JP5080180B2 - 導電性高分子用エッチング液、及び、導電性高分子をパターニングする方法 - Google Patents
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Description
この導電性高分子は、導電性、光の透過性、発光性、製膜後もフレキシブルであるという特徴をもっており、透明導電膜、電解コンデンサー、帯電防止剤、電池、及び有機EL素子等への応用が研究され、一部では実用化されている。
導電性高分子をポリマーフィルムの表面に薄く製膜することで透明性を保ったまま静電気を防止することができるため、このようなものは使い勝手の良い帯電防止フィルムや帯電防止容器として使用されている。
発光層に導電性高分子を用いた高分子有機ELディスプレイがあり、基板にガラスではなくプラスチックを用いることで、フレキシブルなディスプレイが作製できる。また、正孔輸送層にも導電性高分子を用いることができる。高分子有機ELディスプレイを含む有機ELディスプレイは、自発光のディスプレイなので視野角が広く、薄型化しやすく、色の再現性に優れる。また、正孔と電子の再結合による発光なので応答速度が速い。有機ELディスプレイはこのような優れた特徴を持っているために、将来有望なディスプレイである。
また、導電性高分子を使用してダイオードやトランジスタなどの電子素子を作製することができ、性能の向上が研究されている。導電性高分子を白金の代わりに色素増感型太陽電池の二酸化チタンの対極として使用することにより、現在主流となっているシリコンを利用した太陽電池よりも安価な太陽電池の開発を目指し研究されている。
このように導電性高分子は将来のエレクトロニクス産業にとって有益な材料で、導電性高分子のパターニング方法は導電性高分子を使用するにあたって重要な技術である。
これに対し、パターニングに広く用いられているフォトエッチング方法は均一な膜を製膜後にパターニングを行うので簡単な製膜方法を採用できる利点がある。
しかしながら、特許文献2には、導電性高分子のエッチングに使用するエッチング液については述べられていない。
特許文献3には、導電性高分子としてpolypyrrole(PPy)に対して、次亜塩素酸塩又は(NH4)2Ce(SO4)3などを使用してエッチングすることが開示されている。ここで用いている次亜塩素酸塩は、市販の漂白剤(Clorox(商品名) bleach)で、その水溶液はアルカリ性であり、エッチングに欠かせないフォトレジストにダメージを与えてしまう問題がある。また、(NH4)2Ce(SO4)3の実施例が記載されている。
また、特許文献3にはエッチングせずにフォトレジストで覆われなかった部分に薬液(例えばtetramethylammonium hydroxide(TMAH)、又はNH4OH)を接触させ電気抵抗を増加させたり、別の薬液(例えばHCl、HNO3、HClO4、及びH2SO4)を接触させ電気抵抗を減少させたりすることでパターニングする方法が開示されている。しかし、このような電気抵抗を増減させてパターニングする方法は絶縁が不十分であり現実的ではない。特に有機ELディスプレイ等のディスプレイ用途には素子間の絶縁性が重要である。
<1> 0.5重量%を超え70重量%以下の(NH4)2Ce(NO3)6、又は、0.5重量%以上30重量%以下のCe(SO4)2を含むことを特徴とする導電性高分子用エッチング液、
<2> (NH4)2Ce(NO3)6を含み、0.1重量%を超え70重量%以下の硝酸を含む上記<1>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<3> (NH4)2Ce(NO3)6を含み、0.1重量%を超え60重量%以下のHClO4を含む上記<1>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<4> Ce(SO4)2を含み、0.1重量%を超え70重量%以下の硝酸を含む上記<1>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<5> Ce(SO4)2を含み、0.1重量%を超え40重量%以下の硫酸を含む上記<1>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<6> 導電性高分子が、ポリアセチレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリフェニレン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリアセン類、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類である<1>〜<5>のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液、
<7> 導電性高分子が、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類である<6>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<8> 導電性高分子が、ポリアニリン類又はポリチオフェン類である<7>に記載の導電性高分子用エッチング液、
<9> 導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液、
<10> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液を用いて導電性高分子をパターニングする方法。
また、本発明の導電性高分子をパターニングする方法(以下、単に「パターニング方法」ともいう。)は、本発明の導電性高分子用エッチング液を用いて行う方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、「%」は特に明記しない限り「重量%」を示す。
図1A〜図1Gは、本発明のエッチング液を用いて導電性高分子をエッチングして、導電性高分子の回路パターンを得る一例の概略工程図である。
本発明のエッチング液の使用例として、透明基板1(図1A)上に導電性高分子2(図1B)をコーティングし、この透明基板1(図1B)上にレジスト3(図1C)を塗布し(図1C)、回路図に従って露光する(図1D)。そして露光した部分のレジストを現像液で除去し導電性高分子膜を露出させる(図1E)。現像した基板に本発明のエッチング液を用いてエッチングし(図1F)、導電性高分子膜をパターニングする。その後、洗浄し、残存するレジスト部を除去して導電性高分子膜がパターニングされた基板を得ることができる(図1G)。
なお、図1ではレジスト3として、ポジ型レジストを使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ネガ型のレジストを使用することもできる。
本発明に用いることができる導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、ポリビチオフェン、ポリイソチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリイソチアナフテン、ポリイソナフトチオフェン、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチアジル、ポリエチレンビニレン、ポリパラフェニレン、ポリドデシルチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンスルフィド等やこれらの誘導体が例示できる。これらのうち、ポリチオフェン類、ポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類がより好ましく、電気伝導度、空気中での安定性及び耐熱性に優れたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が最も好ましい。
また、導電性高分子を用いる際により高い電気伝導度を発現する目的で、ドーパントと呼ばれるドーピング剤を併用することができる。前記導電性高分子に用いることができるドーパントとしては、公知のドーパントを用いることができ、導電性高分子の種類に応じ、ハロゲン類(臭素、ヨウ素、塩素等)、ルイス酸(BF3、PF5等)、プロトン酸(HNO3、H2SO4等)、遷移金属ハライド(FeCl3、MoCl5等)、アルカリ金属(Li、Na等)、有機物質(アミノ酸、核酸、界面活性剤、色素、アルキルアンモニウムイオン、クロラニル、テトラシアノエチレン(TCNE)、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等)等が例示できる。導電性高分子自体にドーピング効果を持つ自己ドープ型導電性高分子であってもよい。また、ポリチオフェン類を用いる場合、ドーパントとしてはポリスチレンスルホン酸を用いることが好ましい。
また、本発明に用いることができる導電性高分子は、その使用時において、可視光域における透過率が高いものが好ましい。なお、透過率は、波長550nmにおいて60〜98%であることが好ましく、70〜95%であることがより好ましく、80〜93%であることがさらに好ましい。導電性高分子自体の透過率が上記範囲であると、ディスプレイ等の用途に好適に用いることができる。
ここで、本発明において、可視光域とは400〜700nmである。なお、透過率の測定は、分光光度計により測定することができる。
本発明のエッチング液の溶媒としては、前記セリウム塩を溶解でき、エッチング処理に影響のない媒体であれば、特に制限はないが、水であることが好ましい。また、溶媒として、水と無機酸を混合して用いることも好ましい。
Ce(NO3)4を用いる場合、使用直前に合成し、エッチング液に用いることが好ましい。Ce(NO3)4の合成方法としては、公知の方法により合成することができるが、例えば、イオン交換水中に水酸化セリウム及び硝酸を加えて加熱し合成する方法が挙げられる。また、Ce(NO3)4を用いる場合、当該安定剤としてHNO3を用いることが好ましい。
また、当該溶解度の一例として、HNO3水溶液を用いた場合の各温度における(NH4)2Ce(NO3)6の飽和濃度を測定した。結果を下記表1及び2に示す。
本発明のエッチング液を使用する際のエッチング時間は、0.2〜30分間が好ましく、0.3〜25分間がより好ましく、0.4〜15分間が更に好ましい。本発明のエッチング液において、上記範囲のエッチング時間であるとエッチング処理において基板等に与えるダメージが少ないので好ましい。
本発明のエッチング液を用いるパターニング方法は浸漬法とスプレー法どちらでも使用可能である。
本発明のエッチング液の濃度の制御は、酸化還元電位、pH、電気伝導度、又は比重などを、あるいはこれらを組み合わせることで可能である。
ポジ型は液体のレジストが多くディスプレイではLCD等の線幅が数μmオーダーのエッチングに用いられる。
ネガ型はドライフィルムレジストが多く、ディスプレイではPDP(プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel))等の線幅が数十μmオーダーのエッチングに用いられる。
ポジ型とネガ型どちらのレジストも本発明において使用可能なので、目的とするパターンの精細度によってポジ型とネガ型を選べばよい。
フォトレジストとしては、アルカリを用いて除去することの可能なレジストであることが好ましく、液体のレジストであることがより好ましい。
従って、高分子有機ELディスプレイに代表されるディスプレイの表示画素部分の導電性高分子及び周辺回路と導電性高分子の接続部分のパターニング、タッチパネルの検出部分の導電性高分子及び周辺回路と導電性高分子の接続部分のパターニング、コンデンサー製造時に不要部分に付着した導電性高分子の除去などといったエッチングの必要な用途において導電性高分子の利用を促進することが期待できる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)シートの表面に導電性高分子としてBAYTRON F E(商品名、スタルク株式会社製、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)含有)を用いて50nm程度の薄膜を作製したものをテスト基板(B)とした。
ドライフィルムレジスト製品名ORDYL LF525(東京応化工業(株)製)を、ラミネーターを用いてテスト基板(B)に貼り付け、テスト基板(C)を得た。ドライフィルムレジストを貼り付けた前述のテスト基板(C)に、型枠式真空露光機を用いてマスターパターンを密着させながら紫外線を照射して露光し、テスト基板(D)を得た。1%Na2CO3水溶液を現像液として、30℃に調節しながら露光済みのテスト基板(D)にスプレー圧力1MPaで噴霧し、現像し、テスト基板(E)を得た。
現像済みのテスト基板(E)を水洗後、(NH4)2Ce(NO3)6の水溶液の濃度を20%としたもの(液温30℃)で浸漬してエッチングを行い。テスト基板(F)を得た。なお、このエッチングは、最長30分間行った。
3%NaOH水溶液を液温30℃に調節しながらエッチング済みのテスト基板(F)を2分間浸漬しドライフィルムレジストを剥離し、テスト基板(G)を得た。
ドライフィルムレジストを剥離したテスト基板(G)を水洗し、エアーを吹き付けてテスト基板を乾燥した。
ここで、エッチング所要時間を次のように定義し、エッチング所要時間を評価した。即ち、基板上の導電性高分子のエッチング残りが無くなるのに必要なエッチング液への浸漬時間をエッチング所要時間とした。この結果を表3に記載した。なお、ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
(NH4)2Ce(NO3)6の水溶液の濃度を10%(実施例2)、5%(実施例3)、2%(実施例4)、1%(実施例5)、又は、0.5%(比較例1)とした以外は実施例1と同様にエッチング処理を行い、これらの結果を表3に記載した。なお、ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
表3〜表7におけるエッチング所要時間の判定基準は、エッチングを開始してから、ドライフィルムレジストを除去した部分の導電性高分子のエッチング残りが無く、基板のPETが露出している状態となるまでの時間を測定し、その時間により以下のような評価とした。
×:30分以上
△:5分以上30分未満
○:1分以上5分未満
◎:1分未満
(NH4)2Ce(NO3)6を10.0%とHNO3を1.0%としたエッチング液100gを用いて、実施例1と同様な方法で調製直後のエッチング液を使用したエッチング所要時間の判定した。また、該エッチング液の液温を30℃に保ったまま72時間放置し、72時間放置後にエッチング液からの析出物の有無を目視で確認した。この結果を表4に記載した。
この72時間後のエッチング液を用いて実施例1と同様に処理した結果、導電性高分子に対してエッチングすることができた。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
エッチング液の組成を(NH4)2Ce(NO3)6を10.0%とHClO4を1.0%とした以外は実施例6と同じ方法を用い、調製直後のエッチング液を使用したエッチング所要時間の評価、及び、エッチング液からの析出物の有無を目視で確認した。この結果を表4に記載した。
また、エッチング液からの析出物の有無を確認した72時間放置後のエッチング液を用いて実施例1と同様に処理した結果、導電性高分子に対してエッチングすることができた。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
エッチング液の組成を表4に記載の濃度とした以外は実施例6と同じ方法を用い、エッチング液からの析出物の有無を目視で確認した。この結果を表4に記載した。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、っsエッチングによる基板の変化も認められなかった。
なお、以下の表4中における「−」は、測定していないことを表す。
表4及び表6のエッチング液安定性の判定基準は、エッチング液100gの液温を30℃に保ったまま72時間放置し、放置後にエッチング液からの析出物の有無を目視で確認し、以下の評価とした。
×:多量の析出あり
△:微量の析出あり
○:析出なし
表5に記載の濃度のCe(SO4)2を用いた以外は実施例1と同じ方法を用い、エッチング所要時間を求めた。この結果を表5に記載した。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
表6に記載したCe(SO4)2の濃度と硫酸又は硝酸の溶液を用いた以外は実施例6と同じ方法を用い、調製直後のエッチング液を使用したエッチング所要時間の評価、及び、エッチング液からの析出物の有無を目視で確認した。この結果を表6に記載した。
また、エッチング液からの析出物の有無を確認した72時間放置後のエッチング液を用いて実施例1と同様に処理した結果を表6に示す。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
表7に記載の濃度のエッチング成分、及び、表7に記載の導電性高分子を用いた以外は実施例1と同じ方法を用い、エッチング所要時間を求めた。この結果を表7に記載した。
ドライフィルムレジストで覆われていた導電性高分子の表面は、エッチングによる変化が認められなかった。また、エッチングによる基板の変化も認められなかった。
B 透明基板に導電性高分子膜を取付けた概念図
C 導電性高分子膜の上にレジストを塗布したものの概念図
D 回路パターンに従ってレジストを露光した概念図
E 露光したレジストを除去した後の概念図
F 本発明のエッチング剤を用いて導電性高分子膜をエッチングした後の概念図
G レジストを除去して導電性高分子を用いた回路図が完成した概念図
1 透明基板
2 導電性高分子膜
3 レジスト
4 露光したレジスト
Claims (10)
- 0.5重量%を超え70重量%以下の(NH4)2Ce(NO3)6、又は、
0.5重量%以上30重量%以下のCe(SO4)2を含むことを特徴とする
導電性高分子用エッチング液。 - (NH4)2Ce(NO3)6を含み、0.1重量%を超え70重量%以下の硝酸を含む請求項1に記載の導電性高分子用エッチング液。
- (NH4)2Ce(NO3)6を含み、0.1重量%を超え60重量%以下のHClO4を含む請求項1に記載の導電性高分子用エッチング液。
- Ce(SO4)2を含み、0.1重量%を超え70重量%以下の硝酸を含む請求項1に記載の導電性高分子用エッチング液。
- Ce(SO4)2を含み、0.1重量%を超え40重量%以下の硫酸を含む請求項1に記載の導電性高分子用エッチング液。
- 導電性高分子が、ポリアセチレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリフェニレン類、ポリチエニレンビニレン類、ポリフルオレン類、ポリアセン類、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類である請求項1〜5のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液。
- 導電性高分子が、ポリアニリン類、ポリピロール類又はポリチオフェン類である請求項6に記載の導電性高分子用エッチング液。
- 導電性高分子が、ポリアニリン類又はポリチオフェン類である請求項7に記載の導電性高分子用エッチング液。
- 導電性高分子がポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である請求項1〜8のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液。
- 請求項1〜9のいずれか1つに記載の導電性高分子用エッチング液を用いて導電性高分子をパターニングする方法。
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