JP5083241B2 - 鋼の連続鋳造方法およびこの方法で製造された鋳片 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法およびこの方法で製造された鋳片 Download PDF

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本発明は、鋳片の未凝固部を電磁攪拌することにより、中心偏析が低減され、安定した内部品質を有する鋳片を製造することのできる鋼の連続鋳造方法およびこの方法により得られた鋳片に関する。
従来、連続鋳造鋳片の内部品質の改善を目的として、湾曲型または垂直曲げ型の連続鋳造機内に配置された圧下ロールを用いて、未凝固部を含む鋳片を圧下する技術(以下、「未凝固圧下技術」ともいう)が多数提案されてきた。本発明者らも、特許文献1において、未凝固部を含む鋳片をバルジングさせた後に、連続鋳造機内において、圧下ロール対の下部ロールを鋳片の下側パスラインよりも突出させて鋳片を圧下する鋼の連続鋳造方法を提案した。
鋳片の未凝固圧下においては、C、Mn、P、Sなどの偏析しやすい成分の濃化した溶鋼(以下、「偏析成分濃化溶鋼」ともいう)が圧下により液相側に排出され、鋳片の厚さ方向中心部の成分偏析が改善される。
こうした鋳片の未凝固圧下技術では、凝固シェルが鋳片幅方向に不均一に形成された状態で圧下すると、鋳片幅方向に均一に圧下することはできない。このため、凝固シェルの均一化のため、すなわちクレータエンドの鋳片幅方向の形状制御のため、凝固シェルの形成が開始される鋳型内において、電磁力による溶鋼の流動制御を行う方法が特許文献2および3において提案されている。
特許文献2に記載の方法は、連続鋳造鋳型の内部に静磁場を設定することにより、圧下位置における連続鋳造鋳片の未凝固部の厚さ分布を、鋳片幅方向に均一とするか、または鋳片幅方向端部側を鋳片幅方向中央部よりも小さくする連続鋳造方法である。
特許文献3に記載の方法は、鋳型内に連続的に供給される溶融金属の流動を電磁力により制御することにより、鋳片内の凝固ラインの形状を、スラブ中央部のシェルの厚さを薄くするようにコントロールしつつ、未凝固鋳片を連続的に圧下して中心偏析を防止する連続鋳造方法である。
溶鋼の鋳型に接する部分は凝固シェルを形成し、これらの凝固シェル間に存在する溶鋼は、冷却により溶鋼過熱度(溶鋼温度から液相線温度を減じた温度差)が低下するので、その溶鋼内では、等軸晶の核または初晶が形成され浮遊している。この等軸晶の核または初晶は、溶鋼よりもわずかに密度が大きいため、時間の経過とともに溶鋼内を沈降していく。このときに、電磁攪拌を行わなければ、等軸晶は鋳片の下面側に沈降し、鋳片の上面側では等軸晶の充填密度は低下する。また、電磁攪拌のタイミングが遅い場合には、鋳片の下面側に沈降した等軸晶が下面側の凝固シェルに固着するので、等軸晶を残溶鋼内に分散させることはできなくなる。
これに対して、本発明者らは、特許文献4、5および6において、等軸晶の制御を目的として、圧下位置よりも鋳造方向上流側の未凝固溶鋼を電磁攪拌する鋳造方法を提案した。
特許文献4に記載の方法は、鋳型内において電磁攪拌を施し、さらに鋳片の中心固相率が0〜0.1となる未凝固域で未凝固溶鋼の電磁攪拌を施し、次いで鋳片の中心固相率が0.1〜0.4となる未凝固域で、少なくとも一対のロールにより未凝固部厚さの50〜90%の圧下量を与える鋳片の未凝固圧下方法である。
特許文献5に記載の技術は、連続鋳造機の湾曲部または曲げ部を形成する円弧の接線と水平面のなす角度が30度以上となる湾曲部または曲げ部の位置において、未凝固溶鋼を電磁攪拌するとともに、電磁攪拌を行う位置よりも下流側で前記連続鋳造機の水平部に圧下ロールを配置し、鋳片の中心部固相率が所定の領域において、圧下量と圧下時の未凝固分厚さとの比を0.2〜0.6の範囲に調整して未凝固部を含む鋳片を圧下する連続鋳造方法、およびこの方法により鋳造された鋳片である。
特許文献6に記載の技術は、未凝固溶鋼を電磁攪拌するとともに、その電磁攪拌位置の下流側の未凝固部を含む鋳片を圧下する連続鋳造方法であって、最上流側の圧下ロール対の3〜7m上流に電磁攪拌装置を配置し、等軸晶率が6%以下となるように未凝固溶鋼に電磁力を印加するとともに、未凝固部を含む鋳片の未凝固厚さの40%以上を圧下する低炭素鋼の連続鋳造方法、およびこの方法により鋳造された鋳片である。
特開2004−1079号公報(特許請求の範囲および段落[0015]〜[0023]) 特許第3275835号公報(特許請求の範囲および段落[0031]〜[0035]) 特許第3237177号公報(特許請求の範囲、段落[0006]および[0007]) 特許第3119203号公報(特許請求の範囲および段落[0014]) 特開2005−103604号公報(特許請求の範囲、段落[0011]および[0012]) 特開2005−305517号公報(特許請求の範囲、段落[0020]および[0021])
上記の従来から行われている電磁攪拌を適用した鋳造方法は、優れた効果を奏する技術である。しかし、その主な目的は、鋳片を幅方向に均等に圧下し、偏析成分濃化溶鋼を分散させるために、未凝固部に存在する等軸晶の量を制御することである。そのため、従来の鋳造方法では、長時間の鋳造にわたって、中心偏析が抑制された鋳片、すなわち安定した内部品質を有する鋳片をできない場合がある。
そこで、本発明者らは、さらに、未凝固圧下および電磁攪拌を適用した連続鋳造方法による鋳片の内部品質の安定化技術について研究を重ねた結果、下記の知見を得た。すなわち、圧下位置よりも上流側の未凝固部へ排出される偏析成分濃化溶鋼が凝固シェルに捕捉され、特に鋳片の幅方向端部に散発的に高濃度の正偏析が残存し、時間の経過とともに濃化するという事実である。したがって、長時間の鋳造にわたって安定した鋳片品質を維持するには、偏析成分濃化溶鋼をさらに均一に分散させる必要がある。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、未凝固部を含む鋳片の圧下により未凝固部へ排出される偏析成分濃化溶鋼の攪拌による希釈を改善し、長時間の鋳造操業にわたって安定した内部品質を有する鋳片を製造できる連続鋳造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋳片の圧下により未凝固部へ排出される偏析成分濃化溶鋼の攪拌による希釈をさらに改善し、長時間の鋳造操業にわたって安定した内部品質を有する鋳片を製造できる連続鋳造方法について研究開発を重ねた。
その結果、鋳片の未凝固部の溶鋼について、流動方向が鋳片幅方向の一方向とその反対方向に周期的に切り替わる交番電磁攪拌を行う際に、溶鋼の流動方向変化の一周期におけるそれぞれの方向への流動距離を、未凝固部の幅よりも長くすることにより、鋳片中心部における正偏析を抑制することができるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)および(2)の鋼の連続鋳造方法ならびに下記(3)の鋳片を要旨としている。
(1)未凝固部を含む鋳片を、連続鋳造機内または機端に配置した圧下ロール対を用いて圧下する鋼の連続鋳造方法であって、前記鋳片の未凝固部の溶鋼を攪拌するための電磁攪拌装置を、前記圧下ロール対よりも鋳造方向上流側の少なくとも一箇所に配置し、前記電磁攪拌装置の少なくとも一方を用いて、前記未凝固部溶鋼への攪拌力付加方向が、前記鋳片の幅方向の一方向である正方向および前記正方向と反対の方向である逆方向に、交互に周期的に切り替わる交番電磁攪拌を行うことにより、前記未凝固部溶鋼の前記鋳片の幅方向における流動方向を、前記正方向および前記逆方向に周期的に変化させ、前記未凝固部溶鋼の流動方向変化の1周期において、前記未凝固部溶鋼の前記正方向への流動期間における延べ流動距離Da、および前記逆方向への流動期間における延べ流動距離Dbが、いずれも前記電磁攪拌装置により攪拌される位置における前記鋳片未凝固部の幅Wo以上となるように、前記電磁攪拌装置への電流印加時間を設定することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
(2)前記鋳片の中心部から厚さ方向に±25mmの範囲における成分偏析比が0.80以上1.20以下となるように、前記未凝固部を含む鋳片を圧下することを特徴とする上記(1)に記載の連続鋳造方法。
(3)上記(1)に記載の鋼の連続鋳造方法で製造され、中心部から厚さ方向に±25mmの範囲における成分偏析比が0.80以上1.20以下であることを特徴とする鋳片。
本発明において、「成分偏析比」とは、鋳片の任意位置におけるC、Mn、P、Sなどの成分濃度C(質量%)を平均成分濃度Co(質量%)により除した値(C/Co)を意味する。成分偏析比C/Coが1より大きい場合を「正偏析」と称し、母材平均濃度よりもその位置における成分濃度Cが高いことを意味する。また、成分偏析比C/Coが1より小さい場合を「負偏析」と称し、母材平均濃度よりもその位置における成分濃度Cが低いことを意味する。
本明細書の記載において、「溶鋼の過熱度」とは、実際に測定される溶鋼温度から平衡状態図等により求められる液相線温度を減じた温度差を意味する。
「中心固相率」とは、鋳片の中心部における固相と液相の全体量に対する固相の割合を意味する。
また、以下の記述において、鋼の成分組成を表す「質量%」を、単に「%」とも表記する。
本発明の鋼の連続鋳造方法によれば、未凝固部の溶鋼が、周期的に、少なくとも幅方向の一端から他端まで移動する。そのため、偏析成分濃化溶鋼が、未凝固部の鋳片幅方向の端部で滞留することがなくなるとともに希釈される。そして、未凝固圧下により中心偏析が鋳片幅方向に均一に抑制され、長期間にわたって安定した内部品質を有する鋳片を製造することができる。したがって、本発明の方法は、とりわけ、割れ感受性の高い高強度鋼や、板厚が100mm以上の極厚製品用の鋼種を対象とした鋳片の製造に対して優れた効果を発揮できる。
また、本発明の鋳片は、中心偏析が抑制され、安定した内部品質を有し、割れ感受性の高い高強度鋼や、板厚が100mm以上の極厚製品に適用できる。
鋳片をバルジングさせながら本発明を実施するための垂直曲げ型連続鋳造機の縦断面の概略を示す図である。 鋳片をバルジングさせながら、かつ下部圧下ロールを鋳片の下側パスラインよりも上方に突出させて本発明を実施するための垂直曲げ型連続鋳造機の縦断面の概略を示す図である。 鋳片をバルジングさせずに、下部圧下ロールを鋳片の下側パスラインよりも上方に突出させて本発明を実施するための垂直曲げ型連続鋳造機の縦断面の概略を示す図である。 第二の電磁攪拌装置近傍における、鋳片の平面図である。 マッピング分析用試料の切り出し位置を示す鋳片の横断面図である。 図1〜3の連続鋳造機の希釈攪拌位置における溶鋼の速度変化パターンの模式図である。 20秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌のタイミングチャートであり、同図(a)は溶鋼の流速の変化を示し、同図(b)は電流方向の切り替えタイミングを示す。 30秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌のタイミングチャートであり、同図(a)は溶鋼の流速の変化を示し、同図(b)は電流方向の切り替えタイミングを示す。 正逆交番攪拌の半周期電流印加時間tと片周期流動距離Dとの関係を示すグラフである。 鋳片幅Wと希釈攪拌位置における鋳片の未凝固幅Woとの関係を示すグラフである。 鋳片幅Wと正逆交番攪拌の半周期電流印加時間tとの関係を示すグラフである。
本発明の鋼の連続鋳造方法は、未凝固部を含む鋳片を、連続鋳造機内または機端に配置した圧下ロール対を用いて圧下する鋼の連続鋳造方法であって、前記鋳片の未凝固部の溶鋼を攪拌するための電磁攪拌装置を、前記圧下ロール対よりも鋳造方向上流側の少なくとも一箇所に配置し、前記電磁攪拌装置の少なくとも一方を用いて、前記未凝固部溶鋼への攪拌力付加方向が、前記鋳片の幅方向の一方向である正方向および前記正方向と反対の方向である逆方向に、交互に周期的に切り替わる交番電磁攪拌を行うことにより、前記未凝固部溶鋼の前記鋳片の幅方向における流動方向を、前記正方向および前記逆方向に周期的に変化させ、前記未凝固部溶鋼の流動方向変化の1周期において、前記未凝固部溶鋼の前記正方向への流動期間における延べ流動距離Da、および前記逆方向への流動期間における延べ流動距離Dbが、いずれも前記電磁攪拌装置により攪拌される位置における前記鋳片未凝固部の幅Wo以上となるように、前記電磁攪拌装置への電流印加時間を設定することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法である。
1.鋼の連続鋳造方法の基本構成
図1〜3は、いずれも本発明を実施するための垂直曲げ型連続鋳造機の縦断面の概略を示す図であり、図1は鋳片をバルジングさせるもの、図2は鋳片をバルジングさせながら、かつ下部圧下ロールを鋳片の下側パスラインよりも上方に突出させるもの、図3は鋳片をバルジングさせずに、下部圧下ロールを鋳片の下側パスラインよりも上方に突出させるものである。
浸漬ノズル1を経て、鋳型3内に溶鋼湯面(メニスカス)2を形成するように注入された溶鋼4は、鋳型3およびその下方の図示しない二次冷却スプレーノズル群から噴射されるスプレー水により冷却され、凝固シェル5を形成して鋳片8となる。鋳片8は、その内部に未凝固部10を保持したまま、従動ロール6aおよび駆動ロール6bからなるガイドロール群6によって支持されながら引き抜かれ、圧下ロール対7により圧下される。圧下ロール対7を設置する位置は、連続鋳造機の内部または鋳造方向下流側の端部のいずれであってもよい。
連続鋳造の開始時には、無底の鋳型3の下部にダミーバー(図示せず)のヘッドを挿入して仮の底部とした後、鋳型3内に浸漬ノズル1から溶鋼4を注入する。そして、鋳型3内の溶鋼湯面2があらかじめ設定された位置に達し、かつ所定厚さの凝固シェル5が形成されると、ダミーバーの引き抜きを開始し、引き抜き速度を高めて、所定の鋳造速度(定常状態)に移行させる。
ダミーバーは、単位ブロックをピン結合により連結した治具である。ダミーバーの鋳型3への挿入方法には、上部から挿入する方法(トップ挿入方式)と、圧下ロール対7よりも鋳造方向下流側に配置されたピンチロール(図示せず)の後段側から挿入する方法(ボトム挿入方式)があり、ダミーバーの上端に位置するダミーバーヘッドが鋳型3内に配置される。そして、鋳造を開始し、定常状態に移行したのち、ピンチロールの後段側で斜め上方に取り出される。
図1〜3の連続鋳造機は、未凝固部10の溶鋼4を攪拌するための電磁力を付与する移動磁界を発生する電磁攪拌装置として、通常の攪拌を行う第一の電磁攪拌装置91、および偏析成分濃化溶鋼を鋳片幅方向に攪拌し希釈する第二の電磁攪拌装置92を備える。そのため、未凝固部10の溶鋼4に電磁力によって流動の駆動力を付与し、未凝固部10の溶鋼4を鋳片8の幅方向に流動させ、攪拌することにより、偏析成分濃化溶鋼を良好に鋳片8中に分散させることができる。第一の電磁攪拌装置91は鋳型3の下方に配置され、第二の電磁攪拌装置92は第一の電磁攪拌装置91よりも鋳造方向下流側かつ圧下ロール対7よりも鋳造方向上流側に配置される。
前記図2および図3に示すように、圧下ロール対7の下側ロールを鋳片の下側パスライン11よりも上方に突出させると、圧下ロール対7の圧下力が鋳片8の曲げに消費されず、鋳片8の圧下のみに効果的に作用するので好ましい。
また、前記図1および図2の連続鋳造機では、ガイドロール群6は、鋳片8の厚さ方向の間隔を所定値に制御できるように配置されている。前記図1および図2に示すように、B1−B2の区間において、ガイドロール群6の鋳片厚さ方向の間隔を拡大させて、内部に未凝固部10が存在する鋳片8をバルジングさせた後に、圧下ロール対7により圧下すると、偏析成分濃化溶鋼を、鋳造方向上流側の未凝固部10中に十分に排出させることができるので、鋳片の中心偏析を抑制し、内部品質を向上させる上で好ましい。
2.偏析成分濃化溶鋼の希釈のための電磁攪拌
第二の電磁攪拌装置92を用いた、偏析成分濃化溶鋼を攪拌し希釈するための電磁攪拌について説明する。第二の電磁攪拌装置92を用いた電磁攪拌は移動磁場方式であり、第二の電磁攪拌装置92の備える電磁コイルの電流値を調整することにより最大磁束密度および溶鋼に付与する流動駆動力を調整し、溶鋼の攪拌強度を調整できる。
図4は、第二の電磁攪拌装置近傍における、鋳片の平面図である。本発明の鋼の連続鋳造方法では、第二の電磁攪拌装置92を用いて発生させる鋳片幅方向の移動磁界の移動方向を、図4に矢印Aで示す鋳片幅方向(鋳片の一方の短辺から他方の短辺に向かう方向)の一方向(以下、この方向を「正方向」ともいう)と、矢印Bで示す、正方向と反対の方向(以下、この方向を「逆方向」ともいう)に交互に切り替える。これにより、溶鋼を正方向および逆方向に流動させる駆動力を、溶鋼に交互に付与できる。
移動磁界の鋳片幅方向での移動方向を一定時間間隔で切り替え、溶鋼に付与する流動の駆動力の方向を、正方向と逆方向に周期的に変化させる攪拌方法を、以下、「正逆交番攪拌」ともいう。
そして、本発明では、溶鋼の流動方向が、正方向と逆方向に周期的に変化し、かつ溶鋼の流動方向変化の1周期において、正方向への流動期間(以下、「正方向片周期」ともいう)における流動距離Daと逆方向への流動期間(以下、「逆方向片周期」ともいう)における流動距離Dbが、いずれも第二の電磁攪拌装置92で攪拌される位置(以下、「希釈攪拌位置」ともいう)における鋳片8の未凝固部10の幅(以下、「未凝固幅」ともいう)Wo以上となるように、第二の電磁攪拌装置92への電流印加時間を設定する。後述する図7および8は、周期的に変化する鋼の流動方向のグラフの一例である。
以下、正方向片周期および逆方向片周期を総称して「片周期」、片周期における流動距離を「片周期流動距離」ともいう。溶鋼の流動方向が周期的に変化する限り、片周期流動距離DaおよびDbは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。ただし、片周期流動距離DaとDbとの差が大きいと、電磁力により流動する等軸晶が鋳片のいずれかの短辺に偏り、等軸晶の間に閉じ込められた成分濃化溶鋼よる粒状偏析の形成が懸念される。そのため、粒状偏析が生じない差とすることが望ましい。以下、片周期流動距離DaおよびDbを総称して「片周期流動距離D」ともいう。
D<Woの場合、未凝固部10の最左端に位置する溶鋼は、正方向片周期における正方向への流動距離が図4の矢印D1で示す距離しかないため、正方向の流動が開始してから流動方向が正方向から逆方向に変化するまでに未凝固部10の最右端に到達しない。この場合、未凝固部10の最右端における偏析成分濃化溶鋼には、大きな希釈効果が得られない。
一方、D≧Woの場合、正方向片周期における正方向への流動距離は、溶鋼が直進したとすると図4の矢印D2で示す距離であり、未凝固部10の最右端に到達または最右端を超える。最右端を越えた場合には、最左端にある溶鋼は、実際には未凝固部10の最右端に到達すると、矢印D3のように鋳造方向上流側と下流側に分流し、分流した溶鋼のそれぞれの延べ流動距離は矢印D2で示す距離である。
D≧Woの場合、最左端の溶鋼が最右端に到達するため、未凝固部10最右端における偏析成分濃化溶鋼には、大きな希釈効果が発生する。したがって、本発明では、正方向片周期における流動距離Daおよび逆方向片周期における流動距離Dbがいずれも希釈攪拌位置における未凝固幅Wo以上となるように溶鋼を攪拌する。
3.成分の偏析比について
本発明の鋼の連続鋳造方法では、第二の電磁攪拌装置92による上述の攪拌方法により、鋳片の成分偏析が低減される。成分偏析比(C/Co)については、鋳片の中心部から厚さ方向に±25mmの範囲において、0.80以上1.20以下とすることが望ましく、0.80以上1.00以下の負偏析とすることがより望ましい。
以下に、本発明を完成させるために行った試験および本発明の効果を確認するために行った試験について説明する。
1.試験方法
1−1.鋳造試験方法
前記図1〜3に示した垂直曲げ型の連続鋳造機を用いて鋳造試験を行った。図1および図2に示した連続鋳造機を用いた試験は、未凝固部を含む鋳片を、ロール圧下を行う前にバルジングさせる操作以外は、図3に示す連続鋳造機を用いた試験と同様の方法により実施した。そのため、以下では図3に示す連続鋳造機を用いた鋳造試験について説明する。
連続鋳造機の圧下ロール対7は、鋳型3内の溶鋼湯面2から鋳造方向に21.5m下流側の位置に一対設置した。各圧下ロールの直径は470mmとし、最大圧下力は5.88×106N(600tf)とした。第二の電磁攪拌装置92は、最大電流が900Aとし、鋳型3内の溶鋼湯面2から鋳造方向に14.6m下流側の位置に設置した。
鋳造試験には、鋼成分組成が、C:0.10〜0.20%、Si:0.10〜0.30%、Mn:1.00〜1.30%、P:0.020%以下、S:0.006%以下、Ni:1.50〜2.50%、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.30〜0.50%の溶鋼を用い、厚さが300mm、幅が1700mmおよび2250mmの鋳片を製造した。鋳造速度は0.70m/minとし、二次冷却比水量は0.38〜0.60L/kg−steelとした。
ここで、図1および図2に示すように、鋳片8をバルジングさせることにより鋳片厚さが変化する場合であっても、鋳片8の幅方向中央部の厚さに合わせて、鋳造速度を種々変化させた条件で伝熱および凝固計算を行うことにより、圧下ロール対7の位置において中心固相率が0.05〜0.2となる鋳造速度条件を算出し、この鋳造速度条件で鋳造試験を行えばよい。
鋳造試験では、圧下ロール対7の位置に、未凝固部10を含み、0.05〜0.2となる中心固相率を有する鋳片8の定常凝固部分が到達した時点で圧下ロール対7による未凝固圧下を開始した。圧下開始後は、鋳片8の下側パスライン11から上方への下側圧下ロールの突出量が、下側圧下ロールによる鋳片の圧下量となる。
1−2.鋳片成分偏析の評価方法
図5は、マッピング分析用試料の切り出し位置を示す鋳片の横断面図である。各鋳造試験により得られた鋳片から、鋳造方向に長さ150mmの鋳片サンプルを切り出した。その鋳片サンプルから切り出した複数の板サンプルについて、マクロ組織を観察した後、図5に示す位置から、EPMAによるマッピング分析(以下、「MA分析」ともいう)用のMAサンプルを切り出した。
MAサンプルは、鋳片厚さ方向の長さ100mm、鋳造方向の長さ40mm、厚さ(鋳片幅方向の長さ)9mmの直方体とし、鋳片の一方の短辺から鋳片幅方向に鋳片幅Wの1/4、1/2、および3/4の位置(図5において、それぞれ「1/4W」、「1/2W」および「3/4W」と記す)、ならびに両短辺側から160〜180mmの位置の鋳片厚さ方向の中心において偏析成分が濃化しやすい部分(図5において、いずれも「端部」と記す)の合計5箇所から切り出した。
MA分析は、MAサンプルの鋳片厚さ方向中心部を含む鋳片厚さ方向に50mm、鋳片幅方向に20mmの長方形の範囲について行った。ビーム径を50μmとしてMnの成分分布を求めた後、鋳片厚さ方向に2mm幅で線分析を行い、鋳片厚さ方向中心部におけるMn濃度Cを求め、このCの値を鋳込時のMnの平均濃度Coにより除して成分偏析比(C/Co)を算出した。
2.電磁攪拌
2−1.電磁攪拌による溶鋼の流速変化
本発明者らは、上記鋼成分組成の鋼種の厚さ300mm、幅2250mmの鋳片の鋳造について、鋳造速度を0.70m/min、二次冷却水量を1.30〜1.60L/kg−steelとして、メニスカスから14.6mの位置(希釈攪拌位置)において、900Aの交番電流で電磁力を停止状態の未凝固部に印加した条件での、電磁攪拌による溶鋼の流速変化の計算を行った。
その結果、溶鋼は停止状態(初期速度0)から約10秒で流速10cm/sに到達し、その後は流動抵抗で流速は10cm/sでほぼ一定となることを知見した。900Aの交番電流は、前記図1〜3に示す連続鋳造機に用いられる電磁攪拌装置に印加可能な交番電流の最大値である。最大電流値が900Aと異なる電磁攪拌装置を用いた場合については、設定した電流値について同様の検討を行うことにより、溶鋼の加速度および最大流速を決定することができる。
図6は、前記図1〜3の連続鋳造機の希釈攪拌位置における溶鋼の速度変化パターンの模式図である。上記知見から、前記図1〜3に示す連続鋳造機での溶鋼の流速変化パターンを図6に示すように、電磁攪拌装置への電流印加開始から10秒間は溶鋼の流速が停止状態から1cm/s2の加速度で加速し、電流印加開始から10秒経過後は10cm/sで一定となるものと仮定した。
2−2.正逆交番攪拌
第二の電磁攪拌装置92において、移動磁界が前記図4において正方向(矢印A方向)に移動するようにt秒間電流を印加し、s秒間電流を停止し、逆方向(矢印B方向)に移動するようにt秒間電流を印加し、s秒間電流を停止する操作を1周期とする正逆交番攪拌を、「t秒印加−s秒停止の場合の正逆交番攪拌」といい、tを「正逆交番攪拌の半周期電流印加時間」または単に「半周期電流印加時間」という。
図7は、20秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌のタイミングチャートであり、同図(a)は溶鋼の流速の変化を示し、同図(b)は電流方向の切り替えタイミングを示す。同図(a)および(b)の横軸は、いずれも正逆交番攪拌を開始した時点を基準とした時刻である。印加する電流の大きさは、正方向および逆方向ともに900Aで一定である。また、同図(a)および(b)の縦軸は、それぞれ流速および電流であり、いずれも正方向を正とし、逆方向を負とする。以下の説明においても、流速および電流の値は正方向を正とし、逆方向を負として表す。
図7(b)に示すように電流方向を切り替えることにより、溶鋼の流速が同図(a)に示すように変化することを説明する。電流の印加を停止している間の溶鋼の流速は、実際には減衰するが、簡単のため、この減衰はないとし、時刻0秒では溶鋼は流動していないとする。また、溶鋼の流速変化は、前記図6に示すパターンに従うとする。
+900Aの電流の印加を開始した時点(時刻0秒)で0であった流速は、10秒後に+10cm/sに到達する。時刻10秒から20秒までの10秒間は+900Aの電流が印加されているものの、溶鋼に加わる摩擦力により流速は+10cm/sで一定となる。時刻20秒から25秒までの5秒間は電流の印加が停止され、流速は+10cm/sで維持される。
時刻25秒から45秒までの20秒間は−900Aの電流が印加され、溶鋼に逆方向の駆動力が付与されるため、正方向の流速は減少する。時刻25秒から10秒後の時刻35秒を超えると溶鋼の流動方向は逆方向となり、その10秒後の時刻45秒に−10cm/sに到達する。時刻45秒から5秒間は電流の印加が停止され、流速は−10cm/sで維持される。
時刻50秒から20秒間は+900Aの電流が印加され、溶鋼に正方向の駆動力が付与されるため、逆方向の流速は減少する。時刻50秒から10秒後の時刻60秒を超えると溶鋼の流動方向は正方向となり、その10秒後の時刻70秒に+10cm/sに到達する。時刻70秒から5秒間は電流の印加が停止され、流速は+10cm/sで維持される。
図7からわかるように、時刻20秒以降は、定常状態となり、時刻20秒から時刻70秒までの50秒間の波形を1周期とする速度変化の繰り返しとなる。定常状態において、1周期分の溶鋼速度変化波形のうち、正方向への流動期間が上述の正方向片周期であり、逆方向への流動期間が逆方向片周期である。図7(a)では、時刻35秒から60秒までが逆方向片周期、時刻60秒から85秒までが正方向片周期である。
図7に示す20秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌では、流速が±10cm/sに到達し、一定となった後も電流の印加が継続されるのは、定常状態となる前の時刻10秒から10秒間だけである。また、定常状態では流速が±10cm/sに到達すると電流の印加が停止される(例えば、時刻45秒および70秒)。そのため、定常状態において各片周期で確保できる、流速が±10cm/sで一定である時間(以下、「攪拌定常時間」ともいう。)は電流停止時間に相当する5秒間である。
図7(a)において、各片周期の形成する図形の面積がその片周期における流動距離Dである。図7(a)では、正方向片周期と逆方向片周期は合同な台形であるため、正方向片周期における流動距離Daと逆方向片周期における流動距離Dbは、方向は逆であるものの大きさは同一である。図7(a)にハッチングを施した台形で表される片周期流動距離Dは、その面積から1500mmである〔(25(s)+5(s))×100(mm/s)/2=1500(mm)〕。
図8は、30秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌のタイミングチャートであり、同図(a)は溶鋼の流速の変化を示し、同図(b)は電流方向の切り替えタイミングを示す。
半周期電流印加時間tを、前記図7の場合よりも10秒増加させた、30秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌について説明する。この場合、時刻20秒以降が定常状態となり、時刻45秒から時刻115秒までの70秒間の波形を1周期とする速度変化の繰り返しとなる。図8(a)では、時刻45秒から80秒までが逆方向片周期、時刻80秒から115秒までが正方向片周期である。
図8(a)では正方向片周期と逆方向片周期の形成する図形は合同な台形であるため、正方向片周期における流動距離Daと逆方向片周期における流動距離Dbは、方向は逆であるものの大きさは同一である。図8(a)にハッチングを施した台形で表される片周期流動距離Dは2500mmである。
30秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌では、流速が±10cm/sに到達し、一定となった後も電流の印加が継続されるのは、定常状態となる前では、時刻10秒から時刻30秒までの20秒間である。そして、定常状態では、流速が±10cm/sに到達してからの10秒間である(例えば、時刻55秒から65秒まで、および時刻90秒から100秒まで)。したがって、この場合の攪拌定常時間はこの10秒に電流停止時間の5秒を加算した15秒間であり、攪拌定常時間を、30秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌よりも長く確保することができる。
図9は、正逆交番攪拌の半周期電流印加時間tと、片周期流動距離Dとの関係を示すグラフである。20秒印加−5秒停止の場合および30秒印加−5秒停止の場合と同様に考えて、t秒印加−5秒停止の場合の半周期電流印加時間tが25、35、40および45秒の場合について、攪拌定常時間および片周期流動距離Dを算出すると、表1のようになる。図9は、表1の半周期電流印加時間tと片周期流動距離Dから得られたグラフである。
Figure 0005083241
3.正逆交番攪拌の半周期電流印加時間tと鋳片幅Wとの関係
図10は、鋳片幅Wと、希釈攪拌位置における鋳片の未凝固幅Woとの関係を示すグラフである。鋳造速度が0.7m/minで一定の場合には、希釈攪拌位置における凝固シェルの厚さは103mmである。そのため、鋳片幅Wが1700mmおよび2250mmのスラブでは、未凝固幅Woは、それぞれ1494mmおよび2044mmであり、未凝固幅Woは、鋳片幅Wにほぼ比例して増加する。図10は、この関係から得られたグラフである。
図11は、鋳片幅Wと、正逆交番攪拌の半周期電流印加時間tとの関係を示すグラフである。上述のように、本発明では、未凝固部の幅方向端部における偏析成分濃化溶鋼に対して大きな希釈効果を得るため、片周期流動距離Dは、希釈攪拌位置における未凝固幅Wo以上とする。図11のハッチングを施した領域が、この条件、すなわちD≧Woを満たす領域である。
図11は、前記図9に示す半周期電流印加時間tと片周期流動距離Dとの関係と、前記図10に示す鋳片幅Wと希釈攪拌位置における鋳片の未凝固幅Woとの関係において、D≧Woとすることにより得られたグラフである。
片周期流動距離Dが、未凝固幅Woよりも大き過ぎる場合には、希釈効果は余り増大せず、電磁攪拌用に電力が過度に消費されることとなる。そのため、図11に基づいて、片周期流動距離Dが未凝固幅Woに対して十分な希釈効果が得られる程度となるように、鋳片幅Wに応じて半周期電流印加時間tを適切な値に設定することにより、希釈効果を十分に得るとともに、過度の電磁攪拌用電力消費を抑制でき、省エネルギー化に寄与する。
4.正逆交番攪拌による鋳片偏析の偏析抑制効果
上記鋼種の厚さ300mm、幅1700mmおよび2250mmの鋳片(スラブ)の鋳造において、半周期電流印加時間tを変化させて、t秒印加−5秒停止の場合の正逆交番攪拌を行い、圧下ロール対によって30mmの圧下を行った。そして、得られた鋳片のMn濃度について、上述のMA分析を行って鋳片の厚さ中心から±25mmの範囲の成分偏析比(C/Co)を求めた。その結果を表2に示す。
Figure 0005083241
表2において、希釈攪拌位置における鋳片の未凝固幅Woは、凝固シェル厚さが103mmであるとして計算した値である。片周期流動距離Dおよび攪拌定常時間は、電磁攪拌装置への電流の印加を停止している間の溶鋼の流速の減衰はないとし、かつ溶鋼の流速変化が前記図6に示すパターンに従うとして、半周期電流印加時間tから算出した値である。半周期電流印加時間tが0の比較例1−1および2−1は、第二の電磁攪拌装置を用いた攪拌を行わなかった。
表2において、成分偏析比(C/Co)の評価についての記号の意味は以下の通りである。
◎(優良):0.80≦C/Co≦1.00
○(良) :1.00<C/Co≦1.20
△(可) :1.20<C/Co≦1.30
×(不可):1.30<C/Co
第二の電磁攪拌装置を用いた攪拌を行わなかった比較例1−1および2−1では、いずれも成分偏析比C/Coが1.30よりも大きく、成分偏析を抑制することが困難であった。
幅1700mmのスラブでは、希釈攪拌位置における未凝固幅Woの計算値は1494mmであった。そのため、片周期流動距離Dを、未凝固幅Woとほぼ同等の1500mmとした本発明例1−2では、成分偏析比C/Coが、1.00<C/Co≦1.20の範囲となり、成分偏析を抑制することができた。
本発明例1−2よりも半周期電流印加時間tを延長した本発明例1−3および1−4では、成分偏析比C/Coが、0.80≦C/Co≦1.00の範囲と負偏析化し、さらに成分偏析を抑制することができた。すなわち、幅1700mmのスラブでは、半周期電流印加時間tは25秒で十分であり、30秒では片周期において5秒分の電流が過剰であった。
幅2250mmのスラブでは、希釈攪拌位置における未凝固幅Woの計算値は2044mmであった。そのため、片周期流動距離Dを、未凝固幅Woの約73%である1500mmとした比較例2−2では、成分偏析比C/Coが1.30よりも大きく、成分偏析を抑制することができなかった。また、片周期流動距離Dを、未凝固幅Woよりも若干少ない(約98%)の2000mmとした比較例2−3では、成分偏析比C/Coが、1.20<C/Co≦1.30の範囲となり、不十分ながらも成分偏析を抑制することができた。
一方、半周期電流印加時間tを30秒とし、片周期流動距離Dを未凝固幅Woよりも大きくした本発明例2−4では、成分偏析比C/Coが、0.80≦C/Co≦1.00の範囲と負偏析化し、十分に成分偏析を抑制することができた。
成分偏析を負偏析まで抑制しなくてもよい鋼種である場合、上記の幅1700mmのスラブでは半周期電流印加時間tは、20秒でも十分に偏析抑制効果を得ることができる。例えば、半周期電流印加時間tを30秒から20秒に減少させた場合には、1周期当たりの電流印加時間は2/3となり、電流印加頻度は(30秒印加+5秒停止)/(20秒印加+5秒停止)≒1.4倍となる。そのため、総合的には電流印加時間は2/3×1.4≒0.93となり、7%の電力を節約でき、省エネルギー効果が期待できる。
本発明の鋼の連続鋳造方法によれば、未凝固部の溶鋼が、周期的に、少なくとも幅方向の一端から他端まで移動する。そのため、偏析成分濃化溶鋼が、未凝固部の鋳片幅方向の端部で滞留することがなくなるとともに希釈される。そして、未凝固圧下により中心偏析が鋳片幅方向に均一に抑制され、長期間にわたって安定した内部品質を有する鋳片を製造することができる。
したがって、本発明の方法は、とりわけ、割れ感受性の高い高強度鋼や、板厚が100mm以上の極厚製品用の鋼種を対象とした鋳片の製造に対して優れた効果を発揮できる連続鋳造方法として、鋼板に適用できる技術である。
また、本発明の鋳片は、中心偏析が抑制され、安定した内部品質を有し、割れ感受性の高い高強度鋼や、板厚が100mm以上の極厚製品に適用できる。
1:浸漬ノズル、 2:溶鋼湯面(メニスカス)、 3:鋳型、 4:溶鋼、 5:凝固シェル、 6:ガイドロール群、 6a:ガイドロール(従動ロール)、 6b:ガイドロール(駆動ロール)、 7:圧下ロール対、 8:鋳片、 91:第一の電磁攪拌装置、 92:第二の電磁攪拌装置、 10:未凝固部、 11:下側パスライン

Claims (3)

  1. 未凝固部を含む鋳片を、連続鋳造機内または機端に配置した圧下ロール対を用いて圧下する鋼の連続鋳造方法であって、
    前記鋳片の未凝固部の溶鋼を攪拌するための電磁攪拌装置を、前記圧下ロール対よりも鋳造方向上流側の少なくとも一箇所に配置し、
    前記電磁攪拌装置の少なくとも一方を用いて、前記未凝固部溶鋼への攪拌力付加方向が、前記鋳片の幅方向の一方向である正方向および前記正方向と反対の方向である逆方向に、交互に周期的に切り替わる交番電磁攪拌を行うことにより、
    前記未凝固部溶鋼の前記鋳片の幅方向における流動方向を、前記正方向および前記逆方向に周期的に変化させ、
    前記未凝固部溶鋼の流動方向変化の1周期において、前記未凝固部溶鋼の前記正方向への流動期間における延べ流動距離Da、および前記逆方向への流動期間における延べ流動距離Dbが、いずれも前記電磁攪拌装置により攪拌される位置における前記鋳片未凝固部の幅Wo以上となるように、前記電磁攪拌装置への電流印加時間を設定することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
  2. 前記鋳片の中心部から厚さ方向に±25mmの範囲における成分偏析比が0.80以上1.20以下となるように、前記未凝固部を含む鋳片を圧下することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造方法。
  3. 請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法で製造され、中心部から厚さ方向に±25mmの範囲における成分偏析比が0.80以上1.20以下であることを特徴とする鋳片。
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