JP5079728B2 - 封止部材抜け止め構造 - Google Patents
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Description
一般的に、入出力軸等の回転部の潤滑油漏れを防止するための部材として、オイルシールが用いられる。オイルシールは減速機のハウジングや歯車箱の回転部に固定される。また、回転部以外の箇所には、シールキャップを用いることで減速機外部への潤滑油漏れを防止している。
1.ギアの回転と潤滑油の攪拌による発熱に伴い、封止部材の外周部が熱により軟化する。
2.ハウジングやシールサポータの封止部材取付け部が膨張し、寸法が増大する。
3.軟化した封止部材は、減速機内部の圧力が上昇することで、ハウジングやシールサポータ内周部との緊迫力を失う。
特許文献2乃至4の考案及び発明は、ハウジングに設けた溝にオイルシールの外周面に形成した環状突起を係合させる、オイルシール抜け止め構造を開示している。
さらに、特許文献2乃至4の考案及び発明は、それぞれオイルシールの外周面に環状突起を形成する必要があり、オイルシールを補強する部材をハウジングに形成された係止溝に対応させるために外側に折り曲げなければならない等、オイルシールの抜け止めを実現するために、コストや工数が多くかかる、という問題を抱えている。
また、この方法では、抜け止め効果を高めるために、減速機のハウジングの嵌め合い部に粗さを出すが、ハウジングがアルミ、チタン等の軽合金製の場合、軟質であるため、加工上、粗さを出すのに工数がかかる、という問題があった。
前記ハウジング又はシールサポータの内周部の周方向に溝が形成され、該溝には弾性接着剤が塗布され、
前記封止部材の前記溝に対応する部分が、前記圧入による圧力から解放され、前記弾性接着剤に接着されていることを特徴とする封止部材抜け止め構造により前記課題を解決した。
なお、請求項2のように、前記溝の断面形状は用途に合わせて、四角形、直角三角形、二等辺三角形、又は半円にしてよい。
また、請求項3のように、前記溝は、周方向に連続したものに限られず、断続したものであってもよい。
さらに、請求項4のように、前記溝は、軸方向に間隔をおいて複数形成してもよい。
従って、溝への弾性接着剤の塗布は、下記3つの効果を有する。
1.封止部材圧入時に、溝のエッジ部分と接触することが原因で、封止部材に傷がつくことを防止することができる。
2.弾性接着剤の接着性により、封止部材の固定保持力を向上させることができる。
3.弾性接着剤は、空気に触れるとゴム状弾性体に硬化するため、シーリング材としての性能を有し、潤滑油漏れ防止効果を高めることができる。
図1の(a)は、ハウジングに溝を設けた減速機の回転軸にオイルシールを配設する前の減速機の縦断面図、図1の(b)は、ハウジングに溝を設けた減速機の回転軸にオイルシールを配設した後の減速機の縦断面図、図2の(a)は、シールサポータに溝を設けた減速機にシールキャップを配設する前の減速機の縦断面図、図2の(b)は、シールサポータに溝を設けた減速機にシールキャップを配設した後の減速機の縦断面図である。
なお、図1の(a)及び図2の(a)は、オイルシール及びシールキャップが「圧入」されることを分かり易くするために、オイルシール及びシールキャップの大きさを誇張して描いている。
ハウジング62には、深さ0.5mm〜0.8mmの溝14が設けられる。溝14の内周部には、弾性接着剤12が塗布される。弾性接着剤12には、市販されているシリコーン系液状ガスケットが用いられる。オイルシール10の圧入部には、0.3mm〜0.5mmの締め代があるため、図1(a)に示す矢印方向に圧入されると、ハウジング62からの圧力を受ける。しかし、溝14におけるオイルシール10の外周部分は、圧力から解放されるため、弾性復元力により、図1(b)に示すとおり、溝14内で弾性接着剤12に接触するように膨らむ。これにより、オイルシール10が溝14の部分でしっかりと固定されることになり、オイルシール10とハウジング62との固定が強化される。
また、弾性接着剤12は、接着性を有するとともに、硬化前は液状であるため、溝14内周部にまんべんなく充填され、オイルシール12と溝14の間からの潤滑油漏れを防止する。硬化後は、ゴム状弾性体を形成するため、水密性、気密性、接着性、追従性、耐久性、耐振動性、耐衝撃性及び耐熱性に優れたシーリング材としての役割を果たす。従って、弾性接着剤12を溝14に塗布することで、その接着性により、オイルシール10とハウジング62との固定が強化され、シーリング材としての役割により、潤滑油漏れ防止効果を高めることができる。
なお、弾性接着剤12の量は、溝14の半分程度にするのが好適である。弾性接着剤12の量を溝14の半分程度にすることで、オイルシール10とハウジング62を接着させる機能及び潤滑油漏れ防止効果を高めるシール機能の両方を果たさせることができる。
また、図示は省略するが、ハウジング内周部の溝14は、ハウジング又はシールサポータの円筒状内周部に沿って連続した形状ではなく、断続して設けてもよく、また、軸方向に、間隔をおいて複数設けてもよい。溝14を複数設けることで、封止部材とハウジング又はシールサポータの引っかかりが増えるため、封止部材がより抜けにくくなる。
このように、溝14の数や形状は、所望の機能に応じて、適宜決めればよい。
図2に示すように、本発明は、オイルシール使用箇所だけではなく、シールキャップ使用箇所にも利用できる。また、溝はハウジングではなく、シールサポータに設けてもよい。
シールキャップ20は、ギアボックス等、加工の都合上設けた孔部からの潤滑油漏れ防止及び外部からの異物侵入を防止するための密封用蓋であり、減速機の回転軸以外の箇所に用いられる。
シールキャップ20の外周部は、ゴム製のため、図2(a)に示す矢印方向に圧入されると、オイルシールを圧入した場合と同様にシールサポータ70からの圧力を受けるが、溝14に達すると圧力から解放され、図2(b)に示すとおり、ゴムの弾性により、溝14内の弾性接着剤12に接するように膨らむ。これにより、シールキャップ20と溝14に固定され、シールキャップ20の抜け止めを実現することができる。
シールサポータ70に塗布する弾性接着剤12にも、市販されているシリコーン系液状ガスケットを使用すればよい。また、溝14に塗布する弾性接着剤12の量は、オイルシールを圧入した場合と同様に、溝14の半分程度にするのが好適である。
また、溝の形状は、用途に合わせて直角三角形、二等辺三角形又は半円にしてもよい。
さらに、溝はハウジング又はシールサポータの円筒状内周部に沿って断続して複数設けてもよく、軸方向に間隔をおいて設けてもよい。溝を複数設けることで、封止部材とハウジング又はシールサポータの引っかかりが増え、封止部材がより抜けにくくなる上、溝を隙間なく形成する必要がないため、工数及びコストをかけずに、簡単な方法で、封止部材の抜け防止を強化することができる。
12 弾性接着剤
14 溝
20 封止部材(シールキャップ)
62 ハウジング
70 シールサポータ
Claims (4)
- ハウジング内に潤滑油が封入され、前記ハウジング又はシールサポータに封止部材が圧入された減速機において、
前記ハウジング又はシールサポータの内周部の周方向に溝が形成され、該溝には弾性接着剤が塗布され、
前記封止部材の前記溝に対応する部分が、前記圧入による圧力から解放され、前記弾性接着剤に接着されていることを特徴とする、
封止部材抜け止め構造。 - 前記溝の軸方向断面が四角形、直角三角形、二等辺三角形、又は半円である、請求項1の封止部材抜け止め構造。
- 前記溝が周方向に断続して2箇所以上形成された、請求項1又は2の封止部材抜け止め構造。
- 前記溝が軸方向に2箇所以上間隔を置いて形成された、請求項1から3いずれかの封止部材抜け止め構造。
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