JP2004332856A - シール付きシェル型針状ころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用できるものとする。
【解決手段】両端に平板状で内向きのフランジ1a,1aを有するシェル型の外輪1と、複数個の針状のころ2…と、保持器3と、ゴム状シール部材4とを備える。ゴム状シール部材4は、外輪1のフランジ1aに直接に貼付けられたものであって、内周にシールリップ4aを有する。シールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくする。
【選択図】 図1
【解決手段】両端に平板状で内向きのフランジ1a,1aを有するシェル型の外輪1と、複数個の針状のころ2…と、保持器3と、ゴム状シール部材4とを備える。ゴム状シール部材4は、外輪1のフランジ1aに直接に貼付けられたものであって、内周にシールリップ4aを有する。シールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、産業機械一般向け、特にトナーを使用する複写機等のように粉塵の侵入防止が必要な用途や、グリース漏れ防止、防水対策が必要な用途、二輪車のサスペンション支持部等に用いられるシール付きシェル型針状ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シェル型針状ころ軸受において、シール機能が必要な場合、一般的には図3に示すように、軸受20に対してシール24を外付けで使用している(例えば特許文献1)。軸受20は、両端に内向きのフランジ21aを有するシェル型の外輪21と、針状のころ22と、保持器23とでなる。シール24は、芯金24aとゴム部材24bとでなる。シール24は、外輪21のフランジ面に沿わせて配置し、軸受20とこの軸受20の固定用の取付リング27との間に挟み込んで固定する。
しかし、外付けのシール24を用いると、シール幅Eおよび取付リング幅Fが必要で、コンパクト化の阻害要因となる。また、シール24は、芯金24aを有するものであるため、高価になる。さらに、外付けのシール24によって部品点数および組立工数が増える。
【0003】
この他の従来例として、次のようなものがある。例えば、シールを外輪に一体化させた従来例としては、シールの芯金を外輪の端部外径面に嵌合させるもの(特許文献2)や、シールを外輪の端部内径面に嵌合させたもの(特許文献3)がある。また、ころ端面にボス状部のある針状ころを、外輪の異形状のフランジ部で落ち止めした針状ころ軸受では、外輪フランジ部の外面内周部に生じたリング状部分を利用してゴム製のシールを一体に固着したものも提案されている(例えば特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
実公昭53−23874号公報
【特許文献2】
実公昭38−18112号公報
【特許文献3】
実開昭56−156631号公報
【特許文献4】
特公昭43−9485号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シール芯金を外輪外径面に嵌合させるものは、シールに芯金が必要でコスト減とならず、また外輪外径面にシール芯金が突出しないように円周状の凹み部分が必要で、外輪の加工が煩雑になる。
シールを外輪の端部内径面に嵌合させるものは、嵌合によってシールを取付けるために、シール外径部の幅をある程度広くする必要があり、全体幅をあまり狭めることができない。
外輪の異形状のフランジ部にゴム製のシールを一体に固着するものは、シールを設けることに対するコストの削減が図れ、またシールによる幅方向寸法の広がりが回避できるが、ころ端面にボス部のある形式の針状ころ軸受での適用に限定される。
【0006】
この発明の目的は、シールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用できるシール付きシェル型針状ころ軸受を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受は、両端に平板状の内向きのフランジを有するシェル型の外輪と、この外輪の転走面と上記外輪に挿通される軸の外径面との間に介在する複数個の針状のころと、これら複数のころを保持する保持器と、上記フランジに直接に貼付けられて内周にシールリップを有し、このシールリップの内径寸法が上記軸の外径寸法より小さくされた環状のゴム状シール部材とを備える。
この構成によると、ゴム状シール部材が外輪のフランジに直接に貼付けられているため、従来の別体シールや外輪内径面に嵌合させるシールの場合のような広い幅方向寸法が不要で、コンパクトな軸支持部設計が可能になる。また、シールに芯金が不要で、コストが削減できる。ゴム状シール部材のシールリップの内径寸法は軸外径寸法より小さくして締め代を持たせたので、防塵性、防水性、グリース漏れ防止性が確保できる。外輪のフランジは平坦面状であるため、一般的なころ形状の針状ころ軸受に適用できる。
【0008】
上記ゴム状シール部材は、上記フランジの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部と、上記フランジの内径面に沿う環状突部と、上記シールリップとでなるものであっても良い。
ゴム状シール部材をこの形状にすると、ゴム状シール部材のフランジに対する固着が確実となる。外面覆い部は、膜状で薄いため、外輪を軸方向に挟み付けてハウジングに固定する場合に、挟み付け力による上記外面覆い部の変形が少なく、変形による緩みがなくて堅固に固定できる。また、ゴム状シール部材にフランジの内径面に沿う環状突部があるため、ゴム状シール部材が薄くてもシールリップの基端をある程度の剛性で支持でき、シールリップの撓み過ぎを回避して接触シール性能の確保が図れる。
【0009】
シールリップは、この軸受の軸へ軸受設置状態で、先端が外輪のフランジよりも軸方向の外側へ突出するものであっても良い。
シールリップが内側へ撓むものであると、保持器との干渉が問題となるが、外側に突出するものとすると、このような干渉の問題が避けられる。外側へ突出しても、軸受外輪を取付リングで止め付けるような場合、その取付リングの厚み内に収まるようにでき、軸支持部の実質的な広がりの問題が生じない。
【0010】
この発明において、上記ゴム状シール部材のシールリップにスリットを設けても良い。スリットを設けると、シール内外の気圧差が解消され、気圧差でシールリップが軸表面に吸着されることが防止され、軸の回転トルクが軽減される。スリットを設ける場合に、ゴム状シール部材に上記環状突部があると、スリットから裂け目が進むことが防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。このころ軸受Aは、両端に内向きのフランジ1a,1aを有するシェル型外輪1と、この外輪1の転走面1bと外輪1に挿通される軸5の外径面5aとの間に介在する複数個の針状のころ2…と、これら複数のころ2…を保持する保持器3と、環状のゴム状シール部材4とよりなる。ゴム状シール部材4は、外輪1のフランジ1a,1aの外面に直接に貼付けられる。ゴム状シール部材4は、外輪1の軸方向の片側だけに設けても良いが、この例では両側に設けている。このゴム状シール部材4は、軸5の外径面5aに弾性的に摺接するシールリップ4aを内周に有しており、シールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくして締代を持たせている。ゴム状シール部材4は、フランジ1aの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部4bと、この外面覆い部4bの内径側端から軸方向に突出してフランジ1aの内径面に沿う環状突部4cとを有し、シールリップ4aは外面覆い部4bの内径側端からさらに内径側へ延びている。また、シールリップ4aは、自然状態においても、先端が軸受軸方向の外側へ突出するように斜めに延びている。傾斜の程度は、シールリップ4aが軸5に接した状態で、先端が取付リング7よりも軸受Aと反対側へ突出しない範囲とされる。
【0012】
シェル型外輪1は、ステンレス鋼、低炭素鋼等の金属材を成形加工して得られる。上記ゴム状シール部材4に採用されるゴム材としては、使用環境温度に応じて適宜採択され、例えば120℃まではニトリルゴムが、それ以上ではフッ素系ゴム材が望ましく採用される。ゴム状シール部材4のフランジ1aに対する貼付けは、フランジ1aの表面を酸洗いして脱脂した後、接着剤により接着するか、加硫接着(ゴム状シール部材を成形して加硫する時に、金型に接着剤を入れておき、接着させること)するか、あるいは加熱融着することによってなされる。この加熱融着や加硫接着は、焼着とも呼ばれる。この後、剃刀のような鋭利なカッターで、シールリップ4a部に、その内周縁部から放射状に複数のスリット4d…を切込み形成する(図2参照)。
【0013】
外輪1に対するころ2の組み込みは、ゴム状シール部材4を誤って傷付けることを防止するために、外輪1の内径側から組み込むことが好ましい。
この軸受Aのハウジング6への取付けは、例えば図1に示すように、ハウジング6の内径面に圧入し、ハウジング6の段部6aに外輪1の一端が当たるまで入れた後、ハウジング6の内径面の止め環溝8に取付リング7を嵌め込み、軸受Aが軸方向にずれないように取付リング7で固定する。このように取付けられた軸受A内に軸5を挿入する。
【0014】
この構成のシール付きシェル型針状ころ軸受Aによると、ゴム状シール部材4が外輪1のフランジ1aに直接に貼付けられているため、従来の別体シールや外輪内径面に嵌合させるシールの場合のような広い幅方向寸法が不要で、コンパクトな軸支持部設計が可能になる。また、ゴム状シール部材4に芯金が不要で、コストが削減できる。ゴム状シール部材4のシールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくして締め代を持たせたので、防塵性、防水性、グリース漏れ防止性が確保できる。外輪1のフランジ1aは平坦面状であるため、ころ端面にボス部を有するような特殊形式のころではなく、一般的なころ形状の針状ころ軸受に適用できる。
【0015】
ゴム状シール部材4は、フランジ1aの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部4bと、フランジ1aの内径面に沿う環状突部4cとを有するため、広い外面覆い部4bで固着できて、フランジ1aに対する固着が確実となる。外面覆い部4bは膜状で薄いため、外輪1を軸方向に挟み付けてハウジング6に固定する場合に、挟み付け力による上記外面覆い部4bの変形が少なく、変形による緩みがなくて堅固に固定できる。また、ゴム状シール部材4にフランジ1aの内径面に沿う環状突部4cがあるため、ゴム状シール部材4が薄くてもシールリップ4aの基端をある程度の剛性で支持でき、いわゆる腰が得られ、シールリップ4aの撓み過ぎを回避して接触シール性能の確保が行える。
シールリップ4aは、軸受設置状態で、先端が外輪1のフランジ1aよりも軸方向の外側へ突出するため、保持器3と干渉して保持器3の回転を妨げることがない。外側へ突出しても、軸受外輪1を取付リング7で止め付けるような場合、その取付リング7の厚み内に収まるようにでき、軸支持部の実質的な広がりの問題が生じない。
【0016】
また、ゴム状シール部材4はシールリップ4aにスリット4dを設けたため、軸受内外の気圧差が解消され、気圧差でシールリップ4aが軸表面に吸着されることが防止されて、軸5の回転トルクが軽減される。スリット4dが設けられていても、ゴム状シール部材4に上記環状突部4cがあると、スリット4dから裂け目が進むことが防止される。
【0017】
このシール付きシェル型針状ころ軸受は、このようにシールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用でき、シール性も優れるため、複写機のようにトナー等の粉塵の汚染環境にある機構部や、二輪車等のサスペンション支持部のように塵埃や水等が接触し易い環境下での使用に好適である。
【0018】
【発明の効果】
この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受は、両端に平板状の内向きのフランジを有するシェル型の外輪と、この外輪の転走面と上記外輪に挿通される軸の外径面との間に介在する複数個の針状のころと、これら複数のころを保持する保持器と、上記フランジに直接に貼付けられて内周にシールリップを有し、このシールリップの内径寸法が上記軸の外径寸法より小さくされた環状のゴム状シール部材とを備えるため、シールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受を設置状態を示す断面図、およびその一部の拡大図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1…シェル型外輪
1a…フランジ
1b…転走面
2…針状のころ
3…保持器
4…ゴム状シール部材
4a…シールリップ
4b…外面覆い部
4c…環状突部
4d…スリット
5…軸
5a…外径面
【発明の属する技術分野】
この発明は、産業機械一般向け、特にトナーを使用する複写機等のように粉塵の侵入防止が必要な用途や、グリース漏れ防止、防水対策が必要な用途、二輪車のサスペンション支持部等に用いられるシール付きシェル型針状ころ軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シェル型針状ころ軸受において、シール機能が必要な場合、一般的には図3に示すように、軸受20に対してシール24を外付けで使用している(例えば特許文献1)。軸受20は、両端に内向きのフランジ21aを有するシェル型の外輪21と、針状のころ22と、保持器23とでなる。シール24は、芯金24aとゴム部材24bとでなる。シール24は、外輪21のフランジ面に沿わせて配置し、軸受20とこの軸受20の固定用の取付リング27との間に挟み込んで固定する。
しかし、外付けのシール24を用いると、シール幅Eおよび取付リング幅Fが必要で、コンパクト化の阻害要因となる。また、シール24は、芯金24aを有するものであるため、高価になる。さらに、外付けのシール24によって部品点数および組立工数が増える。
【0003】
この他の従来例として、次のようなものがある。例えば、シールを外輪に一体化させた従来例としては、シールの芯金を外輪の端部外径面に嵌合させるもの(特許文献2)や、シールを外輪の端部内径面に嵌合させたもの(特許文献3)がある。また、ころ端面にボス状部のある針状ころを、外輪の異形状のフランジ部で落ち止めした針状ころ軸受では、外輪フランジ部の外面内周部に生じたリング状部分を利用してゴム製のシールを一体に固着したものも提案されている(例えば特許文献4)。
【0004】
【特許文献1】
実公昭53−23874号公報
【特許文献2】
実公昭38−18112号公報
【特許文献3】
実開昭56−156631号公報
【特許文献4】
特公昭43−9485号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、シール芯金を外輪外径面に嵌合させるものは、シールに芯金が必要でコスト減とならず、また外輪外径面にシール芯金が突出しないように円周状の凹み部分が必要で、外輪の加工が煩雑になる。
シールを外輪の端部内径面に嵌合させるものは、嵌合によってシールを取付けるために、シール外径部の幅をある程度広くする必要があり、全体幅をあまり狭めることができない。
外輪の異形状のフランジ部にゴム製のシールを一体に固着するものは、シールを設けることに対するコストの削減が図れ、またシールによる幅方向寸法の広がりが回避できるが、ころ端面にボス部のある形式の針状ころ軸受での適用に限定される。
【0006】
この発明の目的は、シールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用できるシール付きシェル型針状ころ軸受を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受は、両端に平板状の内向きのフランジを有するシェル型の外輪と、この外輪の転走面と上記外輪に挿通される軸の外径面との間に介在する複数個の針状のころと、これら複数のころを保持する保持器と、上記フランジに直接に貼付けられて内周にシールリップを有し、このシールリップの内径寸法が上記軸の外径寸法より小さくされた環状のゴム状シール部材とを備える。
この構成によると、ゴム状シール部材が外輪のフランジに直接に貼付けられているため、従来の別体シールや外輪内径面に嵌合させるシールの場合のような広い幅方向寸法が不要で、コンパクトな軸支持部設計が可能になる。また、シールに芯金が不要で、コストが削減できる。ゴム状シール部材のシールリップの内径寸法は軸外径寸法より小さくして締め代を持たせたので、防塵性、防水性、グリース漏れ防止性が確保できる。外輪のフランジは平坦面状であるため、一般的なころ形状の針状ころ軸受に適用できる。
【0008】
上記ゴム状シール部材は、上記フランジの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部と、上記フランジの内径面に沿う環状突部と、上記シールリップとでなるものであっても良い。
ゴム状シール部材をこの形状にすると、ゴム状シール部材のフランジに対する固着が確実となる。外面覆い部は、膜状で薄いため、外輪を軸方向に挟み付けてハウジングに固定する場合に、挟み付け力による上記外面覆い部の変形が少なく、変形による緩みがなくて堅固に固定できる。また、ゴム状シール部材にフランジの内径面に沿う環状突部があるため、ゴム状シール部材が薄くてもシールリップの基端をある程度の剛性で支持でき、シールリップの撓み過ぎを回避して接触シール性能の確保が図れる。
【0009】
シールリップは、この軸受の軸へ軸受設置状態で、先端が外輪のフランジよりも軸方向の外側へ突出するものであっても良い。
シールリップが内側へ撓むものであると、保持器との干渉が問題となるが、外側に突出するものとすると、このような干渉の問題が避けられる。外側へ突出しても、軸受外輪を取付リングで止め付けるような場合、その取付リングの厚み内に収まるようにでき、軸支持部の実質的な広がりの問題が生じない。
【0010】
この発明において、上記ゴム状シール部材のシールリップにスリットを設けても良い。スリットを設けると、シール内外の気圧差が解消され、気圧差でシールリップが軸表面に吸着されることが防止され、軸の回転トルクが軽減される。スリットを設ける場合に、ゴム状シール部材に上記環状突部があると、スリットから裂け目が進むことが防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。このころ軸受Aは、両端に内向きのフランジ1a,1aを有するシェル型外輪1と、この外輪1の転走面1bと外輪1に挿通される軸5の外径面5aとの間に介在する複数個の針状のころ2…と、これら複数のころ2…を保持する保持器3と、環状のゴム状シール部材4とよりなる。ゴム状シール部材4は、外輪1のフランジ1a,1aの外面に直接に貼付けられる。ゴム状シール部材4は、外輪1の軸方向の片側だけに設けても良いが、この例では両側に設けている。このゴム状シール部材4は、軸5の外径面5aに弾性的に摺接するシールリップ4aを内周に有しており、シールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくして締代を持たせている。ゴム状シール部材4は、フランジ1aの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部4bと、この外面覆い部4bの内径側端から軸方向に突出してフランジ1aの内径面に沿う環状突部4cとを有し、シールリップ4aは外面覆い部4bの内径側端からさらに内径側へ延びている。また、シールリップ4aは、自然状態においても、先端が軸受軸方向の外側へ突出するように斜めに延びている。傾斜の程度は、シールリップ4aが軸5に接した状態で、先端が取付リング7よりも軸受Aと反対側へ突出しない範囲とされる。
【0012】
シェル型外輪1は、ステンレス鋼、低炭素鋼等の金属材を成形加工して得られる。上記ゴム状シール部材4に採用されるゴム材としては、使用環境温度に応じて適宜採択され、例えば120℃まではニトリルゴムが、それ以上ではフッ素系ゴム材が望ましく採用される。ゴム状シール部材4のフランジ1aに対する貼付けは、フランジ1aの表面を酸洗いして脱脂した後、接着剤により接着するか、加硫接着(ゴム状シール部材を成形して加硫する時に、金型に接着剤を入れておき、接着させること)するか、あるいは加熱融着することによってなされる。この加熱融着や加硫接着は、焼着とも呼ばれる。この後、剃刀のような鋭利なカッターで、シールリップ4a部に、その内周縁部から放射状に複数のスリット4d…を切込み形成する(図2参照)。
【0013】
外輪1に対するころ2の組み込みは、ゴム状シール部材4を誤って傷付けることを防止するために、外輪1の内径側から組み込むことが好ましい。
この軸受Aのハウジング6への取付けは、例えば図1に示すように、ハウジング6の内径面に圧入し、ハウジング6の段部6aに外輪1の一端が当たるまで入れた後、ハウジング6の内径面の止め環溝8に取付リング7を嵌め込み、軸受Aが軸方向にずれないように取付リング7で固定する。このように取付けられた軸受A内に軸5を挿入する。
【0014】
この構成のシール付きシェル型針状ころ軸受Aによると、ゴム状シール部材4が外輪1のフランジ1aに直接に貼付けられているため、従来の別体シールや外輪内径面に嵌合させるシールの場合のような広い幅方向寸法が不要で、コンパクトな軸支持部設計が可能になる。また、ゴム状シール部材4に芯金が不要で、コストが削減できる。ゴム状シール部材4のシールリップ4aの内径寸法は軸5の外径寸法より小さくして締め代を持たせたので、防塵性、防水性、グリース漏れ防止性が確保できる。外輪1のフランジ1aは平坦面状であるため、ころ端面にボス部を有するような特殊形式のころではなく、一般的なころ形状の針状ころ軸受に適用できる。
【0015】
ゴム状シール部材4は、フランジ1aの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部4bと、フランジ1aの内径面に沿う環状突部4cとを有するため、広い外面覆い部4bで固着できて、フランジ1aに対する固着が確実となる。外面覆い部4bは膜状で薄いため、外輪1を軸方向に挟み付けてハウジング6に固定する場合に、挟み付け力による上記外面覆い部4bの変形が少なく、変形による緩みがなくて堅固に固定できる。また、ゴム状シール部材4にフランジ1aの内径面に沿う環状突部4cがあるため、ゴム状シール部材4が薄くてもシールリップ4aの基端をある程度の剛性で支持でき、いわゆる腰が得られ、シールリップ4aの撓み過ぎを回避して接触シール性能の確保が行える。
シールリップ4aは、軸受設置状態で、先端が外輪1のフランジ1aよりも軸方向の外側へ突出するため、保持器3と干渉して保持器3の回転を妨げることがない。外側へ突出しても、軸受外輪1を取付リング7で止め付けるような場合、その取付リング7の厚み内に収まるようにでき、軸支持部の実質的な広がりの問題が生じない。
【0016】
また、ゴム状シール部材4はシールリップ4aにスリット4dを設けたため、軸受内外の気圧差が解消され、気圧差でシールリップ4aが軸表面に吸着されることが防止されて、軸5の回転トルクが軽減される。スリット4dが設けられていても、ゴム状シール部材4に上記環状突部4cがあると、スリット4dから裂け目が進むことが防止される。
【0017】
このシール付きシェル型針状ころ軸受は、このようにシールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用でき、シール性も優れるため、複写機のようにトナー等の粉塵の汚染環境にある機構部や、二輪車等のサスペンション支持部のように塵埃や水等が接触し易い環境下での使用に好適である。
【0018】
【発明の効果】
この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受は、両端に平板状の内向きのフランジを有するシェル型の外輪と、この外輪の転走面と上記外輪に挿通される軸の外径面との間に介在する複数個の針状のころと、これら複数のころを保持する保持器と、上記フランジに直接に貼付けられて内周にシールリップを有し、このシールリップの内径寸法が上記軸の外径寸法より小さくされた環状のゴム状シール部材とを備えるため、シールによる幅方向寸法の広がりがなくて、軸受設置部のコンパクト化が図れ、またコストが低減でき、かつ一般的なころ形状の軸受に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のシール付きシェル型針状ころ軸受を設置状態を示す断面図、およびその一部の拡大図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
1…シェル型外輪
1a…フランジ
1b…転走面
2…針状のころ
3…保持器
4…ゴム状シール部材
4a…シールリップ
4b…外面覆い部
4c…環状突部
4d…スリット
5…軸
5a…外径面
Claims (4)
- 両端に平板状の内向きのフランジを有するシェル型の外輪と、この外輪の転走面と上記外輪に挿通される軸の外径面との間に介在する複数個の針状のころと、これら複数のころを保持する保持器と、上記フランジに直接に貼付けられて内周にシールリップを有し、このシールリップの内径寸法が上記軸の外径寸法より小さくされた環状のゴム状シール部材とを備えるシール付きシェル型針状ころ軸受。
- 請求項1において、上記ゴム状シール部材は、上記フランジの外側の側面を覆う膜状の外面覆い部と、上記フランジの内径面に沿う環状突部と、上記シールリップとでなるシール付きシェル型針状ころ軸受。
- 請求項1または請求項2において、シールリップは先端が外輪のフランジよりも軸方向の外側へ突出するものであるシール付きシェル型針状ころ軸受。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかにおいて、上記ゴム状シール部材のシールリップにスリットを設けたシール付きシェル型針状ころ軸受。
Priority Applications (1)
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JP2003131068A JP2004332856A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | シール付きシェル型針状ころ軸受 |
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JP2003131068A JP2004332856A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | シール付きシェル型針状ころ軸受 |
Publications (1)
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JP2004332856A true JP2004332856A (ja) | 2004-11-25 |
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ID=33506343
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003131068A Pending JP2004332856A (ja) | 2003-05-09 | 2003-05-09 | シール付きシェル型針状ころ軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004332856A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7661883B2 (en) * | 2006-02-07 | 2010-02-16 | Schaeffler Kg | Sealing element for a rotatable part with a tractrix form |
JP2010210085A (ja) * | 2009-02-12 | 2010-09-24 | Nsk Ltd | シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット |
JP2017110540A (ja) * | 2015-12-16 | 2017-06-22 | 株式会社不二工機 | 可変容量型圧縮機用制御弁 |
-
2003
- 2003-05-09 JP JP2003131068A patent/JP2004332856A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7661883B2 (en) * | 2006-02-07 | 2010-02-16 | Schaeffler Kg | Sealing element for a rotatable part with a tractrix form |
JP2010210085A (ja) * | 2009-02-12 | 2010-09-24 | Nsk Ltd | シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット |
JP2017110540A (ja) * | 2015-12-16 | 2017-06-22 | 株式会社不二工機 | 可変容量型圧縮機用制御弁 |
US10578087B2 (en) | 2015-12-16 | 2020-03-03 | Fujikoki Corporation | Variable-capacity compressor control valve |
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