JP5083694B2 - 非破壊診断方法 - Google Patents
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Description
特に、鉄筋の腐食度を判定するための基準として、スペクトラムにおける低周波成分と高周波成分との面積比−鉄筋腐食度との関係を参照データとして準備しておき、この参照データとの比較から、鉄筋の腐食度を診断するとよい。
本発明の実施形態に係る非破壊診断装置1は、鉄筋コンクリート構造物10に電磁パルスを照射する照射素子2と、照射素子2にパルス電流を供給する電源部3と、音響を受信し電気信号に変換する検出素子4と、検出素子4から入力された電気信号を解析する解析処理部5と、を有する。
電源部3は照射素子2に所定のパルス電流を供給するものである。電源部3はケーブル2aにより照射素子2に接続されている。
検出素子4は、例えば音響変換器であり、解析処理部5にケーブル4aでもって解析処理部5に接続されており、微弱な振動を検出して電気信号に変換して解析処理部5に出力する。
解析処理部5はコンピュータにより構成され、コンピュータ内の解析プログラムを実行することにより、以下に示す各機能を実現する。即ち、解析処理部5は、検出素子4から入力された電気信号を蓄積する波形受信部5aと、波形受信部5aに蓄積されている時間軸の波形を周波数軸の波形に変換しペクトラムを求めるフーリエ変換部5bと、フーリエ変換部5bで変換されたスペクトラムをデータ処理するスペクトラムデータ処理部5cと、鉄筋の腐食度合いを求める際参照すべきデータを格納した参照データ蓄積部5dと、鉄筋の腐食度合いを判定する判定部5eと、を有する。なお、解析処理部5には、図示しないモニターやキーボードなどの各種入出力手段が接続されていると診断作業上好ましい。
鉄筋コンクリート構造物10の同一面上に照射素子2と検出素子4を載せる。図2(A)は鉄筋コンクリート構造物10と照射素子2及び検出素子4との配置関係を示す平面図であり、(B)は鉄筋コンクリート構造物10と照射素子2及び検出素子4との配置関係を示す正面図である。なお、説明の便宜上、鉄筋12の配設方向をx軸、鉄筋コンクリート構造物10表面のうち、照射素子2と検出素子4とが載置される面内でx軸に直交する方向をy軸、x軸及びy軸に直交する方向をz軸とする。ここで、鉄筋コンクリート構造物10は、試験体として、コンクリート11中に鉄筋12が一方向であるx軸に沿って設けられているものとするが、実際には非破壊診断対象となる建物、トンネル、橋梁、建物、ダムなどである。なお、コンクリート11のかぶり深さをdとする。
図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物10の上面に照射素子2を載置し、同じ上面に検出素子4を配置し、電源部3から照射素子2に対してパルス電流を供給する。すると、照射素子2から鉄筋12に対して電磁パルス波が印加され、鉄筋12が励振する。この励振により鉄筋12からコンクリート11中を音響が伝搬する。伝搬した音響を検出素子4が受信し電気信号に変換する。この電気信号には鉄筋12の状態、コンクリート11の状態、鉄筋12とコンクリート11との界面の状態に関する情報が含まれている。この電磁パルスによる非破壊検査手法は外部から音響を与えて鉄筋からの反射波を検出する手法とは根本的に異なっている。我々はこの電磁パルスによる非破壊検査手法を改良発展させ、鉄筋コンクリート構造物10の鉄筋12の腐食状態を判定する手法を見出した。
検出素子4から入力された電気信号は波形受信部5aに蓄積される。
その後、フーリエ変換部5bは、波形受信部5aに蓄積されている受信波形のうち、一回のパルス照射により検出された波形を周波数軸のスペクトラム(スペクトルともいう。)に変換し、スペクトラムデータ処理部5cに出力する。この変換処理は、高速フーリエ変換(FFT)プログラムにより行うとよい。その際、時間軸の波形をリニアスペクトルに変換しても、時間軸の波形の自己相関関数に対応するパワースペクトラムに変換してもよい。
続いて、スペクトラムデータ処理部5cは、フーリエ変換部5bで変換されて得られたスペクトラムを低周波成分と高周波成分とに分離する。図3は、スペクトラムデータ処理部5cでのスペクトラム処理の様子を模式的に示すグラフである。横軸は周波数(kHz)であり、縦軸は任意強度である。図3に示すように20〜30kHzの間、図示の例では25kHzを境に、25<f≦50(kHz)の範囲の高い周波数成分と、0≦f≦25(kHz)の範囲の低い周波数成分とに、スペクトラムを分離する。そして、図3に示す横軸とスペクトラムとの間の面積を高い周波数成分と低い周波数成分とに分けて求める。即ち、高い周波数成分の面積SHと低い周波数成分の面積SLとを求める。そして、この面積比SL/SHを算出する。
ここで、参照データ蓄積部5dには、鉄筋12の腐食度を判定するための基準として、鉄筋の腐食度合いと前述と同様の手順で求めた面積比SL/SHとの関係が参照データとして格納されている。
よって、判定部5eは、スペクトラムデータ処理部5cで求めた面積比SL/SHを参照データ蓄積部5d内の参照データと照らせ合わせ、診断対象となる鉄筋コンクリート構造物10中の鉄筋12の腐食度合いを判定する。
次のような試験体を作製した。試験体の寸法は、横の長さaを300mm、縦の長さbを200mm、高さcを100mmとした。鉄筋12は直径9mmとした。コンクリート11の表面から鉄筋12までの最短距離、即ち、かぶり深さdを30mmとした。なお、a,b,c,dは図1及び2に示す部分の長さである。
各試験体において鉄筋12の両端に電流を流して鉄筋12を腐食させた。その際、試験体毎に積算電流値を変えることにより、鉄筋12の腐食度合いを変化させた。
積算電流量を1000,1500,2000,2067.5(mA・時)とした各試験体をNo.1,No.2,No.3,No.4として区別する。鉄筋12に電流を一切流さなかったものを試験体No.5、No.6、No.7とした。
各試験体をレントゲン撮影し、レントゲン像から試験体における減肉の範囲とコンクリートのひび割れの状況を求めた。表1に、積算電流値、最大ひび割れ幅、最大減肉量、減肉範囲を示す。
その際、照射コイルと検出素子4との配置は次のようにした。外枠120×120(mm)の照射コイルを、各試験体の上面であって下側に鉄筋12が埋設されている位置に、励磁コイルの中心が座標(x,y,z)=(80,0,0)となるよう配置した。この状態で、検出素子4を座標(x,y,z)=(20,120,0)の位置に配置し、励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子4で音響を検出した。なお、明細書に記載する座標の各成分の値は、実際のmm単位の寸法に一致しており、符号2cは励磁コイルの底面中心を示している。
以下、照射素子2としての励磁コイル、検出素子4の各位置をx軸方向に次のように移動して同様に励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子で音響を検出した。
検出素子4を、その下面中心が座標(30,120,0)から(110,120,0)まで、x座標が10mm刻みとなるよう移動した。その移動に対応するよう、照射素子2としての励磁コイルも、その下面中心が座標(90,0,0)から(170,0,0)まで+x方向に10mm刻みで移動した。
また、検出素子4を、その下面中心が座標(120,120,0)から(180,120,0)の範囲で、x座標が10mm刻みとなるよう移動した。その移動に対応するよう、照射素子2としての励磁コイルも、その下面中心が座標(60,0,0)から(120,0,0)まで+x方向に10mm刻みで移動した。
図4(A)に示すように、試験体No.5に関するスペクトラムには、周波数25kHzよりも高い成分も低い成分も存在する。しかしながら、図4(B)に示すように、試験体No.2に関するスペクトラムには、周波数25kHzよりも高い成分が急激に減少している。図4(A)と(B)とを比較すると、積載電流量が大きい試験体No.2は、低周波成分が高周波成分と比べて大きいことが分かる。よって、低周波成分の面積SL/高周波成分の面積SHを求め、その面積比SL/SHから鉄筋の腐食を診断することができることが分かる。
図5(B)から分かるように、○、◎、●の各プロットの健全試験体No.5〜7では、検出素子4の位置に拠らず面積比が1付近を推移している。
図5(A)から分かるように、鉄筋12が腐食しているが、ひび割れが観測されていない、△プロットの試験体No.1では、面積比1.5付近を推移しており、検出素子4の位置により多少のばらつきがある。
鉄筋12が腐食し、ひび割れが生じている試験体No.2〜4(□、◇、■プロット)では大きくバラツキがある。
図6から、積算電流量が増加するに伴い、面積比が1よりも大きく、直線的に増加している。積算電流量が増加するに従い、検出素子4の位置によりばらつきも大きくなっている。積算電流量が2067.5(mA・時)で面積比がわずかに減少している。これは、検出素子4からの検出信号が小さいためであり、鉄筋12が大きく腐食し、コンクリート11と鉄筋12とが剥離し、鉄筋12の励振がコンクリート11に伝搬されないためと考えられる。積算電流量が2067.5(mA・時)では、目視により、鉄筋12が錆びて腐食していると推察される程度である。このグラフから、本発明による非破壊診断方法は、目視ではなかなか判断の付き難い鉄筋の腐食度合いを判定できることが分かった。また、積算電流量の増加に伴い面積比が直線的に増加していることは注目に値し、鉄筋の腐食度合いを容易に推定することができる。即ち、励磁コイルの下面中心から見て検出素子4の下面中心が真横ではなく、励磁コイルと検出素子4とが同一平面上でx方向距離に対してy方向距離が半分程度の相対的な位置関係にあり、かつ検出素子4が外周からの距離が60〜80(mm)程度がよいことが分かった。
図7は別の実施例の様子を模式的に示す図である。図7に示すように、別の試験体として寸法500×500×120(mm)で、コンクリート表面から鉄筋までの距離(かぶり)が30mmのものを用意し、検出素子4をその下面中心座標が(170,120,0)〜(330,120,0)となるよう順次移動して測定した。なお、照射素子2としての励磁コイルは、検出素子4の移動に併せ、その下面中心座標が(230,0,0)〜(390,0,0)となるよう順次移動した。試験体において、コンクリート11の左右側面は、鉄筋12の位置から+y方向に距離350mm離れた位置と、−y方向に150mm離れた位置となるよう座標系を設定している。
即ち、基準周波数f0を20kHz≦f0≦30kHzの範囲の任意の値f1とし、このf1としたとき高周波成分と低周波成分との面積比を求めることを、f1を上記の範囲で変化させ、面積比が最も顕著に変化する周波数を採用すればよい。その際、照射素子2に供給されるパルス電流幅の逆数を基準に基準周波数を決定してもよい。
また、検出信号波形の大小関係も考慮すると、鉄筋の腐食診断をより正確に行うことができる。
2:照射素子
2a,4a:ケーブル
3:電源部
4:検出素子
5:解析処理部
5a:波形受信部
5b:フーリエ変換部
5c:スペクトラムデータ処理部
5d:参照データ蓄積部
5e:判定部
10:鉄筋コンクリート構造物(試験体)
11:コンクリート
12:鉄筋
Claims (2)
- 鉄筋を一方向に埋設した鉄筋コンクリート構造物表面から照射素子により電磁パルスを照射してその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で検出素子により受信し、受信波形を解析する非破壊診断方法において、
上記照射素子を上記鉄筋コンクリート構造物表面上で上記鉄筋が埋設されている位置に配置し、上記照射素子と上記検出素子との位置関係を保ちながら該照射素子及び検出素子を上記鉄筋コンクリート構造物表面上で上記鉄筋の埋設方向に沿って順次移動して上記照射素子で電磁パルスを照射しつつ上記検出素子で音響を受信し、
各受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、各スペクトラムを低周波成分と高周波成分とに分離し、該低周波成分と高周波成分との面積比のばらつきの度合いからコンクリートのひび割れが生じていない状態での鉄筋の腐食を診断することを特徴とする、非破壊診断方法。 - 鉄筋の腐食度を判定するための基準として、上記スペクトラムにおける低周波成分と高周波成分との面積比と鉄筋腐食度との関係を参照データとして準備しておき、この参照データとの比較から、鉄筋の腐食度を診断する、請求項1に記載の非破壊診断方法。
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