JP5061930B2 - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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本発明は、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造する方法に関する。さらに詳しくは、従来品に比べてジプロピレングリコール(以下DPGという)量およびカルボキシル基末端(以下COOHという)量が少なく、耐熱性・色調に優れたポリエステルの製造方法に関するものである。
ポリエチレンテレフタレート(以下PETという)に代表されるポリエステルは機械的強度、耐薬品性などに優れるため、繊維、フィルムあるいは樹脂用途などに広く使用されている。例えば、繊維の場合、PET繊維は衣料用途、産業資材用途を問わず幅広く使用されている。しかしながら、PET繊維は伸長弾性回復率、屈折回復率が低いため、ストレッチ性を要求される用途、例えば衣料用途のインナー、スポーツ衣料、パンストなどの用途には好適に用いられなかった。このようなPET繊維の特性を改良するために種々な提案がなされているが、その一つとして、エチレングリコールの変わりに1,3−プロパンジオール(以下PGという)を用いたポリプロピレンテレフタレート(慣用名ポリトリメチレンテレフタレート、以下PTTという)を用いることによって伸長弾性回復率、屈折回復率の高い繊維を得ることが提案されている。
近年、安価なPGの製造法が開発されるにつれてPTTは安価に製造されるようになってきており、重合触媒としては従来から低温活性のあるチタン化合物が主に使用されている(特許文献1〜6)。 しかしながら、触媒としてチタン化合物を用いると得られるPTTは著しく黄味に着色するだけでなく、重合反応時に副反応が生成し易く、分解反応も促進されるためにDPG量やCOOH量が増加したり、熱安定性が劣ることが問題となっている。また、紡糸時における分解反応による分子量の低下や紡糸性の不安定さによる糸切れが多発、さらに得られた繊維物性については強度等において満足できるレベルでなく、実用性能に乏しいものしか得られないといった問題があった。
そこで、このPTTの耐熱性を向上させるために重縮合段階で安定剤としてホスホン酸系化合物、あるいはホスホン酸塩化合物とホスフィン酸化合物の併用などリン化合物を添加したり、マグネシウム化合物などを併用する方法等について試みられている(特許文献3〜6)。しかしながら、これらの方法を用いることによって確かにポリマーの耐熱性はある程度向上するものの、一定量以上のリン化合物を加えると、触媒として用いたチタン化合物の重合活性が抑えられ過ぎるために目標の重合度まで到達せず、重合反応が遅延したり、結果としてポリマーの色調が悪化したり、副反応の生成や分解反応も促進されることになる。このため、ある一定レベル以上の耐熱性や色調のポリエステルを得ることはできず、チタン化合物の重合反応活性を損なうことなく、副反応を抑制するという矛盾した課題を解決する必要があった。
本発明は上記課題を改善することについて鋭意検討した結果、チタン系化合物を重合触媒として用いて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造する工程において、特定のリン化合物を添加することにより本発明の目的を達成できるという知見を得た。
特開平8−311177号公報(特許請求の範囲) 特開2001−294655号公報(特許請求の範囲) 特開2004−238552号公報(特許請求の範囲) 特開2000−159876号公報(特許請求の範囲) 特公昭59−21889号公報(特許請求の範囲) 特開2006−63324号公報(特許請求の範囲)
本発明の目的は上記従来の問題を解消し、従来品に比べてDPG含有量およびCOOH量が少なく、耐熱性・色調に優れたポリエステルの製造方法を提供することである。
上記本発明の課題は、テレフタル酸(以下TPAという)を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、PGを主成分とするジオールとのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造するに際して、重合反応が完了するまでの任意の段階で下記式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加することを特徴とするポリエステルの製造方法により達成できる。
Figure 0005061930
(上記式1〜式3中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表しており、a,bは0〜5の整数、mは0または1を表している。)
本発明のポリエステルの製造方法において、式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加することで、従来に比べてDPG含有量およびCOOH量が少なく、耐熱性・色調に優れたポリエステルを提供することができる。
本発明の主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルは、酸成分としてTPAを主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体であり、グリコール成分としては、PGを主体とするジオール又はそのエステル形成性誘導体から構成される。また、本発明のポリエステルには、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、共重合成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のホスホニウム塩等のジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸等のオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体等を共重合してもよい。
本発明のポリエステルを製造する際の重縮合反応触媒としてのチタン化合物は、特に限定されないが、チタンアルコキシド、チタンアシレートおよびチタンキレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の有機チタン化合物が好ましく用いられる。
具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート(以下TPTという)、テトラ−n−ブチルチタネート(以下TBTという)、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート、テトラステアロキシチタネート、テトラ−n−プロピルチタネートポリマー、テトライソプロピルチタネートポリマー、テトラ−n−ブチルチタネートポリマー、テトラ−t−ブチルチタネートポリマー等のチタンアルコキシド、あるいはこれらの混合チタネート、トリ−n−ブトキシチタンステアレート、イソプロポキシステアレート等のチタンアシレート、あるいはこれらの混合チタネート、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトネート、ジヒドロキシ・ビスラクタトチタン等のチタンキレート、あるいはこれらの混合チタネートが挙げられる。
また、多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または含窒素カルボン酸をキレート剤とするチタン錯体も用いられるが、キレート剤としては多価カルボン酸としてフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としては乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。また、含窒素カルボン酸としてはエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、カルボキシイミノ二酢酸、カルボキシメチルイミノ二プロピオン酸、ジエチレントリアミノ五酢酸、トリエチレンテトラミノ六酢酸、イミノ二酢酸、イミノ二プロピオン酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二プロピオン酸、メトキシエチルイミノ二酢酸等が挙げられる。これらのチタン化合物は単独で用いても併用して用いてもよい。
なお、本発明のポリエステルの製造方法は、艶消し剤の目的で添加する酸化チタン粒子を除くチタン化合物を、得られるポリマーに対してチタン原子換算で10〜500ppmとなるように添加することが好ましい。25〜350ppmであると重合反応の遅延がなく、ポリマーの耐熱性や色調がより良好であり、DPGやCOOHも少なく好ましい。さらに好ましくは50〜250ppmである。
本発明のポリエステルの製造方法は、下記式1〜式3で表される特定のリン化合物のうち少なくとも1種を重合反応が完了するまでの任意の段階で添加することが必要である。
式1で表されるリン化合物としては、具体的には、フェニルホスホナイト、2−カルボキシフェニルホスホナイト、3−カルボキシフェニルホスホナイト、4−カルボキシフェニルホスホナイト、2,3−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,6−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,4−ジカルボキシフェニルホスホナイト、3,5−ジカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホナイト、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホナイト、フェニルホスホナイトジメチル、フェニルホスホナイトジエチル、フェニルホスホナイトジフェニル、フェニルホスホナイトジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホナイトジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホナイトジエチル等の亜ホスホン酸系化合物、フェニルホスホネート、2−カルボキシフェニルホスホネート、3−カルボキシフェニルホスホネート、4−カルボキシフェニルホスホネート、2,3−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,6−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,4−ジカルボキシフェニルホスホネート、3,5−ジカルボキシフェニルホスホネート、2,3,4−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,3,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,5−トリカルボキシフェニルホスホネート、2,4,6−トリカルボキシフェニルホスホネート、フェニルホスホネートジメチル、フェニルホスホネートジエチル、フェニルホスホネートジフェニル、フェニルホスホネートジベンジル、2,4−ジ−t−ブチルフェニルホスホネートジエチル、2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルホスホネートジエチル等のホスホン酸系化合物などが挙げられる。
式2で表されるリン化合物としては、具体的には、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイトなどの亜ホスホン酸系化合物、ジメチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジエチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジヘキシル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジオクチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジベンジル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジ−t−ブチル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ジフェニル[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネート、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホネートなどのホスホン酸系化合物などが挙げられる。
式3で表されるリン化合物としては、式4で表される化合物の他、具体的には、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4‘−ジイルビスホスホナイト、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイト、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホナイトなどの亜ホスホン酸系化合物、テトラメチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラエチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラヘキシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラオクチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラドデシル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラベンジル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラーt−ブチル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネート、テトラフェニル[1,1−ビフェニル]−4、4’−ジイルビスホスホネートなどのホスホン酸系化合物などが挙げられる。
中でも、式4で表されるリン化合物であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が特に良好となるため好ましい。
Figure 0005061930
(上記式4中、R〜R11は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の分岐構造、芳香環構造、2重結合を1つ以上含んでいてもよい。また、c+d+e=0〜5の整数を、mは0または1を表している。)
上記式4にて表されるリン化合物としては、例えばc=2、d=0、e=0、m=0、R=tert−ブチル基、R=2,4位の化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトがあり、この化合物はIRGAFOS P−EPQ(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)またはSandostab P−EPQ(クラリアント・ジャパン社製)として入手可能である。
式4で表される化合物の中でも、式5で表されるリン化合物であることが、得られるポリエステルの色調や耐熱性が特に良好となるためより好ましい。
Figure 0005061930
(上記式5中、R12〜R14は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表している。なお、炭化水素基は脂環構造、脂肪族の直鎖構造または分岐構造、芳香環構造であり、2重結合を1つ以上含んでいてもよい。また、mは0または1を表している。)
上記式5にて表されるリン化合物としては、m=0、R12=tert−ブチル基、R13=tert−ブチル基、R14=メチル基の化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトがあり、この化合物はGSY−P101(大崎工業社製)として入手可能である。これらの化合物は単独で用いてもまたは併用して用いてもよい。
なお、本発明の特定のリン化合物は単独で添加してもよく、PG等のジオール成分に溶解させた状態または分散させてスラリー状態で添加してもよい。
本発明におけるポリエステルの製造方法は、チタン系重縮合触媒の存在下に重縮合させてポリエステルを得る方法において、式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加すると、驚くべきことに重合反応の遅延がなく、得られるポリマーの色調、耐熱性が飛躍的に改善されるのであり、DPGやCOOHの生成についても抑制できる。
なお、これらポリエステルの着色や耐熱性の悪化はポリエステル重合の副反応によって起こり、金属触媒によってカルボニル酸素が活性化し、β水素が引き抜かれることによりビニル末端基成分およびアルデヒド成分が発生すると考えられる。このような副反応を契機としてポリマーが黄色に着色し、また、アルデヒド成分の発生、主鎖エステル結合の切断によって耐熱性が劣ったポリマーになり、特にチタン化合物を重合触媒として用いた場合には副反応の活性化が大きいために黄色に着色し、耐熱性が劣ったポリマーとなる。ここで、チタン化合物にリン化合物を適度に相互作用させることにより、チタン触媒の活性をある程度調節することもできるが、従来のリン化合物ではチタン化合物の副反応の活性とともに重合活性も低下させることは避けられなかったが、本発明者らは、式1〜式3に示される特定のリン化合物がチタン化合物の重合活性を十分に保持したままで、副反応活性のみを極めて小さく抑えることをできることを見出したのである。
現在のところこの効果のメカニズムは明らかでないはないが、これは従来のリン化合物のチタン化合物に及ぼす効果とは本質的に異なったもの、あるいは少なくとも従来のリン化合物では十分に達成し得なかったものと考えられる。中でも、式4で表されるリン化合物を用いると、リン化合物の耐熱性や耐加水分解性が高いため、ポリエステルの重合において好ましく使用できることがわかった。
本発明のポリエステルの製造方法は、チタン化合物と共に本発明の特定のリン化合物をポリエステルに対してリン原子換算で1〜500ppmとなるように添加することが好ましい。製糸や製膜時におけるポリエステルの耐熱性、色調の観点から、リン添加量は5〜250ppmが好ましく、さらに好ましくは10〜150ppmである。
また、チタン化合物のチタン原子は、リン化合物中のリン原子とのモル比率Ti/Pとして0.05〜50であるとポリエステルの耐熱性や色調が良好となり好ましい。より好ましくはTi/P=0.1〜20であり、さらに好ましくはTi/P=0.2〜10である。
本発明における重縮合触媒とは、一般にジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体及びジオールまたはそのエステル形成性誘導体からポリエステルを合成する一連の反応であって、(1)ジカルボン酸成分とジオール成分との反応であるエステル化反応、あるいは(2)ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分とジオール成分との反応であるエステル交換反応、および(3)実質的にエステル反応またはエステル交換反応が終了し、得られたポリプロピレンテレフタレート低重合体を脱ジオール反応にて高重合度化せしめる重縮合反応、の少なくとも一つの反応促進に寄与する効果を持っているものを指す。従って、繊維の艶消し剤等に無機粒子として一般的に用いられている酸化チタン粒子は上記の反応に対して実質的に触媒作用を有しておらず、本発明の重縮合触媒として用いることができるチタン化合物とは異なる。
本発明のポリエステルの製造方法において、式1〜式3で表される本発明の特定のリン化合物のうち少なくとも1種の添加を、重縮合触媒を添加した後に反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてから重合が目標とする重合度に到達するまでの間に行うことにより、色調が良好でかつ耐熱性に優れたポリエステルが得られる。
なお、PG等のジオール成分を多量に持ち込んだ方法によるリン化合物の添加は、ポリエステルの解重合(ポリエステル主鎖の切断反応)が進行してしまうため、リン化合物を単独で添加するか、あるいは高濃度にリンを含有したマスターペレットを添加する方法が好ましい。この時、リン化合物は、数回に分割して添加してもよく、フィーダーなどで継続的に添加を行っても良い。
また、上記リン化合物の添加方法は、重合系に溶解又は溶融可能であり、かつ、本発明で得られる重合体と実質的に同一成分の重合体から成る容器に充填して添加することが好ましい。容器にリン化合物を入れて添加する方法は減圧条件下での重合反応器に添加を行うことで、リン化合物が飛散して、減圧ラインにリン化合物が流出を防止することができるとともに、リン化合物をポリマー中に所望量添加することができる。ここで本発明でいう容器とは、リン化合物がまとめられるものであればよく、例えば、蓋や栓を有する射出成形容器、あるいはシートやフィルムをシールあるいは縫製などで袋状にしたものなどが含まれる。上記の容器は、空気抜きを作ることがさらに好ましい。空気抜きを作った容器にリン化合物を入れて添加すると、真空条件下で重合反応器に添加しても、空気膨張により容器が破裂してリン化合物が減圧ラインに流出したり、重合反応器の上部や壁面に付着することがなく、ポリマー中にリン化合物を所望量添加することができる。この容器の厚さは、厚すぎると溶解、溶融時間が長くかかるため厚さは薄いほうがよいが、リン化合物の封入・添加作業の際に破裂しない程度の厚さを確保する。そのためには10〜500μm厚さで均一で偏肉のないものが好ましい。特に、重合反応器内の減圧を開始する前に式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を得られるポリエステルに対してリン原子換算で1〜50ppm添加し、かつ重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を、得られるポリエステルに対して10〜500ppm添加すると、色調が特に良好でかつ重合遅延を極めて小さくすることができる。
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定したときの固有粘度(以下IVという)は、0.75〜2.0dlg−1であるのが好ましい。IVが0.75未満では溶融粘度が低いため、繊維形成能が乏しくなるため製糸性の低下や得られる繊維の強度が低いものとなる。一方、IVが2を越えると溶融粘度が高いためにギヤーポンプでのポリマーの計量がスムーズに行われなくなり、安定して押し出すことができないため紡糸性が低下する。好ましいIVは0.80〜1.75である。
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間溶融させた後の色調b値の変化Δb値280が、−2〜5の範囲であることが好ましい。この値が小さいほど、熱劣化による分解・着色が少なく耐熱性に優れている。この値が5を超える場合には、紡糸時や成形加工時にポリマーが変色してしまい品質に重大な影響を与えてしまう。好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。
本発明のポリエステルの製造方法により得られるポリエステルは、例えば溶融押出成形等によってフィラメント状に成形した後、延伸、或いは紡糸等を施すことにより繊維として有用なものとなる。
本発明におけるポリエステルは、以下のような方法によって得られる。
例えば、(A)ジメチルテレフタレートとPGを原料とし、エステル交換反応によって低重合量体を得、さらにその後の重縮合反応によって製造する、(B)TPAとPGを原料とし、直接エステル化反応によって低分子量のPTTまたはそのオリゴマーを得、さらにその後の重縮合反応によって製造する等、によって得ることができる。 ここでエステル化反応は無触媒でも反応は進行するが、前述のチタン化合物を触媒として添加してもよい。また、エステル交換反応においては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、亜鉛、リチウム等の化合物や前述のチタン化合物を触媒として用いて進行させ、またエステル交換反応が実質的に完結した後に、反応に用いた触媒を不活性化する目的で、リン化合物を添加することが行われる。
本発明のポリエステルは、(A)または(B)の一連の反応の任意の段階、好ましくは(A)または(B)の一連の反応の前半で得られた低重合体に重縮合触媒として前述のチタン化合物、リン化合物、また、必要に応じて酸化チタン粒子を添加した後、減圧下、235〜270℃の温度で重縮合反応を進行させ、固有粘度が0.75以上のPTTポリマーを得るものである。
なお、上記の反応は回分式、半回分式あるいは連続式等の形式で実施されるが、本発明の製造方法はそのいずれの形式にも適用し得る。また、得られたポリマーを133Pa以下の減圧下、190〜210℃の温度で固相重合を行い、固有粘度0.9以上のPTTポリマーを得ることができる。
かくして得られた固相重合後のチップを用いて、通常の溶融紡糸法により紡糸温度265℃、孔径0.3mmφ×24孔の口金を用い、紡糸引き取り速度500m/分以上で紡糸を行い、未延伸糸を得る。得られた未延伸糸を通常のホットロール延伸機を用いて延伸し、75dtex24フィラメントの延伸糸を得る。
以下本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法によって求めた。
(1)固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)DPG量
VARIAN社UNITYINOVA600型を用いて、H−NMRを測定し、得られたシグナルの積分比から定量した。
(3)COOH量
オルソクレゾールを溶媒として、25℃で0.02規定のNaOH水溶液を用いて、自動滴定装置(平沼産業社製、COM−550)にて滴定して測定した。
(4)色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L値、b値)として測定した。
(5)ΔCOOH280、Δb値280
ポリエステルを、150℃で12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間加熱溶融させた後、(3)および(4)の方法にてCOOH量および色調を測定し、加熱溶融前後の差をそれぞれΔCOOH280、Δb値280とした。
(6)製糸性(糸切れ、毛羽)
紡糸工程での糸切れ、および延伸工程での糸切れ、毛羽の発生回数を総合して次のようにランク付けし、a級、b級を合格とした。
a級 紡糸時の糸切れなし、延伸時の糸切れ、毛羽なし
b級 紡糸時の糸切れなし、延伸時の糸切れ、毛羽ほとんどなし
c級 紡糸時の糸切れあり、延伸時の糸切れ、毛羽あり
d級 紡糸時の糸切れ多発、延伸時の糸切れ、毛羽多発
実施例1
ジメチルテレフタレート94.2重量部、PG73.8重量部を反応器に仕込み、エステル交換反応触媒としてテトラブチルチタネート(ポリマーに対してチタン原子換算で15ppm相当量)を添加し、140〜240℃まで撹拌しながら4時間かけて昇温、撹拌を行い、エステル交換反応を進行させた。エステル交換反応終了後、反応生成物にテトラブチルチタネート(ポリマーに対してチタン原子換算で100ppm相当量)、およびリン化合物として、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製、GSY−P101)を添加し、反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。
その後、所定の攪拌トルクに到達した時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間35分であった。得られたポリマーの固有粘度は0.93、DPG量0.90モル%、COOH量13.1eq/tonであり、得られたポリマーは色調、耐熱性に優れたものであった。
次いで得られたポリエステルチップを用いて、紡糸温度265℃にて、孔径0.3mmφ×24孔の口金を用いて、紡糸速度750m/分で紡糸を行い、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸をホットロール延伸機にて1HR55℃、2HR80℃、3HR140℃、合計の延伸倍率4.0倍で延伸して75dtex24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、良好な製糸性であった。結果を表1に示した。
実施例2および実施例3
チタン化合物(テトラブチルチタネート)の添加量を変更した以外は実施例1と同様にしてポリエステルを重合した。得られたポリマーは色調および耐熱性はいずれも良好であり、COOH量およびDPG含有量が少ないものであった。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
実施例4
ジメチルテレフタレート94.2重量部、PG73.8重量部を反応器に仕込み、エステル交換反応触媒としてテトラブチルチタネート(ポリマーに対してチタン原子換算で15ppm相当量)を添加し、140〜240℃まで撹拌しながら4時間かけて昇温、撹拌を行い、エステル交換反応を進行させた。エステル交換反応終了後、反応生成物にテトラブチルチタネート(ポリマーに対してチタン原子換算で100ppm相当量)を添加し、反応器内を250℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。
その後、本発明のリン化合物は、所定の攪拌トルクの85%となった時点(減圧を開始してから2時間55分の時点)で、PTTを射出成形して作成した厚さ200μm、内容積500cmの容器にポリマーに対して(リン原子換算で45ppm相当量の)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製、GSY−P101)を詰めて、反応缶上部より添加した。所定の攪拌トルクに到達した時点で反応系を窒素パージして常圧に戻して重合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は3時間30分であった。得られたポリマーの固有粘度は0.93、DPG量0.82モル%、COOH量10.9eq/tonであり、得られたポリマーは色調、耐熱性に優れたものであった。
次いで得られたポリエステルチップを用いて、紡糸温度265℃にて、孔径0.3mmφ×24孔の口金を用いて、紡糸速度750m/分で紡糸を行い、未延伸糸を得た。得られた未延伸糸をホットロール延伸機にて1HR55℃、2HR80℃、3HR140℃、合計の延伸倍率4.0倍で延伸して75dtex24フィラメントの延伸糸を得た。紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、良好な製糸性であった。結果を表1に示した。
実施例5〜7
リン化合物Aの添加量を変更した以外は実施例4と同様にポリエステルを重合した。ポリマーの色調および耐熱性はいずれも良好であり、COOH量、DPG含有量についても少ないものであった。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
実施例8および実施例9
実施例8は、リン化合物としてテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IRGAFOS P−EPQ)(リン化合物B)、また、実施例9は、リン化合物としてビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト(リン化合物C)を用いた点以外は、実施例1と同様にして重合した。得られたポリマーの色調および耐熱性は良好であり、COOH量、DPG含有量は少ないものであった。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
実施例10および実施例11
実施例10は、重縮合開始前に本発明のリン化合物A(リン原子換算で15ppm相当量)を添加した後、反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてから重合が目標とする重合度に到達するまでの間に、本発明のリン化合物Aをさらに添加(リン原子換算で30ppm相当量)した以外は実施例4と同様にポリエステルを重合した。リン化合物の反応系への添加は、所定の攪拌トルクの85%となった時点(減圧を開始してから3時間05分の時点)で、PTTを射出成形して作成した厚さ0.2mm、内容積500cmの容器に本発明のリン化合物Aを詰めて、反応缶上部より添加した。
また、実施例11は、重縮合開始前に本発明のリン化合物A(リン原子換算で35ppm相当量)を添加した後、反応器内を減圧にして重縮合反応を開始させてから重合が目標とする重合度に到達するまでの間に、本発明のリン化合物Aをさらに添加(リン原子換算で100ppm相当量)した以外は実施例10と同様にポリエステルを重合した。得られたポリマーはいずれも色調および耐熱性が良好であり、COOH量、DPG含有量は少ないものであった。また、いずれも紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
実施例12および実施例13
チタン化合物として、テトラブチルチタネートの代わりにテトラプロピルチタネート、クエン酸キレート(チタン錯体)を用いる点以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。得られたポリマーは色調および耐熱性は良好であり、COOH量、DPG含有量は少ないものであった。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
実施例14〜18
リン化合物を変更した以外は、実施例1と同様にして重合した。得られたポリマーの色調および耐熱性は良好であり、COOH量、DPG含有量は少ないものであった。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生はなく、製糸性は良好であった。
比較例1
比較例1はリン化合物を添加しない以外は、実施例1と同様にポリエステルを重合した。得られたポリマーの色調は黄味であり、DPG量、COOH量が多いものであった。耐熱性を評価したところ、ΔCOOH280およびΔb値280の値が高く、耐熱性が劣っていた。得られたポリエステルチップを用いて製糸評価したところ、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例2〜7
リン化合物として、リン酸系化合物を用いた以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。比較例2、4および比較例6、7は、それぞれリン酸、リン酸トリメチルをリン原子換算で25ppm相当量を添加したが、いずれの水準も重合遅延があり、目標IVに到達するまでの時間が大幅に長くなった。また、得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG量、COOH量が多いものであった。耐熱性を評価したところ、ΔCOOH280およびΔb値280の値が高く、耐熱性が劣っていた。
なお、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例3および比較例5は、リン酸、およびリン酸トリメチルをリン原子換算で45ppm相当量添加したものであるが、重合反応性が劣り、所定の撹拌トルクにまで到達しなかったため重合を中止した。
比較例8および比較例9
リン化合物として、式1で示される構造を取らないホスホン酸系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。いずれも重合遅延があり、目標IVに到達するまでの時間が長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG量およびCOOH量が多いものであった。耐熱性を評価したところ、ΔCOOH280およびΔb値280の値が高く、耐熱性が劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例10および比較例11
リン化合物として、ホスフィン酸系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。重合遅延があり、目標IVに到達するまでの時間が長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例12
リン化合物として、ホスフィンオキサイド系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。重合遅延があり、目標IVに到達するまでの時間が長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例13、14
リン化合物として、亜リン酸系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。いずれの水準も重合遅延があり、目標IVに到達するまでの時間が長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例15
リン化合物として、式1で示される構造を取らない亜ホスホン酸系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。所定の撹拌トルクに到達するまでの時間が大幅に長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、熱安定性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例16
リン化合物として、亜ホスフィン酸系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。所定の撹拌トルクに到達するまでの時間が大幅に長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例17
リン化合物として、ホスフィン系化合物を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は実施例1と同様にポリエステルを重合した。所定の撹拌トルクに到達するまでの時間が大幅に長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG含有量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例18
重縮合触媒として、チタン化合物の代わりにアンチモン化合物である酸化アンチモン(アンチモン原子量として250ppm相当量)と、リン化合物としてリン酸を添加(リン原子換算で25ppm相当量)した以外は、実施例1と同様にポリエステルを重合した。
所定の撹拌トルクに到達するまでの時間が大幅に長くなった。得られたポリマーの色調は黄味を帯びており、DPG量およびCOOH量が多かった。ΔCOOH280およびΔb値280の値が大きく、耐熱性に劣っていた。また、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例19
比較例4で得られたポリエステルを真空下、200℃で固相重合を行い、IV1.21のPTTペレットを得た。このPTTペレットとリン化合物A(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(大崎工業社製、GSY−P101)(リン原子換算で45ppm相当量))をドライブレンドしたものを、260℃に設定した東芝機械社製二軸混練機(TEM35)を用いて溶融混練・脱気しながら押し出し、IV0.93のチップを得た。
得られたポリマーの色調は比較例1のポリエステルよりも黄味を帯びており(L値55.3、b値15.4)、COOH量も増加(25.3eq/ton)していた。また、耐熱性についても評価したが、ΔCOOH280およびΔb値280は19.4、9.7であり、耐熱性は劣っていた。なお、混練したチップを用いて製糸評価したところ、紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
比較例20および比較例21
比較例20はリン化合物として、リン化合物B(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、IRGAFOS P−EPQ))を、また、実施例21は、リン化合物C(ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4−イルホスホナイト)を用いた点以外は、比較例19と同様にして真空下、200℃で固相重合したペレットと、ドライブレンドしたものを溶融混練した。
得られたポリマーの色調はいずれの水準も黄味を帯びており(比較例20でのL値56.0、b値14.2、比較例21L値55.5、b値14.9)、また、COOH量も増加していた(比較例20は18.2eq/ton、比較例21は18.5eq/ton)。また、ΔCOOH280およびΔb値280の値についてもさらに増加(比較例20のΔCOOH280は19.6、Δb値10.2、比較例21のΔCOOH280は20.2、Δb値10.7)しており、耐熱性の劣るものであった。
なお、混練したチップを用いて製糸評価したが、いずれの水準とも紡糸工程および延伸工程において糸切れや毛羽の発生がみられ、製糸性は不良であった。
Figure 0005061930
Figure 0005061930

Claims (5)

  1. テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、1,3−プロパンジオールを主成分とするジオールとのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造するに際して、エステル化又はエステル交換、および/又は重縮合触媒としてチタン化合物を使用し、かつ、重合反応が完了するまでの任意の段階で下記式1〜式3で表されるリン化合物のうち少なくとも1種を添加することを特徴とするポリエステルの製造方法。
    Figure 0005061930
    (上記式1〜式3中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜20の炭化水素基を表しており、a,bは0〜5の整数、mは0または1を表している。)
  2. 式3で表されるリン化合物が式4で表される化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
    Figure 0005061930
    (上記式4中、R〜R11は、それぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表している。また、c+d+e=0〜5の整数を、mは0または1を表している。)
  3. 式4で表されるリン化合物が式5で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載のポリエステルの製造方法。
    Figure 0005061930
    (上記式5中、R12〜R14はそれぞれ独立に、炭素数1〜10の炭化水素基を表しており、mは0または1を表している。)
  4. 150℃、12時間減圧乾燥させた後、窒素雰囲気下280℃で60分間溶融させた後のポリマー色調b値の変化が−2〜5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により製造されたポリエステル。
  5. テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、1,3−プロパンジオールを主成分とするジオールとのエステル化反応又はエステル交換反応により得られた生成物を重縮合せしめて、主たる繰り返し単位がプロピレンテレフタレートからなるポリエステルを製造するに際して、エステル化又はエステル交換、および/又は重縮合触媒としてチタン化合物を使用し、かつ、重合反応器内の減圧を開始する前に式1〜式3のリン化合物の少なくとも1種を、得られるポリエステルに対してリン原子換算で0〜50ppm添加し、かつ重合反応器内の減圧を開始してからポリエステルが目標とする重合度に到達するまでの間に式1〜式3のリン化合物の少なくとも1種を、得られるポリエステルに対して10〜500ppm添加することを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
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