JP5083360B2 - 電子基板、半導体装置および電子機器 - Google Patents

電子基板、半導体装置および電子機器 Download PDF

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Description

本発明は、電子基板、半導体装置および電子機器に関するものである。
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal data assistance)などの電子機器には、集積回路を備えた電子基板(半導体チップ)が搭載されている。一般に電子基板には接続端子が形成され、その接続端子を介して他の電子基板や母基板(マザーボード)等に実装されている。これにより、当該電子基板と、他の電子基板やマザーボード等との間で、電力伝送や通信等の信号授受を行うことができるようになっている(例えば、特許文献1および2参照)。
特開2002−164468号公報 特開2003−347410号公報
しかしながら、電子基板に接続端子を形成すると構造が複雑になり、またその接続端子と他の電子基板や母基板等との実装作業が煩雑になるという問題がある。さらに、実装に伴って導通不良や短絡等が発生するおそれがあり、電気的接続の信頼性を低下させることになる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、構造が簡単であり、また実装作業を簡略化することが可能な、電子基板および半導体装置の提供を目的とする。また、低コストの電子機器の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る電子基板は、基体の能動面側または前記能動面の裏面側に、複数のインダクタ素子が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、電子基板に形成された複数のインダクタ素子を用いて信号授受を行うことができるので、電子基板の接続端子を削減することが可能になり、電子基板の構造を簡素化することができる。これに伴って、電子基板の実装作業を簡略化することが可能になり、さらには実装に伴う信頼性の低下を防止することができる。
また前記複数のインダクタ素子は、相互にインダクタンス値または適用可能周波数の異なる第1インダクタ素子および第2インダクタ素子を含んでいることが望ましい。
ここで「適用可能周波数」とは、当該インダクタをアンテナとして機能させる場合に当該インダクタがアンテナとしての特性を示し、アンテナとして適用することが可能な周波数をいう。
この構成によれば、各インダクタ素子に機能を分担させることができるので、各インダクタ素子を最適設計することが可能になる。これにより、各インダクタ素子の寸法効率や伝送効率を向上させることができる。
また前記第1インダクタ素子は、外部との電力伝送に使用され、前記第2インダクタ素子は、外部との通信に使用されることが望ましい。
この構成によれば、外部とのすべての信号授受をインダクタ素子によって行うことが可能になり、電子基板の接続端子を廃止することができる。
また前記基体には、外部との電力伝送に使用される接続端子が設けられ、前記第1インダクタ素子および前記第2インダクタ素子は、外部との通信に使用されてもよい。
この構成によれば、電力伝送のみを接続端子によって確実に行うことができる。また、外部との通信を複数のインダクタ素子によって行うことにより、通信速度を向上させることができる。
また、前記複数のインダクタ素子の全部または一部と前記基体との間には、前記基体より誘電正接が小さい材料層が設けられていることが望ましい。
この構成によれば、インダクタ素子から出力された電磁波が、基体において渦電流発生損として吸収されるのを抑制することが可能になり、アンテナとしての性能を向上させることができる。
一方、本発明に係る半導体装置は、上述した電子基板が積層配置され、前記電子基板に形成された前記インダクタ素子をアンテナとして電磁波を送受信することにより、前記電子基板間における信号授受を可能としたことを特徴とする。
上述した電子基板は、接続端子を削減することが可能である。したがって、電子基板の実装作業を簡略化することが可能になり、製造コストを低減することができる。また、実装に伴う信頼性の低下を防止することができる。
また、信号授受を行う一対の前記電子基板に形成された前記インダクタ素子が、相互に対向配置されていることが望ましい。
この構成によれば、伝送効率をさらに向上させることができる。また混信を防止することができる。
一方、本発明に係る電子機器は、上述した電子基板を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、接続端子が削減された電子基板を備えているので、低コストの電子機器を提供することができる。
第1実施形態に係る電子基板の平面図である。 (a)はインダクタ素子の平面図であり、(b)は断面図である。 インダクタ素子の変形例の説明図である。 第1実施形態に係る半導体装置の説明図である。 第2実施形態に係る電子基板の説明図である。 第2実施形態に係る電子基板の製造方法の工程図である。 第2実施形態に係る電子基板の製造方法の工程図である。 第2実施形態に係る半導体装置の説明図である。 携帯電話の斜視図である。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1実施形態)
最初に、第1実施形態に係る電子基板について説明する。
図1は第1実施形態に係る電子基板の平面図である。第1実施形態に係る電子基板1は、基体10の能動面側にインダクタンス値または適用可能周波数の異なる複数のインダクタ素子40,80が形成されたものである。そのうち、第1インダクタ素子80は通信に使用されるものであり、第2インダクタ素子40は電力伝送に使用されるものである。
電子基板1は、シリコンやガラス、石英、水晶等からなる基体10を備えている。その基体10の能動面には、電子回路(不図示)が形成されている。その電子回路は、少なくとも配線パターンが形成されたものであり、複数の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)等の半導体素子や、複数のパッシブコンポーネント(部品)、それらを相互に接続する配線等によって構成されている。
基体10の能動面の中央部には、後述する誘電体層31が形成されている。この誘電体層31は、能動面の全体に形成されていても良い。電子基板1が絶縁体の場合、必ずしも誘電体層31は必要ないが、例えば、Q値を向上させたり、自己共振周波数を調整したりするなど、最適なインダクタ特性を得るために、積極的に誘電体層31を形成しても良い。また基体10の能動面の周縁部には、電子回路を外部に電気的接続するための電極11,21が配列形成されている。その電極11,21から、誘電体層31の表面にかけて、複数のインダクタ素子40,80が形成されている。
図2はインダクタ素子の説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)のB−B線における断面図である。図2(b)に示すように、基体10の能動面には、電子回路を保護するため、SiN等の電気絶縁性材料からなるパッシベーション膜8が形成されている。また基体10の能動面の周縁部には、電子回路を外部に電気的接続するための電極11が形成されている。その電極11の表面には、パッシベーション膜8の開口部が形成されている。
その開口部からパッシベーション膜8の表面にかけて、連結配線12aが形成されている。この連結配線12aは、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、タングステン(W)、チタンタングステン(TiW)、窒化チタン(TiN)、ニッケル(Ni)、ニッケルバナジウム(NiV)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)等の導電性材料の単体または複合材料により、単層もしくは複数層に形成されている。なお電解メッキ法により連結配線12aを形成する場合には、連結配線12aは下地層の表面に形成されることが多いが、図2(b)では下地層の記載を省略している。
その連結配線12aを覆うように、誘電体層31が形成されている。この誘電体層31には、連結配線12aの端部を露出させる貫通孔31aが形成されている。
その誘電体層31の表面に、インダクタ素子40の巻き線41が形成されている。巻き線41の構成材料は、連結配線12aと同様であるが、巻き線41として必要な抵抗レンジや耐許容電流値等の特性に応じて適宜選択することができる。
図2(a)に示すように、巻き線41は平面視において略矩形の渦巻状に形成されているが、略円形や略多角形の渦巻状に形成されていてもよい。また図2(b)に示すように、巻き線41は側面視において同一平面状に形成されている。すなわち、本実施形態のインダクタ素子40として、平面型インダクタ素子(スパイラルインダクタ素子)が採用されている。
図2(a)に示すように、巻き線41の外側端部は、連結配線22aを介して電極21に連結されている。また巻き線41の内側端部は、貫通孔31aを通って連結配線12aの一方端部に連結されている。この連結配線12aの他方端部は、巻き線41の外側に引き出されて、電極11に連結されている。連結配線12aを外側に引き出す際、誘電体層31により連結配線12aと巻き線41との短絡が防止されている。そして、電極11,21からインダクタ素子40に通電することにより、インダクタ素子40がアンテナとして機能し、適用可能周波数の電磁波が出力されるようになっている。
ところで図2(b)に示すように、基体10を構成するシリコンは電波吸収体であり、インダクタ素子40から出力された電磁波も吸収されて減衰することになる。しかしながら、本実施形態では、上述した誘電体層31によりインダクタ素子40が基体10から離間配置されている。なお誘電体層31の厚さは、例えば20μm以上に形成されている。これにより、インダクタ素子40から出力された電磁波が、基体10によって吸収されるのを抑制することができる。言い換えれば、基体10による渦電流損を減少させることができる。
この誘電体層31の構成材料として、誘電正接の小さい材料を採用することが望ましい。誘電正接とは、絶縁体に交流電圧を印加した場合における絶縁体内部の電気エネルギーの損失度合を示すものである。誘電正接の小さい材料で誘電体層31を構成することにより、インダクタ素子40から出力された電磁波が、基体において渦電流発生損として吸収されるのを抑制することが可能になり、アンテナとしての性能を向上させることができる。具体的には、誘電体層31の構成材料として、ポリイミドやベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素樹脂等を採用すればよい。
図3は、インダクタ素子の変形例の説明図であり、図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のC−C線における断面図である。図3(b)に示すように、この変形例では、上述した誘電体層が形成されていないので、パッシベーション膜8の表面にインダクタ素子40の巻き線41が直接形成されている。また誘電体層が形成されていないので、上記のように巻き線41と連結配線とを立体交差させることができない。そのため、図3(a)に示すように、巻き線41の内側端部は、巻き線41の中央部に形成された電極11に連結されている。
また、図3(b)に示すパッシベーション膜8の表面にインダクタ素子40を形成し、そのインダクタ素子を覆うように誘電体層を形成し、その誘電体層の表面に他のインダクタ素子を形成してもよい。このようにインダクタ素子を重ねて形成することにより、電子基板を小型化することができる。ここで、各インダクタ素子を異なるインダクタンス値または適用可能周波数に設定することにより、各インダクタ素子をアンテナとして適用する場合の混信を防止することが可能である。
なお、図3(b)に示す変形例では、パッシベーション膜8の外側にインダクタ素子40が形成されているが、パッシベーション膜8の内側にインダクタ素子40が形成されていてもよい。この場合には、半導体素子の製造プロセスを利用して、CuやAl等の導電性材料により巻き線41を形成すればよい。また、パッシベーション膜8の内側および外側に、インダクタ素子を重ねて形成してもよい。
図1に戻り、基体10には、第1インダクタ素子80および第2インダクタ素子40が形成されている。第2インダクタ素子40は、第1インダクタ素子80より巻き線の巻き数が多くなっている。一般にインダクタ素子の巻き数が増えると、インダクタ素子の経路が長くなるため、インダクタンス(L値)が増加する。またインダクタンスが増加すると、適用可能周波数が低周波側にシフトする。したがって、第2インダクタ素子40の適用可能周波数は、第1インダクタ素子80より低周波側にシフトしている。なお「適用可能周波数」とは、当該インダクタをアンテナとして機能させる場合に当該インダクタがアンテナとしての特性を示し、アンテナとして適用することが可能な周波数をいう。
第1実施形態における各インダクタはアンテナとして機能し、そのうち第1インダクタ素子80は、通信に使用されるものであり、高速・大容量通信のため適用可能周波数が例えば2〜5GHzに設定されている。また第2インダクタ素子40は、電力伝送に使用されるものであり、適用可能周波数が例えば数kHz〜数100MHzに設定されている。なお電力伝送用の低周波数の電磁波に、通信用の高周波数の電磁波を重畳して出力することにより、第2インダクタ素子を電力伝送用および通信用に共用することも可能である。
なお本明細書中の各実施形態では、巻き線(スパイラル)型インダクタを例にして説明しているが、これに限定されるものではなく、インダクタもしくはアンテナとして機能するものであれば各実施形態に適用することができる。巻き線(スパイラル)型インダクタの他に、ミアンダ型、トロイダル型、パッチ型等が知られており、それらを適用する場合のインダクタンス値の大小はそれぞれのインダクタ、アンテナによる。
(半導体装置)
図4は、第1実施形態に係る半導体装置の説明図であり、図1のA−A線に相当する部分における断面図である。図4に示すように、第1実施形態に係る半導体装置5は、母基板(マザーボード)100の表面に、第1電子基板200および第2電子基板300が順に実装されたものである。
母基板100はガラスエポキシ樹脂等によって構成され、その表面には第1インダクタ素子180および第2インダクタ素子140が形成されている。この第1インダクタ素子180は、通信に使用されるものであり、適用可能周波数が例えば2〜5GHzに設定されている。また第2インダクタ素子140は、電力伝送に使用されるものであり、適用可能周波数が例えば数kHz〜数100MHzに設定されている。
この母基板100の表面に、接着剤(不図示)等を介して、第1電子基板200が実装されている。第1電子基板200の第1インダクタ素子280および母基板100の第1インダクタ素子180は、同等の適用可能周波数に設定され、相互に対向配置されている。すなわち各第1インダクタ素子180,280は、それぞれの中心を通る法線同士が略一致するように配置されている。また、第1電子基板200の第2インダクタ素子240および母基板100の第2インダクタ素子140も、同等の適用可能周波数に設定され、相互に対向配置されている。
その第1電子基板200の裏面に、接着剤(不図示)等を介して、第2電子基板300が実装されている。第2電子基板300の第1インダクタ素子380および母基板100の第1インダクタ素子180は、同等の適用可能周波数に設定され、第1電子基板200を挟んで相互に対向配置されている。また、第2電子基板300の第2インダクタ素子340および母基板100の第2インダクタ素子140も、同等の適用可能周波数に設定され、第1電子基板200を挟んで相互に対向配置されている。
上記のように構成された半導体装置5では、母基板100の第2インダクタ素子140に通電することにより、第2インダクタ素子140から電磁波を送信する。この電磁波を、第1電子基板200の第2インダクタ素子240および第2電子基板300の第2インダクタ素子340で受信して、電気エネルギーを取り出す。このように、各第2インダクタ素子140,240,340をアンテナとして電磁波を送受信することにより、母基板100から第1電子基板200および第2電子基板300に対する電力伝送が行われる。その結果、第1電子基板200および第2電子基板300を駆動することができる。その際、電磁波を送受信する各第2インダクタ素子140,240,340が対向配置されているので、電力伝送損失を抑制して伝送効率を向上させることができる。
また、母基板100の第1インダクタ素子180または各電子基板200,300の第1インダクタ素子280,380のうち、一方から送信された電磁波を他方で受信して電気信号を取り出す。このように、各第1インダクタ素子180,280,380をアンテナとして電磁波を送受信することにより、母基板100と各電子基板200,300との間で通信が行われる。その結果、電子基板をドライバとして機能させることができる。なお、第1電子基板200の第1インダクタ素子280または第2電子基板300の第1インダクタ素子380のうち、一方から送信された電磁波を他方で受信することにより、第1電子基板200と第2電子基板300との間で通信を行うことも可能である。また、母基板100および/または各電子基板200,300に形成された各インダクタ素子の適用可能周波数および出力を適当に設定することにより、半導体装置5と外部との通信を行うことも可能である。
以上に詳述したように、本実施形態に係る電子基板は、基体の能動面にインダクタンス値または適用可能周波数の異なる複数のインダクタ素子が形成され、そのうち第1インダクタ素子は通信に使用され、第2インダクタ素子は電力伝送に使用される構成とした。この構成によれば、電子基板に形成された複数のインダクタ素子を用いて電力伝送および通信を行うことができるので、電子基板に接続端子を設ける必要がなくなり、電子基板の構造を簡素化することができる。これに伴って、電子基板の実装作業を簡素化することが可能になる。具体的には、両者の精密な位置合わせや、リフロー等の作業が不要になる。さらには、実装に伴う信頼性の低下を防止することができる。具体的には、実装に伴って導通不良や短絡等が発生するのを防止することができる。このように製造不良の発生を抑制することができるので、製造歩留まりを向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る電子基板について説明する。
図5は第2実施形態に係る電子基板の説明図であり、図5(a)は平面図であり、図5(b)は図5(a)のE−E線における断面図である。図5(a)に示すように、第2実施形態に係る電子基板1は、接続端子63を使用して電力伝送を行う点で、インダクタ素子を使用して電力伝送を行う第1実施形態とは異なっている。また第2実施形態に係る電子基板は、複数のインダクタ素子80,90を使用して通信を行う点で、第1実施形態とは異なっている。なお第1実施形態と同様の構成となる部分については、その詳細な説明を省略する。
(再配置配線等)
図5(a)に示すように、外部から電力供給を受けるため、電子基板1の周縁部に沿って複数の電極62が整列配置されている。近年の電子基板1の小型化により、隣接する電極62間のピッチは非常に狭くなっている。この電子基板1を相手側部材に実装すると、隣接する電極62との間で短絡が発生するおそれがある。そこで電極62間のピッチを広げるため、電極62の再配置配線64が形成されている。
具体的には、電子基板1の表面中央部に、接続端子63を構成する複数のパッドが形成されている。その接続端子63に対して、電極62から引き出された再配置配線64が連結されている。これにより、狭ピッチの電極62が中央部に引き出されて広ピッチ化されている。このような電子基板1の形成には、ウエハの状態において一括して再配置配線や樹脂封止等を行ってから個々の電子基板1に分離する、W−CSP(Wafer level Chip Scale Package)技術が利用されている。
図5(b)に示すように、接続端子63の表面にはバンプ78が形成されている。このバンプ78は、例えばハンダバンプであり、印刷法等によって形成されている。このバンプ78がリフロー等により溶解されて、相手側部材の接続端子に連結されるようになっている。
そのバンプ78の周囲には、ソルダーレジスト66が形成されている。このソルダーレジスト66は、電子基板1を相手側部材に実装する際にハンダバンプ78の隔壁となるものであり、電気絶縁性を有する樹脂材料等によって構成されている。このソルダーレジスト66により、電子基板1の表面全体が覆われている。
ところで、電子基板1を相手側部材に実装すると、電子基板1の基体10と相手側部材との熱膨張係数の差により、両者間に熱応力が発生する。この熱応力を緩和するため、接続端子63と基体10との間に応力緩和層30が形成されている。この応力緩和層30は、感光性ポリイミドやベンゾシクロブテン(BCB)、フェノールノボラック樹脂等の樹脂材料により、所定の厚さに形成されている。
図5(a)に示すように、第2実施形態に係る電子基板1にも複数のインダクタ素子80,90が形成されている。各インダクタ素子80,90として、第1実施形態と同様の平面型インダクタ素子(スパイラルインダクタ素子)が採用されている。各インダクタ素子80,90の巻き線は、上述した応力緩和層30の表面に形成されている。この応力緩和層30は、誘電体である樹脂材料によって構成されているので、第1実施形態における誘電体層と同様に機能する。したがって、応力緩和層30により各インダクタ素子80,90を基体10から離間配置することが可能になり、各インダクタ素子80,90から出力された電磁波が基体10によって吸収されるのを抑制することができる。
第2インダクタ素子90の巻き数は、第1インダクタ素子80より多くなっている。これにより、第2インダクタ素子90の適用可能周波数は、第1インダクタ素子80より低周波側にシフトしている。ただし、この第2インダクタ素子90は電力伝送に使用されるものではなく、第1インダクタ素子80とともに通信に使用される。そのため、各インダクタ素子80,90の適用可能周波数は、ともに2〜5GHzに設定されている。なお、第2インダクタ素子90と第1インダクタ素子80との適用可能周波数の差は、第1実施形態に比べて小さくなっている。
(電子基板の製造方法)
次に、第2実施形態に係る電子基板の製造方法について説明する。
図6および図7は、第2実施形態に係る電子基板の製造方法の工程図であり、図5のF−F線に相当する部分における断面図である。なお電子基板の製造には、W−CSP技術を利用する。すなわち、ウエハに対し一括して以下の各工程を行い、最後に個々の電子基板に分離する。
まず図6(a)に示すように、ウエハ10aのパッシベーション膜8の表面に連結配線12aを形成する。その前提として、パッシベーション膜8の表面全体に下地膜(不図示)を形成する。この下地膜は、下層のバリア層と上層のシード層とで構成される。バリア層は、連結配線12aを構成するCuの拡散を防止するものであり、TiWやTiN等により厚さ100nm程度に形成する。シード層は、連結配線12aを電解メッキ法で形成する際の電極として機能するものであり、Cu等により厚さ数100nm程度に続けて形成する。それらはスパッタ法、CVD法、無電解メッキ法などで形成されることが多い。次に、連結配線12aの形成領域に開口部を有するマスクを形成する。次に、下地膜のシード層を電極として電解Cuメッキを行い、マスクの開口部にCuを埋め込んで連結配線12aを形成する。これは、無電解メッキ法などで形成しても良い。マスクを除去した後に、連結配線12aをマスクとして下地膜をエッチングする。
次に図6(b)に示すように、ウエハ10aの表面に応力緩和層30を形成する。また連結配線12aの一方端部が露出するように、応力緩和層30の貫通孔31aを形成する。この応力緩和層30の形成は、印刷法やフォトリソグラフィ等を用いて行うことが可能である。特に、応力緩和層30の構成材料として感光性を有する樹脂材料を採用すれば、フォトリソグラフィを用いて簡単かつ正確に応力緩和層30をパターニングすることができる。
次に図6(c)に示すように、応力緩和層30の表面に、再配置配線および接続端子63(以下「接続端子63等」という。)を形成する。この接続端子63等の形成工程において、接続端子63等と同時に、応力緩和層30の表面に巻き線41を形成する。その具体的な方法は、上述した連結配線12aの形成方法と同様である。このように、接続端子63等と同時に巻き線41を形成することにより、製造工程を簡略化して製造コストを低減することができる。また、メッキやフォトリソグラフィ等を利用して正確に巻き線41を形成することが可能になり、所望の特性を備えたインダクタ素子を形成することができる。なお応力緩和層30の表面に形成された巻き線41をレーザ等でトリミングすることにより、インダクタ素子の特性のチューニングを行うことも可能である。
次に図7(a)に示すように、ウエハ10aの表面全体にソルダーレジスト66を形成する。また接続端子63の上方に、ソルダーレジスト66の開口部67を形成する。
次に図7(b)に示すように、その開口部の内側における接続端子63の表面に、バンプ78を形成する。
その後、ウエハから個々の基体10を分離する。基体10の分離は、ダイシング等によって行うことができる。以上により、本実施形態に係る電子基板1が完成する。
(半導体装置)
図8は、第2実施形態に係る半導体装置の説明図であり、図5のF−F線に相当する部分における断面図である。図8に示すように、第2実施形態に係る半導体装置5は、母基板(マザーボード)100の表面に、第1電子基板200が実装されたものである。
母基板(マザーボード)100の表面には、第1電子基板200との接続端子163が形成されている。また母基板100の表面には、第1インダクタ素子(不図示)および第2インダクタ素子190が形成されている。各インダクタ素子は通信に使用されるものであり、適用可能周波数が2〜5GHzに設定されている。
この母基板100の表面に、第1電子基板200が実装されている。具体的には、第1電子基板200に形成された接続端子163が、母基板100の接続端子263と対向するように配置されている。そして、第1電子基板200の接続端子163の表面に形成されたハンダバンプ278が、リフロー等により母基板100の接続端子263に連結されている。
また、第1電子基板200の第1インダクタ素子および母基板100の第1インダクタ素子が、同等の適用可能周波数に形成されて、相互に対向配置されている。さらに、第1電子基板200の第2インダクタ素子290および母基板100の第2インダクタ素子190も、同等の適用可能周波数に形成されて、相互に対向配置されている。
上記のように構成された半導体装置5では、接続端子163,263を介して母基板100から第1電子基板200への電力伝送を行う。このように、接続端子を介して電力伝送を行うことにより、電力伝送を確実かつ安定的に行うことが可能になる。これにより、半導体装置5の動作信頼性を向上させることができる。
また半導体装置5では、母基板100の第1インダクタ素子および第1電子基板200の第1インダクタ素子をアンテナとして電磁波を送受信し、また母基板100の第2インダクタ素子190および第1電子基板200の第2インダクタ素子290をアンテナとして電磁波を送受信することにより、母基板100と第1電子基板200との間で通信を行う。
その際、一対の第1インダクタ素子と一対の第2インダクタ素子との適用可能周波数が異なっているので、混信を防止することができる。例えば、母基板100の第1インダクタ素子から送信された電磁波は、第1電子基板200において適用可能周波数が同じ能動面第1素子のみによって受信され、適用可能周波数が異なる能動面第2素子290には受信されない。このように混信を防止しうる結果、多ビットシリアル通信を実現することが可能になり、通信速度を向上させることができる。また、母基板100と第1電子基板200との位置合わせを厳密に行う必要がなくなり、製造コストを低減することができる。
(電子機器)
次に、上述した電子基板を備えた電子機器の例について説明する。
図9は、携帯電話の斜視図である。上述した電子基板は、携帯電話1300の筐体内部に配置されている。この構成によれば、構造が簡単で実装作業性に優れた電子基板を備えているので、低コストの携帯電話を提供することができる。
なお、上述した電子基板は、携帯電話以外にも種々の電子機器に適用することができる。例えば、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)およびエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型またはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置などの電子機器に適用することが可能である。いずれの場合でも、低コストの電子機器を提供することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では基体の能動面側に複数のインダクタ素子を形成したが、基体の裏面側に複数のインダクタ素子を形成してもよい。この場合には、基体に貫通電極を形成して、裏面側に形成されたインダクタ素子を能動面側に電気的接続する。また、上記実施形態では基体の能動面側に2個のインダクタ素子を形成したが、3個以上のインダクタ素子を形成してもよい。また、上記実施形態ではすべてのインダクタ素子をアンテナとして機能させたが、一部のインダクタ素子を受動素子として機能させ発信回路等を形成してもよい。また、上記実施形態では電子回路が形成された基体にインダクタ素子を形成したが、電気絶縁性材料からなる基体にインダクタ素子を形成してもよい。また、上記実施形態では電解メッキ法により巻き線等を形成したが、スパッタ法や蒸着法等の他の成膜方法を採用してもよい。また、成膜工程を経ずにインクジェト法等を採用して、インダクタやアンテナのパターンを直接形成するようにしても良い。
以上に述べたすべての実施形態中で、電子基板上にはインダクタもしくはアンテナのみを形成する例について述べてきたが、これに限ることはなく、薄膜や厚膜のプロセスによりインダクタ以外の部品、例えばキャパシタやレジスタを電子基板上に形成した複合電子部品としても良い。また、それらの部品を別の手段、例えば表面実装技術によって電子基板上に形成した複合電子部品としても良い。
1…電子基板 5…半導体装置 10…基体 40…第2インダクタ素子 80…第1インダクタ素子 90…第2インダクタ素子 31…誘電体層(材料層) 1300…携帯電話(電子機器)。

Claims (7)

  1. 基体と、
    前記基体の所定面の周縁部における第1領域に配列された第1及び第2の電極と、
    前記周縁部における前記第1領域とは異なる第2領域に配列された第3及び第4の電極と、
    前記所定面上に設けられたパッシベーション膜と、
    前記パッシベーション膜上に設けられており、前記第1の電極に電気的接続された第1の連結配線と、
    前記パッシベーション膜上に設けられており、前記第3の電極に電気的接続された第2の連結配線と、
    少なくとも一部が前記第1の連結配線及び前記第2の連結配線上に設けられた誘電体層と、
    少なくとも一部が前記誘電体層上に設けられており、前記第2の電極に接続された一方の端部及び前記誘電体層を貫通して前記第1の連結配線に接続された他方の端部を有する第1のインダクタ素子と、
    少なくとも一部が前記誘電体層上に設けられており、前記第4の電極に接続された一方の端部及び前記誘電体層を貫通して前記第2の連結配線に接続された他方の端部を有する第2のインダクタ素子と、を備えることを特徴とする電子基板。
  2. 前記周縁部における前記第1領域及び前記第2の周縁部とで、前記第1のインダクタ素子及び前記第2のインダクタ素子を挟む状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の電子基板。
  3. 前記第1のインダクタ素子を構成する巻き線の巻き数と前記第2のインダクタ素子を構成する巻き線の巻き数とが異なっていることを特徴とする請求項2に記載の電子基板。
  4. 前記誘電体層は、前記基体より誘電正接が小さい材料であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電子基板。
  5. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電子基板が積層配置され、前記電子基板に形成された前記第1のインダクタ素子及び前記第2のインダクタ素子のうち少なくとも一方をアンテナとして電磁波を送受信することにより、前記電子基板間における信号授受を可能としたことを特徴とする半導体装置。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載の電子基板を備えたことを特徴とする電子機器。
  7. 請求項5に記載の半導体装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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