JP5086559B2 - 反応容器及び反応容器処理装置 - Google Patents

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Description

本発明は化学反応を初め、現場において各種自動解析、例えば遺伝子解析の研究や臨床を行なうのに適する反応容器と、それを用いて人間を初めとする動物や植物のゲノムDNAの多型、例えばSNP(一塩基多型)を検出するための反応容器処理装置に関するものである。
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行しやすいか否かを決定するために、患者から核酸サンプルを採取し、該サンプル中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献1参照。)。
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の診断のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1429(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、flt−1遺伝子中の多型性を参照することにより、そのヒトの体質を決定する(特許文献2参照。)。
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
比較的に少量のゲノムDNAを用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行なうために、少なくとも一つの一塩基多型部位を含む複数の塩基配列を、ゲノムDNA及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ(登録商標)法又はタックマン(登録商標)PCR法を用いる(特許文献3参照。)。
生化学的分析や通常の化学分析に使用する小型の反応装置としては、マイクロマルチチャンバ装置が使用されている。そのような装置としては、例えば平板状の基板表面に複数のウエルを形成したマイクロタイタープレートなどのマイクロウエル反応プレートが用いられている。
核酸検出用容器としては、同一容器内に、特定の核酸を増幅させる核酸増幅部位と、予め該核酸の検出用プローブが固定化された核酸検出部位を備えた容器が提案されている(特許文献5,6参照)。
特表2002−533096号公報 特開2001−299366号公報 特開2002−300894号公報 特許第3452717号公報 特開2005−318822号公報 特開2005−333882号公報
従来のマイクロウエル反応プレートや核酸検出用容器は、使用時には反応プレートの上面は大気に開放された状態となる。そのため、サンプルに外部から異物が進入する虞があるし、逆に反応生成物が外部の環境を汚染することもありうる。
本発明の第1の目的は、遺伝子多型検出を自動化するのに適し、反応プレートの外部からの異物の進入や、外部への環境汚染を防ぐことができる反応容器を提供することを目的とするものである。
本発明の第2の目的は、本発明の反応容器を用いて遺伝子多型検出を自動化する装置を提供することである。
本発明の第3の目的は、本発明による遺伝子多型検出結果を用いて病気罹患率の診断や、投与薬剤の種類と効果及び副作用との関係などの診断を自動的に行なうための装置を提供することである。
本発明の遺伝子多型解析用反応容器は、表面側に、複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容しフィルムで封止されたタイピング試薬収容部、反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容しフィルムで封止された不揮発性液体収容部、及び前記複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を少なくとも備えた反応プレートと、反応プレートの表面側の上方に配置された分注チップと、反応プレート上の表面側の上部空間を覆うとともに、前記分注チップをその先端部が前記空間の内側、基端部が外側になるようにして移動可能に支持しているカバーと、を備えている。
反応プレート上の表面側の空間はカバーで覆われて外部と遮断されており、サンプルに対する反応はその空間内で行なわれる。反応後の反応生成物の検知も反応生成物をそのカバーの外に出すことなく、反応生成物がカバー内にある状態で行なわれる。検知後は反応生成物がカバー内にある状態のままでこの反応容器が廃棄処理される。すなわち、この反応容器は使い捨て可能である。
この反応容器の使用に際し、何らかの方法によりサンプルをカバーで覆われた空間内に導入しなければならない。その導入方法は特に限定されるものではないが、例えば、カバーの一部に密閉可能に設けられた開口を介して外部からその空間内にサンプルを注入するサンプル導入部をさらに設けておいてもよい。
サンプルの反応に使用される試薬も何らかの方法によりカバーで覆われた空間内に導入しなければならず、その方法も特に限定されるものではないが、例えばサンプルとともにサンプル導入部から導入するようにしてもよく、別の容器に入れて導入するようにしてもよく、又は予め反応プレートに収容しておいてもよい。反応プレートに試薬を予め収容しておく形態では、反応プレートはその表面側に試薬を収容しフィルムで封止された試薬収容部も備えているものとなる。試薬収容部を被って試薬を封止しているフィルムは分注チップで貫通可能なものである。
フィルムで封止された試薬や不揮発性液体は、本発明の遺伝子多型解析用反応容器処理装置内においてそのフィルムを貫通して分注チップを挿入することにより分注チップに吸入し、反応部などの他の場所に移送することができる。
この遺伝子多型解析用反応容器の第1の形態は、生体サンプルとして遺伝子増幅反応がなされたものをこの反応容器に注入して遺伝子多型を検出する反応容器である。その第1の形態の反応容器は、試薬収容部として複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容したタイピング試薬収容部を含み、複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を含んで遺伝子多型解析用試薬キットを構成しているものである。
プローブ配置部も分注チップで貫通可能なフィルムで封止されていることが好ましい。
遺伝子多型検出用反応容器の第2の形態は、上記の第1の形態の反応用試薬キットに、試薬収容部として複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容した遺伝子増幅試薬収容部をさらに含み、遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部をさらに含んだものである。
第2の形態の遺伝子多型解析用反応容器において、増幅反応部の形状の一例として従来のようなウエル形状のものとすることができる。また、増幅反応部の他の形状として、液分注用ポートは分注チップの先端形状に対応した開口形状をもち、分注チップの先端に密着できる素材で構成されているものとすることもできる。分注チップの先端に密着できるそのような素材の典型的なものは弾性素材であるが、それに限らない。増幅反応部は温度を変化させるサイクルを繰り返すことから基板の熱伝導性が高い方が好ましい。そのために、増幅反応部の基板肉厚が他の部分よりも薄くなっていることが好ましい。
また、増幅反応部は反応液を収容する流路をもち、その流路は反応プレートの裏面側に突出して外部の熱源により温度制御されるようになっているものであってもよい。
ここで、多型部位とプライマーの関係を示すと、1つの多型部位を増幅するためにはその多型部位をはさんで結合する一対のプライマーが必要になる。対象となる生体サンプルには複数種類の多型部位が存在するので、それらの多型部位が互いに離れた位置に存在する場合には多型部位の種類の数の2倍の種類のプライマーが必要になる。しかし、2つの多型部位が接近している場合には、それらの多型部位それぞれをはさんでプライマーを結合させて増幅することも、またそれらの2つの多型部位の間にはプライマーを結合させず、2つの多型部位の配列の両側にのみプライマーを結合させて増幅することもできる。したがって、必要なプライマーの種類は必ずしも多型部位の種類の数の2倍になるわけではない。本発明における「複数の多型部位それぞれをはさんで結合する複数のプライマー」とは一対のプライマーが1つの多型部位をはさんで結合する場合だけでなく、2又はそれ以上の多型部位をはさんで結合する場合も含めて、複数の多型部位を増幅するのに必要な種類のプライマーという意味で使用している。
本発明による多型検出の対象は特に限定されないが、例えばcDNA、ヒトを含む様々な生物の遺伝子、ウイルス及び細菌を含む様々な微生物の遺伝子などが挙げられる。したがって、これら核酸の配列をもつものを核酸増幅のための鋳型核酸とすることができる。また、これら多型検出の対象となる遺伝子としては、DNAの遺伝子であるかRNAの遺伝子であるかを問わない。
これらの遺伝子を含むサンプルも特に限定されない。すなわち、生体試料、生体由来試料、抽出核酸試料などに対して多型検出を行なうことができる。ここで、生体試料や生体由来試料は、核酸の抽出操作を行なわず、核酸包含体(例えば細胞、真菌、細菌、ウイルスなど、核酸を内部に含有する膜構造体)を維持した形態の試料である。生体試料の例としては、臓器、組織、体液、排泄物などが挙げられる。体液には、血液試料、髄液、唾液、乳などが含まれる。血液試料には、全血、血漿、血清などが含まれる。排泄物には、尿、便などが含まれる。生体由来試料は、生体試料から回収した核酸包含体である。核酸包含体の回収方法は特に限定されないが、遠心・超遠心操作、ポリエチレングリコールなどの共沈剤、吸着担体などを用いた方法が挙げられる。抽出核酸試料は、核酸の抽出操作を行なった試料であり、抽出後さらに核酸を精製した試料であってもよい。抽出方法としては、酵素、界面活性剤、カオトロピック剤などを用いた方法が挙げられる。精製方法としては、フェノール/クロロホルム、イオン交換樹脂、ガラスフィルター、ガラスビーズ、磁気ビーズ、タンパク凝集作用を有する試薬などを用いた方法が挙げられる。
本発明で検出できる多型は、特に限定されず、SNP及び複数ヌクレオチドからなる配列にわたる多型の両方を含む。本発明においては、多型にはさらに変異も含む。具体的には、本発明で検出できる多型の例としては、SNP、挿入多型、欠失多型、反復配列多型などが挙げられる。
SNPのタイピングには増幅工程に入る段階でゲノムDNAの調整が必須であり、そこに手間とコストがかかる。DNAを増幅するPCR法だけに着目すれば、前処理なしで血液などのサンプルから直接PCR反応を行なわせる方法も提案されている。そこでは、遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法において、遺伝子を含むサンプル中の遺伝子包含体もしくは遺伝子を含むサンプルそのものを遺伝子増幅反応液に添加して、添加後の該反応液のpHが8.5−9.5(25℃)で遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する(特許文献4参照。)。
既に構築されているタイピングシステムは、タイピングしようとする複数のSNP領域をPCR法で増幅するために、最初に採取するDNA量は少なくてすむが、PCR法で増幅する前に予め生体サンプルからDNAを抽出しておくという前処理が必要である。そのためにその前処理に時間と手間がかかる。
直接PCR法とタイピング方法を結びつけたときに、タイピングを目的とする複数のSNP部位について同時に増幅を行なうような自動化システムはこれまで構築されていなかった。
タイピング工程はインベーダ(登録商標)法やタックマン(登録商標)PCR法を使用することができる。その場合、タイピング試薬はインベーダ(登録商標)試薬又はタックマン(登録商標)PCR試薬である。
図15は本発明の反応容器を遺伝子多型解析用試薬キットとして使用して遺伝子多型を検出する際の検出方法を概略的に示したものである。ここでは、増幅工程にはPCR法、タイピング工程にはインベーダ(登録商標)法を使用するものとして説明する。
PCR工程では血液などの生体サンプル2にPCR反応試薬4を添加するか、逆にPCR反応試薬4に生体サンプル2を添加する。
PCR反応試薬4は予め調整されたものであり、測定しようとするSNP部位のための複数のプライマーを含み、それにpHを調整するためのpH緩衝液、4種類のデオキシリボヌクレオチド類、熱安定性合成酵素、及びMgCl2、KCl等の塩類などの必要な試薬が添加されている。その他に、界面活性剤や蛋白などの物質を必要に応じて添加することができる。本発明で用いることのある増幅工程のPCR法は、目的とする複数のSNP部位を同時に増幅させるものである。生体サンプルは核酸抽出操作を施しているものであってもよく、核酸抽出操作を施していないものであってもよい。核酸抽出操作を施していない生体サンプルから直接PCR法によりそれらのSNP部位を含む複数のゲノムDNAを増幅させる場合には、それらのSNP部位のための複数のプライマーを含む遺伝子増幅反応試薬を生体サンプルに作用させ、サンプル2と混合したときに25℃でのpHが8.5−9.5となる条件下でPCR反応を起こさせる。
pH緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸の組合せのほか、種々のpH緩衝液を使用することができる。pH調整された緩衝液は、PCR反応試薬の中で10mMから100mMの間の濃度で使用するのが好ましい。
プライマーはPCR反応によるDNA合成の開始点として働くオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは合成したものであってもよく、生物界から単離したものであってもよい。
合成酵素はプライマー付加によるDNA合成用の酵素であり、化学合成系も含む。適切な合成酵素としては、E.coliのDNAポリメラーゼI、E.coliのDNAポリメラーゼのクレノーフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、TaqDNAポリメラーゼ、T.litoralis DNAポリメラーゼ、TthDNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、Hot Start Taq ポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、EX TaqDNAポリメラーゼ、逆転写酵素などがあるが、これらに限定されるものではない。「熱安定性」は、高温下、好ましくは65−95℃でもその活性を保持する化合物の性質を意味する。
PCR工程では、生体サンプル2とPCR反応試薬4との混合液を所定の温度サイクルに従ってPCR反応を行なわせる。PCR温度サイクルは、変性、プライマー付着(アニーリング)及びプライマー伸長の3工程を含み、そのサイクルを繰り返すことによりDNAを増幅させる。各工程の一例は、変性工程が94℃で1分間、プライマー付着工程が55℃で1分間、プライマー伸長が72℃で1分間である。生体サンプルはゲノム抽出操作を施したものであってもよいが、ここではゲノム抽出操作を施していないものを使用する。ゲノム抽出操作を施していない生体サンプルであっても、PCR温度サイクルの高温下でDNAが血球や細胞から遊離し、PCR反応に必要な試薬がDNAに接触して反応が進む。
PCR反応終了後、タイピング試薬としてインベーダ(登録商標)試薬6が添加される。インベーダ(登録商標)試薬6には蛍光を発するフレット(FRET)プローブ及びクリベース(Cleavase:構造特異的DNA分解酵素)が含まれている。フレットプローブはゲノムDNAと全く無関係な配列をもつ蛍光標識オリゴであり、SNPの種類によらず配列は共通であることが多い。
次に、インベーダ(登録商標)試薬6が添加された反応液を複数のプローブ配置部8に添加して反応をさせる。各プローブ配置部8には、複数のSNP部位のそれぞれに対応してインベーダ(登録商標)プローブとレポータープローブが個別に保持されており、反応液がインベーダ(登録商標)プローブと反応し、そのレポータープローブに対応するSNPが存在すれば蛍光を発する。
インベーダ(登録商標)法については、特許文献3の段落[0032]から[0034]に詳しく記載されている。
各レポータープローブはそれに対応したSNPの塩基に応じて2種類のものを用意すれば、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかを判別することができる。
タイピング工程で使用するインベーダ(登録商標)法は、アレル特異的オリゴとタイピング対象のSNPを含むDNAとをハイブリダイゼーションすることによりSNP部位をタイピングする方法であり、タイピング対象のSNPを含むDNAと、タイピング対象のSNPのそれぞれのアレルに特異的な2種類のレポータープローブ及び1種類のインベーダ(登録商標)プローブと、DNAの構造を認識して切断するという特殊なエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素とを用いる方法である(特許文献3参照。)。
本発明の遺伝子多型解析用反応容器において、前記フィルムはノズルで貫通可能なものであることが好ましい。
プローブ配置部は不揮発性液体を保持できる凹部となっていることが好ましい。
同じ基板に凹部として形成され、サンプルを注入するためのサンプル注入部をさらに備えていてもよい。
プローブ配置部は使用前は剥離可能なシール材で被われていることが好ましい。
タイピング試薬はインベーダ(登録商標)試薬又はタックマン(登録商標)PCR試薬である。
分注チップはシリンジを備えずに分注ノズルの先端に取り付けられるものであってもよい。その場合には分注動作のためにはノズル機構が別途必要になる。そこで、そのようなノズル機構を不要にすることを目的として、本発明の好ましい形態では、分注チップはカバーの外側から操作するシリンジを備えており、そのシリンジの操作により分注動作を行なうものとすることができる。分注チップがシリンジを備えている場合にはシリンジが分注チップの通路を封止しているので、カバーで覆われた空間の内外が分注チップの通路を介して通じることがない。
分注チップがシリンジを備えていないものである場合には、分注動作時にはノズル機構により密閉状態とすることができるが、反応時や検出時など、分注チップが使用されていないときは分注チップを介して外部空間と連通する。そのような場合でも外部から異物が侵入したり、サンプルやその反応生成物が外部に出るのを阻止できるようにするための好ましい形態として、分注チップが先端部の内部にフィルタを備えているものとすることができる。
反応プレートのプローブ配置部は底部から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されていることが好ましい。
分注チップを保持し移動可能に支持する構造の一例は、ダイアフラムやフィルムのように、気密性をもち柔軟性のある素材によって分注チップを保持し移動可能に支持する構造である。
分注チップを保持し移動可能に支持する構造の他の例は、カバーが反応プレートと一体化されたカバー本体と、反応プレートの表面側の上部に配置されカバー本体に対してシール材により気密を保って水平面内で摺動可能に保持されたカバープレートとからなるものとし、分注チップがそのカバープレートに他のシール材により気密を保って垂直方向に摺動可能に保持されている構造である。
本発明の遺伝子多型解析用反応容器を用いて測定されるサンプルは、生体試料、生体由来試料など種々のものを挙げることができ、特に限定されない。
第2の目的を達成するための本発明の反応容器処理装置は、本発明の遺伝子多型解析用反応容器を装着する反応容器装着部と、図14に示されるように、その反応容器に取りつけられた分注チップ20による吸引及び吐出のための機構を備えて液を移送して分注する分注部36と、反応容器のプローブ配置部の温度をサンプルとタイピング試薬との反応液をプローブと反応させる温度に制御するタイピング反応温度調節部83aを少なくとも含む温度調節部と、プローブ配置部に励起光を照射して蛍光を検出する蛍光検出部38と、分注部36の分注動作、タイピング反応温度調節部83aの温度制御及び蛍光検出部38の検出動作を少なくとも制御する制御部84と、を備えている。
タイピング反応としてインベーダ(登録商標)反応を使用する場合は、タイピング反応温度調節部38aはインベーダ(登録商標)反応のための温度調節部となる。
この反応容器処理装置の他の形態は、反応容器として複数の多型部位それぞれをはさんで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容した遺伝子増幅試薬収容部と、遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部をさらに含んだものを使用する。そして、図14に示されるように、温度調節部として増幅反応部の温度をサンプルと遺伝子増幅試薬との反応液内でDNAを増幅させる遺伝子増幅のための温度に制御する増幅反応温度調節部83bをさらに含み、制御部84は増幅反応温度調節部83bの温度制御も行なうものとなる。
遺伝子増幅反応としてPCR反応を使用する場合は、増幅反応温度調節部83bはPCR反応のための温度サイクル用の温度調節部となる。
制御部84を外部から操作したり検査結果を表示したりするために、制御部84にパーソナルコンピュータ(PC)86を接続してもよい。
反応容器の液体収容部がフィルムで封止されている場合、そのフィルムで封止された状態で反応容器処理装置に装着されるときには、分注チップによりそのフィルムを貫通して液の吸入を行なうものとなる。
本発明の遺伝子多型解析用反応容器は、反応プレートの表面側の空間がカバーで覆われた状態で使用されるので、外部からサンプルに異物が侵入するのを阻止することができるとともに、反応生成物が外部環境を汚染するのも阻止することができるとともに、反応プレートに反応部と反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容しているので、反応部で反応液の表面を不揮発性液体で被うことにより、反応液が反応部で加熱されても反応液が蒸発してしまう事態をさけることができる。
また、タイピング試薬収容部、不揮発性液体収容部及びプローブ配置部を一体的に備えているので、複数の多型部位が増幅されたDNAサンプルについてそれらの多型部位を同時にタイピングすることができ、多型のタイピングを簡単な工程で短時間に行なうことができる。プローブ配置部が分注チップで貫通可能なフィルムで封止されておれば、分注チップによりそのフィルムを貫通して反応液をプローブ配置部に分注することができる。
また、この遺伝子多型解析用反応容器の他の形態は、さらに遺伝子増幅試薬収容部と増幅反応部まで一体的に備えているので、生体サンプルから目的とする複数の多型部位を同時に増幅させた後に、それらの多型部位を同時にタイピングすることができ、多型のタイピングを簡単な工程で短時間に行なうことができる。
試薬や不揮発性液体を封止しているフィルムを分注チップで貫通可能なものとしておけば、反応容器処理装置内での液の移送が容易になる。
プローブ配置部が凹部となっていて不揮発性液体を保持できるようになっておれば、プローブ配置部での反応液の蒸発をより効果的に防ぐことができる。
増幅反応部を備えている遺伝子多型解析用反応容器においては、増幅反応部の液分注用ポートを分注ノズルの先端形状に対応した開口形状にして分注ノズルの先端に密着できる素材で構成しておけば、増幅反応部への混合液の注入動作、及び増幅反応部からの反応液の回収を容易に行なうことができるようになる。
サンプル導入部をさらに備えている場合には、カバーで覆われた空間内へのサンプルの導入操作が容易になる。
試薬を予め反応プレートに収容しておくので、この反応容器を処理する装置の側に試薬を用意する必要がなくなるため、処理装置が簡便なものですむようになる。
分注チップがカバーの外側から操作するシリンジを備えているものとすれば、ノズル機構を別途設ける必要がなくなる。
反応プレートが遺伝子増幅部をさらに備えている場合には、測定対象の遺伝子を微量にしか含んでいないサンプルでもPCR法やLAMP法など遺伝子増幅反応によって遺伝子を増幅して分析精度を高めることができるようになる。
分注チップが先端部の内部にフィルタを備えているものとすれば、分注チップがシリンジを備えていない場合でも、分注チップを通して外部から異物が侵入するのを阻止することができるとともに、分注チップを通して反応生成物が外部環境を汚染するのも阻止することができる。
反応プレートの表面側の空間がカバーで覆われていない場合には、外部からサンプルに他のDNAなどが侵入したり、他のサンプルを汚染したりする問題が生じる。特にPCR反応などの遺伝子増幅反応を伴なう場合には、外部から侵入した他のDNAも増幅されてしまい、また増幅されて高濃度になった増幅反応産物により他のサンプルを汚染する程度も大きくなるために、汚染による問題がより顕著になる。しかし、本発明により、反応プレートの表面側の空間がカバーで覆われていることにより、遺伝子増幅反応も閉じた空間内で行ない、分析終了後はその空間に閉じたまま廃棄処理するので、遺伝子増幅反応を伴なう場合であっても、外部からの汚染を阻止することができるとともに、他のサンプルを汚染する虞もなくなる。
分注チップを保持し移動可能に支持する構造を、気密性をもち柔軟性のある素材によって実現すれば、分注チップを保持し移動可能に支持する構造を簡単な構成で実現することができる。
本発明の反応容器処理装置では、分注チップにより液の移送を行なうので、簡単な機構で分注動作を行なうことができる。
図1は一実施例の反応容器を表わしたものであり、(A)は垂直断面図、(B)は反応プレート5と分注チップ20を示す平面図、(C)は内部にフィルタを備えた分注チップ20aを示す断面図である。図2は同実施例の外観斜視図であり、(A)は反応容器1を示す斜視図であり、(B)は未使用状態の反応容器が包装部材3で包装された状態を示している。包装部材3はアルミニウム箔、アルミニウムとPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの樹脂フィルムとの積層膜などであり、手で引っ張って容易に切り裂いて開放できるように、包装部材3の一部には切裂き片3aが設けられている。
この反応容器は生体サンプルを注入し、PCR反応によるDNAの増幅と、インベーダ(登録商標)反応によるSNP検出を行なうものである。図1に示されるように、平板状の基板110の表面側に、サンプル注入部112、タイピング試薬収容部114、ミネラルオイル収容部116、遺伝子増幅試薬収容部130、PCR終了液注入部131及び複数のプローブ配置部118が凹部として形成されており、増幅反応部132の出入口となるポート134a,134bが開口として形成されている。
反応液よりも比重の低い不揮発性液体としては、ミネラルオイル(鉱油)、植物油、動物油、シリコーンオイル又はジフェニルエーテルなどを用いることができる。ミネラルオイルはペトロラタムから蒸留により得られる液体の炭化水素混合物であり、流動パラフィン、流動ペトロラタム、ホワイト油などとも呼ばれ、低比重の軽油も含む。動物油としてはタラの肝油、オヒョウ油、ニシン油、オレンジラフィー油又はサメの肝油などを用いることができる。また、植物油としてはカノーラ油、扁桃油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油などを用いることができる。実施例では、不揮発性液体としてミネラルオイルを使用する。そのため、不揮発性液体収容部をミネラルオイル収容部と称す。
サンプル注入部112は生体サンプルが注入されるものであり、PCR終了液注入部131は増幅反応部132でのPCR反応終了液が注入されるものである。サンプル注入部112とPCR終了液注入部131は使用前の状態では空の状態で提供される。
タイピング試薬収容部114は複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を10〜300μL収容しており、ミネラルオイル収容部116は反応液の蒸発を防ぐためのミネラルオイルを20〜300μL収容している。遺伝子増幅試薬収容部130は複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含むPCR反応試薬を2〜300μL収容している。
サンプル注入部112、タイピング試薬収容部114、ミネラルオイル収容部116、遺伝子増幅試薬収容部130及びPCR終了液注入部131は、分注チップ20で貫通可能なフィルム120で封止されている。そのようなフィルム120は、例えばアルミニウム箔、アルミニウムとPETフィルムなどの樹脂フィルムとの積層膜などであり、容易に剥がれないようにヒートシールや接着により貼りつけられている。
プローブ配置部118は複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持しており、ミネラルオイル収容部116からのミネラルオイルが分注されたときにそのミネラルオイルを保持できる凹部となっている。各プローブ配置部118の凹部の大きさは、例えば直径が100μm〜5mm、深さが50μm〜5mmの円形である。プローブ配置部118も分注チップ20で貫通可能なフィルム120で封止されている。
基板110はプローブ配置部118において底面側から蛍光を測定するために、低自蛍光性(それ自身からの蛍光発生が少ない性質のこと)で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートやポリプロピレンなどの素材で形成されている。基板110の厚さは0.3〜4mm、好ましくは1〜2mmである。低自蛍光性の観点から基板110の厚さは薄い方が好ましい。
増幅反応部132はPCR反応試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせるものであり、この実施例では2つが用意されている。増幅反応部132は、図3に示されるように、反応液を収容する流路133をもち、その流路133は反応プレート5の基板110の裏面側に突出して、反応容器処理装置に設けられた温度調節部のヒータユニット83b1,83b2により温度制御されるようになっている。増幅反応部132の液分注用ポート134a,134bは分注チップ20の先端形状に対応した形状の開口136a,136bをもち、分注チップ20の先端に密着できるようになっている。より好ましくは、PDMS(ポリジメチルシロキサン)やシリコーンゴムなどの弾性素材で構成されている。
増幅反応部132で基板110の裏面側に突出した部分の下面には、流路133部分の熱伝導性を高めるためにアルミニウムフィルム又はアルミニウムプレート135が貼りつけられている。ヒータユニット83b1,83b2はペルチェ素子とそれにより加熱制御されるヒータプロックとからなり、増幅反応部132の流路133部分を両側面と下面から挟み込んで加熱する。
プローブ配置部118はPCR反応終了液とタイピング試薬(インベーダ(登録商標)試薬)との反応液がプローブと反応して蛍光を発するようにするための所定の反応温度に加熱される。そのために、図4に示されるように、反応プレート5の基板110の裏面側から反応容器処理装置に設けられた温度調節部のヒータユニット83aにより温度制御されるようになっている。プローブ配置部118は表面側の凹部に対応して基板110の裏面側に凹凸が形成されており、その凹凸に嵌めあうようにヒータユニット83aが凹凸形状に形成されており、そのヒータユニット83aの凹凸によりプローブ配置部118の各凹部の裏面側が覆われて加熱されることにより熱効率の向上が図られている。
反応プレート5の表面側の上部には分注チップ20が配置されている。分注チップ20はサンプル、試薬及び反応後の反応液を所定の部分に分注するものである。分注チップ20はシリンジ22を備えており、カバー24の外部からこのシリンジ22を駆動することによって分注動作を行なう。
分注チップとしては、図1(C)に示されるように、シリンジ22の代わりに内部にフィルタ23を備えている分注チップ20aでもよい。分注チップ20aの場合、フィルタ23は外部から侵入する異物を吸着してカバー24で覆われた空間に外部から異物が侵入するのを阻止し、またカバー24で覆われた空間から反応物や反応生成物が外部に放出されるのを阻止する上でより有効である。
カバー24は反応プレート5の表面側の上部空間を覆うように設けられている。カバー24は周辺部を覆うカバー本体26と、上部を覆うベローズフィルム28とからなっており、反応プレート5の表面側の空間を外部から遮断している。カバー本体26は下端部が反応プレート5に固着されているか、又はシール材を介して反応プレート5と一体として組み立てられており、剛性をもってカバー24の形状を維持している。ベローズフィルム28は柔軟性のあるダイアフラムや柔軟性のあるフィルムからなり、分注チップ20をその先端部がカバー24で覆われた空間の内側、基端部がカバー24で覆われた空間の外側になるようにして移動可能に保持している。
カバー24の素材も特に限定されるものではなく、反応プレート5の表面側の上部空間を気密を保って覆うことができるものであればよいが、この反応容器が使い捨て可能であることから、安価に入手可能な素材があることが好ましい。そのような素材として、カバー本体26には例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材、ベローズフィルム28にはナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニール、シリコーンゴムその他のゴム素材などが好ましい。
カバー本体26の一部又は基板110には使用前及び使用後の分注チップ20を保持するための保持部材30が設けられており、分注チップ20は分注時には保持部材30から取り外されて反応プレート5の表面側の上部を自由に移動できるようになる。
カバー24の外部から反応プレート5にサンプルを導入するためにカバー本体26の一部に開口31が設けられ、その開口31にはサンプル容器32が開閉可能に取りつけられている。サンプル容器32にはサンプルを注入するために上に開いた凹部が形成されている。その凹部にサンプルを注入し、カバー24の内部に位置決めすると、サンプル容器32を保持しているプレート34がカバー本体26に密着して開口31を密閉するように、プレート34の内側に粘着剤が塗布されているか、又はシール材を介してカバー本体26に挟み込まれるようになっている。したがって、開口31は密閉可能な開口となっている。
この反応容器は使い捨て可能なものであり、1つのサンプルについて分析を行なった後は反応プレート5がカバー24で覆われた状態のままでこの反応容器全体を破棄する。
反応プレート5における増幅反応部の形状が従来のようなウエル形状のものであってもよい。図5はそのような増幅反応部を備えた実施例を示したものである。
図5の実施例では、反応プレート5における増幅反応部132aがウエル形状をしている点で図1の実施例のものと異なるが、他の構成は同じである
増幅反応部132aがPCR反応試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせるものであることに変りはない。この実施例でも増幅反応部132aは2つが用意されている。増幅反応部132aは反応プレート5の基板110の表面側に開口をもつウエル形状をなし、基板110の裏面側に突出している。増幅反応を行なうときは、図6に示されるように、基板110の裏面側に突出している部分が反応容器処理装置に設けられた温度調節部のヒータユニット83cにより温度制御されるようになっている。
次に、図1の実施例の反応容器によりサンプルを分析する動作を説明する。
分析に先立ち、サンプルは開口31からサンプル容器32に注入され、その後サンプル容器32により開口31が閉じられることによってカバー本体26にサンプル容器32が固着されて、サンプルがこの反応容器のカバー24で覆われた空間内に導入された状態で外部と遮断される。
図7はサンプルが導入された状態で、分注部36が分注チップ20とシリンジ22との係合を開始する状態を示している。
まず、図8に示されるように、シリンジ駆動部であるプランジャホルダ36bが下降してシリンジ22のプランジャと係合する。
続いて、図9に示されるように、チップホルダ36aも下降して分注チップ20に圧入されて分注チップ20を保持する。
次に、図10に示されるように、分注チップ20が保持部30から取り外される。これで分注チップ20はベローズフィルム28によって外部と遮断された状態で自由に移動できるようになる。
図1(B)に戻って、この反応容器を用いた分析動作を説明する。
サンプル容器32によりこの反応容器内に導入されるサンプルは核酸抽出操作を施していない生体サンプル、例えば血液である。サンプルは核酸抽出操作を施した生体サンプルであってもよい。
分注チップ20はサンプル容器32へ移動させられてサンプルを吸入し、その後、サンプル注入部112へ移動してサンプルを0.5〜2μL注入する。
次に、分注チップ20は遺伝子増幅試薬収容部130へ移動し、フィルム120を貫通して挿入されてPCR反応試薬を吸入し、その後、サンプル注入部12へ移動して5〜20μL注入する。サンプル注入部112では分注チップ20による吸入と吐出が繰り返されることにより、サンプル液とPCR反応試薬が混合されてPCR反応液となる。
次に、そのPCR反応液が分注チップ20により増幅反応部132へ注入される。このとき、分注チップ20によりミネラルオイル、PCR反応液、ミネラルオイルの順に吸引し、分注チップ20内では上層にミネラルオイル、中間層にPCR反応液、下層にミネラルオイルの3層になる状態にする。その後、増幅反応部132へ3層の液をそのまま注入する。増幅反応部132ではPCR反応液の両端の表面がミネラルオイルで被われた状態となり、PCR反応中の反応液の蒸発を防ぐことができる。
増幅反応部132でのPCR反応終了後、PCR反応終了液がポート134a又は134aから分注チップ20により回収される。このとき、ミネラルオイル/PCR反応終了液/ミネラルオイルの3層のまま、又はミネラルオイル/PCR反応終了液の2層で回収される。ここで、回収を容易にするために、増幅反応部132の一方のポート、例えばポート134aからミネラルオイルが注入されてもよい。PCR反応終了液は他方のポート134bに押しやられる。そこで、そのポート134bに分注チップ20が挿入され、PCR反応終了液が分注チップ20に吸入される。PCR反応終了液の回収に際しては、分注チップ20にはミネラルオイル/PCR反応終了液/ミネラルオイルの3層を吸入してもよく、又はミネラルオイル/PCR反応終了液の2層を吸入してもよい。ポート134a,134bはその開口136a,136bの形状が分注チップ20の形状に合わせて形成されているので、分注チップ20がポート134a,134bに密着して液漏れを防ぎ、PCR反応液の注入と回収の操作が容易である。より好ましくは、ポート134a,134bが弾性素材で形成されていることである。
ここで、ポート134a又は134bから注入する液体はミネラルオイルに限らず、他の液体であってもよく、好ましくは比重が反応液と同じか反応液よりも低い液体である。
分注チップ20により増幅反応部132から回収された反応終了後のPCR反応終了液はPCR終了液注入部131に移送されて注入される。
次に、分注チップ20がタイピング試薬収容部114に移送され、フィルム120を貫通して挿入されてタイピング試薬を吸入し、タイピング試薬はPCR終了液注入部131に移送されて注入される。PCR終了液注入部131では分注チップ20による吸入と吐出が繰り返されることにより、PCR反応終了液とタイピング試薬が混合される。
その後、PCR反応終了液とタイピング試薬との反応液が分注チップ20に吸入され、分注チップ20がフィルム120を貫通して各プローブ配置部118へその反応液を0.5〜4μLずつ分注する。各プローブ配置部118には、また、分注チップ20によりミネラルオイル収容部116からミネラルオイルも分注される。プローブ配置部118へのミネラルオイルの分注は、プローブ配置部118への反応液の分注の前後のいずれであってもよい。各プローブ配置部118ではミネラルオイルが反応液の表面を被い、タイピング反応温度調節部での加熱を伴なうタイピング反応時間中の反応液の蒸発を防止する。
各プローブ配置部118では反応液がプローブと反応して所定のSNPがあればそのプローブから蛍光が発せられる。蛍光は基板110の裏面側から励起光を照射することにより検出する。
図5の実施例の動作は、増幅反応部132aへのPCR反応液の分注と増幅反応部132aからのPCR反応終了液の回収の仕方において図1の実施例の動作と違いがあるが、他の動作は同じである。
図5の実施例においてもPCR反応液は分注チップ20により増幅反応部132aへ注入される。このとき、PCR反応中の反応液の蒸発を防ぐために、増幅反応部132aではPCR反応液の表面をミネラルオイルの層が被うように、分注チップ20によりミネラルオイルとPCR反応液を分注する。増幅反応部132でのPCR反応終了後、PCR反応終了液が分注チップ20により回収される。PCR反応終了液のみを回収してもよく、PCR反応終了液をミネラルオイルとともに回収してもよい。増幅反応部132aはウエル形状で上方に向かって開口しているので、分注チップ20による増幅反応部132aへのPCR反応液の分注も、増幅反応部132aからのPCR反応終了液の回収も、図1の実施例のものよりも容易である。増幅反応部132aからPCR反応終了液を回収した後の動作は図1の実施例と同じである。
以下、各反応試薬の組成を示して、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
PCR反応試薬は既知のものであり、例えば特許文献3の段落[0046]に記載されているような、プライマー、DNAポリメラーゼ及びTaqStart (CLONTECH Laboratories社製)を含む反応試薬を使用することができる。また、PCR反応試薬にはAmpDirect(島津製作所製)が混入されていてもよい。プライマーは、例えば、特許文献3の表1に記載されているSNP ID1〜20、配列番号を1〜40などを使用することができる。
タイピング試薬としてインベーダ(登録商標)試薬を使用する。そのインベーダ(登録商標)試薬としては、インベーダ(登録商標)アッセイキット(Third Wave Technology社製)を使用する。例えば、シグナルバッファー、フレットプローブ、構造特異的DNA分解酵素及びアレル特異的プローブを特許文献3の段落[0046]に記載されているような濃度に調製されたものである。
上記の実施例では反応プレート5は試薬収容部114や130を備えているが、反応プレート5は試薬収容部114や130を備えないものとすることもできる。その場合、試薬はサンプルとともにサンプル容器32に注入してこの反応容器内に導入したり、又は図示していない別の容器に入れてこの反応容器内に導入したりするように使用することができる。
図11はカバーの構造が異なる他の実施例を表わしたものである。分注チップ20を移動可能に支持し、反応プレート5の上部を覆うためのカバーの一部が、図1や図5の実施例ではベローズフィルム28であったのに対し、図11の実施例では柔軟に変形するフィルム状の素材28aになっている点で異なる。フィルム状の素材28aとしては、ベローズフィルム28と同様に、ナイロン(登録商標)、ポリ塩化ビニール、シリコーンゴムその他のゴム素材などが好ましい。
また、サンプル容器として図1や図5の実施例ではその一辺がカバー本体26に回動可能に支持されているのに対し、図11の実施例におけるサンプル容器32aは、カバー本体26に対しスライド可能に取りつけられている点で異なる。このようなサンプル容器32aにおいても、サンプル容器32aはカバー本体26から外部に引き出すことによりサンプル容器32aに試料を分注することができる。また、サンプル容器32aのプレート34の内側に粘着剤が塗布されており、サンプル容器32aをカバー本体26の内部に押し込むことによりプレート34の内側で開口31を密閉したり、シール材により開口31を密閉したりすることができる点は図1や図5の実施例のものと同じである。
図12は本発明による反応容器を処理する処理装置の一例の内部を概略的に示した斜視図である。
80は上記の実施例に示される反応容器を表わしている。反応容器80は反応容器装着部であるテーブル82上に装着される。テーブル82は反応容器80の下面側に開口をもち、テーブル82の下部には反応容器82のプローブ配置部118での反応生成物を光学的に検出する検出部38が配置されている。反応容器82の温度制御を行なう温調(温度調節)ユニット83が概略的に示されている。ここでは反応容器80の側方に配置されているように描かれているが、実際には温調ユニット83は図3に示されているような増幅反応部132の流路133部分を両側面と下面から挟み込んで加熱するヒータユニット83b1,83b2又は図6に示されているような増幅反応部132aの底部を包み込んで加熱するヒータユニット83cと、図4に示されるようなプローブ配置部118を加熱するヒータユニット83aを含んでおり、これらは反応容器の下面側に配置されるものである。
テーブル82は前後方向(X方向)に移動し、一方、検出部38はそれに直交する横方向(Y方向)に移動するように支持されている。
テーブル82の近くには分注チップ20を駆動する分注部36がY方向とZ方向に移動可能に取りつけられている。分注部36は、図4に示されているように、分注チップ20の基端部と係合して分注チップ20を保持するチップ保持部36aと、分注チップ20に設けられたシリンジ22のプランジャと係合してシリンジを駆動するシリンジ駆動部36bを同軸上に備えており、分注チップ20の移動とシリンジ22の駆動の両方を行なうことができるものである。
図13は検出部38を詳細に示したものである。検出部38は励起光源として473nmのレーザ光を発するレーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)92を備え、そのレーザ光を反応容器の反応プレート5のプローブ配置部118の底面に集光して照射する一対のレンズ94,96を備えている。レンズ94はレーザダイオード92からのレーザ光を集光して平行光にするものであり、レンズ96は平行にされたレーザ光を反応プレート5の底面に収束させて照射する対物レンズである。対物レンズ96はまた、反応プレート5のプローブ配置部118から発生する蛍光を集光するレンズとしても作用する。一対のレンズ94,96の間にはダイクロイックミラー98が設けられており、ダイクロイックミラー98は励起光を透過させ、蛍光を反射させるように波長特性が設定されている。ダイクロイックミラー98の反射光(蛍光)の光路上にはさらにダイクロイックミラー100が配置されている。ダイクロイックミラー100は525nmの光を反射し605nmの光を透過するように波長特性が設定されている。ダイクロイックミラー100による反射光の光路上には525nmの蛍光を検出するようにレンズ102と光検出器104が配置され、ダイクロイックミラー100による透過光の光路上には605nmの蛍光を検出するようにレンズ106と光検出器108が配置されている。この2つの検出器104,108による2種類の蛍光検出により、各プローブ配置位置に固定されたインベーダ(登録商標)プローブに対応したSNPの有無と、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかが検知される。標識蛍光体としては、例えばFAM、ROX、VIC、TAMRA、Redmond Redなどを使用することができる。
図13の検出部38は1光源による励起光で励起し、2波長の蛍光を測定するように構成されているが、検出部38としては2波長の蛍光測定のために異なる励起波長で励起できるように2光源を使用するように構成してもよい。
この反応容器処理装置の制御系は図14に示されたものである。テーブル82に装着された反応容器80に対する処理動作を制御するために、専用のコンピュータ(CPU)又は汎用のパーソナルコンピュータからなる制御部84が設けられている。制御部84は分注チップ20の基端部と係合した分注部36による分注チップ20の移動と分注動作、温調ユニット83a,83b1,83b2,83cによる温度調節、及び検出部38による検出動作を制御する。
制御部84を外部から操作する入力部として使用したり、検査結果を表示するモニターとして使用したりするために、制御部84に外部コンピュータとして、例えばパーソナルコンピュータ(PC)86を接続してもよい。
本発明の診断装置は、図16に示されるように、本発明の反応容器のうちの遺伝子多型解析用反応容器を処理する反応容器処理装置200と、ディスク装置やドラム装置などの記憶装置からなり、特定の多型又は複数の多型の組合せについての診断値を記憶したデータベース202と、液晶ディスプレーやCRTなどの表示装置204と、反応容器処理装置200により検出された多型解析結果に基づいてデータベース202から診断値を読み出して表示装置204に表示するコンピュータからなる診断処理装置206とを備えている。
本発明は遺伝子解析の研究や臨床分野において、種々の自動分析に利用することができ、例えば、人間を初めとして、動物や植物のゲノムDNAの多型、特にSNP(一塩基多型)を検出することができ、さらにその結果を用いて病気罹患率の診断や、投与薬剤の種類と効果及び副作用との関係などの診断のほか、動物や植物の品種判定、感染症診断(感染菌の型判定)などを行なうのにも利用することができる。
反応容器の一実施例を表わしたものであり、(A)は垂直断面図、(B)は反応プレートと分注チップを示す平面図、(C)は分注チップの他の例を示す概略断面図である。 同実施例の外観斜視図である。 同実施例における増幅反応部を示す図であり、(A)はヒータユニットとともに示す正面断面図、(B)は側面図である。 同実施例におけるプローブ配置部を示す正面断面図である。 反応容器の他の実施例を表わしたものであり、(A)は垂直断面図、(B)は反応プレートと分注チップを示す平面図である。 同実施例における増幅反応部をヒータユニットとともに示す正面断面図である。 同実施例においてサンプルが導入された状態を示す垂直断面図である。 同実施例において分注部のシリンジ駆動部がシリンジのプランジャと係合した状態を示す垂直断面図である。 同実施例において分注部のチップ保持部が分注チップと係合した状態を示す垂直断面図である。 同実施例において分注チップが保持部から取り外された状態を示す垂直断面図である。 反応容器の他の実施例を表わす垂直断面図である。 反応容器処理装置の一例を示す内部の概略斜視図である。 同検出装置における検出部を示す概略構成図である。 反応容器処理装置の実施例おける制御系を概略的に示すブロック図である。 本発明が関係することのあるSNP検出方法を概略的に示すフローチャート図である。 本発明の診断装置を概略的に示すブロック図である。
符号の説明
5 反応プレート
20 分注チップ
22 シリンジのプランジャ
23 フィルタ
24 カバー
26 カバー本体
28 ベローズフィルム
32,32a サンプル容器
64,64a,71 カバープレート
66,68,72 シール材
83 反応温度調節部
110 基板
112 サンプル注入部
114 タイピング試薬収容部
116 ミネラルオイル収容部
118 プローブ配置部
120 フィルム
130 遺伝子増幅試薬収容部
131 PCR終了液注入部
132,132a 増幅反応部
134a,34b 増幅反応部のポート
136a,36b ポートの開口
200 反応容器処理装置
202 データベース
204 表示装置
206 診断処理装置

Claims (14)

  1. 基板の表面側に複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容しフィルムで封止された遺伝子増幅試薬収容部、複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容しフィルムで封止されたタイピング試薬収容部、反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容しフィルムで封止された不揮発性液体収容部、及び前記複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を備え、さらに前記遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部を備えた反応プレートと、
    前記反応プレートの表面側の上方に配置された分注チップと、
    前記反応プレート上の表面側の上部空間を覆うとともに、前記分注チップをその先端部が前記空間の内側、基端部が外側になるようにして移動可能に支持しているカバーと、
    を備え、
    前記増幅反応部は前記基板中に形成されて反応液を収容する流路、及びその流路の両端において前記基板の表面側に開口した液分注用ポートを備え、前記流路は外部の熱源により両側面と下面が挟み込まれて温度制御される形状になって前記反応プレートの裏面側に突出し、その突出した部分にアルミニウムのフィルム又はプレートが貼りつけられている遺伝子多型解析用反応容器。
  2. 前記増幅反応部の液分注用ポートは分注チップの先端形状に対応した開口形状をもち、分注チップの先端に密着できる素材で構成されている請求項1に記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  3. 前記反応プレートの表面側に凹部として形成され、サンプルを注入するためのサンプル注入部をさらに備えている請求項1又は2に記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  4. 前記不揮発性液体はミネラルオイル、植物油、動物油、シリコーンオイル及びジフェニルエーテルからなる群から選ばれた液体である請求項1から3のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  5. 対象とする多型が一塩基多型である請求項1から4のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  6. 前記サンプルは核酸抽出操作を施していない生体サンプルである請求項1から5のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  7. 前記遺伝子増幅試薬はPCR反応試薬である請求項1から6のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  8. 前記カバーの一部に密閉可能に設けられた開口を介して外部から前記空間内にサンプルを注入するサンプル導入部をさらに備えた請求項1から7のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  9. 前記分注チップは前記カバーの外側から操作するシリンジを備えており、そのシリンジの操作により分注動作を行なうものである請求項1から8のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  10. 前記分注チップは先端部の内部にフィルタを備えている請求項1から9のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  11. 前記プローブ配置部は底部から光学的に測定が可能なように光透過性の材質にて構成されている請求項1から10のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  12. 前記カバーは気密性をもち柔軟性のある素材によって前記分注チップを保持し移動可能に支持している請求項1から11のいずれかに記載の遺伝子多型解析用反応容器。
  13. 請求項1に記載の遺伝子多型解析用反応容器を装着する反応容器装着部と、
    前記反応容器に取りつけられた分注チップによる吸引及び吐出のための機構を備えて液を移送して分注する分注部と、
    前記反応容器の増幅反応部の温度をサンプルと遺伝子増幅試薬との反応液内でDNAを増幅させる遺伝子増幅のための温度に制御する増幅反応温度調節部と、
    前記反応容器のプローブ配置部の温度をサンプルとタイピング試薬との反応液をプローブと反応させる温度に制御するタイピング反応温度調節部と、
    前記プローブ配置部に励起光を照射して蛍光を検出する蛍光検出部と、
    前記分注部の分注動作、前記増幅反応温度調節部の温度制御、前記タイピング反応温度調節部の温度制御及び前記蛍光検出部の検出動作を制御する制御部と、
    を備え、
    前記増幅反応温度調節部で前記増幅反応部の温度を制御するための熱源は、前記反応プレートの裏面側に突出している前記流路の部分を両側面と下面から挟み込んで接触する形状に構成されている反応容器処理装置。
  14. 前記反応容器は液体の収容部がフィルムで封止されており、そのフィルムで封止された状態で該反応容器処理装置に装着され、前記分注チップによりそのフィルムを貫通して液の吸入を行なう請求項13に記載の反応容器処理装置。
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