JP5076165B2 - 強固に付着した銅めっき安定化材を有するNb−Al系超伝導線材とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、核融合炉用マグネット、加速器用マグネット、高分解能を有する核磁気共鳴(NMR)用マグネットなどに応用されるNbAl系の超伝導線材の製造方法、およびNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の製造方法に関する。
従来、NbSn、VGa、NbTiよりも臨界温度(Tc)及び上部臨界磁界(HC2)が高く、しかも線材の製造コストが低減されると期待されるNbAl系の超伝導の線材化研究が、1970年代後半から数多く行われてきた。しかし、NbAlは、従来では線材化が難しいという重大な問題点があって、その実用化が阻まれてきた。
近年、特許文献1に見られるように急熱急冷処理法によって線材化の見通しが得られつつある。この方法の要点は、次の通りである。まずNbとAlとからなるフィラメントを事前に製造しておき、次にこのフィラメントをNbパイプあるいはTaパイプ中に詰め、静水圧押出しにより線材(NbAl/Nb複合体あるいはNbAl/Ta複合体=前駆体)を成形する。しかる後に、通電加熱して一気に2000℃程度に昇温し、直ちに液体Ga浴で急冷してNb−Alの過飽和固溶体となす。次いで適切な形状に加工した後、800℃程度の温度でNbAlに変態させて製造するというものである。特許文献2には、前駆体の製造方法が詳細に記載されている。
図1および図2には代表的なマルチ線材(以下、NbAl/Nb複合線材ともいう。一般に、前駆体と称される)の製造方法を示す。また、図3にはマルチ線材からさらに、急熱急冷装置によりNb−Alへと過飽和固溶体化させる工程を示している。ここで急熱急冷・変態化法とは、線材温度が2000℃近い高温にもなる特殊な製法である。
ところでNb自体は、常伝導状態での電気抵抗が大きく、クエンチ時のホットスポットの抑制や線材の発熱溶損防止のための安定化材としての機能を期待できない。この為に超伝導線材の実用化に於いて何某かの安定化材の複合が必要条件となっている。
Nb−Al系線材の安定化材としては銅、銀等の熱伝導性の良い金属とその合金が多用されており、安定化材の複合化方法としては内部安定化法(例えば特許文献3参照)と外部安定化法とがある。後者の外部安定化法は安定化材比の自由度が大きく、直接冷媒と接するために冷却効率が高いという利点がある。しかし先に述べた急熱急冷・変態化法に於ける工法上の制約から線材温度が2000℃にもなるために融点がこの温度よりも低い銅等の安定化材を、前駆体の製作過程で、事前に被覆して置くことが出来ないという問題がある。
この問題を解決するために提案されている方法として、特許文献4にその詳細が開示されているが、図4に例示した銅クラッド加工法の如く、圧延加工による物理的な力で安定化材を複合させる方法がある。しかしながらこの方法では、円形断面の線材が出来ないことに加え、Nbと圧接される銅シートとの界面の一様な密着性の信頼性が確保出来ず、Nbと安定化材との接触抵抗増大に関与する界面からの剥離現象を呈し易いという基本的な問題が存在する。
この問題に鑑みて、特許文献5及び非特許文献1では、急熱急冷・変態化法で製作されたNb−Al系超伝導線材に対して、安定化材などの金属の必要膜厚の全てをイオンプレーティング法で形成させるという提案と、イオンプレーティング法によって、Nb表面との密着性確保の手段として金属薄膜を第1の安定化材層として形成させ、しかる後に公知の電気銅めっき技術などで第2の安定化材層を肉盛りする方法の提案がなされている。真空チャンバーを利用するこの種の手法は、酸化・不動態化し易いNbに対してその表面に形成する安定化材の密着性を確保するという点では好ましいものであると考えられる。しかしその一方で安定化材の成膜速度が比較的遅く、長尺化対応が難しいといった制約が生産性に乏しいという現実的な問題を露呈している。つまり、高価且つバッチ処理を基本とする真空チャンバーを利用するが為に最終的に必要とする超伝導線材を安定的、且つ経済的に生産するという点に於いて適切な方法とはなり得ない。
一方、特許文献6では当該超伝導線材に対し、Nb表面の不動態膜(酸化膜)を効果的に除去したり、洗浄工程で使用する洗浄水の脱気処理を行うなどの処理、あるいは前処理に用いた酸類と成分的に類似せしめためっき液を利用することによってNbと安定化材の銅あるいは銀めっきなどを密着させる方法を提案している。電気めっきの手法を利用するという点では量産性に優れた安定化材の形成方法であるが、このような手立てを講じても、安定化材を形成した後、NbAl変態させる800℃程度の二次熱処理(ベーキング)工程に至るまでに行う諸々の加工工程、例えば曲げ加工、より線加工、再度のダイス伸線加工などに耐えうる実用的密着力には達しておらず未だに実用に至っていない。なお、付け加えれば二次熱処理に先立ち、安定化材の被覆を先行する理由は、Nb−Al過飽和固溶体の状態から脆いNbAl化合物となって、その後の諸々の加工が事実上不可能となることにある。
また、特許文献7には、マルチ線材に外部安定化材をめっきするとの記載がある。しかしながら、その具体的な手法についての詳細は一切開示されていない。
さらに特許文献8では、NbAl芯線の外周にNb層(下層)、さらにその外周に銅や銀の安定化材層(上層)を有する超伝導線材において、Nb表面と銅や銀の安定化材層との間にNi、Sn、Ag、Au、Pt、Pd単体もしくはこれらの合金からなる中間膜を備えたNbAl超伝導線とその製造方法が開示されている。なお、中間膜は電気めっき法、無電解めっき、蒸着法で形成させるとしており、中間膜と下層のNb表面及び上層の安定化材とを密着させるために超伝導線材の機能喪失温度以下で熱処理して拡散させるという工法を提案している。
しかしながら、特許文献8の技術内容には不明なことも多く、明細書の記述では芯線を束ねたその表面にNbを電気めっき、無電解めっき、蒸着等で被覆した後に、さらに、その表面に中間膜を被覆するとしている。原理的にNbの無電解めっきは不可能であり、また水溶液をベースとした公知のNbの電気めっき技術は存在しない。さらに蒸着法でのNbの被覆も些か実現性に無理がある。本発明者らが電気めっき技術に限って技術内容を追試して見ると、提案されている方法には重大な欠点があることを発見した。例えば中間膜としてSn、Ag、Auなどを用いる妥当性の有無に問題がある。つまり、これらの金属は、元々Nbと反応するよりも安定化材の銅、銀との反応性が高く、速やかに安定化材側に拡散する。これらの中間層を電気めっき、無電解めっき法によって被覆し得るとしても、安定化材の被覆時やその後の加熱時に安定化材に膨れを生じ易い。さらに一見健全に見える安定化材が被覆できたとしても90°曲げ試験により、僅か1回の折り曲げで剥離したりする。その理由はNbの表面が極めて不動態化し易く、この状態に於いてNbとの拡散反応層を形成して結合するとは考え難い。さらに一切の開示もないが、残るNi、Pt、Pdとその合金にしても中間膜の被覆に当たり、Nb表面の不動態膜の除去とその後の活性面の維持が容易な蒸着法等を採用しない限り、これらを密着させることが出来ない。つまり無電解めっき法や電気めっき法に於いてはNb表面の不動態膜除去方法やさらには選定しためっき液(浴)の妥当性の有無の問題が一切考慮されていない。またいずれの中間膜被覆方法でも共通の課題となるが、Nb−Al超伝導線材前駆体の製造時に線材表面に付着・拡散しているGa残滓の除去方法の適否がその後に形成する皮膜の密着性に大きく影響することを本発明者らは知見したが、これらに関する開示は一切為されていない。以上のように工業的に見て効果的な銅安定化材の被覆技術が未だ完成されておらず、これが、NbAl系の超伝導線材が未だに実用に供せられていない理由となっているものと考えられる。
特許第3516060号公報 特開2000−113747号公報 特開2001−52547号公報 特開2000−113748号公報 特許第3629527号公報 特開平11−329113号公報 特開2003−223823号公報 特開2000−243158号公報 急熱急冷・変態法Nb3Al線材の安定化に対する銅イオンプレーティングの効果;27〜35ページ,Vol.34,No.10,低温工学,(1999) Modern Electroplating,p624,(1974)
本発明は、銅安定化材が強固に密着して被覆された、実用に耐えうる新規なNb−Al系超伝導線材を提供すること、および、そのようなNb−Al系超伝導線材を簡便かつ経済的に製造できる工業的に有利な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、まず特許文献6に提案される方法の追試と非特許文献2のNbに関する公知の電気めっき手法の追試を開始した。この際、急熱・急冷法に付随するNb−Al系超伝導線材の製法上の必然性からNb外層材の表面に残存するGa残滓の除去法は取り敢えず別途に考慮することとし、Nb材に対する銅安定化材の密着性を確保することを課題として被覆工程の確立に注力した。なお、試験に当たっては市販の純ニオブ板をその評価用として利用した。
特許文献6に提案する方法は、実質的にNb表面の酸化皮膜の膜厚を制御して、フッ化水素酸、ホウフッ化銅液を利用した銅による導電性金属膜の形成と、また要すれば大気隔離や導電性金属膜形成後、あるいは導電性金属膜の表面に銅安定化材を被覆する中途段階で水素除去を目的として50〜600℃での加熱処理により銅めっき皮膜を密着させるというものである。本発明者らが追試し、JIS−H−8504(密着性試験方法)に規定される「曲げ試験方法」によって評価すると、僅か1回の曲げにも耐えきれず銅めっき皮膜が剥離した。また銅めっき後に600℃で加熱処理すると銅皮膜に膨れを生じ、熱処理による脱水素の密着性に及ぼす改善効果は全く見られない。
一方、非特許文献2には2種類の手法の記述がある。一つは、フッ化水素酸の溶液中での交流電解処理、水洗後、硝酸−フッ化水素酸の溶液への浸漬、水洗、鉄めっきと続き、最終的に700℃で1時間の熱処理によりめっきを密着させるというものである。残りの別法は、水酸化ナトリウム溶液中での陽極処理、水洗、ウッドニッケルストライク浴でのめっき、続いて鉄ないしニッケルめっきと被覆し、最後に赤熱加熱でめっきを密着させようというものである。いずれも追試の結果では、特許文献6の結果と同様に銅安定化材そのものが密着しない。
本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系超伝導線材から、
(a)前記Nb−Al系線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
(b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
(c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;
(d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程
さらに好ましくは、
(e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400〜700℃でベーキングする工程
を経てNb3Al化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を製造する方法を開発し、さらに、該Nb3Al化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を、700℃以上の温度で熱処理する工程を経て、NbAl化合物系超伝導線材を製造する方法を開発した。そして、かかる方法およびそれにより得られたNbAl化合物系超伝導線材が、前記した従来の課題を一挙に解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材の外周表面に中間層としてのNi皮膜を介して安定化材としてのCu皮膜が密着形成されてなるNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、
[2] 前記過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材の表面にGa残滓が実質的に存在しない前項[1]に記載のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、
[3] Cu皮膜の厚さが40μm以上である前項[1]に記載のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、
[4] 線径が0.1mm以上である前項[1]に記載のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、
[5] Ni皮膜およびCu皮膜が電気めっき皮膜である前項[1]に記載のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、
[6] 液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材から、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を製造する方法であって、
(a)前記Nb−Al系線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
(b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
(c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;および
(d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程
を含むことを特徴とするNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の製造方法、
[7] 前記(a)〜(d)の工程に加えて、
(e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400〜700℃でベーキングする工程
を含むことを特徴とする前項[6]に記載の製造方法、
[8] 工程(a)におけるGa残滓の除去を、研磨手段によって行う前項[6]に記載の製造方法、
[9] 工程(b)における不動態化させない条件が、Nb−Al系線材の表面を実質的に酸化させない条件である前項[6]に記載の製造方法、
[10] 工程(c)におけるニッケルストライク浴が、ニッケルの塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸とを含んでなるpH2以下の液である前項[6]に記載の製造方法、
[11] 工程(d)における電気めっきをCuの皮膜の厚さが40μm以上となるように行う前項[6]に記載の製造方法、
[12] 工程(e)におけるベーキングを、酸化防止雰囲気下500〜650℃で行う前項[6]に記載の製造方法、
[13] NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の線径が0.1mm以上である前項[6]に記載の製造方法、
[14] 液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材から、NbAl化合物系超伝導線材を製造する方法であって、
(a)前記Nb−Al系超伝導線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
(b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
(c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;
(d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程;
(e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400〜700℃でベーキングする工程;および
(f)工程(e)で得られる、ベーキングされたNb−Al系線材を、700℃以上の温度で熱処理する工程
を含むことを特徴とするNbAl化合物系超伝導線材の製造方法、
[15] 工程(a)におけるGa残滓の除去を、研磨手段によって行う前項[14]に記載の製造方法、
[16] 工程(b)における不動態化させない条件が、Nb−Al系線材の表面を実質的に酸化させない条件である前項[14]に記載の製造方法、
[17] 工程(c)におけるニッケルストライク浴が、ニッケルの塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸とを含んでなるpH2以下の液である前項[14]に記載の製造方法、
[18] 工程(d)における電気めっきをCuの皮膜の厚さが40μm以上となるように行う前項[14]に記載の製造方法。
[19] 工程(e)におけるベーキングを、酸化防止雰囲気下500〜650℃で行う前項[14]に記載の製造方法。
[20] 工程(f)における熱処理を、700℃〜1000℃の温度で行う前項[14]に記載の製造方法
に関する。
本発明のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材においては、Nb−Al系線材の表面にNi皮膜を介して銅安定化材が強固に密着しているので、これを用いることにより、銅安定化材が強固に密着しているために高い臨界温度(Tc)と上部臨界磁界(HC2)を示すNbAl化合物系超伝導線材が得られる。
また、本発明の製造方法によれば、そのような銅安定化材が強固に密着した化合物変態前のNb−Al系超伝導線材、ひいては高い臨界温度(Tc)と上部臨界磁界(HC2)を有する優れたNbAl化合物系超伝導線材を簡便かつ経済的に製造することができる。なぜならば、本発明の製造方法では、Nb−Al系線材への外部安定化材の被覆に於いて、不動態化し易い線材表面に強固に密着した銅安定化材を経済的かつ簡便な汎用の電気めっき技術のみで被覆できるからであり、それによって二次熱処理工程に移行する迄に必然的に派生する諸々の加工工程で付与される各種の作用応力に耐え得る銅安定化材の強固な密着性を実現できるからである。なお、Nb金属の具備する高い活性度がその表面に強固な不動態膜(酸化膜)を形成し、その存在が各種のめっき皮膜に要求される密着性確保の障害となることはよく知られている。また、安定化材の密着性という点では問題のないイオンプレーティング法による成膜手段を採用した従来方法と比較しても、イオンプレーティングの適用には真空チャンバーの利用が必須で生産性に難点を抱えるのに対し、本発明の製造方法では汎用性の高い電気めっき技術により銅安定化材を強固に密着できるので、工業的に有利である。
本発明の線材の前躯体となるNbAl/Nb複合線材の製造プロセスを表わすチャートである。図中、JRは、ジェリーロールの略称である。 本発明の線材の前躯体となるNbAl/Nb複合線材の製造プロセスにおける線材の構造を表わす模式図である。 本発明の出発線材料となる線材を加工する為の急熱急冷装置とその製造要領を示す図である。この工程により、前躯体は過飽和固溶体の状態となる。 銅安定化材を被覆する別法としての代表的な銅クラッド工程を図示したものである。 本発明方法によって製造した銅安定化材被覆Nb−Al線材をローラーダイスによって伸線加工した時の伸線前後の断面ミクロ写真である。
符号の説明
1 キャブスタン
2 液体Ga浴
3 送出しリール
4 巻取りリール
本発明のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材(以下、「本発明のNb−Al系超伝導線材」と略記することがある)は、過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材の外周表面に中間層としてのNi皮膜を介して安定化材としてのCu皮膜が密着形成されてなる線材である。
本発明に用いられる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材は、液体Ga中で冷却して得ることができる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材である。このNb−Al系線材は、後述する熱処理により超伝導化合物であるNbAl化合物に変態するが、当該変態前においてもそれ自体超伝導性を示し得る。したがって、本明細書では便宜上「Nb−Al系超伝導線材」でなく「Nb−Al系線材」と表わすが、超伝導性を排除する意味ではない。また、前記Nb−Al系線材は、通常は液体Ga中で冷却して得られるため、Ga残滓が表面に付着しているが、本発明のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材におけるNb−Al系線材の表面、詳細にはNb−Al系線材とNi皮膜ないしCu皮膜との間には、Ga残滓が実質的に存在しないことが好ましい。Ga残滓が実質的に存在しないようにするには、Ni皮膜の形成前にGa残滓を除去することが有効であり、これによりNi皮膜ひいてはCu皮膜がより強固にNb−Al系線材の表面に密着する。
前記のCu皮膜の厚さとしては、40μm以上であることが好ましく、40μm以上であると安定化材としての機能をより確実に発揮することができる。Cu皮膜の厚さの上限としては特に限定されないが、超伝導線材全体に占める超伝導物質の割合を考慮すれば、通常は超伝導線材の線径(Cu皮膜を含む超伝導線材全体の直径)に対して60%以下程度にとどめるのが好ましい。
本発明のNb−Al系超伝導線材の線径としては、0.1mm以上が好ましい。0.1mm以上のものであれば、歩留まり良く製造できる。線径の上限としては特に限定されないが、可撓性等を考慮すれば3.0mm程度以下にとどめるのが好ましい。
本発明のNb−Al系超伝導線材において重要なことは、前記Cu皮膜とNb−Al系線材との間にNi皮膜が介在することであり、このことによって安定化材としての銅皮膜が、種々の加工によっても耐えうるほど強固に密着して形成されるのである。そのような観点から、該Ni皮膜の厚さとしては、0.01μm〜10μmであることが好ましい。0.01μm未満では、Ni皮膜を設けた効果が十分に発揮されない場合があり、一方、10μmを超えると、NiがCu皮膜内に拡散して、Cuの純度を低下させたり、外力により拡散層に割れが生じ易くなるという害をもたらす場合があるので、0.01μm〜10μmであることが好ましいのである。
なお、前記のNi皮膜およびCu皮膜としては、いずれも電気めっきにより形成された皮膜、すなわち電気めっき皮膜であることが好ましい。所望の厚さの皮膜を簡便かつ経済的に形成でき、皮膜の均一性にも優れているからである。
本発明のNb−Al系超伝導線材におけるCu皮膜の密着性としては、JIS−H−8504に準拠して、線材を片側に90°曲げて元に戻し、さらに反対側に90°曲げて元に戻すという作業を一往復とし、繰り返し曲げるという90°曲げ試験を行った際に、4往復繰り返しても皮膜の剥離が認めらないことが好ましく、5往復繰り返しても皮膜の剥離が認めらないことがより好ましい。さらにいえば、線材が破断するまで皮膜の剥離の認められないことが特に好ましい。
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の製造方法は、液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材から、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を製造する方法であって、
(a)前記Nb−Al系線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
(b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
(c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;
(d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程
を含むことを特徴とする。
また、所望により、前記(a)〜(d)の工程に加えて、
(e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系超伝導線材を、酸化防止雰囲気下400〜700℃でベーキングする工程
を含むことが好ましい。
本発明の製造方法で使用される過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材は、液体Ga中で冷却して得られる線材であり、Ga残滓が表面に付着している。前記の過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系超伝導線材は、NbAl/Nb複合線材を急熱し、その後直ちに液体Ga中で急冷することにより得られる。急熱急冷手段としては、例えば、図3に示される急熱急冷装置を用いる公知の急熱急冷手段などが挙げられる。以下、図3を用いて、前記の過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材を得るための好ましい方法につき説明する。
図3に示される急熱急冷装置は、送出しリール3、通電キャプスタン1、液体Ga浴(以下、Gaバスともいう)2、および巻取りリール4を具備する急熱急冷装置である。送出しリール3から送出したNbAl/Nb複合線材を通電キャプスタン1とGaバス2間で通電加熱して線材温度を2000℃近くまで昇温させ、その後直ちに40〜50℃程度のGaバス2で急冷して、過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材を生成させ、これを巻取りリール4に巻き取る。
前記NbAl/Nb複合線材は、公知であり、ジェリー・ロール(JR)法、ロッド・イン・チューブ(RIT)法、クラッド・チップ・エクストルージョン(CCE)法などにより製造される。
以下、図1および図2を用いて、JR法により製造されるNbAl/Nb複合線材について説明する。
図1は、NbAl/Nb複合線材の製造プロセスを表したフローチャートである。図2は、シングルビレット(a)、マルチビレット(b)およびNbAl/Nb複合線材(c)の模式図である。
Nb棒(Nbコア)にAlシートとNbシートとを重ね巻き(JR)して、フィラメントの母材となるシングルビレット(a)を作製する。このシングルビレット(a)に静水圧押出を施した後、伸線によりマルチビレット組込み用六角断面モノフィラメント線材を作製する。ついで、この六角断面モノフィラメント線材を多数本Nbパイプに組込み、マルチビレット(b)を作製する。マルチビレット(b)に静水圧押出を施した後、伸線によりNbAl/Nb複合線材(c)を製造する。
本発明の製造方法においては、前記した方法などによって得られた過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材に、以下の工程で示す処理が施されてゆく。以下、本発明の各工程につき説明する。
(工程a)
工程(a)は、前記の過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材の表面に付着したGa残滓を物理的に除去する工程である。Ga残滓を除去する手段としては、物理的な手段が好ましく、例えば、研磨手段などが挙げられ、より具体的には、例えば、研磨紙で研磨する手段などが挙げられる。また、このような研磨手段は、摩擦熱を抑制するという点で、湿式で行われるのが好ましい。なお、Ga残滓の除去は次工程(b)の直前に行われればよく、物理的手段で除去する場合には、それに先立って、化学的な手段による除去を行っても差支えない。
(工程b)
工程(b)は、工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程である。
(脱脂処理)
前記脱脂処理は、Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で行われるが、この「Nb−Al系線材を不動態化させない条件」とは、Nb−Al系線材の表面を実質的に酸化させない条件を広く意味する。そのため、本発明の効果が大きく損なわれない範囲においてはNb−Al系線材の表面が一部酸化していてもよい。
脱脂手段としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、浸漬脱脂や陰極電解脱脂などの公知の脱脂手段が挙げられる。前記浸漬脱脂に用いる薬剤は公知のものでよく、市販されているいずれのメーカーのものでもよい。メーカー品を用いる場合には、メーカー推奨条件をそのまま適用しても支障がない。
前記陰極電解脱脂に用いる薬剤は公知のものでよく、市販のものであってよいが、好ましくは、商品名パクナエレクターZ−1(カルボン酸塩、炭酸塩およびアミン類の混合物、ユケン工業株式会社製)と水酸化ナトリウムの組み合わせ、ないしは公知の水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物である。好適な商品名パクナエレクターZ−1と水酸化ナトリウムの組み合わせの陰極電解脱脂処理条件としては、下記表1に示される陰極電解脱脂処理条件が挙げられる。
また、好適な水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物の陰極電解脱脂処理条件としては、下記表2に示される陰極電解脱脂処理条件が挙げられる。
(酸洗浄処理)
前記酸洗浄処理は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の酸洗浄処理であってもよいが、好ましくは浸漬による酸処理または陰極電解による酸処理である。例えば、前記酸洗浄処理として、フッ化水素酸を用いる酸浸漬処理を採用する場合には、好ましい酸浸漬処理条件は、46%フッ化水素酸50〜300mL/L、温度20〜30℃および浸漬時間1〜10分間である。
硫酸とフッ化水素酸との混液を用いる陰極電解による酸処理を採用する場合には、好ましい酸処理条件は、下記表3に示される条件である。
また、硫酸とフッ化アンモニウムまたはフッ化ナトリウムとの混液を用いる陰極電解による酸処理を採用する場合には、好ましい酸処理条件は、下記表4に示される条件である。
(工程c)
工程(c)は、工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程である。
(ニッケルストライク浴)
前記ニッケルストライク浴は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のニッケルストライク浴であってよいが、好ましくは、ニッケルの塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸とを含んでなるpH2以下の液であり、より好ましくは、ニッケルの析出と水素還元とを同時に起こせる低効率で多量の水素を発生する塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸塩とを含んでなるpH2以下の液である。このような好ましいニッケルストライク浴としては、より具体的には例えば、塩化物型(ウッド)ニッケルストライク浴、硫酸塩型ニッケルストライク浴、スルファミン酸型ニッケルストライク浴などが挙げられる。
前記塩化物型(ウッド)ストライク浴の好ましい浴組成としては、下記表5で示される浴組成が挙げられる。
前記硫酸塩型ニッケルストライク浴の好ましい浴組成としては、下記表6で示される浴組成が挙げられる。
前記スルファミン酸型ニッケルストライク浴の好ましい浴組成としては、下記表7で示される浴組成が挙げられる。
なお、本工程において電気めっきは、Niの皮膜の厚さが0.01μm以上となるようにして行われるのが好ましい。
(工程d)
工程(d)は、工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程である。
(Cuめっき浴)
工程(d)において用いられるCuめっき浴は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知のCuめっき浴であってよい。しかしながら、銅の純度や伸びを必要とするために極力添加剤を含まないものや毒性が少なく、排水処理のやりやすい浴が好ましい。そのため、ホウフッ化銅浴やシアン化銅浴は避ける方がよく、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が好ましく採用されるが、ピロリン酸銅浴は適正なめっき条件が50〜60℃であるため、加熱を要するという難点があり、硫酸銅浴が最も好ましい。硫酸銅浴の好ましい条件は下記表8に示すとおりである。なお、線材のさらなる伸びの特性を要すれば通常の整流電源に替えて、パルス電源ないしPR電源を利用してもよい。
なお、本工程において電気めっきは、Cuの皮膜の厚さが40μm以上、より好ましくは100μm以上、最も好ましくは150μm以上になるようにして行われるのが好ましい。また、工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系超伝導線材(NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材)の線径は、特に限定されないが、0.1mm以上であるのが好ましく、0.5mm以上であるのがより好ましい。
(工程e)
(工程e)
工程(e)は、工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400〜700℃でベーキングする工程である。本工程により、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線線材におけるNb−Al系線材とNiないしCu皮膜との密着性をより向上させることができるので、前記(a)〜(d)の工程に加えて実施されることが好ましい。そのため、本工程では、Nb−Al系超伝導線材のNb−Al成分をNbAl化合物に変態させないように、400℃以上700℃未満でベーキングが行われる。前記ベーキングは、好ましくは酸化防止雰囲気下400〜650℃で、特に好ましくは酸化防止雰囲気下500〜650℃で行われる。前記酸化防止雰囲気は、好ましくは、真空または不活性ガス雰囲気である。なお、本工程のベーキングによる線径の変化は通常殆ど認められない。
以上のようにして、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線線材が得られる。本発明では、このNb−Al系超伝導線線材をさらに熱処理して、Nb−Al系超伝導線線材中の過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材を構成する物質の少なくとも一部をNbAl化合物に変態させることにより、NbAl化合物系超伝導線材を製造することができる。すなわち、本発明のNbAl化合物系超伝導線材の製造方法は、前記の(a)〜(e)の工程に加え、下記の工程(f)を含むことを特徴とする。
工程(e)で得られる、ベーキングされたNb−Al系超伝導線材は、所望により成形加工されて、工程(f)に用いられる。かかる成形は常法に従い行われ、成形手段としては、例えば、伸線などの公知の成形手段が挙げられる。前記成形により得られたNb−Al系超伝導線材も、「工程(e)で得られる、ベーキングされたNb−Al系超伝導線材」として工程(f)に用いることができる。
(工程f)
工程(f)は、工程(e)で得られる、ベーキングされたNb−Al系超伝導線材を、700℃以上の温度で熱処理する工程である。本工程により、Nb−Al系超伝導線材のNb−Al成分をNbAl化合物に変態させることができる。本工程における熱処理温度は、NbAl化合物への変態が可能であり、かつ銅の熔融温度より低い温度であればよく、通常700℃〜1000℃であり、好ましくは700℃を超え1000℃以下の範囲内の温度である。
かくして得られたNbAl化合物系超伝導線材は、核融合炉用マグネット、加速器用マグネット、高分解能を有する核磁気共鳴(NMR)用マグネットなどに用いられる。
以下に実施例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されないことはいうまでもない。
なお、実施例を示す前に、本発明を完成する過程で行った試験についての実験例を示す。
(実験例1)Nb基材に銅安定化材を強固に付着させる手法の発見に関する試験
試験片として、全て2.5mm厚の純Nb板を幅10mm、長さ50mmに切断したものを利用した。また銅安定化材を被覆するめっき液として硫酸銅浴に暫定固定し、膜厚も0.1mm厚の銅めっきに固定して、めっき工程につきものの脱脂方法、不動態膜除去方法(活性化方法)、不動態化し易い金属や化学的置換を呈す金属に必須とされるストライクめっき(例えばステンレス鋼に必須とされるウッドニッケルストライクめっきや鉄材に直接銅めっきするためのシアン化銅めっきがそうである。)の有効性の有無さらには銅安定化材を被覆して後の熱処理の要否及び条件の妥当性を温度600℃、1時間の加熱条件で確認することとした。
試験条件を下記表9に取りまとめた。なお、表9中の詳細な内容は次の通りである。
(1)各工程欄に記入してある「○」印は、当該工程を実行し、試したことを意味している。
(2)「電解脱脂(*1)」:水酸化ナトリウム 50g/L、炭酸ナトリウム 50g/Lの液で、温度50℃に於いてNb板を陽極にして電解する場合と陰極にして電解する場合とをそれぞれ陽極処理、陰極処理と表現している。なお適用電流密度は陽陰極共に5A/dm一定としている。
(3)酸洗・不動態膜除去工程の「電解処理(*2)」とは、電解脱脂と同様にNb板を陽陰極で処理する場合の区別をつけたものである。なお電解液は、Nbを陽極にすると積極的に溶解(エッチング)する20容量%硫酸とフッ化水素酸とを調合したものとしている。同じ酸洗い・不動態膜除去工程の「浸漬処理」には、無通電状態でも液に浸漬するだけでNbを溶解する硝酸とフッ化水素酸の混合液を用いた。なお硝酸は、Nbの酸化剤として作用する。
(4)中間層被覆工程での「A(*3)」は、本発明で用いる塩化ニッケルと塩酸とからなり、通常ウッドニッケルストライクと称されるめっき前処理にのみ利用する。また「B(*3)」は、硫酸ニッケルと硫酸とからなるストライクに利用するめっき液であり、いずれも付着速度重視ではなく、被めっき物の表面を水素還元しつつめっきを析出させる目的で利用する液である。なおいずれのストライク液も室温で5分間の固定条件でめっきした。
(5)「Ni(*4)」とは、代表的なニッケルめっき液であるワット浴を利用し、硫酸ニッケル240g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸35g/Lとし、温度50℃、電流密度2A/dmで5分間めっきした。
(6)「銅(*5)」は、Nbが電位的に卑な金属であることを考慮し、鉄系材料に直接銅めっきする場合に多用するシアン化銅液を用い、銅ストライクとして50℃に於いて、3A/dm、5分間めっきした。
(7)「銀(*6)」の場合も、Nbが電位的に卑な金属である為に、化学置換防止のためにシアン化銀ストライク液を利用することとし、室温で1分間銀めっきした。
(結果)
前記で得られた各試験片(No.1〜No.16)につき、90°曲げ試験(前記した通り、JIS−H−8504に準拠して行う。以下同じ。)を行った。結果を表10に示す。
表10中の銅安定化密着性評価欄の記号の説明
「◎」・・素材が破壊するまで(6往復繰り返すと破断)90°曲げ試験を繰り返しても銅安定化材には剥離現象は全く認められない。
「○」・・90°曲げ試験を3往復繰り返し、4往復目で始めて銅安定化材の剥離が見られる。
「△」・・90°曲げ試験で1往復目では異常がなかったが2往復目で銅安定化材の剥離がみられる。
「×」・・90°曲げ試験で1往復を終えるまでも耐えきれず90°に曲げただけで銅安定化材の剥離が見られる。
「××」・・90°曲げ試験に迄至らず、600℃に加熱しただけで局所的に銅安定化材に膨れが発生する。
前記結果より、脱脂工程では、それを電気的に行う電解脱脂とする場合にはNbへの水素吸蔵の危険を冒してでもNb表面の酸化(不動態化)を回避するために陰極的に処理することが妥当であることを示唆している。また酸洗・不動態膜除去工程に於いても、それを浸漬処理で行う場合には硝酸の様な酸化剤を併用する溶液を用いるとNbの表面は速やかに溶解する。その反面溶解機構が硝酸による表面酸化とフッ化水素酸による酸化皮膜の溶解が繰り返される結果であろうが、常にNb表面は酸化され不動態の状態となっているものと考えられる。従い、ニッケル中間層被覆までのいずれの工程であっても、一旦このような表面状態としてしまえば、以降の工程でニッケルストライクや銅安定化材被覆後の熱処理の効果は全く期待できないことを意味している。つまり手法を問わず、脱脂から中間層の形成までの全ての工程をNbへの水素吸蔵や表面に存在する加工変質層の除去の問題を度外視し、Nb表面を極力酸化、不動態化させないような工程でなければならないことを見出した。この知見からするとNbの電気めっきに関する公知の非特許文献2の手法が銅めっき皮膜の密着不良を呈すのは当然である。
さらに脱脂工程、酸洗・不動態膜除去工程の後の中間層被覆工程での適用皮膜種には明らかに適不適が存在し、電気めっき法に限定すれば特定の条件下に被覆したニッケルめっきが目的の達成に有利であることを見出した。特定の条件下に被覆したニッケルめっきとしては、積極的に皮膜の析出に利用する通常の液は当該目的には不適切で、めっきの前処理的に利用される強酸性、且つ低効率で多量の水素発生を伴いながら同時にニッケルの皮膜析出の起こる公知のストライク液種を利用することが効果的であった。その上で、銅安定化材形成後にはさらにベーキングするという条件を付与することが、安定化材とNbとをより強固に密着させる効果を奏し、課題の解決に大きく寄与することを見出した。なお、本試験に関連して知見したことをさらに補足すれば、脱脂工程で利用する浸漬脱脂剤や電解脱脂液は、市販のものが利用できる。しかし酸洗・不動態膜除去工程で利用する浸漬処理の薬剤としては硝酸の如き酸化剤を含まず、Nbに対して反応するフッ化水素酸単独の浸漬処理や硫酸とフッ化水素酸の混液、硫酸とフッ化アンモニウムやフッ化ナトリウムからなる溶液中での陰極電解処理等が好ましい。またニッケル薄膜の被覆厚は、この試験で利用した条件では0.3〜0.8μmの範囲となる。
(実験例2)銅安定化材をNbに密着させる為に好適な温度条件に関する試験
Nb表面に電気めっき技術で被覆した銅安定化材の強固な密着には最終的に熱処理(ベーキング)を行うことが極めて有効であることを知見したが、銅安定化材の熱処理による密着効果が脱水素にあるのかあるいはNb及び銅安定化材への中間膜の同時拡散層形成にあるのかという問題がクリアになっていないと同時に、条件として好ましいベーキング温度範囲が未決定のままである。そこで本発明者等は、実験例1に利用したものと同じ純Nb板を用い、銅安定化材の被覆工程を表9のNo.6の工程を利用して試料を作成し、アルゴン雰囲気炉を用いて、銅めっきのまま、300℃、400℃、500℃、600℃の各温度でベーキングした後、90°曲げ試験により銅安定化材の密着性の評価を行った。結果を表11に示す。
表11中、密着性の評価記号:
「◎」・・・素材のNbが破断(6往復繰り返し、7往復目に破断)してもNbからの銅安定化材の剥離は全く認められない。
「○」・・・3往復目までは異常がなかったが4往復目に銅安定化材の剥離が見られた。
「△」・・・1往復目までは異常がなかったが2往復目で銅安定化材の剥離が見られた。
表11の結果は、300℃迄のベーキング温度は実質的に銅安定化材の密着性改善には影響を及ぼさず、400℃以上のベーキング温度で初めて密着性の改善効果が見られることを発見した。さらに結果から見るとベーキング時間の長短は余り関与していないということになる。ちなみにEPMA(電子線マイクロアナライザー;島津製作所EPMA8705)により、それぞれの試料断面から特性X線像で確認すると400℃では時間の長短に関わらずNb及び銅へのニッケルの拡散の存在は、判別不能なレベルである。さらに500℃を超えても依然としてNb側へのニッケルの拡散は判別可能なレベルになく、殆どないといってもよい状態にある。しかし銅側に向かっては500℃に於いて0.5μm程度、また600℃では1〜2μm程度の拡散層の存在が確認されている。銅側への選択拡散は、銅とニッケルとの低い再結晶温度が関与していると思われ、それぞれ銅では200℃、ニッケルでは400〜600℃とされ、両金属共に再結晶温度に到達していることが相互拡散を助長しているものと考えられる。その一方でニッケルのNb側への拡散が殆ど皆無に近く、従って500℃以上で極めて強固に銅安定化材がNbと密着する根拠とするに足る理由とはなり得ない。一方で脱水素の効果とするにしても通常レベルで実施する脱水素目的の温度域は150〜250℃であり、はるかに高い温度域に於いで密着性改善効果に繋がることを脱水素の効果であるとするのもいささか不自然である。いずれにしても銅安定化材のNbへの密着性確保手段として好ましいベーキング温度域は、400℃以上であって、特に好ましい温度は500℃以上である。また温度上限はNbAlへの変態化を考慮すれば700℃未満ということになるが、安全を見込めば650℃程度となる。なおベーキングには、たまたまアルゴンを利用する不活性雰囲気炉を用いたが、銅安定化材を密着させるという要件に対しては、これに制約を受けるものではない。つまり窒素雰囲気炉としてもまた真空炉としても特に支障はなく、銅安定化材の高温酸化という問題を無視すれば大気炉であっても支障がない。
これまでは主として純Nbの板材でNbと銅安定化材との密着性を得る手法に限定していたが、実際の過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材では程度の差はあれ、急熱・急冷時に利用したGa残滓がその表面に存在しているのも事実である。そこでこの影響を明らかにするために実際に過飽和固溶体化させたNb−Al系線材を利用して、Ga残滓の除去とそれが銅安定化材の密着性に及ぼす影響とを試験して、本発明を完成することができた。そのようにして完成した発明の具体例についての結果を取りまとめて、以下の実施例1、比較例1、2に於いて説明する。
(実施例1)
本実施例では、液体Gaを冷却媒として用いる急熱急冷法により得られたNb−Al系線材を用いた。なお、この線材は0.8mmφ×40mm長さである。線材を#400エメリー紙+#800エメリー紙で表層4μm研磨除去した(工程a)。水洗後、脱脂剤として商品名パクナ100MA35g/L(ユケン工業社製脱脂剤)を用いて、温度70℃、5分の条件で浸漬脱脂し、ついで、97%硫酸200mL/Lおよび46%フッ化水素酸50mL/L、室温、陰極電流密度×時間:3A/dm×3分の条件で陰極電解による酸処理を行った(工程b)。水洗後、塩化物型Niストライク(ウッド浴)を用いて、塩化ニッケル240g/Lおよび35%塩酸50g/L、室温、陰極電流密度×時間:3A/dm×3分の条件で電気めっきした(工程c)。水洗後、硫酸銅浴を用いて、硫酸銅160g/L、硫酸120g/Lおよび塩素イオン20mg/L、室温、陰極電流密度×時間:3A/dm×3時間のめっき条件で、めっき厚が0.1mmとなるように電気めっきした(工程d)。水洗後、アルゴン雰囲気炉、600℃×1時間の条件でベーキングした。このようにして、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を得た。
(参考例1〜2)
Ga残滓の除去工程(a)において、Ga残滓の除去を試みる方法を、研磨処理に代えて、参考例1では、63%硝酸200mL/Lおよび46%フッ化水素酸100mL/L、室温、10分の条件で浸漬処理を、参考例2では、97%硫酸200mL/Lおよび46%フッ化水素酸50mL/L、室温、陽極電流密度×時間:5A/dm×10分の陽極電解処理を行ったこと、および参考例1〜2のいずれもが線材外径を基準に約8μm表層除去したこと以外は、実施例1と同じ操作をして参考例1〜2のNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材をそれぞれ製造した。
なお、参考例において、線材表面からのGa残滓の除去にNbの溶解薬液を使用した理由は、EPMAによる先の断面調査結果によって、Gaは単純に線材表面に付着しているのではなく、その一部はNb表層から線材の中心に向かって約2μm程度の厚みを有するNbとGaとの拡散層が存在するとの知見を得たことにある。
実施例1および参考例1〜2で得られたNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材について、90°曲げ試験により銅安定化材の密着性を評価した。結果を表12に示す。
下記表12中の記号の説明;
「◎」・・素材のNbが破断しても銅安定化材の剥離は全く認められない。(6往復繰り返し、7往復目に破断)
「△」・・3往復繰り返し4往復目に銅安定化材の剥離が見られる。
「×」・・1往復目では異常がないが2往復目で銅安定化材の剥離が見られる。
表12の実施例1と参考例1〜2からも明らかな如く、銅安定化材を被覆する電気めっき工程は、基本的に表9のNo.6と同一である。このことから勘案すると電気めっき以前に実施するGa残滓の除去に於いてもNbの酸化(不動態化)の影響が以後の工程にも全面的に影響するとの知見を得た。そしてまたこの影響は最後のベーキング工程でも解消されず銅安定化材の密着性に関与する。
(実施例2)
実施例1の工程aと同じ操作をして、Ga残滓を#400エメリー紙と#800エメリー紙とを用いて除去した後(工程aの後)、水洗し、ついで陰極電解脱脂した。水洗後、10容量%フッ化水素酸に室温、5分間浸漬し、ついで水洗し、実施例1の工程cと同じ操作をして、ニッケルストライクによる工程cを実施した。水洗後、実施例1で用いたのと同じ硫酸銅浴を用いて、25℃、3A/dmの条件で、それぞれ50μm、100μm、150μm、200μm、250μmを目標に電気銅めっき皮膜を被覆して5種類の試料を作成した。それぞれに密着性を付与するために500℃で1時間、真空炉中でベーキングした後、さらに800℃で10時間、NbAlへの変態化目的で熱処理を行い、目標残留抵抗比(RRR)を測定した。結果を表13に示すが、銅安定化材に必要と見なされる目標残留抵抗比(RRR)を100以上とした場合には、これを満足する銅めっき安定化材の必要膜厚は、100μm以上、より好ましくは150μmであることが分かる。またNbと安定化材となる銅めっき皮膜の界面にニッケル薄膜が介在しても特性に影響しないことも明らかである。銅安定化材の密着力の程度を調査するために、500℃で1時間ベーキングした100μm目標の銅安定化材被覆線材試料をカセットローラーダイスにより伸線加工に供した。伸線前の線材径は、1.05〜1.02mmであったが伸線後には、0.668〜0.697mmと元の平均断面積の約42%の平均断面積にまで伸線されたことになる。しかし前後の線材断面を光学顕微鏡観察してもNbと銅との界面には何ら異常は見られず、また銅めっき皮膜の割れなども一切見られない。参考までに伸線前後の断面ミクロ組織を図5に示す。
以上の如く、本発明は、NbAl化合物系超伝導線材が高い臨界温度(Tc)と上部臨界磁界(HC2)を示すことから、実用化が大いに望まれるNb−Al系の超伝導線材に於いて、信頼するに足る密着力を有する安定化材を電気めっきという汎用性のある技術とベーキングとの組み合わせで具現化するもので、量産性と経済性に優れることはいうまでもない。これにより従来安定化材の被覆形成で行き詰まり状態にあったNb−Al系線材の実用が可能となることで不可能であった強磁界用、交流用のNb−Al系超伝導線材の製造が実現する。
そのため、本発明によって、核融合炉用マグネット、加速器用マグネット、高分解能を有する核磁気共鳴(NMR)用マグネットに有用なNbAl化合物系超伝導線材を工業的有利に製造することができる。

Claims (15)

  1. 液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材から、NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材を製造する方法であって、
    (a)前記Nb−Al系線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
    (b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
    (c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;および
    (d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程
    を含むことを特徴とするNbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の製造方法。
  2. 前記(a)〜(d)の工程に加えて、
    (e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400℃以上700℃未満でベーキングする工程
    を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 工程(a)におけるGa残滓の除去を、研磨手段によって行う請求項1に記載の製造方法。
  4. 工程(b)における不動態化させない条件が、Nb−Al系線材の表面を実質的に酸化させない条件である請求項1に記載の製造方法。
  5. 工程(c)におけるニッケルストライク浴が、ニッケルの塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸とを含んでなるpH2以下の液である請求項1に記載の製造方法。
  6. 工程(d)における電気めっきをCuの皮膜の厚さが40μm以上となるように行う請求項1に記載の製造方法。
  7. 工程(e)におけるベーキングを、酸化防止雰囲気下500〜650℃で行う請求項1に記載の製造方法。
  8. NbAl化合物変態前のNb−Al系超伝導線材の線径が0.1mm以上である請求項1に記載の製造方法。
  9. 液体Ga中で冷却して得られる過飽和固溶体の状態にあるNb−Al系線材から、NbAl化合物系超伝導線材を製造する方法であって、
    (a)前記Nb−Al系超伝導線材の表面に付着したGa残滓を除去する工程;
    (b)工程(a)で得られる、表面のGa残滓が除去されたNb−Al系線材を、該Nb−Al系線材を不動態化させない条件下で脱脂処理し、ついで酸洗浄処理する工程;
    (c)工程(b)で得られる、酸洗浄処理されたNb−Al系線材の表面を、ニッケルストライク浴を用いて、Niで電気めっきする工程;
    (d)工程(c)で得られる、Niで電気めっきされたNb−Al系線材の表面を、Cuで電気めっきする工程;
    (e)工程(d)で得られる、Cuで電気めっきされたNb−Al系線材を、酸化防止雰囲気下400℃以上700℃未満でベーキングする工程;および
    (f)工程(e)で得られる、ベーキングされたNb−Al系線材を、700℃以上の温度で熱処理する工程
    を含むことを特徴とするNbAl化合物系超伝導線材の製造方法。
  10. 工程(a)におけるGa残滓の除去を、研磨手段によって行う請求項9に記載の製造方法。
  11. 工程(b)における不動態化させない条件が、Nb−Al系線材の表面を実質的に酸化させない条件である請求項9に記載の製造方法。
  12. 工程(c)におけるニッケルストライク浴が、ニッケルの塩化物、硫酸塩およびスルファミン酸塩からなる群から選ばれる1種または2種以上のニッケル塩と、塩酸、硫酸またはスルファミン酸とを含んでなるpH2以下の液である請求項9に記載の製造方法。
  13. 工程(d)における電気めっきをCuの皮膜の厚さが40μm以上となるように行う請求項9に記載の製造方法。
  14. 工程(e)におけるベーキングを、酸化防止雰囲気下500〜650℃で行う請求項9に記載の製造方法。
  15. 工程(f)における熱処理を、700℃〜1000℃の温度で行う請求項9に記載の製造方法。
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