JP4074962B2 - パルス電磁力による音響診断・測定装置、及びそれらの診断・測定方法 - Google Patents
パルス電磁力による音響診断・測定装置、及びそれらの診断・測定方法 Download PDFInfo
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Description
また、打診法による鉄筋の位置探査は、習熟するのにかなりの経験が必要であり、さらに、勘に頼るために信頼性が低い。また、腐食診断においても、鉄筋の腐食がかなり進行して空洞ができるくらいにならないと判り難い等、習熟するのにかなりの経験が必要であり、さらに、勘に頼るために信頼性が低く、確認するためには結局、部分的にも剥離して確認しなければならないという課題がある。
超音波探査法は、超音波を鉄筋コンクリートの表面から照射し、鉄筋から反射される超音波から鉄筋位置を探査するものであるが、コンクリートの内部は砂利が含まれ、又気泡等により不連続層が密集した状態であるので、超音波が減衰、散乱されてしまい、解析は非常に困難である。
さらに、赤外線映像法及びマイクロ波法は、赤外線、マイクロ波がコンクリートにより急激に減衰するので、構造物の比較的表面しか測定できない。
この装置によれば、例えば、被測定構造物が鉄筋コンクリートの場合には、磁場パルスにより直接鉄筋を励振するから鉄筋位置を音源とする音響が発生し、この音響が構造物の表面に伝搬する。この際、鉄筋を伝搬する音響信号が断裂によって減衰するから、断裂の有無がわかり、また、コイルの構造物の表面上の位置を変化させて測定することによる減衰の変化から断裂の位置がわかる。構造物が、プレストレス・コンクリート、すなわちこの方式を用いた橋梁、コンクリート製の電柱やコンクリート製の枕木であれば好適に適用できる。
磁場パルスによって直接鉄筋を励振するから、従来の超音波源からの音波を鉄筋に反射させて測定する装置に比べれば、極めて音響波形が大きく、従って、非破壊で確実に鉄筋の断裂の有無が診断・測定できる。
複数のコイルからなる場合には、複数のコイルに分割しているので個々のコイルのインダクタンスを小さく、また個々の蓄電用コンデンサの容量を小さくできるので、共通のスイッチをONしたときの個々のコイルに流れる電流パルスの時定数を小さくできる。個々のコイルの発生する磁場パルスは重畳されるので、波高値が高く、かつパルス幅の狭い磁場パルスを発生できる。波高値が高くパルス幅の狭い磁場パルスを発生できるので、鉄筋を強く励振でき、非破壊で確実に診断・測定できる。
この構成によれば、鉄筋を励振する力がさらに強くなるから、構造物の表面からより深い位置にある鉄筋の診断・測定が可能になる。
上記構成において、構造物は、好ましくは、プレストレス・コンクリートである。
上記構成によれば、例えば、被測定構造物が鉄筋コンクリートの場合には、磁場パルスにより直接鉄筋を励振するから鉄筋位置を音源とする音響が発生し、この音響が構造物の表面に伝搬する。この際、鉄筋を伝搬する音響信号が断裂によって減衰するから、断裂の有無がわかり、また、コイルの構造物の表面上の位置を変化させて測定することによる減衰の変化から断裂の位置がわかる。構造物が、プレストレス・コンクリート、すなわちこの方式を用いた橋梁、コンクリート製の電柱やコンクリート製の枕木であれば好適に適用できる。
磁場パルスによって直接鉄筋を励振するから、従来の超音波源からの音波を鉄筋に反射させて測定する装置に比べれば、極めて音響波形が大きく、従って、非破壊で確実に鉄筋の断裂の有無が診断・測定できる。
最初に導電体の腐食、付着力、かぶり深さ又は径を診断または測定する本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置及び診断・測定方法の実施の形態を説明する。
導電体と導電体を覆う非導電体とから成る構造物が、鉄筋とコンクリートからなる鉄筋コンクリートの場合を例にとって説明する。
この装置によれば、鉄筋の腐食・付着力、かぶり深さ又は径を診断または測定できる。図1は本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置及び診断・測定方法の実施の形態を示した概念図であり、図1(a)は音響変換器をコンクリート表面に取り付けて測定する場合、図1(b)は音響変換器を露出した鉄筋に取り付けて測定する場合を示す。
図1(a)において、パルス電磁力による音響診断・測定装置10は、被試験体構造物である鉄筋コンクリートブロック11の表面に取り付けられる電線で構成したコイル12と、このコイル12に電流パルスを印加する電源部13と、上記鉄筋コンクリートブロック11の表面に取り付けた音響変換器14と、この音響変換器14と信号ケーブル17で接続した計測部15とから構成されている。
上記音響変換器14は公知の音響変換器であって、微弱な振動を検出して電気信号に変換し、信号ケーブル17を介して計測部15に入力する。
計測部15は、例えば音響解析装置として市販されている公知の構成のものであり、音響変換器14からの検出信号をアンプリファイア等により増幅すると共に、不要な信号をフィルタなどにより除去した後、音響解析を行なうようになっている。なお、計測部15は、これに限らず、音響変換器14からの検出信号の波形の計測のみでよい場合には、例えばオシロスコープ等を使用してもよい。
鉄筋11aが励振されると鉄筋11aを音源とする音響が発生し、この音響が表面に伝わり、音響変換器14で音響信号が電気信号に変換され、この電気信号が信号ケーブル17を介して計測部15に入力される。計測部15では、電気信号の波形を解析して鉄筋11aの腐食の程度、あるいはコンクリート11bのひび割れを判定する。例えば、鉄筋11aが腐食していれば、鉄筋11aを音源とする音響が腐食部分で吸収されて減衰し、計測部15で観測する波形は強度が小さくなる。また、鉄筋のコンクリートに対する付着力が弱いと、同様に計測部15で観測する波形は強度が小さくなる。また、コンクリート中にひび割れが存在すると音響が減衰し、計測部15で観測する波形は強度が小さくなる。このように、音響波形の強度を比較することにより、鉄筋コンクリート11の損傷の程度を測定できる。
また、図1(b)に示すように、鉄筋の露出部分に音響変換器14を取り付けて、鉄筋の振動を直接観測しても、鉄筋の腐食や付着力を診断・測定できる。
実施例1は、鉄筋の腐食や付着力を診断・測定する本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置による測定例を示すものである。
図2は、実施例1で用いたテスト用鉄筋コンクリートの形状、及び測定系を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2に示すように、テスト用鉄筋コンクリート11は、方形状の200×150×100mmのコンクリート11bと、コンクリート11bの上面からの距離すなわち、かぶり深さdが30mm、下面からの距離57mmの位置に埋設した径13mmの鉄筋11aとからなっている。コイル12は鉄筋コンクリート11の表面上の鉄筋11aの真上に配置している。音響変換器14a,14bは、鉄筋コンクリート11の表面上の鉄筋11aを挟んで対称な位置に配置している。
本実施例では、コンクリート11b中にひび割れのないテスト用鉄筋コンクリート(正常テストブロック)と、コンクリート11b中に鉄筋11aに達するひび割れが存在するテスト用鉄筋コンクリート(ひび割れテストブロック)とを作製し、それぞれ同一の条件で励振して、音響変換器14a,14bで観測される音響波形の比較を行った。
コイル12は、線径1.0mmの導線を25ターン巻した巻径30×70mm、内部抵抗0.2Ωのものを用い、電流波高値1000A、パルス幅1.5msの電流パルスを印加して、鉄筋11aを励振した。
図3(a)、(b)において、CH1,CH2はそれぞれ音響変換器14a,14bの出力波形であり、CH3は電流パルスの波形である。横軸は0.5ms/divで表示した時間軸であり、縦軸は、CH1,CH2の音響波形の強度を示す電圧軸であり、CH1,CH2は零点をずらして表示している。
図3(a)、(b)から明らかなように、電流パルスで鉄筋11aを励振して発生させた音響は、ひび割れがあると著しく減衰することがわかる。
このようにして、コンクリートのひび割れの存否を診断することができる。
この装置によれば、鉄筋コンクリート中の鉄筋の位置を測定できる。
図4は上記本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置の構成及び測定方法を示す概念図である。
図4に示すように、音響位置探査装置20は、鉄筋コンクリートブロック11の表面に取り付けられる電線で構成したコイル12と、このコイル12に電流パルスを印加する電源部13(図1と同等なため図示せず)と、上記鉄筋コンクリート11の表面に取り付ける複数の音響変換器14(14a、14b、14c)と、この音響変換器14と信号ケーブル17(図1と同等なため図示せず)で接続した計測部15(図1と同等なため図示せず)とから構成されている。
複数の音響変換器14をコイル12の周辺に配設し、電流パルスをコイル12に印加して鉄筋11aを励振し、鉄筋11aを音源とする音響を発生させる。この音響を各々の音響変換器14で電気信号に変換し、この各々の電気信号を計測部15で測定することにより、音響が音源から各々の音響変換器14に到達する時間、すなわち、伝搬遅延時間を測定する。
例えば、図4に示すように、鉄筋11aが棒状のものであれば、それぞれ、音響変換器14a,14b及び14cの遅延時間ta,tb,tcを基に、それぞれの音源と鉄筋11aとの距離ra,rb,rc(=v・ta,v・tb,v・tc)を求め、それぞれの音響変換器14の配設位置を中心として半径ra,rb,rcの球を描き、これらの球の共通接線を求めれば、この接線が鉄筋11aの所在位置となる。
なお、上記構成では音響変換器14をコンクリート11の表面に複数配設し、単発の音響信号を発生させて、それぞれの音響変換器14の位置における伝搬遅延時間を同時に測定するが、一個の音響変換器14をコンクリート11の表面上を移動させると共に、それぞれの移動位置において音響信号を発生させて伝搬遅延時間を個々に測定する構成でも良い。
実施例2は、導電体の位置を測定する本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置による測定例を示すものである。
図5は、本実施例に用いた鉄筋コンクリートの表面形状及び鉄筋コンクリートの作製方法を示す図である。(a)は鉄筋コンクリート表面形状、(b)は鉄筋コンクリート作製用外枠、(c)は作製した鉄筋コンクリートの外観を示す図である。図5(b)に示すように、本実施例に用いた鉄筋コンクリートは、鉄筋11aの中心を除いて弾性を有するビニールシートで覆い、外枠にコンクリートを流し込んで作製した。従って、この鉄筋コンクリートは、鉄筋11aの中心のみがコンクリート11bと接触し、鉄筋11aの他の部分はコンクリート11bに接触していない。このため、励振した音響は鉄筋11aの中心部分のみからコンクリートに伝わるから、音源は、点音源と見なせる。
図5(a)に示すように、鉄筋コンクリート11の中心を原点とし、横及び縦方向をそれぞれx軸及びy軸とし、原点にコイルを配置し、種々の座標(x,y)点に音響変換器を配置して音響の伝搬遅延時間を測定した。励振用のコイル、音響変換器、電流パルスは実施例1と同等である。
図6において、CH1,CH2はそれぞれ図5(a)に示した座標(−1,0)、(3,2)に音響変換器を配置した場合の音響波形を示し、CH3は電流パルスの波形である。横軸は0.1ms/divで表示した時間軸であり、縦軸はCH1,CH2の音響波形の強度を示す電圧軸であり、CH1,CH2は零点をずらして表示している。
図6から明らかなように、音源に近いCH1の音響波形は、電流パルス波形の立ち上がりとほぼ同時に立ち上がっているが、音源に遠いCH2の音響波形は、電流パルス波形の立ち上がりからかなり遅れて立ち上がっている。
このように、音源からの距離を伝搬遅延時間として検出できる。
図7において、音源からの距離は、図6(a)の各座標点と音源との距離を示す。伝搬遅延時間の測定は、図7で説明した方法と同等である。
図7から明らかなように、コンクリート中での音速はほぼ一定であることがわかる。従って、図6で説明した伝搬遅延時間と図7で説明した音速から、音源までの距離がわかる。測定点を増やして、各測定点から音源までの距離を求め、これらの距離全てを満足する鉄筋コンクリート中の位置を求めれば、鉄筋の所在位置となる。
このようにして、本発明のパルス電磁力による音響位置探査装置によれば、被破壊で鉄筋の位置を探査することができる。
本発明の音響診断・測定装置は、音響変換器14の代わりに表面変位検出器を設置し、音響の代わりに、被試験体構造物11表面の振動を読み取るものであり、音響診断装置10の構成と同様である。
ここで用いる表面変位検出器としては微小変位を測定できる検出器であればどのようなタイプでも使用可能であるが、特に、コヒーレントなレーザー光を被試験体構造物11の表面全体に照射し、被試験体構造物11表面の振動に伴う反射光の位相差を干渉縞として検出するレーザー干渉計を使用すれば、さらに精密且つ高度な診断ができる。
図8は、コイルと電源部の構成を示す図であり、図8(a)は従来の構成例を示し、図8(b)は本発明の構成を示す。
従来の構成は図2(a)に示すように、単一のコイルから構成され、商用電源ACからの交流電圧VによりコンデンサCを充電し、充電されたコンデンサCの電荷をメカニカルスイッチ又は半導体スイッチであるスイッチSWをオンすることにより、電流パルスとしてコイル12に印加するように構成されている。
本発明のコイルと電源部は図2(b)に示すように、コイルは小さなインダクタンスを有する複数のコイル12に分割されており、各々のコイルは各々のコイルの発生する磁場が重畳するように軸を揃えかつ密着して構成されており、各々のコイルにはそれぞれ容量Cが直列に接続され、コイル12と容量Cからなる4個の直列回路を共通の電源Vに、メカニカルスイッチ又は半導体スイッチである共通のスイッチSWを介して並列に接続して構成されている。
図9は、本発明のコイルと電源部による電流パルス波形、及びそれによって発生した音響信号の測定例を示す図であり、図9(a)は従来の構成によるもの、図9(b)は本発明の構成によるものを示す。尚、音響信号の測定は、本発明のパルス電磁力による音響診断・測定装置によって測定した。また、かぶり深さdが30mm、鉄筋13D(異形鉄筋13mmφ)の、鉄筋コンクリートを使用した。図9から明らかなように、本発明のコイルと電源部の構成によれば、従来構成と比べて、遙かに電流パルス幅が狭く、かつ大きいことがわかる。
また、AE(アコースティックエミッション)センサーの受信波形、すなわち音響変換器の出力波形も、本発明のコイルと電源部の構成によれば、従来構成と比べて、遙かに大きくなることがわかる。
すなわち、本発明のコイルと電源部の構成によれば、パルス幅が狭く波高値が大きい磁場パルスを生成することができ、その結果鉄筋を強力に励振することができる。
計測部は、音響変換器の出力波形をサンプリングして、サンプリング値をA/D変換し、A/D変換されたディジタルデータをメモリーに記憶し、CPUを介してディジタルデータを所定の信号処理手順を有するプログラムに従い所定の演算を行い、結果をメモリに蓄積または表示装置を介して表示する。所定の信号処理手順プログラムは、出力波形の時間領域の波形を表示するプログラム、出力波形の時間領域の波形に基づいて出力波形のフーリエ変換スペクトルからなる周波数領域の波形を演算し表示するプログラム、さらには下記に説明する種々の信号処理プログラムである。上記のサンプリング装置、A/D変換器、メモリ、CPU、表示装置は市販されている汎用のものを用いることができる。
この構成によって、時間領域の波形を計測して表示し、腐食・付着力に関する情報を表示することができる。また、時間領域の波形から腐食・付着力に関する特徴を抽出して表示し、または出力波形のフーリエ変換スペクトルからなる周波数領域の波形を演算して表示し、また周波数領域の波形から腐食・付着力に関する特徴を抽出して表示し、腐食・付着力に関する情報を表示することができる。
実施例3は、時間領域の波形から腐食・付着力に関する特徴を抽出できることを示すものである。
下記の3種類の鉄筋コンクリートのテストブロックを作製し比較した。
(A)正常な鉄筋コンクリート。
(B)正常な鉄筋コンクリートを疲労試験器を用いて疲労させ、鉄筋から発生するコンクリートの亀裂を僅かに生じさせたもの。
(C)(B)のテストブロックをさらに疲労させ、鉄筋とコンクリートの付着力をなくしたもの。
上記のテストブロックは全て、13D(異形鉄筋13mφ)、かぶり深さdが30mm、200×150×100mmのものを使用した。
上記のテストブロックの表面にコイル12と音響変換器14を取付け、コイル12に波高電流値2000A、パルス幅350μsの電流パルスを印加して鉄筋を励振した。
図からわかるように、正常な鉄筋コンクリート(A)においては、時間軸方向に対称軸、及び頂点を有する三角形形状に近い波形を示すことがわかる。
ひび割れを生じたテストブロック(B)は、時間軸方向に対称軸、及び頂点を有する四角形形状に近い波形を示すことがわかる。
鉄筋とコンクリートとの付着力の無いテストブロック(C)は、ほとんど出力波形が現れないことがわかる。
このように、本発明の装置の計測部により時間領域の波形を表示すれば、鉄筋の腐食・付着力の違いが波形形状に現れることがわかる。
実施例4は、図1(b)に示したように、音響変換器(AEセンサー)を鉄筋コンクリートから露出した鉄筋に取り付けた場合にも、時間領域の波形から腐食・付着力に関する特徴を抽出できることを示すものである。
テストブロックは実施例3と同じものを使用し、音響変換器の取付位置以外は実施例3と同じ実験条件である。
図11(a)、(b)、(c)は、それぞれのテストブロック(A)、(B)、(C)の鉄筋に直接、音響変換器を取り付けて測定した出力波形を本計測部で時間領域の波形として表示した図である。
図からわかるように、正常な鉄筋コンクリート(A)においては、ほとんど出力波形が現れないことがわかる。これは、鉄筋とコンクリートの付着力が高いので、鉄筋が励振されても減衰力が強く働き、すぐ振動が減衰してしまうことによる。
ひび割れを生じたテストブロック(B)は、時間軸方向に対称軸、及び頂点を有する三角形形状に近い波形を示すことがわかる。
鉄筋とコンクリートとの付着力の無いテストブロック(C)は、時間軸方向に対称軸、及び頂点を有する三角形形状に近い波形を示すが、時間軸方向に長く尾を引くことがわかる。これは、鉄筋とコンクリートの付着力がない、すなわち、鉄筋とコンクリートの間に空隙ができているために、鉄筋の振動の減衰力が小さく、振動が長く続くことによる。
このように、本発明の装置の計測部により時間領域の波形を表示すれば、鉄筋に直接音響変換器を取り付けても、鉄筋の付着力の違いが波形形状に現れることがわかる。
初めに、本計測部の信号処理手順プログラムに使用される波形率、波高率を導出するための計算式を示す。
時間領域の波形のそれぞれのデータ値をxi とし、全データ数をNとする。
平均値xavは次式で定義する。
実施例5は、実施例3で測定したテストブロック(A)、(B)、(C)の時間領域波形から、上記式(1)〜(5)に基づいて、波形率SF、波高率CFを求め、比較したものである。
図12は、テストブロック(A)、(B)、(C)の波形率SF、波高率CFを比較した図である。
図から明らかなように、波形率SF、及び波高率CFは、テストブロックによって、すなわち鉄筋の付着力によって、明確に異なることがわかる。
このようにして、本計測部は、所定の信号処理手順プログラムにより、測定対象の波形率SF、及び波高率CFを計算し、例えば図12において波形率のしきい値を1.50、または波高率のしきい値を5.50に設定すれば、測定対象物の波形率または波高率がこれらのしきい値と比べて未満か以上かを判断し、良、不良の情報を表示する。
初めに、本計測部の信号処理手順プログラムに使用される過酷度を導出するための計算式を示す。
初めに時間領域の波形のデータ値xi の絶対値をとり、サンプリング時間順に並べてスムージングした包絡線波形を計算する。包絡線波形のそれぞれのデータ値をyi とする。 確率P(yi )を次式で定義する。
実施例6は、実施例3で求めたテストブロック(A)、(B)、(C)の時間領域波形から、包絡線を求め過酷度を比較したものである。
図13は、テストブロック(A)、(B)、(C)それぞれの包絡線(a)、及び逆数対数包絡線(b)を示す図である。尚、逆数対数包絡線とは、確率P(yi )の逆数の対数をとった値による包絡線である。
(a)から明らかなように、テストブロック(B)及び(C)の包絡線はテストブロック(A)の包絡線からかなりずれていることがわかる。このようにテストブロック(A)の包絡線を初期状態の包絡線とし、テストブロック(B)及び(C)の包絡線を一定時間使用後の包絡線とすれば、包絡線を比較することによって、腐食の発生、あるいは付着力の減少の発生を診断できる。
(b)から明らかなように、逆数対数包絡線においても、初期状態との間に明瞭な差が現れ、この差を時間軸上で足し合わせた過酷度によっても腐食・付着力を診断できる。
このようにして、本計測部は、所定の信号処理手順プログラムにより、測定対象の包絡線、逆数対数包絡線、及び過酷度を計算し、過酷度の所定のしきい値と比較して、しきい値未満か以上かを判断し、良、不良の情報を表示する。
規格化波形は、時間領域の波形のデータ値xi を(2)式で示した実効値xrms で除した波形である。
次に実施例7を示す。
実施例7は、実施例3で測定したテストブロック(A)、(B)、(C)の時間領域波形から、テストブロック(A)、(B)、(C)の規格化波形、及び規格化波形のべき乗波形を計算し比較したものである。
図14は、テストブロック(A)の時間領域波形(a)、規格化波形(b)、規格化波形の2乗波形(c)を示す図である。
図15は、テストブロック(A)の規格化波形の3乗波形(a)、規格化波形の4乗波形(b)を示す図である。
図16は、テストブロック(B)の時間領域波形(a)、規格化波形(b)、規格化波形の2乗波形(c)を示す図である。
図17は、テストブロック(B)の規格化波形の3乗波形(a)、規格化波形の4乗波形(b)を示す図である。
図18は、テストブロック(C)の時間領域波形(a)、規格化波形(b)、規格化波形の2乗波形(c)を示す図である。
図19は、テストブロック(C)の規格化波形の3乗波形(a)、規格化波形の4乗波形(b)を示す図である。
図14〜図19からわかるように、規格化波形、及び規格化波形のべき乗波形は、時間領域波形に比べて、テストブロック(A)、(B)、(C)による違い、すなわち、腐食・付着力の程度による違いが大きいことがわかり、特に高次のべき乗波形は著しく違いが大きいことがわかる。
このように規格化波形、及び規格化波形のべき乗波形を比較することによって、腐食・付着力の程度を高感度に診断できる。
このようにして、本計測部は、所定の信号処理手順プログラムにより、時間領域波形から規格化波形、及び規格化波形のべき乗波形を計算し、特徴を抽出し、しきい値と比較して、しきい値未満か以上かを判断し、良、不良の情報を表示する。
周波数領域の波形は、本計測部の信号処理手順プログラムにより時間領域の波形をフーリエ変換して求める。
次に実施例8を示す。
実施例8は、実施例3及び4で求めたテストブロック(A)、(B)、(C)の時間領域波形をフーリエ変換して周波数領域の波形を求め、テストブロック(A)、(B)、(C)の周波数領域の波形を比較するものである。
図20は、実施例3で求めたテストブロック(A)、(B)、(C)の時間領域の波形から求めた周波数領域の波形を示す図であり、(a)はテストブロック(A)の、(b)はテストブロック(B)の、(c)はテストブロック(C)の周波数領域の波形を示す図である。
(a)からわかるように、正常な鉄筋であるテストブロック(A)の場合には、20kHz〜80kHzまでの周波数領域に、ランダムに、かつ、ほぼ連続的に周波数成分が存在する。
(b)からわかるように、ひびの生じた鉄筋であるテストブロック(B)の場合には、特定の周波数成分が特定の間隔で現れるようになる。
(c)からわかるように、付着力を失った鉄筋であるテストブロック(C)の場合には、テストブロック(B)の場合程顕著ではないが、特定の周波数成分が特定の間隔で現れており、また、150kHz近辺の周波数成分が大きくなっている。
(a)と(b)の違い、すなわち、テストブロック(A)とテストブロック(B)の違いは極めて顕著であり、時間領域の波形からは違いが識別できにくい場合にも、周波数領域の波形を使用することで明確に違いを識別できる。
これらの図からわかるように、鉄筋に直接音響変換器を取り付けた場合にも図20と同様に、付着力が小さくなるに従って特定の周波数成分が特定の間隔で現れる傾向を示すことがわかる。
このようにして、本計測部は、所定の信号処理手順プログラムにより、時間領域波形から周波数領域の波形を計算し、基準となるパターンと比較し、一致度を計算し、一致度のしきい値と比較して、しきい値未満か以上かを判断し、良、不良の情報を表示する。
図22は、本発明の、鉄筋径、または、かぶり深さを測定する方法、及び測定例を示す図であり、(a)は測定方法、(b)は測定結果を示す図である。
(a)に示すように、鉄筋コンクリート11の鉄筋11aの真上に、コイル12を取り付け、鉄筋コンクリート11の表面に音響変換器14を取り付け、コイル12から磁場パルスを印加して、鉄筋11aを励振し、鉄筋11aを音源とする音響信号を音響変換器14で電気信号に変換し、計測部15で音響信号の波高値のピーク・ツー・ピーク値等の特徴値を測定する。かぶり深さdがわかっている場合には、予め準備した鉄筋径とかぶり深さと特徴値との対応関係を用い、測定した特徴値とかぶり深さに対応する鉄筋径を求める。かぶり深さdが不明の場合は、上記に説明した導電体の位置を測定する方法により、かぶり深さdを測定しておく。
鉄筋径がわかっており、かぶり深さdがわからない場合には、測定した特徴値と、予め準備した鉄筋径とかぶり深さと特徴値との対応関係を用い、測定した特徴値と鉄筋径に対応するかぶり深さdを求める。
(b)の縦軸は、特徴値であり、この例では、波高値のピーク・ツー・ピーク値を用いた。横軸はかぶり深さdである。図の挿入図に示すように、径の異なる鉄筋10d、13d、16d、19d、25d(異形鉄筋10mmφ、13mmφ、16mmφ、19mmφ、25mmφ)のそれぞれの特徴値の、かぶり深さd依存性を測定した。
図からわかるように、特徴値は、鉄筋径とかぶり深さdの両方に依存することがわかる。従って、予め準備した対応関係を基に、かぶり深さd、または鉄筋径を測定することができる。
図23は、本発明の締め具の締め具合を診断・測定する方法を示す図であり、(a)は、導電体21と導電体22とをボルト23、ナット24を介して締め付け固定した状態を横から見た図であり、(b)は真上から見た図である。
導電体21のボルト22の真上にコイル12を配置し、導電体21及び導電体22それぞれの表面に音響変換器14R、14Lを取り付ける。コイル12で磁場パルスを印加すれば、導電体21の表面に渦電流が誘起され、渦電流の磁場と磁場パルスの磁場との相互作用力により導電体21が励振される。ボルト23とナット24が堅く締め付けられた状態であれば、導電体21で発生した音響信号が導電体22によく伝わり、音響変換器14Rと音響変換器14Lの音響信号とは、ほぼ同等となる。ボルト23とナット24がゆるんだ状態であれば、導電体21で発生した音響信号は導電体22に伝わりにくく、音響変換器14Rと音響変換器14Lの音響信号との間には差が生ずる。
このようにして、締め具の締め具合を診断・測定することができる。
実施例9は、本発明の締め具の締め具合を診断・測定する方法によって、締め具の締め具合を診断・測定できることを示すものである。
アルミ板(200×300×3t)2枚をステンレス製のボルト・ナット(M10×15)6個で固定した。コイルに印加した電流パルスは波高値2000A、パルス幅350μsである。
図24は、ボルト・ナットが堅く締め付けられていた場合の測定結果を示す図であり、(a)及び(b)はコイルに面した側の導電体21に取り付けた音響変換器14Rの出力波形を示し、(c)及び(d)は導電体21にボルト・ナットで締め付け固定された導電体22側の音響変換器14Lの出力波形を示す。
尚、(a)及び(c)はBP(バンドパス・フィルター:通過帯域20kHz〜500kHz))を通過させ、20kHz以下の周波数成分をカットして測定した出力波形であり、(b)及び(d)は500kHzまでの全周波数成分による出力波形である。
図からわかるように、堅く締め付けられていた場合には、音響変換器14Lの出力波形は音響変換器14Rの出力波形と同等であることがわかる。
図からわかるように、ゆるんでいた場合には、音響変換器14Lの出力波形は音響変換器14Rの出力波形よりも振幅が小さくなることがわかる。
このように、本発明の方法を用いれば、締め具のしまり具合を診断・測定できる。
また、本方法は、橋梁などに使用されるハニカム構造のひび割れの検出、溶接部分の溶接の良否の判定にも同様に使用できる。
図26は、本発明の非導電体中に埋め込まれた導電体の位置を測定する方法を示す図であり、(a)は、非導電体である土31に埋められた導電体である水道管32の露出部分33に音響変換器14を取り付け、コイル12を土31の表面34上に配置した状態を横から見た図であり、(b)は真上から見た図である。
コイル12で磁場パルスを印加すれば、水道管32の表面に渦電流が誘起され、渦電流の磁場と磁場パルスの磁場との相互作用力により水道管32が励振される。水道管32が励振されて発生する音響は水道管32の露出部分33に伝わり、音響変換器14で検出される。音響信号の強度はコイル12が水道管32の真上に配置されたときに最も大きくなる。コイル12の配置する位置を変化させて、最も音響信号の強度が大きくなる位置を探すことによって、水道管32の埋設位置を測定することができる。
実施例10は、本発明の非導電体中に埋め込まれた導電体の位置を測定する方法によって、非導電体中に埋められた導電体の位置を測定できることを示すものである。
図27は、土中に埋め込まれた水道管の位置を測定した結果を示す図であり、(a)はコイルが水道管の真上にある場合、(b)は土の表面上の水道管の真上の位置から60mm離れていた場合、(c)は土の表面上の水道管の真上の位置から180mm離れていた場合の音響信号波形を示す。
図からわかるように、コイルが真上にある場合に音響信号強度が最も大きく、コイルの位置が真上から離れるに従って音響信号強度が小さくなることがわかる。このように、コイルの位置を変化させて、音響信号が最も大きくなる位置を探せば、その真下に配管があることがわかる。
図28は、本発明の非導電体中に埋め込まれた導電体の断裂の有無の診断、断裂位置を測定する方法を示す図である。
プレストレス・コンクリートである長尺の鉄筋コンクリート41中に埋め込まれた鉄筋42の露出部分43に音響変換器14を取り付け、長尺の鉄筋コンクリート41の表面にコイル12を取り付け、コイル12から磁場パルスを印加して鉄筋の表面に渦電流を誘起し、渦電流による磁場と磁場パルスとの相互作用力により鉄筋42を励振する。鉄筋42が励振されて発生する音響は鉄筋42を伝わり、鉄筋42の露出部分43に取り付けた音響変換器14で検出される。鉄筋42が途中44で断裂していれば、検出される音響信号の強度は小さく、断裂の有無を診断できる。また、長尺鉄筋コンクリート41の表面上でコイル12の位置を変化させて測定すれば、音響信号の有無を生ずる位置から、断裂位置44を測定できる。
このようにして本発明によれば、鉄筋の断裂の有無の診断、断裂位置を測定できる。
さらに、本発明のパルス電磁力による診断・測定方法によれば、鉄筋のかぶり深さや径の測定、ボルト・ナット等の締具の締め具合の測定、地中に埋もれた水道管やガス管の位置の測定、鉄筋の断裂といった診断・測定も容易かつ確実にできる。
11,41 鉄筋コンクリート
11a,42 鉄筋
11b コンクリート
12 コイル
13 電源部
14 音響変換器
15 計測部
16 電源ケーブル
17 信号ケーブル
20 パルス電磁力による音響位置探査装置
21,22 導電体
23 ボルト
24 ナット
31 土
32 水道管
33 水道管の露出部分
34 土の表面
43 鉄筋の露出部分
44 断裂位置
Claims (7)
- 導電体と該導電体を覆う非導電体とから成る構造物の表面に配置するコイルと、
該コイルに電流パルスを供給して上記導電体から音響を発生させる電源部と、
上記構造体から露出した導電体に取り付ける、該音響による露出した導電体表面の振動を電気信号に変換する変換器と、
該変換器の出力強度を測定する計測部とからなり、
該出力強度から上記導電体の断裂の有無を診断し、及び/又は、上記構造物の表面上で上記コイルの位置を変化させ、該位置の変化による上記出力強度の変化を計測して、上記導電体の断裂位置を測定することを特徴とする、パルス電磁力による音響診断・測定装置。 - 前記変換器は、アコースティックエミッションセンサー、マイクロホン、加速度センサー、又は、前記構造物の表面の振動を光学的変位として測定する変位検出器であることを特徴とする、請求項1に記載のパルス電磁力による音響診断・測定装置。
- 前記光学的変位として測定する変位検出器は、コヒーレントなレーザー光を前記構造物の表面に照射し、反射光の有する構造物表面の振動に依存した位相差を干渉縞として検出するレーザー干渉計であることを特徴とする、請求項2に記載のパルス電磁力による音響診断・測定装置。
- 前記コイルは複数のコイルから成り、該複数のコイルはコイルの軸を揃えかつ密着して構成され、前記電源部は上記複数のコイルのそれぞれに直列に接続した蓄電用コンデンサと、該コイルとコンデンサからなる複数の直列回路を共通のスイッチを介して並列に接続した電源とから成り、該共通のスイッチをONにして上記コイルに電流パルスを印加して磁場パルスを発生させることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のパルス電磁力による音響診断・測定装置。
- 前記コイルに静磁場を発生する磁石を付加したことを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のパルス電磁力による音響診断・測定装置。
- 導電体と該導電体を覆う非導電体とから成る構造物の表面にコイルを配置し、該コイルに電流パルスを印加して磁場パルスを発生させ、該磁場パルスによって上記導電体に渦電流を誘起させ、該渦電流と上記磁場パルスとの相互作用力により上記導電体を励振させて音響を発生させ、上記非導電体から露出した導電体表面の振動を電気信号に変換し、該電気信号の強度から上記導電体の断裂の有無を診断し、及び/又は、上記構造物の表面上で上記コイルの位置を変化させ、該位置の変化による上記電気信号の変化を計測して、上記導電体の断裂位置を測定することを特徴とする、パルス電磁力による音響診断・測定方法。
- 前記構造物は、プレストレス・コンクリートであることを特徴とする、請求項6に記載のパルス電磁力による音響診断・測定方法。
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