(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るマフラ10について、図面を参照して説明する。
まず、構成について説明する。
本発明の実施形態に係るマフラ10は、図示しない車両に搭載された内燃機関に適用されており、内燃機関から排出される排気ガスの排気音を低減するよう構成されている。
この内燃機関は、ガソリン内燃機関、ディーゼル内燃機関などの内燃機関の種類に制限はなく、また、適宜選択された単気筒または複数気筒を有するV型もしくは直列の内燃機関であってもよい。
マフラ10は、図1に示すように、マフラ本体11と、内燃機関から排出される排気ガスを導入する導入管としてのインレットパイプ12と、マフラ本体11内の排気ガスをマフラ本体11の外方に排出する排出管としてのアウトレットパイプ13と、インレットパイプ12に設けられた第1連通管14と、アウトレットパイプ13に設けられた第2連通管15とを含んで構成されている。
このアウトレットパイプ13には、テールパイプ16が連続的に連結されており、このテールパイプ16の開口16aから排気ガスが大気に放出されるようになっている。このマフラ10においては、各構成要素が高温の排気ガスに耐えうる耐熱性および耐食性と、高い機械的強度を有する材料、例えば、ステンレス(SUS)などの金属材料で形成されており、内部の排気ガスが外部に漏出しないようになっている。
マフラ本体11は、図2および図3に示すように、筒状部材としてのアウタシェル21と、このアウタシェル21の両端を閉塞する区画板としてのエンドプレート22、23と、このエンドプレート22、23の間に配置された区画板としてのセパレータ24、25とを含んで構成されている。マフラ本体11の内部には、排気ガスを収容する第1区画室26、第2区画室27および第3区画室28が画成されている。
アウタシェル21は、図3および図4に示すように、略楕円形の断面を有する筒部21aと、エンドプレート22と高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の幅で半径方向の外側に折り返された折り返し端部21bと、エンドプレート23と高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の幅で半径方向の外側に折り返された折り返し端部21cとを有している。
エンドプレート22は、図3および図5に示すように、アウタシェル21の折り返し端部21bと高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の幅で半径方向の外側に折り返された折り返し縁部22aを有している。また、エンドプレート22は、折り返し縁部22a側に突出した環状突出部22bが形成されており、この環状突出部22bに形成された貫通孔22cには、インレットパイプ12が挿入されるようになっている。
エンドプレート23も、エンドプレート22と同様、図3および図6に示すように、アウタシェル21の折り返し端部21cと高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の幅で半径方向の外側に折り返された折り返し縁部23aを有している。また、エンドプレート23は、折り返し縁部23a側に突出した環状突出部23bが形成されており、この環状突出部23bに形成された貫通孔23cには、アウトレットパイプ13が挿入されるようになっている。
セパレータ24は、図3および図7に示すように、アウタシェル21の内周面21dと高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の高さで軸線方向に折り曲げられた折り曲げ部24aを有している。また、セパレータ24は、折り曲げ部24a側に突出した環状突出部24b、24cが形成されており、この環状突出部24bに形成された貫通孔24dには、インレットパイプ12が挿入されるようになっている。また、環状突出部24cに形成された貫通孔24eには、第2連通管15が挿入されるようになっている。このセパレータ24は、図3に示すように、エンドプレート22とエンドプレート23の間に配置されている。
セパレータ25も、セパレータ24と同様、図3および図8に示すように、アウタシェル21の内周面21dと高い剛性を有して嵌合するよう、全周に亘って一定の高さで軸線方向に折り曲げられた折り曲げ部25aを有している。また、セパレータ25は、折り曲げ部25a側に突出した環状突出部25b、25cが形成されており、この環状突出部25bに形成された貫通孔25dには、インレットパイプ12が挿入されるようになっている。また、環状突出部25cに形成された貫通孔25eには、アウトレットパイプ13が挿入されるようになっている。
インレットパイプ12は、図1および図3に示すように、円筒状に形成されており、内部に、内燃機関から排出される排気ガスを第1区画室26、第2区画室27および第3区画室28に導入するよう両端が開口した導入通路12aを有している。一端部の開口は、マフラ本体11の外方で、排気ガスの通路と連通している。
また、インレットパイプ12には、第1区画室26で半径方向に貫通する貫通孔12bが形成されるとともに、第3区画室28と導入通路12aとを連通する複数の連通孔12cが形成されている。
このインレットパイプ12は、エンドプレート22の貫通孔22c、セパレータ24の貫通孔24dおよびセパレータ25の貫通孔25dに挿入され、エンドプレート22、セパレータ24およびセパレータ25により支持され固定されている。
また、インレットパイプ12は、図3に示すように、貫通孔12bの中心と、複数の連通孔12cの内、貫通孔12bに近接した連通孔12cの中心との間の距離は、L1で形成され、貫通孔12bに近接した連通孔12cの中心と開口端との間の距離は、L2で形成されている。
アウトレットパイプ13は、図1、図3、図9および図10に示すように、円筒状に形成された筒部31と、この筒部31の上流側の開口端部19を開閉する開閉バルブ32と、を含んで構成されている。この筒部31は、内部に第3区画室28で開口するとともに、マフラ10の外方で開口する排出通路31aを有している。この筒部31の第3区画室28での開口端と、マフラ10の外方での筒部31の開口端との間の距離は、L5になるよう形成されている。
この筒部31には、図10に示すように、上流側の開口端部19から中心までの間の距離がL6となるよう、貫通孔31bが形成されており、貫通孔31bには、第2連通管15が挿入されるようになっている。また、筒部31の上流側の開口端部19は、図1および図9に示すように、その断面が四角形になるよう、例えば、絞り加工により開閉バルブ32を収容するバルブ収容部31cが形成されている。
このバルブ収容部31cの両側面部の下部、すなわち貫通孔31bに近接する側に、互いに軸線が一致する貫通孔31eがそれぞれ対向するよう形成されている。また、一方側の貫通孔31eに隣接するとともに並行して、貫通孔31eよりも小径の貫通孔31fが形成されている。
開閉バルブ32は、図9および図10に示すように、弁体33と、シャフト34と、付勢部材としてのコイルスプリング35と、ストッパピン36と、ストッパ37と、固定リング38とを含んで構成されている。開閉バルブ32は、コイルスプリング35の付勢力(N)により、第2連通管15の開口を閉止するようになっている。図9および図10は、第2連通管15からアウトレットパイプ13の排出通路31aに流入する排気ガスの圧力(Pa)で開閉バルブ32が開いた状態を示している。
この開閉バルブ32においては、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるとき、第2連通管15内の排気ガスの圧力(Pa)、すなわち背圧(Pa)が高まり、この背圧(Pa)が所定値に到達すると弁体33が回動して第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が開状態となり、排出通路31aの開口端部19が閉状態となるよう構成されている。
他方、内燃機関の回転数(rpm)が高回転領域にあるとき、第2連通管15内の排気ガスの圧力(Pa)、すなわち背圧(Pa)が低下するとともに、第3区画室28内の排気ガスの流速(m/s)が高まり、排気ガスの流動圧(Pa)所定値に到達すると、弁体33が押され排出通路31aの開口端部19が開状態となり、第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が閉状態となるよう構成されている。
弁体33は、例えば、板金のプレス加工により形成され、第2連通管15の開口を閉止する閉止部33aと、シャフト34に、溶接などの接合手段により接合されるよう湾曲した湾曲部33bとを有している。この弁体33は、完全に開状態のとき、図9に示すように、アウトレットパイプ13の排出通路31aが閉状態となるよう構成されており、この閉状態のとき、筒部31の内壁面31dと弁体33の外周側面との間に僅かの隙間ができるようその外形が形成されている。
シャフト34は、円柱状に形成され、各端部が貫通孔31eに挿入され回動可能に筒部31に支持されている。シャフト34の一方端部には、コイルスプリング35の一端部を係止させるストッパピン36が連結されており、コイルスプリング35を変形可能に支持している。シャフト34の他方端部には、固定リング38が装着されており、シャフト34が貫通孔31eから抜け出ないようになっている。
コイルスプリング35は、巻回された線材で形成され、所定のバネ定数(N/m)を有しており、第2連通管15の開口を所定の押圧力(N)で閉止するようになっている。一方端部は、バルブ収容部31cの貫通孔31fに挿入され、他方端部は、ストッパピン36に係止されている。
ストッパ37は、Lの字状に形成され、バルブ収容部31cの上部、すなわちシャフト34から離隔した側の内壁に固定され、弁体33が完全に開状態のとき、それ以上開かないよう規制している。
第1連通管14は、図1および図3に示すように、円筒状に形成されており、内部に内燃機関から排出される排気ガスを第1区画室26内に流入させるよう、インレットパイプ12の貫通孔12bと連通するとともに、第1区画室26内で開口する第1連通路14aを有している。この第1連通管14は、インレットパイプ12に連結されており、貫通孔12bと第1連通路14aとの連通部分から開口までの距離がL3で形成されている。
この第1連通路14aの断面積S1(mm2)は、インレットパイプ12の導入通路12aの断面積S2(mm2)よりも小さく形成されており、第1連通路14a内の排気ガスの背圧(Pa)が高くなるよう、いわゆる絞り孔として作用するようになっている。また、第1連通路14a、導入通路12aの形状は、円形以外の任意の形状で形成してもよい。例えば、楕円形、方形、多角形で形成してもよい。
第2連通管15は、図3および図10に示すように、略Lの字状に折り曲げられた円筒で形成されており、内部に第1区画室26内の排気ガスをアウトレットパイプ13の排出通路31aに流入させるよう第1区画室26内で開口するとともに、排出通路31aと連通する、第2連通路15aを有している。この第2連通管15の一方端部は、アウトレットパイプ13の貫通孔31bに挿入され、アウトレットパイプ13の内壁面31dから僅かに突出してアウトレットパイプ13に固定されている。この第2連通管15の第1区画室26内での開口端と、マフラ10の外方での筒部31の開口端との間の距離は、L4になるよう形成されている。
この第2連通路15aの断面積S3(mm2)は、アウトレットパイプ13の排出通路31aの断面積S4(mm2)よりも小さく形成されているが、同等またはそれ以上の大きさで形成されていてもよい。また、第2連通路15a、排出通路31aの形状は、円形以外の任意の形状で形成してもよい。例えば、楕円形、方形、多角形で形成してもよい。
なお、第2連通管15は、略Lの字状に折り曲げられた円筒で形成されているが、他の形状で形成されるようにしてもよい。例えば、第2連通管15の直線部分をさらに湾曲させ、Uの字状にして、その全長が長くなるようにしてもよい。
テールパイプ16は、円筒状に形成されており、内部にアウトレットパイプ13の排出通路31aと連通し、下流側の端部で排気ガスを大気に放出する開口16aが形成された排出通路16bを有している。このテールパイプ16は、図3に示すように、アウトレットパイプ13の排出通路31aとの連通部分から開口16aまでの距離がLtになるよう形成されている。
この構成により、第1区画室26は、エンドプレート22の側面22dと、アウタシェル21の内周面21dと、セパレータ24の側面24fとにより画成されており、いわゆる拡張室または共鳴室として機能するようになっている。
また、第2区画室27は、エンドプレート23の側面23dと、アウタシェル21の内周面21dと、セパレータ25の側面25gとにより画成されており、いわゆる共鳴室として機能するようになっている。
また、第3区画室28は、セパレータ24の側面24gと、アウタシェル21の内周面21dと、セパレータ25の側面25fとにより画成されており、いわゆる拡張室または共鳴室として機能するようになっている。
ここで、拡張室とは、インレットパイプ12内の導入通路12aの断面積(mm2)に対して比較的大きな断面積(mm2)を有し、所定の容積(mm3)を備えた空洞からなる。この拡張室においては、導入通路12a内を流通する排気ガスが拡張室に流入する際、その体積が急激に拡張され、内燃機関の排気脈動からなる圧力変動が弱められて、排気騒音の音圧レベル(dB)が広い周波数帯域に亘って低減されるといういわゆる拡張効果が得られる。
また、共鳴室とは、いわゆるヘルムホルツの共鳴原理を利用して特定周波数(Hz)の排気音を共鳴させるよう、所定の容積(mm3)を備えた空洞からなる。この共鳴室は、図11に模式的に示すように、空気流通路tから分岐した分岐通路bを有するいわゆる首の部分からなる共鳴パイプpに連結され、この分岐通路bと連通して共鳴部材内部に形成された空洞hで、特定周波数の排気音がこの空洞内で共鳴するようになっている。
この特定周波数をf(Hz)とし、共鳴パイプpの断面積をS(mm
2)、共鳴パイプpの長さ、すなわち分岐通路bの空気流通路tからの分岐部分から、分岐通路bと空洞hとの連通部分までの距離をL(mm)とし、空洞hの容積をV(mm
3)とし、cを空気中の音速(m/s)すると、特定周波数fは次式(1)で表されることが知られている。
この場合、分岐通路bから空洞hに伝播する排気音の周波数(Hz)が、fと一致すると、排気音は、空洞hで共鳴することになる。そして、空洞hで共鳴が起きると、共鳴パイプpの分岐通路b内で空気が激しく振動し、共鳴パイプpの内壁との摩擦などにより振動エネルギが熱エネルギに変換されて減衰することになる。その結果、共鳴した排気騒音が低減される。
このように、排気騒音となる音圧レベル(dB)の高い特定周波数fで共鳴するよう共鳴パイプpの断面積Sおよび長さL、空洞hの容積Vを設計すれば、その1次成分の周波数だけでなく、2次成分や3次成分などの整数倍の成分の周波数の騒音も低減することができる。例えば、内燃機関の回転数(rpm)によって発生する特定周波数fが200Hzであると、fが200Hzになるよう前述のS、LおよびVが設計されていれば、200Hzの排気音だけでなく、2次成分の400Hz、3次成分の600HZ、4次成分の800Hzや5次成分の1kHzなどの整数倍の成分の排気騒音を低減することができる。
本実施形態に係るマフラ10のマフラ本体11の長さ(mm)、外形の大きさ(mm)、インレットパイプ12、アウトレットパイプ13、第1連通管14、第2連通管15およびテールパイプ16の内径(mm)、厚さ(mm)および長さ(mm)、開閉バルブ32のコイルスプリング35の付勢力(N)および所定のバネ定数(N/m)、開閉バルブ32を開状態にする排気ガスの背圧の所定値(Pa)、各構成要素の材質、距離L1(mm)、L2(mm)、L3(mm)、L4(mm)、L5(mm)、L6(mm)、Lt(mm)、第1区画室26、第2区画室27および第3区画室28の容積(mm3)は、本実施形態に係るマフラ10が適用される車両の設計諸元、シミュレーション、実験や経験値などのデータに基づいて適宜選択される。
次いで、本実施形態に係るマフラ10内の排気ガスの流動と、このマフラ10内で発生する排気騒音を低減する低減作用について説明する。
内燃機関が始動すると、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるとき、図示しないシリンダ内の排気ガスは、排気ポート、エキゾーストマニホールド、排気管内を流通し、三元触媒装置により浄化された後、図12に示すように、インレットパイプ12の導入通路12a内に流入する。そして、導入通路12a内の排気ガスは、第1連通管14の第1連通路14aを通って第1区画室26内に流入し、複数の連通孔12cを通って第3区画室28内に流入し、開口12dから第2区画室27に流入する。
このとき、第1区画室26および第2連通管15の第2連通路15a内の排気ガスの背圧Ph(Pa)が、第1連通管14のいわゆる絞り孔効果によって高められている。他方、複数の連通孔12cを通って第3区画室28内に流入した排気ガスは、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるので、その流速(m/s)は低く、流動圧Pr(Pa)が低くなっている。すなわち、背圧Ph>流動圧Prとなっているので、図14(b)に示すように、開閉バルブ32の弁体33を徐々に反時計方向に回動させる。そして、この背圧Ph(Pa)が所定値(Pa)に到達すると開閉バルブ32の弁体33は、コイルスプリング35の付勢力(n)に抗して、さらに反時計回りに回動し、図14(a)に示すように、第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が開状態となり、排出通路31aの開口端部19が閉状態となる。
この状態、すなわち、連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
このようなマフラ10において、低減することができる共鳴周波数(Hz)とマフラ10の構造との関係は、一般に、次式(2)に表されることが知られている。
ここで、f0は、低減される共鳴周波数(Hz)、cは、空気中の音速(m/s)、kは音響バネ係数(N/m:kg/s2)、mは、音響マス(kg)、Sは、図11に示す分岐通路bを構成する共鳴パイプの断面積(mm2)、Vは、図11に示す空洞hを構成する共鳴室の体積(mm3)、Lは、共鳴パイプの長さ(mm)、dは、共鳴パイプの径(mm)を表している。
マフラ10においては、まず、図12に示すL1がインレットパイプ12で構成される共鳴パイプの長さに相当し、第2区画室27および第3区画室28で構成される共鳴室の体積をV
23とし、インレットパイプ12の径をd
1とし、インレットパイプ12の断面積をS
1とし、この場合の共鳴周波数をf
1とすると、f
1は、次式(3)で表される。
この式(3)で表される共鳴周波数f1(Hz)がマフラ10において低減され、さらに、このf1を基本周波数(Hz)とする2次の2×f1の共鳴周波数(Hz)、3次の3×f1の共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、図12に示すL4+Ltが、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプの長さに相当し、第1区画室26で構成される共鳴室の体積をV1とし、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16の径をd2とし、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16の断面積をS2とし、この場合の共鳴周波数をf2とすると、f2は、次式(4)で表される。ここで、長さ(L4+Lt)は、各パイプの各通路の軸線であって、折れ曲がった曲部に沿う軸線の曲部の長さを含む実質の長さを表し、径d2は、各パイプの実質的な径を表している。
この場合、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16に侵入した排気音は、テールパイプ16の開口16aから放出される音と、開口16aで反射して第2連通管15の方向に侵入する音に分かれる。テールパイプ16内を下流側に進行する粗密波からなる排気音は、開口16aで大気に開放されるので、急激な圧力変化により、いわゆる排気音の開口端反射が起こり、この反射音の侵入する通路が、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプとなり、第1区画室26が共鳴室となる。
共鳴周波数f
1と同様、この式(4)で表される共鳴周波数f
2(Hz)がマフラ10において低減され、さらに、このf
2を基本周波数(Hz)とする2次の2×f
2の共鳴周波数(Hz)、3次の3×f
2の共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
この連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、第1区画室26は、前述の拡張室としても作用し、導入通路12a内を流通する排気ガスが第1連通管14を通って第1区画室26に流入する際、その体積が急激に拡張され、内燃機関の排気脈動からなる圧力変動が弱められて、排気騒音の音圧レベル(dB)が広い周波数帯域に亘って低減される。
他方、内燃機関の回転数(rpm)が高回転領域になると、回転数(rpm)が低回転領域にあるときと同様、図13に示すように、インレットパイプ12の導入通路12a内に流入する。そして、導入通路12a内の排気ガスは、第1連通管14の第1連通路14aを通って第1区画室26内に流入し、複数の連通孔12cを通って第3区画室28内に流入し、開口12dから第2区画室27に流入する。
このとき、第1区画室26および第2連通管15の第2連通路15a内の排気ガスの背圧Ph(Pa)が、第1連通管14のいわゆる絞り孔によって高められている。他方、複数の連通孔12cを通って第3区画室28内に流入した排気ガスは、内燃機関の回転数(rpm)が高回転領域にあるので、その流速(m/s)は高く、流動圧Pr(Pa)が高くなっている。すなわち、流動圧Pr>背圧Phとなっているので、図14(b)に示すように、この流動圧Pr(Pa)が開閉バルブ32の弁体33を徐々に時計回りに回動させ、流動圧Pr(Pa)が所定値(Pa)に到達すると開閉バルブ32の弁体33はコイルスプリング35の付勢力(n)に助けられ、図14(c)に示すように、時計回りに回動して第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が閉状態となり、排出通路31aの開口端部19が開状態となる。
この状態、すなわち、連通部分18が閉状態となり、開口端部19が開状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
まず、図12に示すL2がインレットパイプ12で構成される共鳴パイプの長さに相当し、第2区画室27で構成される共鳴室の体積をV
2とし、インレットパイプ12の径をd
1とし、インレットパイプ12の断面積をS
1とし、この場合の共鳴周波数をf
3とすると、f
3は、次式(5)で表される。
この式(5)で表される共鳴周波数f3(Hz)がマフラ10において低減され、さらに、このf3を基本周波数(Hz)とする2次の2×f3の共鳴周波数(Hz)、3次の3×f3の共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、図12に示すL5+Ltがアウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプの長さに相当し、第3区画室28で構成される共鳴室の体積をV
3とし、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16の径をd
4とし、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16の断面積をS
4とし、この場合の共鳴周波数をf
4とすると、f
4は、次式(6)で表される。ここで、長さ(L5+Lt)は、各パイプの各通路の軸線であって、折れ曲がった曲部に沿う軸線の曲部の長さを含む実質の長さを表し、径d
4は、各パイプの実質的な径を表している。
共鳴周波数f1と同様、この式(6)で表される共鳴周波数f4(Hz)がマフラ10において低減され、さらに、このf4を基本周波数(Hz)とする2次の2×f4の共鳴周波数(Hz)、3次の3×f4の共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、図12に示すL3が第1連通管14で構成される共鳴パイプの長さに相当し、第1区画室26で構成される共鳴室の体積をV
1とし、第1連通管14の径をd
5とし、第1連通管14の断面積をS
5とし、この場合の共鳴周波数をf
5とすると、f
5は、次式(7)で表される。
共鳴周波数f1と同様、この式(7)で表される共鳴周波数f5(Hz)がマフラ10において低減され、さらに、このf5を基本周波数(Hz)とする2次の2×f5の共鳴周波数(Hz)、3次の3×f5の共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
本実施形態に係るマフラ10は、前述のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
すなわち、本実施形態に係るマフラ10は、アウタシェル21およびセパレータ24、25により区画された第1区画室26、第2区画室27および第1区画室26と第2区画室27との間に位置する第3区画室28を有するマフラ本体11と、内燃機関から排出される排気ガスを第1区画室26内、第2区画室内27および第3区画室28内に導入するインレットパイプ12と、第3区画室28内の排気ガスをマフラ本体11の外方に排出するアウトレットパイプ13とを備えている。
このマフラ10において、インレットパイプ12が、第2区画室27で開口する導入通路12aを有するとともに、導入通路12aと第3区画室28とを連通する複数の連通孔12cを有し、導入通路12aと第1区画室26とを連通する第1連通路14aを有する第1連通管14と連結されている。
また、アウトレットパイプ13が、第3区画室28で開口するとともに、マフラ本体11の外方で開口する排出通路31aを有するとともに、第3区画室28内の開口端部19に排出通路31aを開閉する開閉バルブ32を備え、排出通路31aと第1区画室26とを連通する第2連通路15aを有する第2連通管15と連結されている。
また、排出通路31aと第2連通路15aとの連通部分18が、開閉バルブ32の近傍であって、開口端部19から中心までの間の距離がL6となるように設けられ、開閉バルブ32が、内燃機関の回転数(rpm)に応じて排出通路31aを開状態とするとき、第2連通路15aの連通部分18を閉状態とし、排出通路31aを閉状態とするとき、第2連通路15aの連通部分18を開状態とするよう構成されている。
その結果、マフラ10においては、アウトレットパイプ13の開口端部19に開閉バルブ32が設けられているので、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるとき、第2連通管15内の高まった排気ガスの背圧(Pa)、すなわちバルブ絞り効果を利用して、弁体33を自動的に回動させて第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18を開状態とし、排出通路31aの開口端部19を閉状態とすることができる。
この状態、すなわち、連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、前述のように共鳴周波数f1(Hz)、f2(Hz)を発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。特に共鳴周波数f2(Hz)は、いわゆる共鳴パイプの長さを(L4+Lt)という長い距離とすることができるので、式(4)から比較的低周波数(Hz)となる。したがって、共鳴周波数f2(Hz)は、例えば、30Hzないし50Hz程度の比較的低周波数(Hz)となり、低周波の共鳴を減衰させることができ、比較的低周波帯域において、車室内の反射で形成されうる定在波による共鳴の発生を抑制することができ、車室内の低周波こもり音を低減することができるという効果が得られる。
また、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるとき、動力の伝達効率を向上させ、いわゆる燃費を良くするため、図示しないトルクコンバータにおいてロックアップが実行される場合がある。このときに、内燃機関の動力が直接トランスミッションに伝達され、急峻に内燃機関の負荷が上昇し、エンジン音、すなわち排気音が大きくなる。このようなときに、本実施形態に係るマフラ10により、比較的低周波数(Hz)の共鳴周波数f2が低減されるので、車室内の低周波こもり音を低減することができるという効果が得られる。
また、共鳴周波数f1(Hz)、f2(Hz)を基本周波数(Hz)とする2次ないし高次の共鳴周波数(Hz)をそれぞれ発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。
また、連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、第1区画室26は、前述のように拡張室としても作用し、導入通路12a内を流通する排気ガスが第1連通管14を通って第1区画室26に流入する際、その体積が急激に拡張され、内燃機関の排気脈動からなる圧力変動が弱められて、排気騒音の音圧レベル(dB)が広い周波数帯域に亘って低減されるという効果が得られる。
この開閉バルブ32は、排気ガスの背圧(Pa)および流動圧(Pa)を利用して、内燃機関の回転数(rpm)に応じて自動的に開閉されるので、開閉バルブを強制的に回動させるアクチュエータおよびこのアクチュエータの動作を制御する電子制御ユニット(ECU)を必要としない。その結果、簡単な構造で安価に排気騒音を低減することができるという効果が得られる。また、従来のマフラに開閉バルブが設けられているものの場合、新たに構成要素を増大することがなく、多段に共鳴周波数の排気騒音を低減することができるという効果が得られる。また、コイルスプリング35により弁体33が付勢されているので、開閉バルブ32が車両の振動や排気ガスの脈動により振動することはなく、開閉バルブ32から異音が発生することはない。また、コイルスプリング35により弁体33が付勢されているので、所定の圧力(Pa)が弁体33に負荷されたとき、確実に弁体33が開閉する。
他方、内燃機関の回転数(rpm)が高回転領域にあるとき、第2連通管15内の排気ガスの圧力(Pa)が低下するとともに、第3区画室28内の排気ガスの流速(m/s)が高まり、排気ガスの流動圧(Pa)が所定値に到達すると、弁体33が押され排出通路31aの開口端部19が開状態となり、第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18を閉状態とすることができる。
この状態、すなわち、連通部分18が閉状態となり、開口端部19が開状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、前述のように共鳴周波数f3(Hz)、f4(Hz)およびf5(Hz)を発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。
また、共鳴周波数f3(Hz)、f4(Hz)およびf5(Hz)を基本周波数(Hz)とする2次ないし高次の共鳴周波数(Hz)をそれぞれ発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。
本実施形態に係るマフラ10においては、図15に示すように、内燃機関の低回転領域におけるバルブ絞り効果による排気ガスの背圧(Pa)の上昇を利用して、開閉バルブ32がアウトレットパイプ13の開口端部19を閉じたとき、すなわちバルブ閉のとき、ロングテール共鳴1で示した共鳴周波数(Hz)および低周波共鳴で示した共鳴周波数(Hz)を低減させることができ、消音効果が得られる。
また、内燃機関の高回転領域における排気ガスの背圧(Pa)の低下と流動圧(Pa)の上昇を利用して開閉バルブ32がアウトレットパイプ13の開口端部19を開いたとき、すなわちバルブ開のとき、高周波共鳴1で示した共鳴周波数(Hz)と、ロングテール共鳴2で示した共鳴周波数(Hz)および高周波共鳴2で示した共鳴周波数(Hz)を低減させることができる。さらに、これらの共鳴周波数(Hz)の高次の共鳴周波数(Hz)も低減することができる。したがって、本実施形態に係るマフラ10においては、従来のマフラの場合よりも、さらに多段に亘って多数の共鳴周波数(Hz)を低減することができ、優れた消音効果が得られる。
また、各共鳴周波数(Hz)が、近接した周波数(Hz)になるよう本実施形態に係るマフラ10を構成するようにすれば、比較的広範囲の排気騒音を低減することができる。
例えば、図15に示す高周波共鳴1で示した共鳴周波数(Hz)と、ロングテール共鳴2で示した共鳴周波数(Hz)とを近くに置くよう本実施形態に係るマフラ10を構成するようにすれば、高周波共鳴1の近傍の周波数とロングテール共鳴2の近傍の周波数の帯域をカバーすることができる。
本実施形態に係るマフラ10においては、略四角形の開閉バルブ32を断面が四角形のバルブ収容部31cに収容した場合について説明したが、本発明のマフラの開閉バルブを、他の構造で構成するようにしてもよい。例えば、本発明のマフラの開閉バルブを、図16(a)、(b)、(c)に示す開閉バルブ40で構成してもよい。
図16(a)に示すように、開閉バルブ40は、筒部31の上流側の開口端部19に形成されたバルブ収容部39に収容されるよう構成されており、バルブ収容部39の下部に設けられたバルブ支持金具41と、このバルブ支持金具41に回動可能に支持されたシャフト42と、このシャフト42に固定された弁体43と、この弁体43を図16(c)に示すように第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が閉状態となるよう付勢するコイルスプリング44、45と、弁体43の回動を規制するストッパ46とを含んで構成されている。開閉バルブ40においては、弁体43が時計回りに回動したとき、弁体43に凸状に形成された閉止部43aが、コイルスプリング44、45の付勢力(N)により、第2連通管15の開口を閉止するようになっている。
この開閉バルブ40においては、内燃機関の回転数(rpm)が低回転領域にあるとき、第2連通管15内の排気ガスの圧力(Pa)、すなわち背圧(Pa)が高まり、この背圧(Pa)が所定値に到達すると弁体43が回動して第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が開状態となり、排出通路31aの開口端部19が閉状態となるよう構成される。
他方、内燃機関の回転数(rpm)が高回転領域にあるとき、第2連通管15内の排気ガスの圧力(Pa)、すなわち背圧(Pa)が低下するとともに、第3区画室28内の排気ガスの流速(m/s)が高まり、排気ガスの流動圧(Pa)所定値に到達すると、図16(c)に示すように、弁体43が押され排出通路31aの開口端部19が開状態となり、第2連通管15と排出通路31aとの連通部分18が閉状態となるよう構成される。
本実施形態に係るマフラ10においては、マフラ本体11、インレットパイプ12、アウトレットパイプ13、第1連通管14および第2連通管15とを有し、マフラ本体11が第1区画室26、第2区画室27および第3区画室28の3個の区画室を有する場合について説明した。しかしながら、マフラ本体11が有する区画室が3個以外のもので、マフラ本体11を構成するようにしてもよい。
以下、2個の区画室を有するマフラ本体51でマフラ50を構成した第1変形例と、3個の区画室を有するマフラ本体61でマフラ60を構成した第2変形例について図面を参照して説明する。なお、第1変形例に係るマフラ50および第2変形例に係るマフラ60においては、本実施形態に係るマフラ10のマフラ本体11に形成された第1区画室26、第2区画室27、第3区画室28およびこれらを区画する構成要素が異なっているが、他の構成要素は同様に構成されている。したがって、図1ないし図10に示した実施形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点のみ詳述する。
(第1変形例)
図17に示すように、マフラ50は、マフラ本体51、インレットパイプ52および実施形態と同じ他の構成要素を含んで構成されている。
マフラ本体51は、実施形態と同様、筒状部材としてのアウタシェル53および実施形態と同じ他の構成要素を含んで構成されており、マフラ本体51の内部には、A室54、B室55が画成されている。アウタシェル53は、実施形態と同様、略楕円形の断面を有する筒部53aと、折り返し端部53b、53cとを有している。インレットパイプ52は、実施形態のインレットパイプ12に形成された連通孔12cが設けられていないこと以外はインレットパイプ12と同様に形成されている。
この構成により、第1変形例に係るマフラ50においては、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、以下のように複数の共鳴周波数(Hz)を発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。
内燃機関の回転数(rpm)が、低回転領域のとき、すなわち、開閉バルブ32の弁体33が、図17に示すAの位置になり、連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
まず、インレットパイプ52で構成される共鳴パイプL1部分と、B室55で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数faのいわゆる低周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfaを基本周波数(Hz)とする2次の2×faの共鳴周波数(Hz)、3次の3×faの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプ(L3+Lt)部分と、A室54で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fbのいわゆるロングテール共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfbを基本周波数(Hz)とする2次の2×fbの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fbの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
内燃機関の回転数(rpm)が、高回転領域のとき、すなわち、開閉バルブ32が、図17のBで示すように、連通部分18が閉状態となり、開口端部19が開状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
まず、第1連通管14で構成される共鳴パイプL2部分と、A室54で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fcのいわゆる高周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfcを基本周波数(Hz)とする2次の2×fcの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fcの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプ(L4+Lt)部分と、B室55で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fdのいわゆるロングテール共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfdを基本周波数(Hz)とする2次の2×fdの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fdの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
車両およびこの車両に搭載される内燃機関の設定諸元に応じて、共鳴周波数faないし共鳴周波数fdが目的とする所定の周波数(Hz)になるよう、第1変形例に係るマフラ50の各構成要素の構造や寸法などの諸元がシミュレーション、実験や経験値などのデータに基づいて適宜選択される。
(第2変形例)
図18に示すように、マフラ60は、マフラ本体61、インレットパイプ62および実施形態と同じ他の構成要素を含んで構成されている。
マフラ本体61は、実施形態と同様、筒状部材としてのアウタシェル63および実施形態と同じ他の構成要素を含んで構成されており、マフラ本体61の内部には、A室64、B室65、C室66、D室67、E室68が画成されている。アウタシェル63は、実施形態と同様、略楕円形の断面を有する筒部63aと、折り返し端部63b、63cとを有している。インレットパイプ62は、実施形態のインレットパイプ12に形成された連通孔12cが、B室65の部分、C室66の部分、D室67の部分にそれぞれ設けられていること以外はインレットパイプ12と同様に形成されている。B室65の部分に連通孔62a、C室66の部分に連通孔62b、D室67の部分に連通孔62cがそれぞれ設けられている。また、連通孔62a、62b、62cが形成されている部分のインレットパイプ62の板厚はtで形成されている。
この構成により、第2変形例に係るマフラ60においては、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、以下のように複数の共鳴周波数(Hz)を発生させるとともに減衰させ、排気騒音を低減することができるという効果が得られる。
内燃機関の回転数(rpm)が、低回転領域のとき、すなわち、開閉バルブ32の弁体33が、図18に示すAの位置になり、連通部分18が開状態となり、開口端部19が閉状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
まず、インレットパイプ62で構成される共鳴パイプL1部分と、B室65、C室66、D室67、E室68で一体的に構成される共鳴室とにより、共鳴周波数feのいわゆる低周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfeを基本周波数(Hz)とする2次の2×feの共鳴周波数(Hz)、3次の3×feの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、第2連通管15、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプ(L4+Lt)部分と、A室64で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fgのいわゆるロングテール共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfgを基本周波数(Hz)とする2次の2×fgの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fgの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
内燃機関の回転数(rpm)が、高回転領域のとき、すなわち、開閉バルブ32が、図18のBで示すように、連通部分18が閉状態となり、開口端部19が開状態となったとき、前述のヘルムホルツの共鳴原理により、次のような共鳴周波数(Hz)が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。
まず、第1連通管14で構成される共鳴パイプL3部分と、A室64で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fhのいわゆる高周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfhを基本周波数(Hz)とする2次の2×fhの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fhの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、インレットパイプ62で構成される共鳴パイプL2部分と、E室68で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fiのいわゆる高周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfiを基本周波数(Hz)とする2次の2×fiの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fiの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、インレットパイプ62の連通孔62aの板厚t部分の長さで構成される共鳴パイプt部分と、D室67、E室68で一体的に構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fjのいわゆる高周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfjを基本周波数(Hz)とする2次の2×fjの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fjの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、インレットパイプ62の連通孔62cの板厚t部分の長さで構成される共鳴パイプt部分と、D室67で一体的に構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fkのいわゆる高周波共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfkを基本周波数(Hz)とする2次の2×fkの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fkの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
また、アウトレットパイプ13およびテールパイプ16で構成される共鳴パイプ(L5+Lt)部分と、C室66で構成される共鳴室とにより、共鳴周波数fmのいわゆるロングテール共鳴が発生するとともに減衰し、排気騒音が低減される。さらに、このfmを基本周波数(Hz)とする2次の2×fmの共鳴周波数(Hz)、3次の3×fmの共鳴周波数(Hz)およびさらに高次の共鳴周波数(Hz)の排気騒音が低減される。
車両およびこの車両に搭載される内燃機関の設定諸元に応じて、共鳴周波数feないし共鳴周波数fmが目的とする所定の周波数(Hz)になるよう、第2変形例に係るマフラ60の各構成要素の構造や寸法などの諸元が、シミュレーション、実験や経験値などのデータに基づいて適宜選択される。
以上のように、本発明によれば、内燃機関から排出される排気ガスの排気騒音を広い周波数帯域に亘って低減することができるマフラを提供することができるという効果を奏し、内燃機関のマフラ全般に有用である。