JP5063330B2 - アムラ果実加工品 - Google Patents
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Description
近年の健康への関心の増加に鑑み、中国の漢方と同様に、アーユルヴェーダへの関心が高まりつつある。医食同源の視点から、アーユルヴェーダで処方される薬用植物は、一般食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、及び保健機能食品等の各種食品の素材として応用の可能性がある。
アムラ果実は、約2〜5cm程度の大きさであり、皮は薄く、果肉は緑色から淡黄色を呈している。アムラ果実には、多量のポリフェノール類、ビタミンCが含有されている。しかしながら、生果実には渋味・苦味・酸味が強く、そのままで飲食に供することは困難である。
しかし、従来の技術において得られるアムラ果実加工品は、糖度が高く、アムラ果実が有するシャキシャキ感に乏しい、或いは酵素を用いるために高価となってしまうなど、アムラ果実を食品に応用するための問題が残されていた。
また、前記アムラ果実加工品の果肉含量が、10%−50%であることが好ましい。
また、前記アムラ果実加工品は、デザート用プレパレーション及び飲料に用いられることが好ましい。
また、製造工程においては、ゲル化剤及び/または増粘剤を添加することが好ましい。
また、製造工程においては、pH調整に酸及び/又はアルカリ塩を用いることが好ましい。
すなわち、復元強度=h1/h0……(式1)
但し、式(1)中、「h0」は、果肉の復元強度試験において負荷処理前の高さを意味し、「h1」は果肉の復元強度試験において負荷処理後の果肉の高さを意味する。
復元強度試験の実施方法は次の通りである。まず、果肉の高さが1mm−10mm、質量が10mg−1100mgのものを選定し、負荷処理前の果肉の高さを測定し、h0とする。その果肉を重力の方向に対してほぼ垂直に載置された紙上に置き、負荷処理を行なった後、再び果肉の高さを測定し、h1とする。
圧力P(N/cm2)=負荷重/果肉面積………(式2)
負荷重は一定の圧力(P=0.1−1.0)をかけたとき上記式2から算出する。
果肉の下面側に載置された紙とほぼ平行になるように、果肉の上面側から負荷を面接触させながら与える。例えば、適当な質量を備えた分銅などを果肉の上面に載せることで、負荷処理を行うことができる。果肉に対して、負荷重を5分間与えた後に負荷を取り除く。
アムラ果実一次加工品とは、アムラ果実をブランチング処理、表皮を除去および水洗する処理、およびアムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割って種子を除去する種子除去処理を経た後、凍結したことを特徴とする。
ブランチング処理とは、アムラ果実に含まれる酵素を不活性化し、貯蔵中の品質の低下や変色を防ぐための軽い湯通し加工を意味している。本発明においては、ブランチング処理は、アムラ果実を水に漬け、所定の温度(例えば、70℃〜98℃)で、所定の時間(例えば、2分間〜15分間)加熱処理する。このとき、時間が短すぎると酵素の失活処理が十分ではないため、アムラ果実が変色する。一方、時間が長すぎると、アムラ果実が必要以上に柔らかくなってしまい、シャキシャキ感が無くなってしまう。そのような、至適条件については、当業者であれば、決定することができる。
また、アムラ果実加工品は、アムラ果実一次加工品を用いて調製することが好ましい。
飲料とは、飲むためのものを意味しており、具体的には、ジュース、栄養ドリンク、機能性飲料、炭酸飲料、乳飲料、乳酸菌飲料(飲むヨーグルトを含む)、清涼飲料、コーヒー、アルコール飲料などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
増粘剤とは、飲料を含む食品に、とろみを付けるための食品添加物を意味している。例えば、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
pH調整のために用いられる酸とは、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、α−ケトグルタル酸、フィチン酸及び乳酸など果実や野菜に酸味成分として多量に含まれる酸などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
pH調整のために用いられるアルカリ塩とは、重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸ナトリウム、DL−リンゴ酸ナトリウム、D−酒石酸水素カリウム、炭酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム等のアルカリ塩などが例示されるが、本発明はこれらに限定されずに用いることができる。
<試験例1> アムラ果実加工品の調製
急速冷凍したアムラ果実1000gを90℃にて5分間の加熱処理を行った後、アムラ果実に水道水を添加しつつ撹拌しながら冷却し、表皮を除去および水洗を行った。
次に、アムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割りながら種子を除去した。こうして、アムラ果実一次加工品(770g)を得た。
果皮と種子を除去したアムラ果実(1000g)を一辺が6.4mmの略立方体状に切断し、表2で示される組成のシロップ(1000g)と混合させ、121℃、5分間加熱処理した。撹拌しながら、45℃まで冷却した後、カップに充填した。これを冷蔵庫で冷却した。こうして、アムラシロップ煮(1500g)を得た。
アムラ果実(1000g)を1.0%のミョウバン水で洗浄し、2Lの1.0%のミョウバン水に一晩漬けておいた。24時間後に取り出し、1.0%のミョウバン水で洗浄した後、沸騰したお湯で2分間茹で、25%の砂糖水1Lと混合させて、一晩つけておいた。アムラ果実を取り出してシロップのみを煮詰め、クエン酸を4g添加しアムラ果実を戻し、一晩おいた。アムラを取り出してシロップを煮詰め、再びアムラ果実を戻して、24時間漬け込む工程を4回繰り返し、糖漬けアムラ(1500g)を得た。
<試験例1>−<試験例3>で得られたアムラ加工品について、男女合計10名のパネラーによる風味についての官能試験を行った。好ましい(5点)やや好ましい(4点)普通(3点)やや好ましくない(2点)好ましくない(1点)として5点満点による平均点を表4に示した。
<試験例1>−<試験例3>で得られたアムラ加工品について、男女合計10名のパネラーによる食感についての官能試験を行った。好ましい(5点)やや好ましい(4点)普通(3点)やや好ましくない(2点)好ましくない(1点)として5点満点による平均点を表5に示した。
<試験例1>のアムラ果実一次加工品について、水溶性固形分に関する試験を行った。表1中の砂糖の質量%を変化させた。
実施例1−5として、砂糖の質量%をそれぞれ、20、25、35、40、及び50とした。また、比較例1−4として、砂糖の質量%をそれぞれ、5、10、15、及び60とした。上記各例において、質量%の増減分は、水の質量%を変化させることで補った。
各アムラ果実加工品に関して、食感、果肉感、製造の容易性、及び混合の容易さについて、表6に示した。
<試験例1>のアムラ果実一次加工品について、果肉含量に関する試験を行った。表1中のアムラ果実一次加工品の質量%を変化させた。
実施例6−10として、アムラ果実一次加工品の質量%をそれぞれ、10、15、35、40、及び50とした。また、比較例5−8として、アムラ果実一次加工品の質量%をそれぞれ、5、7.5、60、及び65とした。上記各例において、質量%の増減分は、水の質量%を変化させることで補った。
各アムラ果実加工品に関して、食感、果肉感、製造の容易性、及び混合の容易さについて、表7に示した。
アムラ果実一次加工品とブランチング処理せずに水洗、種子を除去したアムラ果実を用いて、褐変防止効果を確認した。アムラ果実一次加工品とアムラ果実を25℃、3日間放置した後、果実から果汁を搾り出し、不要物をフィルターにより除去した。得られた果汁を2.5倍希釈して色差計(日本電色工業(株)製;ZE-2000)を用い色調の変化を比較した。色差計のL値(値が100に近ければ白色が強いことを示し、値が0に近ければ黒色の強いことを示す。)、a 値(値が大きければより赤色が強いことを示し、値が小さければ緑色の強いことを示す。)、およびb 値(値が大きければより黄色が強いことを示し、値が小さければ青色の強いことを示す。)を測定した。結果を表8に示した。
市販の脱脂乳(明治乳業社製、蛋白質含量34%)95g、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)35gを温水0.8Lに溶解し、均質化し、全量を1Lに調整した。次いで、これを90℃で15分間加熱殺菌した後、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)3g(ストレプトコッカス・サーモフィラス2g及びラクトバシラス・ブルガリクス1g)を接種した。さらに、これを均一に混合し、100mLの容器に分注・充填した後、密封して37℃で20時間発酵させた後、冷却することで、ヨーグルトを得た。
冷凍しておいたアムラ果実一次加工品を一辺が6.4mmの略立方体状に切断し、これに水溶性食物繊維(サンファイバー 太陽化学(株)製)を振りかけてまぶした。アムラ果実が解凍するのを待つことで、解凍に伴うドリップによりサンファイバーを溶解させた。アムラ果実をステンレスのビーカーに入れ、ハチミツ、水、ペクチン、及びクエン酸ナトリウムを添加した後、60℃まで加熱した。その後、レモン果汁を加えて、90℃まで加熱し、5分間の加熱殺菌を行った。撹拌しながら、45℃まで冷却した後、表9に示した所定量まで水分を添加し、カップに充填した。これを冷蔵庫で冷却し、夜食ヨーグルト用アムラ果実加工品を得た。この加工品の水溶性固形分は35、復元強度は0.75で、甘すぎず、シャキシャキ感に富んでいた。
ヨーグルト80gと<試験例9>で得られたアムラ果実加工品、<試験例2>のアムラシロップ煮と<試験例3>の糖漬けアムラの可食部部分それぞれ20gを混合することで、夜食ヨーグルトを得た。ただし、アムラシロップ煮と糖漬けアムラはドリップが多量に含まれるためヨーグルトに加える際に、ドリップを除いた可食部部分を添加した。
上記試験例10で調製したアムラ入りヨーグルト及びプレーンヨーグルト100gを食し、4時間後の血液を採血し、血流速度をMC−FANにて測定した。
真空採血管(テルモ(株)製:ヘパリンナトリウム処理)を用いて、座位安静状態で健常者の肘正中皮静脈より採血を行った。得られた血液(試験血液)は、1mLずつ分注し、測定に使用した。
血流速度の測定は、MC−FAN(日立原町電子工業製)を用いて行った。また、血液を通過させる血管モデルの微細加工流路として、流路の深さ4.5μm、深さの中央部の流路幅7μm、流路長30μmの微細な溝を形成する8736本並列のマイクロチャネルアレイが配置されているシリコン単結晶基板(Bloody6−7;日立原町電子工業製)を用いた。そして、血液100μLを20cm水柱差で流し、全血通過時間を血流通過時間として測定した。これと同時に、血液が流れる様子を顕微鏡−ビデオカメラのシステムで撮影記録した。測定値は、全て3回測定したものの平均値を用いた。得られた血流通過時間は、生理食塩水100μLが通過するのに要した時間を12秒として補正した。そしてこの補正値に基づいて血流速度(μL/秒)を計算により求めた。その結果を表10に示した。
本実施形態のアムラ果実加工品を加えないコントロールでは、血流速度が1.34μL/秒であったのに対し、本発明のアムラ果実加工品及びアムラシロップ煮、糖漬けアムラを加えた試験区では、血流速度がそれぞれ2.59μL/秒、1.72μL/秒、1.42μL/秒であった。アムラシロップ煮、糖漬けアムラの血流速度がコントロールと差異がなかったのは、ドリップの中にアムラ果実の有効成分が溶出してしまったために血流改善効果が確認されなかった。つまり、アムラ果実加工品はヨーグルトに添加した状態でも血流改善効果があり、色、風味、食感が優れ、機能性成分を余すことなく摂取できる、今までに無かった最良の形態である。
日頃、手足の冷えを感じている女性6人を被験者として、1ヶ月間、アムラ果実加工品入りヨーグルトもしくはプレーンヨーグルト(プラセボ)を毎晩100gずつ摂取させた。1ヶ月後、「手先の温かさ」、「足先の温かさ」、「便通」、「お腹の調子」の項目についてモニター試験を行った。モニターの評価基準として、好ましい(+2点)やや好ましい(+1点)普通(0点)やや好ましくない(−1点)好ましくない(−2点)とした。冷え性改善効果と整腸作用についてそれぞれ表11、12に示した。
次に、本実施形態のアムラ果実加工品をデザート用プレパレーション、飲料、製菓・製パンなどに応用する際の具体例と、その特徴について、表13にまとめた。
このように、本実施形態によれば、苦味・酸味が低減され、無香料でも美味しいアムラ果実加工品が提供できた。また、ポリフェノール、ビタミンC、食物繊維が大きく損なわれることなく、様々な食品のプレパレーションなどに応用することができた。
Claims (3)
- アムラ果実加工品の果肉の復元強度が0.5−1.0、100gあたりのポリフェノール含量が100mg−3000mg、食物繊維含量が0.1%−5%、水溶性固形分が25%−60%、pHが3.0−4.5、かつ前記アムラ果実加工品の果肉含量が10%−50%であることを特徴とするアムラ果実加工品。
- 前記アムラ果実加工品は、デザート用プレパレーション及び製菓・製パン及び飲料に用いられることを特徴とする請求項1に記載のアムラ果実加工品。
- アムラ果実を加熱するブランチング処理、表皮を除去および水洗する処理、およびアムラ果実のヘタ部分を切断し、果実を割って種子を除去する種子除去処理を経た後、凍結したアムラ果実一次加工品を調製する工程、
前記アムラ果実一次加工品に対して、アムラ果実一次加工品:砂糖=35質量%〜40質量%:20質量%〜50質量%となるように砂糖を添加し解凍した後、ゲル化剤及び/又は増粘剤と水とを添加して加熱することで、アムラ果実加工品の果肉の復元強度が0.5−1.0、100gあたりのポリフェノール含量が100mg−3000mg、食物繊維含量が0.1%−5%であり、水溶性固形分が25%−60%、pHが3.0−4.5、アムラ果肉含量が、10%−50%のアムラ果実加工品を得ることを特徴とするアムラ果実加工品の製造方法。
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