(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したインクジェット式プリンタの第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1および図2は、インクジェット式プリンタを示す斜視図および要部概略正断面図である。図1に示すように、液体噴射装置としてのインクジェット式プリンタ10(以下単に、プリンタ10という。)には、本体ケース11が備えられている。本体ケース11は、プリンタ10の装置全体を覆うものであって略箱型に形成されている。
その本体ケース11には、図1に示すように、棒状のガイド部材12が長手方向(図1における左右方向X)に沿って架設されている。そのガイド部材12には、キャリッジ13が左右方向Xに沿って移動可能に挿通支持されている。そのキャリッジ13は、タイミングベルト14を介してキャリッジモータM1に連結されており、該キャリッジモータM1により駆動可能になっている。
そして、キャリッジモータM1を回転駆動すると、その駆動力がタイミングベルト14を介してキャリッジ13に伝達される。これにより、駆動力を受けるキャリッジ13が、ガイド部材12に沿って左右方向Xに往復移動する。
そのキャリッジ13の下部には、図2に示すように、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド15が搭載されている。その記録ヘッド15の下面には、図2に示すように、ノズル形成面15aが形成されている。そのノズル形成面15aには、液体を噴射させる図示しない多数の液体噴射ノズル(以下単に、ノズルという。)が形成されている。
キャリッジ13にあってその記録ヘッド15の上側には、図1に示すように、液体貯留手段としてのインクカートリッジ16が着脱可能に搭載されている。そのインクカートリッジ16内には、液体としてのインクが記録ヘッド15に供給可能に収容されている。なお、本実施形態におけるインクは顔料インクであって、揮発成分である水性溶媒(溶媒成分)と、分散剤で分散される不揮発成分である顔料(分散成分)などを有するインクであるが、他成分で構成されるインクであってもよく特に限定しない。
そのキャリッジ13の下方には、図1に示すように、プラテン17が配設されている。プラテン17は、ターゲットとしての記録用紙Pを支持する支持台であって、その上面には、図示しない紙送り機構が設けられている。その紙送り機構は、紙送りモータM2を駆動すると、左右方向Xに直交する方向(図1における前後方向Y)に向かって記録用紙Pを給送するようになっている。
こうして、プリンタ10は、画像データに基づいて作成される画像信号が入力されると、紙送りモータM2を駆動して記録用紙Pを前後方向Yの前方に向かって給送し、キャリッジモータM1を回転駆動してキャリッジ13を左右方向Xに往復移動する。同時に、プリンタ10は、往復動する記録ヘッド15からインク滴を噴射して記録用紙P上に印刷を施す。
図1に示すように、本体ケース11内の右側には、印刷を施すことのない非印刷領域が設けられている。その非印刷領域には、クリーニング機構20が備えられている。そのクリーニング機構20には、図1に示すように、封止手段としてのキャップ21、排出チューブ22、吸引ポンプ23及び回収手段を構成する液体回収容器としての回収タンク25が備えられている。
キャップ21は、図2に示すように、上面を開口した箱体状に形成されている。そのキャップ21は、非印刷領域に配設される図示しない昇降機構によって、左右方向Xおよび前後方向Yに直交する方向(図2における上下方向Z)に沿って往復動可能に支持されている。そのキャップ21の底面には、上下方向Zに沿って吸引孔21aが貫通形成されている。また、そのキャップ21の上縁には、可撓性部材からなる四角枠状の外枠21bが形成されている。
そして、記録ヘッド15が非印刷領域に移動しキャップ21が上動すると、キャップ21の外枠21bが記録ヘッド15に当接してノズル形成面15aを封止する。これによって、キャップ21内には、ノズル形成面15aを密閉する空間、すなわちキャップ内空間が形成される。
本体ケース11の底面にあってプラテン17の下側には、回収タンク25が配設されている。回収タンク25は、図1および図2に示すように、直方体形状に形成される容器であって、その容器内部は、吸引孔21aに接続される排出チューブ22を介してキャップ内空間と連通されている。その排出チューブ22の途中には、吸引ポンプ23が配設されている。吸引ポンプ23は、図示しないポンプモータにて稼動するポンプであって、その吸引能力に相対する負圧をキャップ内空間に形成する。
そして、吸引ポンプ23を稼動してキャップ内空間に負圧を形成すると、記録ヘッド15内にある増粘したインクがノズルからキャップ内空間に向かって吐出され、記録ヘッド15のクリーニングが行われる。このとき、キャップ内空間に吐出されるインクは、吸引ポンプ23によって吸引され、キャップ内空間の気体(泡)を含むインク(排出インク)となって排出チューブ22の下流側、すなわち回収タンク25内に排出される。
その回収タンク25には、図3に示すように、容器本体としての収納容器26が備えられている。収納容器26は、図3に示すように、その上側に開口26d(開口部)を有する箱体状に形成され、その収納容器26の内側には、略直方体形状の回収空間Sが形成されている。その収納容器26に設けられた、周壁部を構成する左側壁26a(図2における右側壁)には、図3および図4に示すように、挿入部26bが設けられている。挿入部26bは、左側壁26aの上縁中央を下方に向かって断面半円弧状に切り欠いて形成されている。
その回収空間S内には、図2に示すように、収納容器26の底面26c側から順に、液体吸収体としての第1、第2および第3インク吸収体27,28,29が収容されている。これら第1、第2および第3インク吸収体27,28,29は、いずれも同じサイズで形成されるシート状の多孔質部材であって、平面視方向からみて底面26cと略同じサイズで形成されている。
その第1インク吸収体27は、図2に示すように、底面26c上に配設され、その上側には第2インク吸収体28が積み重ねられている。その第2インク吸収体28の中央部には、図3に示すように、貫通孔28aが形成されている。貫通孔28aは、平面視方向から見て四角形状に形成される孔であって、第2インク吸収体28の上面から下面までを貫通して形成されている。
その第2インク吸収体28の上側には、図2に示すように、第3インク吸収体29が積み重ねられている。第3インク吸収体29は、第2インク吸収体28の上側に配置され、その上面が収納容器26の上縁と面一となっている。図3に示すように、第3インク吸収体29の中央部にあって貫通孔28aと相対向する位置には、案内孔29aが形成されている。案内孔29aは、貫通孔28aと同じサイズで形成され、第3インク吸収体29の上面から下面までを貫通して形成されている。その案内孔29aの左側外周壁29b(図2における右側内側面)には、図3および図4に示すように、切り欠き部29cが形成されている。切り欠き部29cは、左側外周壁29b中央部を上下方向Zおよび左右方向Xの全幅にわたって切り欠いて、案内孔29aから挿入部26bに延びるようにして形成されている。
こうして、回収タンク25は、第2および第3インク吸収体28,29がこれら貫通孔28aおよび案内孔29aを積み重ねることによって、図4に示すように、回収空間S中央にあって直方体形状に形成される空間、すなわち導入室30を形成している。ついで、その導入室30は、切り欠き部29cを介して挿入部26bに連通されている。
その第3インク吸収体29の上側には、図2に示すように、カバー部材としての蓋体31が配設されている。その蓋体31には、図3に示すように、枠部32、案内板33および遮蔽板34が備えられている。
枠部32は、図3に示すように、平面視方向から見て四角枠状に形成される板部材であって、その外周が収納容器26の上縁外周と略同じサイズで形成されている。その枠部32の下面32aには、一対の案内板33が固設されている。その一対の案内板33は、その先端部が挿入部26b側から枠部32内の中央位置まで延びるように形成され、切り欠き部29cと相対向するようにして、互いに前後方向Yに沿って等間隔に配設されている。
その案内板33の先端上側には、図3に示すように、遮蔽部としての遮蔽板34が固設されている。遮蔽板34は、平面視方向から見て四角形状に形成される板部材であって、その外周は、導入室30の上縁外周よりも大きく、かつ枠部32の内周よりも小さいサイズで形成されている。換言すると、遮蔽板34は、第3インク吸収体29の上面と相対向する面が、第3インク吸収体29の上面の大きさよりも小さく形成されている。その遮蔽板34の下面には、図4に示すように、案内片34aが設けられている。案内片34aは、略三角柱状に形成される突片であって、案内板33の先端部と対向する一側面が、図2および図4に示すように、遮蔽板34の下面から導入室30中央側に傾斜するようにして配設させている。
こうして、蓋体31には、一対の案内板33を介して遮蔽板34が枠部32の内側に配設され、遮蔽板34の外周面と枠部32の内周面との間に上下方向Zを貫通した四角枠状の通気口35が形成されている。
そして、回収タンク25は、この蓋体31(枠部32)を収納容器26の上縁に沿って配設固定することによって、遮蔽板34と相対向する導入室30の上側、さらにはその導入室30近傍の第3インク吸収体29の上面を遮蔽板34によって覆っている。またかつ、回収タンク25は、通気口35と相対向する第3インク吸収体29の上面を通気口35によって収納容器26の外側に開放している。
そのうえ、回収タンク25は、切り欠き部29c内に案内板33を挿入して、図2に示すように、案内板33、案内片34aおよび第2インク吸収体28で囲まれる案内路36を形成している。ついで、回収タンク25は、図2に示すように、その案内路36に沿って回収空間S内に排出チューブ22を挿入し、その排出チューブ22の先端を案内片34aに沿って曲折して、排出口22aを第1インク吸収体27の中央位置に対向するように配置している。
今、吸引ポンプ23を稼動してクリーニングを開始すると、その吸引ポンプ23から排出される排出インクが排出チューブ22(案内路36)を通じて導入室30内に導入される。このとき、導入室30内に導入される排出インクは、導入室30の上側が遮蔽板34によって覆われ分だけ、その溶媒成分の揮発が抑制される。このため、導入室30内に導入される排出インクは、溶媒成分の揮発が抑制される分だけその分散成分の固化を遅延し、同時に、排出インク内に含まれる泡を消失して導入室30の底面である第1インク吸収体27内に吸収される。
そして、第1インク吸収体27に吸収される排出インクは、導入室30の底面、すなわち第1インク吸収体27の中央位置から底面26cに沿って等方的に拡散する。やがて、第1インク吸収体27内に拡散した排出インクの一部は、毛細管力などによってその上方にある第2および第3インク吸収体28,29に吸収される。これにしたがい、導入室30内に導入された排出インクは、順に第1、第2および第3インク吸収体27,28,29に拡散して収容される。
この際、第3インク吸収体29に収容される排出インクの一部は、通気口35を介して回収タンク25の外方にその溶媒成分の一部を揮発させる。このため、第3インク吸収体29に収容される排出インクは、揮発した溶媒成分の分だけその容量を削減し、そこへ第2インク吸収体28の収容する排出インク、さらには第1インク吸収体27の収容する排出インクを吸収するようになる。
したがって、上記第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態によれば、第1、第2および第3インク吸収体27,28,29によって導入室30を形成し、その導入室30内に排出チューブ22の排出口22aを配置して、その導入室30の上側を遮蔽板34で覆うようにした。従って、排出口22aから排出され、導入室30内に回収された排出インクの溶媒成分の揮発を遮蔽板34によって抑制することができる。その結果、導入室30内にある分散成分の固化を遅延することができ、その遅延した時間分だけ、排出インク内に含まれる泡を消失することができる。ひいては、導入室30内に排出される排出インクを第1インク吸収体27によって円滑に吸収し、排出インクを増粘固化させずに、第1インク吸収体27の広い範囲に浸透させることができる。
(2)本実施形態によれば、収納容器26の上縁に沿って蓋体31を配設し、その蓋体31の通気口35を第3インク吸収体29の上側に配設するようにした。したがって、通気口35を介して、第3インク吸収体29に吸収される排出インクの溶媒成分を揮発させることができる。その結果、第3インク吸収体29に吸収される排出インクの容量を削減することができ、その削減した分だけ、第1および第2インク吸収体27,28に吸収されるインクを第3インク吸収体29に吸収させることができる。ひいては、これら各インク吸収体27,28,29の吸収効率を向上させることができる。
(3)本実施形態によれば、第3インク吸収体29の上側を枠部32および遮蔽板34によって覆うようにした。したがって、回収タンク25が振動などを受けて位置ずれする場合に、これら枠部32および遮蔽板34が配置される分だけ、排出インクの漏洩を収納容器26の上側で防ぐことができる。
(4)本実施形態によれば、蓋体31に案内板33と案内片34aを設けて、排出チューブ22の排出口22aを第1インク吸収体27の中央位置に対向して配置するようにした。したがって、排出口22aから排出される排出インクを第1インク吸収体27の中央位置から等方的に吸収させることができる。その結果、例えば第1インク吸収体27の一端から吸収させる場合に比べ、その吸収方向が広がる分だけ、排出インクの吸収効率を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、参考例である第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図5及び図6に示すように、この第2実施形態において回収手段を構成する液体回収容器としての回収タンク50は、容器本体としての収納容器51を備えている。収納容器51は、上側に開口51aを有する有底長四角箱状をなしており、その内部に液体としてのインクを回収する回収空間Sを有している。収納容器51の内側面には、複数(本実施形態では10個)のリブ52が内側に向かって突設されている。そして、各リブ52の上面には、それぞれネジ溝52aが形成されている。
収納容器51における左側壁(図2では右側壁)51bの上縁の一部からは舌片部51cが外側に向かって水平に突設されている。また、収納容器51の上縁(この場合、上端面)には、収納容器51の開口51aを囲むように環状をなす位置決め手段としての収容溝51dが収納容器51の上縁全体に渡って凹設されている。但し、舌片部51cが突設された箇所においては、舌片部51cの外周縁に沿って外側へ張り出した屈曲状をなすように収容溝51dは凹設されている。また、この収容溝51dは、その溝長さ方向における一部(本実施形態では収納容器51における左側壁51bの上縁の一部)が、他の部分よりも約2倍の溝幅となる幅広溝部51eに形成されている(図7及び図8参照)。
図7及び図8に示すように、収容溝51d内には、可撓性を有する材料よりなり、その断面形状が略円形をなす1本の長尺状のシール部材53が収容されている。シール部材53は、収納容器51の上縁に沿って収納容器51の開口51aを囲むように配置されており、その両端部53a,53bが互いに接合されている。すなわち、シール部材53は、その長さ方向の一方の端部53aと他方の端部53bとが収容溝51dの一部に設けられた幅広溝部51eにおいて長さ方向にオーバーラップした並列状態に配置されている。そして、その並列状態に配置された両端部53a,53b間が幅広溝部51eに充填されたブチルゴム等よりなる密閉材69を介して互いに接合されることで、シール部材53は環状をなすように構成されている。
収納容器51の回収空間Sには、液体吸収体としての長四角板状をなす第1、第2および第3インク吸収体54,55,56が、収納容器51の容器底面51f側から順に積み重ねられた状態で収容されている。これら各インク吸収体54,55,56は、第1実施形態の各インク吸収体27,28,29の場合と同様に、いずれも同じサイズに形成されたシート状の多孔質部材であり、平面視方向からみて容器底面51fと略同じサイズに形成されている。各インク吸収体54,55,56の周縁において各リブ52と対応する位置には、それら各リブ52と対応する形状の切り欠き凹部54a,55a,56aがそれぞれ形成されている。そして、各リブ52に各切り欠き凹部54a,55a,56aが係合されることにより、回収空間S内における各インク吸収体54,55,56の位置決めがなされるようになっている。
各インク吸収体54,55,56は、それぞれ長手方向における中央部において、それらの短手方向に沿って2つに分割されている。すなわち、第1インク吸収体54は、第1分割片57と第2分割片58とに分割され、第2インク吸収体55は、第3分割片59と第4分割片60とに分割され、第3インク吸収体56は、第5分割片61と第6分割片62とに分割されている。
第2インク吸収体55を構成する第3分割片59と第4分割片60との分割面における中央部には、切り欠き部59a,60aがそれぞれ互いに対向するように形成されている。また、第3インク吸収体56を構成する第5分割片61と第6分割片62との分割面における中央部には、切り欠き部61a,62aがそれぞれ互いに対向するように形成されている。切り欠き部59a,60aと切り欠き部61a,62aとは、それぞれ上下方向において互いに対応した位置関係となるように形成されている。そして、各インク吸収体54,55,56が回収空間S内で積み重ねられることで、図6及び図7に示すように、第1インク吸収体54の上面と各切り欠き部59a,60a,61a,62aとで囲まれる空間、すなわち導入室63が収納容器51の中央部に形成される。
第5分割片61と共に第3インク吸収体56を構成する第6分割片62の上面には、導入室63と舌片部51cとの間を直線的に繋ぐ断面矩形状をなす凹溝62bが形成されている。そして、この凹溝62bは、その底面62cが舌片部51cの上面51g(収納容器51における左側壁51bの上縁(上端面)において屈曲状をなす収容溝51dよりも内側となる部分)と面一となるように形成されている。
また、第3インク吸収体56の上側には、図5及び図6に示すように、長四角板状をなすカバー部材としての蓋体64が配設されている。蓋体64は、平面視方向からみて容器底面51fと略同じサイズに形成され、第3インク吸収体56の上面と相対向する面が、第3インク吸収体56の上面以上の大きさに形成されている。蓋体64の周縁部には、収納容器51の各リブ52(各ネジ溝52a)と対応する位置に、それぞれ複数の挿通孔64aが形成されている。そして、蓋体64は、図示しない複数のネジが各挿通孔64aを通して各ネジ溝52aにそれぞれ螺合されることにより、収納容器51に対してその開口51a全体を覆うように装着される。なお、その場合、蓋体64と収納容器51との間には、前述したシール部材53が介装され、このシール部材53により収納容器51内の密閉性が高められる。
ここで、図5及び図6に示すように、蓋体64には、平面視において収納容器51の舌片部51cと対応した形状をなす突片部65が設けられている。そして、蓋体64が収納容器51の開口51a全体を覆った装着状態では、この突片部65が、舌片部51cの上面51gとの間に空間を介在させて舌片部51cを上方から覆うようになっている。
この突片部65の基端側には通気口65aが貫通形成されると共に、通気口65aよりも外側となる突片部65の先端側には筒状をなす一対のチューブ接続部66が前後方向Yに並設されている。両チューブ接続部66は、それぞれ上下方向Zに沿って延びるように形成されており、突片部65の上面から上方に向かって突出した上側突出部66aと、突片部65の下面から下方に向かって突出した下側突出部66bとをそれぞれ備えている。そして、これら両上側突出部66aと両下側突出部66bとが互いに連通して一対のチューブ接続部66を構成している。
また、蓋体64の下面には、蓋体64を収納容器51の開口51a全体を覆うように収納容器51に装着した場合に第3インク吸収体56の凹溝62b内に配置される案内板67が、突片部65から蓋体64の中央に向けて延設されている。この案内板67は、その長さ方向において平行をなす2つの案内路68を備えており、両案内路68は、その導入室63側(蓋体64における中央側)の端部の長さが互いに異なる(つまり、両案内路68のうち一方は他方よりも導入室63側の端部が短い)構成となっている。
この第2実施形態では、吸引ポンプ23から延びる2本の可撓性を有する排出チューブ70が、図6に示すように、蓋体64における突片部65上面の両上側突出部66aにそれぞれ接続されている。また、蓋体64における突片部65下面の両下側突出部66bには、両排出チューブ70とは別の2本の可撓性を有する排出チューブ71の基端部がそれぞれ接続されている。そして、両排出チューブ71は、それぞれ蓋体64の下面側において案内板67の両案内路68に沿って導入室63内まで略水平に延設され、その導入室63内において両排出チューブ71の先端部が斜め下方に屈曲されている。
図9に示すように、両排出チューブ71は、それらの屈曲した先端部が略コ字状の支持部材72によって案内板67の各案内路68内に止着されることにより、蓋体64の下面に支持されている。そして、両排出チューブ71は、それらの先端部に設けられた両排出口71aが導入室63内において互いに左右方向Xにずれた位置状態となるように配設されている。このように、本実施形態では、両排出チューブ71における両排出口71aが回収タンク50の中央部に位置する一方、通気口65aは回収タンク50の端部(具体的には、舌片部51cを上方から覆う突片部65)に位置する構成とされる。すなわち、通気口65aは、蓋体64における排出口71aの直上となる位置(導入室63の近傍位置)から水平方向へ離間した位置(舌片部51cの上面51gの直上位置)に設けられている。換言すると、通気口65aは、第3インク吸収体56と相対向する領域以外の端部に設けられている。
さて、吸引ポンプ23を稼動してクリーニングを開始すると、その吸引ポンプ23から排出される排出インクが各排出チューブ70,71(両案内路68)を通じて導入室63内に導入される。そして、導入室63内に導入された排出インクは、第1実施形態の場合と同様に、第1、第2および第3インク吸収体54,55,56の順に拡散して収納容器51内に収容される。その際、本実施形態では、収納容器51の開口51a全体が蓋体64で覆われ、通気口65aが上記したような位置に配置されているため、第1〜第3インク吸収体54〜56に吸収された排出インクの溶媒成分の一部が揮発すると、その揮発成分は回収空間S内に一時滞留する。そして、所定量以上の排出インクが回収されると、回収空間S内は、揮発成分の蒸気で満たされ、湿潤状態となる。その結果、第1〜第3インク吸収体54〜56は、溶媒成分の揮発が抑制され、完全には固化せず湿った状態となる。従って、例えば、顔料濃度や粘度が高いインクを用いたり、各インク吸収体54〜56に、特定のインクに対し相性(浸透性)が多少劣る多孔質材を用いた場合等にも、導入室63内に回収された排出インクが吸収される前に、そのインクの溶媒成分が揮発して固化してしまうのを防止できる。
また、各インク吸収体54〜56を湿った状態とすることにより、凝集固化した顔料等で各インク吸収体54〜56の細孔が閉塞されることを防止できる。さらには、顔料濃度等が高いインクを用いた場合にも、各インク吸収体54〜56に含有された排出インクを液状に保つことにより、導入室63の底面に排出されたインクの界面張力を低下させ、排出インクを迅速に各インク吸収体54〜56内に浸透させる。従って、後続の排出インクを第1〜第3インク吸収体54〜56の隅々に亘って、円滑に浸透させることができる。
また、回収空間Sが湿潤状態に保たれることから、導入室63等に少量のインク残渣や排出インクの泡が堆積したとしても、その残渣や泡に含まれる溶媒成分の揮発を抑制し、完全に固化してしまうことが防止される。これにより、後続して排出された排出インクにより、その残渣や泡の堆積物を崩すことができる。
また、回収空間S内に放出された、排出インクの溶媒成分が飽和状態になったときには、揮発した溶媒成分は、第3インク吸収体56の上面と蓋体64の下面との僅かな隙間を通って通気口65aへ向かって流れ、その後、通気口65aから回収タンク50の外方に放出される。その際、本実施形態では、通気口65aが排出口71aの直上に位置せず、排出口71aから水平方向へ離間した位置(突片部65)に設けられているため、排出口71aから排出された排出インクが通気口65aを通じて過剰に揮発することが抑制される。また、通気口65aが、第3インク吸収体56の直上に通気口65aが設けられないことにより、第3インク吸収体56の一部が局所的に乾燥せず、第3インク吸収体56全体がほぼ同じ湿った状態に保持される。
また、通気口65aの内径は、排出インクの顔料濃度や、溶媒成分の蒸気圧等に応じて、排出インクが固化しない適度な湿度に保持できるような大きさに形成されている。このため、回収空間S内は、排出インクの顔料等が凝集固化せず、排出インクの浸透性が保たれるような湿度に保持される。また、回収空間Sに放出された過剰な揮発成分(揮発した溶媒成分)は、通気口65aを介して外部に放出するので、その放出量だけ、排出インクをさらに回収することができる。
加えて、蓋体64と収納容器51との間に介装されたシール部材53が収納容器51内の密閉性を高めるため、蓋体64と収納容器51との間から排出インクが揮発・漏出することも抑制される。しかも、そのシール部材53を蓋体64と収納容器51との間に介装するに際しては、収納容器51の上縁に凹設された収容溝51dが位置決め機能を良好に発揮する。そして、回収タンク50(収納容器51及び蓋体64)の大きさが異なる場合には、1本の長尺状をなすシール部材53の長さが、収納容器51の開口51aを包囲可能な長さとなるように対処される。
したがって、上記第2実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(5)前記蓋体64により収納容器51の開口51a全体が覆われるため、排出口71aから排出されて各インク吸収体54,55,56に吸収された排出インクの開口51aを通じた揮発を蓋体64により抑制することができる。このため、回収空間Sを湿潤状態に保つことで、各インク吸収体54〜56内で排出インクの分散成分が固化したり、導入室63内で排出インクが固化したりするのを防止できる。即ち、開口51aを覆う面積を変更し、第1実施形態よりもその面積を大きくすることにより、溶媒成分の揮発量を少なくなるように制御することができる。従って、例えば、顔料濃度や粘度が高いインクを使用した場合等、各インク吸収体54〜56の各空孔の閉塞、インク残渣等の表面での堆積が生じやすい際に、より効果を発揮することができる。その一方、各インク吸収体54,55,56に吸収された排出インクの一部を蓋体64に設けられた通気口65aを介して揮発させることができる。このため、各インク吸収体54,55,56の吸収効率が向上するので、該各インク吸収体54,55,56を小さくすることができ、回収タンク50の小型化を図ることができる。また、各インク吸収体54,55,56に吸収された排出インクの種類に応じて通気口65aの大きさを変更することで、通気口65aを通じて排出インクを好適に揮発させることができる。
(6)前記通気口65aと前記排出口71aとが離間しているため、排出口71aから排出された排出インクが通気口65aを介して直ぐには揮発されず、各インク吸収体54,55,56に吸収された排出インクが通気口65aを通じて過剰に揮発されるのを抑制することができる。
(7)前記シール部材53により収納容器51と蓋体64との間の密閉性が高められるため、収納容器51と蓋体64との間から、排出インクが揮発又は漏出することを良好に抑制することができる。
(8)前記収納容器51と蓋体64との間にシール部材53を介装する際、収納容器51に設けられた収容溝51dによりシール部材53の位置決めを行うことができる。このため、収納容器51と蓋体64との間へのシール部材53の介装作業を容易に行うことができる。
(9)シール部材53が環状でなく長尺状であるため、大きさの異なる複数種の収納容器51及び蓋体64に対しても、各収納容器51及び蓋体64ごとにそれぞれ大きさを対応させた複数の環状のシール部材53を保有する必要がなくなる。また、シール部材53の長さの変更が容易であるため、シール部材53を大きさの異なる複数種の収納容器51及び蓋体64に対して迅速に対応させることができる。
(10)前記シール部材53の長さ方向の一方の端部53aと他方の端部53bとを並列に配置した状態で、その両端部53a,53b間に密閉材69が充填されているため、環状のシール部材を介装した場合と同様のシール性を得ることができる。
(11)前記回収タンク50は、前記収納容器51の開口51a全体が蓋体64で覆われているため、前記第1実施形態の回収タンク25よりも強度が高くなる。
(第3実施形態)
次に、参考例である第3実施形態の回収タンクを上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。図10は、回収手段を構成する液体回収容器としての回収タンク80の斜視図、図11は、回収タンク80の正断面図である。
図10に示すように、回収タンク80には、容器本体としての収納容器81が備えられている。収納容器81は、その上側を開口した箱状の容器であって、その内部には、回収空間Sが設けられている。収納容器81の右側壁81aには、挿通孔81bが貫通形成されている。挿通孔81bは、キャップ21に連通された排出チューブ22の外径と、ほぼ同じ大きさの内径に形成されている。
図11に示すように、回収空間Sには、液体吸収体としての第1のインク吸収体82が収容されている。第1のインク吸収体82は、排出インクを吸収可能な多孔質材質からなり、幅方向(X矢印方向)の長さが、回収空間Sの幅方向(X矢印方向)の長さよりも短く切断されている。また、第1のインク吸収体82は、その高さ(反Z矢印方向)が、回収空間Sの高さよりも短く切断され、奥行き(Y矢印方向)の長さは、回収空間Sの奥行きと同じ長さに切断されている。
この第1のインク吸収体82は、収容できるインクの最大容量(飽和量)を、その細孔の総容積に相対させ、単位排出量の50回分、即ち50回分のクリーニング動作によって排出される排出インクの総容量にしている。しかも、第1のインク吸収体82は、吸収した排出インクの揮発率を50%、即ち吸収した排出インクの容量を半分にして収容するものとする。これにより、回収タンク80は、飽和量に到達するクリーニング回数(飽和クリーニング回数)が100回となっている。
そして、その第1のインク吸収体82を、回収空間Sの内側面に沿って、挿通孔81bが形成された右側壁81aを閉塞しない状態で収容することにより、第1のインク吸収体82と、収納容器81の内側面とにより、導入室84が区画形成される。そして、排出チューブ22は、その排出口22aが導入室84内に配置されるように、挿通孔81bに挿通支持される。
また、図11に示すように、右側壁81aであって、挿通孔81bの上方位置には、係止突条81fが突設されている。この係止突条81fは、右側壁81aから、図10に示す前側壁81d及び後側壁81eに延設され、導入室84を構成する収納容器81の内側面の上縁を、平面視方向からみて、略コの字状に取り囲むように形成されている。
導入室84の開口部には、第2のカバー部材としての第2のインク吸収体86が配設されている。第2のインク吸収体86は、多孔質材からなり、その約半分が第1のインク吸収体82の上面に支持され、その他端部が、係止突条81fによって支持されることにより、導入室84の開口を閉塞している。第2のインク吸収体86は、第1のインク吸収体82よりも、空孔率が小さく、密度が大きい多孔質材からなり、導入室84の開口部以上の大きさに切断されている。即ち、この第2のインク吸収体86を密度の大きい材質にすることで、導入室84に排出された排出インクの溶媒成分、第1のインク吸収体82が吸収した排出インクの溶媒成分の揮発を抑制するようになっている。
さらに、第1のインク吸収体82の上面のうち、第2のインク吸収体86で覆われていない領域は、第1のカバー部材としての第3のインク吸収体87により閉塞されている。第3のインク吸収体87は、第1のインク吸収体82の材質よりも密度が小さく、第2のインク吸収体86の材質よりも密度が小さい材質から形成されている。
また、排出チューブ22は、例えば、15mmの高さH1の導入室84内に、その排出口22aと導入室84の収納容器81の底面81c(導入室84の下面)との距離H2が、例えば10mmとなるように設けられている。即ち、排出口22aは、収納容器81の底面81cと、第2のインク吸収体86の下面86aとの間にあって、下面86a側に2.5mmだけ偏倚して配置されている。
この排出口22aの底面81cからの距離H2は、1回分のクリーニングによって底面81cに堆積するインク残渣の高さに、飽和クリーニング回数を乗じることにより決定されている。即ち、排出インクは、まず導入室84に排出され、底面81cを伝って拡散していくが、その一部は、排出インクに含まれる泡等によって拡散性が損なわれ、さらに溶媒成分の揮発等によって底面81cで増粘する。そして、底面81cで増粘する排出インクは、図11中2点鎖線で示すように、山型状のインク残渣85となって堆積する。このとき、導入室84の上側が、第2のインク吸収体86で閉塞されていることにより、導入室84内には、揮発した溶媒成分が放出され、比較的湿潤な状態になっている。従って、インク残渣85に含まれる溶媒成分のさらなる揮発が抑制され、インク残渣85の固化が防止される。これにより、このインク残渣85は、排出口22aから排出される後続の排出インクによって、その一部が再拡散される。
尚、本実施形態では、こうした再拡散による目減りを含め、1回分のクリーニングで排出される単位排出量の排出インクによって、その最上位置が第2のインク吸収体86側へ増加する量が、0.1mmになっている。そして、この増加量(0.1mm)に、飽和クリーニング回数(100回)を乗算することにより、排出口22aの位置(距離H2)が、収納容器81の底面81cから10mmの位置に決定される。
クリーニング動作が行われると、排出チューブ22から、回収タンク80の導入室84にインクが排出される。排出口22aから、底面81cに注がれた排出インクは、底面81cに沿って外方に向って等方的に拡散する。底面81cを拡散する排出インクは、その殆どが、第1のインク吸収体82の毛細管力等によって、第1のインク吸収体82に吸収される。また、排出インクの一部は、インク残渣85となって、導入室84の底面81cに堆積する。
さらに、導入室84内にある排出インクの溶媒成分の一部は、導入室84内に揮発する。このとき、導入室84が、密度の大きい第2のインク吸収体86に閉塞されることにより、導入室84内が比較的湿潤な状態に保持されため、排出インクに含まれる泡は、固化することなく消失する。また、第1のインク吸収体82のうち、排出口22aに近い領域が、第2のインク吸収体86により閉塞されるので、排出口22aから排出されたインクの浸透を途中で阻害することなく、第1のインク吸収体82の隅々まで浸透させることができる。また、第1のインク吸収体82に吸収された溶媒成分の一部は、揮発して、第1のインク吸収体82の各細孔内を拡散し、主に第3のインク吸収体87の上面から外部に放出される。従って、吸収された排出インクの揮発成分は、排出口22aから離間した領域において、外部に放出される。
そして、例えば、クリーニング動作が75回繰り返されると、インク残渣85は、その最上位置が7.5mmの高さ位置になるまで堆積されている。さらに、クリーニング回数が、飽和クリーニング回数(100回)に到達すると、第1のインク吸収体82は、回収された排出インクで満杯となる。同時に、収納容器81の底面81cには、その飽和クリーニング回数に相対する量のインク残渣85が堆積され、排出口22aの下端まで堆積する。つまり、インク吸収体82が回収した排出インクで満杯となるとき、排出口22aは、インク残渣85によって閉塞されることなく、排出インクの排出が可能になっている。
したがって、第3の実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(12)第3の実施形態によれば、排出インクを排出する導入室84を、第1のインク吸収体82及び収納容器81の内側面により区画形成し、その導入室84内に排出口22aを配置するようにした。そして、その導入室84の上側を、密度の大きい多孔質材からなる第2のインク吸収体86で遮蔽するようにした。このため、この第2のインク吸収体86によって、導入室84内にある排出インクの溶媒成分の揮発を抑制し、排出インクの導入室84内での乾燥固化を防止し、排出インクの泡を消滅させることができる。従って、後続して排出される排出インクを、第1のインク吸収体82に円滑に浸透させることができる。また、導入室84内に堆積したインク残渣85の乾燥固化を抑制することで、インク残渣85を新たに排出されたインクにより崩れやすくし、その堆積量の増大を抑制することができる。また、排出インクの溶媒成分が揮発するのを抑制する部材を、第2のインク吸収体86にしたので、溶媒成分の揮発を抑制しながら、排出インクを吸収して、回収空間Sを効率良く利用することができる。このため、プリンタ10内での回収タンク80の省スペース化が要求される場合に、特に効果を発揮できる。また、排出インクを完全に第1のインク吸収体82に浸透させる前に、プリンタ1を図1のX方向が下向きになるように置かれた場合でも、導入室84内のインクを第2又は第3のインク吸収体86,87で吸収することができる。このため、プリンタ1外へのインク漏れを防止することができる。
(13)第3の実施形態によれば、収納容器81内の回収空間Sに収容された第1のインク吸収体82の上面を、第3のインク吸収体87で閉塞するようにした。このため、第1のインク吸収体82に吸収された排出インクの溶媒成分の揮発を抑制することができる。従って、第1のインク吸収体82内の排出インクの固化を防止し、後続する排出インクを円滑に浸透させることができる。また、第3のインク吸収体87は、第1のインク吸収体82が排出インクで飽和した場合に、その過剰な排出インクを吸収できるので、回収空間Sを有効利用することができる。
(14)第3の実施形態では、導入室84内に配置される排出チューブ22の排出口22aを、導入室84の高さH1の中央位置から、第2のインク吸収体86の下面86a側に偏倚した位置に配置するようにした。しかも、その排出口22aの位置を、1回分のクリーニングで堆積するインク残渣85の単位堆積量と、飽和クリーニング回数とを乗算した高さにするようにした。従って、排出口22aを上方に偏倚して配置する分だけ、その排出口22aを、収納容器81の底面81cに堆積したインク残渣85から離間させることができる。しかも、インク残渣85の飽和堆積量に相対する高さになっているため、インク残渣85による排出口22aの閉塞を確実に回避し、高さ方向(反Z矢印方向)の省スペース化を図ることができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態では、遮蔽板34を平面視方向からみて四角形状に形成したが、この形状に限られず、例えば、平面視方向からみて十字状に形成してもよく、導入室30の上側を覆う形状であればよい。また、参考例として遮蔽板34は、第1実施形態で図示した大きさよりも大きく、第3インク吸収体29の上面の殆どを覆い、第3インク吸収体29の端部の上方にあたる領域のみ開口した形状に形成されてもよい。即ち、遮蔽板34の面積をインク種類等に応じて変更することにより、溶媒成分の揮発量を制御することができる。
・上記第1実施形態では、通気口35を平面視方向からみて四角枠状に形成したが、この形状に限られず、例えば、平面視方向からみて円環状に形成してもよく、さらには蓋体31の上下方向Zを貫通する多数の貫通孔で構成してもよく、第3インク吸収体29に収容される溶媒成分を揮発させる形状であればよい。
・上記第1実施形態では、蓋体31に通気口35を設ける構成にしたが、これを変更した参考例として、通気口35を設けることなく、収納容器26の上側全面を蓋体31で覆う構成にしてもよい。その際、蓋体31と収納容器26との間に隙間を設けて溶媒成分を揮発させる、あるいは所定の割合だけ溶媒成分を通過可能にする部材で蓋体31を形成して溶媒成分を揮発させる構成にしてもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、導入室30,63および排出口22a,71aを回収空間Sの略中央に配置するようにしたが、これに限らず、回収空間Sの隅部であってもよく、回収空間S内に排出インクを導入する位置であればよい。例えば、第1実施形態の回収タンク25において、図12に示すように、収納容器26の底面に第1インク吸収体27aを敷設し、第2及び第3インク吸収体28c,29dの長手方向(X矢印方向)の長さを、第1インク吸収体27aの長手方向の長さよりも短く形成してもよい。そして、各インク吸収体27a,28c,29dと、収納容器26の内側面とにより、導入室30を区画形成してもよい。そして、その導入室30の開口と第1インク吸収体27aの一部とを閉塞可能な大きさに形成された遮蔽板34bにより、開口を閉塞するようにしてもよい。また、排出チューブ22は、収納容器26の壁部に挿通される他に、遮蔽板34bに形成された挿通孔34cに支持されるようにしてもよい。そして、排出チューブ22の軸線が、鉛直方向になるように挿通してもよい。
・上記第1実施形態において、排出チューブ22の排出口22aをインク吸収体の上方に配置して、その排出口22aの周囲をインク吸収体上面とカバー部材とで覆う構成にしてもよい。具体的には、例えば、図13に示すように、回収タンク25に収容された第3インク吸収体29の上面に、有蓋筒状のカバー部材100を設けるようにしてもよい。カバー部材100は、エラストマや合成樹脂等、蒸気を通過させ難い材質からなり、その側壁101には、排出チューブ22を挿通する挿通孔102が貫通形成されている。そして、排出チューブ22を、カバー部材100の内側に排出口22aが配置されるように、カバー部材100に挿通支持する。これにより、各インク吸収体27〜29を切り欠いたり切断したりして、排出インクの回収容量を減少させることなく、排出口22a近傍を閉塞することができる。
・上記第1実施形態では、導入室30に排出される排出インクを、はじめに第1インク吸収体27に吸収して拡散させるようにした。これを変更し、第1インク吸収体27を第2インク吸収体28と同じ構成、すなわち貫通孔28aを備える構成にして、排出インクを収納容器26の底面26cで受け止めて拡散させ、順次第1、第2および第3インク吸収体27,28,29に吸収させる構成にしてもよい。
・上記第1実施形態では、液体吸収体を3枚の第1、第2および第3インク吸収体27,28,29によって具体化したが、これに限らず、1枚あるいは2枚であってもよく、さらには4枚以上で構成してもよい。
・上記第2実施形態において、密閉材69を省略してもよい。この場合、シール部材53の両端部53a,53b間に隙間が形成され、この隙間が補助的な通気口として機能する。
・上記第2実施形態において、シール部材53の両端部53a,53bを突き合わせるようにしてもよい。
・上記第2実施形態において、シール部材53の両端部53a,53bを互いに溶着させるようにしてもよい。この場合、密閉材69を必ずしも充填する必要はない。
・上記第2実施形態において、位置決め手段として、収容溝51dの代りに、突起等を形成してシール部材53の位置決めを行うように構成してもよい。
・上記第2実施形態において、シール部材53及び収容溝51dを省略してもよい。この場合、蓋体64を収納容器51の上縁に対して密着固定することが好ましい。
・上記第2実施形態において、通気口65aと排出口71aとは、必ずしも離間させる必要はなく、これらを互いに近接した位置に配設してもよい。また、通気口65aは2つ以上設けてもよい。
・上記第2実施形態において、通気口65aは、第3インク吸収体56の直上であって、導入室63の直上となる位置から水平方向へ離間した位置に設けるようにしてもよい。この場合でも、各インク吸収体54〜56の溶媒成分の過剰な揮発を抑制できる。
・第1及び第2の実施形態では、排出チューブ22,71の排出口22a,71aを、その高さが、第1インク吸収体27,54と、遮蔽板34又は蓋体64との間の中間高さ位置に対して、遮蔽板34又は蓋体64側に偏倚するように設けてもよい。例えば、第1の実施形態の回収タンク25において、図14に示すように、導入室30内に配置された排出口22aを、導入室30の下面(第1インク吸収体27の上面)からの距離H2が、導入室30の高さH1の中間位置よりも、導入室30の上面30b側に偏倚した位置に配置してもよい。このとき、排出口22aの高さ方向の距離H2を、導入室30内に堆積するインク残渣の単位堆積量に飽和クリーニング回数を乗じた距離にするようにしてもよい。このようにすると、インク残渣が導入室30内に堆積した場合にも、インク残渣により排出口22aを閉塞しないようにすることができる。
・上記各実施形態では、回収タンク25,50,80の開口部に、溶媒成分が通過不能なフィルムや金属板を溶着あるいは配設して、溶媒成分の揮発量を制御するようにしてもよい。そして、遮蔽板34及び蓋体64を省略してもよい。例えば、図15に示すように、第1の実施形態の回収タンク25において、第3インク吸収体29の上面に、溶媒成分が通過不能なフィルム115を、導入室30を遮蔽するように貼着してもよい。第2の実施形態では、第3インク吸収体56の上面のうち、導入室63以外の一部を除いた全域をフィルムにより覆うようにしてもよい。第3の実施形態では、第2のインク吸収体86又は第3のインク吸収体87を、フィルムに変更してもよい。或いは、収納容器26,51,81の開口部に直接フィルムを貼着してもよい。
・第3実施形態において、導入室84を密度の大きい第2のインク吸収体86で覆うようにしたが、第1のインク吸収体82の底部を切り欠いて導入室を形成してもよい。具体的には、図16に示すように、収納容器81内に収容されたインク吸収体82aの底部を切り欠いて凹部82bを形成し、その凹部82bと、収納容器81の内側面とで導入室82cを区画形成するようにしてもよい。そして、この導入室82c内に、排出口22aを配置するようにしても良い。即ち、インク吸収体82aが、排出インクを吸収する吸収体と、導入室82cを覆うカバー部材として機能する。この場合にも、導入室82cを、インク吸収体82aで閉塞することができるので、排出口22a及び導入室82c内を湿潤状態に保つことができる。また、回収タンク80を簡単な構成にすることができる。また、凹部82bが形成されたインク吸収体82aと、インク吸収体82aを覆うカバー部材としてのインク吸収体とを分け、別体にしてもよい。
・第3の実施形態では、収納容器81に係止突条81fを設けるようにしたが、これを省略した構成にしてもよい。また、第2のインク吸収体86を支持する部材を、略コの字状の突条ではなく、収納容器81の内側面に多数設けられた突部等、その他の形状にしてもよい。
・第3の実施形態では、第2及び第3のインク吸収体86,87をそれぞれ異なる密度の材質で形成したが、同じ密度にしてもよい。また、第2及び第3のインク吸収体86,87を、一体化し、一部材にしてもよい。
・第3実施形態では、回収タンク80の収納容器81内に設けられた回収空間Sの隅に、導入室84を形成したが、第1及び第2の実施形態と同様に、第1のインク吸収体82に凹部を形成して、回収空間Sの中央部に導入室84を形成してもよい。
・第3の実施形態では、第2及び第3のインク吸収体86,87に覆われた状態での第1のインク吸収体82の排出インクの揮発率が、50%になるようにした。これ以外に、第2及び第3のインク吸収体86,87の密度や第1のインク吸収体82の材質を変更する等して、50%超の揮発率にしてもよい。このような回収タンク80は、比較的固化し難いインクを回収する場合に適し、吸収した排出インクの半分以上を揮発させることができるので、回収能力が向上する。また、排出インクの揮発率を50%未満にしてもよい。このようにすると、例えば、粘度が高いインク又は顔料濃度の高いインク等を回収する場合にも、導入室84内又は第1のインク吸収体82内等の排出インクの乾燥固化を防止し、排出インクを第1のインク吸収体82等に隅々まで円滑に浸透させることができる。即ち、インク種類等によって、カバー部材としての第2及び第3のインク吸収体86,87の密度等を変更することで、排出インクの揮発量を制御できる。
・第3の実施形態では、第2のインク吸収体86の半分は、第1のインク吸収体82を覆うようにしたが、半分よりも大きい領域又は半分未満の領域が第1のインク吸収体82を覆うようにしてもよい。
・上記各実施形態では、回収タンク25,50,80に排出されたインクの泡を消失させる消泡剤を用いるようにしてもよい。例えば、第1の実施形態の回収タンク25において、図17に示すように、第1インク吸収体27の略中央に孔27bを貫通形成し、第2及び第3インク吸収体28,29と重ねた際に、その孔27bと、貫通孔28a及び案内孔29aとを連続させる。そして、その孔27bに、消泡液105を含浸させた吸収体106を配設するようにしてもよい。消泡液105は、シリコン界面活性剤等の消泡剤や、各種調整剤を含む液体であって、排出チューブ22から排出される気泡を消失するものである。排出チューブ22から、泡を含んだインクが排出されると、吸収体106に含浸された消泡液105が排出インクの泡に付着し、界面張力を低下させて、泡を引き伸ばして破裂させる。或いは、排出チューブ22の内側面に、消泡液105を塗布するようにしてもよい。さらに、第2〜第3実施形態の導入室63,84の底部に、消泡液105を含浸した吸収体106を配設しても良い。或いは、各回収タンク25,50,80に収容された各インク吸収体に直接消泡液105を含浸させるようにしてもよい。このとき、排出口22aの真下及びその周辺に消泡液105を塗布又は含浸させると、排出インクが垂下された直後に、排出インクの泡を集中的に消失させることができるので、高い消泡効果を発揮できる。また、消泡液105に、グリセリン等の保湿剤を添加すると、排出インクの増粘を防止できる。
・上記各実施形態では、回収タンク25,50,80に、排出インクを拡散させる吸収体又は拡散シートを収容するようにしてもよい。例えば、第1及び第2の実施形態では、排出口22aから排出されたインクを受け止める、第1インク吸収体27,54を、高い空孔率を有し、密度が小さい多孔質材で形成してもよい。つまり、このような材質は、吸収体内の細孔数が多かったり、目が粗い多孔質材であるため、排出インクの浸透性が高くなっている。このため、受け止めた排出インクを、回収空間Sの底部の隅々に拡散させた後、液体保持力(吸収性)の高い第2インク吸収体28,55、第3インク吸収体29,56によって排出インクを吸収させることができる。
また、第3実施形態のように、収納容器81の底面に直接排出インクを注ぐ回収タンク80では、収納容器81の底面に拡散シートを敷設して、排出インクを拡散させるようにしてもよい。例えば、第3の実施形態の回収タンク80では、図18に示すように、収納容器81の内底面の大きさと同じ大きさに切断された拡散シート110を最下層に敷設し、その上に、第1のインク吸収体82を重ねるようにしてもよい。拡散シート110は、第1のインク吸収体82よりも密度が小さい(空孔率が大きい)材質からなる。このようにすると、拡散シート110の表面で受け止められた排出インクは、拡散シート110の全域に亘って浸透していく。そして、全体的に拡散された後、拡散シート110に重ねられた第1のインク吸収体82に吸収される。また、第1及び第2実施形態の第1インク吸収体27,54、又は上記した拡散シート110に、消泡液105や、グリセリン等の保湿剤を含浸又は塗布すると、消泡機能、保湿機能を高め、排出インクを回収タンク25,50,80の隅々に円滑に行き渡らせることができる。
・上記各実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式プリンタとして具体化したが、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造や、有機ELディスプレイ等の画素形成に利用される液体噴射装置であってもよい。