JP2019068355A - ミリ波レーダー用カバー - Google Patents

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健人 多田
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Abstract

【課題】ミリ波レーダーの電磁波(ミリ波)の有効活用を図るとともに、不要電磁波の放射を十分に抑制することが可能なミリ波レーダー用カバーを提供する。【解決手段】アンテナと、当該アンテナを駆動する電子回路とを備えたミリ波レーダーを収納するミリ波レーダー用カバーであって、ミリ波レーダーを保護するとともに、アンテナから発振するミリ波を透過させるためにミリ波レーダーの正面に設けられる第1の部位と、第1の部位を除きアンテナおよび電子回路を収納するための収納空間を有する第2の部位とを備え、第1の部位は、ミリ波の周波数帯において負の比誘電率を有する第1構成材と、ミリ波の周波数帯において正の比誘電率を有する第2構成材とが少なくとも1層以上積層された積層構造体からなるようにする。【選択図】図3

Description

本発明は、ミリ波レーダー用カバーに関し、例えば、自動車等の自動運転を可能とする車載用のミリ波レーダーを収納するミリ波レーダー用カバーに関する。
従来、車載用のミリ波レーダーにおいては、電磁波を受発振するアンテナと、そのアンテナを駆動する駆動回路および電源を含む電子回路とによって構成されている。
電磁波を受発振するアンテナのサイズ(寸法)は、アンテナの形式にも依存するが、多くの場合、電磁波の周波数が高いほど波長が短くなるため、同形式のアンテナでは周波数が高いほど小さくなる。また、電子回路としては、半導体技術の進歩により集積化、微細化が進み、この分野に限らず、急激に小型化が進んでいる。
これに対して、従来の低周波数のレーダー製品や、半導体技術がそれほど進歩していない時代の電子回路搭載製品では、アンテナおよび電子回路のサイズ(寸法)が大きいため、アンテナおよび電子回路が別筐体となっており、たとえ同一筐体であってもアンテナおよび電子回路が筐体内で独立して配置されることが多かった。
ミリ波レーダーの電気的な構成部品であるアンテナおよび電子回路の小型化によって、これらのアンテナおよび電子回路を同一の筐体内に収納可能としたレーダーカバーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
このように、アンテナおよび電子回路が同一の筐体内に収納可能となったり、或いは、近接された状態で搭載されることになったので、アンテナと電子回路とを物理的に仕切って区分けすることが困難となり、アンテナと電子回路との境界が不明確になりつつある。
一方、これらのミリ波レーダーの構成部品を収納する筐体の設計においては、電磁波(ミリ波)の有効活用の観点、および、電子機器に要求される不要電磁波の放射抑制の観点から、筐体の電磁波伝搬特性を考慮する必要がある。
従来のように、アンテナおよび電子回路が別筐体となっていたり、互いに独立して配置されていた場合、ミリ波レーダーの有効活用と不要電磁波の放射抑制の2つの観点を考慮してそれぞれ単独に筐体を設計することができた。
しかしながら、アンテナおよび電子回路の小型化が進み、アンテナおよび電子回路が非常に近接した状態で搭載される近年のミリ波レーダーでは、電磁波(ミリ波)の有効活用の観点、および、電子機器に要求される不要電磁波の放射抑制の観点を同時に満足する筐体設計が困難となっている。
具体的には、ミリ波レーダーの部位ごとに筐体材料への電磁波の透過性、或いは、遮蔽性の要求が異なるため、部位ごとに筐体材料の設計仕様が異なっていた。図16は、要求される設計仕様を部位A、Bと周波数帯I、IIとに分けてまとめたものである。
部位については、ミリ波レーダーとして使用するミリ波を透過・遮蔽させる観点から、電磁波(ミリ波)を受発振する部位A(レーダーではレドームに相当する部分)と、当該部位Aを除き、ミリ波レーダーを収納する残りの部位Bとの2つに分けられている。
また、設計を考慮する周波数についても、機能上、電磁波として使用するミリ波帯の周波数帯I(76.5GHz)と、不要電磁波の放射抑制および外部からの電磁波侵入を考慮すべき広い周波数帯、特に1GHz以下のEMC((Electromagnetic Compatibility)領域(ノイズ対策領域)の周波数帯II(約1GHz以下)との2つに分けられている。なお、ミリ波帯の周波数帯Iとしては、76.5GHzに限らず、76GHz〜81GHzの範囲で任意に設定されてもよい。
これらの部位A、B、および、周波数帯I(76.5GHz)、周波数帯II(約1GHz以下)を考慮したときの筐体材料に対する電磁波の透過率Tは、部位A、B、周波数帯I(76.5GHz)、周波数帯II(約1GHz以下)ごとに設定する必要がある。
例えば、部位Aかつ周波数帯I(約76.5GHz以下)の領域AIでは、ミリ波レーダーのレーダー機能を実現させるためにミリ波の電磁波を透過させる必要性があるので、その電磁波に対する筐体材料の透過率Tは「1」であることが望ましい。ここで、透過率Tが「1」であるというのは、筐体材料が電磁波を透過する全透過の状態のことをいう。
特に、レーダー用途の場合、理論上、電磁波がミリ波レーダーのアンテナと対象物との間の距離の2乗に比例して減衰する。このため、アンテナから送信した後、対象物に反射して戻ってくる往復の距離で考えると、電磁波は距離の4乗に比例して減衰することになり、筐体材料の透過率Tは、製品としての性能(検出感度、確度、精度)に大きく影響する。
例えば、部位Bかつ周波数帯I(76.5GHz)の領域BIでは、機能上、ミリ波の電磁波を透過させる必要性がなく、むしろ外部の他の機器から電磁波の干渉、混信を防ぐためにミリ波の侵入を防止したい。すなわち、ミリ波の電磁波を遮蔽させるために筐体材料の透過率Tは「0」であることが望ましい。ここで、透過率Tが「0」であるというのは、筐体材料が電磁波を一切透過させない全遮蔽の状態のことをいう。
部位Aかつ周波数帯II(約1GHz以下)の領域AII、および、部位Bかつ周波数帯II(約1GHz以下)の領域BIIにおいても、不要電磁波の放射抑制の観点から、EMC領域における周波数帯II(約1GHz以下)の電磁波を透過させることなく遮蔽させるために筐体材料の透過率Tは「0」であることが望ましい。
特開2013−102512号公報
このような上述した構成のミリ波レーダーの筐体における部位Aは、周波数帯I(76.5GHz)における筐体材料の透過率Tが「1」であり、周波数帯II(約1GHz以下)における筐体材料の透過率Tが「0」であることが望まれており、周波数帯I(76.5GHz)、周波数帯II(約1GHz以下)によって全く正反対の特性が要求されている。
しかしながら、このような正反対の特性を同時に満足する筐体の材料は存在しない。このため、従来は、筐体材料の比誘電率による波長短縮効果を考慮し、使用する電磁波の半波長の整数倍の厚さを有する筐体を用いて、周波数帯I(76.5GHz)の電磁波に対する筐体材料の透過率Tを「1」にし、レーダーとしての機能を優先する設計を行う一方、周波数帯II(約1GHz以下)の電磁波に対する筐体材料の透過率Tを「0」にすることについてはあまり考慮されずに設計されていた。
したがって、従来の材料の筐体では、ミリ波レーダーの電磁波の有効活用を図ることはできるものの、電子機器に要求される不要電磁波の放射を十分に抑制することは困難であった。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、ミリ波レーダーの電磁波の有効活用を図るとともに、不要電磁波の放射を十分に抑制することが可能であり、かつ、外部からの不要電磁波の侵入を防止可能なミリ波レーダー用カバーを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明は、アンテナ軸の水平面に対して45度傾斜した直線偏波用アンテナと、当該直線偏波用アンテナを駆動する電子回路とを備えたミリ波レーダーを収納するミリ波レーダー用カバーであって、前記ミリ波レーダーを保護するとともに、前記直線偏波用アンテナから発振するミリ波の電磁波を透過させるために前記ミリ波レーダーの正面に設けられる第1の部位と、前記第1の部位を除き前記直線偏波用アンテナおよび前記電子回路を収納するための収納空間を有する第2の部位とを備え、前記第1の部位は、前記ミリ波の周波数帯において負の比誘電率を有する第1構成材と、前記ミリ波の周波数帯において正の比誘電率を有する第2構成材とが少なくとも1層以上積層された積層構造体からなり、前記第1構成材は、前記アンテナ軸の水平面に対して45度傾斜した複数の第1格子と、当該複数の第1格子に対して90度傾斜した複数の第2格子とを有し、前記直線偏波用アンテナから前記ミリ波の周波数帯において発振される直線偏波の電磁波に対する前記第1構成材の前記第1格子および前記第2構成材の透過率を1近傍の値とし、他の直線偏波用アンテナから前記ミリ波の周波数帯において発振される直線偏波の電磁波に対する前記第1構成材の前記第2格子および前記第2構成材の透過率を0近傍の値としたことを特徴とする。
本発明に係るミリ波レーダー用カバーにおいて、前記第1構成材の前記第1格子および前記第2構成材は、前記ミリ波の周波数帯よりも低い1GHz以下の周波数帯に対して見かけ上の透過率が0近傍の値となることが好ましい。
本発明に係るミリ波レーダー用カバーにおいて、前記第1構成材は、前記複数の第1格子と、当該複数の第1格子よりも数の多い前記複数の第2格子とによって斜めに傾斜した長方形の格子状に形成された導電性材料からなることが好ましい。
本発明に係るミリ波レーダー用カバーにおいて、前記第2構成材は、外部から前記直線偏波用アンテナおよび前記電子回路を保護する誘電体材料からなることが好ましい。
本発明に係るミリ波レーダー用カバーにおいて、前記第2の部位は、前記ミリ波の周波数帯および1GHz以下の周波数帯において透過率が0の全遮蔽となることが好ましい。
本発明によれば、ミリ波レーダーの電磁波の有効活用を図るとともに、不要電磁波の放射を十分に抑制することが可能であり、かつ、外部からの不要電磁波の侵入を防止可能なミリ波レーダー用カバーを実現することができる。
本発明の実施の形態に係るミリ波レーダー用カバーの全体構成を示す略線的斜視図である。 ミリ波レーダー用カバーと、その内部に収納されたアンテナおよび電子回路を示す略線的断面図である。 ミリ波レーダー用カバーのレドームの構成する積層構造体の第1構成材および第2構成材を示す略線的斜視図および断面図である。 格子状の導電性材料からなる第2構成材の構成を示す略線的斜視図である。 透過率と反射率の説明に供する略線図である、 電子伝導性の導電性材料の比誘電率と周波数との関係を示すグラフである。 格子状からなる導電性材料の比誘電率と周波数との関係を示すグラフである。 積層構造体の比誘電率および比透磁率の計算結果を示すグラフである。 積層構造体の透過率を示すグラフである。 直線偏波に対応した積層構造体の第1構成材および第2構成材を示す略線的斜視図および断面図である。 直線偏波に対応した第1構成材の外観構成を示す正面図である。 直線偏波に対応した第1構成材の構成要素を示す正面図である。 自身の車両から放射される直線偏波LP1に対応した枠体W1による透過率の周波数特性を示すグラフである。 対向車から放射される直線偏波LP2に対応した枠体W2による透過率の周波数特性を示すグラフである。 ミリ波レーダー用カバーの部位A、Bおよび周波数帯I、IIごとに要求される透過率を示す図表である。
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ここでは、説明の便宜上、図1および図2において、ミリ波レーダー用カバー1の正面側を矢印a方向とし、背面側を矢印b方向とする。
<ミリ波レーダー用カバーの全体構成>
図1および図2に示すように、ミリ波レーダー用カバー1は、ミリ波の周波数帯(30〜300GHz)のうち、例えば76.5GHzの電磁波を受発振するアンテナ30と、そのアンテナ30を駆動する駆動回路および電源等を含む電子回路40とを収納するとともに外部から保護する筐体である。
ミリ波レーダー用カバー1は、電磁波を受発振するアンテナ30の正面に配置されるレドームに相当する第1の部位Aと、その第1の部位Aを除き、アンテナ30および電子回路40を収納する収容空間が形成された有底角筒形状の収容部に相当する第2の部位Bと、を備えている。
図3(A)および(B)に示すように、ミリ波レーダー用カバー1の第1の部位Aには、第1構成材11と、当該第1構成材11を正面側(矢印a方向)および背面側(矢印b方向)の双方から挟持する第2構成材12とにより積層された3層の積層構造体10を用いている。
また、ミリ波レーダー用カバー1の第2の部位Bは、鉄等の金属製のシールド材料または樹脂等に金属メッキが施された複合材料によって形成されており、電子回路40からの不要電磁波の放射抑制および外部の電子機器からの干渉、混信を防止している。すなわち、第2の部位Bについては、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)、および、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)の何れにおいても透過率Tは「0」である。
なお、第1の部位Aは、上述したように、ミリ波帯の周波数帯I(76.5GHz)では、ミリ波レーダーのレーダー機能を実現させるためにミリ波を通過させる必要性があるので、電磁波に対する積層構造体10の透過率Tは「1」であることが望ましい。一方、第2の部位Bは、EMC領域(ノイズ対策領域)の周波数帯II(約1GHz以下)では、不要電磁波の放射抑制の観点から、電磁波を透過させることなく遮蔽させるために積層構造体10の透過率Tは「0」であることが望ましい。
<積層構造体の構成>
このように第1の部位Aにおいては、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)では透過率Tが「1」、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)では透過率Tが「0」となるような全く正反対の特性が要求されている。この正反対の要求を満足する材料は存在しないため、本発明では人工物である積層構造体10を用いることにした。
積層構造体10において、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において見かけ上の透過率Tが「1」、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)において見かけ上の透過率Tが「0」を同時に満足させる筐体として、図3に示すように、第1構成材11および第2構成材12を用いる。ただし、透過率Tが「1」または「0」というのは、あくまで理論上の値であり、実際に実現および評価可能な値として、透過率T=1に対しては透過率T=0.99(−0.1dB)以上の1近傍の値、透過率T=0に対しては透過率T=0.1(−20dB)以下の0近傍の値とする。
図3(A)、(B)に示したように、この場合の積層構造体10は、正面側(矢印a方向)に配置された第2構成材12と背面側(矢印b方向)に配置された第2構成材12との間に第1構成材11を挟み付けて接着剤等により一体に形成した3層のサンドイッチ構造である。ただし、これに限るものではなく、第2構成材12と第1構成材11とをそれぞれ少なくとも1層以上積層していれば、2層であってもよく、または第2構成材12および第1構成材11がそれぞれ複数積層された4層以上の多層積層構造体であってもよい。
図4に示すように、第1構成材11は、全体的に矩形状を有し、例えば銅(金属)のような電子伝導性の導電性材料であって、例えば銅の金属線を用いて網戸のような格子状に形成されている。なお、第1構成材11は、矩形状に限らず、レーダーの形状に応じて、円形、楕円形等のその他種々の形状であってもよい。またなお、第1構成材11の導電性材料としては、銅等の金属全般に限るものではなく、カーボン、導電性高分子、導電性ポリマー等や、これら(金属、カーボン、導電性高分子、導電性ポリマー等)を樹脂やゴム、エラストマー等に配合し、導電性を付与した材料等であってもよい。
具体的には、第1構成材11は、格子を形成している枠の厚みt、枠幅d、枠の配列間隔aによって格子の大きさや数等が決定される。なお、配列間隔aは、格子を構成している互いに隣接した枠の内側端と枠の内側端との間の距離としているが、これに限るものではなく、枠の中心と枠の中心との間のセンター間距離としてもよい。
第2構成材12は、ミリ波レーダー用カバー1の筐体として必要な材料強度、耐性を有する樹脂(例えば、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン等)、ゴム等の誘電体によって形成されている。この第2構成材12は、第1構成材11と同様に全体的に矩形状を有し、当該第1構成材11と同じ大きさ、または、第1構成材11がはみ出ることのない僅かに大きなサイズである。
ここで、図5に示すように、積層構造体10は、自由空間に配置されるため、当該積層構造体10の正面側(矢印a方向)の表面10aと、積層構造体10の内部面10bとの2界面でアンテナ30から放射された電磁波の反射が起こる状況である。
このような状況において、自由空間に配置される積層構造体10の透過率Tは、反射率Γとの関係で成立し、次の式(1)に示すように、空気および積層構造体10のような異なる物質の波動インピーダンスηによって決まる。すなわち、積層構造体10の透過率Tは、自由空間(空気)の波動インピーダンスη1、当該積層構造体10と等価的な波動インピーダンスη2によって決まる。なお、反射率Γ=(η2−η1)/(η2+η1)である。
T=1+Γ
=1+(η2−η1)/(η2+η1)
=2・η2/(η2+η1)………………………………………………………(1)
T:透過率
Γ:反射率
η1:入射側の物質(空気)の波動インピーダンス
η2:出射側の物質(積層構造体10)の波動インピーダンス
したがって、式(1)により、入射側の物質(空気)の波動インピーダンスη1と、出射側の物質(積層構造体10)の波動インピーダンスη2とを等しくすれば透過率T=1とすることができる。これは、逆に、出射側の物質(積層構造体10)の波動インピーダンスη2が波動インピーダンスη1よりも小さければ透過率T≒0とすることができることを意味する。
ここで、波動インピーダンスηは、その物質の誘電率と透磁率で定められ、次の式(2)によって表される。
η=√(μ0・μr/ε0・εr)……………………………………………………(2)
μ0:真空の透磁率
μr:比透磁率
ε0:真空の誘電率
εr:比誘電率
したがって、入射側の物質(空気)の波動インピーダンスη1は、次の式(3)で表され、出射側の物質(積層構造体10)の波動インピーダンスη2は、次の式(4)で表される。
η1=√(μ0・μr1/ε0・εr1)……………………………………………(3)
η2=√(μ0・μr2/ε0・εr2)……………………………………………(4)
このように波動インピーダンスη1、η2は、式(3)、式(4)で表されるため、自由空間(空気)の比透磁率μr1、比誘電率εr1、および、積層構造体10の等価的な比透磁率μr2、比誘電率εr2によって透過率Tが決まることになる。
ここで、式(3)において、自由空間(空気)の比透磁率μr1、比誘電率εr1は双方ともにほぼ「1」と考えると、積層構造体10の等価的な比透磁率μr2と比誘電率εr2とが同一の値であれば、空気の波動インピーダンスη1と、積層構造体10の等価的な波動インピーダンスη2とが同一の値となり、透過率T=1を実現できることになる。
逆に、積層構造体10の等価的な比透磁率μr2と比誘電率εr2との比が小さくなれば、すなわち、分母である比誘電率εr2が負の値であり、かつ、絶対値が大きくなれば、波動インピーダンスη2が「0」に近づくため、透過率T=0を実現できることになる。
しかしながら、非磁性体の比透磁率μrはほぼ1の値をとるが、一般的に利用される非磁性体の工業用材料として、最も低いとされるポリテトラフルオロエチレンでも比誘電率εrは2であり、比誘電率と比透磁率とを同等とするためには磁性材料を配合し、比透磁率を上げる必要がある。しかし、磁性材料は電磁波の損失が大きいため使用には適さず、同様に、磁性材料単体でも使用には適さない。
そこで、本発明では、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において負の比誘電率εrを持つ人工材料からなる第1構成材11と、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において通常の正の比誘電率εrを持つ第2構成材12を積層させた積層構造体10を形成することにより、当該積層構造体10としての等価的な比透磁率μr2と比誘電率εr2とが同一になるように設定することができる。
この積層構造体10では、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において当該積層構造体10の等価的な比誘電率εrを等価的な比透磁率μr=1に合わせ、かつ、EMC領域(ノイズ対策領域)の周波数帯II(約1GHz以下)においては、積層構造体10の等価的な比誘電率εrが負であり、かつ、絶対値としては大きくさせる必要がある。
積層構造体10を形成する第1構成材11は、例えば、一般的に金属からなる電子伝導性の導電性材料からなる。ただし、第1構成材11は金属である必要は必ずしもなく、イオン伝導やホール伝導ではなく電子伝導性の導電性材料であればよい。例えば、金属以外には、カーボン、導電性高分子、導電性ポリマー等や、これらを樹脂やゴム、エラストマー等に配合し、導電性を付与した材料等がある。
第1構成材11に用いられる導電性材料の比誘電率εrは、電子伝導についてのモデルであるドルーデモデルにより記述され、図6に示すように、プラズマ振動数fp以上の周波数f(f≧fp)では正の値を示し、プラズマ振動数fpよりも低い周波数f(f<fp)では負の値を示す。ドルーデモデルでは、金属の比誘電率εrは、電子の質量、電荷、および、伝導電子数で与えられ、プラズマ振動数fpは、比誘電率εrが0となる周波数である。
この場合、第1構成材11に用いられる金属の導電性材料では、一般的にプラズマ振動数fpが光の領域の周波数帯にあるので、図7に示すように、このプラズマ振動数fpをマイクロ波、ミリ波からテラヘルツ波の領域近傍に設定し、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)がプラズマ振動数rpよりも僅かに低く、比誘電率εrが0より小さい負の値を持つようにする。このようにした場合、EMC領域(ノイズ対策領域)の周波数帯II(約1GHz以下)については、比誘電率εrが−500以下の負の値を持つようになる。
光の領域の周波数帯にあるプラズマ振動数fpをミリ波の領域の周波数帯I(76.5GHz)の近傍に設定するには、導電性材料における伝導電子数を制限(減少)することにより、金属からなる導電性材料のプラズマ振動数fpを光の領域からミリ波の領域近傍に設定することが可能となる。
伝導電子数を制限するには、具体的には、導電性材料の物理的な寸法や面積を小さくすれば、導電性材料の全体の伝導電子数を減らすことができるので可能である。具体的には、図4に示したように、第1構成材11を格子状に形成し、導電性材料を幾何学的に配置することにより実現することが可能である。すなわち、第1構成材11の面積を減らして電子の数を物理的に制限すればよい。
なお、第1構成材11は、必ずしも金属からなる格子(以下、これを「金属格子」とも呼ぶ。)である必要はない。例えば、第1構成材11としては、ポリイミドフィルムの面に銅箔パターンを印刷した後、エッチングにより格子状に形成することも可能である。第1構成材11の材料や製法については、全体の伝導電子数を制限して所望の比誘電率εrを得ることができれば、いずれの材料、製法であってもよい。
図7には、格子を形成している枠の厚みt=0.2mm、枠幅d=0.06mm、配列間隔a=1.2mmとした場合の第1構成材11の比誘電率εrの計算結果を示す。第1構成材11を格子状として全体の面積を小さくして電子の数を制限するようにしたことにより、図8に示すように、積層構造体10の等価的な比誘電率εrを等価的な比透磁率μr=1に合わせるとともに、光の領域の周波数帯にあるプラズマ振動数fpをミリ波の領域の周波数帯I(76.5GHz)の近傍に設定することができる。その結果、第1構成材11の周波数帯I(76.5GHz)における比誘電率εrは、積層する第2構成材12の誘電率εにも依るが、設計値として比誘電率εrを0より小さく-25より大きく、望ましくは−1以下−10以上程度の−5以下の負の値を持つようにする。周波数帯II(約1GHz以下)については、積層する第2構成材12の誘電率εにも依るが、比誘電率εrは−500以下の負の値を持つようになる。
ただし、第1構成材11の格子については、所望の比誘電率εrに合わせて、枠の厚みt、枠幅d、配列間隔aを適宜設定することが可能であり、丸形状、三角形状等の任意の形状を選択することができる。また、格子の配置パターンについても均等である必要はなく、格子のばらつき具合等の粗密についても任意に設定することが可能である。
第2構成材12は、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において通常の正の比誘電率εrを持つ誘電体である。第2構成材12は、レーダーカバーとして必要な材料強度、加工性、各種耐久性を有していれば適用可能であるが、一段と性能を向上させるために電気的な損失が少ないことが望ましい。具体的には、第2構成材12では、材料の周波数帯I(76.5GHz)における誘電率εを複素誘電率で表した場合の虚数部ε′′が小さい方が望ましく、例えば、0.01以下、さらに望ましくは0.005以下が好適である。
このように、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において負の比誘電率εr(−5以下)を有する第1構成材11、および、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において正の比誘電率εrを有する第2構成材12をそれぞれ少なくとも1層以上積層した積層構造体10を形成する。
これにより、図8に示すように、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において2枚の第2構成材12および1枚の第1構成材11からなる3層構造の積層構造体10の等価的な比誘電率εrを当該積層構造体10の等価的な比透磁率μr=1に合わせ、かつ、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)においては、積層構造体10の等価的な比誘電率εrを負の方向に大きく(−500以下)させることが可能となる。
具体的には、積層構造体10の周波数帯I(76.5GHz)における等価的な比誘電率εrをほぼ1、具体的には0.9〜1.3、より好ましくは1.0に設定し、かつ、積層構造体10の周波数帯II(約1GHz以下)における等価的な比誘電率εrを−370以下、好ましくは、−500以下に設定することが望ましい。
かくして、積層構造体10の等価的な比透磁率μrと比誘電率εrとが同一となり、空気の波動インピーダンスη1と、積層構造体10の等価的な波動インピーダンスη2とが同一の値となる。この結果、図9に示すように、周波数帯I(76.5GHz)において積層構造体10の見かけ上の透過率T=1が実現できることになる。
同時に、積層構造体10の等価的な比透磁率μrと比誘電率εrとの比が小さくなり、分母である比誘電率εr2が負の値であり、かつ、絶対値が大きければ、波動インピーダンスη2が「0」に近づくため、周波数帯II(約1GHz以下)において見かけ上の透過率T=0が実現できることになる。
<作用および効果>
以上の構成において、ミリ波レーダー用カバー1では、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において負の比誘電率を有する第1構成材11と、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において正の比誘電率を有する第2構成材12とが少なくとも1層以上積層された積層構造体10をレドームとして第1の部位Aに用いるようにした。
この積層構造体10は、第2構成材12により内部のアンテナ30および電子回路40を保護する同時に、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)では透過率T=1、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)では透過率T≒0を実現している。
これによりミリ波レーダー用カバー1では、アンテナ30からのミリ波の電磁波を積層構造体10による電気的な減衰なく透過させ、またその反射波を積層構造体10による電気的な減衰なく受信することができる。同時に、ミリ波レーダー用カバー1では、積層構造体10を介して、EMC領域の不要電磁波の放射を抑制し、かつ、外部の他の機器から電磁波の干渉、混信を防ぐことができる。
<実施例>
積層構造体10の具体的な構成として、例えば、第1構成材11が銅の金属格子からなり、第2構成材12がポリイミドからなり、第1構成材11および第2構成材12の双方共に200×200mmの大きさで、第2構成材12、第1構成材11、第2構成材12の順番で3層積層構造とした。
第1構成材11は、厚みt=0.08mmの銅箔を線幅d=0.06mm、縦方向の配列間隔aおよび横方向の配列間隔a=1.2mmとして格子状にエッチングすることにより制作されている。このときの第1構成材11における比誘電率εrは、光の領域の周波数帯にあるプラズマ振動数fpをミリ波の領域の周波数帯I(76.5GHz)の近傍に設定することができる。第2構成材12は、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)における複素比誘電率が3.25-j0.001のポリイミドとし、その厚さを0.31mmとした。
第2構成材12、第1構成材11、第2構成材12の順番に積層した状態で、かつ、接着剤を用いて、60tの圧力によりプレス成型し、3層積層構造の積層構造体10を形成した。この結果、形成された積層構造体10の厚みは0.62mmとなった。すなわち、これは、第1構成材11は2つの第2構成材12によって挟まれた状態で潰され、3層の間に空気が入っていない状態である。
この場合、3層積層構造の積層構造体10は、接着剤を含めてミリ波の周波数帯I(76.5GHz)における透過率T=1、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)における透過率T≒0を実現するように第1構成材11、第2構成材12の比誘電率εr、比透磁率μr等が適宜調整される。
この積層構造体10の等価的な比誘電率εr、比透磁率μrを測定した結果は、図8に示した通りである。さらに、この積層構造体10の透過率Tは、図9に示した通り、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)における透過率T=1、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)における透過率T≒0が実現されている。
<直線偏波用アンテナに対応した積層構造体の構成>
ところで、図2に示すように、ミリ波レーダー用カバー1に設けられたアンテナ30が直線偏波用のアンテナ(以下、これを「直線偏波用アンテナ」ともいう。)30xである場合に最適な積層構造体10xについて次に説明する。
特に、車両に用いられるミリ波レーダー用カバー1では、地面に対して平行なアンテナ軸の水平面を基準とした場合、直線偏波用アンテナ30xを前面から見たときアンテナ軸の水平面から反時計回り方向へ45度傾斜した状態で取り付けられている。
このように取り付けられる理由は、自車の車両から放射される直線偏波の電磁波や、正面の車両から反射された自車の直線偏波の電磁波を送受信できる一方、自車の車両とすれ違う反対車線の対向車から発せられる直線偏波の電磁波については、当該直線偏波用アンテナ30xとの仰角が90度となるため、対向車からの直線偏波の電磁波による干渉を低減させることができるからである。このような手法は、近年広く利用されており、例えば、電気学会論E. 118巻6号,平成10年p292-295において開示されている。
しかしながら、このような干渉低減効果は、直線偏波用アンテナ30xのアンテナ部分においてのみ生じるものであって、直線偏波を考慮していない上述した積層構造体10を用いた場合には、対向車からの直線偏波の電磁波がミリ波レーダー用カバー1の内部に入り込んでしまう。このため、ミリ波レーダー用カバー1の内部において対向車からの直線偏波の電磁波の乱反射によりS/N比が低下したり、電子回路40が誤動作する原因となったり、ミリ波レーダーに対して悪影響を及ぼす可能性があった。
そこで、直線偏波用アンテナ30xから放射される直線偏波の電磁波を効率良く送受信するとともに、対向車からの直線偏波の電磁波による影響を抑制するために、積層構造体10とは異なる構成の積層構造体10xが用いられている。この積層構造体10xの詳細について以下説明する。
図3との対応部分に同一符号を付した図10(A)、(B)に示すように、積層構造体10xは、上述した第1構成材11とは異なる構成の第1構成材21と、当該第1構成材21を正面側(矢印a方向)および背面側(矢印b方向)の双方から挟持する第2構成材12とが積層された3層積層構造体である。ただし、これに限るものではなく、第2構成材12と第1構成材21とをそれぞれ少なくとも1層以上積層していれば、2層であってもよく、または第2構成材12および第1構成材21がそれぞれ複数積層された4層以上の多層積層構造体であってもよい。
第2構成材12は、上述したように、ミリ波レーダー用カバー1の筐体として必要な材料強度、耐性を有する樹脂(例えば、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン等)、ゴム等の誘電体によって形成されている。
この第2構成材12は、第1構成材21と同様に全体的に矩形状を有し、当該第1構成材21と同じ大きさ、または、第1構成材21がはみ出ることのない僅かに大きなサイズである。第1構成材21の厚さt1は、第2構成材12の厚さt2よりも小さく形成されている。ただし、これに限るものではない。
図11に示すように、第1構成材21は、全体的に矩形状を有し、例えば銅(金属)のような電子伝導性の導電性材料であって、例えば銅の金属線を用いて斜めに傾斜された格子状に形成されている。この第1構成材21においても、第1構成材11と同様に、導電性材料として、銅等の金属全般に限るものではなく、カーボン、導電性高分子、導電性ポリマー等や、これら(金属、カーボン、導電性高分子、導電性ポリマー等)を樹脂やゴム、エラストマー等に配合し、導電性を付与した材料等であってもよい。
このように、第1構成材21(図10)に対して正面側(矢印a方向)および背面側(矢印b方向)の双方から第2構成材12で挟持された3層積層構造の積層構造体10xにおいても、車載ミリ波レーダー用周波数である周波数帯I(76.5GHz)において透過率T=1となる一方、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)において透過率T=0.1以下となるように設定されている。
この場合、積層構造体10xでは、車載ミリ波レーダー用周波数であるミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において、前面から見たとき地面と平行なアンテナ軸の水平面から反時計回り方向へ45度傾斜した状態で取り付けられた直線偏波用アンテナ30xからの直線偏波LP1(実線で示す)に対しては透過率T=1となるように設定される。
一方、積層構造体10xでは、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において、直線偏波LP1との仰角が90度となる直線偏波LP2(破線で示す)に対しては透過率T=0.1以下となるように設定される。
このように積層構造体10xにおいて、車載ミリ波レーダー用周波数であるミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において直線偏波LP1の電磁波に対しては透過率T=1とし、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において直線偏波LP2の電磁波に対しては透過率T=0.1以下とするには、主に第1構成材21をどのように設計するかが重要となる。
図11(A)、(B)、および、図12(A)〜(C)に示すように、第1構成材21は、銅の金属線を用いて斜めに傾斜された格子状に形成されており、考え方としては、直線偏波LP1(実線で示す)と平行に配置された複数の格子(以下、これを「第1格子」ともいう。)からなる枠体W1と、直線偏波LP2(破線で示す)と平行に配置された状態、すなわち第1格子に対して90度傾斜した複数の格子(以下、これを「第2格子」ともいう。)からなる枠体W2とを一体に結合したような構造(W1×W2)を有している。
この場合、図11(B)に示すように、第1構成材21は、枠体W1に対応した複数の第1格子と、当該複数の第1格子よりも数の多い枠体W2に対応した複数の第2格子とによって長方形の格子状に形成されている。
実際上、第1構成材21としては、枠体W1および枠体W2が一体に結合された構造であるが、これに限るものではなく、図12に示すように、それぞれ別個に形成された枠体W1(第1格子)と枠体W2(第2格子)とを積層させた構造(W1+W2)の積層構造体であってもよい。ただし、第1構成材21の原理を説明するに際し、枠体W1および枠体W2に分ける場合があるものとする。
ここで、第1構成材21において、直線偏波LP1は枠体W1の影響を受けるが、枠体W2の影響は受けない。また、第1構成材21において、直線偏波LP2は枠体W2の影響を受けるが枠体W1の影響を受けない。
これは、直線偏波の電磁波が枠体W1を通過するとき、偏波面の傾きと枠体W1の格子配列の向きとに応じて電磁波が影響を受けることに起因する。以下に、直線偏波LP1、LP2が枠体W1、W2の影響をどのように受けるかの原理を説明する。
基本的に、直線偏波の偏波面と枠体W1、枠体W2の格子配列の向きとが平行の場合、枠体W1、枠体W2の電子が電磁波によって移動し、当該電磁波のエネルギーを消費するため、直線偏波の電磁波が減衰する。すなわち、直線偏波の偏波面と枠体W1、W2の格子配列の向きとが平行の場合には影響を受けるのである。
一方、直線偏波の偏波面と枠体W1、W2の格子配列の向きとが垂直の場合、枠体W1、W2の電子が電磁波によって移動することができず、電磁波のエネルギーを消費できないので、直線偏波の電磁波が減衰することなく透過する。すなわち、直線偏波の偏波面と枠体W1、W2の格子配列の向きとが垂直の場合には影響を受けないのである。
このような原理にしたがえば、直線偏波LP1は枠体W1の影響を受けるので、このままでは積層構造体10xにおいて直線偏波LP1の透過率T=1とすることができない。
図11に示したように、直線偏波LP1、LP2の透過率Tは、第1構成材21の第1格子を形成している枠の主に枠幅d1、d2、および、配列間隔a1、a2に依存することから、枠体W1、W2の枠幅d1、d2および配列間隔a1、a2を変更することにより移動可能な電子の数を調整し、直線偏波LP1、LP2の電磁波が枠体W1、W2において受ける影響を制御する。
この場合、枠体W1において直線偏波LP1と平行に配置された第1格子の配列間隔a1を広くして移動可能な電子の数を少なくすることにより、直線偏波LP1の電磁波が枠体W1において受ける影響を抑制する。つまり、枠体W1に対して直線偏波LP1の電磁波を透過し易くする(T=1)。
一方、枠体W2において直線偏波LP2と平行に配置された第2格子の配列間隔a2を狭くして移動可能な電子の数を多くすることにより、直線偏波LP2の電磁波が枠体W2において多くの影響を受けるようにする。つまり、枠体W2に対して直線偏波LP2の電磁波を遮断し易くする(T≒0)。
すなわち、積層構造体10xでは、前面から見たときアンテナ軸の水平面に対して反時計回り方向へ45度傾斜した状態で取り付けられた直線偏波用アンテナ30xから放射される直線偏波LP1の電磁波を透過する複数の第1格子からなる枠体W1(T=1)と、対向車から放射される直線偏波LP2の電磁波を遮断する、複数の第1格子に対して90度傾斜された複数の第2格子からなる枠体W2(T≒0)とが一体化された第1構成材21を2枚の第2構成材12で挟み着けた3層積層構造を有している。
すなわち、第1の部位Aは、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において負の比誘電率を有する第1構成材21と、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において正の比誘電率を有する第2構成材12とが少なくとも1層以上積層された積層構造体10xからなる。そして、第1構成材21は、アンテナ軸の水平面に対して45度傾斜した複数の第1格子からなる枠体W1と、複数の第1格子に対して90度傾斜した複数の第2格子からなる枠体W2とを有し、直線偏波用アンテナ30xからミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において発振される直線偏波LP1の電磁波に対する第1構成材21の第1格子からなる枠体W1および第2構成材12の透過率を1近傍の値とし、対向車等の他の直線偏波用アンテナからミリ波の周波数帯I(76.5GHz)において発振される直線偏波の電磁波に対する第1構成材21の第2格子からなる枠体W2および第2構成材12の透過率を0近傍の値とした。
具体的には、積層構造体10xの構成として、上述した積層構造体10と同様に、第1構成材21が銅の第1格子および第2格子からなり、第2構成材12がポリイミドからなり、第1構成材21および第2構成材12の双方共に200×200mmの大きさで、第2構成材12、第1構成材21、第2構成材12の順番で3層積層構造とした。
以下の表1に示すように、第1構成材21は、厚さt1=0.035〜0.65mmであって、枠幅d1=0.05mm〜0.30mm、枠幅d2=0.15mm〜0.65mm、配列間隔a1=0.9mm〜2.0mm、配列間隔a2=0.5mm〜2.0mmとして、斜めの格子状にエッチングすることにより制作されている。なお、第2構成材12は、厚さt2=0.1mm〜0.4mm、第2構成材12の複素比誘電率=3.25-j0.001である。
Figure 2019068355
積層構造体10xとしては、第2構成材12、第1構成材21、第2構成材12の順番に積層した状態で、かつ、接着剤を用いて、60tの圧力によりプレス成型し、3層積層構造を形成した。この結果、積層構造体10xの全体の厚さは0.6mmとなった。すなわち、これは、第1構成材21は2つの第2構成材12によって挟まれた状態で潰され、3層の間に空気が入っていない状態である。
図13は、自身の車両から放射される直線偏波LP1に対応した枠体W1による透過率の周波数特性を示すグラフである。図14は、対向車から放射される直線偏波LP2に対応した枠体W2による透過率の周波数特性を示すグラフである。この場合、図13および図14に示すように、3層積層構造の積層構造体10xは、EMC領域の周波数帯II(約1GHz以下)における直線偏波LP1、LP2の電磁波に対する双方の透過率T≒0、車載ミリ波レーダー用周波数であるミリ波の周波数帯I(76.5GHz)における直線偏波LP1の電磁波に対する透過率T=1、直線偏波LP2の電磁波に対する透過率≒0を同時に実現するように、第1構成材21、第2構成材12の比誘電率εr、比透磁率μr等が適宜調整される。
その結果、第1構成材21および2つの第2構成材12によって積層された積層構造体10xでは、以下の表2に示すように、周波数帯II(約1GHz以下)における直線偏波LP1、LP2の電磁波に対する双方の透過率T≒0、周波数帯I(76.5GHz)における直線偏波LP1の電磁波に対する透過率T=1、直線偏波LP2の電磁波に対する透過率≒0を実現した。
Figure 2019068355
かくして、ミリ波レーダー用カバー1の第1の部位Aに上述した構造の積層構造体10xを用いれば、前面から見たときアンテナ軸の水平面から反時計回り方向へ45度傾斜した状態で自車の車両に設置された直線偏波用アンテナ30xから放射される直線偏波LP1の電磁波を透過させる一方、対向車からの不要な直線偏波LP2の電磁波を遮断させることができる。
この結果、ミリ波レーダー用カバー1では、自車の車両から放射される直線偏波LP1の電磁波や、正面の車両から反射された直線偏波LP1の電磁波を送受信できる一方、自車の車両とすれ違う対向車から発せられる直線偏波LP2の電磁波が入り込むことがないので、直線偏波LP2の電磁波の乱反射によるS/N比の低下や、電子回路40の誤動作等の悪影響を未然に防止することができる。
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、上述した実施の形態においては、ミリ波の周波数帯I(76.5GHz)における透過率Tを「1」とするようにした場合について述べた。しかしながら、本発明はこれに限らず、ミリ波のうち直線偏波用アンテナ30xが76GHz〜81GHzの範囲内において発振する任意の周波数帯の電磁波に合わせ、その周波数帯Iにおける透過率Tを「1」とするようにしてもよい。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るミリ波レーダー用カバー1に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
本願発明のミリ波レーダー用カバーは、自動車等の車載用だけではなく、鉄道、航空機、船舶等の移動手段だけではなく、電気・電子機器およびその他の産業機械等の分野においても利用することが可能である。
1…ミリ波レーダー用カバー、10、10x、10s…積層構造体、10a…表面、10b…内部面、11、21…第1構成材、12…第2構成材、30…アンテナ、30x…直線偏波用アンテナ、40…電子回路、A…第1の部位、B…第2の部位、W1、W2…体

Claims (5)

  1. アンテナ軸の水平面に対して45度傾斜した直線偏波用アンテナと、当該直線偏波用アンテナを駆動する電子回路とを備えたミリ波レーダーを収納するミリ波レーダー用カバーであって、
    前記ミリ波レーダーを保護するとともに、前記直線偏波用アンテナから発振するミリ波の電磁波を透過させるために前記ミリ波レーダーの正面に設けられる第1の部位と、
    前記第1の部位を除き前記直線偏波用アンテナおよび前記電子回路を収納するための収納空間を有する第2の部位と
    を備え、
    前記第1の部位は、
    前記ミリ波の周波数帯において負の比誘電率を有する第1構成材と、前記ミリ波の周波数帯において正の比誘電率を有する第2構成材とが少なくとも1層以上積層された積層構造体からなり、
    前記第1構成材は、前記アンテナ軸の水平面に対して45度傾斜した複数の第1格子と、当該複数の第1格子に対して90度傾斜した複数の第2格子とを有し、
    前記直線偏波用アンテナから前記ミリ波の周波数帯において発振される直線偏波の電磁波に対する前記第1構成材の前記第1格子および前記第2構成材の透過率を1近傍の値とし、他の直線偏波用アンテナから前記ミリ波の周波数帯において発振される直線偏波の電磁波に対する前記第1構成材の前記第2格子および前記第2構成材の透過率を0近傍の値とした
    ことを特徴とするミリ波レーダー用カバー。
  2. 前記第1構成材の前記第1格子および前記第2構成材は、前記ミリ波の周波数帯よりも低い1GHz以下の周波数帯に対して見かけ上の透過率が0近傍の値となる
    ことを特徴とする請求項1に記載のミリ波レーダー用カバー。
  3. 前記第1構成材は、前記複数の第1格子と、当該複数の第1格子よりも数の多い前記複数の第2格子とによって斜めに傾斜した長方形の格子状に形成された導電性材料からなる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のミリ波レーダー用カバー。
  4. 前記第2構成材は、外部から前記直線偏波用アンテナおよび前記電子回路を保護する誘電体材料からなる
    ことを特徴とする請求項1乃至3何れか一項に記載のミリ波レーダー用カバー。
  5. 前記第2の部位は、前記ミリ波の周波数帯および1GHz以下の周波数帯において透過率が0の全遮蔽となる
    ことを特徴とする請求項1乃至4何れか一項に記載のミリ波レーダー用カバー。
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