JP5076724B2 - 吸引開閉式給湯方法及び給湯装置 - Google Patents
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Description
(1)図9に示すように、底抜き式のラドル1の下端部に設けた開閉可能な溶湯出入口5を開けた状態で、保持炉Fの中の溶湯Mに浸漬し、必要な溶湯量を取り入れた後溶湯出入口5を閉じ、射出スリーブ上まで搬送する。その後図10のように、射出スリーブ2内にラドル下部を挿入する。そして溶湯出入口5を開けて注湯を開始し、射出スリーブ2内へ注湯された溶湯の湯面がラドル1の溶湯出入口5より高くなってからラドル1を上昇させ始め、溶湯の排出状態に対応させてラドル1を上昇させ、溶湯出入口5が常に射出スリーブ2内の溶湯の湯面部にあるような状態で給湯する給湯方法(特許文献1参照)が開示されている。
(1)の給湯方法について(図9、図10参照)
a.ラドル1内に溶湯Mを取り入れる際、シリンダー6を動作し弁棒4を上昇させて溶湯出入口5を開き、保持炉Fの溶湯内に所望の給湯量になるまでラドル1を沈め、その後弁棒4を下げて溶湯出入口5を閉じ、引き上げてラドル1の移送動作に移る。しかし、ラドル1を溶湯内に深く浸漬するためラドル1の外周面には溶湯が付着し、それに酸化物が発生する。この酸化物が搬送途中で床面上に滴下し、また射出スリーブ内に落下混入し溶湯の清浄度を低下させる。
b.弁棒4の先端とラドル1下部の弁座面とのシール部には、溶湯の酸化凝固物が付きやすく、シール性が劣化していく。シール部における溶湯の圧力と大気圧との差(ΔPm)は、
ΔPm=g・ρ・H
(g:重力加速度、
ρ:溶湯の密度、
H:シール部から湯面までの高さ)
となり、この圧力差によりシール性の劣化したシール部から溶湯が漏出する。搬送中に溶湯が漏出、滴下すると、作業環境を汚染するとともに給湯量が不正確になる。
a.重量検知による計量方法では、ラドル11本体部と搬送用アーム25の間に重量検知手段16を設け、吸引中にラドル11本体部の重量とラドル内に取り込まれた溶湯との合計重量を検知して、所定の重量に到達したことで吸引を停止し給湯量を決定する方法である。しかし、この方法では、給湯量を計量する際、ラドルの傾転角度や動作状況によって検出重量の値が変動するという欠点があり計量精度が悪い。
b.真空度検知による計量方法では、溶湯を吸入しながら、配管経路における真空度(圧力)を図示せぬ圧力センサーにより検知して、所望の給湯量になる設定吸引圧に到達した状態で圧力を維持し、給湯量を決定する方法である。設定吸引圧とラドル内の湯面高さ(H)の関係は、
Po−Pv=g・ρ・H
(Po:大気圧、Pv:設定吸引圧(絶対真空度))
となる。ここで、gとρは定数であり、また吸引圧(真空度)は所望する溶湯高さとなる一定圧力値(Pv)に制御されるので、大気圧(Po)が変動すればそれに対応して湯面の高さが変動する。
たとえば、所望する給湯量に対応する湯面高さ(H)が940mmの場合、ρ=2.4g(グラム)/cm3、g=9.8m/sec2 なので、大気圧(Po)を標準気圧(1013hPa(ヘクトパスカル))とすると、Pv=792hPaとなる。大気圧は1日の間でも998〜1013hPaの範囲で変動しうるので、差圧(Po−Pv)は、206〜221hPaとなり、計量が±3.5%バラつくという問題が発生する。ここではラドル内側の水平方向断面の面積が一定である場合の計算であるが、実際はラドルの下側は射出スリーブに入るよう絞られ断面積は小さくなっており、給湯量の変動はさらに大きくなる。要求される給湯量の精度は±2%以下であり、鋳造品質上大きな問題を引き起こす。
この問題を解決するため大気圧との差圧を吸引圧として設定する方法が考えられるが、上述したように差圧は210hPa程度と小さいため、非常に高精度の圧力センサーが必要となり、高価で故障しやすいものになる。また大気圧を運転中に測定し、所望する差圧になるよう吸引圧を都度設定し、その圧力に自動制御する方法もあるが、制御システムや制御方法が煩雑であり、実用的でない。
a.真空吸引と湯面検知による計量方法では、真空吸引装置40が発生する真空圧力で溶湯を吸引し、溶湯上面が湯面検知手段34に触れた瞬間、開閉弁39を閉じるとともに真空吸引装置40を停止して吸引動作を終了する。吸引途中で湯面が上昇中の吸引圧力と湯面高さの関係は、流路が狭い導管32近傍での溶湯の流動抵抗を考慮すると、
Po−Ps=g・ρ・h+C・Q
(Ps:真空吸引装置の吸引圧力、
h :吸引途中の湯面の高さ、
Q :吸引途中の単位時間に導管32を通過しラドル内に吸引される溶湯の体積、
C :溶湯の導管32部での流動抵抗を圧力として換算するための定数)
となる。このため、開閉弁39を閉じても溶湯の吸入は即座に止まらず、湯面がさらに上昇し、圧力差と湯面高さが釣り合ってQが0になるまで続く。この吸入が完全に停止した時の状態は、
Po−Ps’=g・ρ・(H+Δh) ・・・(1)
(Δh:開閉弁が閉じた後溶湯が上昇する高さ
Ps’:吸引が停止した時のラドル内の気体の圧力)
と表せる。また、吸引を停止し開閉弁39を閉じた瞬間と、吸入が止まった時の圧力と体積の関係は、
Ps・V=Ps’・(V−A・Δh) ・・・(2)
(Ps’:吸入が止まった時の圧力、
V :開閉弁を閉じた時のラドル内部と開閉弁39までの配管38内の気体体積
A :ラドルの水平方向断面積)
となる(空気の温度は一定と仮定できる)。ここで(2)式を変形し(1)式に代入してPs’を消去すると、
Po−{(Ps・V)/(V−A・Δh)}=g・ρ・(H+Δh)
となる。PoとΔh以外は全て定数であるため、ΔhはPo(大気圧)の関数となっており、大気圧の変動により計量値がバラつくといった問題が明確になる。
b.また、溶湯液面が湯面検知手段34により検知された後、真空吸引装置40に通じる開閉弁39を閉じてラドル31内を密閉して真空吸引圧を保持するようにしているが、上蓋にあるシール部36や開閉弁39、41から外気が徐々に浸入し真空度が下がるため、搬送中に溶湯が漏出、滴下するという欠点もある。
第1の発明では、金型装置のキャビティ内へ溶融金属の溶湯を射出充填する射出スリーブへ溶湯を供給する給湯方法であって、ラドルの下端部にある給湯口を開いた状態で給湯口の下側のみを保持炉の溶湯内に浸漬し、ラドル内の気体を真空吸引することにより保持炉の溶湯をラドル内に吸引する際、吸引開始からは高速用吸引装置及び保持用吸引装置による吸引を行い、予め設定された吸引開始からの経過時間が経過したタイミングで前記保持用吸引装置のみによる吸引に切り替え、ラドル内の溶湯の湯面が上昇して湯面検知手段に接触し検知した時給湯口を閉じ、ラドル内への溶湯の取り込みを完了するようにした。
(1)ラドル内に溶湯を取り込む際、湯面の上昇位置を湯面検知手段で検知して給湯口を塞ぎ取り込みを即座に完了するので、計量精度が大気圧の変動に影響されることがなくなる。そのため、スリーブへの給湯量が安定し、長時間の運転でも品質の安定した鋳造が可能となる。
(2)溶湯をラドル内に吸引する時の真空圧力を二段階に設定できるので、吸引開始時からの高速吸引と終了前の低速吸引の両方が可能で、短時間かつ計量精度の高い吸引を実現できる。
(3)ラドル底面にある給湯口のシール部における溶湯の圧力を大気圧より若干低く保持できるので、溶湯のシール面に凝固物が付着しシール性が劣化した場合でも、搬送時にシール面から溶湯が漏出、滴下することがない。
ラドル110の外筒110bは垂直円筒容器状で、射出スリーブの中に挿入できるよう下方向に縮径している。外筒110bの下端部は、底面板110aの外周部と連続的につながっている。底面板110aの中央部には、垂直状態の筒状の導管112が貫通しており、高さ方向でほぼ真中の位置で接続固定されている。給湯口105は、導管112と遮蔽板114から構成される。また、外筒110bには図示しない保温材が巻かれており、搬送中等に溶湯の温度が下がることを防止している。
ラドルの外筒110bの中心線上には垂直棒116が存在し、上端は蓋板118を貫通して遮蔽板開閉シリンダー120のシリンダーロッドに接続されており、また、下端には水平円盤114aと堰板114bからなる遮蔽板114が固設されている。水平円盤114aは、導管112の外径よりも大きく外周下部に円筒状の堰板114bが下垂しているため、遮蔽板114は逆凸状に形成されている。遮蔽板開閉シリンダー120が動作し垂直棒118が降下すると、遮蔽板114の水平円盤114aの下面は導管112の上面に押し付けられ、給湯口105が閉じられる。また、垂直棒116が上昇すると、水平円盤114a下面と導管112の上面には隙間ができ、溶湯が通過できる流路が形成され、給湯口105は開けられる。
また、蓋板118には図示していない搬送用アームが取り付けられており、搬送用アームを動かす多関節ロボットなどによって、ラドルは保持炉と射出スリーブの間を搬送される。
蓋板118の排出口132には、不活性ガス供給装置が配管接続されている。不活性ガス供給装置は、配管接続される開閉弁Eと溶湯供給速度調整バルブ126と窒素ガスなどの不活性ガスを充満しているボンベから構成される。溶湯供給速度調整バルブ126の開度を変えることにより、溶湯を射出スリーブ内に注湯する時の速度を適切に調整できる。
高速用吸引装置は、高速用真空吸引バルブ123、サイレンサー121、高速吸引圧調整バルブ125、開閉弁Cから構成され、エアー圧供給口とつながっている。同様に、保持用吸引装置は、保持用真空吸引バルブ124、サイレンサー121、保持吸引圧調整バルブ124、開閉弁Bから構成され、エアー圧供給口とつながっている。高速用真空吸引バルブ123は保持吸引圧調整バルブ124より高い真空度で溶湯を高速で吸引するために用いられるので、保持用真空吸引バルブ122よりも容量が大きいことが望ましい。
高速用吸引装置は、吸入する際にラドル内で溶湯の上昇状態が乱れない程度の高速で吸引できるよう調整される。また、保持用吸引装置は、湯面を上限位置の若干上まで吸引できる程度の真空度に調整される。
また、蓋板118に設けられた吸引口131と排出口132は、1つの吸引排出口としてまとめ、配管の途中で分岐しそれぞれを吸引装置と不活性ガス供給装置に接続することが可能である。
それぞれの開閉弁は、ソレノイドを励磁すると開き、消磁すると閉じることができる。
吸引が進み湯面が湯面検出手段108の近傍まで上昇すると、開閉弁Cを閉じて高速用真空吸引バルブ123の動作を停止する。この開閉弁Cを閉じるタイミングは、予め設定された吸引開始からの経過時間であり、タイマーの計時完了により決まる。その後吸引は保持用真空吸引バルブ122のみで行われるが、吸引のための真空度はあまり高く調整されていないため湯面の上昇速度は低速となる。そして、湯面が湯面検知手段108に触れた瞬間切替弁Dは消磁され給湯口が閉じられて溶湯のラドル内への取り込みは即座に停止する。(図4参照)
このように、保持用真空吸引バルブ122と高速用真空吸引バルブ123を併用することで、短時間で計量精度の良い溶湯の取り込みが可能となる。
まず、ラドルを傾転して傾動した射出スリーブSの傾斜角に合わせ(工程(a))、ラドルの下部を射出スリーブSの中まで下降させる(工程(b))。続いて、吸引を停止し給湯口を開けるとともに不活性ガスを送り込み、ラドル内の圧力を上げて溶湯を射出スリーブ内に注湯する(工程(c))。注湯開始と同時にラドルを徐々に上昇させ、射出スリーブS内の湯面の上昇とラドルの上昇を同期させることで溶湯の落下高さを低く一定に保ち、より静かな注湯を行なう。さらに溶湯の排出速度は、不活性ガスの流量を任意に変えて調整することができるので、落下の際の溶湯Mへの空気の巻き込みが防止でき、かつできるだけ速い速度に調節される。そのため、溶湯の温度の低下が小さく空気の混入も無いので、鋳造欠陥の無い優れた成形品が得られる。ラドル内の溶湯Mの排出が完了した後、不活性ガスの供給を停止しラドルを射出スリーブS内より上昇させ(工程(d))、ラドルを傾転状態から垂直状態に復帰させる(工程(e))。
ここでは竪型射出スリーブへの注湯方法を説明しているが、これに拘泥することなく、横型の射出スリーブへの給湯も同様に行なうことができる。
以上が、本発明の実施例における給湯装置と、一連の注湯方法である。
2 射出スリーブ
3 プランジャーチップ
4 弁棒
5 溶湯出入口
6 シリンダー
7 空気出入穴
8 搬送用アーム
11 給湯用ラドル
12 底面板
13 導管
14 遮断板
15 サポート
16 重量検知手段
17 シール材
18 配管
19 開閉弁
20 真空吸引装置
21 開閉弁
22 不活性ガス供給装置
23 吸引口
24 蓋板
25 搬送用アーム
31 ラドル要部
32 導管
33 重錘
34 湯面検知電極(給湯量検知用)
35 湯面検知電極(吸引位置検知用)
36 シール材
37 吸引口
38 配管
39 開閉弁
40 真空吸引装置
41 開閉弁
42 不活性ガス供給装置
100 ラドルユニット
105 給湯口
108 湯面検出手段
110 ラドル
110a 底面板
110b 外筒
112 導管
114 遮断板
114a 水平円盤
114b 堰板
116 垂直棒
117 シール材
118 蓋板
119 フランジ
120 遮蔽板開閉シリンダー
121 サイレンサー
122 保持用真空吸引バルブ
123 高速用真空吸引バルブ
124 保持吸引圧調整バルブ
125 高速吸引圧調整バルブ
126 溶湯供給速度調整バルブ
127 真空度検出圧力センサー
131 吸引口
132 排出口
133 接続部材
200 横型のダイカストマシンの要部
201 金型装置
202 射出シリンダー
211 プランジャーチップ
212 プランジャーロッド
213 カップリング
214 ピストンロッド
215 ピストンヘッド
216 射出シリンダー
217 射出スリーブ
218 固定金型
219 可動金型
220 固定プラテン
221 可動プラテン
222 キャビティ(空洞)
A 開閉弁(吸引用)
B 開閉弁(保持吸引用)
C 開閉弁(高速吸引用)
D 切替弁(遮蔽板開閉シリンダー用)
E 開閉弁(不活性ガス供給用)
M 溶湯(溶融金属)
F 保持炉
S 射出スリーブ
Claims (6)
- 金型装置のキャビティ内へ溶融金属の溶湯を射出充填する射出スリーブへ溶湯を供給する給湯方法であって、
ラドルの下端部にある給湯口を開いた状態で前記給湯口の下側のみを保持炉の溶湯内に浸漬し、前記ラドル内の気体を真空吸引することにより保持炉の溶湯を前記ラドル内に吸引する際、吸引開始からは高速用吸引装置及び保持用吸引装置による吸引を行い、予め設定された吸引開始からの経過時間が経過したタイミングで前記保持用吸引装置のみによる吸引に切り替え、前記ラドル内の溶湯の湯面が上昇して湯面検知手段が検知した時前記給湯口を閉じて、ラドル内への溶湯の取り込みを完了することを特徴とする給湯方法。 - 請求項1に記載の給湯方法であって、
前記高速用吸引装置が、前記保持用吸引装置よりも真空度を高く調整されていることを特徴とする給湯方法。 - 請求項1または2に記載の給湯方法により前記ラドル内に溶湯を取り込んだ後、
真空吸引を保持した状態で、前記ラドルを保持炉から引き上げ射出スリーブまで移送し、真空吸引を停止するとともに前記給湯口を開き、不活性ガスを前記ラドル内に供給して、射出スリーブ内に溶湯を注湯することを特徴とする給湯方法。 - 金型装置のキャビティ内へ溶融金属の溶湯を射出充填する射出スリーブへ溶湯を供給する給湯装置であって、
内部に溶湯を貯留するラドルと、前記ラドルの下端部に設けられ開閉可能な給湯口と、前記給湯口を開閉する給湯口開閉手段と、前記ラドルの上側に取り付けられた蓋板と、前記蓋板に支持され前記ラドル内の溶湯の湯面を検知する湯面検知手段と、前記ラドル内の気体を吸引するため前記蓋板に設けられた吸引口に配管接続され、それぞれが単独または同時に前記ラドル内の気体を真空吸引可能な高速用吸引装置及び保持用吸引装置と、を備えたことを特徴とする給湯装置。 - 請求項4に記載の給湯装置であって、
前記ラドルは、内部に溶湯を貯留する外筒と、前記外筒の下端と外周部が連続する底面板からなり、
前記給湯口は、前記底面板を貫通し前記底面板の上下方向に延在し外径が前記外筒の下部の内側よりも小さな円筒状の導管と、前記蓋板を貫通する垂直棒の下端に固設され外径が前記導管よりも大きい水平円盤と前記水平円盤の外周部に下垂する円筒状の堰板より構成される遮蔽板からなり、
前記給湯口開閉手段は、前記蓋板の上側で支持され、前記垂直棒の上側と接続し、前記垂直棒を上下に動作可能で、前記遮蔽板の前記水平円盤の下面を前記導管の上面に押し付けることにより前記給湯口を閉じ、前記遮蔽板の前記水平円盤の下面と前記導管の上面との間に隙間を設けることにより前記給湯口を開けることが可能な構造である、
ことを特徴とする給湯装置。 - 請求項4または5に記載の給湯装置であって、
前記ラドル内に不活性ガスを供給するため前記蓋板と配管接続された不活性ガス供給装置、を備えたことを特徴とする給湯装置。
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