JP2005054230A - 真空アーク蒸着装置 - Google Patents

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Abstract


【課題】 カソード前方のダクト内に磁界を形成する真空アーク蒸着装置において、ダクト内面の堆積物に起因する好ましくない粒子が被成膜物体に到達することを抑制し、それだけ良質の膜を形成する。
【解決手段】 カソード11を含む蒸発源1と、被成膜物体Wを支持するホルダ4と、カソード材料構成元素を含む膜をホルダ4に支持される被成膜物体Wに形成するために蒸発源1においてイオン化されたカソード材料を物体Wへ向け導く磁場形成コイル31が付設されたダクト3とを含んでおり、ダクト3は、真空アーク放電により発生するプラズマ中の粒子がダクト内面の堆積物Dに衝突することで発生するスパッタ粒子がホルダへ向かうことを抑制するフィン状部材5を有している真空アーク蒸着装置A。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば自動車部品、各種機械の部品、各種工具や、自動車部品、機械部品等の成形に用いる金型等の成形用型等の物体に耐摩耗性、摺動性、耐蝕性等のうち少なくとも一つを向上させるなどのための薄膜を形成することに利用できる真空アーク蒸着装置に関する。
真空アーク蒸着装置は減圧雰囲気下においてアノード(陽極)とカソード(陰極)との間に真空アーク放電を生じさせ、該アーク放電によりカソード材料を蒸発させてイオン化したカソード材料を含むプラズマを発生させ、該イオン化したカソード材料を被成膜物体へ飛翔させて該物体上に薄膜を形成するものである。アノードとカソードとの間に真空アーク放電を発生させ、該アーク放電によりカソード材料をイオン化する部分は、一般に、蒸発源とか、真空アーク蒸発源と称されている。真空アーク蒸着装置はプラズマCVD装置などと比べると成膜速度が大きく、膜生産性の点で優れている。
かかる真空アーク蒸着装置においては、カソード材料の蒸発によって生じる巨大溶融粒子(マクロ粒子とか、ドロップレットとも言われている)が被成膜物体に到達付着することを抑制するため、カソード前方に配置したダクト内に磁界を発生させ、該磁界により、カソード・アノード間の真空アーク放電により発生するプラズマをそのプラズマの広がりに対して狭い領域に集束させ、かくして得られる高密度プラズマ領域で巨大溶融粒子を分解することで、被成膜物体への巨大溶融粒子の飛来を抑制することが提案されている(特開平5−171427号公報、特開平11−36063号公報参照)。
また、磁場を用いて巨大溶融粒子の被成膜物体への付着を抑制する真空アーク蒸着装置として偏向磁場型の真空アーク蒸着装置も知られている。偏向磁場型真空アーク蒸着装置は、例えば、特開平2002−294433号公報に開示されているように、蒸発源によりイオン化されたカソード材料を被成膜物体を支持するホルダへ向け飛翔させる偏向磁場が永久磁石や磁場形成用コイルにて形成される湾曲フイルターダクトを含んでいる。
偏向磁場が形成される湾曲フィルターダクトは、荷電粒子であるイオン化されたカソード材料を偏向磁場により選択的にダクトに沿って偏向させて被成膜物体へ導くことができる一方、電気的に中性であるため、或いはたとえ帯電していても質量が非常に大きいため磁場により偏向させることができない粗大粒子については湾曲したダクトの内壁に衝突させ、被成膜物体へ飛来、付着することを抑制する。
特開平5−171427号公報 特開平11−36063号公報 特開平2002−294433号公報
しかしながら、いずれにしても、カソード前方のダクト内に磁界を形成する真空アーク蒸着装置においては、蒸発源から蒸発した粒子がダクト内面に多く付着するようになる。さらに、プラズマ中の高速粒子がダクト内面の堆積物に衝突することで該堆積物がスパッタされ、発生したスパッタ粒子が成膜室内に飛ばされて被成膜物体表面に付着するようになる。このような状態で膜形成を続けると、スパッタ粒子が付着した部分が巨大隆起状部になったり、その部分が剥離脱落して大きい凹部が形成されたりする。
形成される膜の中にかかる巨大隆起状部や大きい凹部が一つでもあると、過酷な物体使用環境においては、該膜により該物体に与えられるべき耐摩耗性等の特性が著しく低下し、該物体の長期信頼性確保の妨げとなったり、かかる部分が不良発生原因になることから該物体は不良品とみなされてしまう。
このような問題は、例えば、クロムをカソード材料とする前記タイプの真空アーク蒸着装置を利用して窒素ガス雰囲気中で自動車部品や各種機械部品表面に耐焼き付き性、摺動性に優れた窒化クロム膜を形成しようとする場合に、ダクト内面の堆積物からのスパッタ粒子によるそれら部品への付着物の発生が顕著である。硬質クロムめっきの代替技術として10μm以上の膜厚が必要な場合には特に問題になってくる。
そこで本発明は、カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダへ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含む真空アーク蒸着装置であって、ダクト内面の堆積物に起因する好ましくない粒子が被成膜物体に到達することを抑制でき、それだけ良質の膜を形成できる真空アーク蒸着装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため本発明は次の第1、第2の真空アーク蒸着装置を提供する。
(1)第1の真空アーク蒸着装置
カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含んでおり、前記真空アーク放電により発生するプラズマ中の粒子が該ダクト内面の堆積物に衝突することで発生する該堆積物のスパッタ粒子が前記ホルダに支持される被成膜物体へ向かうことを抑制する少なくとも一つのフィン状部材が該ダクト内面に立設されている真空アーク蒸着装置。
(2)カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含んでおり、前記ダクトの内面は、前記真空アーク放電により発生するプラズマ中の粒子が該ダクト内面の堆積物に衝突することで発生する該堆積物のスパッタ粒子が前記ホルダに支持される被成膜物体へ向かうことを抑制する多孔状面に形成されている真空アーク蒸着装置。
第1、第2のいずれの真空アーク蒸着装置においても、真空アーク放電により蒸発せしめられ、イオン化されたカソード材料を含むプラズマが磁場形成部材により形成されるダクト内の磁場により集束し、その後被成膜物体への膜形成のために適度に広がり、イオン化されたカソード材料の飛翔方向がホルダに支持される被成膜物体へ向け制御される。
磁場によりプラズマが集束した高密度プラズマ領域においては、その領域へ飛来することがあるカソード材料の巨大溶融粒子が該高密度プラズマにより分解され、それだけ被成膜物体への巨大溶融粒子の飛来を抑制して被成膜物体上に良質の膜を形成することができる。
また、膜形成処理に伴って、蒸発源から蒸発した粒子がダクト内面に付着、堆積し、該堆積物がプラズマ中の高速粒子の衝突によりスパッタされるが、該スパッタ粒子は、第1の装置においてはダクト内面に立設したフィン状部材によりホルダ上の被成膜物体への飛行が抑制され、第2の装置においては堆積しようとする粒子がダクト内面の孔に補足されやすく、さらにそのスパッタ粒子も該孔に止まったり、ダクト内面の凹凸に遮られるなどしてホルダ上の被成膜物体への飛行が抑制され、かくして第1、第2のいずれの装置においてもスパッタ粒子の被成膜物体への到達が抑制され、それだけ良質の膜を形成することができる。
第1、第2のいずれの真空蒸着装置においても、磁場形成部材は、永久磁石からなるものでも、通電により磁場を形成する磁場形成コイルでも、これらの組み合わせでもよい。 また、ダクトは真っ直ぐなものでも、湾曲したものでもよい。
第1の装置におけるフィン状部材の代表例はダクトの内周面に沿う環状のものである。かかるフィン状部材はダクト内面に一つだけ、例えばダクトの前記ホルダに臨む端部内に一つだけ設けられているだけでもよいが、ダクト内面に複数段に設けられてもよい。
第2の装置におけるダクトの多孔状内面は、ダクトと一体的に形成されたものでも、ダクト基体の内面に後付けされたものでもよい。かかるダクトの多孔状内面としては、例えば、繊維状体を絡ませ圧縮したフェルト状材料、繊維状体を織る、編む等してなるメッシュ状材料、不織布、金属又は非金属からなる多孔質材料、これらにカソード材料と馴染みのよいカソード材料元素を含む材料を含ませた又はそのような材料で被覆した材料で形成されているものを例示できる。これら材料は例えばダクト基体内面に後付けすればよい。
前記ホルダは、1又は2以上の被成膜物体を静止状態で支持するだけのものでもよいが、被成膜物体がその周面に全体的に又は略全体的に膜形成すべき物体であるような場合には、1又は2以上の被成膜物体を支持して、定位置の軸線のまわりに回動可能なものでもよい。さらに、複数の物体を支持するホルダの場合は、各物体を該定位置軸線のまわりに公転させつつ自転もさせるものでもよい。
前記ホルダが1又は2以上の被成膜物体を支持して定位置の軸線のまわりに回動可能なものである場合、前記フィン状部材のダクト内面に対する角度及び該フィン状部材のダクト内面からの高さとして次のものを例示できる。
(1) ダクト内面に対する立ち上がり角度について
フィン状部材は、蒸発源及びホルダを該定位置軸線の方向からみた状態で、前記カソードの蒸発面の端から前記ホルダ上の被成膜物体の各部が該ホルダの回動により描く円(多数ある)のうち最大の円へ引いた接線に対し90°以下の角度で前記カソード側へ傾斜するように前記ダクト内面から立ち上がる。
なお、カソード上の真空アーク放電点は一点に固定されるのではなく、カソードの蒸発面をあちらこちらと移動する。よって前記最大円へ引く接線のカソード上の基点をカソード蒸発面の端としている。カソード蒸発面の端とは、前記定位置軸線の方向から見た状態のカソード蒸発面が示す直線の両端のうちいずれか一方の端であるが、ホルダは通常ダクトの該ホルダに臨む開口に対し前記定位置軸線の方向からみたとき左右にずれることなく対称的に配置されるから、該両端のうちいずれの端でもよい。該蒸発面端から前記最大円に引ける接線は2本あるが前記接線はそのうちカソード蒸発面の中心部と定位置軸線とを結ぶ線に対し該蒸発面端と同じ側において引かれる接線である。
(2) ダクト内面からの高さについて。
フィン状部材のダクト内面からの高さは、前記蒸発源及び該ホルダを前記軸線の方向からみた状態で、粒子が、前記ホルダ上の被成膜物体の各部が該ホルダの回動により描く円のうち最大の円へ前記カソードの蒸発面の端から引いた接線の方向に飛行し、前記ホルダ内面又はその延長面により全反射して進行するとした場合の該全反射後の該粒子の飛行を阻止できる高さである。
前記ダクト及びフィン状部材は前記被成膜物体への成膜中、浮遊電位又は正電位に維持してもよい。そうすることで、ダクト内面の堆積物をスパッタしようとするプラズマ中の粒子(主としてプラスにインオ化されたカソード材料)が堆積物に近づかなくなったり、強くは衝突し難くなり、スパッタ粒子の発生がそれだけ抑制される。
同様の理由で、前記ダクト及びフィン状部材は前記被成膜物体への成膜中、前記真空アーク放電により発生するプラズマに対し正電位に維持してもよい。
以上説明したように本発明によると、カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含む真空アーク蒸着装置であって、ダクト内面の堆積物に起因する好ましくない粒子が被成膜物体に到達することを抑制でき、それだけ良質の膜を形成できる真空アーク蒸着装置を提供することができる。
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は真空アーク蒸着装置の1例を上方からみて、且つ、一部を断面で示す図である。 この装置Aは、蒸発源1、成膜室2、蒸発源1と成膜室2を接続するダクト3及び成膜室2内に設置された被成膜物体Wを支持するホルダ4を備えている。
蒸発源1は、カソード11、トリガー電極12、アーク放電用電源13等を備えている。ダクト3の後部にはカソード装着部30が形成されており、カソード11は該装着部30に絶縁部材14を介して装着されている。
カソード11は形成しようとする膜に応じて選択した材料で形成される。このカソードに対するアノードはここでは接地された成膜室2がこれを兼ねている。なお、アノードについては、例えば図1に鎖線で示すようにダクト3内においてカソード11の端部を囲むアノードANを設ける等してもよい。
トリガー電極12はダクト3内においてカソード11の端面(蒸発面)111に臨んでおり、図示を省略した往復駆動装置によりカソード蒸発面に対し接触離反可能である。図1においては、トリガー電極12はカソード11を貫通しているかの如く示されているが、カソード11を貫通しているのではなく、図1には現れていないカソード周囲の壁体に往復動可能に通されている。
アーク放電用電源13はカソード11とアノードとの間にアーク放電用電圧を印加できるように、また、カソード11とアノード間のアーク放電を誘発するためにカソード11とトリガー電極12との間にトリガー用電圧を印加できるように、カソード11等に配線接続されている。トリガー電極12はアーク電流が流れないように抵抗15を介して接地されている。
ダクト3は一方では既述のように絶縁部材14を介してカソード11が装着されており、他方では絶縁部材21を介して成膜室2に接続されている。ダクト3には磁場形成用コイル31が周設されており、該コイルは電源32に接続されている。該電源から通電することで、ダクト3に後述するプラズマ集束のための磁場を形成できる。
成膜室2には、排気装置22が接続されており、これにより成膜室2内及びこれに連通する前記ダクト3内を所定の成膜圧に減圧維持することができる。成膜室2には、成膜用のガスを必要に応じて導入するガス導入部23も設けられている。
ホルダ4は、図1に示す例では、図示省略の駆動装置により回転駆動可能の縦軸41と、これに支持された回転台42と、回転台42上に立設され、図示省略の連動機構により回転台の回転に連動して公転しつつ自転する複数本の被成膜物体支持軸43を備えたものである。縦軸41は定位置にあり、従ってホルダ4は全体として縦軸41の上下方向の定位置回転中心軸線CLのまわりに回転でき、該ホルダ4に搭載された物体Wの各部は回転台42の回転により円を描く。物体Wの各部が描く円は多数あるが、図1、図2にはそのうち最大円MCを示してある。
再びダクト3にもどる。ダクト3はその成膜室2への開口部或いはそれに近い部位の内面に環状のにフィン状部材5が立設されている。このフィン状部材5は、ダクト3内面の堆積物D(図2参照)のスパッタ粒子がホルダ(ホルダ上の物体W)へ向かうことを抑制するものである。該スパッタ粒子は、後述するようにホルダ4に支持される被成膜物体W表面にカソード11の材料構成元素を含む薄膜を形成するためにカソード11とアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにプラズマ化し、イオン化されたカソード材料を被成膜物体Wへ飛翔させるときに、プラズマ中の粒子がダクト3内面の堆積物Dに衝突することで発生する。
フィン状部材5は、蒸発源1及びホルダ4を上方から前記軸線CLの方向に見た状態で、カソード蒸発面111の端、すなわち、上方から見たときの蒸発面を示す直線111L(図2参照)の端a(又はb)のそれぞれから前記最大円MCへ引いた接線La(又はLb)に対し90°以下の角度α(接線に垂直なラインから角度β)でカソード11側へ傾斜するようにダクト3内面に立設されている。その結果、それには限定されないが本例では、フイン状部材5はダクト3の内面に垂直に立設されている。なお、ここではホルダ4はこれに臨むダクト3の開口部に対し、上方から前記軸線CLの方向に見たとき左右対称に配置されており、蒸発面111の端としてaを選択しても、bを選択しても前記角度α(角度β)は同じである。また、接線La(又はLb)に関して言えば、蒸発面端a(又はb)から最大円MCに引ける接線は2本あるがそのうちカソード蒸発面の中心と定位置軸線CLとを結ぶ線Loに対し該蒸発面端と同じ側において引かれる接線である。
フィン状部材5のダクト3内面からの高さhは、図2に示すように、プラズマ中の粒子が前記接線La(又はLb)の方向に飛行し、ダクト3内面又はその延長面3sにより全反射してX(又はX’)方向に進行するとした場合の該全反射後の該粒子の飛行を阻止できる高さである。
ダクト3及びフィン状部材5はここでは被成膜物体Wへの膜形成中、ダクト内面の堆積物のスパッタ粒子の発生を抑制すべくプラズマ中のプラスイオンの接近、到達を抑制できるように浮遊電位に維持される。なお、ダクト3及びフィン状部材5は、同様の目的で、膜成形中、正電位に維持されても、プラズマ電位に対し正電位に維持されてもよい。
以上説明した図1に示す真空アーク蒸着装置Aによると、次のようにして被成膜物体W上にカソード構成材料元素を含む薄膜を形成することができる。
まず、ホルダ4上に被成膜物体Wを搭載する。次いで排気装置22を運転して成膜室2及びダクト3内から排気し、それらを成膜圧力まで減圧する。
また、ホルダ4上の被成膜物体Wには、必要に応じ、膜形成用イオンを引き寄せるためのバイアス電圧を図示省略の電源から印加してもよい。成膜中、ホルダ4上の物体Wは回転台42の回転により公転させつつ自転させる。
かかる状態で、蒸発源1におけるトリガー電極12をカソード11の蒸発面111に接触させ、引き続き引き離す。これにより電極12とカソード11間に火花が発生し、これが引き金となってアノード(成膜室2)とカソード11との間に真空アーク放電が誘発される。このアーク放電によりカソード材料が加熱され、カソード材料が蒸発し、さらにカソード11前方にイオン化カソード材料を含むプラズマが形成され始める。
また、磁場形成コイル31へ電源32から通電してダクト3内に磁場を形成しておく。さらに、必要に応じ成膜室2内へ膜構成元素を含む所定量のガスを導入する。
蒸発源1において生成された前記プラズマは磁場形成コイル31により形成されたダクト内磁場により集束し、その後被成膜物体への膜形成のために適度に広がり、イオン化されたカソード材料が被成膜物体Wへ向け飛翔し、かくしてカソード材料に基づく、或いはカソード材料と導入されるガスとに基づく薄膜が各物体Wの表面に形成される。
この成膜中、ダクト3内の磁場によりプラズマが集束した高密度プラズマ領域においては、その領域へ飛来することがあるカソード材料の巨大溶融粒子が該高密度プラズマにより分解され、それだけ被成膜物体Wへの巨大溶融粒子の飛来を抑制して被成膜物体上に良質の膜を形成することができる。
また、膜形成処理に伴って、蒸発源1から蒸発した粒子がダクト内面に付着、堆積し、該堆積物Dがプラズマ中の高速粒子の衝突によりスパッタされるが、該スパッタ粒子は、ダクト3内面に立設したフィン状部材5によりホルダ4上の被成膜物体Wへの飛行が抑制され、かくしてスパッタ粒子の被成膜物体Wへの到達が抑制され、それだけ良質の膜を形成することができる。
以上説明した装置Aではフィン状部材5は1枚設けられているだけであるが、図3に示すように、ダクト3内面に複数段に立設してもよい。また、かかるフィン状部材5に代えて、図4に示すようにダクト内面を多孔状面50に形成してもよい。図4に示す例では、多孔材料500をダクト基体内面に接着して多孔状面が形成されている。かかる多孔材料としては、既述のとおり、フェルト状材料、メッシュ状材料、不織布、金属又は非金属からなる多孔質材料、これらにカソード材料と馴染みのよいカソード材料元素を含む材料を含ませた又はそのような材料で被覆した材料を採用できる。多孔状ダクト内面も、浮遊電位、正電位或いはプラズマ電位に対し正電位に維持されてもよい。
このように内面が多孔状内面50に形成されたダクト3を採用すると、蒸発源1から蒸発した粒子がダクト内面の孔に補足されやすく、また、そのスパッタ粒子も該孔に止まったり、ダクト内面の凹凸に遮られるなどしてホルダ4上の被成膜物体Wへの飛行が抑制され、かくしてスパッタ粒子の被成膜物体への到達が抑制され、それだけ良質の膜を形成することができる。
また、以上説明した真空アーク蒸着装置Aにおいては、ダクト3は真っ直ぐ延びたものであるが、図5に示す真空アーク蒸着装置Bのように、湾曲したダクト3’を採用してもよい。かかるダクト3’を採用するときにも、該ダクト3’に磁場形成コイル31’を周設し、これに電源32’から通電することでダクト内に磁場を形成することができる。また、ダクト内面の堆積物のスパッタ粒子の進行を妨げるためにダクト内面にフィン状部材を立設したり、ダクト内面を多孔状面に形成しておけばよい。図示の例ではフィン状部材5’がダクト3’の出口部分内面に立設されている。
参考までに物体支持ホルダの他の例を図6及び図7を参照して説明しておく。図6のホルダ4’は、回転台42’上に複数のチャック44を等中心角度間隔で放射状に配設したものである。各チャック44に被成膜物体である例えば工具W’を保持させて回動させることができる。このホルダの場合、物体W’の各部が描く円のうち最大円MC’は搭載された工具W’の先端が描く円となる。
図6のホルダ4”は、回転台42’上に被成膜物体W”を搭載して回転させることができるもので、この場合の物体”の各部が描く円のうち最大円MC”は搭載された物体W”の角PやQが描く円となる。図6のホルダが物体W”を回転させるものでないとき、図2における接線LaやLbに相当するものは、カソード蒸発面端から物体W”の最も外側の部分(本例では角PやQ)に引いた線である。
次に、図1に示すタイプの真空アーク蒸着装置において被成膜物体表面に窒化クロム膜を形成した実験例1及び比較実験例1並びに窒化チタン膜を形成した実験例2及び比較実験例2について説明する。
実験例1:実験条件
カソード:クロムカソード
蒸着面 64mm径の円形蒸着面
アーク電流:150アンペア
ダクト:材質 ステンレススチール(SUS316)
直径100mm、長さ100mm
ダクト内磁場強さ:700Oe(エルステッド)
フィン状部材:ダクト内面に垂直に環状に立設。 個数 1個
材質 ステンレススチール(SUS316)
厚さ2mm、高さ5mm
フィン状部材電位:浮遊電位
成膜室内導入ガス:窒素ガス 導入量 0.5リットル/分
成膜圧力:1.0Pa
被成膜物体:材質 高速度鋼(SKH51)
直径50mm×厚さ5mm
個数 100個
膜厚:各物体 5μm
比較実験例1:実験条件
フィン状部材を設けなかった点を除いて実験例1と同じ。
実験例2:実験条件
カソード:チタンカソード
蒸着面 64mm径の円形蒸着面
アーク電流:100アンペア
ダクト:材質 ステンレススチール(SUS316)
直径100mm、長さ100mm
ダクト内磁場強さ:800Oe(エルステッド)
フィン状部材:ダクト内面に垂直に環状に立設。 個数 1個 材質 ステンレススチール(SUS316)
厚さ2mm、高さ8mm
フィン状部材電位:浮遊電位
成膜室内導入ガス:窒素ガス 導入量 0.5リットル/分
成膜圧力:2.0Pa
被成膜物体:材質 ステンレススチール(SUS304)
直径100mm×厚さ2mm
個数 100個
膜厚:各物体 4μm
比較実験例2:実験条件
フィン状部材を設けなかった点を除いて実験例2と同じ。
実験結果評価:形成された膜に0.5mm径以上の付着物や凹部のある不良品の数を調べたところ、
実験例1では100個中0個であったが、比較実験例1では100個中付着物のある物5個、凹部のある物2個であった(不良品合計7個/100個)。
実験例2では100個中0個であったが、比較実験例2では100個中付着物のある物1個、凹部のある物1個であった(不良品合計2個/100個)。
これら実験結果からフィン状部材がダクト内面の堆積物のスパッタ粒子が被成膜物体へ到達することを十分妨げていることが分かる。
本発明は、例えば自動車部品、各種機械の部品、各種工具や、自動車部品、機械部品等の成形に用いる金型等の成形用型等の物体に耐摩耗性、摺動性、耐蝕性等のうち少なくとも一つを向上させるなどのための良質の薄膜を形成することに利用できる。
真空アーク蒸着装置の1例を上方からみて、且つ、一部を断面で示す図である。 フィン状部材の立設角度、高さを説明する図である。 ダクトの他の例を示す断面図である。 ダクトのさらに他の例を示す断面図である。 真空アーク蒸着装置の他の例を示す図である。 被成膜物体支持ホルダの他の例を示す図である。 被成膜物体支持ホルダのさらに他の例を示す図である。
符号の説明
A 真空アーク蒸着装置
1 蒸発源
11 カソード
111 カソード蒸発面
111L 上方から見たとき蒸発面が示す直線
a、b 蒸発面端
12 トリガー電極
13 アーク放電用電源
14 絶縁部材
15 抵抗
2 成膜室
21 絶縁部材
22 排気装置
23 ガス導入部
3 ダクト
30 カソード装着部
3s ダクト内面の延長面
31 磁場形成用コイル
32 電源
AN アノード
4 ホルダ
41 縦軸
CL 定位置の軸線
42 回転台
43 被成膜物体支持軸
W 被成膜物体
MC 物体Wが描く最大円
5 フィン状部材
α フィン状部材の立設角度
β 粒子の全反射角度
Lo カソード蒸発面の中心と定位置軸線CLとを結ぶ線
h フィン状部材の高さ
D ダクト内面の堆積物
La、Lb 接線
50 ダクトの多孔状内面
500 多孔材料
B 真空アーク蒸着装置
3’ 湾曲ダクト
31’ 磁場形成コイル
32’ 電源
4’、4” ホルダ
42’、42”
44 チャック
W’ 工具
W” 被成膜物体
MC’、MC” 物体が描く最大円
P、Q 物体W”の角

Claims (6)

  1. カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含んでおり、前記真空アーク放電により発生するプラズマ中の粒子が該ダクト内面の堆積物に衝突することで発生する該堆積物のスパッタ粒子が前記ホルダに支持される被成膜物体へ向かうことを抑制する少なくとも一つのフィン状部材が該ダクト内面に立設されていることを特徴とする真空アーク蒸着装置。
  2. 前記ホルダは1又は2以上の被成膜物体を支持して定位置の軸線のまわりに回動可能であり、前記フィン状部材は、前記蒸発源及び該ホルダを該軸線の方向からみた状態で、前記ホルダ上の被成膜物体の各部が該ホルダの回動により描く円のうち最大の円へ前記カソードの蒸発面の端から引いた接線に対し90°以下の角度で前記カソード側へ傾斜するように前記ダクト内面に立設されている請求項1記載の真空アーク蒸着装置。
  3. 前記ホルダは1又は2以上の被成膜物体を支持して定位置の軸線のまわりに回動可能であり、前記フィン状部材の前記ダクト内面からの高さは、前記蒸発源及び該ホルダを該軸線の方向からみた状態で、粒子が、前記ホルダ上の被成膜物体の各部が該ホルダの回動により描く円のうち最大の円へ前記カソードの蒸発面の端から引いた接線の方向に飛行し、前記ホルダ内面又はその延長面により全反射して進行するとした場合の該全反射後の該粒子の飛行を阻止できる高さである請求項1又は2記載の真空アーク蒸着装置。
  4. 前記ダクト及びフィン状部材は前記被成膜物体への成膜中、浮遊電位又は正電位に維持される請求項1、2又は3記載の真空アーク蒸着装置。
  5. 前記ダクト及びフィン状部材は前記被成膜物体への成膜中、前記真空アーク放電により発生するプラズマに対し正電位に維持される請求項1、2又は3記載の真空アーク蒸着装置。
  6. カソードとアノード間の真空アーク放電によりカソード材料を蒸発させるとともにイオン化する蒸発源と、被成膜物体を支持するホルダと、該カソード材料構成元素を含む膜を該ホルダに支持される被成膜物体上に形成するために該蒸発源によりイオン化されたカソード材料を該ホルダに支持される被成膜物体へ向け導く磁場形成部材が付設されたダクトとを含んでおり、前記ダクトの内面は、前記真空アーク放電により発生するプラズマ中の粒子が該ダクト内面の堆積物に衝突することで発生する該堆積物のスパッタ粒子が前記ホルダに支持される被成膜物体へ向かうことを抑制する多孔状面に形成されていることを特徴とする真空アーク蒸着装置。
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