JP5074632B1 - 放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法において、SSI株の菌体のセシウム吸着能力を十分に発揮させるとともに、菌体固定化担体を使用しないでセシウム吸着後の菌体の回収を容易に行う。
【解決手段】 ヘドロ、土壌及び水から選択される環境媒体中のセシウムをSSI株の菌体に吸着させ、セシウムを吸着した菌体を環境媒体中から回収することによりセシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法であって、SSI株の菌体の液体懸濁液に多糖類を添加した混合液を乾燥させることによって粒状の菌体集合体を作成し、この菌体集合体を、菌体集合体が通過できないが環境媒体が通過できる大きさのメッシュを有するメッシュ素材から構成された容器に入れ、この容器を環境媒体と接触させて、環境媒体中のセシウムを菌体集合体の菌体に吸着させ、セシウムを吸着した菌体集合体を環境媒体中から回収する。
【選択図】図1

Description

本発明は、放射性セシウムに対して高い吸着能力を示す光合成細菌株の菌体を使用して放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法に関する。特に、本発明は、菌体を固定する担体を使用せずに菌体の吸着能力を十分に発揮させることができ、しかも使用後の菌体を環境媒体から容易に回収できる方法に関する。
昨今、原子力発電所からの事故やトラブルによる放射性物質の漏れに起因する水や土壌などの環境媒体の放射能汚染の浄化が検討されている。原子力発電所から放射性物質が大気中に放出されると、放射性物質は、大気中を浮遊しながら周囲に拡散する。そして、放射性物質は、降雨などにより地上に落下し、河川などの水や田畑などの土壌に侵入し、これらの環境媒体の隅々まで汚染する。
環境媒体の放射能汚染の原因となる放射性物質のうち特に問題となる物質は、半減期の長い放射性セシウムである。放射性セシウムが土壌中に侵入すると、放射性セシウムは、土壌に含まれる粘土や有機物と強く結合し、土壌中に長期間残留し、放射能を放出しつづけ、外部被ばくをもたらす。また、放射性セシウムで汚染された土壌や水を使用して栽培された農作物を人間が摂取することにより放射性セシウムが体内に取り込まれると、放射性セシウムは、体全体に分配され、長期間にわたって内部被ばくをもたらす。
放射性セシウムの除去方法としては、従来から無機イオン交換体や選択性イオン交換樹脂による物理的吸着法や、クラウンエーテルを用いる溶媒抽出法などの化学的処理法が提案されている(特許文献1参照)。また、最近では、ゼオライト等の粘土による物理的吸着法も報道等で知られている。これらの物理的又は化学的方法は、高レベル放射性廃液から放射性セシウムを回収するためにはある程度有効であるが、原子力発電所からの放射能漏れにより低濃度で広範囲に汚染された水や土壌から放射性セシウムを回収するためには効率が極めて悪く、高コストである。それに加えて、化学的方法は、安全性に欠け、実用的でない。さらに、物理的方法は、放射性セシウムを吸着した吸着剤が膨大な量になり、中間処理や最終処分の用地確保が問題となっている。
かかる従来技術の問題を克服するために、本願発明者は、放射性セシウムの除去方法として、微生物を使用した生物学的除去方法に着目し、光合成細菌の一種であるロドバクター・スファエロイデスの特定の菌株が放射性セシウムの吸着能力に特に優れることを見出し、この菌株を利用した、放射性セシウムで汚染された環境媒体の浄化方法を既に提案した(特許文献2参照)。特許文献2の方法では、環境媒体中の放射性セシウムをロドバクター・スファエロイデスSSI株(FERM P−21462)の菌体に吸着させ、放射性セシウムを吸着した菌体を環境媒体中から回収する。そして、菌体の回収は、磁性体を含有する多孔質担体に菌体を予め固定化して環境媒体に添加し、放射性セシウム吸着後の菌体を担体ごと磁石で回収することによって行なわれる。
特許文献2の方法は、菌体の吸着能力を十分に発揮できる点で優れるが、放射性物質を吸着した菌体と担体の分離が極めて煩雑であり、しかも放射能で汚染された担体の処理や保管が容易でないという問題があった。
特開平5−317697号公報 特願2011−208475号
本発明は、かかる従来技術の問題を克服するために創案されたものであり、その目的は、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体に放射性セシウムを吸着させることによって放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法において、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体の放射性セシウム吸着能力を十分に発揮させるとともに、処理に問題のある菌体固定化担体を使用しないで放射性セシウム吸着後の菌体の回収を容易に行うことができる方法を提供することである。
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体を多糖類で集合させて粒状の菌体集合体を形成させることにより、菌体の放射性セシウム吸着能力を十分に発揮させながら菌体の取り扱い性を向上させると共に、これらの菌体集合体を特定の大きさのメッシュ付き容器に入れて環境媒体と接触させることにより、処理の煩わしい担体を使用しなくても吸着後の菌体を容易に回収できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(8)からなるものである。
(1)ヘドロ、土壌及び水から選択される環境媒体中の放射性セシウムをロドバクター・スファエロイデスSSI株(FERM P−21462)の菌体に吸着させ、放射性セシウムを吸着した菌体を環境媒体中から回収することにより放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法であって、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体の液体懸濁液に多糖類を添加した混合液を乾燥させることによって粒状の菌体集合体を作成し、この菌体集合体を、菌体集合体が通過できないが環境媒体が通過できる大きさのメッシュを有するメッシュ素材から構成された容器に入れ、この容器を環境媒体と接触させて、環境媒体中の放射性セシウムを菌体集合体の菌体に吸着させ、放射性セシウムを吸着した菌体集合体を環境媒体中から回収することを含むことを特徴とする方法。
(2)多糖類が、アルギン酸であることを特徴とする(1)に記載の方法。
(3)混合液の乾燥前に混合液を塩化カルシウム溶液に接触させることにより混合液をゲル化させることを特徴とする(2)に記載の方法。
(4)菌体集合体の粒径が0.5cm〜3cmであり、容器が、0.1cm〜2.5cmの直径の略円形又は0.1cm〜2.5cmの辺からなる略正方形のメッシュを有するメッシュ素材で形成された袋であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)ヘドロが、プールの底に堆積しているヘドロであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)土壌が、田畑の土、住宅の庭の土、公園の土、又は学校の校庭の土であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7)水が、土壌洗浄水、地下水、河川の水、池の水、プールの水又は水田の水であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(8)放射性セシウムを吸着するために使用される粒状の菌体集合体であって、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体の液体懸濁液に多糖類を添加した混合液を乾燥させることによって得られることを特徴とする菌体集合体。
本発明の方法は、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体を多糖類で集合させた粒状の菌体集合体を使用しているので、菌体の放射性セシウム吸着能力を十分に発揮させることができると共に取り扱いが極めて容易である。また、この粒状の菌体集合体を特定の大きさのメッシュ付き容器に入れて環境媒体と接触させて放射性セシウムの吸着を行うので、菌体の回収が容易であり、菌体固定化担体の使用に伴う中間廃棄物の保管や処理の問題がない。
図1は、実験1Aの測定結果を示す。 図2は、実験1Bの測定結果を示す。 図3は、実験1Cの測定結果を示す。 図4は、実験2Aの測定結果を示す。 図5は、実験2Bの測定結果を示す。 図6は、実験2Bの測定結果を示す。 図7は、実験2Cの測定結果を示す。 図8は、実験2Cの測定結果を示す。
本発明の方法は、放射性セシウムで汚染された環境媒体を特定の微生物菌株の菌体と接触させて、この菌体に放射性セシウムを吸着させることにより、環境媒体を浄化する点で、本願出願人の特願2011−208475号の方法と共通するが、特定の微生物菌株の菌体を粒状の集合体として使用する点、そしてこの菌体集合体を、菌体集合体が通過できないが環境媒体が通過できる大きさのメッシュを有するメッシュ素材から構成された容器に入れて使用する点で大きく異なる。菌体を粒状の集合体にすることにより、先願のような菌体固定化担体からの菌体の分離や担体の処分の煩わしさから解放される。また、この菌体集合体を特定の大きさのメッシュ付き容器に入れて環境媒体と接触させることにより、菌体の放射性セシウム吸着能力を十分に発揮させることができると共に、吸着後の菌体の回収が極めて容易になる。
本発明の方法の浄化対象となる放射性セシウムで汚染された環境媒体は、ヘドロ、土壌及び水から選択され、例えば事故やトラブルにより放射能漏れを起こした原子力発電所の近隣のヘドロ、土壌又は水が挙げられる。具体的には、ヘドロとしては、原子力発電所の近隣のプールの底に堆積しているヘドロが挙げられる。土壌としては、原子力発電所の近隣の田畑の土や住宅の庭の土、公園の土、学校の校庭の土が挙げられる。水としては、放射性セシウムで汚染された土壌を洗浄した後の水(土壌洗浄水)、原子力発電所の近隣の地下水や河川の水、池の水、プールの水、水田の水が挙げられる。
本発明の方法では、環境媒体中の放射性セシウムをロドバクター・スファエロイデスSSI株(以下、単にSSI株と称する)という特定の微生物菌株の菌体に吸着させる。SSI株は、光合成細菌ロドバクター・スファエロイデスS株(以下、単にS株と称する)を継代培養する間に得られた自然変異株である。SSI株は、茨城県つくば市東1−1−1中央第6の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM P−21462として寄託されている(平成19年12月7日寄託)。
従来の光合成細菌株は、親株であるS株を含め、凝集性を全く示さないが、SSI株は、培養中に多量の細胞表面タンパク質やRNAを生産するため、これらのタンパク質やRNAによって菌体細胞同士が凝集する。これらのタンパク質やRNAの存在により、SSI株は、放射性セシウムを電気的に吸着すると考えられる。なお、SSI株の菌学的性質は、多量の細胞表面タンパク質やRNAの生産による凝集性を示す点を除いて親のS株と全く同じである。
SSI株は人体や環境に対して特に害を与えず、安全である。実際、SSI株が属する光合成細菌は、自然界の環境浄化に重要な働きをする土壌細菌であり、し尿や食品廃水中の有機質を分解することができ、水質の浄化に有用な細菌である。
SSI株の増殖は、菌株が効果的に増殖できる限りいかなる培養条件でも行うことができるが、例えばグルタメート−マレート培地を使用して30℃〜35℃の温度で、好気暗条件又は静置明条件(5klux〜10kluxのタングステン光照射下)で培養することによって容易に行うことができる。
本発明の方法では、SSI株は特定の大きさの粒状の菌体集合体の形態で使用する。粒状の菌体集合体は、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体の液体懸濁液を作った後、これに多糖類を添加した混合液を作り、この混合液を乾燥させることによって作成される。液体懸濁液は、SSI株を含有する培養液をそのまま用いるか、又はSSI株を含有する培養液を遠心分離やろ過に供して濃縮したものを用いればよい。多糖類は、液体懸濁液をゲル化させて菌体同士を結合させる役割を有し、例えばアルギン酸、でんぷん、カラギーナン、ペクチンなどが使用される。多糖類の濃度は、混合液中の濃度で0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜6重量%であることがさらに好ましい。多糖類としてアルギン酸を使用した場合は、混合液の乾燥前に混合液を塩化カルシウム溶液に接触させることにより混合液をゲル化させることが好ましい。混合液の乾燥は、菌体を死滅させないため、自然乾燥させることによって行うことが好ましい。菌体集合体は、成形機によって略球形に成形され、その粒径を0.5cm以上3cm以下とすることが好ましい。粒径があまり大きいと、環境媒体と菌体との接触面積が減少し、一方、粒径があまりに小さいと、取り扱いが困難になり、菌体集合体が容器から流出するおそれがある。
上述のようにして作られた粒状の菌体集合体は、次に特定の大きさのメッシュを有するメッシュ素材から構成された容器に入れられる。この容器は、菌体集合体が通過できないが環境媒体が通過できる大きさのメッシュを有しており、これにより、環境媒体と菌体集合体の接触と、容器からの菌体集合体の流出の防止が図られる。
容器のメッシュの大きさは、菌体集合体の粒径に依存するが、0.1cm〜2.5cmの直径の略円形又は0.1cm〜2.5cmの辺からなる略正方形であることが好ましい。メッシュ素材の容器は、菌体集合体の出し入れ口の封止が可能な略円筒形の袋状のものであることが好ましい。素材は、ナイロン、塩化ビニル、またはポリオレフィンなどのプラスチックやステンレス、アルミニウム、銅などの金属製で、薄いフィルム状のもの、又は繊維で織られたものもしくは編まれたものが適宜採用可能である。また、メッシュ素材の容器は、袋状のものに限定されず、プラスチックや金属などから成形された箱の表面に穴(メッシュ)が形成されたものであってもよい。
菌体集合体を入れた容器は、放射性セシウムで汚染された環境媒体と接触させる。環境媒体がヘドロや水の場合、接触は、ヘドロや水に容器を直接添加するか、又は予めタンクなどにヘドロや水を採取しておき、そこに容器を添加すればよい。環境媒体が土壌の場合、接触は、タンクなどに土壌を採取してそこに水を添加して懸濁したものに容器を添加すればよい。これにより、菌体集合体は、容器のメッシュから侵入してきた環境媒体と接触し、環境媒体中の放射性セシウムを吸着する。
環境媒体中に存在する放射性セシウムは、水に溶けてイオン化状態にあり、正に帯電している。一方、SSI株は、環境媒体中で多量の細胞表面タンパク質やRNAを生産し、これらのタンパク質やRNAは負に帯電している。従って、SSI株の細胞表面タンパク質やRNAと環境媒体中の放射性セシウムは互いに電気的に吸引し、これにより放射性セシウムがSSI株によって吸着されると考えられる。
SSI株が放射性セシウム吸着能力を発揮するためには、細菌株が回収されるまで生きた状態であることが必要であり、環境媒体中で細菌株が死んでしまうと、せっかく細菌株の細胞表面に吸着された放射性セシウムが再び放出されてしまうことがある。従って、環境中にSSI株の栄養源が不足していると考えられる場合は栄養源を添加して細菌株が死滅しないようにすることが好ましい。この栄養源としては、例えば下水や農業排水などを使用することができる。同様に、温度条件や通気条件などがSSI株にとって好適な条件でないと考えられる場合は、これらの条件を人工的に調節することが好ましい。
栄養源には通常、KHPOなどのカリウム化合物が含有されるが、本発明の方法では、これらのカリウム化合物の濃度をできるだけ低くして、全カリウムイオン濃度を低く抑えることが、環境媒体浄化効率を高める点で好ましい。具体的には、全カリウムイオン濃度を5mg/l以下にすることが好ましく、4mg/l以下にすることがさらに好ましい。放射性セシウムは水中で一価の陽イオンとして存在し、カリウムイオンと似た挙動を示す。このため、全カリウムイオン濃度を低く抑えると、SSI株の菌体の細胞膜中のカリウムポンプを介した放射性セシウムの菌体細胞内への取り込みが促進されると考えられる。
SSI株は、放射性セシウムを吸着するが、放射性セシウムの分解をほとんどしない。そこで、本発明の方法では、放射性セシウム吸着後の菌体集合体を環境媒体中から回収することが必要である。この回収方法は、特に限定されず、例えば、容器を環境媒体から取り出し、容器の菌体集合体が出し入れ可能な封止部分を開放し、そこから菌体集合体を取り出すことによって行えばよい。回収は、菌体集合体が放射性セシウムを十分に吸着したと思われる時期に行えばよい。回収時期は、菌体集合体の量や培養条件によって変動するが、一般に菌体集合体の添加から約1日〜約2週間後である。回収した菌体集合体は、乾燥や焼却により重量及び容積を大幅に減容させることができる。また、環境媒体から回収した容器は、除染処理後に再び新たな菌体集合体を入れて繰り返し使用することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に実証する。なお、実施例の記載は純粋に発明の理解のためのみに挙げるものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
1. プール水中に蓄積した底質(ヘドロ)からの放射性Csの除染
実験方法
濃縮ヘドロの調製
福島市中の公立学校のプールの底にたまったヘドロを採取した。当初、プールの水の除染を依頼されたが、2011年9月の時点で、プールの水には1.10μSv/h以下の放射能しか検出されず、底のたまったヘドロにやや高い放射能(1.38μSv/h)を検出した。このヘドロは、周辺の垣根の木の葉が風により水中に入り込み腐食したり、夏季に発生したアオコが腐食して底に堆積したものであった。なお、この9月の時点で、プール周辺の空間線量は、1.18−1.39μSv/hであった。プール周辺の溝のヘドロからは、20−30μSv/hの高い線量が検出された。
そこで、このプールの底のヘドロを含む濁水を1トン、水中ポンプでタンクに引き込み、天然凝集沈殿剤キトサン(フジクリ−ン、札幌)の0.5重量%溶液を1L添加し、pH6.5−7.0で24時間放置し、ヘドロを沈殿させた後、上澄みを放水し、底に沈殿したヘドロ30Lを採取した。このヘドロは12−15μSv/hの放射線量を示した。このヘドロを濃縮ヘドロとして実験に使用した。
なお、この濃縮ヘドロの固形分は6.69g dry solid/Lであり、COD(Mn)は32,000mg/Lであった。また、放射能は14.4μSv/hのもので、134Csは6,912Bq、137Csは8,567Bq(放射性Csとして合計15,479Bq)であり、放射性ヨウ素131Iは2Bq以下で検出されなかった(福島市環境放射線モニタリングセンターでの、ゲルマニウム半導体検出器[キャンベラ社製、USA]による分析)。
ロドバクター・スファエロイデスSSI株の培養及び菌体集合体の作成
ロドバクター・スファエロイデスSSI株の培養は、通常のグルタメート・マレート培地(GM培地)を使用し、1.5Lのルー式培養ビンで、静置明条件(5klux)で2−3日行った。培養後、培養液を遠心分離(10,000xg,20分)し、OD660=20に濃縮した。この濃縮液に4重量%のアルギン酸(最終濃度2重量%)を等量加えてよく攪拌して、直径約2cmの球状粒子に成型した。これらの球状粒子を2重量%の塩化カルシウム溶液に一晩浸漬し、粒状の菌体集合体を作成した。
菌体集合体による濃縮ヘドロの除染
菌体集合体を、メッシュ袋(ナイロン製、1.0x1.0cmメッシュ、直径15cm、長さ30cmの円筒状)に一袋につき約210個(約10g乾燥重量の菌体に相当)入れ、これを9袋用意して、濃縮ヘドロ中に投入し、所定期間放置した。
放射能の測定
放射能の測定は、Aloka TGS121(Aloka日立)、及びDose RAE2(PRM−1200、USA)を使用して行った。Aloka TGS121については、センサー部分を防水ビニル袋で包み、水深1−3cmの位置で計測した。DoseRAE2については、小型なので全体を防水ビニル袋で被い、水深1−3cmに浸漬して計測した。それぞれ3回測定し、平均値を求め、μSv/h及びcps単位で表示した。1μSv/hは3.33cpsであった。
実験1A ヘドロの放射性物質除染(繰り返し回分処理)
採取したヘドロを、濃硝酸でpH2.0−1.6に調整して、24時間放置した。この処理は、ヘドロに吸着したCsを硝酸で溶解することが目的であった。しかし、結果として、Csはほとんど水中にCsとしては溶解してこなかった。産業総合研究所の実験では、硝酸を使用して土壌からのCsの溶出を試みているが、常温ではほとんど溶解してこず、常温での硝酸分解によるCsの溶出は難しいとされている。しかし、少しは溶出することを期待して、この硝酸処理ヘドロを溶解濃縮ヘドロとして実験に使用した。
実験条件
(1)55L角型プラスチックコンテナに溶解濃縮ヘドロ50Lを入れた。
(2)そこにグルコース4g/L、ペプトン0.15g/Lを添加し、6N−NaOH又は6N硝酸でpH6.5−7.0に調整した。温度は屋外なので制御しなかった(28.2−15.9℃)。
(3)通気を0.2−0.3vvmで実施し、1回目の回分処理を行った。
(4)一日おきに、袋をコンテナ外に取り出し、ヘドロをよく攪拌し、直ちに水深1−3cmで放射能を計測した。水中の放射性物質は、溶解濃縮ヘドロを木綿布で繰り返し濾過して透明な水を得た後、水深1−3cmで放射能を計測した。
(5)3日後、袋はそのままで、溶解濃縮ヘドロを取り除き、新たな溶解濃縮ヘドロを投入し、グルコース及びペプトンを同様に添加し、pH調整を行いつつ、0.2−0.3vvmで通気を行い2回目の回分処理を行い、同様に放射能を計測した。
(6)さらに3日後、同様に溶解濃縮ヘドロを入れ替え、同様に3回目の回分処理を行った。同様に放射能を計測した。
実験結果
実験結果を図1に示す。図1から以下のことがわかる。
(1)溶解濃縮ヘドロの放射能除染では、最初47.78cpsの溶液の放射能が2日後に8.66cpsに低減し、82%の除去率であった。このプール周辺の空間線量は1.2μSv/h、つまり4.0cpsの放射能であり、もしこれをバックグラウンドとして差し引くと、(8.86−4.0)/(47.78−4.0)x100=11.1%、つまり約90%の放射性物質の除染ができたことになる。また、水中の放射性物質はほとんど検出されず、バックグラウンド値とほぼ同じであった。
(2)2回目の回分処理でも、同様に放射能は低減した。ただし、温度が低下したためか、1回目よりも低減の度合いは緩やかであった。ロドバクター・スファエロイデスSSI株は25−35℃で高い活性を示すことが判っている。
(3)3回目の回分処理でも同様に放射能は低減した。
(4)以上の結果より、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体は、ヘドロに結合したCsをはぎとってロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体に移行させ、ヘドロ中の放射能を低減していることが示唆された。
また、3回の繰り返し処理でも放射能は低減していることが確認され、菌体集合体の繰り返し使用も可能なことが明らかとなった。
放射能が除去できる理由としては、ロドバクター・スファエロイデスSSI株は、菌の表面に粘着物質(EPS)を生産し、それがマイナスに帯電しており、有害金属Cd2+の除去の場合と同様にCsイオンを電気的引力でひきつけていると推定される。また、光合成細菌は、カリウムポンプによるカリウムの取り込みが活発なことが報告されており、化学的性質の似たCsも同様にカリウムポンプにより菌体に取り込まれている可能性もあり、両方の引力で、ヘドロに吸着したCsをはぎとっていると推定される。
実験1B 非硝酸処理ヘドロの除染
実験1Aでは、Csをなるべく多く水中にCsとして溶解する目的で硝酸処理を行ったが、ほとんどCsは水中に溶解してこなかった。そこで、本実験では、硝酸処理を省いて、直接濃縮ヘドロを使用してヘドロの放射能除染ができるかどうかを検討した。
実験条件
硝酸処理ヘドロ(溶解濃縮ヘドロ)の代わりに濃縮ヘドロを使用した以外は実験1Aと同じ条件で回分処理を実施し、放射能測定もほぼ同じ条件で実施した。
実験結果
実験結果を図2に示す。図2から以下のことがわかる。
(1)溶解濃縮ヘドロを使用しなくても、汚染された濃縮ヘドロをそのまま除染できた。1日目で、放射能は38.93cpsから12.45cpsに低減しており、86%の除去率であった。バックグラウンドを考慮すると、(12.45−4.0)/(38.93−4.0)x100=26.48%、つまり73.5%の除染ができたことになる。本実験では、温度が低く、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の活性が十分でなく、一度ロドバクター・スファエロイデスSSI株に吸着したCsがやや再溶出しているために、放射能は2日以降はそれほど低減していなかった。
(2)以上の結果より、硝酸処理は必ずしも必要ではなく、直接濃縮ヘドロの除染が可能であることが示唆された。このことはコスト及び操作の煩雑さを低減する意味で重要であった。
実験1C 菌体集合体の量を半分にした場合の放射性物質除染
実用的なコストを考え、菌体集合体の量を半分にして除染を行った。
実験条件
(1)菌体集合体の量を半分にした以外は実験1Aと同じ条件で回分処理を実施し、放射能測定もほぼ同じ条件で実施した。
実験結果
実験結果を図3に示す。図3から以下のことがわかる。
(1)菌体集合体の量を半分にしても十分な放射能除去能力があった。さらなる菌体集合体の減量も考えられる。
(2)ヘドロの水分画分には実験1Aと同様に、放射能は検出されなかった。放射性物質はほとんど、ヘドロの沈殿画分に存在していることを確認した。
実験1D 放射能除染後の菌体集合体の乾燥及び焼却による減容化
放射能性物質の従来の除染方法では、除去した後の中間廃棄物の量が膨大なものになり、問題となっている。本発明の方法で使用する菌体集合体は、光合成細菌菌体とアルギン酸Caという天然有機物からなるので、乾燥及び焼却による減容が可能であった。
実験条件
(1)放射能除染に使用した後の菌体集合体の一部(湿重量で852g)をビーカーにとり、オーブン中で80−900Cで3日間加熱乾燥した。
(2)さらに、500−6000Cで炭化させ、焼却した。Csは6400C以上では気化して飛散する恐れがあるからである。
(3)この実験は放射能のほとんどない地域で行った。バックグラウンド値は0.12μSv/hであった。
実験結果
(1)乾燥後の菌体集合体の重量は23.8gとなり、97.2%の重量減容が可能であった。
(2)この乾燥中、オーブン中の空間線量は0.12−0.13μSv/hであり、バックグラウンド値とほぼ同じであった。このことは、放射能は空気中に漏れていないことを示す。
(3)炭化及び焼却後(約1日後)の菌体集合体の重量は、5.59gとなり、99.3%の重量減容が可能であった。オーブン中の空間線量は0.12−0.13μSv/hであり、バックグラウンド値とほぼ同じであった。このことは、放射能は空気中に漏れていないことを示す。
(4)菌体集合体の容量は、炭化及び焼却後に98.3%の減容が可能であった。
(5)このように、放射性物質を含む中間廃棄物を、放射能が外に漏れることなく、約98−99%の容量及び重量減容が可能であった。この炭化・焼却灰は、放射性物質を多く含むために最終処理が必要であるが、中間処理量の大幅な減容が可能であり、実用面から極めて有用である。
2. 菌体集合体による土壌の放射能除染
実験2A 菌体集合体による粘土質土壌の除染
ヘドロの放射能除染に成功したので、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体による土壌の放射能除染を試みた。汚染土壌としては、福島南相馬市に広く分布する粘土質の汚染土壌を使用した。
実験条件
(1)粘土質土壌5kg(湿重量)と水(放射性物質0.1μSv/h以下)10Lを20L角型容器に入れてよく懸濁した。同じものを4個用意した。
(2)1個の容器には菌体集合体を全く入れず、対照として使用した。残りの3個の容器にはそれぞれ、1袋、2袋、又は3袋と菌体集合体量を変化させて投入した。一袋には実験1Aと同様に菌体集合体210個を入れた。さらに、実験1Aと同様に、グルコース4g/L、ペプトン0.15g/Lを添加し、pH6.0−7.5に調整し、0.2−0.3vvmで通気を行い、2−3日おきにサンプリングを行い放射能を計測した。温度はヒーターで25℃に保った。
(3)サンプリングは、袋を容器外に取り出し、溶液をよく懸濁して直ちに、実験1Aと同様に、センサーを溶液中に浸して(水深1−3cm)放射能を計測した。
(4)サンプリング時に、容器中の残存グルコース濃度を試験紙で測定し、残存していなければ同じように、グルコース及びペプトンを添加した。
(5)南相馬市の実験場の空間線量は、実験期間中0.3−0.5μSv/hであった。
実験結果
実験結果を図4に示す。図4から以下のことがわかる。
(1)ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体による粘土質土壌の放射能除染は、ヘドロほど除染効率が良くなく、3袋投入した容器でも7日後で、最初24.18cpsの放射能が20.15cpsと、約16%しか低減していなかった。さらに、8日目に新たな菌体集合体を入れ替え投入しても、15日後に16.78cpsと、最大で約31%しか低減していなかった。
(2)以上の結果より、粘土質土壌への放射性Csの吸着は、ヘドロへの吸着より強く、ロドバクター・スファエロイデスSSI株のCs吸引力では十分な除染は容易ではなかった。
実験2B 嫌気発酵および乳酸発酵による汚染土壌の除染
実験2Aから、粘土質土壌へのCsの吸着はかなり強固なものと推定された。これは、土壌を硝酸や酸で処理してCsを溶出させることが容易でないことと一致していた。
一方、本発明者らは河川や海底に蓄積したヘドロの浄化実験を長く行っているが、ヘドロ中には有機物を分解して乳酸を生成する乳酸生成菌が広く生息していることを見出している。また、これらの菌に、ビタミン類(ビタミンB1,ニコチン酸、ビオチン)を添加すると、乳酸生成活性が高まり嫌気発酵が促進され、ヘドロの有機物分解が促進されることを見出している。そこで、乳酸生成菌や嫌気消化菌の作用により、嫌気状態で汚染土壌の有機物が分解され、土壌の有機物分に強く吸着されたCsが水溶液中に溶出されやすくなる可能性があるのではないかと着想した。
乳酸生成菌群は、ごみやヘドロ、河川の浄化に利用されている市販の環境浄化資材(えひめAI)から乳酸菌培養培地で培養して使用した。この環境浄化資材は、ヨーグルト、納豆菌、及び酵母からなる環境浄化資材であり、愛媛県内では広く利用されている。
実験条件
(1)土壌としては、粘土質土壌の中でも、放射能を多く含む落ち葉等が多く含まれる腐葉土を南相馬市の里山の土壌から採取した。この腐葉土を含む粘土質土壌5kg(湿重量)に水10Lを加えたものを2つ用意した。それぞれを20L容の透明円筒容器に入れてよく攪拌した。
(2)乳酸菌群は、以下のようにして培養した。
乳酸菌培地(BCP液体培地:グルコース1.0g/L、酵母エキス2.5g/L、ペプトン5.0g/L、Tween80 1.0g/L、L−システイン0.1g/L、ブロモクレゾールパープル0.06g/L)を115℃で20分間殺菌した培地1Lに、市販のえひめAI溶液を1ml添加し、35℃で6日間、静置暗条件で培養した。6日後、乳酸菌群はOD660=0.7に増殖し、培養液は酸性の黄色を呈し、乳酸は0.4g/L生成していることを確認し(ベーリンガーマンハイムFキット使用)、乳酸生成菌群の多く生息している乳酸菌群の種とした。この乳酸菌は主にヨーグルトに含まれるLactobacillus caseiであるとされている。
(3)(1)で用意した2つの容器にグルコース4g/L、ペプトン0.15g/L、およびビタミン類(ビタミンB1 5mg/L、ニコチン酸5mg/L、ビオチン0.05mg/L)を加えた。1つの容器には対照として菌は加えず、残りの容器には乳酸菌群の培養液1Lを添加してよく攪拌し、ともに35℃で嫌気発酵を行った。
(4)2−3日おきにサンプリングを行った。円筒容器をよく攪拌し、20秒放置して、沈殿と上澄みの濁った懸濁液(泥画分)が明確に分離した後、デカンテーションで上澄み懸濁液を分離して、泥各分と沈殿土壌画分の放射能を測定した(土壌にはセンサーを押し込んで計測した)。さらに、泥画分の一部は遠心分離(3,000rpm、10,000xg、20分)を行い、透明な水画分も採取し、同様に水深1−3cmの放射能を測定した。
(5)サンプリング時にグルコース濃度を測定し、不検出の場合はグルコース及びペプトンを同様に添加した。
実験結果
実験条件を図5及び6に示す。図5及び6から以下のことがわかる。
(1)対照の嫌気発酵のみでは、2日及び6日後に沈殿した土壌画分には放射能が比較的多く残存しており、上澄みの泥画分にはあまり放射能は検出されなかった(図5)。一方、乳酸菌群を添加した場合には、3−14日にかけて、沈殿した土壌画分の放射能は大きく低減した(図6)。それに反して、上澄みの泥画分に比較的多くの放射能が検出された。透明な水中には放射能は対照実験ともにほとんど検出されなかった。
(2)このことは、乳酸発酵と嫌気発酵の共同の作用で、腐葉土中のCsを吸着した有機物が分解され、Csが泥画分の粒子の細かい泥の中に溶出し懸濁していることを示唆している。このCsの溶出を乳酸菌群の活性で促進していると考えられた。
(3)乳酸菌群を添加して嫌気発酵した場合、14日後に分離した粘土質土壌は、初め17.83cpsであった放射能が14日後には6.49cpsとなり、約64%の放射能が除染されたものと認められた。
(4)このように、乳酸菌群と嫌気発酵の組み合わせで、土壌の放射能の64%の除染が可能という新規の事実を見出した。このような報告は今で無く、極めて簡便な手法であることから、コスト面から有用な除染方法と考えられる。
実験2C ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体と乳酸発酵及び嫌気発酵との組み合わせによる放射能除染
嫌気発酵及び乳酸発酵で、土壌の放射能の多くを粒子の細かい泥画分に移行させることに成功したので、泥画分の放射能をヘドロとみなしてロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体で除染して、土壌全体をさらに除染できないかと着想した。
実験条件
(1)腐葉土を含む粘土質土壌と砂を多く含む土壌それぞれ5kgを採取し(南相馬市原町)、水10Lに懸濁した。
(2)実験2Bと同様に、グルコース、ペプトン、及びビタミン類を添加し、よく攪拌した。さらに、乳酸菌群培養液1Lを添加し、よく攪拌した。そして35℃で3日間、嫌気発酵及び乳酸発酵を行った。
(3)3日後、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体2袋(一袋あたり菌体集合体210個を含む)を投入し、温度を30℃としてさらにグルコース、ペプトン、及びビタミン類を同様に添加し、0.2−0.3vvmで通気を行いつつ、除染を行った。
(4)サンプリングは実験2Aと同様に袋を除去した後、よく攪拌し直ちに放射能を測定することによって行った。
(5)サンプリング時にグルコース濃度を測定し、消費されていればグルコース及びペプトンを実験2Aと同様に添加した。
実験結果
実験結果を図7及び8示す。図7及び8から以下のことがわかる。
(1)腐葉土を含む土壌では、最初42.42cpsであった放射能が、14日後には12.65cpsに低減した(図7)。70.2%の除去率であった。
(2)砂を多く含む土壌では、最初28.62cpsであった放射能が、14日後には3.15cpsに低減した(図8)。90.0%の除去率であった。砂を多く含む土壌のほうが嫌気発酵、乳酸発酵でのCsの泥画分への溶出が容易であり、菌体集合体にCsが移行しやすい条件となったと思われる。
(3)このように、嫌気発酵、乳酸発酵及びロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体集合体処理の組み合わせで、土壌中の放射能の70.2−90%の除染が可能なことが明らかとなった。
以上の1.ヘドロの放射能除染、及び2.土壌の放射能除染の結果から、SSI株の粒状の菌体集合体を、特定のメッシュ素材から構成された容器に入れてヘドロや土壌中の放射性セシウムを吸着させる本発明の方法が極めて有効であることが明らかになった。この結果は、本発明の方法が、ヘドロや土壌よりも放射能除染が容易な水(土壌洗浄水、地下水、河川の水、池の水、プールの水又は水田の水など)にも適用でき、この水の除染においても放射性セシウムの吸着除去効果が極めて高いことを示唆する。
本発明の方法は、菌体の放射性セシウム吸着能力を十分に発揮させることができると共に取り扱いが極めて容易である。また、菌体の回収が容易であり、菌体固定化担体の使用に伴う中間廃棄物の保管や処理の問題がない。従って、本発明の方法は、産業上極めて有用である。

Claims (8)

  1. ヘドロ、土壌及び水から選択される環境媒体中の放射性セシウムをロドバクター・スファエロイデスSSI株(FERM P−21462)の菌体に吸着させ、放射性セシウムを吸着した菌体を環境媒体中から回収することにより放射性セシウムで汚染された環境媒体を浄化する方法であって、ロドバクター・スファエロイデスSSI株の菌体の液体懸濁液に多糖類を添加した混合液を乾燥させることによって0.5cm〜3cmの粒径の菌体集合体を作成し、この菌体集合体を、菌体集合体が通過できないが環境媒体が通過できる大きさのメッシュを有する、菌体集合体の出し入れ口の封止が可能なメッシュ素材から構成された容器に入れ、この容器を環境媒体と接触させて、環境媒体中の放射性セシウムを菌体集合体の菌体に吸着させ、容器を環境媒体から回収し、容器の菌体集合体の出し入れ口の封止を開放して放射性セシウムを吸着した菌体集合体を回収することを含むことを特徴とする方法。
  2. 回収された菌体集合体を乾燥及び焼却によって減容することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 多糖類が、アルギン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 混合液の乾燥前に混合液を塩化カルシウム溶液に接触させることにより混合液をゲル化させることを特徴とする請求項に記載の方法。
  5. 器が、0.1cm〜2.5cmの直径の略円形又は0.1cm〜2.5cmの辺からなる略正方形のメッシュを有するメッシュ素材で形成された袋であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. ヘドロが、プールの底に堆積しているヘドロであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 土壌が、田畑の土、住宅の庭の土、公園の土、又は学校の校庭の土であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. 水が、土壌洗浄水、地下水、河川の水、池の水、プールの水又は水田の水であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の方法。
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