JP5070658B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、過充電時の高温環境下での安全性の高い非水電解質二次電池であって、詳しくは過充電時の安全性を向上させる添加剤及びセパレータを用いた非水電解液二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池が、過充電時の高温環境下で安全性を保つ方法としては、大きく分けて組み込まれている安全装置を用いる方法と発電要素自体に耐過充電特性を付与する方法がある。さらに後者の発電要素自体に耐過充電特性を持たせる具体的な例として、セパレータの特性を改良する方法、電解液に耐過充電添加剤を添加する方法等が提案されている。
【0003】
従来、過充電時における安全性を向上させる構成として、非水電解質二次電池のセパレータに特有の機能であるセパレータのシャットダウン機能を利用した構成が広く用いられている。通常時、セパレータは正極、負極間の短絡防止の役割を担っているが、多孔質ポリオレフィン等を用いたセパレータは、外部短絡による過剰電流等により電池温度が著しく上昇した場合に多孔質セパレータが軟化することによって、実質的に無孔質となり電流を流させなくする、いわゆるシャットダウン機能を有している。
【0004】
シャットダウンが機能した後も電池温度が上昇した場合には、セパレータが溶融して大きく穴が開き、正極、負極間の短絡が生じる虞がある(以下、この現象をメルトダウンと称す)。このメルトダウンが生じる温度が高いほど、電池の安全性は高いと言える。しかし、シャットダウン機能を強化するために、熱溶融性を高めるとメルトダウン温度が低くなり、安全性は逆に下がるという相反する特性を有しており、これらを両立するセパレータが要望されている。
【0005】
一方、電解液に耐過充電添加剤を加える構成では、過充電時の安全性を向上させる様々な方法が提案されている。例えば、過充電時に添加剤が重合することにより電池の内部抵抗を高め、電池を過充電から保護する方法、過充電時にガスを発生し、所定内圧で作動する内部電気切断装置を確実に作動させる方法、あるいは過充電酷使時に導電性ポリマーを生成し、電池内部に短絡を発生、放電する方法がある。
【0006】
近年の開発競争により、非水電解質二次電池には高容量化が強く要望されている。高容量化は、電極の活物質の改良により高性能化している面もあるが、起電反応に寄与しない部材の容積を減少させ、限られた電池容器内に充填される実質的な活物質の量を多くすることで、高容量化がなされている。このため、正負極の集電体やセパレータの厚みは薄くなる傾向にある。セパレータが薄くなると、短絡などに対する安全性は悪くなる方向であるが、実質的な活物質の量が多くなるため、安全性に対する要求は逆に大きくなる。
【0007】
したがって、厚みの薄いセパレータを使用した電池が過充電状態に陥り、発熱により高温状態になった場合には、過充電状態を電気的に回避させる方法を採用するよりも、過充電状態を解消する方法を採用するのが効果的である。具体的には、前述した方法の中で、セパレータのシャットダウンや添加剤の過充電時に添加剤が重合することにより電池の内部抵抗を高くし、電池を過充電から保護する方法、及び過充電時にガスを発生し、所定内圧で作動する内部電気切断装置を確実に作動させる方法は、電池に印可される電流を制限、或いは遮断することで過充電状態が継続するのを回避している。これに対して、電池内部に短絡を発生させ自動放電する方法は電池内部で強制的に放電を行っており、電池内部の発電要素を過充電状態から脱却させる点から過充電状態を停止させる前述の方法に比べて好ましい。特に、角型電池などで所定内圧で作動する内部電気切断装置が設けられていない構成に過充電時にガス発生を生ずる添加剤を添加した場合には、電池容器の内圧上昇を招いてしまい、安全性の面で好ましくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記各方法に基づく過充電保護において添加剤として芳香族添加剤を使用した場合、同一の添加剤であっても添加剤の添加量、電解質塩、非水溶媒及び他の構成要素との関係、さらにはこれらの劣化状態等といった種々の要因による影響を受け、過充電保護の作用は異なってしまう。例えば、過充電時に添加剤が重合することにより電池の内部抵抗を高くし、電池を過充電から保護する方法(特許第3061756号公報)、過充電時にガスを発生し、所定内圧で作動する内部電気切断装置を作動させる方法(特許第3061759号公報)、あるいは過充電酷使時に導電性ポリマーを生成し、強制的に放電させる方法(特開平10−321258号公報)が提案されている。したがって、芳香族添加剤を添加することにより、過充電時に導電性ポリマーが生じ、内部短絡で安全性を確保する作用に優先して、ガス発生もしくは電池の内部抵抗を高める作用が生じる虞があり、導電性ポリマーによる強制的な放電による過充電保護が確実に生ずるという信頼性の面で問題を有している。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決するものであり、好適な添加剤とセパレータを組み合わせて使用することにより、高温環境下での安全性に優れた高容量非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明の非水電解質二次電池は、非水電解質に芳香族添加剤を含有してなり、更に過充電時にセパレータに曝されると想定される高温及び応力を付加した直後において、全細孔容積が0.5から1.0cm3/gであること、及び空孔率が35から50%であることを特徴とする。
【0011】
全細孔容積は水銀ポロシメータ装置を用いて測定されるものである。この測定はセパレータと水銀とを試料セルに入れ、水銀に圧力をかけないときの水銀体積と、圧力をかけてセパレータの細孔に水銀を圧入した時の水銀体積の差が全細孔容積ということになる。
【0012】
また、空孔率は全細孔容積と同様に水銀ポロシメータ装置を用いて測定されるものである。この測定は、セパレータと水銀とを試料セルに入れ、水銀に圧力をかけないときの水銀体積と試料セル容積から試料体積を計算し、上述した全細孔容積を算出された試料体積で割った値が空孔率となる。
【0013】
本発明の構成によれば、前記全細孔容積、もしくは空隙率に関して特定範囲の特性パラメータを有するセパレータとを用いることにより、電池が過充電状態に陥った際に導電性ポリマーがセパレータを貫通させ、内部短絡を生じさせることで、過充電状態を解消する。これにより高容量で信頼性に優れた非水電解質二次電池を提供することが可能になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
本願の第1の発明に係る非水電解質二次電池は、正極と負極と非水溶媒に電解質塩を溶解した非水電解質とセパレータを備えた非水電解質二次電池であって、非水電解質は芳香族添加剤を混合してなり、前記セパレータとして機械延伸された長手方向(以下、この方向をMDとする)に25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態において大気中110℃の温度で15分間保持した直後における全細孔容積が0.5から1.0cm3/gの範囲にあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、適度な機械的強度がある電子絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。材質としては、耐有機用材性と疎水性の観点とシャットダウン機能を持つ点から、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂の単独またはこれらを積層したものや混合・複合したものなどの多孔質ポリオレフィンを用いることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る芳香族添加剤としては芳香族化合物からなる添加剤であり、好ましいものとしてビフェニル、フラン、チオフェンおよびこれらの誘導体がある。具体的には、ビフェニル、ピロール、N−メチルピロール、チオフェン、フラン、インドール、3−クロロチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−フルオロチオフェン、1,2ジメトキシべンゼンや1−メチル−3−ピリジニウムテトラフルオロボーレートなどがある。これらの中でも、電池の最大動作充電電圧以上で、電池が危険になる過充電電圧未満の電圧で重合する化合物が適当であり、この重合電位と電池作動下での安定性の点から、ビフェニル、フラン、インドールおよび3−クロロチオフェンが、特に好ましい。
【0018】
一方、本発明の非水電解質二次電池に適用される正極は、従来公知の構成であるが、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガンスピネルなどのリチウム含有複合酸化物を活物質とし、導電剤と結着剤を混合した合剤が集電体に塗工することで作成される。
【0019】
また、本発明の電池に用いられる負極は、主な活物質には天然黒鉛や人造黒鉛などの炭素が使われるが、その他に、アルミニウムやアルミニウムを主体とする種々の合金や、酸化スズなどを初めとする種々の金属酸化物、金属窒化物など従来公知のものがあり、正極と同様に、導電剤と結着剤を混合した合剤が集電体に塗工することで作成される。
【0020】
一方、非水電解質(以下電解液という)には、非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等の環状カーボネート類やジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)などの鎖状カーボネート類の2種以上を混合したものが好ましい。また、電解質塩は、LiPF6やLiBF4など従来公知のリチウム塩が使用可能である。
【0021】
本発明の電池は、過充電時の高温環境下において芳香族添加剤及びセパレータによって内部短絡を生じせしめるものであり、この内部短絡のメカニズムは以下の通りである。
【0022】
過充電時に電池の電圧が最大動作電圧以上になると、芳香族添加剤が正極の表面で重合・成長し、抵抗値の高いポリマー層を形成する。さらに電圧が上昇すると前記ポリマー層は導電性高分子となる。過充電状態が継続すると、この導電性高分子はセパレータ細孔内部で生長し、ついには、貫通して負極に達し、内部短絡が起こる。この結果、本発明に係るセパレータ及び芳香族添加剤を用いた電池では、過充電過程の比較的早い段階から導電性高分子が形成され、正極と負極の充電深度が必要以上に過度な状態に到達しないことから、過充電時の危険性を抑制できる。
【0023】
尚、上述したメカニズムにおいて、芳香族添加剤が添加されていないか、添加量が0.1重量%未満の場合は、導電性高分子が十分成長しないうちに過充電状態が深刻な状態にまで進行してしまう。また、芳香族添加剤添加量が多い場合、例えば10重量%より大きい場合は、過充電状態の抑制効果は、発揮できるが、通常の電池特性、特に高温保存時の特性が劣化するため不適合である。
【0024】
さらに本発明者らが鋭意検討の結果、セパレータの全細孔容積に関しても好適な値が存在することを見出した。従来、全細孔容積に関しては常温域におけるセパレータ特性について検討がなされてきた。しかし、電池が過充電状態に陥った場合には電池自身の発熱により各構成要素は高温環境下に曝されるために常温域とは違った特性がセパレータに要求される。このような背景のもと、本発明者らは、高温環境下に想定される熱的及び物理的な付加した状態での評価が必要であるとの知見を得、予め定められた条件に保持した直後において前述した特性を有するセパレータが本発明の電池に好適であるとの結論に至った。
【0025】
そこで最初にセパレータに予め施す処理条件について説明する。電池の過充電状態における昇温機構は複雑であり、極板群内のセパレータにかかる応力の状態を正確にシミュレーションするのは困難である。特に、セパレータは同じ高温環境温度でもその時のセパレータにかかる応力により熱収縮の状況が変化する点も考慮することが肝要である。そこで、本発明者らは、再現性の高い処理条件としてセパレータの状態として、セパレータをMDに25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態が好ましいことを見出した。通常、渦巻き状に捲回された極板群を作製する場合に、セパレータはある程度の張力を加えられて巻き取られている。つまり、MDに引っ張り荷重がかけられた状態で、捲回された極板群内に配置されている。
【0026】
一方、温度条件に関しては過充電時における電池の到達温度及び過充電状態に陥ってから導電性高分子によって過充電状態が解消するまでに要する時間を考慮する必要があり、本実施の形態では大気中110℃の温度で15分間保持するのが好適であるとの知見を得た。ここで、15分という時間は、セパレータがその温度でのTD収縮の変化が無くなる、つまり飽和に達するのに十分な時間という意味であり、これ以上の時間でもかまわないし、TD収縮が飽和に達していればこれ以下の時間でも良いが、再現性の高い保持時間としては15分が好適である。
【0027】
このように本発明におけるセパレータは、セパレータをMDに25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態において大気中110℃の温度で15分間保持した直後(以下、この処理を熱処理とする)にJISに準拠した測定装置を用いてセパレータの全細孔容積を測定する事が好ましく、本願の第1の発明に係るセパレータでは、本発明者らは0.5から1.0cm3/gにあるのが好ましいことを見出した。
【0028】
以下、セパレータの細孔状態について説明する。セパレータの細孔が多い場合、つまり全細孔容積が大きい場合は、導電性高分子が多量に貫通して負極に達するため、短絡電流が多くなり、危険な状況になる。逆にセパレータの細孔が少ない場合は、つまり全細孔容積が小さい場合は、導電性高分子が貫通して負極に達しないうちに、過充電状態がさらに進行してしまう。この場合、芳香族添加剤の重合量と電解液不足による内部抵抗の増大による過充電抑止効果が、十分に機能した場合や、添加剤のガス発生により内部電気切断装置が確実に作動した場合には、問題は無いが、セパレータが薄くてシャットダウン機能が十分に働かない場合や内部電気切断装置が無い場合は、過充電状態が危険な状況にまで進行してしまう。したがって、好適な全細孔容積が存在する。
【0029】
好適な全細孔容積は、過充電時の高温環境下のもので、常温での全細孔容積とは関係が無い。本発明者らは鋭意検討の結果、下記の特性をもつセパレータが、本発明の電池に好適であるという結論を得た。すなわち、本発明に係るセパレータは、セパレータをMD方向に25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態で大気中110℃の温度で15分間前処理した後、測定した全細孔容積は、芳香族添加剤が、ビフェニル、フラン、インドールおよび3−クロロチオフェンからなる群から選択されるもので有る場合は、0.5から1.0cm3/gであることが、非常に優れた効果を示す。
【0030】
上述したセパレータにおける全細孔容積の値は、公知のセパレータにおける常温域において通常使用される状態での値に比べて小さな値である。通常の使用状態では全細孔容積が小さくなると、高率放電特性などに悪影響を与える。
【0031】
一方、本願の第2の発明に係る非水電解質二次電池は、正極と負極と非水溶媒に電解質塩を溶解した非水電解質とセパレータを備えた非水電解質二次電池であって、非水電解質は芳香族添加剤を混合してなり、前記セパレータとして機械延伸された長手方向(以下、この方向をMDとする)に25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態において大気中110℃の温度で15分間保持した直後におけるセパレータの空孔率が35から50%の範囲にあることを特徴とする。
【0032】
第2の発明に係る電池は、セパレータの特性パラメータが異なっているが、除芳香族添加剤を含め、前記第1の発明に係る電池と同等であり、過充電時の高温環境下における芳香族添加剤とセパレータによる内部短絡のメカニズムもほとんど同様である。
【0033】
本発明に係るセパレータとしては、前記第1の発明に係る電池と同様に大きなイオン透過度を持ち、適度な機械的強度がある電子絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。材質としては、耐有機用材性と疎水性の観点とシャットダウン機能を持つ点から、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂の単独またはこれらを積層したものや混合・複合したものなどの多孔質ポリオレフィンを用いることが好ましい。この時、セパレータの空孔率が20%未満であると、導電性高分子がセパレータの中を成長していくのが困難になり、導電性高分子が貫通して負極に達しないうちに、過充電状態がさらに進行してしまい、危険な状況となる。一方、空孔率が70%より大きくなると、導電性高分子が一つの細孔内で多量に貫通するため、局所的に短絡電流が多くなり、危険な状況になる。したがって、前述の前処理後の、空孔率が20から70%であることが好ましい。
【0034】
ここで、芳香族添加剤は、ビフェニル、フラン、インドールおよび3−クロロチオフェンからなる群から選択されるものである場合は、前記空孔率が35から50%であることが、特に好ましい。
【0035】
以上述べた電池においてセパレータの厚みは、19μm以上では、電池の高容量化や高率放電などの電池特性という点で不利になる上、内部短絡が確実に起こりにくくなるため18μm以下が好ましい。また、厚みが7μm以下になると、過充電時の高温環境下で内部短絡が確実に発生しても、電池が危険な状況になる。したがって、セパレータの厚さが8から18μmであることが好ましい。
【0036】
【実施例】
次に、実施例を用いて、本発明の具体例について説明する。
【0037】
まず、セパレータに関して作製条件を変えて以下に示す各種の特性を有するセパレータを作製した。
【0038】
<セパレータの作製>
本実施例では、セパレータとしてポリエチレン(PE)膜であるものを以下に述べる方法に従って作製した。
【0039】
高密度ポリエチレン(平均分子量32万)40重量部と流動パラフィン60重部とを二軸押出機内で溶融混練した。コートハンガーダイから冷却ロール上に押出キャストすることにより高分子ゲルシートを作製した。厚みはこの時点で、1.8mmであった。この高分子ゲルシートを同時二軸延伸機を用いて122℃で7×7倍に抽出前延伸をした。その後、塩化メチレン中に浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。さらに、テンターを用いて、125℃でTD方向に2倍に延伸した後、TD方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。以上述べた工程で、厚さ16%のPE膜を作製し、セパレータAとした。以下、このセパレータAの各種特性を測定した。
【0040】
まず、このセパレータAの常温での全細孔容積を測定した。23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて全細孔容積を測定した。測定値は、1.6cm3/gであった。
【0041】
次に、このセパレータAの熱処理後の全細孔容積を測定した。セパレータAを、MD方向に120mm、TD方向に50mmの長方形に切り取り、大気中110℃の温度にセットされた恒温層内に、MD方向に200gの錘で、25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態でセットし、15分間保持して前処理した。(以下、MD前処理という。) MD前処理した後は、23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて全細孔容積を測定した。測定値は、0.6cm3/gであった。
【0042】
さらに、このセパレータAの常温での空孔率を測定した。23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて空孔率を測定した。測定値は75%であった。
【0043】
次に、このセパレータAの熱処理後の全細孔容積を測定した。セパレータAを、MD方向に120mm、TD方向に50mmの長方形に切り取り、MD前処理した。MD前処理した後は、23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて空孔率を測定した。測定値は38%であった。
【0044】
次に、セパレータAと同じ厚さで、違う全細孔容積を持つセパレータBを製造した。
【0045】
高密度ポリエチレン(平均分子量40万)40重量部と流動パラフィン60重部とを二軸押出機内で溶融混練した。コートハンガーダイから冷却ロール上に押出キャストすることにより高分子ゲルシートを作製した。厚みはこの時点で、1.8mmであった。この高分子ゲルシートを同時二軸延伸機を用いて130℃で7×4倍に抽出前延伸をした。その後、塩化メチレン中に浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。さらに、テンターを用いて、130℃でTD方向に3倍に延伸した後、TD方向の延伸を17%緩和させつつ熱処理した。以上述べた工程で、厚さ16%のPE膜を作製し、セパレータBとした。得られたセパレータBの常温での全細孔容積を測定した。
【0046】
23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて全細孔容積を測定した。測定値は1.6cm3/gであった。
【0047】
次に、このセパレータBの熱処理後の全細孔容積を測定した。セパレータBを、セパレータAと同様に、MD方向に120mm、TD方向に50mmの長方形に切り取り、MD前処理した。MD前処理した後は、23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて全細孔容積を測定した。測定値は1.0cm3/gであった。
【0048】
さらに、このセパレータBを、セパレータAと同様に、常温での空孔率を測定した。23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて空孔率を測定した。測定値は75%であった。
【0049】
次に、このセパレータAの熱処理後の空孔率を測定した。セパレータBを、MD方向に120mm、TD方向に50mmの長方形に切り取り、MD前処理した。MD前処理した後は、23℃に調温された実験室内で水銀ポロシメータ装置を用いて空孔率を測定した。測定値は50%であった。
【0050】
以下、セパレータAまたはセパレータBと同様の方法で、ポリエチレンの分子量や延伸条件を変えることにより、常温での全細孔容積、空孔率は、全て同じであり、(表1)に示すような熱処理後の全細孔容積、空孔率および厚さからなるセパレータAからMの13種のセパレータを作製した。
【0051】
【表1】
【0052】
<電池の作製>
本願の発明に係る二次電池の過充電時の温度変化を評価するために円筒形電池を作製し、評価を行った。
【0053】
図1に本実施例における円筒形電池の構造図(一部断面図)を示す。図1において、非水電解質二次電池1は、正極2と負極3とセパレータ4が、捲回されて、ケース5内に非水溶媒に電解質塩を溶解した電解液(図示せず)、とともに内蔵されており、封口板6で密閉されている。
【0054】
封口板には、一般の市販電池においては、安全弁やPTC素子などの安全素子が組み込まれているが、実施例の電池においては安全性試験のために、封口板6には一切の安全機構は組み込まれていない。
【0055】
正極2は、コバルト酸リチウム粉末85重量%に対し、導電剤の炭素粉末10重量%と結着剤のポリ弗化ビニリデン樹脂(PVdF樹脂)5重量%を混合し、これらを脱水NMPに分散させてスラリーを作製し、アルミ箔からなる正極集電体状に塗布し、乾燥後、圧延して作製した。
【0056】
負極3は、負極活物質として人造黒鉛粉末を用い、これの95重量%に対して、結着剤のPVdF樹脂を5重量%を混合し、これらを脱水NMPに分散させてスラリーを作製し、銅箔からなる正極集電体状に塗布し、乾燥後、圧延して作製した。
【0057】
セパレータ4には、前述の(表1)に示すセパレータAからMの13種のセパレータを使用した。
【0058】
また、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比1:1の混合溶媒にLiPF6を1モル/リットル溶解したものを使用した。電解液量は、約3.8mlである。
【0059】
なお、本実施例において作製した円筒形電池は直径18mm、高さ65mmである。本サイズで、通常市販されているものの設計容量は1800mAhであり、セパレータ4の厚みも、25から27μmのものが一般的である。本実施例の電池は、それよりも高容量の2000mAhを設計容量とした。このため、セパレータ4の厚みは、25μmより大きくなると、捲回した極板群が、ケースに確実に挿入できなかった。
【0060】
<実施例1〜36>
セパレータAを、ビフェニルを5重量%添加した電解液3.8mlとともに電池に組み立てた。この電池を実施例1の電池とする。さらに、(表1)に示すセパレータAからMの13種のセパレータと、芳香族添加剤および添加量を(表2)および(表3)に示す組み合わせにて作製し、実施例2から実施例36の電池を得た。
【0061】
<比較例1〜9>
実施例1と同様の方法でセパレータAを用い、芳香族添加剤を一切添加していない電解液とともに電池に組み立てた。この電池を比較例1とする。さらに(表1)に示すセパレータAからMの13種のセパレータと、芳香族添加剤および添加量を(表2)および(表3)に示す組み合わせにて作製し、比較例2から比較例9の電池を得た。
【0062】
<電池の評価>
実施例1〜実施例36及び比較例1〜比較例9に係る電池、計45個を以下のように評価した。
【0063】
電池の設計容量は、2000mAである。そこで、1000mAの定電流で、4.2Vになるまで充電した後、1000mAの定電流で3.0Vになるまで放電する充放電サイクルを10サイクル繰り返した。この10サイクル目の放電容量を各電池の初期容量とした。51個の全ての電池で、初期容量が設計容量を満足していた。また、充放電は20℃の恒温槽の中で行った。その後、各電池を4.2Vまで1000mAの定電流で充電し、さらに、2000mAの定電流で3時間の過充電試験を行い、この過程での電池の表面温度の測定を行い、電池の最高到達温度を評価した。これらの結果も、(表2)および(表3)に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【0066】
(表2)からわかる通り、実施例の電池ではセパレータが薄くなっているのもかかわらず、異常昇温が抑えられた。すべての実施例の電池で、電圧がかかった状態で電流が流れており、セパレータ内で微小な内部短絡が起こっていた。それに対し、比較例の電池は、全て異常昇温が起こった。
【0067】
使用した全てのセパレータで、常温の全細孔容積や空孔率は同じであるのに、実施例と比較例の電池のように異常昇温の起こる電池と起こらない電池があったのは、前述のとおり、高温時の全細孔容積や空孔率が違うためである。
【0068】
実施例の全ての添加剤(ビフェニル、フラン、インドール、3−クロロ−チオフェン)で、添加量が2.5重量%のものと5重量%のもので、効果に違いが無かった。
【0069】
電池の到達温度の高かった10個の電池(実施例8、9、17、18、23、24、29、30、35、36)は、すべて、セパレータJか、セパレータKのものであった。セパレータJは、高温時の全細孔容積が大きくて、高温時の空孔率も大きい上に厚みが小さいため、内部短絡が多く発生し、その短絡電流による温度上昇が大きかったと思われる。また逆に、セパレータKは、高温時の全細孔容積が小さくて、高温時の空孔率も小さい上に厚みが厚いため、内部短絡の発生が少なく、過充電状態が進んだため温度上昇が大きかったと思われる。
【0070】
セパレータJより内部短絡が起こりやすいと思われる、セパレータGや、セパレータMを使用した比較例の電池(比較例3、5、7、9)は、内部短絡があまりにも多く発生し、その短絡電流による温度上昇が大きいため、異常昇温が起こったと考えられる。また逆に、セパレータKより内部短絡が起こりにくいと思われる、セパレータFや、セパレータLを使用した比較例の電池(比較例2、4、6、8)は、内部短絡の発生があまりにも少なく、過充電状態が危険な状態まで進んだため異常昇温が起こったと考えられる。
【0071】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明によれば、薄いセパレータを用いたにもかかわらず非水電解質二次電池の高温状況下での安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いた円筒形電池の概略図(一部断面図)
【符号の説明】
1 非水電解質二次電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ケース
6 封口板
Claims (2)
- 正極、負極、非水溶媒に電解質塩を溶解した非水電解質、セパレータを備えた非水電解質二次電池であって、
前記非水電解質は、ビフェニル、フラン、インドールおよび3−クロロチオフェンから選択される少なくとも1種の芳香族添加剤を混合してなり、前記セパレータは多孔質ポリオレフィンからなり、さらにその機械延伸された長手方向に25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態にて大気中110℃の温度で15分間保持した後において、全細孔容積が0.5から1.0cm3/gであり、前記セパレータの厚さが8から18μmであることを特徴とする非水電解質二次電池。 - 正極、負極、非水溶媒に電解質塩を溶解した非水電解質、セパレータを備えた非水電解質二次電池であって、
前記非水電解質は、ビフェニル、フラン、インドールおよび3−クロロチオフェンから選択される少なくとも1種の芳香族添加剤を混合してなり、前記セパレータは多孔質ポリオレフィンからなり、さらにその機械延伸された長手方向に25kg/cm2の引っ張り荷重を与えた状態にて大気中110℃の温度で15分間保持した後において、前記セパレータの空孔率が35から50%であり、前記セパレータの厚さが8から18μmであることを特徴とする非水電解質二次電池。
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