JP5077558B2 - 液晶配向剤および液晶表示素子 - Google Patents
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Description
さらに近年、液晶を駆動するための2つの電極を片側の基板に櫛歯状に配置し、基板面に平行な電界を発生させ、液晶分子をコントロールする横電界型液晶表示素子が提案されている。この素子は一般的にインプレーンスイッチング型(IPS型)と呼ばれ、広視野角特性に優れることで知られている。特にIPS型素子を光学補償フィルムと併用した場合、視野角特性をさらに向上させることができ、階調反転や色調変化のない、ブラウン管にも匹敵する広視野角を得られることが大きな特徴である。
ところで、液晶表示素子の製造プロセスでは、一般的に、ラビング等のプロセスで発生した異物等の除去や、プロセス中の付着ダストの除去のために、溶剤による洗浄工程が行われる。洗浄溶剤としては、超純水やイソプロパノールが用いられるのが一般的であり、洗浄時にブラッシングや超音波を併用して、さらに洗浄効率を上げる手法が用いられる場合もある。洗浄工程では、溶剤への浸漬等による洗浄の後、溶剤の除去(基板の乾燥)が行われる。乾燥工程では、加熱による溶剤の蒸発とエアナイフによる溶剤の拡散とを同時に行っている場合が多い。この洗浄工程において、液晶配向膜(特に表面状態)が影響を受け、プレチルト角のムラや電気的性質のムラが発生し、液晶表示素子とした場合に表示ムラや表示不良が発生する場合があることが知られている。したがって、製品の歩留まり向上と表示品位向上の観点から、液晶配向膜には洗浄工程、特に洗浄溶剤に対する高度の耐久性が求められている。
さらに、近年の表示品位向上に対する要求は一段と厳しくなっており、特に液晶配向性や電気特性について、今まで以上の特性を有する液晶配向膜が求められている。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
(A)テトラカルボン酸二無水物と、
下記式(1)〜(4)
で表されるジアミンから選択される少なくとも1種との反応によって得られる重合体および/またはそのイミド化重合体である第1の重合体、
(A’)上記(A)第1の重合体以外のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体である第2の重合体、ならびに
(B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有する液晶配向剤により達成される。
本発明の上記目的は第2に、上記の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
本発明の液晶表示素子は、種々の液晶表示装置、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、携帯電話、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、液晶テレビなどに好適に使用することができる。
本発明の液晶配向剤は、(A)テトラカルボン酸二無水物と、上記式(1)〜(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1種との反応によって得られる重合体(以下、「特定ポリアミック酸」という。)および/またはそのイミド化重合体である第1の重合体(以下、「(A)重合体」という。)、ならびに(A’)上記(A)第1の重合体以外のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体である第2の重合体を含有する。
以下、本発明の液晶配向剤に含有される(A)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸無水物およびジアミンについて説明する。
<テトラカルボン酸二無水物>
特定ポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
上記脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
上記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば下記式(5)
で表される化合物、下記式(6)
で表される化合物、下記式(7)または(8)
で表される化合物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,4−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3,4,8,9−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−4−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを挙げることができる。
上記式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジエチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
これらテトラカルボン酸二無水物は1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
特定ポリアミック酸の合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,4−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−4−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有するものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオンよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有するものであることがより好ましい。これらの好ましいテトラカルボン酸二無水物の含有割合は、全テトラカルボン酸二無水物に対して20モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましい。
特定ポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体の合成に用いられるジアミンは、上記式(1)〜(4)で表される化合物から選択される少なくとも1種(以下、「特定ジアミン」ともいう。)である。
上記式(1)〜(4)で表されるジアミンにおいて、R1〜R4で表される炭素数1〜40の線状のアルキル基としては、例えばn−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−エイコシル基など;
分枝状アルキル基としては、例えば1−メチルヘキシル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−エチルオクチル基、2−エチルオクチル基、3−エチルオクチル基、1、2−ジメチルヘキシル基、1、2−ジエチルヘキシル基、1、2−ジメチルオクチル基、1、2−ジエチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−エチルデシル基、2−メチルデシル基、2−エチルデシル基など;
環状のアルキル基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロデカン、ノルボルネン、ビシクロオクタン、ビシクロウンデカン、アダマンタンなどの環状アルカンから水素原子を1個除去して得られる基、ステロイド骨格を有する基などを、それぞれ挙げることができる。上記ステロイド骨格を有する基としては、コレスタノールなどのステロイド化合物から水酸基を1個除去して得られる基を挙げることができる。
炭素数4〜40の線状、分枝状もしくは環状のアルケニル基としては、上記で例示したアルキル基の有する炭素−炭素結合のうちの1つ以上が二重結合となった基を挙げることができる。このうち、ステロイド骨格を有する環状のアルケニル基としては、例えばコレステロール、ラノステロール、デスモステロールなどのステロイド化合物から水酸基を除去して得られる基を挙げることができる。
特定ジアミンとしては、上記式(1)〜(4)におけるR1〜R4がステロイド骨格を有する基であるジアミン、あるいは、
上記式(1)で表され、且つR1が炭素数1〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルキル基または炭素数4〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルケニル基であるジアミンが好ましい。
上記脂肪族または脂環式ジアミンとしては、例えば1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−ビス(アミノプロピル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノプロピル)シクロヘキサン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)など;
で表される化合物など;
上記芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−エチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジエチル−1,4−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、4−(4−n−ヘプチルシクロヘキシル)フェノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、下記式(14)〜(16)
で表される化合物などを、それぞれ挙げることができる。
上記式(14)で表わされるジアミンとしては、例えば下記式(17)〜(31)
特定ポリアミック酸の合成に際して特定ジアミンと他のジアミンとを併用する場合、特定ジアミンの使用割合が全ジアミンに対して1モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは5モル%以上である。
次に、本発明の液晶配向剤が含有することのできる特定ポリアミック酸の合成方法について説明する。
特定ポリアミック酸は、上記テトラカルボン酸二無水物と、特定ジアミンおよび場合により他のジアミンとを、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下で、好ましくは0.5〜72時間反応させることにより合成することができる。
特定ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.5〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.2当量となる割合である。
ここで、有機溶媒としては、合成される特定ポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えば1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒などを例示することができる。有機溶媒の使用量(α)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(β)の反応溶液の全量(α+β)に対する割合(モノマー濃度)が0.1〜30重量%になるような量であることが好ましい。
次に、本発明の液晶配向剤が含有することのできる特定ポリアミック酸のイミド化重合体の合成方法について説明する。
特定ポリアミック酸のイミド化重合体は、上記特定ポリアミック酸の有するアミック酸構造のうちの一部または全部を脱水閉環することにより合成することができる。
特定ポリアミック酸の脱水閉環反応は、(i)特定ポリアミック酸を加熱する方法または(ii)特定ポリアミック酸を有機溶媒に溶解しこの溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)の特定ポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下することがある。
一方、上記(ii)の特定ポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、所望するイミド化率によるが、特定ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。イミド化率は上記の脱水剤、脱水閉環剤の使用量が多いほど高くすることができる。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、特定ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。
上記方法(i)において得られるイミド化重合体は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるイミド化重合体を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはイミド化重合体を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、イミド化重合体を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したイミド化重合体を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。イミド化重合体の単離、精製は、それぞれポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
本発明に用いることのできる特定ポリアミック酸のイミド化重合体は、イミド化重合体の有するアミック酸構造の数とイミド環の数との合計に対するイミド環の数の割合(以下、「イミド化率」ともいう)が100%未満の、部分的に脱水閉環されたものであってもよい。イミド化率は、重合体の1H−NMRから下記数式(1)により求めることができる。
イミド化率(%)=(1−A1/A2×α)×100 (1)
(数式(1)中、A1はNH基のプロトンに由来する化学シフト10ppm付近のピーク面積であり、A2は芳香族プロトンに由来する化学シフト7〜8ppm付近のピーク面積であり、αはイミド化反応前のポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対する芳香族プロトンの個数の割合である。)
本発明の液晶配向剤に含有される(A)第1の重合体および(A’)第2の重合体の平均イミド化率は、好ましくは40〜100%であり、より好ましくは50〜100%である。なお、ここでいう「平均イミド化率」とは、本発明に含有される特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体ならびにその他のポリアミック酸およびそのイミド化重合体の全部からなる重合体混合物について上記の方法により測定されたイミド化率を意味する。後述するように、本発明の液晶配向剤に含有される特定ポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体は、その一部がその他のポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種で置き換えられているが、この場合の平均イミド化率は、特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体ならびにその他のポリアミック酸およびそのイミド化重合体の全部からなる重合体混合物について上記の方法により測定されたイミド化率をいうものとして理解されるべきである。
本発明で用いられる特定ポリアミック酸またはそのイミド化重合体は、分子量が調節された末端修飾型のものであってもよい。末端修飾型の重合体を用いることにより、本発明の効果が損われることなく液晶配向剤の塗布特性などを改善することができる。このような末端修飾型の重合体は、特定ポリアミック酸を合成する際に、酸一無水物、モノアミン化合物、モノイソシアネート化合物などを反応系に添加することにより合成することができる。ここで、酸一無水物としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、n−デシルサクシニック酸無水物、n−ドデシルサクシニック酸無水物、n−テトラデシルサクシニック酸無水物、n−ヘキサデシルサクシニック酸無水物などを挙げることができる。モノアミン化合物としては、例えばアニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミンなどを挙げることができる。モノイソシアネート化合物としては、例えばフェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどを挙げることができる。
<重合体の溶液粘度>
以上のようにして得られる特定ポリアミック酸またはそのイミド化重合体は、濃度10重量%の溶液としたときに、20〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、30〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。
上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
本発明の液晶配向剤においては、本発明の効果を損なわない限り、上記特定ポリアミック酸またはそのイミド化重合体の一部をその他のポリアミック酸およびそのイミド化重合体よりなる群から選択される少なくとも一種(以下、「第2の重合体」という。)で置き換える。
上記第2の重合体は、特定ポリアミック酸以外のポリアミック酸またはそのイミド化重合体であれば特に限定されるものではないが、上述のテトラカルボン酸二無水物と他のジアミンとの反応によって得られる重合体またはそのイミド化重合体であることが好ましい。ここで使用されるテトラカルボン酸二無水物としては、脂環族テトラカルボン酸二無水物または芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、特に1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物が好ましい。ここで使用される他のジアミンとしては、芳香族ジアミンが好ましく、特に4,4−ジアミノジフェニルメタンが好ましい。
かかる他の重合体の合成は、特定ジアミンの代わりに他のジアミンを用いて、特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体の合成と同様にして行うことができる。
本発明の液晶配向剤が他の重合体における第2の重合体の使用割合としては、特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体ならびに他の重合体の合計量に対して好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下である。
本発明の液晶配向剤は上記の(A)第1の重合体および(A’)第2の重合体のほかに、(B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物(以下「エポキシ化合物」という。)を含有する。
(B)エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルアミン化合物などを挙げることができる。
上記グリシジルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、ベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−メチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−エチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−n−ヘキシルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−n−ドデシルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2−トリフルオロメチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテル、2,5−ジエチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。これらグリシジルエーテル化合物のうち、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、ベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルまたは2−メチルベンゼン−1,4−ジオールジグリシジルエーテルが好ましいものとして挙げられる。
上記グリシジルアミン化合物は、下記式(37)
本発明の液晶配向剤における(B)エポキシ化合物の使用割合としては、全重合体(特定ポリアミック酸およびそのイミド化重合体ならびにその他のポリアミック酸およびその重合体の全部をいう。以下同じ。)100重量部に対して好ましくは0.01〜100重量部であり、より好ましくは0.1〜50重量部である。
本発明の液晶配向剤は、上記の(A)第1の重合体および第2の重合体、ならびに(B)エポキシ化合物を必須成分として含有するが、任意的にその他の成分を含有することができる。かかるその他の添加剤としては、例えば(C)グリシジルアミン化合物以外のアミン化合物(以下、単に「アミン化合物」という。)、(D)官能性シラン含有化合物などを挙げることができる。
(C)アミン化合物は、液晶配向剤の保存安定性の向上および得られる液晶配向膜の電気特性の観点から添加することができる。
かかる(C)アミン化合物としては、例えばn−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−ヘプタデシルアミン、n−オクタデシルアミン、n−エイコシルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−メトキシベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルエチルアミン、n―エチルシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2−エチルアニリン、3−エチルアニリン、4−エチルアニリン、p−ヘキシルアニリン、2−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン、2,4,6−トリフルオロアニリン、o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、p−トリフルオロメトキシアニリン、p−トリフルオロエトキシアニリン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、1−シクロヘキシルピペラジン2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、9−アザビシクロ[3,3,1]ノナン、9−メチル−9−アザビシクロ[3.3.1]ノナン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンなどを挙げることができる。
本発明の液晶配向剤は、(A)第1の重合体および(A’)第2の重合体ならびに任意的に添加されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒に溶解して含有された溶液状態として調製される。
本発明の液晶配向剤に使用される有機溶媒としては、特定ポリアミック酸の合成反応に用いられるものとして例示した溶媒を挙げることができる。また、特定ポリアミック酸の合成反応の際に併用することができるものとして例示した貧溶媒も適宜選択して併用することができる。
本発明の液晶配向剤に使用される特に好ましい有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。これらは単独で使用することができ、または2種以上を混合して使用することができる。
本発明の液晶配向剤のより好ましい固形分濃度の値は、本発明の液晶配向剤を基板に塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には固形分濃度を1.5〜4.5重量%の範囲とすることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を4〜10重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を10〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を2〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤の表面張力は、25〜40mN/mであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは0℃〜200℃であり、より好ましくは20℃〜60℃である。
本発明の液晶表示素子は、上記の如くして得られた本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする。
本発明の液晶表示素子は、例えば次の工程(1)〜(4)により製造することができる。
(1)パターニングされた透明導電膜が設けられている基板の一面に、本発明の液晶配向剤をオフセット印刷法、スピンコート法、インクジェット印刷法などの適宜の塗布方法により塗布し、次いで、塗布面を加熱することにより塗膜を形成する。ここに、基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなる透明基板などを用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO2)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In2O3−SnO2)からなるITO膜などを用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や、透明導電膜を形成する際に予めマスクを用いる方法が用いられる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面および透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板の該表面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布しておいてもよい。液晶配向剤塗布後の加熱温度は好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。なお、本発明の液晶配向剤は、塗布後に有機溶媒を除去することによって配向膜となる塗膜を形成するが、本発明の液晶配向剤がアミック酸構造を有する重合体を含有する場合には、さらに加熱することによって脱水閉環を進行させ、よりイミド化された塗膜とすることもできる。
形成される塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(3)上記(1)ないし(2)のようにして得られた液晶配向膜は、必要に応じて洗浄を行ってもよい。洗浄溶剤としては、例えば水、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどを用いることができる。洗浄効率を高めるために、洗浄溶剤に界面活性剤を添加してもよく、あるいは溶剤を加熱して洗浄する方法、ブラッシングを併用する方法、超音波を併用する方法によってもよい。洗浄後は、そのまままたは適当な溶剤でリンス等を実施したのち、必要に応じて加熱乾燥を実施することもできる。
液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板またはH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
以下の実施例、比較例において調製した液晶配向剤の評価は、以下の方法によった。
[液晶配向膜の表面自由エネルギーの評価]
片面にITO膜からなる透明導電膜を有する厚さ1mmのガラス基板の透明導電膜上に、各実施例または比較例で調製した液晶配向剤溶液をスピンナーにより塗布し、200℃で60分間加熱することにより、膜厚0.06μmの被膜を有する基板を得た。この被膜について水およびジヨードメタンの接触角を測定し、その測定値を用いて拡張ホークスの式により、被膜(液晶配向膜)の表面自由エネルギーを求めた。
[電圧保持率の測定]
片面にITO膜からなる透明導電膜を有する厚さ1mmのガラス基板を6枚用意し、それぞれの基板の透明導電膜上に各実施例または比較例で調製した液晶配向剤溶液をスピンナーにより塗布し、200℃で60分間加熱することにより、膜厚0.06μmの被膜を有する基板を6枚得た。
これら基板のうち、2枚については超純水を洗浄溶剤とし、別の2枚についてはイソプロパノールを洗浄溶剤として、それぞれ40℃で1分の超音波洗浄を行った後、100℃にて10分加熱して溶剤を除去した。残りの2枚については洗浄を行わず次工程に供した。このようにして、洗浄条件の異なる3対の液晶配向膜塗布基板を得た。
次に洗浄条件を同じくする2枚の基板を対として、各基板の各液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を液晶注入口を除いて塗布した後、液晶配向膜が内側になり、ラビング方向が逆平行になるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間に、ネマティック型液晶(ネガ型、メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止し、基板の外側の両面に偏光板を張り合わせることにより、洗浄条件の異なる3組の液晶表示素子を作製した。
これら液晶表示素子のそれぞれに対して、60℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、16.7マイクロ秒のスパンで印加した後、印加解除から16.7ミリ秒後の電圧保持率を測定した。
[液晶配向性評価]
上記方法にて作製した各液晶表示素子について、印加電圧をAC0V〜8Vまで変化させていった時に、液晶表示素子に対し垂直方向から目視で観察した場合および斜め方向から観察した場合の双方において全面で表示不良なく均一に表示されていたとき「良好」とし、上記観察方向の1方または双方において表示ムラが発生したときを「ムラ発生」とした。
窒素ガスで置換した300mL三口フラスコ中に3,5−ジニトロアニリン 12.81g(0.07mol)および酢酸70mLを加え、窒素ガスを流通しながら攪拌して固形物を溶解させた。ここに、オクタデシルコハク酸無水物24.64g(0.07mol)を加え窒素下で20h還流して反応させた。反応液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。析出した固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後に乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド30g(収率83%)を得た。
次に、窒素ガスで置換した500mLフラスコに、上記で合成した1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド30g(0.058mol)、エタノール100mL、テトラヒドロフラン(THF)100mLおよび還元触媒パラジウム炭素(Pd/C)25gを加えて70℃で1時間攪拌した。ここにヒドラジン一水和物42.5mL(43.75g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドン中で加熱溶解した後冷却して再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド14.6g(0.032mol、収率55%)を得た。
オクタデシルコハク酸無水物24.64g(0.07mol)の代わりに、ドデシルコハク酸無水物18.76g(0.07mol)を用いたほかは、合成例b1−1と同様にして、1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ドデシルスクシンイミド11g(0.030mol、収率51%)を得た。
窒素置換した2,000mL三口フラスコにジメチルマレイン酸無水物31.5g(0.25mol)、N−ブロモスクシンイミド89.0g(0.5mol)、過酸化ベンゾイル1.0g(4.15mmol)および四塩化炭素1,500mLを加え、5h加熱還流した。反応液を室温まで冷却し、室温で一晩静置した後、濾過した。濾液を水で洗浄した後、有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた油状の粗生成物を高真空下で蒸留し(120−125℃/2mmHg)、中間体である3−ブロモメチル−4−メチルマレイン酸無水物20.0g(0.1mol、収率39%)を得た。
次に、アルゴンガスで置換した2,000mL三口フラスコに、上記で得られた3−ブロモメチル−4−メチルマレイン酸無水物16.4g(80mmol)、ヨウ化銅1.52g(8.0mmol)、ジエチルエーテル400mLおよびHMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)160mLを加えた後、アルゴンガス流通下−5〜0℃に冷却した。この混合液を攪拌しながら、別途準備したヘキサデシルマグネシウムブロマイド400mmolをジエチルエーテル400mLに溶解した溶液を、約20分かけて滴下した。混合液を室温に戻し、さらに8h攪拌した。その後、ジエチルエーテル600mLで希釈した4N−硫酸600mLを加えて溶液を酸性にした。分離した水層をジエチルエーテル600mLにてさらに洗浄し、有機層を合わせた。有機層を水で洗浄して硫酸ナトリウムで脱水した後、ロータリーエバポレーターで溶液を濃縮して油状の粗生成物を得た。この粗生成物を、展開溶剤として石油エーテル/酢酸エチル(19:1)混合溶液を用いシリカゲルカラムにて精製し、3−ヘプタデシル−4−メチル無水マレイン酸14.0g(0.04mol 収率50%)を得た。
次に、窒素ガス置換された300mLフラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド13.4g(0.026mol)、エタノール50mL、THF50mLおよび還元触媒Pd/C12.5gを加え70℃で1時間攪拌した。次いでヒドラジン一水和物19mL(19.6g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドンで加熱溶解して冷却することにより再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド6.6g(0.015mol 収率56%)を得た。
窒素置換した300mL三口フラスコに3,5−ジニトロアニリン12.81g(0.07mol)および酢酸70mLを加えた後、窒素ガスを流通しながら攪拌して固形物を溶解させた。ここに、合成例A−3の中間体と同様にして合成した3−(ブロモメチル)−4−メチルマレイン酸無水物14.35g(0.07mol)を加え窒素下で20h還流し反応させた。反応溶液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ブロモメチル−4−メチルマレイミド18.9g(0.051mol 収率73%)を得た。
次に、窒素置換した500mL三口フラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ブロモメチル−4−メチルマレイミド18.1g(0.049mol)、1−ヘキサデカノールナトリウム塩12.9g(0.049mol)およびジメチルスルホキシド100mLを加えた後、100℃で10h攪拌し反応させた。反応液を室温まで冷却した後、メタノール70mLを加えて一晩静置した。固形分を濾別し、メタノールで洗浄した後乾燥し、1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド20.8g(0.039mol 収率80%)を得た。
次に、窒素ガス置換した300mLフラスコに1−(3,5−ジニトロフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド13.8g(0.026mol)、エタノール50mL、THF50mLおよび還元触媒Pd/C12.5gを加え70℃で1時間攪拌した。その後ヒドラジン一水和物19mL(19.6g)を加え6時間加熱還流し反応させた。Pd/Cを濾別し、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮した。得られた粗生成物をN−メチル−2−ピロリドンで加熱溶解して冷却することにより再結晶し、目的生成物である1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド8.2g(0.018mol 収率67%)を得た。
N−メチルピロリドンに、表1に示す組成でジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物をこの順で加えてモノマー濃度20重量%の溶液とし、60℃で4時間反応させてポリアミック酸(A−1)〜(A−19)または(a−1)〜(a−4)を含有する溶液を得た。得られた各ポリアミック酸溶液に、溶液中のアミック酸単位の総量(モル)に対して表1に示した倍モル数(当量)のピリジンおよび無水酢酸をそれぞれ加えた後、110℃に加熱して4時間脱水閉環反応を行った。得られた溶液をジエチルエーテルで再沈殿して、回収、減圧乾燥することにより、イミド化重合体である(B−1)〜(B−19)および(b−1)〜(b−4)を得た。これらイミド化重合体のイミド化率を表1に示した。
ポリマー合成例20〜22
N−メチルピロリドンに、表1に示す組成でジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物をこの順で加えてモノマー濃度20重量%の溶液とし、60℃で4時間反応させた。得られた溶液をジエチルエーテルで再沈殿して、回収、減圧乾燥することにより、ポリアミック酸(A−20)〜(A−22)を得た。なお、ポリマー合成例20〜22においてはイミド化反応は行わなかった。
<ジアミン化合物>
D−1:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−オクタデシルスクシンイミド
D−2:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ドデシルスクシンイミド
D−3:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘプタデシル−4−メチルマレイミド
D−4:1−(3,5−ジアミノフェニル)−3−ヘキサデカノキシメチル−4−メチルマレイミド
D−5:オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン
D−6:p−フェニレンジアミン
D−7:4,4−ジアミノジフェニルメタン
D−8:4,4−ジアミノジフェニルエーテル
D−9:2,2‘−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
<テトラカルボン酸二無水物>
T−1:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物
T−2:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
T−3:1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン
T−4:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(A)重合体として合成例1で得たイミド化重合体B−1を、γ―ブチロラクトン/N−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ混合溶液(重量比40:30:30)に溶解した溶液に、(B)エポキシ化合物としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量約400)を全重合体100重量部に対して20重量部加え、固形分濃度4.0重量%の溶液とした。この溶液を目視観察したところ、濁りのない透明な溶液であった。続いてこの溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤を得た。
この液晶配向剤を用いて上述した方法に従って、各種評価を行った。結果を表2および表3に示した。
実施例2〜39、比較例1〜12
液晶配向剤に配合した(A)重合体および(B)エポキシ化合物の種類および量を表2に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にしてそれぞれ液晶配向剤を調製した。これらの配向剤を用いて上述した方法に従って行った評価の結果を表2および表3に示した。
なお、実施例2〜30は参考例である。
エポキシA:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(分子量約400)
エポキシB:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
エポキシC:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
エポキシD:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
エポキシE:1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン
エポキシF:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン
Claims (7)
- (A)テトラカルボン酸二無水物と、
下記式(1)〜(4)
で表されるジアミンから選択される少なくとも1種との反応によって得られる重合体および/またはそのイミド化重合体である第1の重合体、
(A’)上記(A)第1の重合体以外のポリアミック酸および/またはそのイミド化重合体である第2の重合体、ならびに
(B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を含有することを特徴とする、液晶配向剤。 - (B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が、グリシジルアミン化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
- (B)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を、(A)重合体100重量部に対して0.01〜100重量部含有する、請求項1または2に記載の液晶配向剤。
- 上記式(1)〜(4)で表されるジアミンの有する基R1〜R4がステロイド骨格を有する基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 上記(A)第1の重合体を合成するためのジアミンが、上記式(1)で表され、R1が炭素数1〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルキル基または炭素数4〜20の線状、分枝状もしくは環状のアルケニル基であるジアミンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- (A)第1の重合体および(A’)第2の重合体の平均イミド化率が40〜100%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
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