以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態における内燃機関の排気装置の構成について、図1に示す内燃機関の排気装置の概略ブロック構成図を参照して、説明する。
図1に示すように、本実施の形態における排気装置20は、直列4気筒の内燃機関としてのエンジン21から排出された排気ガスを排気する装置として、適用されている。エンジン21には、排気マニホールド22が接続されており、排気マニホールド22には、排気装置20が接続されている。
なお、エンジン21は、直列4気筒に限らず、直列3気筒または直列5気筒以上であってもよく、左右に分割されたそれぞれのバンクに3気筒以上の気筒を有するV型エンジンであってもよい。
排気マニホールド22は、エンジン21の第1気筒から第4気筒にそれぞれ連通する排気ポートにそれぞれ接続される4つの排気枝管22a、22b、22c、22dと、排気枝管22a、22b、22c、22dの下流側を集合させる排気集合管22eとから構成されており、エンジン21の各気筒から排気される排気ガスが排気枝管22a、22b、22c、22dを介して排気集合管22eに導入されるようになっている。
排気装置20は、触媒コンバータ24と、円筒状のフロントパイプ25と、円筒状のセンターパイプ26と、消音器としてのマフラ27と、円筒状の排気管としてのテールパイプ28と、を備えている。また、排気装置20は、車体の床下に弾性的に垂下されるようにしてエンジン21の排気ガスの排気方向下流側に設置されている。
なお、上流側とは、排気ガスの排気方向上流側を示し、下流側とは、排気ガスの排気方向下流側を示す。
触媒コンバータ24の上流端は、排気集合管22eの下流端に接続されており、触媒コンバータ24の下流端は、自在継手29を介してフロントパイプ25に接続されている。この触媒コンバータ24は、ハニカム基材または粒状の活性アルミナ製担体に白金、パラジウム等の触媒を付着させたものが本体ケースに収納されたものから構成され、NOxの還元やCO、HCの酸化を行うようになっている。
自在継手29は、ボールジョイント等の球面継手から構成されており、触媒コンバータ24とフロントパイプ25との相対変位を許容するようになっている。また、フロントパイプ25の下流端には、自在継手30を介してセンターパイプ26の上流端が接続されている。自在継手30は、ボールジョイント等の球面継手から構成されており、フロントパイプ25とセンターパイプ26との相対変位を許容するようになっている。
センターパイプ26の下流側は、マフラ27に接続されており、このマフラ27は、排気音の消音を行うようになっている。
図2、図3に示すように、マフラ27は、中空筒状に形成されたアウタシェル31と、アウタシェル31の両端を閉塞するエンドプレート32、33と、エンドプレート32とエンドプレート33との間に介装された仕切板34とを備えており、アウタシェル31、エンドプレート32、33および仕切板34を含んで消音器本体が構成されている。
アウタシェル31内に設けられた仕切板34は、アウタシェル31内を、排気ガスを拡張するための拡張室35およびヘルムホルツ共鳴によって特定の周波数の排気音を消音するための共鳴室36に区画している。また、エンドプレート32と仕切板34には、それぞれ挿通孔32a、34aが形成されており、この挿通孔32a、34aには、センターパイプ26の下流側の端部、すなわち、センターパイプ26のうちマフラ27の内部に収納されている部分からなるインレットパイプ部26Aが挿通されている。
このインレットパイプ部26Aは、拡張室35および共鳴室36に収納されるようにしてエンドプレート32および仕切板34に支持されており、下流開口端26bが共鳴室36に開口している。
また、インレットパイプ部26Aには、インレットパイプ部26Aの延在方向(排気ガスの排気方向)および周方向に複数の小孔26aが形成されており、インレットパイプ部26Aの内部と拡張室35とは、小孔26aを介して連通している。
したがって、センターパイプ26のインレットパイプ部26Aを通してマフラ27に導入される排気ガスは、小孔26aを介して拡張室35に導入されるとともに、インレットパイプ部26Aの下流開口端26bから共鳴室36に導入される。
そして、共鳴室36に導入される排気ガスは、ヘルムホルツ共鳴によって特定の周波数の排気音が消音される。
すなわち、インレットパイプ部26Aの小孔26aの最下流側から共鳴室36に突出するインレットパイプ部26Aの突出部分までの長さをL1(m)、インレットパイプ部26Aの断面積をS(m
2)、共鳴室36の容積をV(m
3)、空気中の音速をc(m/s)とするとき、空気中の共鳴周波数fn(Hz)は、ヘルムホルツ共鳴に関する下記の式(4)により求められる。
上記の式(4)から明らかなように、共鳴室36の容積Vを小さくしたり、インレットパイプ部26Aの突出部分の長さL1を短くしたり、インレットパイプ部26Aの断面積Sを大きくすることにより、共鳴周波数を高周波数側にチューニングすることができる。また、共鳴室36の容積Vを大きくしたり、インレットパイプ部26Aの突出部分の長さL1を長くしたり、インレットパイプ部26Aの断面積Sを小さくすることにより、共鳴周波数を低周波数側にチューニングすることができる。
一方、仕切板34とエンドプレート33には、それぞれ挿通孔34b、33aが形成されており、この挿通孔34b、33aには、テールパイプ28の上流側の端部、すなわち、テールパイプ28のうちマフラ27の内部に収納されている部分からなるアウトレットパイプ部28Aが挿通されている。
テールパイプ28は、一端部に、上流開口端28aが形成されており、上流開口端28aから距離Lだけ離隔した他端部に、下流開口端28bが形成されている。また、テールパイプ28の上流開口端28aは、拡張室35に開口し、テールパイプ28の下流開口端28bは、大気に連通している。このため、マフラ27の拡張室35からテールパイプ28の上流開口端28aに導入された排気ガスは、テールパイプ28を通して下流開口端28bから大気に排出される。
図4〜図7に示すように、テールパイプ28の下流開口端28bには、第1の弁体としての第1揺動プレート41および第2の弁体としての第2揺動プレート61が設けられている。
第1揺動プレート41は、プレート正面部41aと、プレート底部41bと、プレート着座部41cと、プレート連結部41dと、プレート軸部41eと、を有している。
プレート正面部41aは、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交方向、すなわち、テールパイプ28の管断面を塞ぐ方向に設けられ、排気流を受けプレート軸部41eを中心に揺動するようになっている。
プレート底部41bは、一端がプレート正面部41aに接続され、プレート軸部41eからの距離を半径とする円弧状に下流側に延在している。
プレート着座部41cは、排気ガスを流通させるプレート開口部41fが形成されている。このプレート開口部41fは、第2揺動プレート61よりも小さく形成され、第2揺動プレート61によって開口および閉口されるようになっている。
プレート連結部41dは、プレート着座部41cが下流側となるように、プレート軸部41eを中心に、プレート正面部41aとプレート着座部41cとが所定の角度となるように連結されている。
プレート軸部41eは、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交して設けられるとともに、プレート着座部41cの上部に固定され、第1揺動プレート41の回転軸となっている。
ここで、テールパイプ28の下流開口端28bの上部には、挿通孔28c、28dが形成されており、この挿通孔28c、28dには、プレート軸部41eが挿通されるようになっている。
また、テールパイプ28の下流開口端28bの外周上部には、突出片43a、43bが形成されており、突出片43a、43bには、それぞれプレート軸部41eが挿通される挿通孔43c、43dが形成されている。
また、プレート軸部41eの両端部には、それぞれスナップリング44a、44bが取り付けられるようになっており、このスナップリング44a、44bによってプレート軸部41eが突出片43a、43bに係止され、プレート軸部41eが挿通孔43c、28c、28d、43dから抜け出ることが防止される。
したがって、第1揺動プレート41は、プレート軸部41eを回転軸として、プレート正面部41a、プレート底部41b、プレート着座部41cおよびプレート連結部41dを一体に回転可能となっている。これにより、第1揺動プレート41は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
また、第1揺動プレート41は、排気ガスの排気流により揺動されていないとき、プレート着座部41cすなわちプレート開口部41fが、テールパイプ28の下流側に、鉛直方向と所定の角度となるように設置されている。
第2揺動プレート61は、上記のように第1揺動プレート41のプレート着座部41cに形成されたプレート開口部41fよりも大きく、上部に挿通孔61aが形成されている。この挿通孔61aには、第1揺動プレート41のプレート軸部41eが、挿通されるようになっている。
また、第2揺動プレート61は、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交方向、すなわち、テールパイプ28の管断面を塞ぐ方向に設けられ、排気流を受け挿通孔61aに挿通されたプレート軸部41eを中心に揺動するようになっている。したがって、第2揺動プレート61は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
また、第2揺動プレート61は、排気ガスの排気流により揺動されていないとき、自重のみで鉛直方向となるように設置されている。ここで、第1揺動プレート41のプレート着座部41cは、プレート軸部41eを中心に下流側に所定の角度となるように設けられているので、プレート開口部41fは、第2揺動プレート61が排気流によって揺動される方向に形成されている。
また、第2揺動プレート61の慣性モーメントは、第1揺動プレート41の慣性モーメントよりも小さく設定されている。すなわち、第2揺動プレート61を揺動させるトルクは、第1揺動プレート41を揺動させるトルクよりも小さくなるように設定されている。
したがって、第2揺動プレート61は、排気流の流量が所定の流量以上となった場合に、第1揺動プレート41のプレート着座部41cに追い付き、第1揺動プレート41に形成されたプレート開口部41fを閉弁する。また、排気流の流量が所定の流量未満である場合には、第1揺動プレート41のプレート開口部41fは、開弁された状態となっている。
このような第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の揺動により、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61と、テールパイプ28の内周断面と、の間には、排気ガスが流通する一定の開口面積の開口部45が画成されるようになっている。すなわち、この開口部45は、第1揺動プレート41が揺動される角度に応じて絞られたテールパイプ28の下流開口端28bの通路断面積に相当するものとなる。
なお、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が所定の角度にある場合において、第1揺動プレート41とテールパイプ28の内周断面との間の、プレート開口部41fを含まず、排気ガスが流通する開口部を開口部45aとし、第1揺動プレート41と第2揺動プレート61との間の、排気ガスが流通する開口部を開口部45bとし、開口部45aおよび開口部45bを合わせて開口部45とする。
さらに、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が小さな排気流の流入によって、第2揺動プレート61により第1揺動プレート41のプレート開口部41fを閉弁させるように、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の慣性モーメントが設定されている。
また、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が大きな排気流が流入された場合、第2揺動プレート61によりプレート開口部41fが閉弁された第1揺動プレート41が揺動されるように、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の慣性モーメントが設定されている。
したがって、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61は、図6に示すように、第2揺動プレート61が第1揺動プレート41のプレート開口部41fを開口している位置(以下、開口部開口位置という)から、図7(a)に示すように、第2揺動プレート61が第1揺動プレート41のプレート着座部41cに追い付き、プレート開口部41fを閉口する位置(以下、着座閉口位置という)を経て、図7(b)に示すように、第2揺動プレート61が第1揺動プレート41と一体となって回転する位置(以下、一体回転位置という)との間で、プレート軸部41eを回転軸として揺動することにより、テールパイプ28の下流開口端28bの通路断面積を可変するようになっている。
次に、作用を説明する。
エンジン21の運転時にエンジン21の各気筒から排気される排気ガスは、排気マニホールド22から触媒コンバータ24に導入され、触媒コンバータ24によってNOxの還元やCO、HCの酸化が行われる。
触媒コンバータ24から排気される排気ガスは、フロントパイプ25およびセンターパイプ26を通してマフラ27に導入される。マフラ27に導入される排気ガスは、インレットパイプ部26Aの小孔26aを介して拡張室35に導入されるとともに、インレットパイプ部26Aの下流開口端26bから共鳴室36に導入され、共鳴室36に導入される排気ガスは、ヘルムホルツ共鳴によって特定の周波数の排気音が消音される。
拡張室35に導入された排気ガスは、アウトレットパイプ部28Aの上流開口端28aを通してテールパイプ28に導入された後、テールパイプ28の下流開口端28bを通して大気に排出される。
また、テールパイプ28の下流開口端28bには、排気ガスの排気流によって揺動されることにより下流開口端28bの開口断面積を変更する第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が設けられており、この第1揺動プレート41および第2揺動プレート61と下流開口端28bの内周部との間には、一定の開口面積の開口部45が画成される。
このため、エンジン21の回転数が排気ガスの排気量が少ないアイドル回転数である領域(以下、アイドル回転域という)では、図8に示すように、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が開口部開口位置となり、テールパイプ28に導入される排気ガス(矢印で示す)は、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が着座閉塞位置にある場合よりも、開口部45が大きく開かれた状態で大気に排出される(図6参照)。
すなわち、第1揺動プレート41と第2揺動プレート61との間の開口部45bが大きく開かれている。これにより、アイドル回転域では、排気ガスが流通する通路が大きく開口するので、背圧の抑制や気流音の発生の抑制を行うことができる。
図9に、エンジン21の回転数と、テールパイプ28の断面積における開口部45の比率、すなわち、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の開度と、の関係を表す第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の開度特性を示す。
図9において、実線で示す開度特性は、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61による開度特性を示し、破線で示す開度特性は、第2揺動プレート61を設けず、第1揺動プレート41のプレート着座部41cにもプレート開口部41fを設けない場合の第1揺動プレート41のみによる開度特性を示す。
アイドル回転域と同様に、エンジン回転数が低く排気ガスの排気量が少ない領域(以下、低回転域という)では、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が開口部開口位置、または、開口部開口位置と着座閉塞位置との間となり、テールパイプ28に導入される排気ガスは、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が着座閉口位置にある場合よりも、開口部45が大きく開かれた状態で大気に排出される(図6参照)。
すなわち、第1揺動プレート41と第2揺動プレート61との間の開口部45bが開かれているとともに、第1揺動プレート41とテールパイプ28の内周断面との間の開口部45aが開き始める。これにより、低回転域においても、排気ガスが流通する通路が開口するので、背圧の抑制や気流音の発生の抑制を行うことができる。
また、アイドル回転域または低回転域から、エンジン回転数が増加されると、エンジン21から排出される排気ガス量が増える。エンジン回転数が増加し、テールパイプ28において気柱共鳴が発生する所定のエンジン回転数(以下、共鳴回転域という)に近づくと、第1揺動プレート41のプレート着座部41cに、第2揺動プレート61が追い付き、プレート着座部41cに形成されたプレート開口部41fを閉口する。これにより、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が着座閉塞位置となり、テールパイプ28に導入される排気ガスは、第1揺動プレート41とテールパイプ28の内周断面との間の開口部45aのみから大気に排出される(図7(a)参照)。
このため、共鳴回転域においては、開口部45が大きく開かれず、排気ガスが流通する通路が第1揺動プレート41および第2揺動プレート61により閉口された閉口部と、開口された開口部45(開口部45aのみ)と、により、それぞれ反射波が発生し、この反射波の干渉によりテールパイプ28で発生する騒音の抑制を行うことができる。なお、この反射波の発生および干渉による騒音の抑制原理については、後述する。
さらに、共鳴回転域からエンジン回転数が増加され、エンジン回転数が高く排気ガスの排気量が多い領域(以下、高回転域という)では、排気流によって第2揺動プレート61がプレート着座部41cに形成されたプレート開口部41fを閉口したまま、第1揺動プレート41が大きく揺動される。これにより、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が一体回転位置となり、テールパイプ28に導入される排気ガスは、開口部45が下流側で着座閉口位置における開口面積よりも大きく開かれた状態で大気に排出される(図7(b)参照)。したがって、高回転域では、共鳴回転域よりも、排気ガスが流通する通路が大きく開口し、背圧の抑制や気流音の発生の抑制を行うことができる。
次に、テールパイプ28の下流開口端28b、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61により発生する反射波および干渉について、説明する。
エンジン21の運転によりテールパイプ28に導入される排気ガスは、エンジン21の回転数に応じて変化する排気脈動をともなって入力される。この排気脈動は、テールパイプ28の入射波となり、この入射波は、エンジン21の回転数が増大するにつれて周波数が大きくなるものである。
エンジン21の運転時の排気脈動による入射波がテールパイプ28に導入されると、この入射波がテールパイプ28の下流開口端28bの開口部45で、いわゆる、開口端反射する。この反射波は、入射波と同じ位相で進行方向が入射波と逆向きとなる。また、この反射波は、再び上流開口端28aでこの反射波と同位相で逆向きに開口端反射を行う。この反射波が今度は入射波となり、下流開口端28bの開口部45で反射波となる。
開口端反射が起こる理由としては、テールパイプ28内を流れる排気ガスの圧力は高く、テールパイプ28の下流開口端28bの外側は圧力が低いため、入射波が勢いよく大気に飛び出すことで下流開口端28b内の排気ガスの圧力が低くなり、この低圧部がテールパイプ28を上流開口端28aに向かって進行し始めるからである。
したがって、反射波は、入射波と同位相で逆向きとなるのである。また、上流開口端28a側で反射波が発生する理由も、下流開口端28bで反射波が発生する理由と同様である。
そして、下流開口端28bの開口部45に向かう入射波と下流開口端28bの開口部45と逆向きの反射波とが干渉することで、テールパイプ28の上流開口端28aおよび下流開口端28bの開口部45が音圧分布の節となるような定在波ができる。
また、この定在波は、テールパイプ28の管長Lと定在波の波長λとが特定の関係にあるとき、振幅が著しく大きくなり、気柱共鳴が生じる。この気柱共鳴は、テールパイプ28の管長Lを半波長とした定在波を基本として、半波長の自然数倍が管長Lとなる波長の定在波が発生して音圧が増大し、騒音となってしまう。
具体的には、図10(a)に気柱共鳴の定在波の音圧分布を示すように、基本振動(一次成分)の気柱共鳴の波長λ1は、テールパイプ28の管長Lの2倍となり、図10(b)に示すように、二次成分の気柱共鳴の波長λ2は、管長Lの1倍となる。また、図10(c)に示すように、三次成分の気柱共鳴の波長λ3は、管長Lの2/3倍となり、それぞれの定在波は、テールパイプ28の上流開口端28aおよび下流開口端28bが音圧分布の節となる。また、本実施の形態の第1揺動プレート41および第2揺動プレート61は、テールパイプ28の下流開口端28bに設けられているため、気柱共鳴の定在波の音圧分布の節に位置している。
さらに、図11に示すように、排気音の音圧レベル(dB)は、エンジン回転数(rpm)が増大するのにともなって一次成分f1、二次成分f2の共鳴周波数(Hz)に対応するエンジン回転数Neでそれぞれ極大となる。
ここで、音速をc(m/s)、テールパイプ28の長さをL(m)、次数をnとしたときのテールパイプ28の気柱共鳴周波数fc(Hz)は、下記の式(5)で表される。
また、エンジン回転数をNe、気筒数をNとしたときのエンジンの排気脈動の周波数feは、下記の式(6)で表される。
音速cを400m/sとし、テールパイプ28の管長L=3.0mとした場合には、上記の式(5)に基づいて、テールパイプ28の気柱共鳴による排気音の一次成分f1は、66.7Hz、二次成分f2は、133.3Hzとなる。
また、本実施の形態では、エンジン21が4気筒であるため、N=4となり、上記の式(6)に基づいて、エンジン回転数が2000rpmのときに排気脈動の周波数feが、66.7Hzとなり、気柱共鳴の一次成分f1と一致し、排気音が増大する。また、エンジン回転数が4000rpmのときに排気脈動の周波数feが、133.3Hzとなり、気柱共鳴の二次成分f2と一致し、排気音が増大する。
特に、100Hz以下の低周波を発生させる低速回転域(エンジン回転数3000rpm以下の回転域)では、車室内にこもり音を生じさせてしまい、運転者に不快感を与えてしまうことになる。
なお、三次成分の気柱共鳴周波数では、エンジン回転数は、6000rpm程度となり、車両が高速走行状態になるため、風切り音等のような高速時に発生する各種の騒音によって気柱共鳴による騒音が運転者に気にならないものとなる。したがって、三次成分およびそれ以上の高次成分については、あまり問題とならない。
そこで、本実施の形態の排気装置20は、アウトレットパイプ部28Aの下流開口端28bに、排気流のみを受けてテールパイプ28内の通路断面積を可変するようにプレート軸部41eを中心軸として揺動する第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を設け、排気流の流量に応じて揺動する第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の位置が気柱共鳴の定在波の音圧分布の節の位置となるように設定することにより、アウトレットパイプ部28Aの下流開口端28bに開口端反射と閉口端反射との2つの反射波を発生させて気柱共鳴によって音圧レベル(dB)が増大してしまうことを抑制するようにしている。
以下、気柱共鳴によって音圧レベルの増大を抑制することができる理由について、説明する。
開口部45の開口面積をS1、下流開口端28bの開口面積をS2とし、媒質の音響インピーダンスをそれぞれZ1、Z2とすると、音の反射率Rpは、下記の式(7)で表される。
ここで、音響インピーダンスは、媒質の密度と音速の積であり、この場合には、媒質は、排気ガスであるため、Z1=Z2となり、音の反射率Rpは、下記の式(8)で表される。
第1揺動プレート41および第2揺動プレート61による閉口端反射波と、開口部45による開口端反射波と、が同一の強さである場合に、干渉により双方の反射波が最も抑制される。この第1揺動プレート41および第2揺動プレート61による閉口端反射波と開口部45による開口端反射波とを同一の強さにするには、反射率Rpを0.5にすればよいため、上記の式(8)からS1=(1/3)・S2となる。したがって、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61が揺動されることにより、下流開口端28bを閉塞した状態の開口部45の開口面積が、下流開口端28bの開口面積の1/3となったときに、音圧レベルが最も抑制されることとなる。
以下、エンジン21の運転時の排気脈動による入射波Gがテールパイプ28内に入射し、この入射波Gの波長がテールパイプ28の管長Lを半波長とする入射波Gである場合について説明する。
図12に示すように、入射波Gは、テールパイプ28の下流開口端28bにおいて、開口部45により、透過波G1が大気に透過されるとともに、下流開口端28bから上流開口端28aに向かって反射波R1が反射される。また、入射波Gは、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61により、下流開口端28bから上流開口端28aに向かって反射波R2が反射される。
この反射波R1は、入射波Gに対して同位相の開口端反射波であり、反射波R2は、入射波Gに対して180度位相が異なる閉口端反射波である。
なお、図12において、反射波R1は、入射波Gに対して同位相であるため、入射波Gと反射波R1は重なっているが、説明の便宜上、反射波R1を入射波Gに対して下方にずらしている。
このように、反射波R1は、入射波Gと同位相であるため、入射波Gの周波数がテールパイプ28の気柱共鳴周波数となると、入射波Gと反射波R1との干渉により互いに強め合い、排気音の音圧レベルが増大される。
これに対して、反射波R2は、反射波R1および入射波Gに対して位相が180度異なるため、互いに打ち消し合い、排気音の音圧レベルが低減される。
例えば、図11に示すように、排気脈動による入射波Gの周波数が、テールパイプ28の気柱共鳴周波数の一次成分f1となると、開口端反射波である反射波R1による干渉だけでは、破線で示すように、音圧レベルが増大して(極大となる)しまうが、閉口端反射波である反射波R2による干渉があることにより、実線で示すように、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制して、排気音の音圧レベルを大幅に低減することができる。
また、同様に、排気脈動による入射波Gの周波数が、テールパイプ28の気柱共鳴周波数の二次成分f2となった場合にも、開口端反射波である反射波R1の干渉による音圧レベルの増大を、閉口端反射波である反射波R2の干渉によって抑制して、排気音の音圧レベルを大幅に低減することができる。
このように本実施の形態では、テールパイプ28の下流開口端28bの一部を閉口し、排気流によって揺動されることにより通路の開口断面積を変更する第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を設けることにより、気柱共鳴の発生原因となる開口端反射波と位相が180度異なる閉口端反射波を発生させ、この閉口端反射波と上記開口端反射波とを干渉させることができ、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
この結果、従来のようにコントロールユニットおよび電磁アクチュエータによって第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を制御したり、マフラ27(従来のメインマフラに相当)を大型化したり、テールパイプ28にサブマフラを介装することを不要にできるため、排気装置20の重量の増大を防止すること、排気装置20の製造コストの増大を防止すること、および、複雑な制御の追加を防止した簡素な構成で、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
また、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61は、排気ガスの排気流によって揺動されることにより、通路の開口断面積を変更し、アイドル回転数域や高回転数域では開口部45を大きく開口するので、排気ガスの背圧の増加や気流音の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態では、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61をテールパイプ28の下流開口端28bのみに設けているが、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61をテールパイプ28の上流開口端28aのみに設けてもよい。また、テールパイプ28の下流開口端28bの第1揺動プレート41および第2揺動プレート61に加えて、テールパイプ28の上流開口端28aに第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を設けてもよい。
このように第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を、テールパイプ28の上流開口端28aのみに設けた場合およびテールパイプ28の上流開口端28aと下流開口端28bの両方に設けた場合であっても、テールパイプ28の上流開口端28aから反射される反射波を、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61によって発生する開口部による反射波R1と第1揺動プレート41および第2揺動プレート61による反射波R2との2つの反射波に分配することができ、気柱共鳴によって音圧が増大してしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態では、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61をテールパイプ28の下流開口端28bに設けているが、第1揺動プレート41および第2揺動プレート61は、着座閉塞位置にあるときに気柱共鳴の定在波の音圧分布の節に位置すればよいので、例えば、図10の音圧分布の真ん中の節に位置するように、すなわち、テールパイプ28の中央部に第1揺動プレート41および第2揺動プレート61を設けてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における内燃機関の排気装置の構成について、図13および図14を参照して、説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態の内燃機関の排気装置と同様の構成には、同一の符号を付して、説明を省略する。
図13および図14に示すように、本実施の形態の内燃機関の排気装置は、テールパイプ28の外部、テールパイプ28の下流開口端28bの近傍に、プレート軸部41eと一体回転し、第1揺動プレート41の錘となる可動ウェイト46が設けられている。
また、可動ウェイト46の上部の内部には、挿通孔46aが形成されており、この挿通孔46aには、第1揺動プレート41とともに回転するプレート軸部41eが挿通されるようになっている。
また、可動ウェイト46の上部で、テールパイプ28と反対側には、突出片43eが形成されており、突出片43eには、プレート軸部41eが挿通される挿通孔43fが形成されている。可動ウェイト46の上部で、テールパイプ28との間には、突出片43gが形成されており、突出片43gには、プレート軸部41eが挿通される挿通孔43hが形成されている。
さらに、プレート軸部41eの両端部には、それぞれスナップリング44a、44cが取り付けられるようになっており、このスナップリング44a、44cによってプレート軸部41eが突出片43a、43eに係止され、プレート軸部41eが挿通孔43c、28c、28d、43h、46a、43fから抜け出ることが防止される。
したがって、第1揺動プレート41は、可動ウェイト46とつながっているので、慣性モーメントが大きくなり、回転しづらくなる。すなわち、第1揺動プレート41は、可動ウェイト46を設けていない場合よりも、このように可動ウェイト46を設けた場合の方が、大きなトルクが与えられないと回転しないようになる。
このように、本実施の形態の内燃機関の排気装置は、第1揺動プレート41に可動ウェイト46を設けたので、第1揺動プレート41の回転モーメントを容易に大きくすることができ、第1揺動プレート41と第2揺動プレート61との回転に必要なトルクの差を簡単に付け、第1揺動プレート41に比べ第2揺動プレート61の回転を早くでき、アイドル回転数域および低回転数域における第1揺動プレート41と第2揺動プレート61との開きを大きくして、背圧の増加を防止するとともに、気流音の発生を抑制することができる。
また、本実施の形態の可動ウェイト46は、テールパイプ28の外部に設けたので、可動ウェイト46によってテールパイプ28内の排気が妨げられることなく、また、可動ウェイト46の取り付けも容易である。さらに、可動ウェイト46をテールパイプ28の外部に設けたことにより、可動ウェイト46の大きさに制約がかからずに、慣性モーメントを容易に大きくすることができる。例えば、可動ウェイト46の端部までの距離を長くし、端部側を重くし、端部側に重量が偏るようにすれば、可動ウェイト46の全体の重量は軽くても、慣性モーメントを大きくすることができる。この場合、可動ウェイト46がテールパイプ28の外部にあれば、端部までの距離に制約がかからずに、長くすることができる。
さらに、本実施の形態においては、可動ウェイト46によって、第1揺動プレート41の回転に負荷を与えているが、これに限らず、弾性体、例えば、ばね等によって第1揺動プレート41の回転に負荷を与えるようにしてもよい。この場合も上述した内燃機関の排気装置と同様の効果が得られる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における内燃機関の排気装置の構成について、図15から図18を参照して、説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態の内燃機関の排気装置と同様の構成には、同一の符号を付して、説明を省略する。
図15から図17に示すように、本実施の形態の内燃機関の排気装置は、第1の実施の形態における内燃機関の排気装置における第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の代わりに、第1の弁体としての第1揺動プレート52および第2の弁体としての第2揺動プレート62を備えている。なお、本実施の形態における内燃機関の排気装置は、第2揺動プレート62の回転軸が、第1揺動プレート52の回転軸と、異なる軸線に設けられている。
第1揺動プレート52は、プレート正面部52aと、プレート底部52bと、プレート着座部52cと、プレート連結部52dと、プレート軸部52eと、プレート正面上部52gと、第2プレート軸部52hと、を有している。
プレート正面部52a、プレート底部52bおよびプレート連結部52dは、第1の実施の形態におけるプレート正面部41a、プレート底部41bおよびプレート連結部41dと同様のものである。
プレート着座部52cは、第1の実施の形態のプレート着座部41cと同様に、排気ガスを流通させるプレート開口部52fが形成されている。このプレート開口部52fは、第2揺動プレート62よりも小さく形成され、第2揺動プレート62によって開口および閉口されるようになっている。
プレート軸部52eは、第1の実施の形態のプレート軸部41eと同様に、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交して設けられるとともに、第1揺動プレート52の回転軸となっている。
プレート正面上部52gは、上部がプレート軸部52eに固定され、下部がプレート着座部52cが下流側となるように、プレート正面上部52gとプレート着座部52cとが所定の角度となるように連結されている。また、プレート正面上部52gの下部には、第2プレート軸部52hが設けられている。
第1の実施の形態と同様に、テールパイプ28の下流開口端28bの上部には、挿通孔28c、28dが形成されており、この挿通孔28c、28dには、プレート軸部52eが挿通されるようになっている。
また、テールパイプ28の下流開口端28bの外周上部には、突出片43a、43bが形成されており、突出片43a、43bには、それぞれプレート軸部52eが挿通される挿通孔43c、43dが形成されている。
また、プレート軸部52eの両端部には、それぞれスナップリング44a、44bが取り付けられるようになっており、このスナップリング44a、44bによってプレート軸部52eが突出片43a、43bに係止され、プレート軸部52eが挿通孔43c、28c、28d、43dから抜け出ることが防止される。
したがって、第1揺動プレート52は、プレート軸部52eを回転軸として、プレート正面部52a、プレート底部52b、プレート着座部52c、プレート連結部52dおよびプレート正面上部52gを一体に回転可能となっている。これにより、第1揺動プレート52は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
また、第1揺動プレート52は、排気ガスの排気流により揺動されていないとき、プレート着座部52cすなわちプレート開口部52fが、テールパイプ28の下流側に、鉛直方向と所定の角度となるように設置されている。
第2揺動プレート62は、上記のように第1揺動プレート52のプレート着座部52cに形成されたプレート開口部52fよりも大きく、上部に挿通孔62aが形成されている。この挿通孔62aには、第1揺動プレート52の第2プレート軸部52hが、挿通されるようになっている。
また、第2揺動プレート62は、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交方向、すなわち、テールパイプ28の管断面を塞ぐ方向に設けられ、排気流を受け挿通孔62aに挿通された第2プレート軸部52hを中心に揺動するようになっている。したがって、第2揺動プレート62は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
また、第2揺動プレート62は、排気ガスの排気流により揺動されていないとき、自重のみで鉛直方向となるように設置されている。ここで、第1揺動プレート52のプレート着座部52cは、プレート正面上部52gと下流側に所定の角度となるように設けられているので、プレート開口部52fは、第2揺動プレート62が排気流によって揺動される方向に形成されている。
また、第2揺動プレート62の慣性モーメントは、第1揺動プレート52の慣性モーメントよりも小さく設定されている。すなわち、第2揺動プレート62を揺動させるトルクは、第1揺動プレート52を揺動させるトルクよりも小さくなるように設定されている。
したがって、第2揺動プレート62は、排気流の流量が所定の流量以上となった場合に、第1揺動プレート52のプレート着座部52cに追い付き、第1揺動プレート52に形成されたプレート開口部52fを閉弁する。また、排気流の流量が所定の流量未満である場合には、第1揺動プレート52のプレート開口部52fは、開弁された状態となっている。
さらに、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が小さな排気流の流入によって、第2揺動プレート62により第1揺動プレート52のプレート開口部52fを閉弁させるように、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62の慣性モーメントが設定されている。
また、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が大きな排気流が流入された場合、第2揺動プレート62によりプレート開口部52fが閉弁された第1揺動プレート52が揺動されるように、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62の慣性モーメントが設定されている。
したがって、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62は、図17に示すように、第2揺動プレート62が第1揺動プレート52のプレート開口部52fを開口している開口部開口位置から、図18に示すように、第2揺動プレート62が第1揺動プレート52のプレート着座部52cに追い付き、プレート開口部52fを閉口する着座閉口位置を経て、第2揺動プレート62が第1揺動プレート52と一体となって回転する一体回転位置との間で、プレート軸部52eおよび第2プレート軸部52hを回転軸として揺動することにより、テールパイプ28の下流開口端28bの通路断面積を可変するようになっている。
このように本実施の形態では、テールパイプ28の下流開口端28bの一部を閉口し、排気流によって揺動されることにより通路の開口断面積を変更する第1揺動プレート52および第2揺動プレート62を設けることにより、気柱共鳴の発生原因となる開口端反射波と位相が180度異なる閉口端反射波を発生させ、この閉口端反射波と上記開口端反射波とを干渉させることができ、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
この結果、従来のようにコントロールユニットおよび電磁アクチュエータによって第1揺動プレート52および第2揺動プレート62を制御したり、マフラ27(従来のメインマフラに相当)を大型化したり、テールパイプ28にサブマフラを介装することを不要にできるため、排気装置の重量の増大を防止すること、排気装置の製造コストの増大を防止すること、および、複雑な制御の追加を防止した簡素な構成で、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
また、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62は、排気ガスの排気流によって揺動されることにより、通路の開口断面積を変更し、アイドル回転数域や高回転数域では開口部を大きく開口するので、排気ガスの背圧の増加や気流音の発生を抑制することができる。
また、図19に示すように、上記第1揺動プレート52および第2揺動プレート62の代わりに、第1の弁体としての第1揺動プレート53および第2の弁体としての第2揺動プレート63を備えるようにすることもできる。
すなわち、第1揺動プレート53は、プレート正面部53aと、プレート底部53bと、プレート着座部53cと、プレート連結部53dと、プレート軸部53eと、プレート正面上部53gと、第2プレート軸部53hと、を有している。
プレート正面部53a、プレート底部53bおよびプレート連結部53dは、上記実施の形態におけるプレート正面部52a、プレート底部52bおよびプレート連結部52dと同様のものである。
プレート着座部53cは、上記実施の形態のプレート着座部52cと同様に、排気ガスを流通させるプレート開口部53fが形成されている。このプレート開口部53fは、第2揺動プレート63よりも小さく形成され、第2揺動プレート63によって開口および閉口されるようになっている。また、プレート着座部53cに形成されたプレート開口部53fの上部には、第2プレート軸部53hが設けられている。
プレート軸部53eは、上記実施の形態のプレート軸部52eと同様に、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交して設けられるとともに、第1揺動プレート52の回転軸となっている。
プレート正面上部53gは、上部がプレート軸部53eに固定され、下部がプレート着座部53cが下流側となるように、プレート正面上部53gとプレート着座部53cとが所定の角度となるように連結されている。
第2揺動プレート63は、上記のように第1揺動プレート53のプレート着座部53cに形成されたプレート開口部53fよりも大きく、上部に挿通孔63aが形成されている。この挿通孔63aには、第1揺動プレート53の第2プレート軸部53hが、挿通されるようになっている。
また、第2揺動プレート63は、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交方向、すなわち、テールパイプ28の管断面を塞ぐ方向に設けられ、排気流を受け挿通孔63aに挿通された第2プレート軸部53hを中心に揺動するようになっている。したがって、第2揺動プレート63は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
さらに、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が小さな排気流の流入によって、第2揺動プレート62により第1揺動プレート52のプレート開口部52fを閉弁させるように、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62の慣性モーメントが設定されている。
また、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が大きな排気流が流入された場合、第2揺動プレート62によりプレート開口部52fが閉弁された第1揺動プレート52が揺動されるように、第1揺動プレート52および第2揺動プレート62の慣性モーメントが設定されている。
したがって、第2プレート軸部53hをプレート着座部53cに設けた場合においても、第1揺動プレート53および第2揺動プレート63が、テールパイプ28の下流開口端28bの一部を閉口し、排気流によって揺動されることにより、排気装置の重量の増大を防止すること、排気装置の製造コストの増大を防止すること、および、複雑な制御の追加を防止した簡素な構成で、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができ、また、アイドル回転数域や高回転数域では開口部を大きく開口するので、排気ガスの背圧の増加や気流音の発生を抑制することができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態における内燃機関の排気装置の構成について、図20から図23を参照して、説明する。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態の内燃機関の排気装置と同様の構成には、同一の符号を付して、説明を省略する。
図20から図22に示すように、本実施の形態の内燃機関の排気装置は、第1の実施の形態における内燃機関の排気装置における第1揺動プレート41および第2揺動プレート61の代わりに、第1の弁体としての第1揺動プレート54および第2の弁体としての第2揺動プレート64を備えている。なお、本実施の形態における内燃機関の排気装置は、第1揺動プレート54に形成されたプレート開口部54fが、第2揺動プレート64の上流側に設けられている。
第1揺動プレート54は、プレート正面部54aと、プレート底部54bと、プレート着座部54cと、プレート連結部54dと、プレート軸部54eと、プレート後部54gと、を有している。
プレート正面部54a、プレート底部54bおよびプレート連結部54dは、第1の実施の形態におけるプレート正面部41a、プレート底部41bおよびプレート連結部41dと同様のものであり、排気ガスの排気流を受けていない状態では、プレート後部54gの重さにより、鉛直方向よりも上流側に傾くように設置されている。
プレート着座部54cは、第1の実施の形態のプレート着座部41cと同様に、排気ガスを流通させるプレート開口部54fが形成されている。このプレート開口部54fは、第2揺動プレート64よりも小さく形成され、第2揺動プレート64によって下流側で開口および閉口されるようになっている。
プレート軸部54eは、第1の実施の形態のプレート軸部41eと同様に、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交して設けられるとともに、プレート着座部54cの上部に固定され、第1揺動プレート54の回転軸となっている。
プレート後部54gは、下部にプレート質量体54hを有し、上部がプレート軸部54eに固定され、プレート着座部54cが上流側となるように、プレート着座部54cと所定の角度となるように連結されている。また、プレート質量体54hは、プレート正面部54a、プレート底部54b、プレート着座部54cおよびプレート連結部54dと、プレート後部54gとのバランスを取るためのものであり、排気ガスの排気流を受けていない状態では、プレート正面部54a、プレート底部54b、プレート着座部54cおよびプレート連結部54dが、鉛直方向よりも上流側に傾くように設けられている。
第2揺動プレート64は、上記のように第1揺動プレート54のプレート着座部54cに形成されたプレート開口部54fよりも大きく、上部に挿通孔64aが形成されている。この挿通孔64aには、第1揺動プレート54のプレート軸部54eが、挿通されるようになっている。
また、第2揺動プレート64は、テールパイプ28の延在方向中心軸線に対して直交方向、すなわち、テールパイプ28の管断面を塞ぐ方向に設けられ、排気流を受け挿通孔64aに挿通されたプレート軸部54eを中心に揺動するようになっている。したがって、第2揺動プレート64は、テールパイプ28内の通路の一部を閉口し、排気ガスの排気流によって揺動されることによりテールパイプ28の開口断面積を変更するようになっている。
また、第2揺動プレート64は、排気ガスの排気流により揺動されていないとき、鉛直方向となるように設置されている。ここで、第1揺動プレート54のプレート着座部54cは、鉛直方向に対して所定の角度上流側に傾いて設けられているので、プレート開口部54fと第2揺動プレート64とも所定の角度で設けられる。
また、第2揺動プレート64の慣性モーメントは、第1揺動プレート54の慣性モーメントよりも大きく設定されている。すなわち、第2揺動プレート64を揺動させるトルクは、第1揺動プレート54を揺動させるトルクよりも大きくなるように設定されている。
したがって、第2揺動プレート64は、排気流の流量が所定の流量以上となった場合に、第1揺動プレート54のプレート着座部54cに追い付かれ、第1揺動プレート54に形成されたプレート開口部54fを閉弁する。また、排気流の流量が所定の流量未満である場合には、第1揺動プレート54のプレート開口部54fは、開弁された状態となっている。
さらに、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が小さな排気流の流入によって、第2揺動プレート64により第1揺動プレート54のプレート開口部54fを閉弁させるように、第1揺動プレート54および第2揺動プレート64の慣性モーメントが設定されている。
また、テールパイプ28内において気柱共鳴が生じる排気流の流量よりも流量が大きな排気流が流入された場合、第2揺動プレート64によりプレート開口部54fが閉弁された第1揺動プレート54が揺動されるように、第1揺動プレート54および第2揺動プレート64の慣性モーメントが設定されている。
したがって、第1揺動プレート54および第2揺動プレート64は、図22に示すように、第2揺動プレート64が第1揺動プレート54のプレート開口部54fを開口している開口部開口位置から、図23に示すように、第2揺動プレート64が第1揺動プレート54のプレート着座部54cに追い付かれ、プレート開口部54fを閉口する着座閉口位置を経て、第2揺動プレート64が第1揺動プレート54と一体となって回転する一体回転位置との間で、プレート軸部54eを回転軸として揺動することにより、テールパイプ28の下流開口端28bの通路断面積を可変するようになっている。
このように本実施の形態では、テールパイプ28の下流開口端28bの一部を閉口し、排気流によって揺動されることにより通路の開口断面積を変更する第1揺動プレート54および第2揺動プレート64を設けることにより、気柱共鳴の発生原因となる開口端反射波と位相が180度異なる閉口端反射波を発生させ、この閉口端反射波と上記開口端反射波とを干渉させることができ、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
この結果、従来のようにコントロールユニットおよび電磁アクチュエータによって第1揺動プレート54および第2揺動プレート64を制御したり、マフラ27(従来のメインマフラに相当)を大型化したり、テールパイプ28にサブマフラを介装することを不要にできるため、排気装置の重量の増大を防止すること、排気装置の製造コストの増大を防止すること、および、複雑な制御の追加を防止した簡素な構成で、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制することができる。
また、第1揺動プレート54および第2揺動プレート64は、排気ガスの排気流によって揺動されることにより、通路の開口断面積を変更し、アイドル回転数域や高回転数域では開口部を大きく開口するので、排気ガスの背圧の増加や気流音の発生を抑制することができる。
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の排気装置は、重量の増大や製造コストの増大を低減しつつ、複雑な制御が不要で簡素な構成で、気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制するとともに、排気ガスの背圧の増加や気流音の発生を抑制することができるという効果を有し、排気ガスの排気方向の最下流に設けられたテールパイプの気柱共鳴による音圧レベルの増大を抑制するようにした内燃機関の排気装置等として有用である。