JP5079292B2 - コーティング樹脂用帯電防止剤 - Google Patents

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本発明は、コーティング樹脂用帯電防止剤、並びにコーティング樹脂組成物に関する。
塗装や印刷等の分野でフィルム特性或いは表面特性改善のためコーティング樹脂によるコーティングが行われている。例えば、塗装分野における塗料、印刷分野におけるインキ、更にはバインダーなどにコーティング樹脂が用いられている。
しかし、いずれの分野に於いても、コーティングを実施した場合、乾燥後或いは硬化後の被膜は制電効果に乏しく、被膜に帯電を生じ、帯電による種々のトラブルを多く発生させていた。
かかる問題を解決するために、特許文献1には、少なくとも1つのポリエチレンオキサイド基を有するアミンを塩基構成体とするスルホン酸塩基含有低分子化合物を含む塗剤を用いて被膜を塗設した帯電防止性に優れた易接着性ポリエステルフィルムが開示されている。しかし、特許文献1に記載のスルホン酸塩基含有低分子化合物は有機溶剤への溶解性が低く、その用途は水系塗剤に限定されている。
コーティング樹脂組成物に帯電防止剤の添加を行うとき、乾燥された粉末状の帯電防止剤を添加すると未溶解物が塗工後の被膜にブツとなって残存し好ましくない。また帯電防止剤を水溶液の形で添加すると、硬化剤との反応に影響を及ぼしたり、場合によっては樹脂分の凝集/凝固を生じ好ましくない。
従って、有機溶剤系で用いることができる帯電防止剤が求められている。
特開平9−141800号公報
本発明の課題は、有機溶剤に可溶で、有機溶剤系でコーティング樹脂に添加して良好な帯電防止性のある塗膜を与えることができるコーティング樹脂用帯電防止剤及びコーティング樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、式(I)で表される化合物(以下化合物(I)という)を含有するコーティング樹脂用帯電防止剤、この帯電防止剤、コーティング樹脂及び有機溶剤を含有するコーティング樹脂組成物を提供する。
Figure 0005079292
(式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)
本発明のコーティング樹脂用帯電防止剤は、コーティング樹脂に少量添加するだけで良好な帯電防止効果を発現し、且つ有機溶剤に可溶であるため、有機溶剤を用いてコーティング樹脂に添加できることから、樹脂の凝固・凝集を防止でき、安定した性状の塗膜を得ることができる。
[帯電防止剤]
本発明の帯電防止剤は、化合物(I)を含有する。
化合物(I)において、有機溶剤溶解性の観点から、Rは炭素数8〜22のアルキル基を示すが、炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が更に好ましい。帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、Aは炭素数2〜4のアルキレン基であり、オキシエチレン基が好ましい。帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数であり、1〜20の数が好ましく、1〜10の数がより好ましく、1〜5の数が更に好ましい。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であるが、帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、R1、R2、R3の全てがヒドロキシエチル基であることが好ましい。
化合物(I)は、単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
本発明の化合物(I)の製造方法は特に限定されず、例えば、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数2〜4)を有するアルコールとクロルスルホン酸を付加反応させたものを、トリエタノールアミン等により中和して得ることができる。
本発明の帯電防止剤は、化合物(I)(以下(a)成分という)以外に、(a)成分の製造における未反応分や、(a)成分以外の有機溶剤溶解性の高い帯電防止剤を含有することができる。このような他の帯電防止剤としては、コーティング樹脂組成物の耐水性を向上させる観点から、ポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4で、オキシアルキレン基の平均付加モル数1〜20)アルキル(アルキル基の炭素数8〜22)リン酸カリウム、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステル及びソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下(b)成分という)が好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸カリウムとしては、例えば、式(II)で表される化合物(以下化合物(II)という)が挙げられる。
Figure 0005079292
(式中、R4は式
Figure 0005079292
で表される基を示し、R5は式
Figure 0005079292
で表される基を示す。ここで、R6は炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜20の数である。)
化合物(II)において、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、R6は炭素数8〜22のアルキル基を示すが、炭素数8〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜12のアルキル基が更に好ましい。Aは炭素数2〜4のアルキレン基であるが、本発明の効果の観点からオキシエチレン基が好ましい。mは、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜20の数であるが、1〜10の数が好ましく、1〜5の数が更に好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルリン酸カリウムは、水溶媒中にてポリオキシアルキレンアルキルアルコールに、五酸化リンを反応させてポリオキシアルキレンアルキルリン酸とし、水酸化カリウムにより中和して得ることができる。副生するリン酸カリウムを低く抑えるために、ポリオキシアルキレンアルキルアルコールと五酸化リンのモル比は、五酸化リン1モルに対してポリオキシアルキレンアルキルアルコール1.5モルが好ましい。
ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルとしては、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、ジグリセリン1モルと、炭素数8〜22、特に8〜18の脂肪酸1〜2モルとのエステルが好ましい。
ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルは、窒素シール下において、約220℃で約4〜5時間、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とを脱水エステル化反応して得ることができる。ジグリセリン中のジグリセリン(グリセリン2モル縮合体)は効果の観点から50%以上が好ましい。
また、ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルとしては、有機溶剤溶解性及び耐水性の観点から、ソルビタン1モルと、炭素数8〜22、特に8〜18の脂肪酸1〜2モルとのエステルが好ましい。ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルは、約230℃で約4〜5時間、ソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とを脱水エステル化反応して得ることができる。
本発明の帯電防止剤中の、(a)成分の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは10〜100重量%であり、より好ましくは20〜100重量%である。本発明の帯電防止剤中に(b)成分が含有される場合の(a)成分の含有量は、20〜98重量%が好ましく、25〜75重量%がより好ましい。
また、本発明の帯電防止剤中に(b)成分が含有される場合の(b)成分の含有量は、コーティング樹脂組成物の耐水性向上の観点から、2〜80重量%が好ましく、4〜75重量%がより好ましい。
[コーティング樹脂組成物]
本発明のコーティング樹脂組成物は、本発明の帯電防止剤、コーティング樹脂及び有機溶剤を含有する。本発明の帯電防止剤の含有量は、帯電防止性及び有機溶剤溶解性の観点から、コーティング樹脂100重量部に対し、好ましくは0.5〜10重量部、更に好ましくは1〜5重量部である。
本発明に用いられるコーティング樹脂は、溶剤等で溶液状にして、例えばインキ、塗料、バインダー等として、基材のコーティングに用いるのに好適な樹脂であれば特に限定されないが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物で膜を硬化する熱硬化型や、UV照射により膜を硬化させるUV硬化型等の樹脂が挙げられる。これらのコーティング樹脂の中では、透明性を保持する観点から、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
本発明のコーティング樹脂組成物中の、コーティング樹脂の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは10〜50重量%であり、より好ましくは15〜40重量%である。
本発明のコーティング樹脂組成物は、更に有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類等を用いることができる。これらの中では、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ノルマルヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸n−エチル、イソプロピルアルコールが好ましい。
本発明の組成物中の有機溶剤の含有量は、塗工性の観点から、45〜85重量%が好ましく、55〜80重量%が更に好ましい。
本発明の組成物は水を含有することができるが、塗膜強度、透明性等の塗膜物性低下を抑制する観点から、コーティング樹脂組成物中の水の含有量は5重量%未満が好ましく、1重量%未満がより好ましく、実質含まないことが好ましい。
本発明のコーティング樹脂組成物には、上記成分以外に通常使われるジイソシアネート化合物等の硬化剤、顔料・染料、ガラスビーズ、ポリマービーズ、無機ビーズ等のビーズ類や、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填材類、潤滑剤、安定剤、紫外線吸収剤、過酸化物等の重合開始剤などの添加剤を配合できる。
本発明のコーティング樹脂組成物は、基材に塗工して種々の機能を発現することができる樹脂組成物であり、例えば、ポリマービーズ、樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、光拡散フィルムとして機能し、粘着性のある樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、粘着フィルムとして機能し、顔料、樹脂、有機溶剤を組み合わせたものは、塗料として機能を発現する。
本発明のコーティング樹脂組成物の表面固有抵抗値は、帯電防止性を維持する観点から好ましくは1×1012Ω以下である。尚、表面固有抵抗値は実施例記載の方法に従って測定することができる。
以下の実施例に用いた本発明の帯電防止剤及び比較の帯電防止剤中の各成分をまとめて以下に示す。帯電防止剤は、あらかじめEDG(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)にて脱水・溶媒置換した後、有効分50%に調整したものを用いた。
尚、以下の剤において、POE(n)とは、オキシエチレン基の平均付加モル数nのポリオキシエチレン鎖を示す。
<(a)成分>
化合物(I−1):POE(3)ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩(50%有効分のEDG溶液)
化合物(I−2):POE(10)ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩(50%有効分のEDG溶液)
化合物(I−3):POE(3)ステアリル硫酸トリエタノールアミン塩(50%有効分のEDG溶液)
<(b)成分>
化合物(b−1):POE(3)ラウリルリン酸カリウム塩(式(II)において、R4がPOE(3)ラウリル基、R5がPOE(3)ラウリル基である化合物と、R4がPOE(3)ラウリル基、R5がKO−基である化合物との1:1(モル比)混合物)
化合物(b−2):ジグリセリン1モルとオレイン酸1.5モルとのエステル
化合物(b−3):ソルビタン1モルとラウリン酸1.5モルとのエステル
<(a)成分の比較品>
化合物(I’−1):ラウリル硫酸トリエタノールアミン塩
化合物(I’−2):POE(3)ラウリル硫酸ナトリウム塩
化合物(I’−3):ステアリル硫酸トリエタノールアミン塩
化合物(I’−4):トリメチルアルキル(アルキル基の炭素数12)アンモニウムクロライド
実施例1〜7及び比較例1〜4
コーティング樹脂として、アクリル系樹脂(大日本インキ化学工業(株)製のアクリディック A−801、固形分濃度50%、溶媒トルエン/酢酸n−ブチル、水酸基価50)、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、塗工溶媒としてイソプロピルアルコール、帯電防止剤として、表1に示す組成の帯電防止剤を用い、表1に示す組成のコーティング樹脂組成物を調製した。
得られたコーティング樹脂組成物を、PET100μm二軸延伸フィルムに、20μmアプリケータを用い塗布し、乾燥後、50℃乾燥機内にて12時間放置し硬化させた。硬化後の塗膜について、下記方法で塗膜の状態、帯電防止性及び耐水性を評価した。結果を表1に示す。
<塗膜の状態>
硬化後の塗膜について、目視にて透明性を観察し下記基準で評価した。また、目視によりブツの発生の有無を観察した。
・透明性の評価基準
◎:曇りがなく、透明である
○:わずかに曇りが認められるが、ほぼ透明である
×:かなりの曇りがあり、白化した状態である
<帯電防止性の評価法>
硬化後の塗膜について、25℃、湿度50%に調整した室内で、A−4329型ハイレジスタンスメータ(横河YP社)により、表面固有抵抗値を測定した。
<耐水性の評価法>
ガラス製容器(縦10cm、横25cm、深さ25cm)の底に約2cmの厚みで水道水を入れ、容器の内壁に塗工フィルム(上記のPET100μm二軸延伸フィルムに、20μmアプリケータを用い塗布したフィルムを5cm×10cmのサイズにしたもの)を水に接触しない状態で貼りつけ、密閉状態を保ったまま室温で5日間試験した。容器より取り出したフィルムは風乾後ヘーズメータにより曇りの測定を行った。
Figure 0005079292
実施例8、比較例5〜7
コーティング樹脂として、レオマイドS8200(花王(株)製、ポリアミド系樹脂)を用い、硝化綿を表2に示す割合で配合し、更に表2に示す有機溶剤、帯電防止剤を配合して、表2に示す組成のコーティング樹脂組成物を調製した。
得られたコーティング樹脂組成物を、20μmアプリケータを用いて、PET100μm二軸延伸フィルムに塗布した。乾燥後の塗膜について、実施例1と同様に塗膜の状態及び帯電防止性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0005079292

Claims (7)

  1. 式(I)で表される化合物を含有する有機溶剤系コーティング樹脂用帯電防止剤であって、コーティング樹脂がアクリル系樹脂又はポリアミド系樹脂である、帯電防止剤
    Figure 0005079292

    (式中、Rは炭素数8〜22のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す1〜30の数である。R1、R2、R3はそれぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。)
  2. 式(I)で表される化合物において、R1、R2及びR3の全てがヒドロキシエチル基である請求項1記載のコーティング樹脂用帯電防止剤。
  3. 更に、ポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4で、オキシアルキレン基の平均付加モル数1〜20)アルキル(アルキル基の炭素数8〜22)リン酸カリウム、ジグリセリンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステル及びソルビタンと炭素数8〜22の脂肪酸とのエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1又は2記載のコーティング樹脂用帯電防止剤。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の帯電防止剤、コーティング樹脂及び有機溶剤を含有するコーティング樹脂組成物であって、コーティング樹脂がアクリル系樹脂又はポリアミド系樹脂である、コーティング樹脂組成物
  5. 式(I)で表される化合物の含有量が、コーティング樹脂100重量部に対し0.5〜10重量部である請求項4記載のコーティング樹脂組成物。
  6. 組成物中、コーティング樹脂の含有量が、10〜50重量%である請求項4又は5記載のコーティング樹脂組成物。
  7. 組成物中、有機溶剤の含有量が、45〜85重量%である請求項4〜6いずれかに記載のコーティング樹脂組成物。
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