JP5080787B2 - タンパク質改変方法、ニトリルヒドラターゼ成熟化方法、成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法、成熟化ニトリルヒドラターゼを用いたアミド化合物生産方法 - Google Patents

タンパク質改変方法、ニトリルヒドラターゼ成熟化方法、成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法、成熟化ニトリルヒドラターゼを用いたアミド化合物生産方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質改変方法などに関する。より詳しくは、新規メカニズムに基づくタンパク質改変方法、ニトリルヒドラターゼ成熟化方法、成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法、成熟化ニトリルヒドラターゼ、該成熟化ニトリルヒドラターゼを用いたアミド化合物生産方法に関する。
タンパク質の改変は、タンパク質の機能、性質、活性、安定性、局在性などに深く関わっている。例えば、リン酸化のようなタンパク質の修飾による改変は、生体内でのタンパク質機能制御やシグナル伝達などに関わっている。また、活性中心に金属を含有する酵素などに、金属元素を結合又は付加、若しくは脱離することによる改変は、該酵素の活性に関わっている。その他、特定のリガンドの結合若しくは脱離、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加などにより、構造や機能が改変されるタンパク質も多く存在する。
特許文献1には、アルツハイマー病等に関与するタウタンパク質のリン酸化方法が、特許文献2には、生理活性タンパク質をポリエチレングリコール、多糖等で修飾する方法が、特許文献3には、生理活性ペプチド又は生理活性タンパク質にアミノ供与体を有する物質を修飾する方法が開示されている。
また、非特許文献1では、一般的な金属部位の生合成メカニズムが、特許文献4では、結合タンパク質からリガンドを脱離する方法が開示されている。
なお、ニトリルヒドラターゼを成熟化(活性化)させる方法として、特許文献5では、ニトリルヒドラターゼの活性化に関与する遺伝子を用いて活性化したニトリルヒドラターゼを発現させる方法が、非特許文献2には、鉄型ニトリルヒドラターゼを成熟化させる遺伝子を用いて成熟化した鉄型ニトリルヒドラターゼを発現させる方法が開示されている。
特開2002−335983号公報。 WO96/06181。 WO96/10089。 特表平9−509249号公報。 特開平11−253168号公報。 Chem.Rev.2004,104,509-525。 FEBS Letters 553(2003)391-396。
上記のように、タンパク質の改変は、タンパク質の機能、性質、活性、安定性、局在性などにおいて、非常に重要な役割を担っている。そのため、タンパク質の新規な改変方法の開発が期待されている。
そこで、本発明では、新規メカニズムに基づくタンパク質改変方法を提供するとともに、該方法の産業的利用を可能とすることを主目的とする。
本願発明者らは、複数のサブユニットから構成されるタンパク質の改変方法を研究した結果、一部のサブユニットを交換することにより、タンパク質を改変する新規なメカニズムを見出した。
本発明では、まず、タンパク質中の特定のサブユニット(A)を、下記のいずれか一つ以上の特徴を有するタンパク質(B)に交換する段階を含むタンパク質改変方法を提供する。
(1)前記サブユニット(A)と同一又は近似の構造を有し、前記構造の一部が修飾されたタンパク質(B)。
(2)前記サブユニット(A)と同一又は近似の構造を有し、金属元素の結合又は付加、若しくは脱離がされたタンパク質(B)。
(3)前記サブユニット(A)と同一又は近似の構造を有し、リガンドの結合若しくは脱離がされたタンパク質(B)。
(4)前記サブユニット(A)と同一又は近似の構造を有し、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がされたタンパク質(B)。
従来、複数のサブユニットから構成されるタンパク質の改変方法は、該タンパク質を構成するサブユニット自体を直接修飾等することにより改変する方法であった。即ち、改変前の構成サブユニットは、何らかの改変が行われているものの、改変後にも該タンパク質を構成するサブユニットとして残存していた。
しかし、本発明に係るタンパク質改変方法は、タンパク質中の一部のサブユニット(A)が、該タンパク質外に存在する任意のタンパク質(B)と入れ替わる方法である。即ち、改変前のサブユニット(A)は、前記タンパク質中には残存しない新規な方法である。
本発明に係るタンパク質改変方法は、あらゆるタンパク質改変に用いることができる。例えば、アセチル化、アルキル化、ビオチン化、アシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイン化、リン酸化、硫酸化、ISG15化、SUMO化、ユビキチン化、シトルリン化、脱アミノ化、前記構造の一部のジスルフィド化、前記構造の一部のタンパク質切断などの修飾機構のいずれか又は複数による修飾に基づくタンパク質改変、金属元素の結合又は付加、若しくは脱離に基づくタンパク質改変、リガンド結合若しくは脱離に基づくタンパク質改変、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加に基づくタンパク質改変などに用いることができる。
また、本発明に係るタンパク質改変方法は、酵素として機能するタンパク質の改変にも用いることができる。該酵素は特に限定されないが、一例としては、ニトリルヒドラターゼを挙げることができる。
本発明に係るタンパク質改変方法を用いてニトリルヒドラターゼを改変する方法の一例として、ニトリルヒドラターゼ成熟化方法を説明する。ニトリルヒドラターゼは、αサブユニット、及びβサブユニットから形成され、その活性中心に金属元素を有する酵素であるが、金属元素の含有量が低いと、その活性も低い。そこで、ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットを、金属元素高含有型αサブユニットに交換することで、金属元素含有量を高め、酵素活性の高いニトリルヒドラターゼへと成熟化することができる。
本発明に係る成熟化方法は、微生物由来のニトリルヒドラターゼに用いることができ、その微生物の種は限定されない。一例としては、Rhodococcus rhodochrous J1菌由来のニトリルヒドラターゼを挙げることができる。
また、ニトリルヒドラターゼの活性中心金属も限定されない。工業的に多く用いられるものとしては、例えば、コバルト元素を活性中心に持つコバルト型ニトリルヒドラターゼが挙げられる。
本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化において、交換に用いる金属元素高含有型αサブユニットは、そのαサブユニット同士の交換に支障がなければ、その形態は限定されない。例えば、他のタンパク質と複合体を形成した状態で用いることも可能である。
この場合、それぞれのαサブユニット同士が交換されるので、成熟化後、成熟化ニトリルヒドラターゼは金属元素高含有型αサブユニットを含有し、一方の前記タンパク質複合体は金属元素低含有量αサブユニット含有することとなる。
本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化に用いることが可能であり、かつ、コバルト元素高含有型αサブユニットを含むタンパク質複合体として、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質と、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質と、を有するタンパク質複合体を例示する。
本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法を用いれば、酵素活性の高い成熟化ニトリルヒドラターゼを大量に生産することができる。成熟化ニトリルヒドラターゼは、様々なニトリル化合物からアミド化合物への変換酵素として、アミド化合物の工業的生産に用いることができる。例えば、アクリルニトリルからアクリルアミドへの変換酵素として用いることができる。また、3−シアノピリジンからニコチンアミドへの変換酵素としても用いることができる。
以下、本発明で使用する技術用語等を説明する。
「タンパク質の改変」とは、タンパク質の構造の一部の修飾、金属元素等の結合又は付加若しくは脱離、リガンドの結合若しくは脱離、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加、などに基づいて、該タンパク質の機能、活性、安定性、局在性などの性質を変化させることを意味する。
「修飾」とは、広く翻訳後修飾を意味し、アセチル化、アルキル化、ビオチン化、アシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイン化、リン酸化、硫酸化、ISG15化、SUMO化、ユビキチン化、シトルリン化、脱アミノ化、前記構造の一部のジスルフィド化、前記構造の一部のタンパク質切断などの修飾機構のいずれか又は複数によるもの、及び、これらを工業的に行うことを含む。
「成熟化ニトリルヒドラターゼ」とは、構造変換により、活性中心金属含有量が高く活性化した状態の酵素を意味する。
本発明に係るタンパク質改変方法は、従来のタンパク質改変方法とは全く異なるメカニズムに基づく方法であるため、あらゆる分野において、様々な状況に応じて、タンパク質改変方法の選択の幅を増やすことができる。
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
<タンパク質改変方法について>
本発明に係るタンパク質改変方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明に係るタンパク質改変方法を模式的に示す図である。
図1中符号1は、サブユニットAとサブユニットCから構成されるタンパク質を示している。該タンパク質1は、便宜上、2つのサブユニットから構成されるタンパク質を例示しているが、3つ以上のサブユニットから構成されるタンパク質であってもよい。該タンパク質1の特定のサブユニットAが、別のタンパク質Bと交換されることにより、改変されたタンパク質21となる(図1中(I)参照)。
タンパク質Bは、下記のいずれか一つ以上の特徴を有するタンパク質である。
(1)サブユニットAと同一又は近似の構造を有し、前記構造の一部が修飾されたタンパク質。
(2)サブユニットAと同一又は近似の構造を有し、金属元素の結合又は付加、若しくは脱離がされたタンパク質。
(3)サブユニットAと同一又は近似の構造を有し、リガンドの結合若しくは脱離がされたタンパク質。
(4)サブユニットAと同一又は近似の構造を有し、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加がされたタンパク質。図1では、タンパク質Bの一例として、サブユニットAと同一の構造を有し、かつ、リン酸化により修飾されたタンパク質(「タンパク質Ap」と称する。)を例示して説明する(図1中かっこ参照)。
タンパク質1は、その構成サブユニットAを、リン酸化により修飾されたタンパク質Apに交換することにより、リン酸化により改変されたタンパク質22となる(図1中(II)参照)。
タンパク質Bは、リン酸化による修飾をうけたタンパク質Apに限定されない。例えば、アセチル化、アルキル化、ビオチン化、アシル化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイン化、硫酸化、ISG15化、SUMO化、ユビキチン化、シトルリン化、脱アミノ化、前記構造の一部のジスルフィド化、前記構造の一部のタンパク質切断などの修飾機構のいずれか又は複数によるもの、及び、これらを工業的に行うことにより修飾されたタンパク質であってもよい。
また、タンパク質Bは、サブユニットAと同一又は近似の構造を有するタンパク質であって、任意の金属元素を結合又は付加若しくは脱離、特定のリガンドの結合若しくは脱離、アミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加、などの特徴を有するタンパク質であってもよい。
更に、タンパク質Bは、サブユニットAとの交換に支障がなければ、その形態は限定されない。例えば、他のタンパク質と複合体を形成した状態で用いることも可能である。
このように、本発明に係るタンパク質改変方法は、タンパク質1の構成サブユニットA、C自体を直接、修飾等するのではなく、タンパク質1中の特定のサブユニットAを、タンパク質1外に存在し、修飾等された別のタンパク質Bに交換することにより、タンパク質1全体としての改変を行う新規メカニズムに基づく改変方法である。
本発明に係るタンパク質改変方法は、酵素として機能するタンパク質の改変などにも用いることができる。本発明に係るタンパク質改変方法を用いれば、例えば、酵素活性の強弱の調節、酵素基質特異性の変更、至適温度・至適pHの変更、アポ酵素からホロ酵素への変換、局在部位の変更などの酵素タンパク質の改変が可能である。
本発明に係る酵素タンパク質の改変について、ニトリルヒドラターゼを例示して説明する。
<ニトリルヒドラターゼ成熟化方法>
図2は、ニトリルヒドラターゼ成熟化方法を模式的に示す図である。
図2(I)は、4量体及び2量体の未成熟ニトリルヒドラターゼを示す。未成熟ニトリルヒドラターゼとは、構造変換が不完全で、活性中心金属含有量が低く、酵素活性の低いニトリルヒドラターゼを意味する。図2中符号α1は、ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットを示す。図2中符号βは、ニトリルヒドラターゼのβサブユニットを示す。
図2中符号α2は、金属元素高含有型αサブユニットを示す。図2に示すように、4量体及び2量体の未成熟ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットα1を、金属元素高含有型αサブユニットα2に交換する。そして、ニトリルヒドラターゼ自体の金属元素含有量が増加する。その結果、ニトリルヒドラターゼが酵素活性の高い状態へと成熟化する(図2(II)参照)。
本発明に係る成熟化方法は、微生物由来のニトリルヒドラターゼの成熟化に用いることができ、その微生物の種は限定されない。例えば、Achromobacter属、Acinetobacter属、Aeromonas属、Agrobacterium属、Bacillus属、Citrobacter属、Corynebacterium属、Enterobacter属、Erwinia属、Klebsiella属、Micrococcus属、Nocardia属、Pseudomonas属、Pseudonocardia属、Rhodococcus属 Streptomyces属、Thermophila属、Rhizobium属、Xanthobacter属などに属する微生物由来のニトリルヒドラターゼに用いることができる。好適な一例としては、Rhodococcus rhodochrous J1菌由来のニトリルヒドラターゼが挙げられる。
本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法では、その活性中心である金属元素含有量を増加させるが、該金属元素も、特に限定されない。例えば、コバルト、鉄等が挙げられる。
交換に用いる金属元素高含有型αサブユニットα2は、αサブユニット同士の交換に支障がなければ、その形態は限定されない。例えば、他のタンパク質と複合体を形成した状態で用いることも可能である。金属元素高含有型αサブユニットα2を含むタンパク質複合体を用いて、ニトリルヒドラターゼを成熟化する方法について、図3を用いて説明する。
図3は、金属元素高含有型αサブユニットα2を含むタンパク質複合体を用いたニトリルヒドラターゼ成熟化方法を模式的に示す図である。
前記タンパク質複合体の一例を図3中(X)で示す。該タンパク質複合体は、金属元素高含有型αサブユニットα2とタンパク質eとからなるタンパク質複合体である(以下「タンパク質複合体αe」と称する)。
図3に示すように、4量体及び2量体の未成熟ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットα1が、タンパク質複合体αeを構成する金属元素高含有型αサブユニットα2と交換する。そして、ニトリルヒドラターゼ自体の金属元素含有量が増加する。その結果、ニトリルヒドラターゼが酵素活性の高い状態へと成熟化する(図3(II)参照)。
このとき、タンパク質複合体αeを構成するαサブユニットは、金属元素低含有型αサブユニットα1に交換されている(図3(Y)参照)。
前記タンパク質複合体αeは、金属元素高含有型αサブユニットα2を少なくとも含むタンパク質複合体であれば特に限定されない。一例としては、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質(金属元素高含有型αサブユニットα2。以下「NhlAタンパク質」とする。)と、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、「NhlEタンパク質」とする。)とから形成されたタンパク質複合体を挙げることができる。
なお、前記NhlAタンパク質は、未成熟ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットα1と交換可能であれば、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するものの実に狭く限定されない。即ち、配列番号1に示すアミノ酸配列の一部が置換、欠損、挿入等されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、NhlAタンパク質に包含される。
また、前記NhlEタンパク質も、前記交換を妨げない性質であれば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するものの実に狭く限定されない。即ち、配列番号2に示すアミノ酸配列の一部が置換、欠損、挿入等されたアミノ酸配列を有するタンパク質も、NhlEタンパク質に包含される。更に、NhlEタンパク質が、前記交換において、シャペロンとして機能するタンパク質であると、より好適である。「シャペロン」とは、ニトリルヒドラターゼの立体構造の形成やNhlAタンパク質の運搬を助けるタンパク質を意味する。
NhlEタンパク質をコードする遺伝子(以下、「nhlE遺伝子」とする。)は、ニトリルヒドラターゼをコードする遺伝子(即ち、この酵素のαサブユニット及びβサブユニットをコードする遺伝子。以下、それぞれ、「nhlA遺伝子」、及び「nhlB遺伝子」とする。)の近傍に位置する。
これらの遺伝子を有するものとして、例えば、Achromobacter属、Acinetobacter属、Aeromonas属、Agrobacterium属、Bacillus属、Citrobacter属、Corynebacterium属、Enterobacter属、Erwinia属、Klebsiella属、Micrococcus属、Nocardia属、Pseudomonas属、Pseudonocardia属、Rhodococcus属 Streptomyces属、Thermophila属、Rhizobium属、Xanthobacter属などの微生物を挙げることができる。代表例として、Rhodococcus rhodochrous J1菌における塩基配列を配列表(配列番号3)に示す。
前記タンパク質複合体は、nhlA遺伝子をコードする配列(配列番号3に示す塩基配列のうち第745番目から第1368番目の配列、図中「nhlA」参照。)とnhlE遺伝子をコードする配列(配列番号3に示す塩基配列のうち第1370番目から第1816番目の配列、図中「nhlE」参照。)を少なくとも含むプラスミドを用いて、取得することができる。該プラスミドの構成例を図4に模式的に示す。
例えば、このプラスミドで、所定の培養細胞などを形質転換し、細胞内で大量発現させた後、精製することにより、本発明に係るタンパク質複合体を簡易かつ大量に取得できる。なお、本発明に係るタンパク質複合体の調製手段としては、公知の方法が広く適用可能であり、同調製手段は、前記手段のみに狭く限定されない。
図4に示すプラスミドは、公知の方法により、作製できる。例えば、nhlA遺伝子及びnhlE遺伝子と同じ配列を有するDNAを調製し、それらのDNA(予め連結したものを含む)とプラスミドDNAとを制限酵素(例えば、図中「Xba I」及び「Sac I」参照。)で処理した後、連結酵素で処理することにより、即ち、プラスミドDNAにそれらのDNAを組み込むことにより、前記プラスミドを作製できる。
<成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法について>
本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法を、ニトリルヒドラターゼ生産方法の一工程で使用すれば、成熟化したニトリルヒドラターゼを生産することができる。成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法を、図5、及び図6を用いて説明する。
図5は、本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法の一実施形態を模式的に示す図である。図5中STEP1は、in vivo(宿主内)、STEP2は、in vitroでの様子を示す。
まず、nhlE遺伝子とnhlA遺伝子の2つのORFを持つプラスミドpREIT‐nhlAEを宿主に導入し、タンパク質複合体4(αe)を精製する。発明者らの研究の結果、該タンパク質複合体を構成するNhlAタンパク質(ニトリルヒドラターゼのαサブユニット)は、金属元素高含有型であることが分かっている(実施例6参照)。
また、nhlA遺伝子とnhlB遺伝子の2つのORFを持つプラスミドpREIT‐nhlBAを宿主に導入し、4量体31(αβ)、及び2量体32(αβ)のニトリルヒドラターゼを精製する。発明者らの研究の結果、これらのニトリルヒドラターゼは、金属元素含有量が低く、酵素活性も低いことが分かっている(実施例2参照)。また、これらのニトリルヒドラターゼを構成するαサブユニットは、金属元素低含有型であることも分かっている(実施例4参照)。
次に、前記タンパク質複合体4(αe)を用いて、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化を行う。具体的には、精製したタンパク質複合体4(αe)と、未成熟ニトリルヒドラターゼ(4量体31(αβ)、2量体32(αβ))とを、in vitroにおいて混合等する。このとき、図5に示すように、4量体31(αβ)及び2量体32(αβ)の未成熟ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットα1が、タンパク質複合体αeを構成する金属元素高含有型αサブユニットα2と交換される。そして、ニトリルヒドラターゼ自体の金属元素含有量が増加する。その結果、ニトリルヒドラターゼが酵素活性の高い状態へと成熟化し、成熟化ニトリルヒドラターゼ5を生産することができる。
従来、成熟化ニトリルヒドラターゼを生産するには、ニトリルヒドラターゼ構造遺伝子と共に、ニトリルヒドラターゼの成熟化に関わる遺伝子を同一の宿主内に導入し、成熟化ニトリルヒドラターゼとして発現させる必要があった。
しかし、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法を用いれば、一旦、未成熟なまま発現したニトリルヒドラターゼであっても、発現後に成熟化させることが可能となった。従って、未成熟ニトリルヒドラターゼから、別に発現させたタンパク質複合体4(αe)を用いたニトリルヒドラターゼ成熟化を行うことによって、成熟化ニトリルヒドラターゼを工業的に生産することができる。
本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法は、未成熟ニトリルヒドラターゼとタンパク質複合体4(αe)を混合する方法を用いることに限定されず、前記混合以外にも、添加、滴下など、未成熟ニトリルヒドラターゼとタンパク質複合体4(αe)が接触等する方法全てを包含する。
図6は、本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法の図5とは異なる一実施形態を模式的に示す図である。nhlE遺伝子、nhlA遺伝子、及びnhlB遺伝子の3つのORFを持つプラスミドpREIT-nhlBAEを宿主に導入した様子を示す。本実施形態は、本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法を、同一の宿主内で行う実施形態である。
nhlA遺伝子、及びnhlB遺伝子からは、4量体αβと2量体αβのニトリルヒドラターゼが発現する(図中符号31、32で示す)。前記と同様、このときの4量体31(αβ)、及び2量体32(αβ)のニトリルヒドラターゼは、活性中心金属の含有量、及び酵素活性が低い。また、これらのニトリルヒドラターゼを構成するαサブユニットは、金属元素低含有型である。
一方、nhlE遺伝子、及びnhlA遺伝子からは、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化に用いることが可能なタンパク質複合体αeが発現する(図6中符号4で示す)。前記と同様、該タンパク質複合体を構成するNhlAタンパク質(ニトリルヒドラターゼのαサブユニット)は、金属元素高含有型であることが分かっている(実施例6参照)。
次に、前記タンパク質複合体4(αe)を用いて、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化が行われる。図5に示すように、4量体31(αβ)及び2量体32(αβ)の未成熟ニトリルヒドラターゼの金属元素低含有型αサブユニットα1が、タンパク質複合体4(αe)を構成する金属元素高含有型αサブユニットα2と交換される。そして、ニトリルヒドラターゼ自体の金属元素含有量が増加する。その結果、ニトリルヒドラターゼが酵素活性の高い状態へと成熟化し、成熟化ニトリルヒドラターゼ5を生産することができる。
このように、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法をニトリルヒドラターゼ生産の一工程に使用すれば、成熟化ニトリルヒドラターゼを大量に産することができる。
本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法は、図5、及び図6で示した方法に限定されず、本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法を使用する工程を少なくとも含む方法を全て包含する。
<成熟化ニトリルヒドラターゼの工業的利用について>
前記生産方法で得られた成熟化ニトリルヒドラターゼは、反応性が高いため、あらゆるアミド化合物の工業的生産に用いることができる。
例えば、本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼは、アクリルアミドの工業的生産において、アクリルニトリルからアクリルアミドへの変換酵素として、用いることができる。本発明に係るアクリルアミド生産方法は、成熟化ニトリルヒドラターゼを前記変換酵素として用いる工程を含む方法を全て包含する。
また、本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼは、ニコチンアミドの工業的生産において、3−シアノピリジンからニコチンアミドへの変換酵素として、用いることができる。本発明に係るニコチンアミド生産方法は、成熟化ニトリルヒドラターゼを前記変換酵素として用いる工程を含む方法を全て包含する。
実施例1では、以下実施例2から実施例5において使用するプラスミドを構築した。
なお、以下の実施例では、本発明に係るタンパク質改変方法の新規メカニズムを解明するために、タンパク質の一例として、ニトリルヒドラターゼを用いている。しかし、本発明に係るタンパク質改変方法は、該ニトリルヒドラターゼの改変に限定されず、該ニトリルヒドラターゼのように、複数のサブユニットから構成されるタンパク質全てに適用できる。
Rhodococcus rhodochrous J1菌(特開平05−219972号参照)由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子を含むプラスミドpLJK60(J.Biol.Chem.,271,15796-15802 1996)を鋳型としてPCRを行い、得られたPCR産物を本願発明者が先に発明したプラスミドpREIT19(特願2004-380940)に連結した。図7(m)にプラスミドpLJK60に存在する遺伝子部位を模式的に示す。
そして、以下(I)から(III)のプラスミドを構築した。これらのプラスミドの遺伝子部位を、図7(I)から(III)に、模式的に示す。
(I)nhlA遺伝子(配列番号3に示す塩基配列のうち第745番目から第1368番目、図7中「nhlA」参照、以下同じ)、nhlB遺伝子(配列番号3に示す塩基配列のうち第1番目から第681番目、図7中「nhlB」参照、以下同じ)、及びnhlE遺伝子(配列番号3に示す塩基配列のうち第1370番目から第1816番目、図7中「nhlE」参照、以下同じ)の3つのORFを持つプラスミドpREIT-nhlBAE。
(II)nhlA遺伝子、及びnhlB遺伝子の2つのORFを持つプラスミドpREIT-nhlBA。
(III)nhlA遺伝子、及びnhlE遺伝子の2つのORFを持つプラスミドpREIT-nhlAE。
実施例2では、実施例1で構築した(I)〜(III)のプラスミドを宿主に導入し、発現したタンパク質のニトリルヒドラターゼ活性を調べた。
まず、Rhodococcus fascians DSM43985を宿主として、(I)〜(III)のプラスミドを導入し、それぞれタンパク質を発現させ、精製した。発現・精製したそれぞれのタンパク質のゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を図8に、SDS-PAGE(Sodium dodecyl sulfate-polyacrylamidegel electrophoresis)の結果を図9に示す。
プラスミドpREIT-nhlBAE(I)からは、4量体(αβ)のタンパク質(図8(1)、図9lane1参照)が、プラスミドpREIT-nhlBA(II)からは、4量体(αβ)及び2量体(αβ)のタンパク質(図8(2)(3)、図9lane2、3参照)が、プラスミドpREIT-nhlAE(III)からは、3量体(αe)のタンパク質(図8(4)、図9lane4)が、それぞれ発現し、精製できた。
発現・精製したそれぞれのタンパク質のニトリルヒドラターゼ活性を調べた。なお、ニトリルヒドラターゼ活性測定は、以下のように行った(以下同様)。
水で希釈した精製酵素溶液、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)、20mM 3-シアノピリジンを含む0.5mL中で、20℃にて20分間反応後、アセトニトリルを0.5mL加えることにより反応を停止させた。酵素反応により生成したニコチンアミドをHPLCにより分析した。HPLCの解析条件は表1の通りである。1分間に1mmolの安息香酸を生成する酵素量を1unitとした。
発現・精製したそれぞれのタンパク質のニトリルヒドラターゼ活性を表2に示す。プラスミドpREIT-nhlBAE(I)から発現した4量体(αβ)のタンパク質のニトリルヒドラターゼ活性は、320U/mgと高い数値を示した。プラスミドpREIT-nhlBA(II)から発現した4量体(αβ)及び2量体(αβ)のタンパク質のニトリルヒドラターゼ活性は、それぞれ83U/mg、4U/mgと低い数値を示した。プラスミドpREIT-nhlAE(III)から発現した3量体(αe)のタンパク質は、ニトリルヒドラターゼ活性を示さなかった。
実施例2では、プラスミドpREIT-nhlBAE(I)からは、成熟化した4量体(αβ)のニトリルヒドラターゼ(以下「ホロ酵素αβ」と称する。)が発現し、pREIT-nhlBA(II)からは、未成熟の4量体(αβ)及び2量体(αβ)のニトリルヒドラターゼ(以下それぞれ「アポ酵素αβ」「アポ酵素αβ」と称する。)が発現することが分かった。
実施例3では、in vitroにおいて、アポ酵素αβ、及びアポ酵素αβから、ホロ酵素αβへの改変を試みた。
実施例2で発現させたアポ酵素αβ(比活性83U/mg)、及びアポ酵素αβ(比活性4U/mg)を、それぞれ、2倍量の(実施例2で発現させた)タンパク質複合体αeと混合し、ゲル濾過カラムを用いて混合溶液を分画・精製した。
まず、アポ酵素αβとタンパク質複合体αeとの混合溶液を分画・精製した。その結果、4量体(αβ)酵素の大きさはそのままであったが、この酵素の比活性は、328.4U/mgまで上昇した。生成した酵素を「R−アポ酵素αβ」と称する。
混合時(0時間)のアポ酵素αβとタンパク質複合体αeのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を図10中Aに、混合後12時間後のR−アポ酵素αβとタンパク質複合体αeのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を図10中Bに示す。新たに生成したR−アポ酵素αβの比活性は、328.4U/mgであった。比活性を表3に示す。R−アポ酵素αβの比活性は、プラスミドpREIT-BAE(I)を導入したRhodococcus fascians DSM43985から発現・精製したホロ酵素αβの比活性と同じレベルであった。
次に、アポ酵素αβとタンパク質複合体αeとの混合溶液を分画した。その結果、新たに4量体(αβ)酵素が生成した。生成した酵素を「R−アポ酵素αβ(αβ)」と称する。
混合時(0時間)のアポ酵素αβとタンパク質複合体αeのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を図10中Cに、混合後12時間後のR−アポ酵素αβ(αβ)とタンパク質複合体αeのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を図10中Dに示す。新たに生成したR−アポ酵素αβ(αβ)の比活性は、326.2U/mgであった。比活性を表3に示す。これも、プラスミドpREIT-BAE(I)を導入したRhodococcus fascians DSM43985から発現・精製したホロ酵素αβの比活性と同じレベルであった。
実施例3では、in vitroにおいて、酵素活性の低い未成熟な状態で発現したアポ酵素αβ、及びアポ酵素αβを、タンパク質複合体αeを用いることにより、酵素活性の高い成熟化したホロ酵素αβへと改変させることができた。
実施例4では、以下に示す、実施例2で発現させたタンパク質、及び実施例3で改変させたタンパク質について、コバルトイオン含有量の測定を行った。
(a)pREIT-nhlBAE(I)を導入して発現したホロ酵素αβ
(b)pREIT-nhlBA(II)を導入して発現したアポ酵素αβ
(c)pREIT-nhlBA(II)を導入して発現したアポ酵素αβ。
(d)pREIT-nhlAE(III)を導入して発現したタンパク質αe
(e)(b)のアポ酵素αβを改変させたR−アポ酵素αβ
(f)(c)のアポ酵素αβを改変させたR−アポ酵素αβ(αβ)。
(a)から(f)のそれぞれの酵素について、コバルトイオン含有量の測定結果を表4に示す。
(a)pREIT-BAE(I)を導入して発現したホロ酵素αβはαβサブユニットあたり1.06モル(2.12モル/αβ)のコバルトイオンを含有しているのに対し、(b)pREIT-BA(II)を導入して発現したアポ酵素αβ、及び(c)pREIT-BA(II)を導入して発現したアポ酵素αβは、それぞれαβサブユニットあたり0.036モル(0.072モル/αβ)、0.030モルのコバルトイオンしか含有していなかった。また、(b)のアポ酵素αβと混合するタンパク質複合体αe、及び(c)のアポ酵素αβと混合する(d)タンパク質複合体αeのコバルトイオン含有量は、どちらもαeサブユニットあたり0.92モルであった。
しかし、(b)のアポ酵素αβ、及び(c)のアポ酵素αβをそれぞれタンパク質複合体αeと混合した後に改変した(e)R−アポ酵素αβ、及び(f)R−アポ酵素αβ(αβ)のコバルトイオン含有量は、それぞれ、αβサブユニットあたり1.16モル(2.32モル/αβ)、1.18モル(2.36モル/αβ)と増加した。
一方で、混合後の(d)タンパク質複合体αeのコバルトイオン含有量は、それぞれ、αeサブユニットあたり0.40モル、0.42モルと減少していた。
実施例4の結果より、タンパク質複合体αeは、コバルトイオン含量が少なく比活性の低いアポ酵素αβ、及びアポ酵素αβに対し、自身のコバルトイオンを受け渡すことにより、酵素活性を上昇させることが分かった。
実施例5では、実施例4で用いた(a)〜(c)、(e)、(f)のそれぞれの酵素について、内部構造の違いを調べるためにCDスペクトルを測定した。
CDスペクトルパターンを図11に示す。
(a)pREIT-nhlBAE(I)を導入して精製したホロ酵素αβ:黒
(b)pREIT-nhlBA(II)を導入して精製したアポ酵素αβ:赤
(c)pREIT-nhlBA(II)を導入して精製したアポ酵素αβ:青
(e)(b)のアポ酵素αβを改変させたR−アポ酵素αβ:緑
(f)(c)のアポ酵素αβを改変させたR−アポ酵素αβ(αβ):紫
図11に示す通り、(a)ホロ酵素αβ(黒)と比較して、(b)アポ酵素αβ(赤)、及び(c)アポ酵素αβ(青)は、異なるCDスペクトルパターンを示した。
しかし、タンパク質複合体αeと混合後に改変した(e)R−アポ酵素αβ(緑)、及び(f)R−アポ酵素αβ(αβ)(紫)は、(a)ホロ酵素αβ(黒)と同じCDスペクトルパターンを示すようになった。
実施例5の結果より、(b)アポ酵素αβ(赤)、及び(c)アポ酵素αβ(青)は、(a)ホロ酵素αβと内部構造が異なるが、タンパク質複合体αeと混合することにより、(a)ホロ酵素αβと同じ構造へと改変することが明らかとなった。
実施例6では、タンパク質複合体αeに含有されるコバルトイオンが、NhlAタンパク質(αサブユニット)、又はNhlEタンパク質のどちらに含有されているかを調べた。
まず、液体クロマトグラフィーにおける保持容量(図12)、及びSDS-PAGE(図13)上のバンドを指標に、NhlAタンパク質(αサブユニット)とNhlEタンパク質の分離を行った。得られたNhlAタンパク質(αサブユニット)、及びNhlEタンパク質のそれぞれのコバルトイオン含有量を測定した。測定結果を表5に示す。
表5に示すように、NhlAタンパク質(αサブユニット)は、NhlAタンパク質(αサブユニット)あたり0.79±0.08モルのコバルトイオンを含有していたが、NhlEタンパク質は、コバルトイオンを全く含有していなかった。
なお、NhlAタンパク質(αサブユニット)、及びNhlEタンパク質を、それぞれ単独でアポ酵素αβ、及びアポ酵素αβを混合したところ、R−アポ酵素αβ、及びR−アポ酵素αβ(αβ)へと改変されなかった。
実施例6では、コバルトイオンは、タンパク質複合体αeを構成するNhlAタンパク質(αサブユニット)が含有していることが分かった。
実施例7では、タンパク質複合体αeからアポ酵素αβ、及びアポ酵素αβへのコバルトイオン受け渡しメカニズムを調べた。
まず、ニトリルヒドラターゼのαサブユニットの3番目のアラニンをグリシンに置換したORFと、nhlB遺伝子の2つのORFを持つプラスミドpREIT-nhlBA-α-A3Gを構築した。
そして、Rhodococcus fascians DSM43985を宿主として、アポ酵素αβ、及びアポ酵素αβに対応する変異体酵素を発現・精製した。精製した酵素を「アポ酵素(α−A3G)β」、「アポ酵素(α−A3G)β」と称する。アポ酵素(α−A3G)β、及びアポ酵素(α−A3G)βの比活性を調べたところ、アポ酵素(α−A3G)βの比活性は78.2±3.2U/mg、アポ酵素(α−A3G)βの比活性は3.2±1.6U/mgであった。これは、アポ酵素αβ、及びアポ酵素αβと同レベルの数値である。
次に、アポ酵素(α−A3G)β、及びアポ酵素(α−A3G)βそれぞれと、(αサブユニットの3番目がアラニンである)タンパク質複合体αeとを混合した。それぞれ生成した酵素を精製し、その比活性を調べたところ、それぞれ330.5±15.5U/mg、318.6±10.6U/mgと上昇していた。比活性を表6に示す。これは、ホロ酵素αβと同レベルの数値である。
更に、生成したそれぞれの酵素を精製し、そのN末端アミノ酸配列を調べた。それぞれの酵素のN末端アミノ酸配列を表7に示す。表7に示す通り、3番目のグリシンは、アラニンへ変化していた。
実施例7の結果から、タンパク質複合体αeは、自身のNhlAタンパク質(αサブユニット)とアポ酵素αβ、及びアポ酵素αβを構成するαサブユニットとを交換することで、アポ酵素αβ、及びアポ酵素αβを、R−アポ酵素αβ、及びR−アポ酵素αβ(αβ)へと改変することが分かった。
また、以上の結果より、NhlEタンパク質は、アポ酵素αβ、αβをホロ酵素αβへと改変する際のシャペロンとして機能することが示唆された。
実施例8では、BLAST法を用いて、NhlEタンパク質と以下のタンパク質とのアミノ酸配列の相同性を調べた。
(1)NhhGタンパク質: Rhodococcus rhodochrous J1菌由来のコバルト型高分子量ニトリルヒドラターゼ遺伝子クラスター中に存在し、NhlEに相同性を示すタンパク質
(2)P14Kタンパク質:Bacillus pallidus RAPc8菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼ活性化タンパク質
(3)A.tumタンパク質:Agrobacterium tumefaciens菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼのβサブユニット
(4)J1nhlBタンパク質:Rhodococcus rhodochrous J1菌由来のコバルト型低分子量ニトリルヒドラターゼのβサブユニット
(5)P.putタンパク質:Psudomonas putida菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼのβサブユニット
結果を表8、及び図14に示す。表8に示すように、NhlEタンパク質とそれぞれのタンパク質の相同性は、NhhGタンパク質38%、P14Kタンパク質35%、A.tumタンパク質33%、J1nhlBタンパク質30%、P.putタンパク質32%であった。
また、図14に示すように、NhlEタンパク質とそれぞれのタンパク質は、全体にわたり相同性を示していることが分かった。
実施例8より、これらのタンパク質も、NhlEタンパク質と同様の機能を有することが示唆された。即ち、これらのタンパク質も本発明に係るタンパク質改変に深く関わることが示唆された。
本発明に係るタンパク質改変方法は、タンパク質同士を交換することにより行う方法であるため、従来、in vivoにおいてのみ可能であったタンパク質改変方法であっても、場合によってはin vivo、及びin vitroにかかわらず行えることが期待できる。そのため、あらゆる分野において、様々な状況に応じて、タンパク質改変方法の選択の幅を増やすことができる。
また、タンパク質を改変させる際に触媒等が必要な場合であっても、本発明に係るタンパク質改変方法は全く新規なメカニズムに基づく改変方法であるため、場合によっては触媒が必要なくなったり、別の触媒に変更できたりするなど、手間やコスト面での軽減を図ることも期待できる。
本発明に係るタンパク質改変方法を模式的に示す図である。 本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法を模式的に示す図である。 本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法の図2とは異なる一実施形態を模式的に示す図である。 本発明に係るニトリルヒドラターゼ成熟化方法に用いるタンパク質複合体の取得に用いるプラスミドを模式的に示す図である。 本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法の一実施形態を模式的に示す図である。 本発明に係る成熟化ニトリルヒドラターゼ生産方法の図5とは異なる一実施形態を模式的に示す図である。 実施例1で作成したプラスミドの遺伝子部位を模式的に示した図である。 実施例2でのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を示す図面代用グラフである。 実施例2でのSDS-PAGEの結果を示す図面代用写真である。 実施例3でのゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を示す図面代用グラフである。 実施例5で測定したCDスペクトルパターンを示す図面代用グラフである。 実施例6で用いたゲル濾過クロマトグラフィーにおける保持容量を示す図面代用グラフである。 実施例6で用いたSDS-PAGEの結果を示す図面代用写真である。 実施例8におけるBLAST法の結果を示す図である。
符号の説明
1 サブユニットAとサブユニットCから構成されるタンパク質
21、22 改変されたタンパク質
A、B、C タンパク質
α ニトリルヒドラターゼのαサブユニット
β ニトリルヒドラターゼのβサブユニット
α1 金属元素低含有型αサブユニット
α2 金属元素高含有型αサブユニット
e NhlEタンパク質
31 4量体の未成熟ニトリルヒドラターゼ
32 2量体の未成熟ニトリルヒドラターゼ
4 タンパク質複合体αe
5 成熟化ニトリルヒドラターゼ

Claims (4)

  1. インビトロにおいて、
    下記のαサブユニットおよび配列番号3に示す塩基配列のうち第1番目から第681番目の配列でコードされるβサブユニットから構成されるコバルト型ニトリルヒドラターゼのコバルト元素低含有型αサブユニットを、
    下記のαサブユニットと、下記のタンパク質Eと、を有するタンパク質複合体中のコバルト元素高含有型の前記αサブユニットに、交換することを特徴とするコバルト型ニトリルヒドラターゼの成熟化方法。
    αサブユニット:配列番号1に示すアミノ酸配列を有するタンパク質または配列番号1に示すアミノ酸配列の一部が置換、欠損、挿入されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、前記コバルト元素低含有型αサブユニットと交換可能なタンパク質。
    タンパク質E:配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質または配列番号2に示すアミノ酸配列の一部が置換、欠損、挿入されたアミノ酸配列を有するタンパク質であって、前記αサブユニットと複合体を形成可能なタンパク質。
  2. 前記コバルト型ニトリルヒドラターゼは、Rhodococcus rhodochrous J1菌由来のコバルト型ニトリルヒドラターゼであることを特徴とする請求項1記載のコバルト型ニトリルヒドラターゼ成熟化方法。
  3. 請求項1または2に記載のコバルト型ニトリルヒドラターゼ成熟化方法を使用する工程を含む成熟化コバルト型ニトリルヒドラターゼ生産方法。
  4. 請求項1または2に記載のコバルト型ニトリルヒドラターゼ成熟化方法を使用する工程を含む成熟化コバルト型ニトリルヒドラターゼの生産工程、および、
    該生産工程によって生産された成熟化コバルト型ニトリルヒドラターゼを、ニトリル化合物からアミド化合物への変換酵素として用いる工程を含むアミド化合物生産方法。
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