JP5062725B2 - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
しかしながら、たとえば、工場設備などの固定発生源から発生するNOxを直接分解する方法は、いずれも高温反応であり、外部より多量の熱を供給することが必要とされる。また還元剤による分解法ではアンモニア等の環境負荷型還元剤が大量に必要とされる。
また、自動車を始めとする移動発生源から発生するNOxの処理手段としては、排気ガスを処理するためのNOx処理手段をエンジンに続く部分に設置することが行われる。このNOx処理には発生源の規模や使用状況に応じて種々の装置や方法が開発されている。
たとえば、陽極及び陰極を備えた酸素イオン導電性固体酸化物膜に通電し、その通電量を制御することによりNOxを分解する排ガス浄化装置(特許文献1〜3)、酸素イオン導電性固体酸化物膜を利用した電気化学セルを用いた排NOxを分解・除去するシステム(特許文献4)や陽陰極電極を備えたプロトン導電高分子膜にNOxを供給する際の通電量を制御することで、NOxを100℃以下で還元分解する装置が知られている(特許文献5)。
しかしながら、これらの方法は、いずれも、電気化学セルに電気エネルギーを印加しなければならず、省エネタイプの処理方法とはいえなかった。
この場合、供給酸素ガスがNOxなどの不純物を含む場合、不純物であるNOxを、あらかじめ、別途水素等により還元して無害化しておく方法も知られている。
たとえば、改質ガスや燃焼ガス中のCOやNOxの濃度を低減する反応器およびNOxを浄化する反応器を備えた燃料電池システム(特許文献6)や供給空気中のNOxを浄化する反応器を備えた燃料電池(特許文献7)などが具体的に提案されている。
しかしながら、これらの燃料電池は、供給ガスに含まれる窒素酸化物を事前に無害化するための反応器や浄化装置を設置する必要があり、このため、部品点数が増え、装置が複雑化・大型化してしまい、緩和な条件による窒素酸化物の無害化と高分子電解質型燃料電池の小型化といった時代の要請に応えるものではなかった。
しかしながら、この特許文献記載の方法は、一酸化窒素からヒドロキシルアミンの反応選択率の向上を図るために、触媒として鉄フタロシアニンを用いることを要旨とするものであり、また、電解質として硫酸、硝酸、過塩素酸などの水溶液を用いるものであって、固体の高分子電解質膜を使用する方法ではなかった。また、生成したヒドロキシルアミンを電解質膜に溶解させ、反応系外に取り出すものであって、NOxを窒素ガスなどに無害化すると共に水素と酸素の反応を利用してこれを水蒸気に変換して発電を可能にする高分子電解質型燃料電池の作製を何ら示唆するものではなかった。
この高分子電解質型燃料電池は、NOx処理のための付帯的な設備を必要とせず、また電気エネルギーを外部から投入しなくても、比較的穏和な温度条件下における無通電によってNOxを無害化することができ、併せて良好な自己発電を可能とするものである。
したがって、かかる燃料電池は、従来のものと異なり、燃料電池そのものがNOxの処理を行うことができ、しかもNOxの処理と同時に発電を行うことができるものであり、画期的な燃料電池発電システムということができる。
しかしながら、このようなエネルギー開発問題と環境問題の両者の解決手段として極めて有効である高分子電解質型燃料電池利用の発電システムは、未だ報告されたことはなく、その研究開発が強く要請されているのが現状である。
水素を含有する改質ガスを燃料ガスとして供給すると共に、NOxを含有する空気を燃料電池の酸素ガス(酸化剤ガス)として直接供給することによって、燃料ガス中に含まれる水素を選択的に利用して酸素ガス中のNOxを還元しつつ、電気エネルギーを取り出すといった特有な要件を採用すると、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]高分子電解質膜1、その一方の側に設けた水素イオン形成能を有する電子導電性燃料極2、これに接して設けた水素ガス含有ガスを供給する通路3、高分子電解質膜1の他方の側に設けたNOxを還元し、これを無害化する機能を有する電子導電性空気極4、及びこれに接して設けたNOx含有空気又はNOx含有酸素ガスを供給する通路5を備え、かつ前記NOxを無害化ガスと水蒸気として取り出すことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
[2]電子導電性燃料極2は、多孔性カーボンペーパーと水素選択透過膜を組み合わせたものであることを特徴とする上記[1]に記載の高分子電解質型燃料電池。
[3]水素選択透過膜が、金属・合金膜、微多孔性無機膜及び有機高分子膜から選ばれることを特徴とする上記[2]に記載の高分子電解質型燃料電池。
[4]電子導電性空気極4は、多孔性カーボンペーパーとNOx選択透過膜を組み合わせたものであることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれかに記載の高分子電解質型燃料電池。
また、本発明によれば、常温作動、活性水素イオンによる高効率還元、各技術を一体化したコンパクトシステムでポータブル化もできる高分子電解質型燃料電池を提供することが可能となる。適用分野としては、自動車排ガス処理、低温排ガス処理、分散型コージェネレーションシステム、長距離トンネルや工場などの閉鎖空間における脱硝などに使用できる。特に、環境対策が充分ではない地域では、簡易かつ効率的な排煙脱硝法として、今後大きな需要増加が見込まれる。
図1に示されるように、本発明の高分子電荷脂質型燃料電池は、高分子電解質膜1、その一方の側に設けた水素イオン形成能を有する電子導電性燃料極2、及びこれに接して設けた水素含有ガスを供給する通路3、高分子電解質膜1の他方の側にはNOxを還元しこれを無害化する機能を有する電子導電性空気極4およびこれに接して設けたNOxを含有するガスを供給する通路5を備え、かつ前記NOxを無害化ガスと水蒸気として取り出すものである。
燃料ガスである水素含有ガスは通路3から供給される。水素含有ガスとしては、制限はなく、水素ガスボンベからの純粋の水素でも炭化水素やメタノールを分解させて得られる水素ガスを含有する改質ガスなどであってもよい。なお、硫黄成分は後続の酸化触媒反応を被毒する性質を有するので、硫黄成分を極力除去しておくことが望ましい。
また、この多孔性カーボンペーパーには水素ガスを酸化するための触媒を塗布しておくことが好ましい。このような触媒としては、白金、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、銅、銀、バナジウムから選ばれた少なくとも一種以上の元素を含む単体や化合物を挙げることができる。
水素選択透過膜としては、金属・合金膜、微多孔性無機膜及び有機高分子膜などのそれ自体従来公知の膜を用いればよい。金属・合金膜としてはPd膜やPd−Ag合金膜、Pd−Cu合金膜が、微多孔性無機膜としては種々の微多孔性炭素膜やSiC膜やSiO2等の膜が、また有機高分子膜としてはポリピロール膜や、導電性マトリックスと複合化したポリイミド膜等が挙げられる。
この特性を有する微多孔性炭素膜は、製法により特定されるというものではなく、ガス分子を選択的に通す機能を有する炭素膜であれば問題ない。微多孔性炭素膜としては、例えば、前駆体有機高分子(フェノール樹脂、ポリイミドなど)膜を適切な条件下(400〜1400℃、無酸素雰囲気)で熱分解することによって得られる炭素膜、および前駆体有機・高分子(フェノール樹脂、ポリイミドなど)膜に、錯体溶解法、イオン交換法、含浸法などによって、ナノ微粒子前駆体を分散させた後に、適切な条件下(400〜1400℃、無酸素雰囲気)で熱分解することによって得られるナノ粒子分散炭素膜(特開2003−053167号公報、特開2004−275986号公報)を挙げることができる。
なお、微多孔性炭素膜の形成にあたっては、種々の炭化水素の高温下での化学蒸着や、黒鉛(グラファイト)のターゲットからのスパッタ蒸着等によっても行うことができる。電極表面に炭素膜を形成する場合にはこれらの方法も採用することができる。
更に第VIII族金属もしくは第IB族金属から選ばれる金属ナノ粒子あるいはその化合物の金属ナノ粒子を分散した微多孔性炭素膜であるとすることにより、より効果的に脱硝を行うことができる。
第VIII族金属としては、Ru、Pt、Pd、白金やニッケルが、第IB族金属としては、Cu、AgやAu等が挙げられる。これらの金属のナノ粒子の粒径は、通常、1nmから20nm程度である。また、これらの金属ナノ粒子を組み合わせた金属ナノ粒子としては、白金−ルテニウム又は白金−パラジウムを挙げることができる。
また、前記微多孔性炭素膜は、第VIII族金属もしくは第IB族金属から選ばれる金属ナノ粒子前駆体を分散させた炭素膜前駆体有機高分子膜を、無酸素雰囲気中、400〜1400℃で熱分解することによって得られる。
また、微多孔性炭素膜からなる燃料極には、電子導電性を付与する材料たとえば、導電性を有する金属(Fe,Ru,Pt,Pd, Cu,Ag,Au, etc)や、導電性酸化物、炭素などを単独、あるいは組み合わせたものを添加併用しておくことが好ましい。
従来の高分子電解質型燃料電池では、空気極に供給するガスとしては、NOxを含まない酸素ガスや空気が用いられており、NOxは反応阻害ガスとして事前に除去されていた。
本発明では、このような従来の技術常識を覆し、空気極にNOx含有ガスを積極的に導入し、これを燃料極からの水素ガスにより還元・無害化し、また分解により生じた酸素を燃料極から放出された水素イオンと電子と反応させてH2Oとして排出すると共に発電を行うことに成功したのである。
すなわち、本発明に係る高分子電解質型燃料電池は、従来のものと異なり、NOxの無害化処理と同時に発電を行うことができるものであり、画期的な燃料電池発電システムということができる。
なお、通路5に供給されるNOxの濃度および流量は、電池1ユニットあたり処理可能なNOxの量に依る。電池1ユニットの規模及び能力によるが、例えば、数十ppmから数%程度のNOxを含む、長距離トンネルや工場などの閉鎖空間における、効率的簡易脱硝法として好適である。
また、この多孔性カーボンペーパーにはNOxを還元するための還元触媒を含有させておくことが好ましい。このような還元触媒としては、Pt、Pd、ロジウム、銀などを含む単体や化合物等を挙げることができる。
NOx選択透過膜としては、微多孔性無機膜や有機高分子膜等を挙げることができる。
このMEAの作成にあたっては、電解質接合体を合わせた状態として、ホットプレスして、電極/電解質接合体を形成することができる。この場合に、電極の厚さが最大でも100ミクロン以下と薄いものであることから、全体としてきわめて薄い電極/電解質接合体の形成が可能となる。さらに、前記ナノ粒子分散炭素膜では、ナノ粒子を炭素膜の片面に局在させることが可能であるため、この場合には、電極触媒塗布が必ずしも必要でなくなるといった利点を有する。
図1のNOxの分解無害化を伴う燃料電池発電システムを室温に保ち、燃料極(アノード)側に加湿水素20ccmを、空気極(カソード)側に3000ppmの乾燥NOを含む窒素ガスを20ccmで供給して、水素−酸素(NO分解によって生成)高分子電解質型燃料電池を作製した。なお、高分子電解質膜としてナフィオン膜を用い、燃料極および空気極として、白金触媒を塗布したカーボンペーパーを用い、これをホットプレスすることによってMEAを自作した。当初のOCV(開回路起電力)は0.6Vであり、電流の増加とともに起電力が変化した。その結果、0.3mW/cm2程度の発電性能を有することがわかった(図2)。
実施例1で得られた発電出力が、窒素ガス中に含まれる微量酸素に起因するのか否かを確認するため、図1の自作MEAで構成される燃料電池発電システムを室温に保ち、燃料極側に加湿水素20ccmを、空気極側にNOを含まない乾燥窒素100ccmを供給することによって、燃料電池発電を試みた。その結果、発電出力は全く得られず、実施例1で得られた発電出力が、窒素ガス中に含まれる極微量酸素に起因するのではなく、NOxの分解に伴って生成した酸素に起因するものであることが確認された。
なお、実施例1の発電性能は、NOx分解反応効率や燃料供給速度・利用率当を最適化していない状態で得られたものであるにもかかわらず、相応の発電性能を有していたことから、これら因子の最適化によって、さらに発電性能の向上が可能と考えられる。
実施例1において、燃料極の形成材料を白金ナノ粒子を分散した水素選択透過性炭素膜およびカーボンペーパーに代え、燃料極側に導入するガスを、加湿したCO含有改質模擬ガスに代えた以外は、実施例1と同様にして操作したところ、実施例1とほぼ同様な発電性能を有する高分子電解質型燃料電池が得られた。
すなわち、電極触媒への被毒を生じうるCOを含有する改質模擬ガスをそのまま供給しても、そのCOを排除し燃料水素を選択的に透過させることによって、NOxを無害化し、かつ相応の発電性能を有する高分子電解質型燃料電池システムを作動させることが可能であることがわかった。
実施例1において、空気極の形成材料をNOx選択透過性炭素膜およびカーボンペーパーに代えた以外は実施例1と同様にして操作したところ、実施例1より優れた発電性能を有する高分子電解質型燃料電池が得られた。
すなわち、NOx選択透過膜によって乾燥排気模擬ガス中のNOxガス濃度が向上し、NOx還元反応がより促進されたことによって、NOx無害化の際の発電性能を向上させた高分子電解質型燃料電池システムを構築することが可能であることがわかった。
実施例1において、燃料極の形成材料を白金ナノ粒子を分散した水素選択透過性炭素膜およびカーボンペーパーに、空気極の形成材料をNOx選択透過性炭素膜およびカーボンペーパーに、更に燃料極側に導入するガスを加湿したCO含有改質模擬ガスに代えた以外は、実施例1と同様にして操作したところ、実施例1と同等以上の発電性能を有する高分子電解質型燃料電池が得られた。
すなわち、電極触媒への被毒を生じるCOを含有する改質模擬ガスを燃料極にそのまま供給し、かつ乾燥排気模擬ガスを空気極に供給しても、燃料水素ならびに酸素源のNOxを選択的に透過させる機能によって、CO被毒を抑えつつNOx還元反応を促進させることによる、NOの無害化と相応の発電性能を有する高分子電解質型燃料電池システムを作動させることが可能であることがわかった。
2:電子導電性燃料極
3:水素含有ガス通路
4:電子導電性空気極
5:NOx含有ガス通路
Claims (4)
- 高分子電解質膜1、その一方の側に設けた水素イオン形成能を有する電子導電性燃料極2、これに接して設けた水素ガス含有ガスを供給する通路3、高分子電解質膜1の他方の側に設けたNOxを還元し、これを無害化する機能を有する電子導電性空気極4、及びこれに接して設けたNOx含有空気又はNOx含有酸素ガスを供給する通路5を備え、かつ前記NOxを無害化ガスと水蒸気として取り出すことを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
- 電子導電性燃料極2は、多孔性カーボンペーパーと水素選択透過膜を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質型燃料電池。
- 水素選択透過膜が、金属・合金膜、微多孔性無機膜及び有機高分子膜から選ばれることを特徴とする請求項2に記載の高分子電解質型燃料電池。
- 電子導電性空気極4は、多孔性カーボンペーパーとNOx選択透過膜を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高分子電解質型燃料電池。
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