JP5074236B2 - 管状体の製造方法及び管状体 - Google Patents

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Description

本発明は、繊維強化樹脂製の管状体の製造方法及びこの製造方法により製造された管状体に関する。
近年、非力な高齢者や女性ゴルファーの増加に伴い、わずかな力でも飛距離を伸ばすことのできるゴルフクラブシャフト(以下、単にシャフトともいう)の開発が望まれている。中でもシャフトの軽量化は、この問題を解決する有効な手段の一つと考えられ、様々な取り組みがなされてきた。
この取り組みとして、材料面では、まず、スチールからCFRP(炭素繊維強化プラスチック)への変更が挙げられる。また、同じCFRPでも、カーボン繊維の強度を向上させること、樹脂の物性を変更すること又はカーボン繊維と樹脂との密着強度を向上させること等により、シャフト全体の強度を向上させ、その分重量を低減している。また、構造面での取り組みとして、強度が向上する角度に繊維を配向又は積層させて強度を向上させることにより、その強度向上分の重量を低減してきた。
繊維強化樹脂製の管状体(以下、FRP管状体ともいう)は、様々な用途で用いられている。FRP管状体の製造方法として、ラッピングテープを用いた製造方法が公知である。この製造方法では、マンドレル(芯金)にシート状のFRP材料を巻き付けた後、所定の張力を付与しつつ樹脂テープを巻き付ける。この樹脂テープは、一般にラッピングテープとも称されている。このラッピングテープにより、成形圧力が付与される。
このラッピングテープは、最終的には除去される。この除去を容易とするため、離型性の高いラッピングテープが好ましい。特開2002−144439号公報には、離型性を高める目的で、内面が織物文様であるラッピングテープを開示する。具体的には、織物と樹脂フィルムとが一体とされたラッピングテープが開示されている。
特開2002−144439公報
CFRP製シャフトを軽量化する目的で、上記の通り、繊維や樹脂の強度、あるいは、繊維と樹脂との密着を高めることでシャフト全体の強度を高め、強度向上分の重量を低減する方法が採られてきた。そして、それらの方法によりシャフトの軽量化が図られてきた。しかしながら強度を向上させてその分軽量化するという開発にも限界がある。一方、ゴルファーのニーズには限界が無く、少しでも飛距離を伸ばすことが求められている。飛距離の増加を実現する手段の一つがシャフトの軽量化であり、シャフト軽量化への要求は尽きない。この要求を実現するために、シャフトに必要な最低限の強度は維持しつつ、シャフト剛性に関わる特性(フレックスやトルク)は犠牲にするという手法が採られてきた。しかしこの手法による軽量化も限界にきており、剛性の低下もクラブとしての機能に支障をきたすところまできている。如何にシャフトの剛性を維持したまま更なる軽量化を図るかが重要である。
シャフトの剛性を維持したまま軽量化を実現する手段として、繊維含有率の高いCFRPを使用することが考えられる。つまり、管状体の成形品としての強度や剛性を主として担う繊維の含有率を高めることにより、単位重量当たりの強度や剛性が高まり、軽量化が図られる。しかしながら、繊維含有率の高いCFRPでの成形は、タック製が不足しているため、成形しにくい上に、繊維強化樹脂部材層間に空気が入り込みやすくなる。またこの場合、材料自体にも空気が多く含まれることになるため、管状体全体に空気が多く入り込む。この空気はボイドとなり、管状体の強度や耐久性を低下させる可能性がある。
このように、軽量化を図りながら、強度と剛性とを同時に維持することは困難である。
また、上記従来技術のラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとで伸び率が異なるため、張力を付与した際に織物と樹脂フィルムとが部分的に分離したり、テープが捻れたり、テープが湾曲したり、成形圧力がばらついたりする現象が発生しうる。これらの現象により、FRP管状体の表面が不均一となりやすく、不良品の発生又は強度の不均一が生じやすい。
ところで、軽量で且つ強度の高いFRP管状体は、様々な用途において有用である。このFRP管状体、例えばゴルフクラブシャフトでは、軽量化が望まれている。軽量なゴルフクラブシャフトは、ヘッドスピード及び飛距離の増大に寄与しうる。本発明では、全く新たな技術思想に基づき、軽量なFRP管状体が得られる製造方法を見いだした。この製造方法においては、ラッピングテープの巻き付け工程が従来と異なる。この製造方法では、繊維強化樹脂に含まれる樹脂がラッピングテープに吸収されうる。
本発明の目的は、製造工程中において樹脂含有率を低下させうる管状体の製造方法の提供にある。
本発明に係るFRP管状体の製造方法は、
(1)マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程
(2)上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程
(3)上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程
及び、
(4)上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程
を含む。この製造方法では、上記ラッピングテープが織物テープである。
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Mpa)以上150(Mpa)以下である。
好ましくは、上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である。
好ましくは、上記中間成形体の繊維含有率がS1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がS2(質量%)であるとき、差(S2−S1)が3質量%以上25質量%以下である。
本発明に係る管状体は、上記のいずれかに記載された製造方法により製造された管状体である。
製造工程中において樹脂含有率を低下させることができ、軽量な管状体が得られうる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
本発明に係る製造方法では、繊維強化樹脂製の管状体(FRP管状体)が得られる。図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法を説明するための図である。ここでは、管状体の製造方法の一例として、ゴルフクラブシャフトの製造方法が説明される。この製造方法では、先ず、マンドレル2と繊維強化樹脂部材4とが用意される。マンドレル2は、芯金とも称される。典型的なマンドレル2の材質は、鋼等の金属である。マンドレル2の中心軸線は、略直線である。マンドレル2の断面形状は、円形である。マンドレル2は、テーパーを有している。このテーパーにより、マンドレル2は、その一端に近づくほど細くなされている。マンドレル2は、部分的にパラレルであってもよい。換言すれば、マンドレル2は、部分的に直径が一定の部分を有していても良い。マンドレル2の全体においてその直径が一定であってもよい。
マンドレル2は、最終的に得られる管状体の中空部を形成する。マンドレル2の形状により、管状体の中空部の形状が決定される。後述されるように、マンドレル2は、後の工程において引き抜かれる。この引き抜きが容易となるように、好ましくは、マンドレル2の表面に離型剤が塗布される。
本製造方法では、先ず、マンドレルに、繊維強化樹脂部材が巻回される工程がなされる。この工程が、以下、巻回工程とも称される。
巻回工程に先立ち、繊維強化樹脂部材が用意される。本実施形態では、繊維強化樹脂部材は、シート状である。本実施形態において、繊維強化樹脂部材は、プリプレグ4である。シート状の繊維強化樹脂部材が巻回される本製造方法は、シートワインディング製法とも称される。なお、繊維強化樹脂部材として、プリプレグ4の他、液状の樹脂に含浸させた繊維が例示される。この繊維を用いた製法の一例は、いわゆるフィラメントワインディング製法である。本製造方法は、フィラメントワインディング製法にも適用されうる。
プリプレグ4は、繊維とマトリクス樹脂とを含む。この繊維は、炭素繊維である。プリプレグ4の炭素繊維は、一方向に配向している。後述されるように、炭素繊維以外の繊維でもよい。高強度で且つ軽量な管状体とする観点から、炭素繊維が好ましい。巻回工程において、マトリクス樹脂は、完全には硬化していない。よってプリプレグ4は柔軟性を有する。この柔軟性は、プリプレグ4のマンドレル2への巻回を許容する。なお、後述されるように、マトリクス樹脂は限定されず、好ましくはエポキシ樹脂である。
巻回工程の前に、プリプレグ4は、所望の形状に切断される。図1の実施形態では、6枚のプリプレグ4が用いられる。図1の実施形態では、切断されたプリプレグ4の例として、シートs1からs6が示されている。プリプレグ4は、いわゆるアングル層用シートs1、s2と、ストレート層用シートs3、s5、s6と、フープ層用シートs4とを含む。プリプレグ4は、シャフトの全長に亘って設けられる全長シートs1からs5と、シャフト長手方向の一部に設けられる部分シートs6とを含む。なお、プリプレグ4の仕様は限定されない。プリプレグ4の形状、厚み、繊維種類、繊維含有率等は限定されない。
巻回工程では、シートs1からシートs6までが、順次マンドレル2に巻回される。図示されていないが、巻回に先立ち、シートs2は、シートs1に貼り合わせられる。この貼り合わせされてなるシート群がマンドレル2に巻回される。この貼り合わせにおいて、シートs2は、裏返される。この裏返しにより、シートs1の繊維とシートs2の繊維とは、互いに逆方向に配向する。図1において各シートs1からs6に記載された角度は、シャフト軸方向と繊維の配向方向とのなす角度を示している。
シートs1からs6の巻回は、例えば人力によりなされる。巻回機(ローリングマシンとも称される)が用いられても良い。巻回工程により、中間成形体6が得られる。中間成形体6は、巻き付けられたプリプレグ4により構成されている。中間成形体6の断面は、渦巻き状の層よりなる。この層は、プリプレグ4により形成されている。
次に、テープ巻き付け工程がなされる。このテープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面にラッピングテープが巻き付けられる。図2及び図3は、テープ巻き付け工程の様子を示す一部断面斜視図である。図2及び図3の断面において、中間成形体6は、単一の層として簡略的に示されている。実際には、中間成形体6は、前述したように複数の層よりなる。本願において、テープ巻き付け工程は、単に巻き付け工程とも称される。
テープ巻き付け工程におけるラッピングテープは、織物テープ8である。本実施形態において、ラッピングテープとして織物テープのみが用いられる。テープ巻き付け工程では、織物テープ8のみが巻き付けられる。織物テープ8は、織物を基材とするテープである。織物テープ8は、織物である基材の表面にコーティング剤等を有していてもよい。
テープ巻き付け工程の様子が、図2で示される。テープ巻き付け工程では、中間成形体6の外周面に織物テープ8が直接巻き付けられる。中間成形体6の外周面と織物テープ8とは当接している。織物テープ8は中間成形体6の外周面に接触している。
図2が示すように、テープ巻き付け工程において、織物テープ8は、螺旋状に巻き付けられる。螺旋状に巻き付ける目的で、中間成形体6の軸線方向と織物テープ8の長手方向とは互いに垂直とされない。織物テープ8は、中間成形体6に隙間無く巻き付けられる。隙間を無くす目的で、織物テープ8の幅W1は、巻き付けピッチP1よりも広い。巻き付けピッチP1は、図2において両矢印で示されている。つまり、織物テープ8は、その幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられている。巻き付けピッチP1は、一定である。中間成形体6のチップ端からバット端にかけて、巻き付けピッチP1は一定である。この織物テープ8の巻き付けは、公知のラッピングマシンによりなされる。織物テープ8は、中間成形体6の全長に亘って巻き付けられる。テープ巻き付け工程の結果、中間成形体6の全体が織物テープ8により覆われる。なお、織物テープ8の両端(巻きはじめの端及び巻き終わりの端)は、粘着テープ等により中間成形体6に固定される。この両端の固定により、織物テープ8の巻き付けが自然に解けることはない。
後述されるように、その後の工程において、中間成形体6に含まれる樹脂が、織物テープ8へと移行する。即ち中間成形体6に含まれる樹脂は、織物テープ8へと吸収されるか、又は、織物テープ8を透過して外部に排出される。
織物テープ8に吸収される樹脂量を増加させる観点から、織物テープ8のラッピング層数L1は多いのが好ましい。なお、ラッピング層数L1とは、中間成形体6に巻き付けられた織物テープ8の層数である。ラッピング層数L1は、中間成形体6の表面上の各点のそれぞれにおいて定まる。前述した螺旋状の巻き付けにおいて、仮に巻き付けピッチP1が織物テープの幅W1よりも大きい場合、巻き付け工程後の中間成形体6には、ラッピング層数L1が0層である部分と、ラッピング層数L1が1層である部分とが存在することになる。また、比(P1/W1)が0.5を超えて1.0未満である場合、巻き付け工程後の中間成形体6には、ラッピング層数L1が1層である部分と、ラッピング層数L1が2層である部分とが存在することになる。
ラッピング層数L1を多くするための方法として、次の(方法A)及び(方法B)が採用されうる。
(方法A)巻き付けピッチP1の、織物テープの幅W1に対する比(P1/W1)が小さくされる。
(方法B)複数回の巻き付けがなされる。
(方法A)は、一回の巻き付けでラッピング層数L1を増加することができるため、生産性の向上に寄与しうる。一方、(方法B)は、チップ側からバット側への巻き付け、及び/又はチップ側からバット側への巻き付けを繰り返す必要が生じるので、(方法A)と比較して生産性に劣る。生産性の観点からは、(方法B)よりも(方法A)が好ましい。ただし、織物テープ8の厚さや柔軟性等によっては、比(P1/W1)を小さくしてラッピング層数L1を増加させることには限界が生じる場合がある。この場合、(方法B)が有効に用いられうる。
ラッピング層数L1を多くして樹脂吸収量を高める観点から、比(P1/W1)は、0.70以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、0.40以下が更に好ましく、0.33以下が更に好ましい。なお、比(P1/W1)が過度に小さくされ、ラッピング層数L1が過度に多くされた場合、樹脂吸収量の増加がほとんどみられない一方で生産性が低下しうる。この観点から、比(P1/W1)は、0.05以上が好ましく、0.07以上がより好ましく、0.10以上が更に好ましい。
織物テープ8の巻き付けは、張力F1を付与しつつなされる。この張力F1により、中間成形体6は、織物テープ8により締め付けられる。織物テープ8の巻き付けにより、織物被覆体12が得られる。織物被覆体12は、中間成形体6が織物テープ8で覆われてなる。
図3は、上記(方法B)が採用される場合における二回目の巻き付けの様子が示された一部断面斜視図である。二回目の巻き付けでは、織物被覆体12の外周面に織物テープ10が直接巻き付けられる。織物被覆体12の外周面と織物テープ10とは当接する。織物テープ10は織物被覆体12の外周面に接触している。つまり織物テープ10は織物テープ8に接触している。なお、織物テープ8と織物テープ10とは、同一のテープであってもよいし、異なるテープであってもよい。
図3が示すように、二回目の巻き付けにおいて、織物テープ10は、螺旋状に巻き付けられる。この二回目の巻き付けは、前述した一回目の巻き付けと同様になされうる。なお後述するように、生産性の観点から、この二回目の巻き付けは実施されないのが好ましい。
織物テープ10の巻き付けは、張力F2を付与しつつなされる。この張力F2により、織物被覆体12は、織物テープ10により締め付けられる。張力F2と張力F1とは、同一であってもよいし、異なっていても良い。
なお織物被覆体12の表面には、織物テープ8による螺旋模様が形成されているが、図3においては、この織物テープ8による螺旋模様の記載が省略されている。
図3の実施形態では、織物テープがチップ端からバット端にかけて巻き付けられる。この実施形態では、巻き付けが二回繰り返されている。このように、巻き付けを繰り返すことにより、ラッピング層数L1を調整することができ、樹脂吸収量の調整が可能である。なお生産性の観点から、織物テープが一方向に向かって巻き付けられる巻き付けの回数(以下、単に巻き付け回数ともいう)は、三回以下が好ましく、二回以下がより好ましく、一回が特に好ましい。この「一方向」とは、チップ側からバット側へと向かう方向でもよいし、バット側からチップ側へと向かう方向でもよい。
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされる。この硬化工程では、織物テープ8が巻き付けられた中間成形体6において、マトリクス樹脂を硬化させる。この硬化工程は、加熱工程である。加熱は、加熱炉によりなされる。加熱温度及び加熱時間は、マトリクス樹脂の仕様等により適宜設定される。加熱工程(硬化工程)は、所定温度で加熱される第一段階と、この第一段階よりも高温で加熱される第二段階とを含むのが好ましい。マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂が用いられている場合、加熱工程(硬化工程)は、60℃以上115℃以下の温度で10分以上120分以下の間加熱する第一段階と、この第一段階の後になされ120℃以上200℃以下の温度で60分以上240分以下の間加熱する第二段階とを含むのが好ましい。上記第一段階により、樹脂の粘度が低減し、樹脂の流動性が高まる。上記第二段階により、エポキシ樹脂の硬化が効果的に進行しうる。
この第一段階の加熱により、樹脂が流動しやすくなり、樹脂が織物テープに移行しやすくなる。樹脂の流動時間を長くして織物テープへの樹脂の移行を増大させる観点から、上記第一段階の加熱時間は、15分以上がより好ましく、20分以上が更に好ましい。樹脂の流動時間を長くして織物テープへの樹脂の移行を増大させる観点から、上記第一段階の加熱温度は、100℃以下がより好ましく、90℃以下が更に好ましい。
硬化工程の後、マンドレル2の引き抜き及び織物テープの除去を行い硬化管状体を得る工程がなされる。マンドレル2の引き抜き及び織物テープの除去は、どちらが先になされてもよい。作業性の観点から、好ましくは、マンドレル2が引き抜かれた後に織物テープが除去される。
通常は、上記硬化管状体に仕上げ加工が施されて、最終製品の管状体が完成する。この仕上げ加工には、両端部の切断、表面研磨、塗装等が含まれうる。
なお、織物テープ8に発生する皺を抑制する観点から、織物テープ8の内面にコーティング剤が設けられても良い。織物テープ8の内面とは、中間成形体6と当接する面である。このコーティング剤として、フッ素系化合物又はシリコン系化合物が好ましい。
以上で説明したように、本発明では、製造工程中において、繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に移行しうる。織物テープ8は、織られた繊維の間に空隙や穴を有している。よって織物テープ8は、樹脂を吸収及び/又は透過させうる。織物テープ8により、マトリックス樹脂が成形体の外部に排出されやすくなり、管状体の繊維含有率が向上しうる。これにより、管状体の軽量化が達成される。
FRP管状体の繊維含有率を高くする手段として、繊維含有率が高い繊維強化樹脂部材を用いることが考えられる。繊維含有率が高いことは、樹脂含有率が低いことを意味する。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、タック性(粘着性)が低い。なぜならタック性は樹脂に起因するものだからである。よって、樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材は、繊維強化樹脂部材同士の密着性が低い。このような粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、一旦巻回されても解けやすい。このようなタック性の低い繊維強化樹脂部材では、マンドレル2への巻き付け作業が行いにくく、且つ、巻き付けの際に皺が発生しやすい。また、密着性が悪いため、渦巻き状に巻き付けられた繊維強化樹脂部材層の層間に空気が含まれやすくなり、管状体の強度や耐久性が損なわれる。粘着性の低い繊維強化樹脂部材は、生産性の低下や成形不良を招きやすい。
硬化工程における加熱の初期段階では、繊維強化樹脂部材中の樹脂(マトリクス樹脂)が熱により流動化する。この際、繊維強化樹脂部材に含まれていた空気や、積層間に存在する空気(エアーだまり)が、流動化したマトリクス樹脂中を移動及び透過して外部に排出されうる。樹脂含有率が低い繊維強化樹脂部材では、樹脂部分が少ないので、マトリクス樹脂の流動化に伴う空気の移動及び透過が起こりにくい。
このように、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いた管状体では、タック性の低下に起因して空気が含まれやすくなる上に、マトリクス樹脂の流動化に伴う空気の抜けも起こりにくいため、成形された管状体にボイドが残りやすくなり、耐久性が低下しやすい。
本発明の製造方法では、上記中間成形体の外側に直接織物テープ8を張力を付与しつつ巻き付ける。この製造方法により、加熱工程中において繊維強化樹脂部材に含まれる樹脂が織物テープ8に吸収される。この吸収により、繊維含有率の高い繊維強化樹脂部材を用いることなく、FRP管状体の繊維含有率を高くすることができる。よって、タック性の高い繊維強化樹脂部材が使用でき、且つ、マトリクス樹脂の流動化に伴う空気の抜けも起こりやすい。更に、織物テープ8は、中間成形体6に含まれる空気も吸収又は透過させうる。これにより、ボイドの原因となる空気が抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。また、ラッピング層数L1が複数とされることにより、織物テープ8が中間成形体6に大きな圧力を付与することができる。このためボイドの原因となる空気が一層抜けやすくなり、FRP管状体の強度が向上しうる。
織物テープ8による樹脂の吸収は、繊維強化樹脂部材を巻回した後になされる。本発明では、粘着性が過度に低い繊維強化樹脂部材を用いることなく、繊維含有率の高いFRP管状体が得られうる。つまり本発明では、繊維強化樹脂部材の巻回が行いやすく、且つ繊維含有率の向上が達成されうる。製造工程中に繊維含有率を向上させているので、成形性及び生産性を維持しながら軽量化が達成されている。
前述したように、特開2002−144439に記載されたラッピングテープでは、織物と樹脂フィルムとが一体化されている。このテープも織物部分に樹脂が吸収される可能性がある。しかし実際には、この一体化されたテープでは、樹脂の吸収効果が低いことが判明した。
このように吸収効果が低い原因は、次のように考えられる。ラッピングテープは、幅方向の一部が重ねられつつ螺旋状に巻き付けられる。よって、螺旋状に巻き付けられたラッピングテープには、ラッピングテープ同士が重なった重複部が存在する。つまり、この重複部には、中間成形体と接する内側のラッピングテープ(内側テープ)と、この内側テープの外側に位置する外側のラッピングテープ(外側テープ)とが存在する。従来の一体化されたラッピングテープの場合、内側テープに存在する樹脂フィルム層が、外側テープと中間成形体との間に介在することになる。この樹脂フィルム層は、樹脂及びエアーを通さない。よって、従来の一体化されたテープの場合、上記重複部において、内側テープの樹脂フィルム層が、外側テープの織物層への樹脂及び空気の移行を阻害する。このように、従来の一体化されたテープでは、樹脂及び空気が織物層に移行しにくい。
更に、織物と樹脂フィルムとが一体化されているテープでは、織物と樹脂フィルムとの間の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。更に、従来の一体化されたテープでは、織物と樹脂フィルム層との間に存在する接着剤層の一部が織物の内部に浸透しており、織物自体の空隙が少なくなっているため、樹脂の吸収効果が低いと考えられる。
これに対して本発明では、上記重複部において、織物テープ同士が重なっている。この重複部において、織物テープの内側に樹脂テープ層が存在しない。よって、重複部を含めた織物テープの全体に樹脂及び空気が移行することができ、樹脂及び空気が織物テープに移行しやすい。
中間成形体6への圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、平均ラッピング層数Laは、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。また平均ラッピング層数Laが過度に多い場合、中間成形体6の表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、平均ラッピング層数Laは、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
なお、平均ラッピング層数Laは、前述したラッピング層数L1とは異なる概念である。ラッピング層数L1が中間成形体6の表面上の各点においてそれぞれ定まるのに対し、平均ラッピング層数Laは、ラッピング層数L1の平均値として理解されうる。具体的には、平均ラッピング層数Laは以下の計算式(1)により決定されうる。
La=St/Sn ・・・(1)
ただし、式(1)において、Stは巻き付けられた状態における織物テープの内面の総面積(mm)であり、Snは巻き付けられた織物テープと接触する部分における中間成形体6の表面積(mm)である。この総面積Stは、巻かれている織物テープの長さNt(mm)と織物テープの幅Wa(mm)との積である。即ちSt=Nt×Waである。長さNtは、織物テープの長手方向に沿って測定される。長さNtは、中間成形体6から解かれた状態において測定される織物テープの長さNkと実質的に等しいか、又は、この長さNkよりも長い。Nt>Nkとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。幅Waは、中間成形体6から解かれた状態において測定される織物テープの幅W1と実質的に等しいか、又は、この幅W1よりも狭い。W1>Waとなりうる場合は、張力によって引き延ばされた状態で織物テープが巻き付けられている場合である。ラッピング層数L1は0又は1以上の整数であるが、平均ラッピング層数Laは整数とならない場合がある。
例えば、比(P1/W1)が0.5であり、W1=Waであり、且つ巻き付け回数が1回である場合、平均ラッピング層数Laは、2層である。また、巻き付けピッチP1の誤差を無視すれば、ラッピング層数L1は、全ての点において、2層である。
上記総面積St及び表面積Snは、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの範囲において測定される。前述したように、管状体製造の仕上げ工程においては、硬化管状体の両端部が切断されてもよい。この両端部の切断がなされた場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。同様に、前述した両端部の切断がなされた場合、管状体のバット端位置Bt1と、硬化管状体のバット端位置Btとは相違する。前述した両端部の切断がなされない場合、管状体のチップ端位置Tp1と、硬化管状体のチップ端位置Tpとは一致する。図1には、両端部の切断がなされた場合におけるチップ端位置Tp1及びバット端位置Bt1が示されている。
中間成形体6への圧力を高め、織物テープの樹脂吸収量を増加させる観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、1層以上が好ましく、2層以上がより好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上が更に好ましい。ラッピング層数L1が過度に多い場合、織物テープのコスト増加及び織物テープを剥がす手間の増加が生じうる。またラッピング層数L1が過度に多い場合、中間成形体6の表面に皺が発生しやすくなる。これらの観点から、ラッピング層数L1は、チップ端位置Tp1からバット端位置Bt1までの全ての点において、15層以下が好ましく、12層以下がより好ましく、10層以下が更に好ましい。
平均ラッピング層数Laの値に関わらず、巻き付け回数が1回である場合、巻き付け部分の両端部には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。例えば、平均ラッピング層数Laが2層以上とされた場合であっても、巻き付け回数が1回である限り、巻き付けの開始部分及び巻き付けの終了部分には、ラッピング層数L1が1回である部分が存在する。巻き付けの開始点に隣接し且つラッピング層数L1が1層である部分Xtは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Xtが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。同様に、巻き付けの終了点に隣接し且つラッピング層数L1が1回である部分Ytは、他の部分に比べて織物テープへの樹脂の移行が少ない傾向にある。よって、部分Ytが切除されてなる管状体(シャフト)がより好ましい。なお、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Xtには該当しない。同様に、ラッピング層数L1が2層以上である部分を軸方向両側に有する部分は、ラッピング層数L1が1層であったとしても、上記部分Ytには該当しない。上記軸方向とは、管状体の軸方向を意味する。
巻き付け工程において、チップ側とバット側との間で織物テープ8を往復させて巻き付けてもよい。例えば、織物テープ8をバット側からチップ側に向かって螺旋状に巻き付け、引き続き、織物テープ8をチップ側からバット側に向かって螺旋状に巻き付けてもよい。このような往復方式の巻き付けにより、巻き付け回数が増加されてもよい。なお本明細書では、このような往復方式の巻き付けにより一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。織物テープ8が途中で切断されることなく一往復の巻き付けがなされた場合であっても、巻き付け回数は2回であると定義される。前述した通り、生産性の観点から、平均ラッピング層数Laを増加させる方法としては、巻き付け回数が1回され且つ比(P1/W1)が小さくされる方法が好ましい。
前述したように、織物テープ8は張力F1が付与されつつ巻き付けられている。ここで、上記テープ巻き付け工程において織物テープ8に付与される引張応力T1が定義される。引張応力T1は、上記張力F1を、織物テープ8の断面積Sdで割った値である。即ち、[T1=F1/Sd]である。この断面積Sdは、張力が作用していない(フリーな)状態の織物テープ8において測定される。この引張応力T1は、巻き付けられる直前において織物テープ8に作用する引張応力を意味する。この引張応力T1は、巻き付けられた状態において織物テープ8に作用する引張応力を意味しない。
織物テープ8に移行する樹脂の量を大きくするとともに、織物テープ8のたるみを抑制する観点から、引張応力T1は5Mpa以上が好ましく、10Mpa以上がより好ましく、20Mpa以上がより好ましく、25Mpa以上がより好ましく、30Mpa以上が更に好ましい。管状体の表面に発生する段差を抑制し、管状体表面を滑らかにするための研磨量を抑える観点から、引張応力T1は150Mpa以下が好ましく、100Mpa以下がより好ましく、60Mpa以下が更に好ましい。
本発明では、中間成形体6の繊維含有率がS1(質量%)とされ、上記硬化管状体の繊維含有率がS2(質量%)とされる。軽量化の観点から、差(S2−S1)は3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、織物テープを除去しにくくなる等により生産性が低下しやすい。この観点から、差(S2−S1)は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
中間成形体6の繊維含有率S1は限定されない。FRP管状体の剛性及び強度を高める観点から、繊維含有率S1は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。巻き付け作業の生産性を高めると共に巻き付け不良を抑制する観点から、繊維含有率S1は85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。中間成形体6の繊維含有率S1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の繊維含有率に等しい。繊維含有率S1は、繊維強化樹脂部材(プリプレグ4)の製品データに基づき決定されうる。
硬化管状体の繊維含有率S2は限定されない。FRP管状体を軽量とする観点から、繊維含有率S2は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。樹脂が過度に除去された場合、中間成形体6から排出された樹脂によりラッピングテープの除去が行いにくくなるので、生産性が低下しやすい。この観点から、繊維含有率S2は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がより好ましく、83質量%以下が更に好ましい。繊維含有率S2の値は、繊維含有率S1の値と、中間成形体6の質量と、除去された樹脂の質量とから算出される。
織物テープ8の繊維は、離型性、締め付け力、強度等を総合的に考慮すると、ナイロン繊維及びポリエステル繊維が好ましい。織物テープ8の厚さd1は限定されない。織物テープ8による樹脂の吸収量を大きくする観点から、織物テープ8の厚さd1は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともにコストを下げる観点から、織物テープ8の厚さd1は、150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましく、130μm以下が更に好ましい。
なお、樹脂吸収量を高める観点から、平均ラッピング層数Laと、織物テープ8の厚さd1(μm)との積(La×d1)は、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がより好ましく、500以上が更に好ましい。生産性の観点から、この積(La×d1)は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、1500以下がより好ましく、1200以下が更に好ましい。
織物テープ8の幅W1は限定されない。生産性を高めつつ織物テープ8に吸収されうる樹脂の量を増加させる観点から、織物テープ8の幅W1は5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。皺の発生を抑制するとともに、中間成形体6を締め付けやすくする観点から、織物テープ8の幅W1は35mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましく、25mm以下が更に好ましい。
織物テープ8の織り組織は限定されない。この織り組織として、平織り、朱子織り及び綾織りが例示される。張力により過度に引き延ばされると、樹脂が入り込みうる空隙及び繊維に吸収されうる樹脂の量が減少しやすい。張力により過度に引き延ばされることを抑制する観点から、織り組織には、織物テープ8の長手方向に対して略平行に配向する糸が存在しているのが好ましい。
繊維強化樹脂部材の繊維は限定されない。この繊維として、無機繊維、有機繊維及び金属繊維が例示される。この無機繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維及びアルミナ繊維が例示される。この有機繊維として、ポリエチレン繊維及びポリアミド繊維が例示される。複数種類の繊維が組み合わされてもよい。ゴルフクラブシャフトに要求される剛性を確保しつつ軽量な管状体を得る観点から、繊維の引張弾性率は、5t/mm以上が好ましく、10t/mm以上がより好ましく、24t/mm以上が更に好ましい。繊維の入手可能性の観点から、繊維の引張弾性率は100t/mm以下が好ましい。この引張弾性率は、JIS R7601:1986「炭素繊維試験方法」に準拠して測定される。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[順式フレックスの測定]
硬化管状体のバット端位置Btから75mm隔てた位置の上側と、このバット端位置Btから215mm隔てた位置の下側とが支持点とされた。これらの二点が支持された状態で、硬化管状体の軸線方向が水平とされた。次に、バット端位置Btから1039mm隔てた荷重点Kに、2.7kgの錘りを掛けた。錘りにより硬化管状体が曲がり、上記荷重点Kが下方へと移動した。荷重点Kの鉛直方向における移動量が、順式フレックスFjとして下記の表2で示される。
[しわの程度]
硬化管状体の表面に生じたしわ(皺)の程度が、外観の目視により評価された。次の5段階により評価がなされた。この評価が、下記の表2で示される。評価点数が小さいほど、評価が高い。
評価1:しわが無い。
評価2:長さが1mm以上2mm未満の皺が有る。
評価3:長さが2mm以上3mm未満の皺が有る。
評価4:長さが3mm以上4mm未満の皺が有る。
評価5:長さが4mm以上の皺が有る。
[織物テープの厚さ]
織物テープの厚さd1は、JIS L 1096に準拠して、デジマチックマイクロメータを用いて測定された。240g/cmの一定圧力を付与させて10秒間経過した後、240g/cmの圧力のもとで測定がなされた。測定は5箇所で行われた。5箇所のデータの平均値が、「厚さd1」として下記の表2で示されている。
[実施例1]
図1で示すマンドレルに離型剤を塗布した後、このマンドレルに6枚のプリプレグを巻き付け、中間成形体を得た。これら6枚のプリプレグの構成は、図1で示された通りとされた。シートs1からs6のプリプレグ種類及びプリプレグ構成が、下記の表1で示されている。シートs1からs6は、いずれも東レ社製のプリプレグである。表1における「先端ply数」とは、チップ端位置Tpにおけるプリプレグの巻回数を示している。表1における「繊維角度」は、シャフト軸線方向に対する炭素繊維の配向角度である。各プリプレグにおいてマトリクス樹脂はエポキシ樹脂である。各プリプレグの品番及び炭素繊維の種類(品番)は表1で示す通りである。
次に、上記中間成形体の外周面に織物テープを巻き付けるテープ巻き付け工程がなされた。テープ巻き付け工程は、横手鉄工所製のラッピング機によりなされた。巻き付け工程において、巻き付け回数は1回とされた。テープ巻き付け工程は、一定の張力F1を付与しつつなされた。張力F1は、日本電産シンポ社製のロードセルにより測定された。これらの張力F1に基づき、引張応力T1が算出された。
テープ巻き付け工程では、織物テープのみが巻き付けられた。この織物テープとして、キンキテープ社が販売する商品名「ナイロンタフタ」が用いられた。このナイロンタフタは、ナイロン繊維が平織りで織られた織物テープである。このナイロン繊維を構成するナイロンの種類は、ナイロン6である。この織物テープの幅W1は15mmであり、厚さd1は100μmであった。テープ巻き付け工程における引張応力T1は15Mpaとされた。比(P1/W1)は(1/15)、即ち約0.06667とされた。テープ巻き付け工程において、巻き付けピッチP1はmmとされた。
巻き付け工程の後に、硬化工程がなされた。この硬化工程では、まず80℃で30分間加熱がなされ、次に130℃で120分間加熱がなされた。
次に、マンドレルが引き抜かれた。次に、織物テープが除去され、実施例1に係る硬化管状体を得た。
実施例1において、繊維含有率S1は75質量%であった。この繊維含有率S1は、シートs1からs6よりなる中間成形体の繊維含有率である。この繊維含有率は、プリプレグの繊維含有率により算出された。硬化管状体の繊維含有率S2は、硬化管状体の質量Wtに基づいて計算された。この硬化管状体について、順式フレックスFjが評価された。実施例1の仕様と評価結果が下記の表2で示される。
[実施例2から7]
引張応力T1及び/又は比(P1/W1)が表2で示されるように変更された他は実施例1と同様にして、各例に係る硬化管状体を得た。これらの仕様と評価結果が下記の表2で示される。
[比較例1]
織物テープに代えて樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリプロピレンフィルム(PPフィルム)からなるテープが用いられた。具体的には、このPPフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PT−30H」が用いられた。このテープの幅は25mmであった。比(P1/W1)は(1/12)、即ち約0.08333とされた。このテープの巻き付け時における引張応力は60Mpaとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例1に係る硬化管状体を得た。比較例1の仕様と評価結果が下記の表2で示される。
[比較例2]
織物テープに代えて樹脂フィルムテープが巻き付けられた。この樹脂フィルムテープとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)からなるテープが用いられた。具体的には、このPETフィルムテープとして、信越フィルム社製の商品名「PET−25K」が用いられた。このテープの幅は15mmであった。比(P1/W1)は(1/7)、即ち約0.1429とされた。このテープの巻き付け時における引張応力は60Mpaとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例2に係る硬化管状体を得た。比較例2の仕様と評価結果が下記の表2で示される。
[比較例3]
織物テープに代えて一体化テープが巻き付けられた。この一体化テープは、幅が15mmで且つ厚さが100μmであるナイロンタフタと、幅15mmで且つ厚さが30μmのPPフィルムテープとが、加熱及び圧着により一体化されたテープである。比(P1/W1)は(1/7)、即ち約0.1429とされた。このテープの巻き付け時における引張応力は60Mpaとされた。その他については実施例1と同様にして、比較例3に係る硬化管状体を得た。比較例3の仕様と評価結果が下記の表2で示される。
Figure 0005074236
Figure 0005074236
表2に示されるように、実施例は、比較例に較べて、差(S2−S1)が大きい。このように実施例は、製造工程中において中間成形体から排除された樹脂の量が大きい。
実施例は、樹脂の減少量が大きいため、硬化管状体の外径が小さくなる。このため、実施例の外径は、比較例の外径よりも僅かに小さくなる。この外径の差に起因して、実施例の順式フレックスFjは、比較例の順式フレックスFjよりも大きい。ただし、繊維の含有量は実施例と比較例とで同じであるから、順式フレックスFjの差は僅かである。そして、順式フレックスFjの逆数(1/Fj)を硬化管状体の質量Wtで割った値[1/(Fj×Wt)]に関しては、実施例は比較例よりも大きい。順式フレックスFjの逆数(1/Fj)が大きいほど、硬化管状体の剛性が大きい。[1/(Fj×Wt)]が大きいことは、単位質量当たりの剛性が向上していることを意味する。実施例は、比較例と比べて、単位質量当たりの剛性が大きい。
比較例3では、テープ巻き付け工程においてテープのよじれが発生し、このよじれに起因して、硬化管状体に皺が発生した。
実施例1では、平均ラッピング層数La及びラッピング層数L1が多いため、若干の皺が発生している。ただし実施例1の皺は、比較例3の皺に比べて良好である。実施例3から5は、実施例6、7と比較して、(S2−S1)が大きい。これは、平均ラッピング層数Laが大きくされた効果である。
ゴルフクラブシャフトにおいては、先端部にヘッドが取り付けられるため、先端部における強度が特に重要である。実施例1及び比較例1において、シャフト先端部におけるボイド率Rbが測定された。その結果、比較例1のボイド率Rbは0.8%であったのに対し、実施例1のボイド率Rbは0.3%であり、比較例1よりも63%減少した。なお、このボイド率Rbは、シャフト先端から90mm隔てた地点の断面の画像によりボイド面積Sb及びシャフト断面積Smを求め、下記式により算出した。
Rb(%)=(Sb/Sm)×100
このように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明は、ゴルフクラブシャフトをはじめとして、あらゆるFRP管状体に適用されうる。
図1は、本発明の一実施形態で用いられうるマンドレル及びプリプレグを示す図である。 図2は、本発明におけるテープ巻き付け工程の一例を示す一部断面斜視図である。 図3は、本発明におけるテープ巻き付け工程の他の例を示す一部断面斜視図である。
符号の説明
2・・・マンドレル
4・・・プリプレグ(繊維強化樹脂部材)
6・・・中間成形体
8・・・織物テープ
10・・・織物テープ
12・・・織物被覆体
s1、s2、s3、s4、s5、s6・・・プリプレグよりなるシート

Claims (4)

  1. シートワインディング製法であって、
    マンドレルに、繊維とマトリクス樹脂とを含む繊維強化樹脂部材を巻回して中間成形体を得る工程と、
    上記中間成形体の外周面に、張力を付与しつつラッピングテープを巻き付けるテープ巻き付け工程と、
    上記ラッピングテープが巻き付けられた上記中間成形体を加熱することにより、上記マトリクス樹脂を硬化させる硬化工程と、
    上記硬化工程の後に上記マンドレルの引き抜き及び上記ラッピングテープの除去を行って硬化管状体を得る工程とを含み、
    上記ラッピングテープが織物テープのみである繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
  2. 上記テープ巻き付け工程において上記織物テープに付与される引張応力T1が5(Ma)以上150(Ma)以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記テープ巻き付け工程において巻き付けられた上記織物テープのラッピング層数L1が、管状体のチップ端位置Tp1から管状体のバット端位置Bt1までの全ての点において1層以上である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 上記中間成形体の繊維含有率がS1(質量%)であり、上記硬化管状体の繊維含有率がS2(質量%)であるとき、差(S2−S1)が3質量%以上25質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の繊維強化樹脂製の管状体の製造方法。
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