JP2011163985A - 非破壊診断方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便に且つ精度良く、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の腐食を診断する非破壊診断方法を提供する。
【解決手段】鉄筋を含んだ鉄筋コンクリート構造物表面からパルス磁場を照射してその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で受信し、受信波形を解析する。受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、このスペクトラムのうち低周波側の領域のスペクトル強度を所定の範囲で加算しその加算値の減少率から鉄筋の腐食を診断する。
【選択図】なし
【解決手段】鉄筋を含んだ鉄筋コンクリート構造物表面からパルス磁場を照射してその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で受信し、受信波形を解析する。受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、このスペクトラムのうち低周波側の領域のスペクトル強度を所定の範囲で加算しその加算値の減少率から鉄筋の腐食を診断する。
【選択図】なし
Description
本発明は、鉄筋コンクリート構造物を診断する非破壊診断方法に関する。
近年、トンネル、橋梁、建物、ダムなどの各種鉄筋コンクリート構造物を非破壊で診断することが社会的に重要視されている。そこで、本発明者らは、非破壊でコンクリート強度や鉄筋の位置を測定することができる、パルス電磁力による音響診断技術を開発してきた(例えば特許文献1及び2)。この音響診断技術では、鉄筋コンクリート構造物に対してパルス磁場を照射し、鉄筋コンクリート中の鉄筋を励振し、その音響を鉄筋コンクリート構造物表面で検出している。
しかし、鉄筋コンクリート構造物中における鉄筋の音響を検出しても、その検出波形をどのように解析すれば鉄筋の腐食度合いを精度良く簡便に求められるかについては明らかになっていない。
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、簡便に精度良く鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の腐食を診断する非破壊診断方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、鉄筋を含んだ鉄筋コンクリート構造物表面からパルス磁場を照射してその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で受信し、受信波形を解析する非破壊診断方法であって、受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、このスペクトラムのうち低周波領域のスペクトル強度変化から鉄筋の腐食を診断することを特徴とする。
上記構成において、スペクトラムの低周波領域を一定範囲で加算し、その加算値の変化から鉄筋の腐食を診断する。特に、パルス幅数十μ秒の単一パルスを用いて鉄筋を励振させた場合には、加算する低周波の領域としてはf以下であることが好ましい。ここで、fは1.5kHz≦f≦3.5kHzの任意の値である。
本発明によれば、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋を励振しコンクリート表面に到達する音響を電気信号として受信し、この信号を周波数変換し、スペクトラムのうち低周波成分をモニタリングすることで、容易に且つ精度良く鉄筋の腐食を判定することが可能である。よって、熟練者でなくても、容易に錆などの鉄筋の腐食を判定することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は特許請求の範囲に記載した発明の範囲及びそれと均等な範囲において適宜変更して実施することができることはいうまでもない。
図1は、本発明の実施形態に係る非破壊診断装置1を模式的に示す図である。本発明の実施形態に係る非破壊診断装置1は、鉄筋コンクリート構造物10にパルス磁場を照射する照射素子2と、照射素子2にパルス電流を供給する電源部3と、音響を受信し電気信号に変換する検出素子4と、検出素子4から入力された電気信号を解析する解析処理部5と、を有する。
照射素子2はパルサーとも呼ばれ、例えばコイル素子などの励磁素子を用いることができる。励磁素子は、複数のコイルを同軸状に密着して構成され、各コイルは例えばφ1.6mmの導線を50×30mmの矩形状の枠内に7ターン巻回してなる。
電源部3は照射素子2に所定のパルス電流を供給するものである。電源部3はケーブル2aにより照射素子2に接続されている。
検出素子4は、例えば電気音響変換器、即ち、音響信号を検出するAE(Acoustic Emission)センサーであり、解析処理部5にケーブル4aを経由して解析処理部5に接続されており、微弱な振動を検出して電気信号に変換して解析処理部5に出力する。
解析処理部5はコンピュータにより構成され、コンピュータ内の解析プログラムが実行されることにより、以下に示す各機能を実現する。即ち、解析処理部5は、検出素子4から入力された電気信号を蓄積する波形受信部5aと、波形受信部5aに蓄積されている時間軸の波形を周波数軸の波形に変換してスペクトラムを求めるフーリエ変換部5bと、フーリエ変換部5bで変換されたスペクトラムをデータ処理するスペクトラムデータ処理部5cと、鉄筋の腐食の有無や度合いを求める際に参照すべきデータを格納した参照データ蓄積部5dと、鉄筋の腐食の有無や度合いを判定する判定部5eと、を有する。解析処理部5には、図示しないモニターやキーボードなどの各種入出力手段が接続されていると診断作業上好ましい。
図示を省略するが、検出素子4と解析処理部5との間に、プリアンプやフィルターを介在させることで、プリアンプにより検出素子4から出力された電気信号を増幅したり、フィルターにより検出素子4から出力された電気信号のうち解析に不要な信号成分を除去したりして、解析処理部5に入力してもよい。
次に、図1に示す非破壊診断装置1をさらに詳細に説明しながら、本実施形態に係る非破壊診断方法について詳細に説明する。
鉄筋コンクリート構造物10の同一面上に照射素子2と検出素子4を載せる。図2(A)は鉄筋コンクリート構造物10に対する照射素子2及び検出素子4の配置関係を示す平面図であり、(B)は鉄筋コンクリート構造物10に対する照射素子2及び検出素子4の配置関係を示す正面図である。なお、説明の便宜上、鉄筋12の配設方向をx軸、鉄筋コンクリート構造物10表面のうち、照射素子2と検出素子4とが載置される面内でx軸に直交する方向をy軸、x軸及びy軸に直交する方向をz軸とする。ここで、鉄筋コンクリート構造物10は、試験体として、コンクリート11中に鉄筋12が一方向であるx軸に沿って設けられているものとするが、実際には非破壊診断対象となる建物、トンネル、橋梁、建物、ダムなどである。コンクリート11のかぶり深さをdとする。
ここで、本発明の前提となる、パルス電磁力による非破壊検査手法について説明する。
図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物10の上面に照射素子2を載置し、同じ上面に検出素子4を配置し、電源部3から照射素子2に対してパルス電流を供給する。すると、照射素子2から鉄筋12に対してパルス磁場が印加され、鉄筋12を励振させる。この励振により鉄筋12からコンクリート11中を音響が伝搬する。検出素子4は、伝搬した音響を受信し電気信号に変換する。この電気信号には鉄筋12の状態、コンクリート11の状態、鉄筋12とコンクリート11との界面の状態に関する情報が含まれている。このパルス電磁力による非破壊検査手法は外部から音響を与えて鉄筋からの反射波を検出する手法とは根本的に異なっている。我々はこのパルス電磁力による非破壊検査手法を改良発展させ、鉄筋コンクリート構造物10中における鉄筋12の腐食状態を判定する手法を見出した。
図1に示すように、鉄筋コンクリート構造物10の上面に照射素子2を載置し、同じ上面に検出素子4を配置し、電源部3から照射素子2に対してパルス電流を供給する。すると、照射素子2から鉄筋12に対してパルス磁場が印加され、鉄筋12を励振させる。この励振により鉄筋12からコンクリート11中を音響が伝搬する。検出素子4は、伝搬した音響を受信し電気信号に変換する。この電気信号には鉄筋12の状態、コンクリート11の状態、鉄筋12とコンクリート11との界面の状態に関する情報が含まれている。このパルス電磁力による非破壊検査手法は外部から音響を与えて鉄筋からの反射波を検出する手法とは根本的に異なっている。我々はこのパルス電磁力による非破壊検査手法を改良発展させ、鉄筋コンクリート構造物10中における鉄筋12の腐食状態を判定する手法を見出した。
照射素子2と検出素子4との位置関係が所定の範囲に設定されるとよい。図2(A)及び(B)に示すように、所定の位置関係を有するように、照射素子2と検出素子4とを、鉄筋コンクリート構造物10のある面(図示の例では上面)上に配置する。ここで、所定の位置関係については後述の各実施例において具体的に説明する。
この状態で、電源部3から照射素子2にパルス電流を供給する。すると、照射素子2からパルス磁場が生じ、鉄筋コンクリート構造物10の表面から鉄筋12にパルス磁場が照射され、鉄筋12が励振する。鉄筋12の励振による音響がコンクリート11内部を伝搬する。検出素子4はこの伝搬した音響を受信し電気信号に変換し、解析処理部5に入力する。
解析処理部5で行われる処理について説明する。先ず、検出素子4から入力された電気信号は波形受信部5aに蓄積される。その後、フーリエ変換部5bは、波形受信部5aに蓄積されている受信波形のうち、一回のパルス照射により検出された波形を周波数軸のスペクトラム(スペクトルともいう。)に変換し、スペクトラムデータ処理部5cに出力する。この変換処理は、高速フーリエ変換(FFT)プログラムを用いて行うとよい。その際、時間軸の波形をリニアスペクトルに変換しても、時間軸の波形の自己相関関数に対応するパワースペクトラムに変換してもよい。続いて、スペクトラムデータ処理部5cは、フーリエ変換部5bで変換されて得られたスペクトラムIiのうち所定の低周波の範囲、例えば0からfHzまでの範囲を切り出す。ここで、照射素子2から鉄筋12に対して印加されるパルス磁場が数十μ秒(例えば40μ秒)のパルス幅を有する単一パルスである場合には、fは1.5k≦f≦3.5kの範囲内の任意の値であるが、特に、2.5kHz〜3.5kHzの範囲における任意の値が好ましい。この範囲であれば、鉄筋12が腐食し始めているか否か的確に判断することができる。この点については、後述の実施例により詳細に説明する。
図3はフーリエ変換部5bにより周波数変換されたスペクトラムを示す図で、(A)は周波数0〜50kHzの範囲を示し、(B)は周波数0〜5kHzの範囲を拡大して示している。横軸は周波数kHz、縦軸は任意強度である。この図では、fkHzを2.5kHzとして0〜2.5kHzのスペクトルを抽出している。この低周波数の範囲においてスペクトル強度を一定の幅でサンプリングし、サンプリングした各値を加算する。
参照データ蓄積部5dには、鉄筋12の腐食度を判定するための基準として、例えば同じ試験対象に対して同一の条件、即ち、照射素子2及び検出素子4を同じ位置に配置して同一のパルス幅及びパルス強度を有するパルス磁場を鉄筋に照射して検出素子4で音響を測定し、その音響信号をフーリエ変換して求めたスペクトラムIi−1とそれから同様に求めたスペクトル強度の加算値Si−1が、試験日時とともに格納されている。
よって、判定部5eは、今回スペクトラムデータ処理部5cで得たスペクトラムIi、加算値Siを、それぞれ、参照データ蓄積部5d内の参照データ、即ちスペクトラムIi−1、加算値Si−1と照らし合わせ、鉄筋コンクリート構造物10中の鉄筋12の腐食度合いを判定する。
また、参照データ蓄積部5dに、鉄筋12の腐食度合いに応じた各加算値S0を予め設定しておき、判定部5eにおいて、今回スペクトラムデータ処理部5cで得た加算値Siが基準となる各値S0の大小を比較して腐食度を判定するようにしても良い。すなわち、加算値の減少率等を用いて鉄筋の腐食を診断しても良い。
試験体として、鉄筋コンクリート構造物の代わりに、所定の位置に鉄筋を埋設したセメントモルタル試験体を作製した。以下の実施例1及び2においては、セメントモルタル試験体を単に試験体と呼ぶ。試験体の寸法は、横の長さaを300mm、縦の長さbを200mm、高さcを100mmとした。鉄筋12は直径9mmとした。セメントモルタル11の表面から鉄筋12までの最短距離、即ち、かぶり深さdを30mmとした。なお、符号a,b,c,dは図1及び2に示す部分の長さである。
先ず、一つの試験体において鉄筋12に電流を流さず、照射素子2と検出素子4とを配置し、照射素子2としての励磁コイルに対してパルス電流を供給し、検出素子4から出力される検出信号を解析処理部5に取り込んだ。また、同じ試験体において鉄筋12に電流を流し、同様に照射素子2と検出素子4とを配置して、照射素子2にパルス電流を供給し、検出素子4から出力される検出信号を解析処理部5に取り込むことを繰り返した。ここで、鉄筋12に電流を流して強制的に腐食させる場合には、試験体11の大部分を食塩水(約20質量%、即ち、食塩と水の質量比を1:4)に浸し、電極板を試験体の表面(図2において縦aと横bとでなす面)と対向するよう食塩水に浸し、試験体12における鉄筋12と電極板との間に電流を流した。
照射素子2及び検出素子4の試験体への設置は次のようにした。説明上、図2に示すように座標軸を設定する。外枠120mm×100mmの励磁コイルを、各試験体の上面であって下側に鉄筋12が埋設されている位置に、励磁コイルの中心が座標(x,y,z)=(100,0,0)となるよう配置した。この状態で、検出素子4を座標(x,y,z)=(100,120,0)の位置に配置し、照射素子2としての励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子4で音響を検出した。なお、明細書に記載する座標の各成分の値は、実際のmm単位の寸法に一致しており、符号2cは励磁コイルの底面中心を示している。照射素子2としての励磁コイルには、内周直径が30mmとなるよう円筒状に導線を巻いたものを用いた。また、検出素子4としては、約50kHz〜600kHzの広帯域でほぼ一定の検出感度を有するAEセンサーを用いた。
図4は実施例1の結果について、検出素子4による検出信号をフーリエ変換したスペクトラムを示しており、(A)は試験体に電流を流していないときのスペクトラムであり、(B)は試験体に150mA・時の電流を流したときのスペクトラムであり、(C)は試験体に600mA・時の電流を流したときのスペクトラムである。(D)、(E)、(F)はそれぞれ(A)、(B)、(C)のうち周波数0〜5kHzの領域を拡大して示すものである。図5(A)は図4(D)と図4(E)とに示す各スペクトラムを同時に示したものであり、図5(B)は図4(D)と図4(F)に示すスペクトラムを同時に示したものである。横軸は周波数kHz、縦軸は任意強度である。何れも任意強度は同一の基準で示している。図5において、F0は試験体に電流を流していないときのスペクトラム、F1、F2は試験体に電流を150mA・時、600mA・時それぞれ流したときのスペクトルを示している。
試験体に電流を流していない場合では、例えば約1.75kHz近辺にスペクトル強度が見られる(図4(D)参照)が、試験体に電流を流して腐食が進むにつれて、そのスペクトル強度が見られなくなった(図4(E)(F)参照)。図5(A)及び(B)から、試験体に電流を流して腐食が進むにつれて、0〜約2kHz、約2.25k〜約3.5kHzのスペクトル強度が大幅に低下していることが判明した。
ここで、試験体に電流を積算電流として600mA・時で流してもセメントモルタルにはひび割れは生じておらず、鉄筋12の腐食状態は初期のものと考えられる。よって、実施例1から、周波数スペクトラムの低周波領域の大きさやピークの変化を追跡することで、鉄筋の腐食状態を非破壊で知ることができることが分かった。
実施例1と同様の試験体を複数用意し、それぞれの試験体の鉄筋12に流す積算電流量を変化させた。
試験体No.1では電流を流していない状態と、50mA・時の積算電流を流した後と、400mA・時の積算電流を流した後とで、非破壊試験を行った。すなわち、それぞれの状態で試験体No.1上に照射素子2と検出素子4とを配置し、照射素子2としての励磁コイルに対してパルス電流を供給し、検出素子4から出力される検出信号を解析処理部5に取り込んだ。
試験体No.2では電流を流していない状態と、100mA・時の積算電流を流した後と、500mA・時の積算電流を流した後とで、試験体No.1と同様に非破壊試験を行った。
試験体No.3では電流を流していない状態と、150mA・時の積算電流を流した後と、600mA・時の積算電流を流した後とで、試験体No.1と同様に非破壊試験を行った。
試験体No.1では電流を流していない状態と、50mA・時の積算電流を流した後と、400mA・時の積算電流を流した後とで、非破壊試験を行った。すなわち、それぞれの状態で試験体No.1上に照射素子2と検出素子4とを配置し、照射素子2としての励磁コイルに対してパルス電流を供給し、検出素子4から出力される検出信号を解析処理部5に取り込んだ。
試験体No.2では電流を流していない状態と、100mA・時の積算電流を流した後と、500mA・時の積算電流を流した後とで、試験体No.1と同様に非破壊試験を行った。
試験体No.3では電流を流していない状態と、150mA・時の積算電流を流した後と、600mA・時の積算電流を流した後とで、試験体No.1と同様に非破壊試験を行った。
各試験体に対して照射素子2と検出素子4との配置は次のようにした。外枠120mm×100mmの励磁コイルを、各試験体の上面であって下側に鉄筋12が埋設されている位置に、励磁コイルの中心が座標(x,y,z)=(100,0,0)となるよう配置した。この状態で、検出素子4を座標(x,y,z)=(50,120,0)の位置に配置し、励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子4で音響を検出した。なお、明細書に記載する座標の各成分の値は、実際のmm単位の寸法に一致しており、符号2cは励磁コイルの底面中心を示している。
以下、照射素子2としての励磁コイル、検出素子4の各位置をx軸方向に次のように移動して同様に励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子4で音響を検出した。
検出素子4を、その下面中心が座標(50,120,0)から(150,120,0)まで、x座標が10mm刻みとなるよう移動した。照射素子2としての励磁コイルを、その下面中心が座標(100,0,0)の位置になるよう固定した。
以下、照射素子2としての励磁コイル、検出素子4の各位置をx軸方向に次のように移動して同様に励磁コイルにパルス電流を流し、検出素子4で音響を検出した。
検出素子4を、その下面中心が座標(50,120,0)から(150,120,0)まで、x座標が10mm刻みとなるよう移動した。照射素子2としての励磁コイルを、その下面中心が座標(100,0,0)の位置になるよう固定した。
それぞれの測定において解析処理部5に取り込んだ検出信号をフーリエ変換し、周波数スペクトラムにおいて0〜2.5kHzの周波数領域のスペクトル強度を0.1kHzでサンプリングして加算した。図6は実施例2の結果を示しており、(A)、(B)、(C)はそれぞれ試験体No.1、No.2、No.3における加算値Sの積算電流量依存性を示す図である。縦軸は加算値S(任意メモリ)、横軸は積算電流(mA・時)である。例えば同じ積算電流値に複数のプロットがされているが、これは、検出素子4と照射素子2との配置が異なるためである。また、図6の(A)〜(C)に示す●プロットは、同様に作製した試験体を水に浸して2週間乾燥した後に非破壊試験を行ったときの値である。
何れの試験体においても、積算電流量が多くなると、加算値Sが小さくなることが分かる。またこの傾向は同一の試験体において照射素子2及び検出素子4の配置関係によらないことが分かった。よって、鉄筋の腐食が進行していることを加算値Sの変化で判断できることが分かる。
次に、周波数スペクトラムにおいて周波数領域の加算範囲が異なるとどのように加算値Sが変化するかを検討した。図7、図8、図9、図10、図11はそれぞれ加算範囲を0〜1.5kHz、0〜2.0kHz、0〜2.5kHz、0〜3.0kHz、0〜3.5kHzとした場合における加算値Sの積算電流量依存性を示す図である。各図において(A)、(B)、(C)はそれぞれ試験体No.1、No.2、No.3に関するものである。各図において、何れも、縦軸は加算値S(任意メモリ)、横軸は積算電流(mA・時)である。
図7〜図11から、何れの試験体においても、同様な傾向を示していることが分かる。よって、加算範囲を0からfkHzまでとすると、加算範囲の上限fは1.5kHz〜3.5kHzであればよいことが分かる。特に、加算範囲が0〜2.5kHz、0〜3.0kHz、0〜3.5kHzではその傾向が顕著に現れていることから、スペクトラムのうち加算範囲を0からfHzまでの範囲とすると、加算範囲の上限fは2.5kHz≦f≦3.5kHzの範囲内が好ましいことが分かる。なお、スペクトラムの加算範囲におけるサンプリング幅は任意に設定することができる。また、実施例1及び実施例2では、セメントモルタルを用いて試験体を作製しているが、粗骨材が含まれているコンクリートであっても同様の結果が得られると考えられる。
本発明の実施形態及び実施例から、鉄筋を含んだ鉄筋コンクリート構造物表面からパルス磁場を照射しその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で受信し、受信波形を解析する非破壊診断方法において、受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、このスペクトラムのうち低周波領域のスペクトル強度変化、スペクトル強度の低減率から錆などによる鉄筋の腐食を診断できることが分かった。
特に、スペクトラムの低周波領域を一定範囲で加算し、その加算値の変化から鉄筋の腐食度を診断することができることが分かった。パルス磁場としてパルス幅数十μ秒の単一パルスを用いて鉄筋を励振させた場合には、加算する低周波の領域を0からfHzまでの範囲とすると、fが1.5k≦f≦3.5kの任意の値であればよいことが分かった。もっとも、加算開始の周波数はゼロである必要はなく、検出素子4であるAEセンサーの検出感度の最低周波数としてもよいことは当然のことである。
1:非破壊診断装置
2:照射素子
2a,4a:ケーブル
3:電源部
4:検出素子
5:解析処理部
5a:波形受信部
5b:フーリエ変換部
5c:スペクトラムデータ処理部
5d:参照データ蓄積部
5e:判定部
10:鉄筋コンクリート構造物(セメントモルタル試験体)
11:コンクリート(セメントモルタル)
12:鉄筋
2:照射素子
2a,4a:ケーブル
3:電源部
4:検出素子
5:解析処理部
5a:波形受信部
5b:フーリエ変換部
5c:スペクトラムデータ処理部
5d:参照データ蓄積部
5e:判定部
10:鉄筋コンクリート構造物(セメントモルタル試験体)
11:コンクリート(セメントモルタル)
12:鉄筋
Claims (2)
- 鉄筋を含んだ鉄筋コンクリート構造物表面からパルス磁場を照射してその鉄筋を励振し、その鉄筋を音源とする音響を鉄筋コンクリート構造物表面で受信し、受信波形を解析する非破壊診断方法であって、
受信波形をフーリエ変換してスペクトラムを求め、このスペクトラムのうち低周波領域のスペクトル強度変化から鉄筋の腐食を診断することを特徴とする、非破壊診断方法。 - 前記スペクトラムのうち低周波領域を一定の周波数領域で加算し、その加算値の変化から鉄筋の腐食を診断する、請求項1に記載の非破壊診断方法。
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