JP5064360B2 - 基準信号発生装置 - Google Patents

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Description

この発明は、デジタル通信等の無線通信設備に用いる基準信号発生装置に関するものである。
携帯電話や地上波デジタル放送等の広範囲なエリアで無線システムを提供する場合には、末端の機器にデータを送信するために複数の基地局が必要となる。これらの基地局では、仕様上、高精度な基準信号すなわち基準周波数信号やタイミング信号が必要となる。そして、このような状況下で用いられる基準信号発生装置は、電圧制御発振器を備え、GPSシステムから得られる1PPSのような高精度なリファレンス信号に自装置が発生する基準信号を同期させるように、電圧制御発振器に対して制御電圧信号を与えることで、高精度な基準信号を発生している。そして、この基準信号発生装置では、特許文献1に示すように、GPS信号から得られる1PPSと発振器の出力信号とを比較して、その差からGPS信号の1PPSに常に同期するように発振器の発振周波数制御を行っている。
ところで、このようにGPS等の測位用衛星を用いた測位システムから得られるリファレンス信号を利用する場合、測位用衛星からの測位信号を確実且つ正確に受信し続けなければならない。しかしながら、GPSアンテナの設置位置や設置方向により測位信号が受信できなかったり、妨害波等により測位信号を正確に受信できなかったり、測位用衛星から測位信号が送信されなかったりした場合には、同期のためのリファレンス信号を得ることができない。
このため、従来の基準信号発生装置は、電圧制御発振器に与えられていた過去の制御電圧信号のレベル(同期DAC値)を記憶しておき、予め設定した時間間隔(例えば、24時間)からなる推定タイミング毎に、過去の同期DAC値を読み出し、最小二乗法等を用いて、これら同期DAC値の遷移を示す推定曲線を算出して、当該時間関数となる推定曲線の各演算用係数等を記憶する。そして、従来の基準信号発生装置は、リファレンス信号の入力断を検出する、すなわちホールドオーバの開始タイミングを検出すると、この時点での時刻を、前記推定曲線を表す演算式に与え、当該ホールドオーバの開始タイミングでの自走DAC値を算出する。基準信号発生装置は、算出した自走DAC値を電圧制御発振器に与えることで、自走発振に切り換えて基準信号を生成、出力する。以降、基準信号発生装置は、推定曲線を表す演算用関数から順次自走DAC値を算出して、継続的に自走発振による基準信号の生成、出力を継続する。
特開2002−16438号公報
しかしながら、基準信号発生装置における起動特性等に基づく電圧制御発振器へ与えるDAC値の時間遷移は、個体差を有する。このため、現実の同期DAC値の遷移に最もフィッティングする推定曲線を表す演算用関数も、一次関数、二次関数、対数関数等、容易に統一し難い。したがって、理想的には一致すべき、同時刻での現実の同期DAC値と演算用関数により算出される自走DAC値との間に誤差が生じてしまう可能性がある。
図4は、従来の基準信号発生装置の課題を説明するためのDAC値の時間遷移を示した図である。図4において、101(b)はホールドオーバ(H.O.)発生までの実測された同期DAC値の時間遷移を示し、201は、ホールドオーバ発生タイミングより以前の推定タイミングT(M)での推定曲線を示す。また、101(a)は、推定曲線に基づいて算出される自走DAC値の時間遷移を示し、101(i)は、ホールドオーバが発生しなかったものとした場合のホールドオーバ発生タイミング以降の同期DAC値の時間遷移を示す。
図4に示すように、基準信号発生装置は、ホールドオーバの発生を検出すると、当該ホールドオーバ発生時点で記憶されている推定タイミングT(M)での推定曲線201を算出する演算用関数を用いて、自走DAC値を算出する。ここで、上述のように、推定曲線201はこの時点までの同期DAC値の時間遷移曲線101(b)に対して完全にフィッティングしているとは限らない。さらに、完全にフィッティングしている状態でなければ、この推定曲線201に基づく自走DAC値の時間遷移曲線101(a)と、ホールドオーバが発生しなった場合の同期DAC値の時間遷移曲線101(i)との誤差は無くなり難く、例えば時刻Tiにておいて、所定の誤差ΔDiを有することになる。そして、このような誤差の積算は位相差として表れ、このようなズレ(位相差)はシステムおよび装置仕様として許容範囲が設定されているが、許容範囲を超えた場合にはシステムに悪影響を与える。このため、例えばホールドオーバが発生すると、通常はホールドオーバ発生の警告を通知し、経験的に一律に設定された許容範囲を超えない期間中に作業者が補正を行う等の保守を行う。そして、システムに対して悪影響を極力与えないために、ホールドオーバからの基準信号の保証期間は、装置毎の起動特性等に関係なく一律に短い期間に設定されており、保守作業が必要以上に時間的制限を受ける等の課題を有していた。
したがって、本発明の目的は、自走DAC値と真のDAC値との誤差を取得して、当該誤差に応じた各種処理を行うことで、保守作業の時間的制限等の自走発振に係わる課題を解決することができる基準信号発生装置を実現することにある。
この発明の基準信号発生装置は、位相比較器、ループフィルタ、電圧制御発振器、記憶手段、および制御手段を備える。
位相比較器は、外部からのリファレンス信号と電圧制御発振器の出力する基準信号から得られる調整用タイミング信号との位相差を取得して位相差信号を出力する。ループフィルタは、位相差信号から電圧制御発振器で所定周波数の基準信号を発生させるため制御電圧信号を生成する。電圧制御発振器は、制御電圧信号のレベルに基づいて基準信号を発生する。記憶手段は、所定の起点時間から所定時間長だけ遡る期間の制御電圧信号のレベルを記憶する。
制御手段は、位相差信号を用いることなく電圧制御発振器で所定周波数の基準信号を発生させるための自走用制御電圧信号のレベルの経時変化を表す推定曲線を、過去の制御電圧信号のレベル遷移に基づいて算出し、リファレンス信号の入力断を検出すると、制御電圧信号のレベルに代えて、推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベルを電圧制御発振器へ与える。この際、制御手段は、予め設定した推定誤差検出タイミング毎に、今回の推定誤差検出タイミングより以前の予め設定した所定推定タイミングで算出された推定曲線に基づく今回の推定誤差検出タイミングでの自走用制御電圧信号のレベルと実測の制御電圧信号のレベルとの差分を、推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベルの推定誤差として算出し、当該推定に対する検証を行う
この構成では、推定誤差検出タイミングにおいて、過去の制御電圧信号のレベル(同期DAC値)、過去の推定タイミングで算出された推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベル(自走DAC値)が同期DAC値毎に対応して取得される。これにより、対応する同期DAC値と自走DAC値との誤差(推定誤差)が算出され、当該誤差に基づく各種の保守もしくは補正処理が可能となる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、以前の所定推定タイミングとして、今回の推定誤差検出タイミングの直前の推定タイミングを用いる。
この構成では、推定誤差検出タイミングで用いる推定曲線が、当該推定誤差検出タイミングに最も近い直前の推定タイミングにおいて算出されたものとなる。これにより、推定誤差検出タイミングに最も適しているだろう推定曲線からの自走DAC値が得られるので、より確度の高い誤差が得られる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、以前の所定推定タイミングから今回の推定誤差検出タイミングまでの自走用制御電圧信号のレベルと実測の制御電圧信号のレベルとの差分を積算することで位相差を算出する。
この構成では、自走DAC値と同期DAC値との差分(誤差)を順次積算することで位相差が算出される。このように位相差が算出されることで、基準信号のズレを直接検出することができる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、リファレンス信号の入力断のタイミングを今回の推定誤差検出タイミングとし、位相差の時間遷移から今回の推定誤差検出タイミング以降の位相差の時間遷移を推定し、積算されていく位相差が予め設定した位相差限界値に達する時間を検出する。
この構成では、リファレンス信号の入力断(ホールドオーバの発生)時に、直前の推定タイミングでの推定曲線に基づいて、当該直前の推定タイミングからホールドオーバの発生時までの位相差の遷移を取得し、これらに基づいてホールドオーバ期間中の位相差の時間遷移を推定する。そして、ホールドオーバ期間中の各タイミングの位相差を、時間に応じて位相差限界値と比較して、当該位相差限界値を超える時間を検出する。このように、システム仕様上の位相差の限界値を設定しておけば、仕様に対して位相差が保証される期限の時間を検出することができる。これにより、位相差を基準にして各装置の処理動作に応じた保守可能期限を設定することができる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、位相差の時間変化から、今回の推定誤差検出タイミング以降の位相差の時間遷移を推定し、予め設定した判断時刻までの位相差を算出する。
この構成では、今回の推定誤差検出タイミング以降においても、自走DAC値と実測の同期DAC値との誤差が順次得られ、特定の判断時間での位相差を取得することができる。これにより、判断時間における位相差に基づく推定演算の検証や電圧制御発振器等の装置状態の検証を行うことができる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、今回の推定誤差検出タイミングの位相差に基づいて推定曲線を算出する演算を補正する。
この構成では、今回の推定誤差検出タイミングでの位相差が、予め設定した閾値以上であれば推定演算を補正する必要が有ると判断し、閾値未満であれば推定演算が適当だと判断することができる。これにより、推定演算を補正する必要が有ると判断した場合に、今回の推定誤差検出タイミングを基準に推定曲線を算出し直せば、より確度の高い自走DAC値の推定を行うことができる。一方、推定演算が適当だと判断した場合に、そのままの推定曲線を用いれば、確度の高い自走DAC値の推定を継続することができる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、予め設定した推定誤差検出タイミング毎に、今回の推定誤差検出タイミングより以前の予め設定した所定推定タイミングで算出された推定曲線に基づく今回の推定誤差検出タイミングでの自走用制御電圧信号のレベルから自走周波数を算出するとともに、リファレンス信号の周波数に対する自走周波数の推定誤差を算出し、当該推定に対する検証を行う。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、以前の所定推定タイミングとして、今回の推定誤差検出タイミングの直前の推定タイミングを用いる。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、リファレンス信号の入力断のタイミングを今回の推定誤差検出タイミングとし、今回の推定誤差検出タイミング以降の自走周波数の時間遷移を推定する。そして、制御手段は、該推定した自走周波数が予め設定した周波数限界値に達する時間を検出する。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、今回の推定誤差検出タイミング以降の自走周波数の時間遷移を推定し、予め設定した判断時間での自走周波数を算出する。
また、この発明の基準信号発生装置の制御手段は、今回の推定誤差検出タイミングの自走周波数に基づいて、推定曲線を算出する演算を補正する。
これらの構成では、上述の推定誤差や位相差を得るために算出する自走用制御電圧信号のレベルにより一意且つ直接的に、電圧制御発振器から出力される基準信号の自走周波数が算出できることを利用する。これにより、各推定誤差検出タイミングでの自走周波数を推定したり、リファレンス信号の入力断のタイミング以降の自走周波数の時間遷移を得ることができる。そして、このように算出した自走周波数を、予め設定したシステム仕様上の周波数の限界値と比較することで、自走時の周波数が仕様上問題有るかどうかを判断することができる。また、自走周波数の時間遷移が分かることで、予め設定した所定時間での自走周波数を推定算出することができる。また、さらには、自走周波数の算出結果に基づいて推定曲線の検証を行うこともできる。
この発明によれば、実測の同期DAC値と推定される自走DAC値との誤差が得られることで、保守可能期限を正確に判断できたり、推定曲線の妥当性や自走DAC値の確度を確認することができる等の自走DAC値の推定誤差に関する課題を解決することができる。
本発明の第1の実施形態に係る基準信号発生装置について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の基準信号発生装置およびこの装置にリファレンス信号を与える回路を示す概略ブロック図である。なお、以下の説明では、GPSを用いてリファレンス信号を取得する例を示すが、他のGNSSを用いても良く、さらには外部装置からリファレンス信号を取得しても良い。
本実施形態の基準信号発生装置1は、制御部10、位相比較器11、ループフィルタ12、スイッチ回路13、電圧制御発振器14、分周器15、およびメモリ16を備える。
この基準信号発生装置1にはGPS受信機2が接続されており、GPS受信機2にはGPSアンテナ3が接続されている。GPS受信機2は、GPSアンテナ3で受信した測位用信号に基づいて航法メッセージ等の測位関連情報を取得するとともに、リファレンス信号である1PPSを生成し、位相比較器11へ与える。
位相比較器11は、1PPSと、電圧制御発振器14から出力される基準周波数信号(基準信号に相当。)を分周器15で分周してなる調整用タイミング信号との位相差を検出し、当該位相差に基づく電圧レベルの位相差信号を生成して出力する。ループフィルタ12は、ローパスフィルタ等により構成され、位相差信号の電圧レベルを時間軸上で平均化することで、制御電圧信号を生成して制御部10とスイッチ回路13へ出力する。
スイッチ回路13は、電圧制御発振器14の制御信号入力端子に対して、ループフィルタ12または制御部10の何れか一方を接続するように切り替え可能とする回路である。この切り替えは、制御部10からの切替制御信号に応じて行われる。
電圧制御発振器14は、スイッチ回路13から入力される制御電圧信号のレベル(同期DAC値)もしくは自走用制御電圧信号のレベル(自走DAC値)に基づいて、所定周波数の基準周波数信号を発生する。分周器15は基準周波数信号を分周して調整用タイミング信号を発生し、位相比較器11へ与える。なお、本発明における自走とは、この電圧制御発振器14の説明に示すように、完全なフリーラン発振を示すものではなく、リファレンス信号に対して同期を行わずに基準信号を発生する動作を示す。
メモリ16は、制御部10によって読み書きされ、ループフィルタ12から出力される同期DAC値や制御部10が推定した演算係数等を記憶する。メモリ16は、同期DAC値に関してリングバッファメモリとして機能し、新たな同期DAC値を書き込む時点から所定期間長(例えば72時間等)に亘る過去の同期DAC値を記憶する。この際、メモリ16は、制御部10によって、予め設定した時間間隔毎(例えば100秒毎)の記憶タイミングで、同期DAC値を更新記憶する。
制御部10は、基準信号発生装置1を動作させる各種制御を行う。
制御部10は、GPS受信機2から1PPSを受信している間、予め設定した自走DAC値の推定タイミングになると、メモリ16に記憶されている同期DAC値を読み出し、自走DAC値の推定曲線を算出する。この推定曲線の算出は、予め設定した所定の演算用関数に対して最小二乗法等を適用することで行われる。制御部10は、推定曲線を算出すると、当該算出に用いた演算用係数をメモリ16に記憶する。このように記憶された演算用係数は、後述するホールドオーバ発生時の自走DAC値の算出時や、保守等のための誤差検出に利用する。
また、制御部10は、GPS受信機2から1PPSの受信の有無に応じてスイッチ回路13の切替制御を行う。具体的には、制御部10は、GPS受信機2から1PPSを取得できればループフィルタ12と電圧制御発振器14とを接続するように切替制御信号をスイッチ回路13へ与える。一方、制御部10は、GPS受信機2から1PPSを取得できなければ、すなわちホールドオーバを検出すれば、自身(制御部10)と電圧制御発振器14とを接続するように切替制御信号をスイッチ回路13へ与える。そして、制御部10は、ホールドオーバを検出した時点で、上述の演算用係数を読み出して、当該演算用係数に基づいて自走DAC値を算出して出力する。
このような構成の基準信号発生装置において、制御部10は、さらに以下に示すような保守のための誤差検出処理を行う。
図2は誤差算出処理フローを示すフローチャートである。また、図3は誤差算出の概念を示す図である。図3において、101は同期DAC値の実測値曲線を示し、201は、推定タイミングTe(m)での推定曲線を示し、ΔDr(n)は、推定誤差検出タイミングTv(n)での推定誤差を示す。
基準信号発生装置1が起動操作されると、内部の各機能部が起動し、制御部10は計時を開始する(S101)。この起動とともに、制御部10は、GPS受信機2からの1PPS信号の入力を確認すると、ループフィルタ12と電圧制御発振器14とを接続するようにスイッチ回路13を制御する。これに伴い、位相比較器11、ループフィルタ12、スイッチ回路13、電圧制御発振器14、分周器15からなるPLL回路が形成され、GPS受信機2からの1PPS信号に同期した基準周波数信号が出力される。この基準周波数信号の生成工程において、ループフィルタ12からは位相比較器11の位相差信号に応じた同期DAC値が出力される。制御部10は、この同期DAC値を、予め設定した記憶タイミング毎に取得してメモリ16へ記憶する(S102)。
制御部10は、予め設定した自走DAC値の推定タイミングになったことを検出すると(S103:Yes)、メモリ16に記憶した同期DAC値を読み出す。この際、制御部10は、推定タイミングを起点として過去に所定時間長だけ遡る同期DAC値を読み出す。制御部10は、時系列の同期DAC値群に対して、二次関数や対数関数等によって設定される演算用関数を用い、当該演算用関数に最小二乗法等を適用することで、自走DAC値の推定曲線を算出する(S104)。例えば、図3(A)に示すように、推定タイミングTe(m)において、当該推定タイミングTe(m)から過去の所定時間長Tte(m)の期間の同期DAC値を読み出して、推定曲線201を算出する。
制御部10は、推定曲線の算出に用いた演算用関数の演算用係数をメモリ16に記憶する(S105)。この推定処理は、ホールドオーバが検出されるまで自走DAC値の推定タイミング毎に継続的に行われ、その都度、演算用係数は順次メモリ16へ更新記憶される。
制御部10は、推定誤差検出タイミングになると(S106:Yes)、当該推定誤差検出タイミングよりも過去の対象となる推定タイミングから当該推定誤差検出タイミングまでの同期DAC値を読み出す(S107)。なお、推定誤差検出タイミングでなければ、引き続き同期DAC値の取得および記憶を継続する(S106:No→S102)。
制御部10は、メモリ16から演算用係数を読み出し、S107ステップで読み出した同期DAC値と同じタイミングでの自走DAC値を算出する(S108)。制御部10は、同じタイミングの同期DAC値と自走DAC値とを差分することで誤差を算出する。この際、制御部10は、算出した誤差を順次積算していき、当該積算値を位相差として検出する(S109)。例えば、図3の例であれば、推定誤差検出タイミングTv(n)において、制御部10は、推定タイミングTe(m)から推定誤差検出タイミングTv(n)までの実測値曲線101を構成する同期DAC値を読み出すとともに、推定タイミングTe(m)での推定曲線201に基づいて同期DAC値毎の自走DAC値を算出する。そして、推定誤差検出タイミングTv(n)での誤差ΔDr(n)を含む対象期間中の各誤差を検出する。また、制御部10は、算出した誤差を積算することで、図3(B)の斜線領域の面積に相当する位相差を算出する。なお、このような推定誤差の検出も、自走DAC値の推定とともに、ホールドオーバが検出されるまで継続的に行われる。
制御部10は、このように算出された誤差や位相差を用いることで、各種の検証を行う(S110)。この際、ホールドオーバの検出タイミングを推定誤差検出タイミングとすれば、ホールドオーバ期間中での検証も行うこともできる。
この検証としては、例えば、以下のようなものが存在する。
(A)推定演算の検証
制御部10は、算出した誤差や位相差から、推定タイミングTeで推定した推定曲線201が妥当なものであるかどうかを検証することができる。この場合、制御部10は、推定誤差検出タイミングTvでの誤差限界値や位相差限界値を予め設定しておき、当該誤差限界値や位相差限界値を超えた時点で、当該推定演算すなわち演算用関数および演算用係数の設定が現時点のDAC値の遷移に対して妥当でないと判断する。そして、制御部10は、当該推定誤差検出タイミングTvを新たな推定タイミングとして演算用関数および演算用係数の再設定を行う。または、制御部10は、次の推定タイミングにおいて演算用関数を他の関数に切り換えるよう設定する。このような処理を行うことで、推定誤差検出タイミング毎に推定演算の妥当性を検出することができ、より高い確度で自走DAC値を推定できる推定演算を継続することができる。
なお、この処理では、電圧制御発振器が正常であることを前提として演算用関数を切り換える等の処理を行うようにしているが、逆に、演算用関数が経験則上等で信頼性の高いものある場合に、電圧制御発振器の異常を検出することもできる。
(B)ホールドオーバ後の基準信号の位相差保証期間の推定
制御部10は、推定誤差検出タイミングTvの時点で、位相差を取得する際に、例えば推定タイミングから推定誤差検出タイミングまでの位相差の時間遷移を取得する。制御部は、取得した位相差の時間遷移から、推定誤差検出タイミング以降の位相差の時間遷移を推定する。ここで、制御部10は、位相差限界の仕様に基づいて、予め位相差の限界値を記憶しておく。制御部10は、推定した位相差が限界値に達する時間を検出する。この検出時間は、位相差が仕様限界に達した時間を意味するので、制御部10は、当該検出時間に基づいて、今回の推定誤差検出タイミングを起点時間とする保証時間長を算出することができる。制御部10は、ホールドオーバ発生の検出時点で、この保証時間長を通知することで、保守作業者に作業猶予時刻を知らせることができる。なお、この保証時間長は、予め設定しても良いし、ユーザインタフェースを備えて保証時間長の設定を変更することもできる。これにより、ユーザの仕様に応じて保証時間長を設定することができる。
なお、この推定誤差検出タイミングTvを、ホールドオーバ発生の検出タイミングにすることで、ホールドオーバ発生時点の動作状態に、さらに適する保証時間長を算出することができる。これにより、さらに確度の高い作業猶予時刻を保守作業者に知らせることができる。
なお、上述の説明では、推定誤差検出タイミングに近い過去の推定タイミングで算出された推定曲線(演算用係数)を用いた例を示したが、より過去の推定タイミングでの推定曲線を利用するようにしてもよい。この場合、近い過去の推定タイミングでの推定曲線を用いれば、より現状に則した推定曲線が得られる可能性が高いので、さらに過去の推定タイミングでの推定曲線を用いる場合よりも、より現状を反映した検証を行うことができる。また、対象期間が短くなることで高速に検証を行うことができる。
また、上述の説明では、位相差に基づいて各種動作の検証や判断を行う方法を示したが、推定した各時間の自走DAC値から直接的に算出できる自走周波数に基づいて、各種動作の検証や判断を行うこともできる。
具体的には、各推定誤差検出タイミングにおける自走周波数を推定したり、自走周波数の時間遷移を取得することができる。また、リファレンス信号の入力断のタイミング以降の自走周波数の時間遷移を得ることができ、このように算出した自走周波数を、予め設定したシステム仕様上の周波数の限界値と比較することで、自走時の周波数が仕様上問題有るかどうかを判断することができる。さらには、自走周波数の時間遷移が分かることで、リファレンス信号の入力断後であっても、予め設定した所定時間での自走周波数を推定算出することができる。また、さらには、リファレンス信号の入力断の前であれば、自走周波数の算出結果をリファレンス信号の周波数と比較することで、推定曲線の検証を行うこともできる。
本発明の実施形態の基準信号発生装置およびこの装置にリファレンス信号を与える回路を示す概略ブロック図である。 誤差算出処理フローを示すフローチャートである。 誤差算出の概念を示す図である。 従来の基準信号発生装置の課題を説明するためのDAC値の時間遷移を示した図である。
符号の説明
1−基準周波数信号発生装置、10−制御部、11−位相比較器、12−ループフィルタ、13−スイッチ回路、14−電圧制御発振器、15−分周器、16−メモリ、2−GPS受信機、3−GPSアンテナ

Claims (11)

  1. 外部からのリファレンス信号と電圧制御発振器の出力する基準信号から得られる調整用タイミング信号との位相差を取得して位相差信号を出力する位相比較器と、
    前記位相差信号から電圧制御発振器で所定周波数の前記基準信号を発生させるための制御電圧信号を生成するループフィルタと、
    前記制御電圧信号のレベルに基づいて前記基準信号を発生する電圧制御発振器と、
    所定の起点時間から所定時間長だけ遡る期間の前記制御電圧信号のレベルを記憶する記憶手段と、
    前記位相差信号を用いることなく前記電圧制御発振器で所定周波数の前記基準信号を発生させるための自走用制御電圧信号のレベルの経時変化を表す推定曲線を、過去の制御電圧信号のレベル遷移に基づいて算出し、前記リファレンス信号の入力断を検出すると、前記制御電圧信号のレベルに代えて、前記推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベルを前記電圧制御発振器へ与える制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    予め設定した推定誤差検出タイミング毎に、今回の推定誤差検出タイミングより以前の予め設定した所定推定タイミングで算出された推定曲線に基づく今回の推定誤差検出タイミングでの自走用制御電圧信号のレベルと実測の前記制御電圧信号のレベルとの差分を、前記推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベルの推定誤差として算出し、当該推定に対する検証を行う、基準信号発生装置。
  2. 前記制御手段は、前記以前の所定推定タイミングとして、今回の推定誤差検出タイミングの直前の推定タイミングを用いる、請求項1に記載の基準信号発生装置。
  3. 前記制御手段は、前記以前の所定推定タイミングから今回の推定誤差検出タイミングまでの前記自走用制御電圧信号のレベルと前記実測の制御電圧信号のレベルとの差分を積算することで位相差を算出する、請求項1または請求項2に記載の基準信号発生装置。
  4. 前記制御手段は、前記リファレンス信号の入力断のタイミングを前記今回の推定誤差検出タイミングとし、前記位相差の時間遷移から、前記今回の推定誤差検出タイミング以降の位相差の時間遷移を推定し、積算されていく位相差が予め設定した位相差限界値に達する時間を検出する、請求項3に記載の基準信号発生装置。
  5. 前記制御手段は、前記位相差の時間遷移から、前記今回の推定誤差検出タイミング以降の位相差の時間遷移を推定し、予め設定した判断時間での位相差を算出する、請求項3に記載の基準信号発生装置。
  6. 前記制御手段は、前記今回の推定誤差検出タイミングの位相差に基づいて、前記推定曲線を算出する演算を補正する、請求項3に記載の基準信号発生装置。
  7. 外部からのリファレンス信号と電圧制御発振器の出力する基準信号から得られる調整用タイミング信号との位相差を取得して位相差信号を出力する位相比較器と、
    前記位相差信号から電圧制御発振器で所定周波数の前記基準信号を発生させるため制御電圧信号を生成するループフィルタと、
    前記制御電圧信号のレベルに基づいて前記基準信号を発生する電圧制御発振器と、
    所定の起点時間から所定時間長だけ遡る期間の前記制御電圧信号のレベルを記憶する記憶手段と、
    前記位相差信号を用いることなく前記電圧制御発振器で所定周波数の前記基準信号を発生させるための自走用制御電圧信号のレベルの経時変化を表す推定曲線を、過去の制御電圧信号のレベル遷移に基づいて算出し、前記リファレンス信号の入力断を検出すると、前記制御電圧信号のレベルに代えて、前記推定曲線に基づく自走用制御電圧信号のレベルを前記電圧制御発振器へ与える制御手段と、
    を備え、
    前記制御手段は、
    予め設定した推定誤差検出タイミング毎に、今回の推定誤差検出タイミングより以前の予め設定した所定推定タイミングで算出された推定曲線に基づく今回の推定誤差検出タイミングでの自走用制御電圧信号のレベルから自走周波数を算出するとともに、前記リファレンス信号の周波数に対する前記自走周波数の推定誤差を算出し、当該推定に対する検証を行う、基準信号発生装置。
  8. 前記制御手段は、前記以前の所定推定タイミングとして、今回の推定誤差検出タイミングの直前の推定タイミングを用いる、請求項7に記載の基準信号発生装置。
  9. 前記制御手段は、前記リファレンス信号の入力断のタイミングを前記今回の推定誤差検出タイミングとし、前記今回の推定誤差検出タイミング以降の前記自走周波数の時間遷移を推定し、該推定した自走周波数が予め設定した周波数限界値に達する時間を検出する、請求項7または請求項8に記載の基準信号発生装置。
  10. 前記制御手段は、前記今回の推定誤差検出タイミング以降の前記自走周波数の時間遷移を推定し、予め設定した判断時間での自走周波数を算出する、請求項7または請求項8に記載の基準信号発生装置。
  11. 前記制御手段は、前記今回の推定誤差検出タイミングの前記自走周波数に基づいて、前記推定曲線を算出する演算を補正する、請求項7または請求項8に記載の基準信号発生装置。
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