試験片を作製した。この試験片を用いて耐熱性、耐水性および耐油性を測定した。
以下、詳細に述べる。
実施例1
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)に属するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンとアンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%)を、濃度、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いた。モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、63重量部と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol L1562 固形分濃度、41.0質量%)433重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)22重量部とに、クロロスルホン化ポリエチレン(D)(東ソー株式会社製、商品名、TS−430)を所定量加え、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
ガラス繊維被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)に属するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物が、A/(A+B)=8.2%、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B)=91.8%である。また、クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+D)=32%である。尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層となる。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとに、p−ジニトロソベンゼンおよびカーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、クロロスルホン化ポリエチレン(D)としての東ソー株式会社製、商品名、TS−430、100重量部と、p−ジニトロソベンゼン、40重量部と、N−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとしての丸善石油化学株式会社製、商品名、BANI−H、0.3重量部とに、カーボンブラック、30重量部を加え、キシレン、1315重量部に分散させて2次被覆用塗布液を調製した。即ち、クロロスルホン化ポリエチレン(D)の質量に対して、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドをE/D=0.3質量%、加硫剤であるp−ジニトロソベンゼンを40質量%、無機充填材であるカーボンブラックを30質量%となるようにして2次被覆用塗布液を調製した。このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのSガラスからなる高強度ガラス繊維フィラメントを、アクリルシラン系カップリング剤およびエポキシ樹脂を含有する集束剤を用い200本集束したストランド3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した1次被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて1次被覆層を設け1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。尚、Sガラスの組成は、質量%で表して、SiO2 64%、Al2O3 25%、MgO 10%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%である。
この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して19.0質量%であった。
前記、1次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維に、2.54cm当たり2.0回の下撚りを与え、さらに13本引き揃えて下撚りと逆方向に2.54cm当たり2.0回の上撚りをする作業を施した。その後、前述の手順で作製した2次被覆用塗布液を塗布した後、110℃で1分間の乾燥を行い、2次被覆層を設け、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例1)を作製した。このようにして、下練りと上練りの方向を各々逆方向とした2種類のゴム補強用ガラス繊維を作製した。各々、S練り、Z練りと称する。
実施例2、3
(アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液の調製)
最初に、アルコール化合物を用いた、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)に属するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液の調製について説明する。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール、138重量部、濃度、37.0質量%のホルムアルデヒド水溶液、87重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し縮合反応させた。このようにして、レゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を生成させ、反応液中に沈殿物として得た。この反応液100重量部に対して、アルコール化合物としてのプロピレングリコールを添加して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を調製した。尚、濃度、1.0質量%水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量に対してプロピレングリコールの質量が、200質量%となるように溶解した。
(アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液の調製)
次いで、アミン化合物を用いたフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)に属するクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液の調製について説明する。
還流冷却器、温度計、攪拌機をつけた三つ口セパラブルフラスコに、クロロフェノール、138重量部、濃度、37.0質量%のホルムアルデヒド水溶液、87重量部(モル比で表せば、1.0)、濃度、1.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液、20重量部を仕込み、80℃に加熱した状態で3時間攪拌し縮合反応させた。このようにして、レゾール型のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を生成させ、反応液中に沈殿物として得た。この反応液100重量部に対して、アミン化合物としてのジメチルアミンを添加して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の沈殿物を溶解させて、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を調製した。尚、濃度、1.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液の前記添加は、クロロフェノールとホルムアルデヒドを縮合反応させてクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とするための縮合反応に必要な量以上には加えてはいない。尚、クロロフェノールには、P−クロロフェノールを用いた。尚、ジメチルアミンの塩基性度定数(Kb)は5.4×10−4である。尚、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の質量に対してジメチルアミンの質量が、200質量%となるように溶解した。
(1次被覆用塗布液の調製)
アルコール化合物を用いて溶解させた前述のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、またはアミン化合物を用いて溶解させた前述のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い、市販のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(D)を加え、アンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、固形分濃度、25質量%に調製したクロロフェノールホルムアルデヒド縮合物の各水溶液、63重量部と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)エマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol L1562 固形分濃度、41.0質量%)433重量部と、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)22重量部とに、クロロスルホン化ポリエチレン(D)(東ソー株式会社製、商品名、TS−430)を所定量加え、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
1次被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)に属するクロロフェノールホルムアルデヒド縮合物が、A/(A+B)=8.2%、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B)=91.8%である。また、クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+D)=28%である。尚、1次被覆用塗布液中のクロロフェノールホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の質量は固形分濃度から、固形分に換算して求めた。このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層となる。
次いで、実施例1で調製した2次被覆用塗布液を用い、実施例1と同様の手順で高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例2、実施例3)を作製した。
アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いた1次被覆用塗布液を使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例2、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いた1次被覆用塗布液を使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例3とする。
実施例4
(ガラス繊維被覆用塗布液の調製)
フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液に、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体のエマルジョン、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンおよびクロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加え、アンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%)を、濃度、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液を用いた。モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、77重量部と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol L1577K 固形分濃度、38.0質量%)233重量部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0質量%)345重量部に加え、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)22重量部を添加し、クロロスルホン化ポリエチレン(D)(東ソー株式会社製、商品名、TS−430)を所定量加え、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
ガラス繊維被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)が、A/(A+B+C)=9.8%、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=36.3%である。、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン3元共重合体(C)が、C/(A+B+C)=53.9%である。
また、クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+C+D)=21.9%である。尚、ガラス繊維被覆用塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。このままの含有割合で高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層となる。
(2次被覆用塗布液の調製)
次いで、実施例1と同様にして、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドに、p−ジニトロソベンゼンおよびカーボンブラックを加え、キシレンに分散させた2次被覆用塗布液を調製し、2次被覆層を設け、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作成した。
実施例5、6
(1次被覆用塗布液の調製)
実施例2に示した手順による、アルコール化合物を用いて溶解させた前述のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、または実施例3に示した手順による、アミン化合物を用いて溶解させたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い、市販のアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)エマルジョンとしてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体のエマルジョンと、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと、クロロスルホン化ポリエチレン(D)のエマルジョンを加え、アンモニア水と水を添加し、1次被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、固形分濃度、25質量%に調製したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の各水溶液、85重量部と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、Nipol L1577K 固形分濃度、38.0質量%)255重量部と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41.0質量%)343重量部に加え、PH調整剤としてアンモニア水(濃度、25.0質量%)22重量部とに、クロロスルホン化ポリエチレン(D)(東ソー株式会社製、商品名、TS−430)を所定量加え、全体として1000重量部になるように水を添加して、1次被覆用塗布液を調製した。
1次被覆用塗布液中の各成分の含有割合は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、クロロフェノールホルムアルデヒド縮合物が、A/(A+B+C)=12.4%、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)が、B/(A+B+C)=37.3%である。、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)が、C/(A+B+C)=50.3%である。
また、クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)としてのクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、D/(A+B+C+D)=20.3%である。尚、1次被覆用塗布液中のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)の質量は固形分濃度から、固形分に換算して求めた。このままの含有割合で高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層となる。
次いで、実施例1で調製した2次被覆用塗布液を用い、実施例1と同様の手順で高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例5、実施例6)を作製した。
アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いた1次被覆用塗布液を使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例5、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いた1次被覆用塗布液を使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を実施例6とする。
比較例1
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を用いないで、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)より、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を合せた質量を100%基準とする質量百分率で表して、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物が8.2%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体(C)が91.8%となるように調製した。クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、32%に成るように調製した。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維にさらなる2次被覆層を設け高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
このようにして、レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有する1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を設けた高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(比較例2)を作製した。
比較例2
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を用いないで、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)より、ガラス繊維被覆用塗布液を調製した。モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を合せた質量を100%基準とする質量百分率で表して、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物が8.2%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体(C)が91.8%となるように調製した。クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、32%に成るように調製した。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維にさらなる2次被覆層を設け高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
このようにして、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有する1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を設けた高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(比較例2)を作製した。
比較例3、4
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を用いないで、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)よりガラス繊維被覆用塗布液を調製した。クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を合せた質量を100%基準とする質量百分率で表して、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物が8.2%、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン重合体(C)が91.8%となるように調製した。クロロスルホン化ポリエチレン(D)は、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、32%に成るように調製した。
次いで、実施例1に示した手順で、実施例1と同様の2次被覆用塗布液を調製し、実施例1と同様の手順で作業を行い、ゴム補強用ガラス繊維にさらなる2次被覆層を設け高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を作製した。
このようにして、クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体と(C)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を含有する1次被覆層上に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を含有する2次被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維(比較例3、4)を作製した。アルコール化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を使用し被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を比較例3、アミン化合物を用いたクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用いたガラス繊維被覆用塗布液を使用し被覆層を形成した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を比較例4とする
(各ゴム補強用ガラス繊維とガラス繊維フィラメントにEガラスを用いた場合の引っ張り強さの比較)
Sガラスを用いた高強度ガラス繊維フィラメントを用いたこれらゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6、比較例1〜4)の引っ張り強さを測定した。次いで、比較のために、Sガラスに替えてEガラスを用い、Eガラスを用いた通常のガラス繊維フィラメントを使用したゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さを測定した。
Eガラスを用いた通常のガラス繊維フィラメントを使用したゴム補強用ガラス繊維は、径9μmのEガラスからなる高強度ガラス繊維フィラメントを、アクリルシラン系カップリング剤およびエポキシ樹脂を含有する集束剤を用い200本集束したストランド3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した1次被覆用塗布液を塗布し、その後、温度、280℃下で、22秒間乾燥させて1次被覆層を設け1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。次いで、前述の手順で2次被覆を作成した。尚、Eガラスの組成は、質量%で表して、SiO2 53%、Al2O3 15%、CaO 21%、MgO 2%、B2O3 8%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%である。
引っ張り強さの比較結果を表2に示す。
表2に示すように、Sガラスを用いた高強度ガラス繊維フィラメントを用いたこれらゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6、比較例1〜4)の引っ張り強さの測定値は1052N〜1175Nであり、Eガラスを用いた通常のガラス繊維フィラメントを使用したゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さの測定値、957N〜982Nに比較して、8.2%〜21.1%、引っ張り強さに優れる。
(各ゴム補強用ガラス繊維とHNBRの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用した耐熱ゴムを説明する。
母材ゴムとしてのHNBR(日本ゼオン株式会社製、型番、2020)、100重量部に対して、カーボンブラック、40重量部と、亜鉛華、5重量部と、ステアリン酸、0.5重量部と、硫黄、0.4重量部と、加硫促進剤、2.5重量部と、老化防止剤、1.5重量部とを配合した。
試験片はHNBRからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6、比較例1〜4)を20本並べ、その上から布をかぶせ、温度、150℃下、196ニュートン/cm2の条件で端部を除き押圧し、35分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片を得た。この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。
(接着強さの評価結果)
表3に、各ゴム補強用ガラス繊維のHNBRに対する接着強さを示す。
表3において、ガラス繊維とHNBRが界面から剥離していない破壊状態をゴム破壊とし、界面から一部のみでも剥離している破壊状態を界面剥離とした。ゴム破壊の方が、界面剥離より接着強さに優れる。
表3に示すように、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜6)、本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜4)ともに接着強さは同等(298〜325N)であり、剥離状態はゴム破壊であり、同様な結果であった。
(高強度ガラス繊維フィラメントを用いた各ゴム補強用ガラス繊維のMIT屈曲試験による耐水性、耐熱性、耐油性の評価結果)
実施例1〜6および比較例1〜4で作製した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前記HNBRを用い、巾50mm、長さ250mm、厚さ20mmのゴムの中において2本のコードを埋設させた後、150℃に35分間加硫させつつ養生させて、MIT屈曲試験用の試験片サンプルを作製した。耐水性、耐熱性および耐油性を評価した。
耐熱性については、試験片を、加熱炉中で150℃に240時間加熱し室温に戻した後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強さを測定した。
また、耐水性については、水を入れたビーカーに試験片を漬けて、ガスバーナーにかけて2時間煮沸した後に取り出し、水分をふき取った後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強さを測定した。
また、耐油性については、120℃に加熱した自動車用エンジンオイルに試験片を100時間浸漬してから取り出し、エンジンオイルを拭き取った後、試験片端部に3Kgの重りを付けて、210度の角度に1200回屈曲を繰り返し、その後、引っ張り強さを測定した。
以上のように、耐熱性、耐水性、耐油性評価のため、それぞれ劣化のための促進をした後、210度の角度に1200回屈曲を繰り返しMIT屈曲試験を行い、伝動ベルトにした際の耐熱性、耐水性、耐油性評価の指標とした。
図1は、MIT屈曲試験の試験片の模式図である。
試験片1の大きさは、高さ2mm、幅5mm、長さ250mmであり、HNBR2の内部に実施例1〜6、比較例1〜4によるゴム補強用ガラス繊維3が埋設されている。
図2は、MIT屈曲試験の試験状況の模式図である。
クランプの曲げ角度は、120度であり、錘4を付けた状態で試験片1を1200回屈曲させる。
MIT屈曲試験の結果を表4に示す。
表4中の数値は引っ張り強さ保持率であり、以下の数1の式により求めた。
表4に示すように、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、アルコール化合物を用いて溶解させた前述のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、またはアミン化合物を用いて溶解させた前述のクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液、またはレゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物の水溶液を用い調製した各々の1次被覆用塗布液を用いた各ゴム補強用ガラス繊維3を用いた試験片1のMIT屈曲試験による耐熱性、耐水性、耐油性の評価結果を示す。耐熱性、耐水性、耐油性の評価のために、MIT屈曲試験後の各試験片1の引っ張り強さ保持率を測定した。
表4に示すように、耐熱性は、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は44.5%〜52.5%の範囲内にあり、比較例1〜4に示した本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維ともに引っ張り強さ保持率は22.2%〜25.5%の範囲内にあり、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、非常に優れた耐熱屈曲疲労性を示した。
この違いは、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、その1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン2元共重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体を含有し、比較例1〜4に示した本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は含有しないことによる差異であり、1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン2元共重合体またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体を含有させることで、耐熱性が向上することが確認された。
尚、耐熱性の評価結果、ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率が大きく低下したことは、加熱炉中で150℃に240時間加熱したことで、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層が硬く脆くなったことによる。
また、耐水性は、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維、比較例1〜4に示した本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維ともに引っ張り強さ保持率は85.4%〜98.3%の範囲内にあり、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と、比較例に示した本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維漢は同等の測定結果であった。このことは、ゴム補強用ガラス繊維の2次被覆層にビスアリルナジイミド(E)を含有させたことが、1次被覆層に水が浸透することを抑制した効果による。
比較して、耐油性は、実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は100.5%〜123.3%の範囲内にあり、比較例1〜4に示した本発明の範疇にない高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は76.6%〜82.5%の範囲内にあり、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維が優れていた。このことは、1次被覆層に含有させたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)の効果による。
尚、耐油性の評価結果、ゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率が100%を超えるのは、120℃に加熱した自動車用エンジンオイルに試験片を100時間浸漬したことで、加熱により、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層の架橋硬化がより進み、引っ張り強さが増したことによる。このことは、1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有させた実施例1〜6に示した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維においてより顕著である。
また、実施例1〜3の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は113.3%〜123.3%であり、実施例4〜6の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率100.5%〜113.5%に比較して大きいのは、実施例1〜3の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層は、ビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を含まないことによる。1次被覆層にビニルピリジン−ブタジエン−スチレン共重合体(C)を含有させると耐油性の評価結果、引っ張り強さ保持率は低下する傾向がある。
また、耐油性の評価結果において、1次被覆層の組成物して、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を用いた実施例1〜3の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維おいて、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例1の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は113.3%であり、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例2、3の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は各々、123.3%、115.6%であった。
また、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の1次被覆層の組成物して、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を用いた実施例4〜6の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維において、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例4の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は100.5%であり、フェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)にクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物を用いた実施例5、6の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の引っ張り強さ保持率は各々、102.3%、113.5%であった。
(屈曲走行試験)
次いで、実施例1〜6および比較例1〜4で作製した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトについて屈曲走行試験を実施した。
(屈曲走行試験による耐水性評価)
実施例1〜6および比較例1〜4で作製した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前述の耐熱ゴムを用い、ループ状に巻いた後に耐熱ゴムのコンパウンドに埋設し帆布を貼り付けた型内に入れ、熱を加えて硬化させ、巾19mm、長さ876mmの歯付きベルトとしての伝動ベルトを各々作製し、耐水性を評価するための耐水走行疲労試験を実施した。耐水性は、注水下、伝動ベルトを、歯車、即ち、プーリーを用いて走行させ、一定時間経過の伸び、および一定時間経過の引っ張り強さ保持率、即ち、耐水走行疲労性能を評価する。
図3は、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設させて作製した伝動ベルトを切断した際の斜視図である。
図3に示すように、伝動ベルト5はプーリーに噛み合わせるための高さ3.2mmの突起部5Aを多数有し、突起部を除く背部5Bの厚みが2.0mmで、伝動ベルトの該背部5Bには、断面に見られるように上撚りと下撚りの撚り方向が異なるS撚り、6本Z撚り、6本、合わせて12本の高強度ガラス繊維フィラメントを用いた各ゴム補強用ガラス繊維6が、S撚りとZ撚りが交互になるようにループ上に巻かれた状態で埋設されている。
図4は、伝動ベルトの耐水走行疲労試験機の概略側面図である。
図4に示すように、各々の伝動ベルト5を図示しない駆動モーターと発電機を備えた耐水走行疲労試験機に装着し耐水性を測定する。
伝動ベルト5は図示しない駆動モーターにより回転駆動される駆動プーリー7の駆動力により、従動プーリー8および9を回転させつつ走行する。従動プーリー8には図示しない発電機に連結されており、発電機を駆動し1kwの電力を発生させる。アイドラー10は、耐水走行疲労試験における走行中に回転しつつ伝動ベルト5を張る役割を有し、伝動ベルト5を張るための荷重として50Nを伝動ベルト5に与える。従動プーリー8、9は、径、60mm、歯数、20Tであり、駆動プーリー7は、径120mmであり、歯数、40Tである。耐水走行疲労試験中の駆動プーリー7の1分間あたりの回転数は、3000rpm、従動プーリー8、9の1分間あたりの回転数は、6000rpmである。回転方向は、伝動ベルト5に平行な矢印で示す。
常温において、図4に示すように、1時間当たり6000mlの水11を、駆動プーリー7と従動プーリー8の間において、伝動ベルト1に均等に滴下させつつ、駆動プーリー7を3000rpmで回転させ、伝動ベルト1を従動プーリー8および9、アイドラー10を用いて走行させた。このようにして、伝動ベルト5を破断するまで走行させる耐水走行疲労試験を実施した。
耐水走行疲労試験前の伝動ベルト5の引っ張り強さ、および耐水走行疲労試験後の引っ張り強さを測定し、数1の式により試験前に対する試験後の伝動ベルト1の引っ張り強さ保持率を求め、実施例1〜6および比較例1〜4のゴム補強用ガラス6を用いて作製した伝動ベルト5の耐水性を比較評価した。
(引張り強さ測定)
引張り強さ測定に供する試験片の長さは257mmであり、1本の伝動ベルト5から3本切り取り得られる。これら試験片の端部各々をクランプ間距離145mmのクランプにてはさみ、引張り速度を50mm/分とし、伝動ベルト5が破壊されるまでの最大の抵抗値を引張り強さとした。1本の伝動ベルト5から3回、抵抗値を測定し、その平均値を伝動ベルト5の引張り強さとした。尚、試験前の引っ張り強さは、同様に作製した10本の伝動ベルト5から各3回、抵抗値を測定して、その平均値を初期値として用いた。
数1の式を用いて、耐水走行疲労試験後の引張り強さ保持率を算出した。
各々の伝動ベルトの耐水走行疲労試験におけるベルト破断までの走行時間および耐水走行疲労試験後の引張り強さ保持率を表5に示す。
表5に示すように、実施例1〜3に示すモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物としたガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布後乾燥させた1次被覆層およびさらなる2次被覆層を有し、2次被覆層の組成物がクロロスルホン化ポリエチレン(D)と、p−ジニトソロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとカーボンブラックからなるゴム補強用ガラス繊維2次被覆用塗布液を用いた伝動ベルト6の走行試験後の引っ張り強さ保持率は、実施例1が48%、実施例2が46%、実施例3が47%であった。また、ベルト破断までの時間は、72〜74hrであった。
表5に示すように、実施例4〜6に示すモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物としたガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布後乾燥させた1次被覆層およびさらなる2次被覆層を有し、2次被覆層の組成物がクロロスルホン化ポリエチレン(D)と、p−ジニトソロベンゼンと、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドとカーボンブラックからなる高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を用いた伝動ベルト6の走行試験後の引っ張り強さ保持率は、実施例4が52%、実施例5が50%、実施例6が52%であった。また、ベルト破断までの時間は、76〜80hrであった。
それに対して、比較例1〜4に示す本発明の範疇にない伝動ベルト5は、比較例1が42%、比較例2が44%、比較例3が46%、比較例4が47%であった。また、ベルト破断までの時間は、58〜63hrであった。
この耐水走行疲労試験の結果より、従来のゴム補強用ガラス繊維に比較して、実施例1〜3のモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物とした1次被覆用塗布液を塗布後乾燥させてなる1次被覆層を有し、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミド、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、p−ジニトソロベンゼンとカーボンブラックを組成物とした更なる2次被覆層を有した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5は、同等以上の耐水性を有することが判った。
さらに、実施例4〜6のモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物とした1次被覆用塗布液を塗布後乾燥させてなる1次被覆層を有し、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミド、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、p−ジニトソロベンゼンとカーボンブラックを組成物とした更なる2次被覆層を有した本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5は、さらなる耐水性を有することが判った。
このことは、2次被覆層にビスアリルナジイミド(E)を含有させたことで、1次被覆層に、水が浸透することを抑制した効果による。また、表5に示した実施例1〜3と実施例4〜6の耐水性の違いは、実施例4〜6は、1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン2元共重合体に換えて、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合を使用したことと、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)を含有させたことによる
(耐熱性評価)
次いで、実施例1〜6および比較例1〜4で作製した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を補強材として、母材ゴムに前述の耐熱ゴムを用い、前述の耐水性評価試験と同様にして、巾19mm、長さ876mmの伝動ベルト5を各々作製し、耐熱性を評価するための耐熱耐屈曲走行疲労試験を実施した。耐熱性は、高温下、伝動ベルト5を、複数の歯車、即ち、プーリーを用いて、屈曲させつつ走行させ、一定時間経過の引っ張り強さ保持率、即ち、耐熱耐屈曲走行疲労性能で評価する。
図5は、伝動ベルトの耐熱耐屈曲走行疲労試験機の概略側面図である。
図5に示すように、各々の伝動ベルト5を図示しない駆動モーターを備えた耐熱耐屈曲走行疲労試験機に装着し耐熱性を測定する。伝動ベルト5は駆動モーターにより回転駆動される駆動プーリー12の駆動力により、3個の従動プーリー13、13´、13〃を回転させつつ走行する。アイドラー14は、耐熱耐屈曲走行疲労試験における走行中に伝動ベルト5を張るためのもので、伝動ベルト5を張る役割を有し、伝動ベルト5を張るための荷重として50Nを伝動ベルト1に与える。駆動プーリー12は、径、120mm、歯数、40Tであり、従動プーリー13、13´、13〃は、径60mmであり、歯数、20Tである。耐熱耐屈曲走行疲労試験中の駆動プーリー12の1分間あたりの回転数は、3000rpm、従動プーリー13、13´、13〃の1分間あたりの回転数は、6000rpmである。回転方向は、伝動ベルト5に平行な矢印で示す。
温度、130℃の環境下で、図5に示すように、駆動プーリー12を、3000rpmで回転させ、伝動ベルト5を従動プーリー13、13´、13〃、アイドラー14を用いて屈曲させつつ走行させた。このようにして、50時間、伝動ベルト5を走行させ耐熱耐屈曲走行疲労試験を実施した。耐熱耐屈曲走行疲労試験前の伝動ベルト5の引っ張り強さ、および耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さを測定し、数1の式より試験前に対する試験後の伝動ベルト5の引っ張り強さ保持率を求め、実施例1〜6、比較例1〜4の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いて作製した伝動ベルト5の耐熱耐屈曲走行疲労性能、即ち、耐熱性を比較評価した。
(伸び測定)
耐熱耐屈曲走行疲労試験後の長さを測定し、耐熱耐屈曲走行疲労試験前の伝動ベルト5の長さとの差を伸びとした。具体的には、300時間走行後の伝動ベルト5の長さを測定し、走行前の伝動ベルト5の長さとの差を伸びとした。各々の伝動ベルト5の伸びの測定結果を表6に示す。
表6に示すように、実施例1〜3に示すモノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物とした1次被覆用塗布液をストランドに塗布後乾燥させた1次被覆層およびさらなる2次被覆層を有し、2次被覆層の組成物がクロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドと、p−ジニトソロベンゼンおよびカーボンブラックからなる高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5の36時間走行試験後の伸び保持率は、実施例1が0.02mm、実施例2が0.06mm、実施例3が0.04mmであった。
また、実施例4〜6に示すフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物とした1次被覆用塗布液をストランドに塗布後乾燥させた1次被覆層およびさらなる2次被覆層を有し、2次被覆層の組成物がクロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミドと、p−ジニトソロベンゼンおよびカーボンブラックからなる高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5の36時間走行試験後の伸び保持率は、実施例4が0.01m、実施例5が0.03mm、実施例6が0.02mmであった。
実施例1〜3に対し、実施例4〜6が少ない伸びを示した。このように、実施例4〜6において、屈曲走行試験結果、寸法安定性、耐熱性、耐水性、耐油性をバランスよく併せ持つ伝動ベルトが得られた。
それに対して、比較例1〜4に示す本発明の範疇にない伝動ベルト5は、比較例1が0.26mm、比較例2が0.20mm、比較例3が0.25mm、比較例4が0.24mmであり、伝動ベルトの屈曲走行における寸法安定性に劣っていた。
1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を含有させた実施例1〜6の伝動ベルトの伸びが少なく、1次被覆層にアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)を使用しない比較例1〜6の伝動ベルトの伸びが大きかったことは、1次被覆層に含有させたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)により、1次被覆層の3次元架橋が進行したことで、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6と母材ゴムであるHNBRの初期接着力の持続性が増した効果によると思える。
(引っ張り強さ保持率)
各々の伝動ベルトの耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率を表7に示す。
表7に示すように、1次被覆層に、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリルブタジエン(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を用い、2次被覆層に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を用いた実施例1〜3の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用い作製した伝動ベルト1の耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率は、各々101%、103%、105%であった。
1次被覆層に、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリルブタジエン(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を用い、2次被覆層に、クロロスルホン化ポリエチレン(D)とビスアリルナジイミド(E)を用いた実施例4〜6の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用い作製した伝動ベルト1の耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率は、各々106%、106%、105%であった。
それに対して、本発明の範疇に属さない比較例1〜4の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5の、耐熱耐屈曲走行疲労試験後の引っ張り強さ保持率は、各々95%、97%、98%、95%であった。比較例1〜4の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5に対して、実施例1〜6の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5は引っ張り強さ保持率が高く、優れた耐熱性を有する。
実施例1〜6の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6において、引っ張り強さ保持率が100%を超えたことは、1次被覆層に含有させたアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)により、1次被覆層の3次元架橋が加熱により進行したことによる効果と思える。
この耐熱耐屈曲走行疲労試験の結果より、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)と、クロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物としたガラス繊維被覆用塗布液を塗布後乾燥させてなる1次被覆層を有し、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミド、p−ジニトソロベンゼンおよびカーボンブラックを組成物とした、さらなる2次被覆層を有した実施例1〜3の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5は、優れた耐熱耐屈曲性を有することが判った。
また、1次被覆層に、モノヒドロキシベンセンとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したモノヒドロキシベンセン−ホルムアルデヒド縮合物またはクロロフェノールとホルムアルデヒドを水中で縮合反応させて生成したクロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれるフェノール類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(B)としてのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合体と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(C)と、とクロロスルホン化ポリエチレン(D)を組成物としたガラス被覆用塗布液を塗布乾燥させてなる1次被覆層を有し、クロロスルホン化ポリエチレン(D)と、ビスアリルナジイミド(E)に属するN−N'−ヘキサメチレンジアリルナジイミド、p−ジニトソロベンゼンおよびカーボンブラックを組成物とした、さらなる2次被覆層を有した実施例4〜6の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用いた伝動ベルト5は、さらに優れた耐熱耐屈曲性を有することが判った。
実施例1〜6の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6はHNBRとの優れた接着強さを有し、実施例1〜6の本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維6を用い作製した伝動ベルトは、優れた寸法安定性、耐熱性、耐水性、耐油性を有することより、高温多湿下で長時間使用するタイミングベルト等の自動車用伝動ベルトの芯線として使用するに好適である。特に、実施例4〜6に示す伝動ベルトは、寸法安定性、耐熱性、耐水性、耐油性を高いレベルでバランスよく有し、極めて耐久性に優れたタイミングベルトと成りえる。
本発明により、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維と前記母材ゴムとしてのHNBRの接着に対し、好ましい接着強さを与える高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用塗布液を得て、さらに、高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を、架橋されたHNBRに埋設し伝動ベルトとした際に屈曲走行における優れた寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性を与え、伝動ベルトに寸法安定性、耐熱性、耐水性および耐油性を併せ持たせた。よって、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるための伝動ベルトに補強用として埋設して使用される。特にタイミングベルト等の自動車用伝動ベルトに使用するために、HNBRに埋め込み、自動車用伝動ベルトとした際。高温多湿下あるいはオイル存在下における過酷な屈曲走行後も引っ張り強さの維持および寸法安定性を与える。
本発明のSガラス等の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、通常のEガラスを用いたゴム補強用ガラス繊維に比べて引っ張り強さに格段に優れ弾性率が高いことで、高速で大きな過重負荷を受けつつ走行する伝動ベルトに好適に用いられる。特に、軽自動車、自動二輪車、原動機付自転車等の4サイクルエンジンにおけるタイミングベルトに補強用として埋設して使用した際に、高回転に伴う屈曲走行に耐える。普通乗用車以上の排気量の大きな車種に比較して、軽自動車、オートバイ等の小排気量の4サイクルエンジンは、走行中、高回転で使用されることが多くタイミングベルトには高速屈曲走行が要求される、また小排気量の4サイクルエンジンはエンジンの大きさに連れ、タイミングベルトが細く、ゴム補強用ガラス繊維も細くせざるを得なくなり、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、小排気量の4サイクルエンジンのタイミングベルト用として好適に使用される。金属性のタイミングチェーンに比較して、軽量なことよりフリクションロスが少なくなり、燃費向上に繋がる。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトは、高強度ガラス繊維フィラメントの引っ張り強さが大きく弾性率が高いことで、例えば、エンジンの自動変速装置用のスチールベルト、自動二輪車、原動機付自転車等の駆動チェーンの代替に用いられる可能性がある。スチールベルト、金属チェーンより軽量なことより、燃費向上に繋がる。
また、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維は、ラジアルタイヤのブレーカーコードに、スチールワイヤーの変わりに用いられる可能性がある。また、トレッド面下のカーカスコード、ビート部のビートワイヤーとして用いられる可能性がある。タイヤには、空気圧および車重以外に、走行中には路面の凹凸による大きな衝撃が加わる、よって、これらコードには、引っ張り強さが強いことに加え耐衝撃性が要求され、スチールワイヤーが用いられているが、スチールワイヤーに比較して、本発明の高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維の方が軽く、衝撃に耐えられるとすれば燃費向上に繋がる。
MIT屈曲試験の試験片の模式図である。
MIT屈曲試験の試験状況の模式図である。
ゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムに埋設させて作製した伝動ベルトを切断した際の斜視図である。
伝動ベルトの耐水走行疲労性能試験機の概略側面図である。
伝動ベルトの耐熱耐屈曲走行疲労性能試験機の概略側面図である。
符号の説明
1 試験片
2 HNBR
3 ゴム補強用ガラス繊維
4 錘
5 伝動ベルト
5A 突起部
5B 背部
6 ゴム補強用ガラス繊維
7 駆動プーリー(駆動モーターに連結)
8 従動プーリー
9 従動プーリー(発電機に連結)
10 アイドラ−
11 水
12 駆動プーリー
13、13´、13〃 従動プーリー
14 アイドラ−