しかしながら、特許文献1では、ユーザが画像を作成する際に、透明色として設定する背景色を、画像を表現する色に使用しないように意識しながら画像の作成を行わなければならない。また、画像作成用アプリケーションによっては、プリンタドライバに出力するオブジェクトとして、画像と余白部分とが一体となったビットマップオブジェクトを作成し、出力するものがある。このようなオブジェクトを受信したプリンタドライバでは、画像データが印刷可能領域内のどの位置に、どの大きさで配置されているかを特定できず(つまり画像と余白部分とを区別できず)、特許文献2のように、プリンタドライバ側で余白部分を透明色として設定することができないという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、画像データ作成装置から出力される中間印刷データに基づいて印刷装置に出力する印刷データを作成する上で、印刷可能領域内に配置された画像データの配置位置にあわせて印刷領域を設定することができる印刷データ作成装置、印刷データ作成プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の印刷データ作成装置は、複数の画素により構成される画像データを印刷可能領域内に配置した状態で画像データ作成装置から出力される中間印刷データが入力され、その中間印刷データに基づいて、印刷装置での印刷に用いられる印刷データを作成する印刷データ作成装置であって、予め、前記中間印刷データに対応し、前記中間印刷データの前記印刷可能領域内における前記画像データの配置位置を特定するための特定領域が設定された状態で作成される領域特定データを受信する領域特定データ受信手段と、前記領域特定データの前記特定領域内の画素の色情報を任意に指定可能とする色情報指定手段と、前記領域特定データ受信手段が受信した前記領域特定データを展開して印刷後の画像を仮想的に作成した第1仮想画像データに対応し、前記色情報指定手段によって指定された色情報に基づいて前記特定領域に相当する指定領域が設けられた領域指定データを作成する領域指定データ作成手段と、前記領域指定データの前記指定領域に基づいて、前記中間印刷データの前記印刷可能領域のうち印刷を行う領域として指定するための印刷領域を設定する印刷領域設定手段とを備え、前記領域特定データは、前記画像データ作成装置において、前記画像データを複製した複製画像データを、前記画像データと同じ配置位置関係で前記印刷可能領域内に配置したものを基に作成されて出力されるものであり、前記特定領域は、前記複製画像データを互いに同一の前記色情報を持った画素で構成したものである。
また、請求項2に係る発明の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記印刷領域設定手段は、前記領域指定データの前記指定領域を、前記印刷領域として設定することを特徴とする。
また、請求項3に係る発明の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記印刷領域設定手段は、前記領域指定データの前記指定領域外を、前記印刷領域として設定することを特徴とする。
また、請求項4に係る発明の印刷データ作成装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記印刷領域を、前記領域指定データの前記指定領域とするか前記指定領域外とするかを選択可能に設定する領域内外設定手段を備え、前記印刷領域設定手段は、領域内外設定手段による設定に従い、前記領域指定データの前記指定領域を前記印刷領域として、または前記指定領域外を前記印刷領域として設定することを特徴とする。
また、請求項5に係る発明の印刷データ作成装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記中間印刷データを受信する中間印刷データ受信手段と、受信した前記中間印刷データを展開して印刷後の画像を仮想的に作成した第2仮想画像データと前記領域指定データとを比較し、前記印刷可能領域のうち、前記印刷領域に対応する領域を印刷するための前記印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えている。
また、請求項6に係る発明の印刷データ作成装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記印刷領域が設定された前記領域指定データを記憶する記憶手段を備えている。
また、請求項7に係る発明の印刷データ作成プログラムは、請求項1乃至6のいずれかに記載の印刷データ作成装置の各種処理手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
また、請求項8に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項7に記載の印刷データ作成プログラムを記録していることを特徴とする。
請求項1に係る発明の印刷データ作成装置では、領域指定データの指定領域に基づいて、中間印刷データの印刷可能領域内で印刷を行う領域として指定するための印刷領域を設定することができる。そして印刷可能領域内に印刷領域を設定することで、印刷領域外には印刷可能領域内であっても印刷が行われないようにすることができる。従って、画像の印刷階調を表現する上で被印刷媒体の下地の色(通常は白色)を利用することを前提とした画像データ作成装置で作成した画像を、印刷される画像の階調を表現する上で被印刷媒体の下地の色を用いず自らの印刷結果によって表現する方式の印刷装置(具体的には白色の印刷が可能な印刷装置)を用いて印刷する場合であっても、上記のように印刷領域を設定すれば、印刷可能領域内の全領域を対象とする印刷がなされてしまうことがない。これにより、本発明に係る印刷データ作成装置を用いれば、任意の画像作成用アプリケーションと任意の印刷装置との組み合わせにおいて画像の印刷を行っても破綻の生じない良好な印刷結果を得ることができる。
また、請求項1に係る発明の印刷データ作成装置では、印刷領域を設定する上で、印刷可能領域内における画像データの配置位置を特定するための特定領域をユーザに設定してもらうことになるが、そうした場合に、もとの画像データから複製画像データを作成し、その複製画像データを同一の色情報をもった画素により構成することで印刷可能領域内における特定領域の設定を行うとよい。このようにすれば、画像データ作成装置において複製画像データに基づく画像を同一色で塗りつぶす程度の容易な操作で、特定領域の設定を行うことができる。また、複製画像データはもとの画像データと同一形状、同一サイズであり、そのまま塗りつぶすことで、印刷領域のもととなる特定領域の設定を直感的に行うことができる。
また、請求項1に係る発明の印刷データ作成装置では、特定領域内の画素の色情報を任意に指定できるので、特定領域外の画素の色情報とは異なる色情報をもった画素で特定領域内の画素を構成するように、十分確認した上でその色情報を指定すれば、誤った領域を特定領域として指定しまうことを防止できる。
また、請求項2に係る発明の印刷データ作成装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、領域指定データの指定領域を印刷領域として設定できるので、その指定領域の設定を行う上で基となる特定領域の設定通りに印刷領域を設定することができ、印刷領域の設定を直感的に行うことができる。
また、請求項3に係る発明の印刷データ作成装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、領域指定データの指定領域外を印刷領域として設定できるので、その指定領域の設定を行う上で基となる特定領域の設定の際に、狙いの領域を特定領域としない設定を行っても、その特定領域に相当する指定領域外を印刷領域として設定すれば、狙いの領域を印刷領域とすることができる。つまり、印刷可能領域内で画像データの配置位置を特定せず、その背景部分を特定領域として設定すれば、特定領域に相当する指定領域も背景部分となり、ここで、指定領域外を印刷領域とすれば、最終的に、印刷可能領域内で画像データの配置位置を印刷領域として設定することも可能である。
また、請求項4に係る発明の印刷データ作成装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、領域指定データの指定領域または指定領域外を印刷領域として選択的に設定できるので、印刷可能領域内で画像データの配置位置を特定するための特定領域の設定方法によらず、印刷領域の設定を柔軟に行うことができる。
また、請求項5に係る発明の印刷データ作成装置では、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明の効果に加え、中間印刷データから作成した第2仮想画像データと領域指定データとの比較によって、印刷可能領域内に設定した印刷領域通りの印刷を行うための印刷データを作成することができる。この印刷データを用いて印刷装置で印刷を行えば、印刷可能領域内の全領域を対象とする印刷がなされてしまうことがなく、印刷領域には印刷が行われ、印刷領域外には印刷可能領域内であっても印刷が行われない、狙い通りの良好な印刷結果を得ることができる。
また、請求項6に係る発明の印刷データ作成装置では、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の効果に加え、領域指定データを記憶して保存することができるので、大きさや形状が同じ画像データに基づく画像を複数の被印刷媒体に印刷する場合に、一度作成した領域指定データを繰り返し使用して印刷することができる。従って、印刷の都度、領域指定データを作成する手間を省くことができる。
また、請求項7に係る発明の印刷データ作成プログラムでは、コンピュータを、請求項1乃至8のいずれかに記載の印刷データ作成装置として用いることができるので、印刷データ作成プログラムをコンピュータに実行させることにより、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
また、請求項8に係る発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項7に記載の印刷データ作成プログラムを記憶しているので、印刷データ作成プログラムをコンピュータに読み取らせて実行させることにより、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の効果を奏することができる。
以下、本発明を実施するための一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を参照し、ユーザが画像作成用アプリケーションを用いて作成した画像データを基にインクジェットプリンタ1で印刷を行うための印刷データを作成するプリンタドライバがインストールされたパーソナルコンピュータ100の概略的な構成について説明する。図1は、パーソナルコンピュータ100の電気的な構成を示すブロック図である。図2は、パーソナルコンピュータ100のRAM112の構成を模式的に示す図である。図3は、パーソナルコンピュータ100のハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)116の構成を模式的に示す図である。
なお、パーソナルコンピュータ100は、本発明の「印刷データ作成装置」に相当するものであり、具体的には、画像作成用アプリケーション(後述)によって作成された画像データを基に、インクジェットプリンタ1へ送信するための印刷データを作成するプリンタドライバ(後述)がインストールされたパーソナルコンピュータ100をいう。このプリンタドライバは、後述する印刷データ作成プログラムを、1モジュールとして呼び出して実行可能となるように、組み込んだものである。また、画像作成用アプリケーションがインストールされたパーソナルコンピュータ100が、本発明の「画像データ作成装置」に相当するものである。
図1に示すように、パーソナルコンピュータ100には、その制御を司るCPU110が設けられている。そして、CPU110には、ROM111、RAM112、CD−ROMドライブ115、HDD116、表示制御部126、入力検知部127、およびUSBインタフェース129がバス114を介して接続されている。
ROM111には、CPU110が実行するBIOS等のプログラムが記憶されている。CD−ROMドライブ115には本発明における「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」の一例としてのCD−ROM131が挿入され、このCD−ROM131に記録されているデータがCD−ROMドライブ115によって読み出される。CD−ROM131には、後述する印刷データ作成プログラムが組み込まれたプリンタドライバや、このプログラムの実行時に使用される設定やテーブル等のデータが記憶されている。そして、CD−ROMドライブ115によって読み出されたデータは、後述するHDD116(図3参照)に設けられた各種記憶エリアに記憶される。また、画像作成用アプリケーションも、図示しない他のCD−ROMに記憶されて提供され、パーソナルコンピュータ100にインストールされる。
表示制御部126は、操作画面を表示するためのモニタ133に接続され、このモニタ133の表示を制御する。また、入力検知部127は、ユーザが操作の入力を行うためのキーボード135やマウス136に接続され、これらの入力の検知を行う。そして、USBインタフェース129に接続されたUSBケーブル(図示外)を介し、パーソナルコンピュータ100とインクジェットプリンタ1とが接続され、データの送受信が可能となる。インクジェットプリンタ1は、布等への画像の印刷が可能な布帛用プリンタの一例であり、本発明の「印刷装置」に相当するものである。このインクジェットプリンタ1は、シアン、マゼンタ、イエローを用いたCMY系三原色インクを所定の吐出パターンに従って被記録媒体上に吐出することにより、カラーによる画像を形成することができる公知のインクジェット形式のプリンタである。さらに、ブラックインクおよび白インクを使用することができ、CMYの吐出パターンだけでは表現しにくい真黒を表現できるとともに、被記録媒体の下地の色に左右されない鮮やかな階調表現を可能としたものである。
なお、本実施形態でのパーソナルコンピュータ100の構成は一般的な形態であり、パーソナルコンピュータ100とインクジェットプリンタ1との接続は、USB経由に限らず、ネットワーク経由でも可能である。また、プリンタドライバや画像作成用アプリケーションは、CD−ROM131以外の記録媒体(例えばDVD−ROM)を介して提供されてもよいし、あるいはネットワーク経由で提供されてもよい。
次に、RAM112について説明する。RAM112には、図2に示すように、入力画像データ記憶エリア1121、スプールデータ記憶エリア1122、レイヤー指定色記憶エリア1123、レイヤー特性記憶エリア1124、レイヤーデータ記憶エリア1125、変換CMYKWデータ記憶エリア1126、印刷データ記憶エリア1127、レイヤーパス記憶エリア1128等の各種記憶エリアが設けられている。
入力画像データ記憶エリア1121には、印刷データを作成する基になる画像データをラスタライズしたラスターデータが一時的に記憶される。スプールデータ記憶エリア1122には、画像作成用アプリケーションで作成した画像を印刷するにあたって出力されるオブジェクト(OSで定められる形式に基づき画像データをコマンド化したもの)がスプールされる。また、後述するが、レイヤーデータを作成するにあたって、ユーザが、画像作成用アプリケーションで作成した画像を複製し、その複製した画像を特定の色で塗りつぶしたデータを用意する。レイヤー指定色記憶エリア1123には、別途ユーザにより入力される特定の色のRGB値が記憶される。レイヤー特性記憶エリア1124には、特定の色で塗りつぶした部分を透明色として扱うか、有色として扱うかを決定するレイヤー特性(1ビットのフラグ)が記憶される。レイヤーデータ記憶エリア1125には、作成されたレイヤーデータが記憶される。変換CMYKWデータ記憶エリア1126には、ラスターデータを構成する各画素のRGB値をCMYKW値に変換したデータが記憶される。印刷データ記憶エリア1127には、CMYKW値をもとに公知の疑似階調処理が施されて作成されるインク吐出用のパターン(吐出マップデータ)が記憶される。印刷データは、その吐出マップデータにプリンタ制御用のコマンド等が付加されて完成されるものである。レイヤーパス記憶エリア1128には、HDD116に記憶されたレイヤーデータを読み出して使用する際に、ユーザに入力させた記憶先(レイヤーデータの保存先)のパスが記憶される。
次に、HDD116について説明する。図3に示すように、HDD116には、レイヤーデータ記憶エリア1161が設けられている。レイヤーデータ記憶エリア1161には、後述する印刷データ作成プログラムの実行によって作成されるレイヤーデータが記憶される。また、後述する印刷データ作成プログラム(図4参照)が組み込まれたプリンタドライバや、画像141(図8参照)を作成するための画像作成用アプリケーションも、図示しない所定の記憶エリアにインストールされて使用される。その他、OSやプログラム、データ等、パーソナルコンピュータ100の運用に使用される様々なプログラムやデータ等も、図示外の記憶エリアに記憶されている。なお、レイヤーデータ記憶エリア1161を有するHDD116が、本発明の「記憶手段」に相当する。
一般に、下地が白色の被印刷媒体上に色インクを吐出する場合、元の画像を構成する画素の階調は、その画素に応じた領域に吐出される色インクの液滴の吐出密度によって再現される。つまり、元画像の画素の階調が高く明るい場合には、その画素に対応した範囲に吐出される色インクの吐出密度は低く、下地の白色の表れる面積が広いが、元画像の画素の階調が低く暗い場合には、その画素に対応した範囲に吐出される色インクの吐出密度は高く、下地の白色の表れる面積が狭い。被印刷媒体の下地の色が白色でない場合、色インクの吐出密度だけでは、元の画像の画素の明度を再現することが難しいが、インクジェットプリンタ1では、CMYKの各色インクに加えて白インクを用いることができる。従って、色インクの吐出されない位置に白インクを吐出することが可能であり、白インクの吐出密度によって元の画像の画素の明度を再現することができるため、被印刷媒体の下地の色(明度)に左右されない高品位な画像を印刷することができるのである。
もっとも、一般的な画像作成用アプリケーションでは、下地が白色の被印刷媒体に印刷することを前提に画像の作成が行われるため、印刷可能領域内で、画像の周囲の余白部分を背景色(白色)で塗りつぶす場合がある。このような場合、プリンタドライバで印刷データを作成する際に、余白部分を透明色として扱い、色インク、白インクを問わず、インクの吐出が行われないようにすればよい。画像作成用アプリケーションから画像と余白部分とが一体となったオブジェクトが出力された場合、プリンタドライバでは画像と余白部分との区別が不可能であるが、本実施の形態ではこれを区別可能とするため、予めユーザに印刷可能領域内における画像データの配置位置を特定させた情報をもとに、印刷データの作成時に印刷を行う領域(印刷領域)を設定するためのレイヤーデータを作成している。以下、具体的に、ユーザの作成した画像141(図8参照)をもとにプリンタドライバが印刷領域を設定した上で印刷データを作成する過程について、図4〜図11を参照して説明する。
図4は、印刷データ作成プログラムのメイン処理のフローチャートである。図5は、メイン処理からコールされるレイヤーデータ作成処理のフローチャートである。図6は、メイン処理からコールされる印刷データ作成処理のフローチャートである。図7は、レイヤー設定ダイアログ300の表示画面を示す図である。図8は、画像作成用アプリケーションにおいて、ユーザが作成した画像141を示す図である。図9は、画像作成用アプリケーションにおいて、複製した複製画像142を特定の色で塗りつぶした状態を示す図である。図10、画像作成用アプリケーションで作成した複製画像142を出力したビットマップオブジェクト190を可視的に説明するための図である。図11は、画像作成用アプリケーションにおいて画像141を印刷する際に出力されるビットマップオブジェクト180を可視的に説明するための図である。なお、図4〜図6のフローチャートの各ステップを「S」と略記する。
まず、ユーザは、パーソナルコンピュータ100に予めインストールされた画像作成用アプリケーションを用い、図8に示す、所望する画像141を作成する。この画像141をそのまま被印刷媒体上に印刷する指示を行った場合、画像作成用アプリケーションでは、図11に示す、ビットマップオブジェクト180が作成され、コマンド化されて、プリンタドライバに対して出力される。このビットマップオブジェクト180は、点線181で示す印刷可能領域(インクジェットプリンタ1における一度の印刷処理で印刷可能な範囲)内に画像141を配置し、余白部分183を背景色(通常は白色)で塗った状態のものである。インクジェットプリンタ1でこの画像141を印刷するにあたって、被印刷媒体上で画像141を印刷する部分にはインクが吐出され、余白部分183にはインクが吐出されないようにするため、ユーザは、インクを吐出すべき印刷領域の設定を行う。具体的に、ユーザは、作成した画像141を複製し、図9に示すように、画像作成用アプリケーションで複製した複製画像142を表示し、その複製画像142に対し、特定の色(一例として、RGB値が00:00:00の黒色)による塗りつぶしを行う。そして画像作成用アプリケーションにおいて、この複製画像142を印刷する指示を行うと、予めインストールされたプリンタドライバが実行される。そして、プリンタドライバによって表示される通常の印刷設定ダイアログ(図示外)において、ユーザが、レイヤーデータの設定を行う指示を行うと、図4に示す、印刷データ作成プログラムのメイン処理が実行される。
図4に示すように、印刷データ作成プログラムのメイン処理が実行されると、図7に示す、レイヤー設定ダイアログ300を、モニタ133に表示させる処理が行われる(S1)。レイヤー設定ダイアログ300において、ユーザは、レイヤーデータを作成するため、上段側の設定を行う。まず、複製した複製画像142(図9参照)を塗りつぶした特定の色のRGB値を、色指定ボックス303に入力する(例えば図9に示すように複製画像142を塗りつぶした色が黒色の場合、RGB値00:00:00を入力する。)。また、ラジオボタン304をクリックし、色指定ボックス303で指定した色の画素を、印刷時に透明色(インクの吐出を行わない)とするか有色(インクの吐出を行う)とするかを設定する。なお、初期状態では「以外を透明とする」側のボタンがオンとなっており、印刷領域として設定する部分を有色とする設定となっている。そして入力欄305には、作成するレイヤーデータを保存する保存先のパスを記入する。
図4に示す印刷データ作成プログラムでは、ユーザにより、レイヤー設定ダイアログ300の「作成」ボタン306、あるいは後述する「印刷」ボタン308が押されるまで、待機が行われる(S3:NO)。ここでは、レイヤーデータの作成を行うため、ユーザにより「作成」ボタン306が押され(S3:YES,S5:YES)、S7に進む。
S7では図5に示すレイヤーデータ作成処理がコールされる。その際に、画像作成用アプリケーションでは、図10に示す、特定の色で塗りつぶした複製画像142を点線181で示す印刷可能領域内に配置した状態のビットマップオブジェクト190を作成し、コマンド化して出力する。なお、ビットマップオブジェクト190は、余白部分183が背景色(通常は白色)で塗られた状態で作成される。画像作成用アプリケーションから出力されたビットマップオブジェクト190は一旦RAM112のスプールデータ記憶エリア1122に記憶されるが、図5に示す、印刷データ作成プログラムのレイヤーデータ作成処理において、このビットマップオブジェクト190が入力画像データ記憶エリア1121に展開され、ラスターデータが作成される(S17)。なお、画像作成用アプリケーションにおいてユーザが複製画像142を特定の色で塗りつぶし、印刷可能領域内で複製画像142の配置位置を特定できるようにした状態で出力されるビットマップオブジェクト190が、本発明の「領域特定データ」に相当し、印刷可能領域内で特定の色で塗りつぶした領域(本実施の形態では、複製画像142)が、本発明の「特定領域」に相当する。また、印刷データ作成プログラムのレイヤーデータ作成処理において、S17でビットマップオブジェクト190を受信してスプールするCPU110が、本発明における「領域特定データ受信手段」に相当し、そのビットマップオブジェクト190を展開して作成されるラスターデータが、本発明における「第1仮想画像データ」に相当する。
次のS19,S21,S23では、レイヤー設定ダイアログ300(S12)においてユーザが入力した情報の入力が行われる。すなわち入力欄305に入力されたレイヤーデータの保存先のパス(例えばHDD116の所定の記憶エリア)、色指定ボックス303に入力された特定の色のRGB値、ラジオボタン304で選択されたレイヤー特性(特定の色で塗りつぶした部分(本実施の形態では複製画像142)を透明色とするか有色とするか)が、それぞれ、RAM112のレイヤーパス記憶エリア1128、レイヤー指定色記憶エリア1123、レイヤー特性記憶エリア1124に記憶される。なお、レイヤーデータを作成する上で複製画像142を塗りつぶす特定の色をユーザが任意に指定できるようにするため、特定の色のRGB値を色指定ボックス303から入力させるとともに、その特定の色を把握して印刷領域を設定する際に利用できるように、レイヤー指定色記憶エリア1123に記憶するCPU110が、本発明における「色情報指定手段」に相当する。また、ユーザの望むレイヤー特性を選択できるようにするためラジオボタン304を用いて入力させるとともに、そのラジオボタン304により選択されたレイヤー特性を把握して印刷領域を設定する際に利用できるように、レイヤー特性記憶エリア1124に記憶するCPU110が、本発明における「領域内外設定手段」に相当する。
そして、入力画像データ記憶エリア1121において作成されたラスターデータと同じ大きさ(画素数が幅および高さ方向に同数)のレイヤーデータが、レイヤーデータ記憶エリア1125に作成される(S25)。作成されたレイヤーデータは、ラスターデータの全ての画素に対応し、その画素を透明色とするか有色とするかを決定するための1ビットのフラグが割り当てられており、S25では、全てのフラグが透明色を示すビット(0)で初期化される。また、レイヤーデータの大きさの情報(幅および高さ)が、レイヤーデータのヘッダー部分に書き込まれる。
次に、入力画像データ記憶エリア1121に作成されたラスターデータを構成する全ての画素が、順(入力画像データ記憶エリア1121における各画素の記憶アドレスの順など)に注目画素として設定され(S27)、注目画素の色のRGB値が、レイヤー指定色記憶エリア1123に記憶された特定の色のRGB値と一致するか確認される(S29)。特定の色で塗りつぶされていない画素(例えば余白部分183の画素)は一致せず(S29:NO)、S31に進む。このとき、レイヤー特性記憶エリア1124が参照され、特定の色で塗りつぶした部分(複製画像142)を透明色とする設定がなされている場合(S31:YES)、余白部分183の画素を有色とするため、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグが1に変更される(S33)。一方、特定の色で塗りつぶした部分(複製画像142)を透明色とする設定がなされていない場合には(S31:NO)、余白部分183の画素を透明色とするため、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグが初期化された状態(すなわち0)のまま維持される。
また、S29で、現在の注目画素の色のRGB値が特定の色のRGB値と一致した場合には(S29:YES)、S35に進む。そして、特定の色で塗りつぶした部分(複製画像142)を透明色とする設定がなされている場合には(S35:YES)、複製画像142の画素を透明色とするため、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグが初期化された状態(すなわち0)のまま維持される。一方、特定の色で塗りつぶした部分(複製画像142)を透明色とする設定がなされていない場合には(S35:NO)、複製画像142の画素を有色とするため、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグが1に変更される(S37)。
このように、ラスターデータを構成する画素について順に注目し、注目した画素に対応するレイヤーデータのフラグの設定を行うが、この一連の処理は、ラスターデータを構成する全ての画素について注目がなされるまで繰り返される(S39:NO)。すなわち、S27に戻り、次の順の画素が注目画素に設定されて、同様の処理が行われる(S29〜S39)。こうして、レイヤー設定ダイアログ300(図7参照)において、ユーザが、特定の色で塗りつぶした部分(複製画像142)以外を透明色とする設定を行った場合であれば、複製された複製画像142を基に作成されたラスターデータのうち、特定の色で塗りつぶされた部分(複製画像142の画素)に対応するレイヤーデータのフラグを、有色を示す1とする。また、ラスターデータのうち、特定の色で塗りつぶされなかった部分(余白部分183の画素)に対応するレイヤーデータのフラグは0(透明色を示す)に維持されることとなる。なお、S17で作成されたラスターデータの各画素ごとに有色とするか透明色とするかが設定されたレイヤーデータが、本発明における「領域指定データ」に相当し、「指定領域」は、有色または透明色の設定によって区別されることにより設けられるものである。そして、S29〜S39の処理を行ってレイヤーデータを作成するCPU110が、本発明における「領域指定データ作成手段」に相当する。
そして、ラスターデータを構成する全ての画素についてフラグの設定がなされたら(S39:YES)、このレイヤーデータ(ヘッダー部分にレイヤーデータの大きさの情報が書き込まれたファイル)をレイヤーパス記憶エリア1128に記憶されたパスに指定される保存先に記憶して(S41)、図4のメイン処理に戻り、印刷データ作成プログラムを終了する。
このように作成されたレイヤーデータを用い、図8に示す、画像作成用アプリケーションで作成した画像141の印刷を行うため、ユーザが画像作成用アプリケーションにおいて画像141を印刷する指示を行うと、プリンタドライバが実行される。そして、上記同様、ユーザがレイヤーデータの設定を行う指示を行い、図4に示す、印刷データ作成プログラムのメイン処理が実行されると、図7に示す、レイヤー設定ダイアログ300が表示される(S1)。
次にユーザは、表示されたレイヤー設定ダイアログ300の下段側の入力欄307に、先に作成して保存しておいたレイヤーデータの保存先のパスを記入する。そしてユーザが「印刷」ボタン308を押すと(S3:YES,S5:NO)、S9に進み、図6に示す印刷データ作成処理がコールされる。
その際に、画像作成用アプリケーションでは、図11に示す、点線181で示す印刷可能領域内に画像141を配置し、余白部分183が背景色(通常は白色)で塗られた状態のビットマップオブジェクト180が作成され、コマンド化して出力される。図6のS51において、このビットマップオブジェクト180が、上記同様、入力画像データ記憶エリア1121に展開され、ラスターデータが作成される(S51)。なお、画像作成用アプリケーションにおいてユーザの作成した画像141を印刷するため画像作成用アプリケーションから出力されるビットマップオブジェクト180が、本発明における「中間印刷データ」に相当し、そのビットマップオブジェクト180を受信してスプールするCPU110が、本発明における「中間印刷データ受信手段」に相当する。また、ビットマップオブジェクト180を展開して作成されるラスターデータが、本発明における「第2仮想画像データ」に相当する。
次に、レイヤー設定ダイアログ300の入力欄307に記入されたパスで指定された保存先から、先に保存しておいたレイヤーデータが読み込まれ、レイヤーデータ記憶エリア1125に記憶される(S53)。
次いで、入力画像データ記憶エリア1121に作成されたラスターデータを構成する全ての画素が、前記同様、順に注目画素として設定される(S55)。そして、公知のカラープロファイル(RGB値をCMYKW値に変換するためのテーブルである。より具体的には、カラー変換テーブルおよび白変換テーブルからなり、RGB値のデータをCMYK形式の色インクレベルデータ、およびW形式の白インクレベルデータに変換する際に参照される。CMYKW値は、色インクレベルデータのCMYK値と、白インクレベルデータのW値とにより構成される。このテーブルは、プリンタドライバとともにHDD116にインストールされる。)を参照し、現在の注目画素のRGB値をCMYKW値に変換して変換CMYKWデータ記憶エリア1126に記憶する(S57)。さらに、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグを参照し、S57で変換した現在の注目画素のCMYKW値との積をとり、変換CMYKWデータ記憶エリア1126に上書き記憶する(S59)。すなわち、現在の注目画素に対応するレイヤーデータのフラグが0であれば、注目画素のCMYKW値をすべて0にし、フラグが1であれば、注目画素のCMYKW値はそのままの値に維持する。
このように、ラスターデータの各画素のRGB値をCMYKW値に変換し、その際に、レイヤーデータによって透明色と指定された注目画素のCMYKW値をすべて0とすることで、その注目画素に対するインクの吐出が行われないようにする。この一連の処理は、ラスターデータを構成する全ての画素について注目がなされるまで繰り返される(S61:NO)。すなわち、S55に戻り、次の順の画素が注目画素に設定されて、同様の処理が行われる(S55〜S61)。なお、S55〜S61の処理を行って、被印刷媒体上で画像141の印刷を行うべくインクの吐出を行う領域としての印刷領域において、その印刷領域の画素に対しインクの吐出が行われるように設定する(換言すると、印刷領域外の画素にインクが吐出されないようにCMYKW値の改変を行う)CPU110が、本発明における「印刷領域設定手段」に相当する。
こうして、ラスターデータの全ての画素のRGB値がCMYKW値に変換されるとともに透明色または有色として設定されると(S61:YES)、変換CMYKWデータ記憶エリア1126に記憶されたデータをもとに、次に、インク吐出用のパターンの作成が行われる。例えば公知の誤差拡散法に基づく演算またはテーブル等の参照により疑似階調処理が施され、各画素のCMYKW値から各色インクおよび白インクの吐出パターン(吐出マップデータ)が作成される。具体的に、CMYKW値で表される各色インクおよび白インクの印刷階調は、疑似階調処理により二値化され、各色インクおよび白インクごとに作成される、インク液滴の吐出の有無および吐出位置を示す吐出パターンにおいて、インク液滴の吐出密度により表現される。上記CMYKW値をすべて0にした画素に対応した領域には、インク液滴の吐出されない吐出パターンが作成されることとなる。作成された吐出マップデータは印刷データ記憶エリア1127に記憶され、さらに、プリンタ制御用のコマンド等が付加されて、印刷データとして完成される(S63)。そして、図4のメイン処理に戻り、印刷データ作成プログラムを終了する。なお、S63の処理を行って印刷データを作成するCPU110が、本発明における「印刷データ作成手段」に相当する。
このようにして作成された印刷データは、プリンタドライバにおける処理によって、プリンタに送信される。インクジェットプリンタ1は、パーソナルコンピュータ100から受信した印刷データによって指定された吐出パターンに従って、印刷領域に各色インクおよび白インクの吐出を行い、被印刷媒体上に画像を形成し、印刷処理を終了する。
以上説明したように、印刷データ作成プログラムでは、ユーザが画像作成用アプリケーションにおいて作成した画像141を印刷するにあたり、ユーザに、印刷可能領域内で画像141と余白部分183とを区別してもらい、これを基に、インクの吐出を行う領域としての印刷領域を設定することができる。具体的には、画像141を複製した複製画像142を特定の色で塗りつぶしてもらうことで、印刷可能領域内で画像141の配置される位置を余白部分183と区別するための特定領域を設定してもらう。特定領域の設定を、特定の色で複製画像142を塗りつぶすことによって行えば、その操作は容易である。また、複製画像142はもとの画像141を複製したものであって同一形状、同一サイズであるため、特定領域として設定した領域がそのまま印刷領域として設定されるのであれば、その印刷領域のもととなる特定領域の設定を直感的に行うことができる。
もちろん、特定領域の特定方法を複製画像142の塗りつぶしに限定するものではなく、枠囲みによって行ってもよいし、座標指定など他の方法によって行ってもよい。しかし、例えば枠囲みによる場合、枠内と枠外とを認識するには演算等が必要となり、手間がかかるため、上記のように塗りつぶしにより特定領域の設定を行うとよい。また、複製画像142を塗りつぶす特定の色は、任意に設定することが可能である。画像141に使用されていない色を確認した上で特定の色を指定すれば、誤った領域を特定領域として指定しまうことを防止できる。
上記の操作は画像作成用アプリケーションで行われ、プリンタドライバでは、特定の色で塗りつぶした複製画像142を印刷可能領域内に配置した状態のビットマップオブジェクト190を受け取り、ラスタライズしたラスターデータが作成される。そして、ラスターデータから、ユーザの設定したレイヤー特性に従って、特定の色の部分を透明色あるいは有色に指定するフラグを持ったレイヤーデータが作成される。このレイヤーデータをHDD116等の記録媒体に記憶させて保存しておけば、画像141を複数の被印刷媒体に印刷する場合に、一度作成したレイヤーデータを繰り返し使用して印刷することができる。つまり、印刷の都度、レイヤーデータを作成する手間を省くことができる。
そしてもとの画像141を印刷するために作成されたラスターデータの各画素をレイヤーデータと比較し、レイヤーデータにおいて透明色と指定されたラスターデータの画素を、インクの吐出が行われないデータに書き換え、有色と指定された画素はそのままとする。このようにすることで、印刷可能領域内であっても印刷領域外にはインクが吐出されず、印刷が行われない。インクジェットプリンタ1は、白インクを用いることのできるプリンタであり、白インクを吐出することによって、狙いの画素の明度を表現できるものであるが、こうしたプリンタにおいて、上記のように印刷領域外にインクが吐出されないように印刷領域の設定を行えるのであれば、印刷可能領域内の全領域を対象とする印刷がなされてしまうことがない。従って、任意の画像作成用アプリケーションを用いて画像を作成しても、その画像の印刷の際に破綻の生ずることがなく、良好な印刷結果を得ることができる。
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨の範囲において、各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、レイヤーデータの作成にあたり、印刷領域の設定を、複製した複製画像142を特定の色で塗りつぶすことによって行ったが、印刷可能領域内で複製画像142を除く余白部分183を特定の色で塗りつぶして設定してもよい。この場合、画像作成用アプリケーションで余白部分183に塗られる背景色を指定できるのであれば、背景色に指定した色を特定の色とすればよく、その場合には、画像141を複製せずとも、その画像141を基にレイヤーデータを作成することが可能である。また、印刷領域の設定を特定の色による枠囲みで行ってもよい。この場合、S29の処理において、注目画素が枠の内側にあるか外側にあるかを判断する処理とし、レイヤー特性として枠の内側あるいは外側を透明色として扱う設定を行うようにすればよい。
また、レイヤーデータ作成処理において作成したレイヤーデータをHDD116に保存したが、保存先はHDD116に限らず任意の記録媒体を用いてもよいし、RAM112の所定の記憶エリアに記憶させてもよい。さらに、作成したレイヤーデータの保存先を予め設定しておき、レイヤーデータ作成処理に続いて印刷データ作成処理を行うようにして、ユーザに、レイヤーパスを入力させる手間を省いてもよい。
また、インクジェットプリンタ1は、使用する色インクがシアン、マゼンタ、イエローの三色のみでブラックを使用しないものであってもよい。