図1は、本発明の参考例となる形態の電磁波吸収体1の断面図である。電磁波吸収体1は、たとえばオフィスにおける室内空間などの空間の電磁波環境を改善する目的で、前記空間に存在する不要な電磁波を吸収するために用いられる。この電磁波吸収体1は、シート状であり、第1導体素子層5と、第1損失材層4と、電磁波反射層である電磁波反射板2とを有する。電磁波吸収体1は、さらに第2損失材層3を有する。各層2〜5は、図1においては上方側となる厚み方向(積層方向)一方側の電磁波入射側から、第1導体素子層5、第1損失材層4、第2損失材層3、電磁波反射板2の順序で積層され、このような積層構成で電磁波吸収体1が構成される。第1導体素子層5の電磁波入射側(図1の上方)には、さらに電磁波を反射する層でない表面層6が形成されてもよい。以下、理解を容易にするために、各損失材層3,4を損失材という場合がある。
第1導体素子層5には、後述するように二種類の空孔30,31を含む複数の空孔が形成される第1導体素子12が形成されている。第1導体素子12は、電磁波吸収体1の全体にわたって電気的に連なって連続的に形成されており、各空孔30,31の相関関係を最適化することによって、広帯域の周波数の電磁波を受信することができるとともに、第1損失材層4を薄くし、電磁波吸収体1の厚み寸法を小さくすることができる。
第1および第2損失材層4,3は、電磁波のエネルギを損失させる損失材料から成る損失材である。損失材は、誘電性損失材料から成る誘電性損失材(以下「誘電損失材」という場合がある)および磁性損失材料から成る磁性損失材を含む。第1および第2損失材層4,3は、ともに誘電損失材であってもよいし、ともに磁性損失材であってもよいし、いずれか一方が誘電性損失材でありかついずれか他方が磁性損失材であってもよい。また誘電損失材でも磁性損失材でもよい第1損失材層4のみを用いて、第2損失材層3を設けない構成でもよい。本形態では、第1損失材層4は、磁性損失材であり、第2損失材層3は、誘電性損失材である。
また他の形態として、電磁波吸収体1の積層構成は、図1以外の積層構成であってもよい。たとえば他の形態の電磁波吸収体1aとして、図2に示すように、電磁波入射側から、第1損失材層4、第1導体素子層5、第2損失材層3、電磁波反射板2の順に積層する構成とすることができる。さらに他の形態の電磁波吸収体1bとして、図3に示すように、1つ目の損失材層(たとえば第3損失材層20)、第1導体素子層5、2つ目の損失材層(たとえば第1損失材層4)、3つ目の損失材層(たとえば第2損失材層3)、電磁波反射層2の順に積層する構成とすることができる。第3損失材層20は、第1および第2損失材層4,3と同様に、損失材であり、誘電損失材であってもよいし、磁性損失材であってもよい。図2および図3の形態において、図1と対応する構成に同一の符号を付す。
また図1〜図3の各形態の構成において、各損失材層3,4,20をそれぞれ多層化することもできる。また各形態の構成において、各層2〜6,20は、接着剤層および支持体(PETフィルムなど)を介して積層されるものであってもよいし、接着剤層に誘電損失材料および磁性損失材料のいずれか一方を配合して、損失効果を有するように構成することもできる。特に電磁波反射板2の近傍は磁界が強くなる領域であり、磁性損失材料から成る層または磁性損失材料が配合される層を配置することが有効である。
他の形態として、電磁波吸収体は、図1〜図3の形態における電磁波反射板2を含まず、このような電磁波反射板2を含まない電磁波吸収体が、第2損失材層3の電磁波入射側(図1〜図3の上方)とは反対側(図1〜図3の下方)の表面部で、電磁波遮蔽性能を有する物体の面上に設置されるように構成されてもよい。電磁波遮蔽性能を有する物体は、たとえば導電性反射板2と同様な構成を有してもよく、たとえば金属板などによって実現されてもよい。導電性反射板2が設けられる構成と同様の効果を達成する。
図4は、図1〜図3に示される電磁波吸収体1を構成する第1導体素子層5を示す正面図である。図4には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。第1導体素子層5は、板状基材11の電磁波入射側の表面上に、金属製の第1導体素子12が形成される。板状基材11は、たとえば合成樹脂である誘電体から成っており、この板状基材11もまた誘電性の損失材である。
第1導体素子12は、電磁波入射方向と交差する面に沿って、具体的には、電磁波吸収体1が平面状に設けられる状態で厚み方向に垂直な面に沿って、厚み方向に垂直かつ相互に垂直なx方向およびy方向に、電磁波吸収体1の広範囲に、具体的には全体にわたって、電気的に連なって連続的に形成される。連続導体素子である第1導体素子12には、複数の空孔30,31が形成される。各空孔30,31は、四角形の1つである方形を含む多角形、円形、角部における外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有する。紐状に延びる形状は、細長く延びる形状であり、直線状に延びてもよいし、たとえば渦巻きのように曲線状に延びてもよいし、中途部で屈曲していてもよい。
さらに詳細に述べると、第1導体素子12には、形状および寸法のうち少なくともいずれか一方が異なる複数種類の空孔、具体的には、十文字空孔30と、方形空孔31とが形成されている。
十文字空孔30は、十文字形状に形成され、複数の十文字空孔30が、相互に間隔(以下「十文字空孔間隔」という)c2x,c2yをあけて設けられる。さらに詳細には、十文字空孔30は、放射状に延びる部分32を、相互に突合せるようにし、互いに突合わされる放射状に延びる部分32が、十文字空孔間隔c2x,c2yあけている。さらに具体的に述べると、たとえばこの形態では、十文字空孔30は、相互に垂直なx方向およびy方向に沿う放射状である+字状に形成され、x方向に十文字空孔間隔c2xをあけ、y方向に十文字空孔間隔c2yをあけて、行列状に規則正しく配置されてもよい。
十文字空孔30は、x方向に細長く延びる長方形の形状部分14と、y方向に細長く延びる長方形の形状部分15とが、それらの各形状部分14,15の図心を重ねて、交差部分16で直角に交差する形状である。各形状部分14,15は、交差部分16において垂直な軸線まわりに90度ずれており、同一形状を有する。各形状部分14,15の幅a1y,a1xは、等しく、たとえば8mmであり、各形状部分14,15の長さa2x,a2yは、等しく、たとえば38mmである。十文字空孔30の十文字空孔間隔は、x方向の間隔c2xとy方向の間隔c2yが、等しく、たとえば32mmである。
方形空孔31は、十文字空孔30に囲まれる領域に、十文字空孔30から間隔(以下「十文字方形間隔」という)c1x,c1yをあけて配置され、十文字空孔30に囲まれる領域を塗潰すように設けられる。さらに詳細には、方形空孔31は、十文字空孔30に囲まれる領域を、4分割し、各分割されて領域にそれぞれ配置される。したがって十文字空孔30によって囲まれる1つの領域には、4つの方形空孔31が形成される。
方形空孔31は、十文字空孔30に囲まれる領域に対応する形状であり、たとえばこの形態では、十文字空孔30が前述のような+字状であり、十文字空孔30に囲まれる領域は長方形であり、これに対応する形状である長方形である。各形状部分14,15が前述のように同一形状である場合、十文字空孔30に囲まれる領域は、正方形となり、方形空孔31は、正方形となる。
十文字空孔30に囲まれる1つの領域内の4つの方形空孔30は、縁辺部がx方向およびy方向のいずれかに延びるように配置され、x方向およびy方向に行列状に並べられている。これら4つの方形空孔が並べられる領域は、四角形、具体的には正方形となり、この領域と十文字空孔30との距離でもある十文字方形間隔c1x,c1yは、全周にわたって同一となる形状に形成される。
このような各空孔30,31の配置は、視点を変えて見た場合、4つの方形空孔31と1つの十文字空孔30とを有する空孔群を1つの単位として、複数の単位空孔群が、電磁波入射方向と交差する方向に整列して、具体的にはx方向およびy方向に行列状に並べられる配置である。1つの空孔群101においては、4つの方形空孔31がx方向およびy方向に行列状に並べられ、これら4つの方形空孔31間に形成される十文字形状の領域に十文字空孔30が配置される。
方形空孔31は、x方向の寸法b1xとy方向の寸法b1yとが、等しく、たとえば27mmである。このように方形空孔31は、連続導体素子が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交するx方向およびy方向の寸法が同一である等寸法部分を有する。図4に示す構成では、方形空孔31全体が等寸法部分となる。以下、等寸法部分に方形空孔と同一の符号31を用いる場合がある。
十文字空孔30と方形空孔31との十文字方形間隔は、x方向の間隔c1xとy方向の間隔c1yとが、等しく、たとえば2mmである。また十文字空孔30に囲まれる領域内の4つの方形空孔31の間隔(以下「方形空孔間隔」という)c3x,c3yは、x方向の間隔c3xとy方向の間隔c3yとが、等しく、たとえば4mmである。
したがって第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、前記単位空孔群を切抜いた形状の素子部分を、1つの単位素子部分101として有している。単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。また中心点P101を通るx方向に平行な直線に関して線対称であるとともに、中心点P101を通るy方向に平行な直線に関して線対称である。
第1導体素子12は、複数の単位素子部分101が、x方向およびy方向に平行移動させて行列状に並べられる形状である。この形状は、単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である対称単位素子部分とを、市松模様状に交互に配置する形状でもある。前記単位素子部分101の配置ピッチでもあるx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば70mmである。十文字空孔30および方形空孔31は、多角形状であり、全ての角部分が、先鋭状、つまり角を成してエッジ状に形成される。このような第1導体素子層5を含んで素子受信手段100が構成される。
したがって素子受信手段100は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子である第1導体素子12を有する。この第1導体素子12は、複数の空孔30,31が形成され、各空孔30,31は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が略同一である等寸法部分31を有する。
図5は、さらに他の形態の電磁波吸収体1Aの断面図である。この電磁波吸収体1Aは、図1に示す電磁波吸収体1と類似しており、対応する部分に同一の符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。電磁波吸収体1Aは、第2導体素子層7が第1導体素子層5、第1損失材層4、第2損失材層3のいずれかの層の積層方向他方側に積層されている。具体的には、図6に示すように第2導体素子層7は、各損失材層3,4間に設けられる。第2導体素子層7には、複数の第2導体素子18が形成される。各導体素子12,18の相間関係を最適化することによって、広い周波数帯域の電磁波を受信することができるとともに、第1損失材層4はもちろん、第2損失材層3を薄くすることができ、電磁波吸収体1の厚みを小さくすることができる。第1損失材層4として磁性損失材を用いた場合に、第2損失材層3を用いない場合があることは、図1の場合と同じである。また、第1損失材層4や第2損失材層3が多層化されていても良く、各構成の各層は、接着剤や支持体(PETフィルム等)を介して積層されるものであってもいいし、接着剤層に誘電損失材料や磁性損失材料を配合して、損失効果を持たせることもできる。特に電磁波反射板2の近傍は磁界が強くなる領域であり、磁性損失性を有する層を配置することが有効であることも、図1の場合と同じである。
図6は、図5に示される電磁波吸収体1Aを構成する第2導体素子層7の正面図である。図6には、理解を容易にするために、各第2導体素子18を黒く塗潰して示す。第2導体素子層7は、板状基材17の電磁波入射側の表面に金属製の複数の第2導体素子18が形成されて、構成される。板状基材17は、たとえば合成樹脂である誘電体から成っており、この板状基材17もまた誘電性の損失材である。各第2導体素子18は、電磁波入射方向と交差する方向に電気的に不連続な不連続導体素子であり、方形含む多角形、円形、角部における外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有する。具体的には、第2導体素子18は、単一種類の幾何学模様であり、x方向およびy方向に間隔(以下「第2の導体素子間隔」という)d1x,d1yをあけて行列状に規則正しく配置されて構成される。
各第2導体素子18は、正方形状であり、x方向の長さe1xとy方向の長さe1yとは等しく、たとえば8.0mmである。またx方向およびy方向に隣接する各形状19の相互の間隔である第2の導体素子間隔は、x方向の間隔d1xとy方向の間隔d1yとが、等しく、たとえば9.0mmである。このように本形態では、2つの導体素子12,18が、電磁波入射方向、具体的には厚み方向に間隔をあけて積層されている。これら2つの導体素子12,18を含んで素子受信手段100が構成される。
以下、図1〜図6の各形態の各構成について、さらに詳細に説明する。図1〜図6を参照して説明した構成と対応する構成には同一の符号を付す。各導体素子12,18は、たとえば銀(Ag)などの金属から成り、導電率が5,000S/m以上である。板状基材11,17は、たとえばポリエチレンテレフタレートから成り、前記金属が蒸着されて、導体素子12,18が形成される。これらの導体素子12,18の近傍に、損失材層3,4,11,17が設けられる。複数の導体素子層を有する構成では、各導体素子層5,7は、複数の層グループに割振られ、各層グループ毎に、近接して損失材が設けられる。具体的には、各導体素子層5,7は、単独で層グループをそれぞれ形成し、第1導体素子層5の層グループに関して各損失材層4,11が設けられ、第2導体素子層7に関して各損失材層3,17が設けられる。
各導体素子12,18は、寸法が吸収すべき電磁波の周波数に応じて最適化されて、前述の寸法に決定されている。したがって前記寸法は、一例であり、吸収すべき電磁波の周波数に基づいて適宜決定される。また各導体素子12における空孔間の間隔もまた、吸収すべき電磁波の周波数に基づいて、受信効率が高くなるように決定されている。また損失材層3,4,11,17の特性、具体的には材質などに基づく複素比誘電率または複素比透磁率、厚みなどは、吸収すべき電磁波の周波数に基づいて、受信効率が高くなるように決定されている。このように導体素子12,18の寸法および空孔の間隔寸法が決定され、また損失材層3,4,11,17が構成され、電磁波を効率良く受信することができる。
また電磁波反射板2を設ける構成、また電磁波反射板2を設けない場合には、電磁波遮蔽性能を有する物体の面上に設置するよう構成する。これによって、素子受信手段100の形状および寸法などの決定、つまり設計が容易に成る。また電磁波反射板2を用いる構成では、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aの設置場所の影響を受けて、素子受信手段100による受信特性が変化することが防がれる。たとえば電磁波吸収体1を、建物内装材に設けても、その内装材の複素比誘電率などの影響を受けて、受信可能な周波数が変化してしまうことを防ぐことができる。
また第1導体素子12において、十文字空孔30は、前述のように放射状に延びる部分を相互に突合せるように配置され、方形空孔31は、十文字空孔30に囲まれる領域に対応する形状に形成される。このような配置は、十文字空孔30と方形空孔31の組み合わせで、受信効率が最適な(高くなる)組み合わせである。したがって吸収効率の高い、電磁波吸収体を実現することができる。また十文字空孔30がx方向およびy方向に沿って放射する配置であるとともに方形空孔31の縁辺部がx方向およびy方向に延びるように配置されており、x方向およびy方向に偏波する電磁波の受信効率が高くすることができる。
このような各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aでは、各素子受信手段100が、第1導体素子12を備えており、この第1導体素子12が、異なる種類の空孔30,31が形成される構成であって、かつ電磁波吸収体1,1a,1b,1Aの全体にわたって連続的に延びる構成である。このような第1導体素子12を設けることによって、独立した複数の素子部分を並べた導体素子だけを用いる構成に比べて、広い周波数帯域の周波数の電磁波を、効率良く受信することができる。
この素子受信手段100の近傍に、損失材層3,4,11,17が設けられており、素子受信手段100によって受信される電磁波のエネルギが損失される。言い換えるならば電磁波のエネルギを熱エネルギに変換して吸収することができる。このように素子受信手段100を用いることによって広い周波数帯域にわたって電磁波を効率良く受信して吸収することができる。さらに単に電磁波吸収体全体にわたって連続する導体素子を用いるのではなく、複数種類の空孔30,31が形成される導体素子12を用いるので、各空孔30,31の周囲における受信動作の特性を生かして効率良く受信することができるとともに、これらが連続して連なることによる周波数帯域の広域化を図ることができ、広帯域の電磁波を効率良く受信し、効率良く吸収することができる。
このように広い周波数帯域に対する電磁波の吸収効率を高くすることができるので、広くかつ高い電磁波吸収性能を得ることができ、薄型化および軽量化を図ることができ、さらに損失材の材質の選択の自由度が高くなって、柔軟性を持たせることができ、施工性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。たとえば電磁波吸収体1,1a,1b,1Aは、素子受信手段100および損失材層3,5を含む積層構成体、具体的には、電磁波吸収体1,1a,1b,1A全体の厚さが、0.1mm以上10mm以下であり、単位面積あたりの質量が、0.2kg/m2以上20kg/m2以下であるシート状に形成される。具体的な一例を述べると、第1導体素子層5の厚みは25μmであり、第1損失材層4の厚みは、0.5mmであり、第2導体素子層7の厚みは25μmであり、第2損失材層3の厚みは、2.0mmであり、電磁波反射板2の厚みは25μmである。
図7は、さらに他の形態として、図4の第1導体素子層5とは寸法的な構成の異なる他の第1導体素子層5を示す正面図である。図7には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。寸法的な構成以外は、図4を参照して説明した構成と同様の構成であるので、対応する部分に同一の符号を付して、異なる点となる寸法についてだけ説明する。この第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aに用いることができる。各形状部分14,15の幅a1y,a1xは、たとえば6mmであり、各形状部分14,15の長さa2x,a2yは、たとえば132mmである。十文字空孔間隔c2x,c2yは、たとえば8mmである。また方形空孔31の寸法b1x,b1yは、たとえば50mmである。十文字方形間隔c1x,c1yは、たとえば7mmである。また方形空孔間隔c3x,c3yは、たとえば20mmである。さらに前記単位素子部分101の寸法f1x,f1yは、たとえば140mmである。この図7に示す第1導体素子12においても、方形空孔31が、等寸法部分に相当する。以下、等寸法部分に方形空孔と同一の符号31を用いる場合がある。
図8は、本発明の実施形態として用いることできる他の第1導体素子層5を示す正面図である。図8には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。図4に示す第1導体素子層5と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。この第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aに用いることができる。図8に示す第1導体素子層5は、第1導体素子12が、図4に示す第1導体素子12とは、異なる形状を有している。図8に示す第1導体素子12は、複数の空孔120が形成される。
各空孔120は、全ての内角が180度未満である多角形であり、正多角形であってもよい。本実施の形態では、各空孔120は、四角形であり、具体的には長方形である。長方形には、正方形が含まれる。さらに詳細に説明すると、各空孔120は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形であり、この長方形の各空孔120が、行列状とは異なる所定の規則性に従って配置されている。
さらに具体的には、第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つの長方形(各空孔120をその1辺に平行な直線で半分にした長方形)の切抜きを形成した形状の単位素子部分101を有している。この単位素子部分101は、前記4つの切抜きが、単位素子部分101の各辺部分に1つずつ、切抜きの一辺を単位素子部分101の辺に一致させる状態で配置され、外方に開放するようにそれぞれ形成される形状である。さらに4つの切抜きは、中心位置が、単位素子部分101の各辺の中点から、単位素子部分101の中心位置P101まわりの周方向一方へ、同一のずれ量で、ずれた位置に配置されている。4つの切抜きは、単位素子部分101の辺と一致する辺の寸法が、空孔120の隣接する2つの辺のうちの一方の辺の寸法と等しく、単位素子部分101の辺に対して垂直な辺の寸法が、空孔120の前記隣接する2つの辺のうちの他方の辺の寸法の1/2の寸法である。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。第1導体素子12は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このような形状の第1導体素子12を有する第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて同様に用いることが可能であり、このような図8に示す第1導体素子層5を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば70mmである。
図8に示す第1導体素子層5のさらに具体的構成を説明すると、各空孔120は、正方形である。単位素子部分101に形成される各切抜きは、長辺が空孔120の一辺と同一寸法であり、短辺が空孔120の一辺の1/2の寸法の長方形となる。各切抜きが、長辺を単位素子部分101の辺と一致させて配置される。このような各切抜きが形成される単位素子部分101と、対称な対称単位素子部分101aとを、前述のような市松模様状に並べる形状とすることによって、正方形状の複数の空孔120が形成される第1導体素子層5を得ることができる。各空孔120のx方向の寸法g1xおよびy方向の寸法g1yは同一であり、たとえば40mmである。本実施の形態では、各空孔120が等寸法部分に相当する。以下、等寸法部分に空孔120と同一の符号を用いる場合がある。
図9は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他の第1導体素子層5を示す正面図である。図9には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。図4に示す第1導体素子層5と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。この第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aに用いることができる。図9に示す第1導体素子層5は、第1導体素子12が、図4に示す第1導体素子12とは、異なる形状を有している。
図9に示す第1導体素子12は、複数の空孔121が形成される。各空孔121は、複数の線分状部分が垂直に屈曲して連なって大略的にC字状を成す2つのC字状部125が、凹となる側を対向させて配置され、各C字状部の中央部が直線状の連結部126で連結される形状である。このような形状の各空孔121は、一方のC字状部125が、他の空孔121の連結部126に関して一方側の凹部に嵌まり込むような状態で、互いに絡合うような、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各C字状部125の各線分状部分および各連結部126は、x方向またはy方向に平行である。
さらに具体的には、第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つの鉤状の部分を周方向へ並べて渦巻き状に切抜いた形状の単位素子部分101を有している。各鉤の部分は、5つの線分状部分が4つの屈曲部で連結され、単位素子部分102の内方に成るにつれて線分状部分の寸法が小さくなる形状であり、最も外側の線分状部分は、単位素子部分101の辺に沿って配置され、単位素子部分101において外方に開放している。単位素子部分101は、中心点P10に交差部を一体させた卍状の部分が形成されるように、x方向またはy方向に平行な複数(本実施の形態では5つ)の線分状部分を垂直に屈曲するように連結させ、周方向一方へ旋回しながら半径方向外方へ拡がる渦巻き状に形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。第1導体素子12は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このように第1導体素子12は、互いに連なる複数の渦巻き状の部分を有する形状である。このような形状の第1導体素子12を有する第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて同様に用いることが可能であり、このような図9に示す第1導体素子層5を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば63mmである。
また異なる視点で見ると、図9に示す第1導体素子12は、たとえば仮想線で囲って示す領域S1に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分127が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔121が形成されている。領域S1では、各異寸法部分127は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。第1導体素子12には、この領域S1と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S1が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図9に示す第1導体素子12は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔121が形成される。各空孔121は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分127を有する。各異寸法部分127が前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各異寸法部分127の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各異寸法部分127の幅寸法w127は、たとえば4mmであり、前記異寸法部分127の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である各異寸法部分127の長さ寸法は、前記幅寸法w127の2倍以上である。
図10は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他の第1導体素子層5を示す正面図である。図10には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。図4に示す第1導体素子層5と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。この第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aに用いることができる。図10に示す第1導体素子層5は、第1導体素子12が、図4に示す第1導体素子12とは、異なる形状を有している。
図10に示す第1導体素子12は、複数の空孔130が形成される。各空孔130は、互いに間隔をあけて平行に延びる2つの直線状の端壁部131が、各中央部で直線状の連結部132によって連結され、全体で、I字状の形状を有している。このような形状の各空孔130は、一方の端壁部131が、他の空孔130の連結部132に関して一方側の凹部に嵌まり込むような状態で、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各端壁部131および各連結部132は、x方向またはy方向に平行である。
さらに具体的には、第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、4つのL字状の部分を一方の直線部分が前記正方形の各辺に沿って配置され外方に開放する状態で、周方向へ並べて渦巻き状に切抜いた形状の単位素子部分101を有している。単位素子部分101は、中心点P101にその中心が一致する正方形の基部から複数(本実施の形態では2つ)の線分を垂直に屈曲するように連結させて、周方向一方へ旋回しながら半径方向外方へ拡がる渦巻き状に形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。第1導体素子12は、複数の単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である複数の対称単位素子部分101aとを、市松模様状に交互に並べて形成される形状を有している。このように第1導体素子12は、互いに連なる複数の渦巻き状の部分を有する形状である。このような形状の第1導体素子12を有する第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて同様に用いることが可能であり、このような図10に示す第1導体素子層5を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば41mmである。
また異なる視点で見ると、図10に示す第1導体素子12は、たとえば仮想線で囲って示す領域S2に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分137が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔130が形成されている。領域S2では、各異寸法部分137は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。第1導体素子12には、この領域S2と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S2が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図10に示す第1導体素子12は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔130が形成される。各空孔130は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分137を有する。各異寸法部分137が前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各異寸法部分137の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各異寸法部分137の幅寸法w137は、たとえば3mmであり、前記異寸法部分137の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である各異寸法部分137の長さ寸法は、前記幅寸法w137の2倍以上である。
図11は、本発明の実施のさらに他の形態として用いることできる他の第1導体素子層5を示す正面図である。図11には、理解を容易にするために、第1導体素子12を斜線のハッチングを付して示す。図4に示す第1導体素子層5と対応する部分に同一の符号を付して、異なる構成についてだけ説明する。この第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて、各電磁波吸収体1,1a,1b,1Aに用いることができる。図11に示す第1導体素子層5は、第1導体素子12が、図4に示す第1導体素子12とは、異なる形状を有している。
図11に示す第1導体素子12は、複数の空孔135が形成される。各空孔135は、細長い長方形状であり、ストライプ状、したがって縞状を成す、所定の規則性に従う配置で、形成されている。各空孔135は、x方向またはy方向に平行である。さらに具体的には、第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形から、ストライプ状に配置された複数の空孔135を切抜いた形状の単位素子部分101を有している。単位素子部分101には、単位素子部分101を中心点P101で直交するx方向に平行な直線とy方向に平行な直線とで4つの領域に分割して、一方の対角線方向に配置される2つの領域に、複数(本実施の形態では6つ)の空孔135がx方向に平行にストライプ状に略均等に配置されて形成され、他方の対角線方向に配置される2つの領域に、複数(本実施の形態では6つ)の空孔135がy方向に平行にストライプ状に略均等に配置されて形成される。
この単位素子部分101は、その中心点P101に関して点対称であるとともに、中心点P101まわりに90度回転させる毎に同一形状となる回転対称である。第1導体素子12は、複数の単位素子部分101を行列状に並べて形成される形状を有している。この形状は、単位素子部分101と、単位素子部分101とはx方向およびy方向に関して対称形である対称単位素子部分とを、市松模様状に交互に配置する形状でもある。また第1導体素子12は、x方向に平行な2つの辺とy方向に平行な2つの辺とで規定される正方形の領域に、x方向に延びる6つの空孔135をy方向に並べて形成した部分と、同様の正方形の領域に、y方向に延びる6つの空孔135をx方向に並べて形成した部分とを、一松模様状に、交互に並べて配置した形状でもある。このような形状の第1導体素子12を有する第1導体素子層5は、図4に示す第1導体素子層5に代えて同様に用いることが可能であり、このような図11に示す第1導体素子層5を含んで素子受信手段100を構成することができる。単位素子部分101のx方向の寸法f1xおよびy方向の寸法f1yは、たとえば129mmである。
また異なる視点で見ると、図11に示す第1導体素子12は、たとえば仮想線で囲って示す領域S3に着目して、一方向に延びる複数の異寸法部分が一方向と交差する方向へ並ぶように、各空孔135が形成されている。図11の構成では、各空孔135が、異寸法部分にそれぞれ相当する。領域S3では、各異寸法部分である各空孔135は、x方向へ延び、y方向へ並んでいる。第1導体素子12には、この領域S3と同様の形状の領域が複数存在するとともに、領域S3が90度回転した形状を有する領域が複数存在する。
このように図11に示す第1導体素子12は、電磁波の入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子であって、複数の空孔135が形成される。各空孔135は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分に相当する。以下、異寸法部分に各空孔135と同一の符号135を用いる場合がある。各異寸法部分である各空孔135は前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。ここで前記2方向は、x方向およびy方向である。各空孔135の前記2方向の寸法のうち小さい方の寸法である各空孔135の幅寸法w135は、たとえば6mmであり、空孔135の前記2方向の寸法のうち大きい方の寸法である空孔135の長さ寸法は、前記幅寸法w135の2倍以上である。
以下に参考例および比較例の構成および性能評価結果を述べる。
表1は、参考例および比較例の各構成をまとめて示している。また表2に各構成の電磁波吸収特性の結果を示す。
参考例1
図12は、参考例1の電磁波吸収体1の第1の例の電磁波吸収特性(電磁波吸収率)を示すグラフである。図12において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。また図中の点線がシミュレーション結果であり、実線がフリースペース法の実測結果である。図12には、図4に示すような第1導体素子層5の空孔形状(寸法はa1x/2+b1x+c1x+c3x/2=a1y/2+b1y+c1y+c3y/2=35mmである。)を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが0.5mm、第2損失材層3の厚みが4.0mm、そして第2導体素子層7を用いない構成で全体の厚みが4.5mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。
図13は、図12に示す実測値を示した電磁波吸収体1の第1損失材層4の材料定数と周波数との関係を示すグラフである。材料定数は、複素比誘電率εの実部ε’および虚部ε”ならびに複素比透磁率μの実部μ’および虚部μ”を含む。図13において、縦軸は各材料定数ε’、ε”、μ’、μ”を示し、横軸は電磁波の周波数を示す。また破線が複素比誘電率εの実部ε’を示し、実線が複素比誘電率εの虚部ε”を示し、2点鎖線が複素比透磁率μの実部μ’を示し、1点鎖線が複素比透磁率μの虚部μ”を示す。また表3に、周波数が2.45GHzの電磁波における第1損失材層4および第2損失材層3の各材料定数ε’、ε”、μ’、μ”をそれぞれ示す。
第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンシートを用いている。図13および表3に示されることではあるが、第1損失材層4の2.4GHzにおける複素比誘電率(実部)ε’は12.30、同(虚部)ε”は0.70、同周波数の複素比透磁率(実部)μ’は1.33、同(虚部)は0.54である。図13に示すように、第1損失材層4は、広帯域の周波数にわたり、安定した材料特性を有しており、広帯域の周波数にわたり、安定した電磁波吸収能力があることが明らかである。
電磁波吸収体1には、電磁波の吸収量が6dB以上であることが要求されるが、図10および表2から明らかなように、要求吸収量(6dB)を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、6.3GHz〜11GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができる。この構成の電磁波吸収体1の重量は2.2kg/m2と軽く、しかも刃物で容易に裁断でき、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例2
図14は、電磁波吸収体1の第2の例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図14において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。また図中の点線がシミュレーション結果であり、実線がフリースペース法の実測結果である。参考例1と同じ第1導体素子層5を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが1.2mm、第2損失材層3の厚みが4.0mm、そして第2導体素子層7を用いない構成で全体の厚みが5.2mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。また第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンシートを用いている。各損失材層の誘電率および透磁率は参考例1と同じである。
この例の電磁波吸収体1もまた、図14および表2から明らかなように、要求吸収量(6dB)を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、4.5GHz〜7GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができる。この構成の電磁波吸収体1の重量は3.7kg/m2と軽く、しかも刃物で容易に裁断でき、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例3
図15は、電磁波吸収体1の第3の例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図15において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。また図中の点線がシミュレーション結果であり、実線がフリースペース法の実測結果である。図7に示すような第1導体素子層5の空孔形状(寸法はa1x/2+b1x+c1x+a3x/2=a1y/2+b1y+c1y+a3y/2=70mmである。)を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが0.5mm、第2損失材層3の厚みが4.0mm、そして第2導体素子層7を用いない構成で全体の厚みが4.5mmである。各損失材層の誘電率および透磁率は参考例1と同じである。この電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。また第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンシートを用いている。
この例の電磁波吸収体1もまた、図15および表2から明らかなように、要求吸収量(6dB)を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、4.2GHz〜9.5GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができる。この構成の電磁波吸収体1の重量は2.2kg/m2と軽く、しかも刃物で容易に裁断でき、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例4
図16は、電磁波吸収体1の第4の例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図16において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。また図中の点線がシミュレーション結果であり、実線がフリースペース法の実測結果である。参考例3と同じ第1導体素子層5の空孔形状を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが1.2mm、第2損失材層3の厚みが4.0mm、そして第2導体素子層7を用いない構成で全体の厚みが5.2mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。また第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンシートを用いている。各損失材層の誘電率および透磁率は参考例1と同じである。
この例の電磁波吸収体1もまた、図16および表2から明らかなように、要求吸収量を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、3.4GHz〜6.7GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができる。この構成の電磁波吸収体1の重量は3.7kg/m2と軽く、しかも刃物で容易に裁断でき、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例5
図17は、電磁波吸収体1の第5の例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図17において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス)を示す。また図中の点線がシミュレーション結果であり、実線がフリースペース法の実測結果である。参考例3と同じ第1導体素子層5の空孔形状を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが0.5mm、第2損失材層3の厚みが6.0mm、そして第2導体素子層7を用いない構成で全体の厚みが6.5mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。また第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は市販不燃材板(商標ダイライト)を用いている。この第2損失材層3の2.4GHzにおける複素比誘電率(実部)ε’は1.97、同(虚部)ε”は0.04、同周波数の複素比透磁率(実部)μ’は1、同(虚部)は0である。
この例の電磁波吸収体1もまた、図17および表2から明らかなように、要求吸収量(6dB)を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、3.4GHz〜8GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができる。この構成の電磁波吸収体1の重量は4.5kg/m2と軽く、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例6
図18は、電磁波吸収体1Aの一例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図18において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。参考例3と同じ第1導体素子層5の空孔形状を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが0.5mm、第2導体素子層7は図6に示すような方形形状(寸法は、パッチ長e1x=e1y=8mm、パッチ間d1x=d1y=9mmである。)を有し、第2導体素子層7の基材17の厚みが25μmであり、第2損失材層3の厚みが4.0mm、全体の厚みが4.5mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。また第1損失材層4は、塩化ビニル樹脂(100部)にフェライト340部を他の充填材と共に練りこんでシート化したものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンである。各損失材層の誘電率および透磁率は参考例1と同じである。
この例の電磁波吸収体1もまた、図18および表2から明らかなように、要求吸収量(6dB)を超える電磁波吸収量を達成できる範囲が、3.9GHz〜7.2GHzと広帯域にわたっている。このように電磁波吸収体1は、広い周波数帯域の電磁波に対して高い吸収性能を発揮できることができ、さらに特定周波数にてより高い吸収性能が見られる。この構成の電磁波吸収体1の重量は2.2kg/m2と軽く、しかも刃物で容易に裁断でき、施工性も充分取り扱い易いものである。
参考例7
図19は、電磁波吸収体1の第6の例の電磁波吸収特性を示すグラフである。図19において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス)を示す。また図19には、第1導体素子層5の導電率σの違いによる電磁波吸収特性の違いを示す。図中の1点鎖線は、導電率σが1,000S/mである場合の結果を示し、点線は、導電率σが5,000S/mである場合の結果を示し、破線は、導電率σが10,000S/mである場合の結果を示し、実線は、導電率σが1,000,000S/mである場合の結果を示し、2点鎖線は、導電率σが0(第1導体素子12なし)である場合の結果を示す。
図4に示す第1導体素子層5の空孔形状を有し、第1導体素子層5の基材11の厚みが25μmであり、第1損失材層4の厚みが1.3mm、そして第2損失材層3の厚さは4.0mmの導体素子層7を用いている構成で計5.3mmである。用いた第1損失材層4及び第2損失材層3は、参考例6と同じである。第1導体素子層5の導電率を変化させた場合の、電磁波吸収性能(リターンロス量)に及ぼす影響をシミュレーションで計算した例である。全体重量は3.9kg/m2である。結果、導電率σが5,000S/m以上の場合、電磁波吸収性能が安定して、高い値を取ることがいえる。表2には、導電率σが5,000S/mの場合の結果を示す。参考例1〜6の導電率σは、5,000S/m以上である。
このように電磁波吸収体1は、広帯域の電磁波を高効率で吸収することができる。さらに各導体素子12,18の導電率が高く、具体的には5,000S/m以上に設定されており、受信素子として効果的に機能し、広帯域化および高吸収特性を実現することができる。
比較例1
図20は、電磁波吸収体の第1の比較例の電磁波吸収特性を示すグラフである。参考例1と同じ構成で、第1導体素子層5を用いない場合のフリースペース法による実測値を示す。この場合、電磁波吸収性能がほとんど発現していないことがわかる。
比較例2
図21は、電磁波吸収体の第2の比較例の電磁波吸収特性を示すグラフである。参考例1とほぼ同じ構成で、第1導体素子層5を図22に示す十文字状の導体素子121(寸法:導体幅j=2.5mm、導体長さk=16mm、導体間隔p=1mm)を有する導体素子層120としている。また第1導体素子層5の基材11の厚みが25μm、であり、第1損失材層4の厚みが2.0mm、第2損失材層3の厚みが3.0mm、全体の厚みが5.0mmである電磁波吸収体1を用いた場合のフリースペース法による実測値を示す。この場合、特定周波数(2.4GHz近傍)に単一吸収ピークが現れるのみで、広帯域特性は見られない。
また図12および図14と、図15〜図17を比較検討してみると、各空孔30,31の寸法が大きくなると、吸収できる周数帯域が低周波数側に移行しながら、広くなることがわかる。また第1導体素子層5の基材11の厚み寸法が大きいと、高周波数帯域での吸収効率が高くなり、小さいと、低周波数帯域での吸収効率が高くなることがわかる。
また電磁波吸収体1では、寸法の調整によって、3.4GHz〜11GHzという広い周波数帯域にわたって、要求吸収量(6dB以上)の電磁波吸収量を達成することができる。したがって電磁波吸収体1は、UWBなどが用いられる環境下で、その不要な電磁波を吸収するために好適に用いることができる。
図23は、第1導体素子12の空孔の形状による電磁波吸収特性の差異を示すグラフである。図23において、横軸は周波数を示し、縦軸は電磁波吸収量(リターンロス量)を示す。図23には、点線201によって図4に示す第1導体素子12を用いた場合の電磁波吸収特性を示し、破線202によって図7に示す第1導体素子12を用いた場合の電磁波吸収特性を示し、一点鎖線203によって図8に示す第1導体素子12を用いた場合の電磁波吸収特性を示し、実線204によって図9に示す第1導体素子12を用いた場合の電磁波吸収特性を示し、二点鎖線205によって図11に示す第1導体素子12を用いた場合の電磁波吸収特性を示す。また図23には、線210によって6dBの電磁波吸収量を示す。
さらに図23における各線201〜205は、第1導体素子12以外の構成は、全て同一である場合の電磁波吸収特性を示す。層構成は、図2に示す構成であり、第1損失材層4は磁性損失材であり、第2損失材層3は誘電損失材である。
図23における第1損失材層4は、クロロプレンゴム(100重量部)にフェライト(戸田工業製商品名KNS−415)105重量部およびグラファイト(日本黒鉛工業製商品名CB−100、粒径80μm)を他の充填材と共に練りこんで、熱プレス法により1.3mm厚のシートにしたものであり、第2損失材層3は発泡ポリエチレンシート(4mm厚)を用いている。
第1損失材層4の2.45GHzにおける複素比誘電率(実部)ε’は16.0、同(虚部)ε”は3.0、同周波数の複素比透磁率(実部)μ’は1.45、同(虚部)は0.50である。第2損失材層3の材料定数は表3と同じである。
図23から明らかなように、いずれの構成も、連続導体素子である第1導体素子12をそれぞれ有しているので、広帯域にわたって、たとえば規格などで要求される6dB以上の電磁波吸収量が得られている。さらに等寸法部分を有する、図4、図7および図8に示す第1導体素子12を用いる構成では、電磁波吸収量のピーク値およびそれに近い値が得られる帯域は比較的狭いが、極めて高いピーク値を有する電磁波吸収特性を有している。これに対して、異寸法部分を有する、図9および図11に示す第1導体素子12を用いる構成では、電磁波吸収量のピーク値は比較的低いが、少なくとも0.5GHz以上の幅の比較的広帯域にわたって連続して、ピーク値およびそれに近い値が得られる電磁波吸収特性を有している。また図10に示す第1導体素子12も、図9および図11と同様の効果を達成する。
図4、図7および図8に示すような第1導体素子12を備える素子受信手段100は、基本的に、電磁波入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成され、広帯域の周波数にわたって利得を高くすることができる。しかも図4、図7および図8に示すような第1導体素子12には、複数の空孔30,31,120が形成され、各空孔30,31,120は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が略同一である等寸法部分を有している。図4および図7の第1導体素子12では、方形空孔31が等寸法部分に相当し、図8の第1導体素子12では、空孔120が等寸法部分に相当する。これによって素子受信手段100は、等寸法部分の寸法によって決まる周波数に対して特に高い利得を有する。
さらにこのような素子受信手段100の近傍に、損失材が設けられており、素子受信手段100によって受信される電磁波のエネルギが損失される。言い換えるならば電磁波のエネルギを熱エネルギに変換して吸収することができる。素子受信手段100が前述のような利得を有しているので、これを備える電磁波吸収体1〜1,1a,1b,1Aは、広帯域の周波数の電磁波を吸収することができ、かつ等寸法部分31,120の寸法によって決まる周波数の電磁波を、特に高い吸収率で吸収することができる。
特に等寸法部分が正方形である場合、前記特性が顕著に現れる。したがって広帯域の周波数の電磁波を吸収することができ、かつ等寸法部分の寸法によって決まる周波数の電磁波を、特に高い吸収率で吸収することができる、電磁波吸収体を実現することができる。
等寸法部分は、前記互いに直交する2方向の寸法が同一である場合に、等寸法部分の寸法によって決まる周波数に対して極めて高い利得を示す特性が最も顕著に現れるが、必ずしも前記2方向の寸法が同一でなくてもよく、たとえば前記2方向の寸法のうち、小さい方の寸法を1とした場合に、大きい方の寸法が1以上1.2未満の範囲にある場合、前記特性が現れる。等寸法部分は、正方形に限らず、その他の形状であってもよく、たとえば長方形および正多角形を含む多角形、円形を含む楕円形などであってもよい。
また図9〜図11に示すような第1導体素子12を備える素子受信手段100は、基本的に、電磁波入射方向と交差する面に沿って電気的に連なって連続的に形成され、広帯域の周波数にわたって利得を高くすることができる。しかも図9〜図11に示すような第1導体素子12には、複数の空孔121,130,135が形成され、各空孔121,130,135は、第1導体素子12が平面に沿うように配置される状態で、互いに直交する2方向の寸法が異なる異寸法部分を有している。図9および図10に示す第1導体素子12は、各空孔121,130に一部が異寸法部分127,137であり、図11に示す第1導体素子12は、各空孔135が異寸法部分に相当する。異寸法部分127,135,137は、前記2方向の寸法のうち小さい寸法の方向へ並べて配置される。このような空孔121,130,135が形成される第1導体素子を備える素子受信手段100は、異寸法部分127,135,137の寸法によって決まる連続した周波数帯域にわたって高い利得を有する。
さらにこのような素子受信手段100の近傍に、損失材が設けられており、素子受信手段100によって受信される電磁波のエネルギが損失される。言い換えるならば電磁波のエネルギを熱エネルギに変換して吸収することができる。素子受信手段100が前述のような利得を有しているので、これを備える電磁波吸収体1,1a,1b,1Aは、広帯域の周波数の電磁波を吸収することができ、かつ異寸法部分127,135,137の寸法によって決まる連続した周波数帯域の電磁波を吸収することができる。
特に異寸法部分が長方形である場合、前記特性が顕著に現れる。したがって広帯域の周波数の電磁波を吸収することができ、かつ異寸法部分の寸法によって決まる連続した周波数帯域の電磁波を吸収することができる、電磁波吸収体を実現することができる。
異寸法部分は、長方形である場合に、異寸法部分の寸法によって決まる連続した周波数に対して高い利得を示す特性が最も顕著に現れるが、必ずしも長方形である必要はない。また2方向の寸法の比も特に限定されるものではないが、たとえば前記2方向の寸法のうち、小さい方の寸法を1とした場合に、大きい方の寸法が1.2以上である場合に、前記特性が顕著に現れる。異寸法部分は、長方形に限らず、その他の形状であってもよい。たとえば楕円形などであってもよいし、紐状に連続した形状であってもよい。
また等寸法部分および異寸法部分は、1つの空孔全体から成ってもよいが、1つの空孔の一部であってもよい。また前述の電磁波吸収体1,1a,1b,1Aを用いて、広帯域の周波数の電磁波を好適に吸収することができる。
また本発明の実施のさらに他の形態として、電磁波吸収体は、たとえば難燃剤または難燃助剤が、損失材層3,4などに添加されて、難燃性、準不燃性または不燃性が付与されている。これによって建物内装材として好適に用いることができる。
難燃剤としては特に限定されることはなく、リン化合物、ホウ素化合物、臭素系難燃剤、亜鉛系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化物系難燃剤等が適宜量使用できる。リン化合物としては、リン酸エステル、リン酸チタンなどが挙げられる。ほう素化合物としては、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。臭素系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモベンジルフェニルエーテル、デカブロモベンジルフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール、臭化アンモニウムなどが挙げられる。亜鉛系難燃剤としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛若しくはホウ酸亜鉛等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、たとえばトリアジン化合物、ヒンダードアミン化合物、若しくはメラミンシアヌレート、メラミングアニジン化合物といったようなメラミン系化合物などが挙げられる。水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
本発明の構成材料のうち、第1損失材層4は、ポリマー、木材、石膏材等の誘電材で、複素比誘電率を有するものであれば使用可能である。実部比誘電率が上がると虚部比誘電率も上がり、誘電損失性が大きくなる。複素比誘電率を上げるためにポリマー等に充填される誘電損失材料としては、たとえばファーネスブラックやチャンネルブラックなどのカーボンブラック、ステンレス鋼や銅やアルミニウム等の導電粒子、グラファイト、カーボン繊維、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等を用いることができる。本発明で好ましく使用する誘電損失材料は、カーボンブラックであり、特に窒素吸着比表面積(ASTM(American Society for Testing and Materials) D3037−93)が100〜1000m2/g、DBP吸油量(ASTM D2414−96)が100〜500cm3/100gであるカーボンブラックが好適である。
DBP吸油量は、可塑剤の一種であるDBP(dibutyl phthalateの略)の吸収量(単位cm3/100g)である。たとえば昭和キャボット社製の商品名IP1000およびライオン・アクゾ社製商品名ケッチェンブラックECなどを使用している。窒素吸着比表面積が100m2/g以下の場合は充分な複素比誘電率が得られず、1000m2/g以上の場合は誘電損失材料の分散性が著しく悪くなる。DBP吸油量が100cm3/100g以下の場合は充分な複素比誘電率が得られず、500cm3/100g以上の場合は加工性が著しく悪くなる。
虚部比誘電率が大きくなると導電性が発現してきて、結果として電磁波吸収性能が著しく損なわれる。誘電損失効果を上げるには限界があり、複素比透磁率との関係で最適化することになる。
第1損失材層4は、誘電損失材と併用して、あるいは独立に磁性損失材を用いることができる。磁性損失性(高虚部比透磁率)を付与するためには、ポリマー、石膏、セメント等に磁性損失材料を充填して作成することができる。充填される磁性損失材料としては、たとえばフェライト、鉄合金、純鉄、酸化鉄などの強磁性材料の粒子が挙げられる。本発明で好ましく用いるフェライトとしては、低コストで複素比透磁率の高いソフトフェライト系材料であるMn−Znフェライト(比重=5)である。フェライトの寸法としては、0.1〜100μmの平均粒径のものが好適であり、より好ましくは1〜10μmである。平均粒径が0.1μm未満であるものは分散性に劣り、100μmを超すと加工性が悪くなる。また、第1損失材層4を磁性損失材の層とする場合、磁性体そのもので形成されてもよい。この場合は、フェライトなどの軟磁性焼結体やそれらのメッキ物、金属化合物や金属酸化物の層を形成する方法が採用される。
本発明においては、上述の磁性損失材料を用いたが、これに限定されることはなく、他の種類および形状の磁性損失材料を用いることも、または併用することも可能である。
第1損失材層4に複素比透磁率を付与するために、磁性損失材料を用いることを条件としているが、磁性損失材料は重く、多量に配合すると電磁波吸収体の重量を著しく増加することになる。そこで磁性損失材料の添加量を最小限とし、適宜の量の誘電損失材料を併用するという配合を用いてもよい。具体的には、本発明ではカーボンブラックとMn−Znフェライトの併用、そしてグラファイトとMn−Znフェライトの併用を用いている。
第1損失材層4に使用されるポリマー材料(ビヒクル)としては、合成樹脂、ゴム、および熱可塑性エラストマーを使用している。たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体、ポリブタジエンおよびこれらの共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂やビチュメン、電子線またはUV架橋ポリマー等が挙げられる。
前記ゴムとしては、たとえば天然ゴムのほか、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、塩素化ポリエチレンゴム、水素添加ニトリルゴム、シリコンゴムなどの各種合成ゴム単独、もしくはこれらのゴムを各種変性処理にて改質したものが使用できる。
熱可塑性エラストマーとしては、たとえば塩素化ポリエチレン、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの各種熱可塑性エラストマーを用いることができる。
これらのポリマーは単独で使用するほか、複数をブレンドして用いることができる。樹脂および熱可塑性エラストマー材料には、必要に応じて可塑剤、さらには、安定剤、補強用充填剤、流動性改良剤、難燃剤などを適宜添加した樹脂組成物として使用することができる。ゴム材料には、加硫剤のほか、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。
第1損失材層4は、前記ポリマー以外の、石膏材、セメント材等から成ってもよく、充填材を配合することが可能な材料を適宜選択することもできる。
磁性損失材料および誘電損失材料のポリマー材料への配合量は、導体素子層を付与した構成で、所望の特定周波数帯域において高い吸収性能(高い受信効率)が得られるように決定すればよい。すなわち、磁性損失材料および誘電損失材料の配合量が適正量よりも少ない場合は、材料の複素比誘電率および複素比透磁率が実部、虚部共に低くなりすぎて、各金属製導体素子層5,7によっても、対象とする電磁波の周波数に整合できなくなり、逆に、磁性損失材料および誘電損失材料の配合量が適正量よりも多い場合は、材料の複素比誘電率および複素比透磁率が実部、虚部ともに高くなりすぎて、対象とする電磁波の周波数に整合できなくなる。これらの配合量を調節して、広帯域にわたり電磁波を吸収できる電磁波吸収体1を実現することによって、要求される高い厚み精度の問題を回避し、より容易に電磁波吸収体1を製造することができる。
第2損失材層3についても、第1損失材層4と同様の損失材を用いることができ、同一の損失材であってもよいし、異なる損失材であってもよい。用途に合わせ、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、木材、石膏、セメント、セラミックス、不織布、発泡樹脂、断熱材、難燃紙を含む紙、ガラスクロス等の導電性を有さない誘電材料であれば使用できる。もちろん誘電損失材や磁性損失材を適宜配合することもできる。
電磁波反射板2は、金、白金、銀、ニッケル、クロム、アルミニウム、銅、亜鉛、鉛、タングステン、鉄などの金属であってもよく、樹脂に上記金属の粉末、導電性カーボンブラックの混入された樹脂混合物、あるいは導電性樹脂のフィルム等であってもよい。上記金属等が、板、シート、フィルム、不織布、クロス等に加工されたものであってもよい。また金属箔とガラスクロスを組み合わせた形態でもよい。あるいはまた合成樹脂性フィルム上に、膜厚たとえば600Åの金属層が形成された構成を有してもよい。また、導電インク(導電率が5,000S/m以上)を基板上に塗布した構成であってもよい。
上述の電磁波反射板2の構成材料を用いて、導体素子層5および導体素子層7の第1および第2の金属製導体素子を形成することができる。第1および第2の金属製導体素子は、フィルム上にアルミニウムなどの蒸着、メッキ処理、エッチング処理もしくはスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット等の方法で形成されてもよい。しかしこれらに限定されることはなく、たとえば第1および第2導体素子の各素子模様を第1損失材層4もしくは第2損失材層3に直接蒸着、印刷、および塗工させ、基材となるフィルムを用いずに、利用することも可能である。
また、さらに他の形態として、素子受信手段100および損失材から成る損失材層3,4の近傍に、空間層が設けられる。空間層は、前記各層2〜7(第2導体素子層7および表面層6)間に配置されてもよく、各層内に設けられてもよい。たとえば素子受信手段100の層である各導体素子層5,7の厚み方向の少なくともいずれか一方側に隣接して、または各導体素子層5,7中に設けられる。空間層の厚みは、20μm以上100mm以下であってもよい。このような空間層を設けることによって、広帯域の電磁波に対する吸収効率を高くすることができる。
また、さらに他の形態として、表面層6から第2損失材層3までの構成(第2導体素子層7および表面層6は無くてもよい)が、電磁波反射板2の厚み方向両側に、第2損失材層3を対向させてそれぞれ設けられてもよい。このような構成にすれば、厚み方向両側からの電磁波を吸収することができる。
また第1導体素子層5の第1導体素子12および第2導体素子層7の第2導体素子18は、前述の形状に限定されるものではない。
次の形態が可能である。
(1)電磁波入射方向と交差する方向に電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子を有し、電磁波を受信する素子受信手段と、
素子受信手段の近傍に設けられ、電磁波のエネルギを損失させる損失材とを含むことを特徴とする電磁波吸収体。
電磁波入射方向と交差する方向に電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子を有する素子受信手段が設けられ、この素子受信手段によって、電磁波を効率良く受信することができる。連続導体素子は、広範囲にわたって連続した構成であり、特定の共振周波数を有する導体素子を並べた構成のように特定の周波数の電磁波だけを受信するのではなく、広い周波数帯域の電磁波を受信することができる。
さらに素子受信手段の近傍に、損失材が設けられており、素子受信手段によって受信される電磁波のエネルギが損失される。言い換えるならば電磁波のエネルギを熱エネルギに変換して吸収することができる。このように素子受信手段を用いることによって、広周波数帯域の電磁波を効率良く受信して吸収することができる。このように広周波数帯域の電磁波の吸収効率を高くすることができるので、広周波数帯域の電磁波に対する高い吸収性能を得ることができる。
したがって広周波数帯域の電磁波を吸収できる電磁波吸収体を、薄型化および軽量化することが可能であり、さらに損失材の材質の選択の自由度が高くなって、柔軟でかつ強度的に優れ、施工性に優れた電磁波吸収体を得ることができる。損失材は、たとえば、誘電性損失材であってもよいし、磁性損失材であってもよいし、またこれを積層するなどして組合せてもよい。
電磁波吸収体は、電磁波が入射される側と反対側の表面部に導電性材料から成る電磁波反射手段が設けられる構成でもよいし、前記反対側の表面部が導電性材料から成る構造物(導電性反射層として機能)に接触及び該構造物を反射層として利用可能な位置関係となる状態で用いてもよい。
先行技術として例示したパターン層を用いる電波吸収体の吸収原理は、(1)誘電損失または磁性損失を有する吸収層による電波の熱への変換、(2)表面パターンから反射する電波と導電性反射板から反射する電波の位相差を利用した干渉効果による電波消滅、によるものとしている。
原理的には伝送線路のモデルで等価回路をつくり、入力インピーダンスを377Ωに近づけて、電磁波吸収性を発現させるという従来からの設計方法であるが、パターンという異物が電磁波入力面にある結果、等価回路的に吸収体の厚さを薄くするのと同じ効果を得ることができるとしてパターンの形状を決めている。これは結局、単一周波数の電磁波に整合を取るという設計であり、事実、これらの電磁波吸収体の吸収する周波数は単一か、高次モードで起きる共振を利用した二つの周波数の吸収が起きる程度であった。また共振という現象を利用することから、各周波数の電磁波吸収周波数帯域が狭く、この結果斜入射のように電磁波入射条件を変えた場合、共振周波数がずれてしまうものが多く見られた。
本形態が先行文献と異なる特徴は、まず構成的には電磁波を受信する導電性素子を平面的に連続した構成としたことにある。一般に、金属面などの導体面は電磁波を反射させるシールド材として用いられる。導体面は周波数に依存せず広帯域の周波数に渡り、シールド性を示すことになる。また先行文献にあるように導体面に開口を設けてスロットアンテナとして機能させた場合は、その開口に適合する電磁波を選択的に透過させ、他の電磁波は反射させるという周波数選択電磁波シールド(FSS)技術のことを目的としていることから、電磁波吸収を意図したものではない。
つまり本形態では電磁波入射側面に、従来、電磁波シールド層として扱われてきた連続した導電性素子よりなる層をおき、その導体より成る層に空孔部を設け、電磁波受信機能を与え、なお且つ空孔部の形状、大きさ、間隔距離、それらの組み合わせを最適化することにより、広帯域周波数の電磁波吸収性能を与えたものであり、このようなパターン層を有する電磁波吸収体はこれまで提案されていなかった。つまり本形態は、連続した導体素子を素子受信手段として電磁波の入射する層に用い、これを損失材層および導電性反射層と積層して薄型、軽量、広帯域の電磁波吸収体を実現したものである。
電気的に連なって連続的に形成される導体素子の場合も、空孔の周囲を利用して電磁波を捕捉することができ、再放射される前に、空孔周囲に発生した電流により誘導される磁束を近接する損失材層により減衰させることが可能であることを見いだしたことと、電磁波を捉えるモードが連続的に形成される導体素子を介するために多周波数において多様に現れ、また多くの結合モードを生む結果、広帯域吸収特性に大きな効果を発現することを見いだしたことが、本形態が先行文献と異なる特徴である。
本形態にて広帯域の電磁波を吸収できる理由は次の通りである。
電気的に連なって連続的に形成される導体素子に空孔を設けるが、これがスロットアンテナとして機能してもよく、特定周波数だけでなく、多様な周波数の電磁波に対する共振モードが現れるように空孔の形状及び配列を工夫している。この場合、空孔部分を導体部分が取り囲む形状から、共振電流が空孔周囲に沿って流れることになり、その結果ループ(コイル)が形成され、電流流動部分の周囲にループ内部を突き抜ける様に、磁束が発生する。この挙動から磁界型のアンテナとなっているといえる。この磁束を近傍の存在する損失材層の磁性損失効果により、熱変換していく。
この場合、損失材層の材料定数(ε’、ε”、μ’、μ”)も広帯域に渡り活性化していることが必要である。本形態の場合、磁性損失だけでなく、誘電損失さらには周波数によってはλ/4に距離を合わせることなどの距離効果等の複合効果で電磁波吸収を実現している。
以上により、広周波数域の電磁波を捉え、共振電流のループ形状から磁束を発生させ、それを広帯域に渡り効率的に損失材層で熱変換させることにより、広帯域の電磁波吸収を実現させている。この磁束を主に利用したことが本形態実現の重要な要因である。
本形態の電磁波吸収体の構成で、(磁性)損失材層を限りなく薄くできる理由は、次の理論的根拠と実験的裏付けに基づいている。
前記、背景技術で記したように、従来種々の形状の導体素子を(磁性)損失材(電磁波吸収体)に付与して電磁波吸収特性を実現する方法が、これまで多く提案されている。
これに対し、本形態は、想起し得る数ある導体素子形状の中から、本形態の構成の電磁波吸収体を見込む入力インピーダンス特性を、FDTD解析法を駆使して詳細に検討し、たとえば、(磁性)損失材層の近傍に設ける素子受信手段の配置から、通常の透磁率特性を有する磁性材料を(磁性)損失材として用いても薄型化できるという、従来のものとは全く相違する新しい導体素子構成を見いだしたものである。たとえば本構成の電磁波吸収体は、十文字空孔と方形空孔を所定の間隔で周期的に配列した導体素子を、電磁波吸収体の電磁波入射側の表面に付着させ、かつ(磁性)損失材の背面に表面と同一、もしくは異なる形状の導体素子を付着させた構成で、その(磁性)損失材を限りなく薄型化している。
本形態の上記構成で、導体素子の寸法を調整することによって、電磁波入射側から電磁波吸収体を見た入力アドミッタンスは、アドミッタンスのサセプタンス成分が増加し、かつ整合周波数は低周波数側に移る。この結果より電磁波吸収体を薄く構成できる。このとき適当な間隔の空隙を加えることにより、さらに電波吸収体を薄くできることになる。
広い周波数帯域の電磁波に対する受信効率の高い素子受信手段を用いて電磁波を受信するようにして、高い収集効率で、電磁波を収集することができる。したがって広い周波数帯域の電磁波に対する電磁波吸収性能を高くし、かつ、薄く、軽く、かつ柔軟性を持たせることもでき、施工性に優れた電磁波吸収体を実現することができる。また素子受信手段が薄型軽量で取り扱いやすく、建物内装用の材料等の異種材料と組み合わせて、電磁波吸収性能を有する設計が可能になり、内装材などとしての設計および製造が容易になる。
(2)連続導体素子、および電磁波入射波方向と交差する方向に電気的に不連続な不連続導体素子が併用される素子受信手段が用いられることを特徴とする電磁波吸収体。
導体素子として電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子と、電気的に不連続な不連続導体素子を有する素子受信手段を用いられる。この構成により、連続導体素子による広帯域吸収性および不連続導体素子による特定周波数の高吸収性を同時に実現する。さらにそれらの導体素子間の結合効果もあり、また広周波数化に寄与することになる。
電気的に連なる導体素子と不連続な導体素子を組み合わせてあり、広い周波数域の電磁波を吸収できることと、特定周波数の電磁波の高吸収を兼ねることができる。
(3)連続導体素子には、形状および寸法のうち少なくともいずれか一方が異なる複数の空孔が形成され、各空孔は、電磁波入射方向と交差する方向に並べて配置されることを特徴とする電磁波吸収体。
導体素子における種類の異なる空孔の周囲の部分での受信動作または受信周波数が異なり、広い周波数帯域の電磁波をより効率的に受信することができる。したがって広周波数帯域の電磁波を効率的に吸収することができる。
連続導体素子には複数の空孔が形成されており、広い周波数帯域の電磁波をより効率的に受信することができる。したがって広い周波数帯域の電磁波を効率的に吸収することができる。
(4)素子受信手段は、電磁波入射方向に積層される複数の導体素子層を有し、各導体素子層に導体素子がそれぞれ設けられ、
少なくともいずれか1つの導体素子層は、連続導体素子から成り、
各導体素子層は、複数の層グループに割振られ、各層グループ毎に損失材がそれぞれ設けられることを特徴とする電磁波吸収体。
電磁波入射方向と交差する方向に導体素子を有する複数の導体素子層を有し、電気的に連なって連続的に形成される連続導体素子を有する導体素子層を少なくとも一層含み、各導体素子層が複数の層グループに割振られて各層グループ毎の近傍に損失材が設けられる。このように導体素子を平面方向だけでなく、立体的に配置することで、より多くの受信モードで電磁波を受信することができ、広帯域特性を実現することになる。
導体素子が立体的に配置され、多くの受信モードで電磁波を受信することができ、広帯域の電磁波を吸収体することができる吸収体特性を実現することができる。
(5)素子受信手段に対して電磁波入射側とは反対側に配置され、電磁波を反射する電磁波反射手段をさらに含むことを特徴とする電磁波吸収体。
導電性反射層が設けられ、電磁波吸収体の設置場所の影響を受けて、導体素子の共振周波数が変化することが防がれる。たとえば電磁波吸収体を、建物内装材に設けても、その内装材の誘電率などの影響を受けて、導体素子の共振周波数が変化してしまうことを防ぐことができる。
電磁波吸収体の設置場所の影響を受けて、導体素子の共振周波数が変化することが防ぐことができる。
(6)導体素子の導電率が5,000S/m以上であることを特徴とする電磁波吸収体。
導体素子の導電率を高くし、受信効率を高くすることができる。導体素子としては、金属および導電性インク等各種のものが使えるものの、その導電率に制限があり、1,000S/mに満たないものは本形態でいう導体素子として機能しないことになる。
(7)導体素子が金属から成ることを特徴とする電磁波吸収体。
導体素子が金属から成り、これに対してカーボンや黒鉛による導電インクでは上述の5,000S/m以上の導電率を安定して得られない。金属で構成させる導体素子が最も好ましい。
導体素子における5,000S/m以上の導電率を安定して得られる。
(8)素子受信手段および損失材を含む積層体の厚さが、0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする電磁波吸収体。
素子受信手段および損失材を含む積層体の厚さが、0.1mm以上10mm以下である。厚さが10mmを越えると、薄型および軽量化の点で問題があるうえ、柔軟性が低くなってしまう。厚さが、0.1mm未満になると、強度が低くなってしまう。これに対して、厚さが、0.1mm以上10mm以下であるので、薄型および軽量で、柔軟性もある、かつ強度的に優れた電磁波吸収体を実現することができる。したがって取扱を容易に、施工性に優れ、かつ設置場所の制限の少ない電磁波吸収体を実現することができる。
積層体の厚さが、0.1mm以上10mm以下であるので、薄型および軽量で、柔軟性が高い電磁波吸収体を実現することができ、取扱を容易に、施工性に優れ、かつ設置場所の制限の少ない電磁波吸収体を実現することができる。
(9)素子受信手段および損失材を含む積層体の単位面積あたりの質量が、0.2kg/m2以上20kg/m2以下であることを特徴とする電磁波吸収体。
質量が、0.2kg/m2以上10kg/m2である。質量が5kg/m2を越えると、薄型および軽量化の点で問題があるうえ、厚さが大きくなって柔軟性が低くなってしまう。質量が、0.2kg/m2未満になると、厚さが小さくなり過ぎて強度が低くなってしまう。これに対して、質量が0.2kg/m2以上10kg/m2であるので、薄型および軽量で、柔軟性もある、かつ強度的に優れた電磁波吸収体を実現することができる。したがって取扱を容易に、施工性に優れ、かつ設置場所の制限の少ない電磁波吸収体を実現することができる。
積層体の質量が、0.2kg/m2以上20kg/m2であるので、薄型および軽量で、柔軟性が高い電磁波吸収体を実現することができ、取扱を容易に、施工性に優れ、かつ設置場所の制限の少ない電磁波吸収体を実現することができる。
(10)連続導体素子には、複数の空孔が形成され、空孔は、円形、多角形、角部の外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有することを特徴とする電磁波吸収体。
上述のように様々な形状、寸法の空孔を設けることができ、それにより広帯域の電磁波を受信することができる。この場合、中心になる形状は方形(四角形)である。
様々な形状、寸法の空孔を形成することが可能になり、これらを組合せることによって、広帯域の電磁波を吸収することができる。
(11)連続導体素子には、複数の空孔が形成され、
各空孔は、十文字形状に形成される十文字空孔と、四角形状に形成される方形空孔とを有し、
十文字空孔と方形空孔とは、電磁波入射方向と交差する方向に並べて設けられ、
各十文字空孔は、電磁波入射方向と交差する方向に整列して配置され、
各方形空孔は、十文字空孔に囲まれる領域に、その領域を塗潰すように配置されることを特徴とする電磁波吸収体。
十文字形状に形成され、相互に間隔をあけて整列して設けられる十文字空孔と、十文字空孔に囲まれる領域に、十文字空孔から間隔をあけて配置され、十文字空孔に囲まれる領域を塗潰すように設けられる方形空孔とを有する。十文字空孔は、空孔長が吸収すべき電磁波に対して共振するように最適化され、方形空孔は、方形空孔の外周長が吸収すべき電磁波に対して共振するように最適化されている。このようにして、効率良く電磁波を受信する素子受信手段を実現することができる。
十文字空孔は、十文字状で構成されるが、その構成を線分に分割して、独立の線分の空孔を配置する形状でも同様の効果を得られる。
また十文字空孔は、放射状に延びる部分を相互に突合せるように配置され、方形空孔は、十文字空孔に囲まれる領域に対応する形状に形成されてもよい。このような配置は、十文字空孔と方形空孔の組み合わせで、受信効率が最適(高くなる)組み合わせである。したがって吸収効率の高い、電磁波吸収体を実現することができる。
十文字空孔と、方形空孔とを有し、各空孔寸法が、各空孔の周囲の部分が吸収すべき電磁波に対して共振するように最適化されている。したがって効率良く電磁波を受信する素子受信手段を実現することができる。
(12)行列状に並べられた4つの方形空孔間の十文字領域に十文字空孔が形成される空孔群を1つの単位空孔群として、複数の単位空孔群が、電磁波入射方向と交差する方向に整列して並べられることを特徴とする電磁波吸収体。
十文字空孔と方形空孔とをできるだけ無駄な領域を形成することなく、効率良く配置して、広周波数帯域の電磁波を受信することができる素子受信手段を実現することができる。
十文字空孔と方形空孔とをできるだけ無駄な領域を形成することなく、効率良く配置することができる。
(13)連続導体素子、および電磁波入射方向と交差する方向に電気的に不連続な不連続導体素子が併用される素子受信手段が用いられ、
不連続導体素子は、円形、多角形、角部の外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有し、
連続導体素子には、複数の空孔が形成され、
不連続導体素子の形状、寸法および間隔寸法ならびに不連続導体素子と空孔との間隔寸法のうち少なくともいずれか1つは、吸収すべき電磁波の周波数帯域に基づいて決定されることを特徴とする電磁波吸収体。
各空孔の形状、寸法および間隔寸法のうち少なくともいずれか1つは、吸収すべき電磁波の周波数帯域に基づいて決定される。これによって吸収すべき周波数の電磁波を効率良く受信することができ、その周波数の電磁波を効率良く吸収することができる。
吸収すべき周波数の電磁波を効率良く受信することができ、その周波数の電磁波を効率良く吸収することができる。
(14)連続導体素子、および電磁波入射方向と交差する方向に電気的に不連続な不連続導体素子が併用される素子受信手段が用いられ、
不連続導体素子は、円形、多角形、角部の外形線が曲線である略多角形、紐状に延びる形状およびそれらの組合せから選ばれる形状を有し、
連続導体素子には、複数の空孔が形成され、
不連続導体素子の形状、寸法および間隔寸法ならびに不連続導体素子と空孔との間隔寸法のうち少なくともいずれか1つは、吸収すべき電磁波の周波数帯域に基づいて決定されることを特徴とする電磁波吸収体。
特定周波数での吸収性の向上と導体素子間の複雑な結合を導入することができ、広帯域電磁波吸収体を得ることができる。
特定周波数での吸収性の向上と、各導体素子の相互の配置関係などを調整による広帯域化とを実現することができる。
(15)損失材の特性値は、吸収すべき電磁波の周波数帯域を大きくするように決定されることを特徴とする電磁波吸収体。
吸収可能な電磁波の周波数帯域を広くすることができ、広周波数帯域の電磁波に対する吸収効率が高い電磁波吸収体を得ることができる。
(16)素子受信手段および損失材層の近傍に空間層を設けたことを特徴とする電磁波吸収体。
空間層を素子受信手段の層の前後、あるいは素子受信手段の層の中、損失材の前後、あるいは損失材の層の中にも設けることができる。その空間層間隔は50μmから10mmまでの範囲であり、これにより広周波数帯域の電磁波に対する吸収効率が高い電磁波吸収体を得ることができる。
空間層が設けられるので、広帯域の周波数に対する吸収効率を高くすることができる。
損失材の特性値が、電磁波の吸収効率が高くなるように決定されており、電磁波を効率良く吸収することができる。
(17)難燃性、準不燃性または不燃性が付与されることを特徴とする電磁波吸収体。
難燃性、準不燃性または不燃性が得られる。建築内装材またはそれに積層して用いる場合には、建築内装材に要求される難燃性、準不燃性、または不燃性を同様に満たす必要がある。これによって建物内装材またはそれに積層して好適に用いることができる。難燃性、準不燃性または不燃性を付与するにあたっては、たとえば難燃剤または難燃助剤などを配合するようにしてもよい。
難燃性、準不燃性または不燃性が付与されており、建物内装材またはそれに積層して好適に用いることができる。
(18)電磁波を反射する電磁波反射手段を有し、
素子受信手段および損失材を複数2つの積層体を有し、
各積層体が電磁波反射手段を挟むようにして、表裏に設けられることを特徴とする電磁波吸収体。
正反対の方向から来る電磁波を1つの電磁波吸収体で同時に吸収することができ、また広帯域の電磁波を吸収することができる。
1つの電磁波反射層を介し表裏の方向の電磁波を同時に吸収することができる。
(19)前記電磁波吸収体を用いることによる電磁波吸収方法である電磁波吸収体。
電磁波吸収体を用いて、高い吸収効率で広帯域の電磁波を吸収することができる。
電磁波吸収体を用いて、高い吸収効率で、電磁波を吸収することができる。