JP2008209231A - 鋼床版のデッキ内の亀裂の探傷のための探触子ホルダ、探傷装置及び探傷方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】デッキ100の下面に配置した集束型超音波探触子20からデッキ100の内部へと斜めに入射される集束された超音波ビーム21が、所定深さ以上の亀裂122を直射するように、所定深さと超音波ビームの入射角とに応じて溶接部から集束型超音波探触子20までの離間距離を定め、この離間距離を保ちつつ集束型超音波探触子20をリブ101の延在方向に沿ってスライドさせながら超音波ビーム21をデッキ100へ入射させて、所定の閾値より大きいエコー信号が検出される範囲を深い亀裂が存在する範囲として検出する。
【選択図】図6
Description
鋼床版の上面には舗装105が施されているため、鋼床版の点検は一般にデッキ100の下面から実施される。デッキ100とトラフリブ101と溶接線に発生した亀裂の多くはトラフリブ101とデッキ100との溶接ルート部から発生し,溶接ビード表面に貫通したものである。デッキ100とトラフリブ101との溶接線に発生する亀裂を図2の(A)に示す。参照符号120にて示す部分が溶接ビード表面に貫通した亀裂であり、このような亀裂は目視や、磁粉探傷試験によって発見することができる。またこの亀裂はデッキからトラフリブを引き剥がす損傷となるが、適切な補修により亀裂の進展を防止すれば重大な損傷に至る危険性は少ない。
その後の調査により、デッキ100を貫通する亀裂は、ビード貫通亀裂120と同様にトラフリブ101とデッキ100との溶接ルート部から発生していることが確認された。この亀裂はデッキ下面ではトラフリブの内面側にあるため、ビード貫通亀裂120のように目視による点検や磁粉探傷試験で発見することはできない。
デッキ100の上面から超音波で探傷するためにはデッキ100上の舗装105等を除去する必要がある。したがって、定期的に亀裂の有無を検査する方法としては、デッキ100の上面から超音波で探傷する方法は採用しがたい。
しかしながら表面波を用いる方法では、溶接ルート部111からも反射エコーを生じる。そして溶接ルート部111は位置的に亀裂122に近いことから亀裂122からのエコーと溶接ルート部111の反射エコーとの区別が難しく、亀裂122からのエコーを精度良く検出することが困難であった。また一回反射法においても、デッキ100の上面の腐食により余計なエコーが生じ、溶接ルート部111からの反射エコーも生じるため、亀裂122によるエコーの検出を精度良く検出することが困難であった。
本発明による探傷方法では、集束させた超音波ビームをデッキ下面から斜めに入射させるが、探触子と溶接ビードとの干渉のために微小な亀裂には超音波ビームを直射させることはできずこのような亀裂は検出できない。しかしながら、鋼床版の上面に設けられた構造物(アスファルトなど)を除去する必要がなく定期点検で実施することができるため、亀裂が進展してデッキに深刻な損傷をもたらす前に検出することが可能となる。
そこで本発明では、集束型超音波探触子を下面に接触させる際に使用する探触子ホルダを提供し、集束型超音波探触子の取り扱いを容易にする。
ワイヤ式エンコーダ3は、上面に設けられた磁石等の固定手段によってデッキ100に固定される。したがってセンサ部2がX方向に移動してトラフリブ101とデッキ100との溶接線を走査するのに従ってワイヤ31が繰り出され、センサ部2のX方向の移動量に応じた数のパルス信号を出力する。
超音波探傷器4は、図示するとおりMPU41、記憶部42、パルス発生回路44、A/Dコンバータ45、入出力インタフェース回路(I/F)46及び表示部47を備えている。そして、MPU41に対して記憶部42、入出力インタフェース回路46及び表示部47がバス48を経由して接続されている。
記憶部42には、集束型超音波探触子の制御や測定データの演算処理などの基本処理をMPU41に実行させる基本プログラム421や、後述する表示画面作成プログラム422、これらプログラムをMPU41が実行する際に生成、使用する演算データ及び一時データ、並びに集束型超音波探触子20が受信したエコー波形が記憶される。
パルス発生回路44は、入出力インタフェース回路46を介してMPU41から超音波出力指示信号を受けると、集束型超音波探触子20にパルス信号を出力する。集束型超音波探触子20には内蔵した圧電素子によりパルス信号を超音波に変換し、この超音波を被検査物体内に入射する。
ワイヤ式エンコーダ3は、センサ部2の移動に伴ってワイヤ31が繰り出されると、この移動量に応じた数のパルス信号を出力する。パルス信号は入出力インタフェース回路46を介して超音波探傷器4内に入力される。基本プログラム421は入力されるパルス数を計数することによりあらかじめセットした基準位置からセンサ部2が移動した移動量を算出する処理をMPU41に行わせる。
記憶部202には、コンピュータ200に接続された超音波探傷器4から出力される上記データを入出力インタフェース回路203を介して読み込み記憶部202内に記憶する処理をCPU201に実行させるデータ入力プログラム211や、亀裂検出プログラム212、これらプログラムをCPU201が実行する際に生成、使用する演算データ及び一時データ、並びに超音波探傷器4から入力したエコー波形信号が記憶される。亀裂検出プログラム212については後述する。
センサ部2は、集束型超音波探触子20とこれを保持するための探触子ホルダとからなる。この探触子ホルダは、集束型超音波探触子20を保持する保持部材51と、ナット62a及び62bにより保持部材51に固定されるスライド部材61とからなる。
ナット54、54…及び55、55…は、保持部材51の側面に設けられたねじ穴にねじ込まれたときに、それぞれの底面で集束型超音波探触子20の両側面を押圧することによって、集束型超音波探触子20を保持部材51に固定する。
後述するとおり集束型超音波探触子20は、デッキ100の下面からこの面に対して斜めに超音波ビームを入射する。当接部63a及び63bは、集束型超音波探触子20が超音波ビームの入射角が傾斜する方向に突出するように設けられる。このように当接部63a及び63bを設けることにより、これらをトラフリブ101の側面に同時に当接させたとき、超音波ビームはトラフリブ101とデッキ100との溶接箇所に向かって伝搬し、溶接箇所からデッキ100内へと進展する亀裂を直射するように、集束型超音波探触子20の方向(すなわち超音波ビームの方向)を定めることが可能となる。
これらナット62a及び62bを緩めてからスライド部材61を保持部材51に対してスライドさせ、これらナット62a及び62bを締め付けて任意の位置でスライド部材61を保持部材51に固定することができる。このようにスライド部材61をスライドさせることによって、当接部63a及び63bをトラフリブ101に当接させた状態におけるリブ101から集束型超音波探触子20までの後退量を調節し、集束型超音波探触子20による超音波ビームの入射位置を調整することができる。
また一点鎖線及び二点鎖線は、センサ部2とトラフリブ101との間の離間距離を変えたとき(すなわちセンサ部2をY方向に移動させたとき)に検出される各エコー波形の最大値の包絡線を示す。ここに一点鎖線は、トラフリブ101とデッキ100との溶接箇所にデッキ100内へ進展する亀裂122が存在する場合の包絡線を示し、二点鎖線はこのような亀裂が存在しない場合の包絡線を示す。なお溶接ビード110とセンサ部2との干渉のためにセンサ部2がトラフリブ101へ接近するには限界がある。このため図8では、この接近限界までセンサ部2を近づけた場合のビーム路程Lbよりも長いビーム路程の範囲についてのみ包絡線を示している。
したがって、集束された超音波ビーム21が被検査領域を直射するように集束型超音波探触子20を位置付け、このとき受信したエコー波の強度が所定の閾値THを超えるか否かを判定することによって、被検査領域まで進展する亀裂があるか否かを判定することができる。所定の閾値THとしては、亀裂がない場合に検出されるエコー波の最大強度よりも所定マージンだけ強い信号強度をしようすればよい。
実際には、集束型超音波探触子20が受信するエコー信号には、被検査領域以外の場所(例えばデッキ100の端面など)で反射した反射エコー信号が混入する。したがって上記閾値THとの比較においては比較の対象とするエコー波のビーム路程の範囲を制限する。デッキ100内にて亀裂122の検出を行う被検査領域は、デッキ100のうちトラフリブ101と溶接される部分とその周辺のみであり、検査の対象となる範囲は検査前に予め定められるから、この所定の被検査領域とセンサ部2との間の間隔に応じて、閾値THと比較するエコー波のビーム路程の範囲を設定する。
ΔD=tanθ×ΔW1 (1)
によって決定してよい。ここにθは超音波ビーム21の入射角(本実施例ではθ=70度)であり、ΔW1はステップS1で定めた亀裂の深さである。
上記判定の際には、採取したそれぞれのエコー波形信号のうちの所定のビーム路程範囲内の信号の強度だけを所定の閾値THと比較する。ここで超音波ビームの入射位置と被検査領域との間の距離は既知であるから、超音波ビームの入射位置と被検査領域との間のビーム路程が取りうる最短〜最長のビーム路程の範囲を上記所定のビーム路程範囲として定めることによって、被検査領域以外の場所で反射したエコーによる影響を除去する。
コンピュータ200の記憶部202に記憶される亀裂検出プログラム212は、超音波探傷器4から入力され記憶部202内に記憶されている各エコー波形信号と閾値THとを比較する処理と、閾値THを超える各エコー波形信号が検出されるセンサ部2の移動量の範囲を決定する処理とを、コンピュータ200に実行させる。
図示するとおり、亀裂の深さが約6mm以上となる範囲Rにおいてエコー強度の最大値が閾値THを超え、亀裂の深さが約6mm未満の範囲ではエコー強度の最大値が閾値TH以下となった。したがって本実験の装置構成によれば深さ6mm以上の亀裂をデッキ100の下面から探傷することが可能であることが分かる。
集束型超音波探触子20を溶接箇所から離して距離L’を33mmにすると被検査領域の深さが深くなる。したがって図12は、デッキ100内の亀裂が深くなるほど幅が狭まっていることを示す。
このように、溶接箇所からの集束型超音波探触子20の離間距離を変えることによって、検出する亀裂の深さを変えることができる。したがってこの離間距離を適切な値に設定することによりデッキ100の上面まで達した亀裂のみを検出することが可能である。
集束型超音波探触子20からデッキ100に入射する超音波ビームは、集束されているとはいえある程度のビーム径の広がりがあるため、亀裂の先端が超音波ビームの中心に至っていなくてもある程度の強度のエコー波形信号が得られる。一方で被検査領域に全く亀裂がない場合にはエコー波形信号の強度は非常に小さくなるため、亀裂がない場合との峻別は容易である。したがって、計算によってある深さΔW1の亀裂の先端をビーム中心で捉えるように集束型超音波探触子20の位置を決定した場合、実際にはその深さよりも浅い亀裂を検出することができる。
この様子を図13の(A)及び(B)並びに図14を参照して説明する。
図14は、図13の(A)及び(B)に示す亀裂と集束型超音波探触子20との間の距離を変えながら検出したエコー波形の最大値の包絡線を示す。一点鎖線は図13の(A)に示す亀裂を探傷した場合の波形であり、二点鎖線は図13の(B)に示す亀裂を探傷した場合の波形である。
図15は、超音波探傷器4により作成されるBスコープ画像の例を示す図である。
図15に示すBスコープ画像は、探触子を1方向にスキャンさせて得られた各移動距離におけるそれぞれのエコー波形のビーム路程をY軸で示し、探触子のスキャン方向をX軸で示し、あるスキャン位置で得られたエコー波形のあるビーム路程のエコー信号の強度を色の違いで表したものである。
かかるBスコープ画像には検出した亀裂を示す島が表示されるので、検査者はコンピュータ200にエコー波形信号を出力しなくとも、簡易に亀裂の存在を確認することができる。
2 センサ部
3 ワイヤ式エンコーダ
4 超音波探傷器
20 集束型超音波探触子
21 超音波ビーム
31 ワイヤ
100 デッキ
101 トラフリブ
110 溶接ビード
111 溶接ルート部
122 亀裂
Claims (3)
- 鋼床版のデッキとその下面に溶接されたリブとの溶接箇所から、前記デッキ内へと進展する亀裂を検出する際に、集束型超音波探触子を前記下面に接触させ、かつ前記集束型超音波探触子から生じる集束された超音波ビームが前記下面に対して斜めに入射するように、前記集束型超音波探触子を保持する探触子ホルダであって、
前記リブとの当接部と、
前記当接部を前記リブに当接させた状態における前記リブからの前記集束型超音波探触子の後退量を調整する調整機構と、を有し、
該当接部を前記リブに当接させたときに前記亀裂を検出する被検査領域を前記超音波ビームが直射するように前記集束型超音波探触子を位置付けることを特徴とする探触子ホルダ。 - 請求項1に記載の探触子ホルダを備え、鋼床版のデッキとその下面に溶接されたリブとの溶接箇所から、前記デッキ内へと進展する亀裂を検出する探傷装置であって、
前記探触子ホルダを前記リブの延在方向に沿ってスライドさせた移動量を検出する移動量検出手段、
前記探触子ホルダをスライドさせたときに前記移動量検出手段が順次検出する各移動量と、それぞれの位置において前記集束型超音波探触子により検出されるエコー信号と、を記録する記録手段、及び
前記超音波ビームのエコー信号の強度が所定の閾値より大きいとき、前記被検査領域に亀裂が存在することを検出する亀裂検出手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の探傷装置。 - 鋼床版のデッキとその下面に溶接されたリブとの溶接箇所から前記デッキ内へと進展する亀裂を検出する、鋼床版のデッキ内の亀裂の探傷方法であって、
前記デッキの下面に配置した集束型超音波探触子から前記デッキの内部へと前記下面に対して斜めに入射される集束された超音波ビームが、所定深さ以上の亀裂を直射するように、該所定深さと前記超音波ビームの入射角とに応じて前記溶接部から前記集束型超音波探触子までの離間距離を定め、
前記離間距離を保ちつつ前記集束型超音波探触子を前記リブの延在方向に沿ってスライドさせながら前記超音波ビームを前記デッキへ入射させて、所定の閾値より大きいエコー信号が検出される範囲を、亀裂が存在する範囲として検出する、
ことを特徴とする鋼床版のデッキ内の亀裂の探傷方法。
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