JP5063143B2 - アーク式蒸発源 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば工具、金型、装飾品、機械部品等の基材外部表面に、耐摩耗性向上や摩擦損失の低減、或いは色彩を付加するための硬質炭素被膜を形成させるアーク式蒸発源に関する。
基材の外部表面に被膜を形成し、耐摩耗性や耐久性の向上、摩擦損失の低減、さらには表面形状等の保護を図るため、アーク放電によってカソード物質を溶融し蒸発させるアーク式蒸発源が用いられている。アーク式蒸発源では、アーク放電によりカソード前方の空間に形成されるアークプラズマによって、蒸発したカソード物質の多くはイオン化される。そして、アークプラズマを利用し、被成膜基材に所定の電圧を印加することによって、イオン化されたカソード物質を基材に引き寄せ、基材表面に被膜を形成する。
このようなアーク式蒸発源を用いたアークイオンプレーティング法は、アーク放電によってカソード物質を溶融させることにより、カソード物質の蒸気を大量に発生させることができるため、成膜速度が速く、被膜と基材との間の密着性も優れている。従って、この方法を適用した成膜装置は生産性に優れることから、機械部品や切削工具等の表面に金属やその炭化物、窒化物などの被膜形成装置として広く用いられている。
アーク式蒸発源は、磁石やコイルによって形成される磁場を利用し、アーク放電によるアークスポットがカソード前方の蒸発面に来るように制御している。しかしながら、偶発的にアークスポットがカソード蒸発面から外れた場所に移行することがある。
そこで、アークスポットの移行を抑制する技術として、カソード蒸発面の周りを囲み、少なくとも前部に円錐状の斜面を有する先細リングを備えたアーク式蒸発源が開示されている(特許文献1の図1〜図3)。この技術は、磁力線中におけるアークスポットが、磁力線と斜面のなす角が鋭角の方向に進む性質を利用するものである。この場合、図5に示すように、コイルによってカソード蒸発面にほぼ垂直に生じた磁力線M’は、先細リング64’の円錐状の斜面64’aと鋭角αの角度をなすことになる。従って、上記した性質により、カソード蒸発面から外れて先細リング斜面に移動したアークスポットは、図5の軌跡A’に示すようにカソード蒸発面に戻される。
また、成膜材料である材料ロッドの周囲に薄肉リング状の内側層を設け、この内側層を磁性体から構成する技術が開示されている(特許文献2の図3)。このようにすると、磁性体から内側層に磁力線が引き寄せられ、プラズマビームを広げるので、材料ロッドの上面が比較的均一に加熱され、安定した成膜が可能になるとされる。
又、カソードの周囲に強磁性体からなるカソードシールドを設ける技術が開示されている(特許文献3の第1図)。
特開2001−181829号公報(図1〜図3、段落0020) 特開2002−30422号公報(図3、段落0033) 実開平02−38463号公報(第1図)
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、先細リングがカソードと同電位の導電性材料から成るため、カソード蒸発面から外れたアークスポットが先細リングの円錐状斜面へ移行すると、斜面(特にカソード蒸発面に近い斜面先端)がアーク放電によって蒸発して消耗する。先細リングの斜面が消耗すると、斜面と磁力線とのなす角が鋭角でなくなり、アークスポットをカソード蒸発面に戻す効果が低下するため、リングの定期的な交換が必要になる。
また、アーク放電電流が大きい場合や、カソードとして炭素系若しくはCr系高融点材料を使用した場合、カソードから溶融した高温の微小粒子(ドロップレット)が飛散することがある。ドロップレットはプラズマ中を通過する際に電子が付着して負の電荷を帯びるが、質量が比較的大きいため実質的に磁場の影響を受けずに運動し、先細リング表面に到達することがある。この時、ドロップレットは高温で負に帯電しているため、先細リング表面で瞬間的に温度が上昇し、帯電した電子が先細リング側に放電し、アーク放電を開始する際に使用するトリガーと同じ働きをする場合がある。この場合、アーク放電が不連続に場所を変えて運動する現象を生じ、先細リングを設けても、ドロップレットが先細リングを越えてカソードと同電位の任意の場所に飛散し、アーク放電を移行させてしまう。その結果、カソード構成物質がカソードの側面や先細リングの表面に比較的弱い付着力で堆積した後、再び剥離及び飛散し、被膜の表面に付着して膜厚過小部を形成したり、被膜中に取り込まれて被膜表面の平滑性や被膜強度を低下させることがある。さらに、剥離、飛散した堆積物が成膜装置の構成部品に付着して種々の問題を生じる可能性がある。
特許文献2記載の技術は、陰極であるプラズマ源が蒸発源と別の位置に配置され、陽極である膜材料にプラズマビームを導入する方式をとるため、プラズマビームが陰極から陽極に直接引き寄せられる。従って、膜材料をカソード側に印加する特許文献1記載の技術とは異なり、アークスポットが膜材料の蒸発面の外に移行する問題はそもそも生じないので、アークスポットの移行を改善するために特許文献2記載の技術を適用することは困難である。
特許文献3には、カソードの周囲に、強磁性体によって構成されたカソードシールドを設けたものが示されている。又、この文献には、カソードシールド表面にカソードと同じ材質の被覆材を被覆することが記載されているが、これはカソードシールドにアーク放電が移行して部分的に溶融・蒸発することを防止するためである。しかしながら、この技術の場合、カソードシールドがカソード面と平行であるために移行したアーク放電により被覆材が消耗し、定期的に部品交換や再被覆のための工数や費用が必要となるため、成膜コストの増加を招く問題がある。
以上のことから、本発明は、アークスポットがカソード蒸発面以外の部分に移動することを抑制することができるアーク式蒸発源を提供することを目的とする。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、磁場によって制御されるアーク放電によってカソードのカソード物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって、前記カソードと、前記カソード先端の蒸発面付近にカソード中心軸に平行な方向の磁場を形成し、かつ前記カソードの外側に配置される磁場形成機構と、前記カソードを支持する支持機構と、前記カソードを冷却する冷却機構と、円錐台状をなしその軸方向に前記カソードを貫通させる貫通孔を有し、かつ前記カソードの蒸発面に向かって先細になるよう配置されるテーパーリングとを備え、前記テーパーリングは強磁性体から成り、使用時に前記テーパーリングの先端が前記カソードの蒸発面と面一又は前記蒸発面より後方に位置することを特徴とする。
このようにすると、テーパーリングが強磁性体であるために磁力線が曲げられ、カソード外周面近傍には外側に広がる磁力線が形成されるとともに、テーパ−リング先端での磁束密度が高くなり、アークスポットをカソード蒸発面に戻す効果が高まってアークスポットのテーパ−リングの円錐面への移行を抑制する。
前記テーパーリングの円錐面の表面に絶縁体が備えられていることが好ましい。又、前記テーパーリングの円錐面より前方に、前記カソードをその軸方向に貫通させる貫通孔を有する常磁性体の金属又は合金からなり、かつ周囲と電気的に絶縁されたリング状のカバーを備えることが好ましい。
このようにすると、高温で負に帯電したドロップレットが飛散し、テーパ−リングの円錐面(斜面)近傍に到達しても、円錐面をテーパ−リングカバーや絶縁体が覆っている。そのために、ドロップレット表面に付着している電子が放電してもトリガーとして機能せず、アーク放電の移行は発生せず、円錐面が消耗しない。
前記磁場形成機構は、コイル、軸方向に磁極を有する円筒型の永久磁石、又は鉄心とコイルとを有する電磁石のいずれかにより構成されたことが好ましい。前記カソードをその軸方向に進退させるカソード送出機構をさらに備えたことが好ましい。
本発明によれば、アークスポットがカソード蒸発面以外の部分に移動することを確実に抑制することができる。又、テーパーリングの円錐面より前方にカバーを設けた場合は、アークスポットがカソード蒸発面以外の部分に移動しても部材の消耗が少ない。
<第1の実施形態>
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明のアーク式蒸発源の第1の実施形態の一例を示す断面図である。
アーク式蒸発源101は、真空チャンバ11(図では、一部の容器壁のみ記載)の開口部に設置され、全体としてアーク式蒸着装置を構成している。アーク式蒸発源101は、磁場形成機構(コイル)42、円柱状のカソード22を支持する棒状の支持機構26、カソード送出機構(ステッピングモータ)67、カソードを冷却する冷却機構61、強磁性体から成るテーパ−リング64を含む。リング状のコイル42は、コイル42よりやや大きいリング状のコイル収納容器46に収容されており、コイル収納容器46は後述するように中間電位電極としても作用する。
冷却機構61はコイル収納容器46の内径よりやや小さい外径を有する有底円筒状をなし、冷却機構61の開口端側には外側に向かって広がるフランジ部61aが形成されている。そして、冷却機構61の開口端に、冷却機構61と同径の円錐台状のテーパ−リング64が取付けられている。ここで、冷却機構61の開口端にはテーパ−リング64の底面(平面)側が対向し、テーパ−リング64の円錐面(斜面)は冷却機構61の先端から先細になるよう突出している。一方、冷却機構61の底面の中心には支持機構26を挿通させる中心孔が開口し、中心孔より外側には冷却機構61の内部空間に冷媒49を出入りさせるための入口61b及び出口61cが設けられている。
冷媒49は、カソード22及びテーパ−リング64に直接接触してこれらを冷却する。カソード22及びテーパ−リング64を冷却すると、これらの温度を一定に保つことが可能となり、成膜速度が一定に維持され、被膜の膜厚再現性が向上する。特に、冷媒49がカソード22及びテーパ−リング64に直接接触すると、上記した効果がより一層発揮される。
テーパ−リング64はその軸方向にカソード22を貫通させる貫通孔を有し、この貫通孔からカソード22が冷却機構61の内部に挿入され、冷却機構61の底面側から挿通された支持機構26の先端がカソード22の後端面に同軸に接続されている。従って、カソード22は、テーパ−リング64の貫通孔の縁部と、支持機構26とによって支持される。
支持機構26の他端はカソード送出機構67に取り付けられ、カソード送出機構67の進退に応じて、支持機構26及びカソード22が冷却機構61内を軸方向に進退する。
又、冷媒49の漏れを防止するため、支持機構26と冷却機構61の中心孔との間の摺動部分、冷却機構61の開口端とテーパ−リング64の底面との接合部分、及びカソード22とテーパ−リング64の貫通孔との間の摺動部分には、それぞれOリング51、53,55が介装されている。
なお、テーパ−リング64の貫通孔の直径が円錐台の上面の直径とほぼ同一であると、テーパ−リング64の円錐状斜面の先端64aが鋭く突出するようになるので、後述するアークスポット移行の制御の点で好ましい。
さらに、この実施形態においては、テーパーリング64のテーパー状の円錐面より前方に、テーパーリング64とほぼ同径で貫通孔を有する傘状のテーパーリングカバー65が配置され、貫通孔からカソード22が挿通されている。テーパーリングカバー65は図示しないセラミックス製ブッシュを介してテーパーリング64の円錐面に取り付けられ、周囲(テーパーリング64、カソード22、及びアーク式蒸発源101の構成部品や真空チャンバ11等)と電気的に絶縁された状態にある。なお、テーパーリングカバー65の貫通孔の径はテーパーリング64の貫通孔の径よりやや大きい。
テーパーリングカバー65は常磁性体のSUS304から成るが、常磁性体の金属又は合金であればいずれのものも使用できる。又、テーパーリング64とテーパーリングカバー65とを取付ける絶縁体としては、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニアなど絶縁特性の高いセラミックスを用いることができる。
又、成膜作業時には、テーパーリング64の先端64aがカソードの蒸発面22aと面一又は蒸発面22aよりやや後退する位置になるよう、カソード22の位置を進退させる。これは、テーパーリング64の先端64aがカソードの蒸発面22aより前方(真空チャンバ内部側)に位置すると、アーク放電がカソードではなくテーパーリングで維持され、被膜の膜質に問題を生じる懸念があるためである。
但し、テーパーリングカバー65がカソード22より前方に位置すると蒸発物質のカバーへの堆積及び剥離の問題もあるため、テーパーリング64、カバー65はいずれもカソード蒸発面22aより後方にある。
なお、長期使用に伴ってカソードは消耗し、蒸発面22aが真空チャンバの外側方向へ後退するので、その分を見越してカソード送出機構67を用いてカソード22を前方に送出し、蒸発を安定させ、成膜速度や品質を一定に保つことが好ましい。但し、成膜処理時間が短い場合や、放電電流が小さくてカソードの消耗速度が遅い場合には、カソード送出機構を備えていなくても、成膜処理時においてカソード蒸発面22aをテーパーリング64の先端より前方に位置させることが可能である。
アーク式蒸発源101の真空チャンバ11への固定は、例えば、まずコイル収納容器46の軸方向の一方の端縁に絶縁リング48を外嵌し、絶縁リング48をコイル収納容器46の端縁と真空チャンバ11の開口縁との間に介装した状態で、コイル収納容器46を真空チャンバ11に嵌め込む。
そして、冷却機構61のフランジ部61aに絶縁リング63を外嵌し、絶縁リング63をフランジ部61aとコイル収納容器46の内壁の端縁との間に介装した状態で、上記した冷却機構61を含むアッセンブリ(カソード22、支持機構26、テーパ−リング64、テーパーリングカバー65及びカソード送出機構67を組み込んだもの)を、冷却機構61の軸方向がコイル収納容器46の軸方向に沿うようにしてコイル収納容器46の内部に収容し、アーク式蒸発源101を設置することができる。
なお、絶縁リング48、63は絶縁及び真空シールとして機能する。
真空チャンバ11へ設置されたアーク式蒸発源101において、カソードの蒸発面22aは、真空チャンバ11の内壁面やアーク式蒸発源101を構成する磁場形成機構などの構造物(例えば、コイル収納容器46の前端面)より前方(真空チャンバ内部側)に位置することが好ましい。カソード蒸発面22aよりも前方に上記した壁面や構造物が存在すると、アーク放電によって蒸発したカソード構成物質(図1の符号17は蒸発又はイオン化したカソード構成物質の流れを示す)が壁面や構造物の表面に堆積する場合がある。そして、堆積したカソード構成物質は、その内部応力等により成膜作業中に剥離・飛散し、被成膜物の表面に付着して被膜形成を妨げたり、被膜中へ混入して被膜品質を低下させたりすることがあるためである。
次に、アーク式蒸発源101を用いて成膜を行う時の動作について説明する。アーク放電電流電源19の陰極は電気導電性を有する支持機構26と電気的に接続され、支持機構26はカソード22と電気的に接続されている。一方、アーク放電電流電源19の陽極側、及び真空チャンバ11はアース2に接続されている。又、電気導電性を有するコイル収納容器46は抵抗器21を介してアース2に接続され、中間電位電極として作用する。このようにして、カソード22と真空チャンバ11との間、カソード22とコイル収納容器46との間でアーク放電が生じ、蒸発・イオン化したカソード構成物質がカソードの蒸発面22aから所定のアノード(アース2に接続されている)方向へ飛び出し、真空チャンバ11内の基板表面(図示していない)に被膜が形成される。
一方、コイル42は励磁電源44に接続され、コイル収納容器46の軸方向(=カソード22の中心軸Ax)に平行な磁界を発生し、アークスポットをカソード蒸発面22aに移行させる。
カソード22としては、中実な円柱形状のものを好ましく使用することができる。また、カソード22として強磁性体でない導電性材料を用いると、カソードの突出量やカソード長さが変化してもテーパーリング64先端に形成される磁場配位に影響を与えないため好ましい。カソード22の材料としては、金属、合金、炭素等の半金属材料、InAs等の半導体材料を挙げることができる。特に、強磁性体でない金属を使用する場合は、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物、金属硫化物の1種以上により構成される材料を用いることが好ましく、このような金属としては、Ti、V、Cr、Al、Nb、Zr、Mo、W、Hf、Taの群から選ばれる1種以上が挙げられる。
テーパーリング64は、例えば鉄、ニッケル、コバルトやこれらを主成分とする合金からなる強磁性体で構成されている。材料入手の容易性や加工コストから、テーパーリング64としては強磁性を有する鉄系材料を使用することが好ましい。
なお、本発明の各実施形態においては、磁場形成機構を「円筒状」としているが、これに限られることはなく、筒状であれば、例えば多角形の断面を有する筒状のものであってもよい。一方、カソードの形状も限定されず、上記した円柱状の他、多角形柱状であってもよい。又、磁場形成機構の筒の断面形状と、カソードの断面形状は相似であっても異なってもよいが、通常、形成される磁場の対称性等の点から、両者の断面形状は相似(例えば、磁場形成機構を円筒にする場合は、カソードも円柱状とする)であることが好ましい。
さらに、磁場形成機構の軸心と、カソードの軸心とは同軸であっても異なっていてもよいが、形成される磁場の対称性等の点から、両者の軸心が同軸であることが好ましい。
<テーパ−リングによる作用>
本発明において強磁性のテーパ−リングを用いることによる作用について説明する。ここで、強磁性体でなく単に導電性(常磁性)のテーパ−リングを用いた場合の作用は図5で説明したとおりであり、上記した特許文献1にその作用が記載されている。
しかしながら、常磁性のテーパ−リングを用いると、カソード蒸発面から外れたアークスポットが先細リングの円錐状斜面へ移行した場合に、斜面(特にカソード蒸発面に近い斜面先端)がアーク放電によって蒸発して消耗することは既に述べたとおりである。そして、先細リングの斜面が消耗すると、斜面と磁力線とのなす角が鋭角でなくなり、アークスポットをカソード蒸発面に戻す効果が低下するため、リングの定期的な交換が必要になる。
そこで、本発明においては、強磁性のテーパ−リングを用いることで磁力線の方向を変え、さらに、テーパ−リング先端での磁束密度を高くしてアークスポットをカソード蒸発面に戻す効果を大幅に向上させることにより、アークスポットがテーパ−リングの円錐面へ移行すること自体を抑制する。
強磁性体材料をキュリー点より十分低い温度で磁場中に配置すると、常磁性体材料と異なり、磁場と強く相互作用して磁力線を引きつける特性を有することが知られている。又、強磁性体材料が磁力線方向に鋭角な先端を有する場合には、その先端部における磁束密度が大きくなる。本発明はこれらの特性を利用し、図2に示すようにして磁力線の方向を変える。
図2は、強磁性のテーパ−リング64を用いた場合の磁力線の方向とアークスポットの移行を示す。上記した特性により、カソード軸Axに平行に入射した磁力線は、強磁性のテーパーリングにより曲げられる。この時、カソード外周面にはカソード前方外周方向に広がる磁力線が形成される。そして、カソード側面と磁力線とが最も鋭角となる方向、つまりカソード前方で最も鋭角βとなり、アークスポッドがカソード面と磁力線とのなす角が鋭角の方向に進む性質によりアークスポットをカソード蒸発面に戻す力が働く。
一方、従来の技術(特許文献1)の場合、図5に示したように磁力線M‘とテーパーリング表面との前方でなす鋭角αにより、アークスポットがカソード面と磁力線とのなす鋭角方向に進む特性を利用してアークスポットを蒸発面に戻している。一方、テーパーリングのうちカソード外周に隣接する(カソード外周に最も近い)部分に着目すると、上記従来技術の場合、カソードの軸に平行な磁力線M’とカソード外周近傍部分とは基本的に角度を形成しない。このため、この部分ではアークスポットをカソード蒸発面に戻す作用は働かず、アークスポットが鋭角方向に進む特性に寄与する部分は、常磁性体性のテーパーリングの斜面と磁力線M’が前方側に形成する鋭角αのみとなる。
これに対して、本発明の場合は強磁性のテーパーリングで磁力線を外側に曲げることで、カソード外周に隣接する(カソード外周に最も近い)部分において、カソード外周と磁力線とが前方で鋭角βをなし、この部分でアークスポットがカソード面と磁力線とのなす鋭角方向に進む特性を利用してアークスポットを蒸発面に戻す効果が大きい。すなわち、アークスポットが斜面に移行する前にカソード外周近傍でアークスポットを蒸発面に戻すことになり、従来より効果的にアークスポットを蒸発面に戻すことができる。もちろん、本発明においても、テーパーリングの斜面による効果も生じる。
さらに、本発明の場合、カソード先端部と隣接する強磁性のテーパーリングの先端が尖っているため、強磁性テーパーリング先端部付近の磁束密度が増加し、イオン生成地点の磁場より強い磁場強度となる。電子やイオンは、より強い磁場強度の領域へ磁力線に沿って移動することが抑制される性質を有するため、テーパーリング先端部付近の磁場が強くなると、この部分から外側へのアークスポットの移行を防止することができる。
以上述べた相乗効果でアークスポットを蒸発面に戻す効果をより一層向上させる。つまり、カソード蒸発面22a側に押し戻す力が従来の常磁性体のリングを用いた場合より強く働きアークスポットをテーパーリングに到達する前にカソード蒸発面に押し戻す効果がより強くなる。この力はテーパーリング64の先端に近づくほど磁束密度が増加するために強くなる。
上記した2つの相乗効果により、アークスポット15はテーパーリング64に到達する前にカソード蒸発面22aに押し戻され、カソード側面へのアークスポットの移行を抑制する効果を向上させることが可能となる。又、このようにテーパーリング表面へのアークスポット移動が抑制されるため、テーパーリング先端がアーク放電で消耗することが少なく、テーパーリングの形状が長期にわたり保たれ、カソード側面へのアークスポット移行を抑制する効果が長期間維持できる。さらに、テーパーリングの構成材料がアーク放電によって蒸発して被膜に混入する不具合も抑制できる。
なお、これらの効果はアーク放電を行う真空容器の真空度に影響されることがなく、キャリアガスを導入しない雰囲気下におけるアーク放電であっても、ガスを導入した場合と同様の効果を得ることが可能である。
<テーパ−リングカバーによる作用>
実施形態1においてテーパ−リングカバー65を用いることによる作用は以下のようになる。すなわち、図2に示すように、高温で負に帯電したドロップレット16が飛散し、テーパ−リング64の円錐面(斜面)近傍に到達しても、円錐面をテーパ−リングカバー65が覆っているために、ドロップレット16はテーパ−リングカバー65表面に付着する。ところが、テーパ−リングカバー65は周囲から絶縁されているため、ドロップレット表面に付着している電子は放電することがなく、アーク放電開始のトリガーとして機能することができない。
又、仮に、カソード構成物質がテーパーリングカバー65表面を被覆したとしても、テーパーリング64とテーパ−リングカバー65との電気的絶縁性は低下しないため、長期にわたりテーパ−リングカバー65の機能を維持することが可能となる。
さらに、テーパーリング64と隙間を生じてテーパ−リングカバー65が存在するため、アーク放電によって形成された高温プラズマから熱がテーパーリング64へ流入することを抑制し、強磁性体から成るテーパーリング64の透磁率の低下を防止できる。
なお、テーパ−リングカバー65の代わりに、後述する実施形態3のようにテーパーリング64表面に絶縁体をめっきや溶射により被覆した場合や、接着剤や絶縁性ネジにより取り付けた場合も同様の効果を得ることができる。特に、絶縁体は電気伝導が低いだけでなく、熱伝導も低いことから、上記した高温プラズマからのテーパーリングへの熱流入を抑制する効果が大きい。
<第2の実施形態>
図3は本発明のアーク式蒸発源の第2の実施形態を示す断面図である。
図3において、磁場形成機構として、コイル42の代わりに円筒形電磁石81を用い、テーパ−リングカバーを用いなかったこと以外は第1の実施形態と同様であるので、同一部分の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
但し、第2の実施形態の場合、コイル42を用いないためにコイル収納容器46がなく、そのままでは真空チャンバ11の開口にアーク式蒸発源103を取付けられない。そこで、コイル収納容器46と外径及び内径が同一のリング状の取付け板(中間電位電極)85を用い、この取付け板85の外縁及び内縁にそれぞれ絶縁リング48、63を嵌めることで、第1の実施形態と同様な設置を行えるようにしている。
又、第2の実施形態の場合、コイル42がないため、励磁電源44が不用である。
円筒型磁石81は全体が磁石で構成されたものに限定されない。例えば強磁性体からなる円筒をカソード22と同軸になるようにしてカソード22の外側に配置し、この円筒の後方に同軸にリング状(円筒状)磁石または円盤状磁石を設けてもよい。この場合、円筒(円盤)状磁石により、その前方の強磁性体の端部に磁場が生じ、さらに強磁性体の他端に磁極が形成される。そして、円筒(円盤)状磁石の端部と、強磁性体の端部とが全体として円筒型磁石とほぼ等価な働きをする。
また、円筒型磁石81の外周および/または後方に図示しない磁石を追加することによって磁場強度を調節してもよい。そして、円筒型磁石は脱着が容易になるように2以上に分割できる構造であってもよく、小型の円柱型や角柱型の棒磁石を周状に配置して全体が円筒状の磁石群となるようにしてもよい。
なお、第2の実施形態の場合、永久磁石を使用するため、電磁石用電流源が不要で蒸発源の構成を簡略化でき、又、比較的小型の磁石で強い磁場を形成できるので装置がコンパクトになる。一方、第1の実施形態の場合、電磁石の電流を制御すれば、アーク放電が安定するような磁場強度の調整が容易である。
<第3の実施形態>
図4は本発明のアーク式蒸発源の第3の実施形態を示す断面図である。
図4において、磁場形成機構として、円筒形電磁石81の代わりにコイル93を用い、テーパ−リング64の円錐面の表面に絶縁体66が被覆されていること以外は第2の実施形態と同様であるので、同一部分の構成については同一符号を付してその説明を省略する。
なお、コイル93を用いることに伴い、励磁電源91が設けられている。
絶縁体66としては、耐熱性の高いアルミナや窒化珪素などのセラミックを使用することが好ましい。絶縁体66は溶射などの方法により、テーパーリング64の円錐面の表面に被覆することができる。絶縁体66を被覆することが困難な場合には、タイル状のセラミックをテーパーリング64の円錐面の表面に接着したり、セラミック製ネジで係止してもよい。
テーパ−リングの円錐面の表面に絶縁体を被覆する効果は、テーパ−リングカバーを用いた第1の実施形態で説明した通りである。
第3の実施形態は、第1の実施形態のような単なるコイルではなく、冷却機構99が円筒型鉄心として機能する点が異なる。冷却機構99はその構造は冷却機構61と同一であるが、強磁性体から成っている。第3の実施形態の場合、冷却機構を強磁性体鉄心として用いるため、第1の実施形態より強い磁場を得ることができる。
冷却機構99のすべての構成材料を強磁性体としなくてもよく、冷却機構の一部(例えば外面)を強磁性体製としてもよい。又、冷却機構99自体は強磁性体でなく、冷却機構99を強磁性体製の円筒内に収容するようにしてもよい。例えば、冷媒49として水を用いる場合、カソード冷却機構自体は錆が発生しにくい(非磁性の)ステンレス鋼(SUS304)で構成し、カソード冷却機構を強磁性体製の円筒に収容することができる。
上記強磁性体としては、鉄、ニッケル、コバルト、及びこれらを主成分とする合金を用いるのが好ましい。金属材料は比較的熱伝導度が高く、テーパーリングを冷却するのに効果的である。
なお、磁場強度は、コイル93に流す電流を変えることによって調整することができる。
本発明の各実施形態にかかるアーク式蒸発源によれば、アーク放電をカソードの蒸発面に規制するので、カソード蒸発面以外の場所へのアーク放電移行を抑制することが可能となる。
さらに、テーパーリングの円錐面に絶縁体を被覆したり、テーパーリングカバーを設けることによって、アーク放電によって形成された高温のプラズマにテーパーリングが接して温度上昇することを抑制し、テーパーリングの透磁率低下を抑制できるので、アーク放電の移行を抑制する効果が大幅に向上する。
<実施例>
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
図1に示すアーク式蒸発源101を用い、カソード22として直径50mm、長さ120mmのCr(純度99.9%)を取り付け、カソード22蒸発面の後方の位置には、内径50.5mm、外径90mm、円錐面の傾斜角が45度のSS400鋼材製(JIS G3101)のテーパーリング64を同軸に設置した。テーパーリングカバー65として厚さ1.5mmのSUS304製のものを用いた。
この蒸発源101をアーク式イオンプレーティング成膜装置に設置して窒化クロム被膜の成膜を行った。被成膜基材として、表面粗さ(算術平均粗さRa)0.02μm以下に研磨した高速度工具鋼(SKH材)を用いた。
まず、成膜に先立ってイオンボンバード処理工程を実施し、被成膜基材表面の清浄化を行った。イオンボンバード処理工程は、図示しない真空排気ポンプにより、真空容器(成膜装置)内を2.7×10−3Pa(2×10−5Torr)以下に排気した後、図示しないガス導入孔からArガスを流量1.7×10−2Pa m/s(10sccm(standard cc/min))で導入し、真空容器内を約1.3Pa(10mTorr)に維持して行った。そして、被成膜基材に、図示しないインピーダンス整合器を介して周波数13.56MHz、電力100Wの高周波電力を10分間印加し、高周波プラズマ放電を行った。被成膜基材は、プラズマからの電子付着により負の自己バイアスが働き、正イオンであるArイオンが加速されて当該基材表面をスパッタし、表面が清浄化される。
イオンボンバード処理工程に続いて、成膜工程を実施した。真空容器内へ窒素ガスを導入し、真空容器内を2.6Paに維持した。そして、カソードにアーク電流100Aを流し、アーク放電を行うと同時に、被成膜基材に直流電圧(−20V)を印加した。この状態を維持し、60分間成膜を行った。
この工程を被成膜基材の交換を行いながら20回繰り返し実施し、20回目に成膜された被成膜基材について膜質の評価およびテーパーリング64表面におけるアーク放電の痕跡の観察を実施した。なお、成膜装置およびアーク式蒸発源101のメンテナンスは、20回の成膜実施中、アーク式蒸発源に設けられたカソード22の交換以外には実施しなかった。
アーク式蒸発源101の代わりに、図3に示すアーク式蒸発源103を用いたこと以外は実施例1とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。但し、テーパーリング64の材質をS50C鋼製(JIS G4051)のものを用いた。
アーク式蒸発源101の代わりに、図4に示すアーク式蒸発源105を用いたこと以外は実施例1とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。但し、テーパーリング64の円錐面の表面に絶縁セラミックとして、アルミナを厚さ0.2mmで溶射したものを被覆した。
カソード22としてCrの代わりにこれと同一寸法の炭素(グラファイト;純度99.9%)を用いて硬質炭素(DLC)被膜の成膜を行い、テーパーリング64の材質をSS400鋼に代えるとともに、カソード22を図示しない厚さ1mmのSUS304製円筒に収容してカソードが冷却水に直接触れないようにし、間接冷却したこと以外は実施例1とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。
但し、成膜工程における導入ガスをArガスに替えると共に真空容器内圧力を0.02Paに変え、被成膜基材に印加する直流電圧を−100Vに変えた。
アーク式蒸発源101の代わりに、図3に示すアーク式蒸発源103を用いたこと以外は実施例4とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。
但し、成膜工程においてArガスは導入しなかった。
アーク式蒸発源101の代わりに、図4に示すアーク式蒸発源105を用いたこと以外は実施例4とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。
但し、テーパーリングカバー65を用いず、テーパーリング64の円錐面の表面に絶縁体として厚さ1.5mmの窒化珪素製タイルをアルミナ製ネジで係止したものを用いた。
又、成膜工程においてArガスは導入しなかった。
<比較例1>
テーパーリング64の材質を常磁性のCr(純度99.9%)に変えたこと以外は実施例2とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。
<比較例2>
テーパーリング64の材質を常磁性の炭素(グラファイト;純度99.9%)に変えたこと以外は実施例2とまったく同様にして成膜を行い、評価を実施した。
<評価>
被成膜物表面に形成された窒化クロム被膜および硬質炭素被膜について、下記に示す評価を実施した。
1.表面粗さ(十点平均粗さ):Rz(JIS−B0601)
触針式粗さ計を使用し、被膜表面の表面粗さRzの測定をJIS−B0601に従って行った。計測位置を変えて5回実施し、その平均値で評価した。
2.膜厚均一性
被膜表面のそれぞれ0.5mm×0.5mm角の領域を任意に5箇所選び、レーザー干渉式の三次元形状測定装置(オリンパス社製レーザー顕微鏡OLI1100)を用いて表面形状を観察した。得られたプロファイルにおいて、大きさ(最大長さ部)が0.05mm以上の膜厚過小部や膜厚過大部の総数を集計した。ここで,膜厚過小部(膜厚過大部)とは、平均膜厚に対して20%を越える段差が形成された領域のことを指す。大きさ0.05mm以上の膜厚過少部や膜厚過大部が生じると、これを起点として剥離が発生する懸念が大きくなったり、相手材攻撃性が増し、相手材の摩耗が進行する懸念が増加する。
なお、平均膜厚は、被膜表面の任意の10ヶ所について、球面研磨法(ボール研磨法)により膜厚を測定し、その平均値を平均膜厚とする。上記膜厚過小部や膜厚過大部は、その他の部分(平均膜厚部)とは明確な段差を有しているため、表面形状のプロファイルで確認することができる。
3.テーパーリング表面のアーク放電の痕跡観察
目視でテーパーリング表面を観察し、アーク放電の痕跡の有無を調査した。
上記の評価結果をそれぞれ表1に示す。
Figure 0005063143
表1から明らかなように、各実施例の場合、被膜の表面粗さ(Rz)が小さく、膜厚過小部及び過大部が認められず膜厚均一性も良好であった。
特に、テーパーリングの前方にテーパーリングカバーを設けた実施例1及び実施例4、並びにテーパーリングの円錐面の表面を絶縁物で被覆した実施例3及び実施例6の場合、テーパーリング円錐面へのアーク移行が全く認められなかった。
又、実施例2および実施例5の場合、テーパーリングの円錐面にアーク放電の痕跡が数箇所認められたが、この箇所は比較例1,2に比べて大幅に減少した。
一方、常磁性体のテーパーリングを用いた比較例1および比較例2の場合、被膜の表面粗さ(Rz)が増大し、又、被膜表面に膜厚過小部や過大部が認めら、テーパーリングの円錐面へのアーク放電の痕跡が実施例に比べて数倍に増えた。
また、各比較例において、テーパーリングの円錐面、特にテーパーリングの先端部の全周にわたってアーク放電が一時的に移行した痕跡が確認できた。さらに、テーパーリングの先端部から離れた円錐面でもアーク痕が多数認められた。後者のアーク痕は、テーパーリング先端部のアーク痕とつながっておらず、両者は別々に移行したものであることが確認された。
本発明の第1の実施形態のアーク式蒸発源を示す断面図である。 第1の実施形態のアーク式蒸発源によって形成される磁場及びアークスポットの移行を示す図である。 本発明の第2の実施形態のアーク式蒸発源を示す断面図である。 本発明の第3の実施形態のアーク式蒸発源を示す断面図である。 従来のアーク式蒸発源によって形成される磁場及びアークスポットの移行を示す図である。
符号の説明
11 真空チャンバ(真空容器壁)
15 アークスポット
16 ドロップレット
17 カソード構成物質の流れ
19 アーク放電電流電源
22 カソード
26 支持機構
42、81、93 磁場形成機構(コイル、円筒型磁石)
61、99 冷却機構
64 テーパーリング
64a テーパ−リング64の円錐状斜面の先端
65 テーパーリングカバー
66 絶縁体被覆
67 カソード送出機構
101、103,105 アーク式蒸発源
M 磁力線
Ax カソード中心軸

Claims (5)

  1. 磁場によって制御されるアーク放電によってカソードのカソード物質を蒸発させるアーク式蒸発源であって、前記カソードと、前記カソード先端の蒸発面付近にカソード中心軸に平行な方向の磁場を形成し、かつ前記カソードの外側に配置される磁場形成機構と、前記カソードを支持する支持機構と、前記カソードを冷却する冷却機構と、円錐台状をなしその軸方向に前記カソードを貫通させる貫通孔を有し、かつ前記カソードの蒸発面に向かって先細になるよう配置されるテーパーリングとを備え、
    前記テーパーリングは強磁性体から成り、使用時に前記テーパーリングの先端が前記カソードの蒸発面と面一又は前記蒸発面より後方に位置することを特徴とするアーク式蒸発源。
  2. 前記テーパーリングの円錐面の表面に絶縁体を備えたことを特徴とする請求項1記載のアーク式蒸発源。
  3. 前記テーパーリングの円錐面より前方に、前記カソードをその軸方向に貫通させる貫通孔を有する常磁性体の金属又は合金からなり、かつ周囲と電気的に絶縁されたリング状のカバーを備えたことを特徴とする請求項1記載のアーク式蒸発源。
  4. 前記磁場形成機構は、コイル、軸方向に磁極を有する円筒型の永久磁石、又は鉄心とコイルとを有する電磁石のいずれかにより構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のアーク式蒸発源。
  5. 前記カソードをその軸方向に進退させるカソード送出機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のアーク式蒸発源。
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