JP5061921B2 - 転がり軸受の保持器 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受の保持器に関し、特に、工作機械の主軸に配置される転がり軸受に使用されれば好適な転がり軸受の保持器に関する。
従来、転がり軸受の保持器としては、特開平9−177794号公報(特許文献1)に記載されているものがある。
この保持器は、金属製の芯材と、この心材を覆う樹脂外皮からなっている。この保持器の外周面は、外輪の軌道肩部の内周面に案内されるようになっている。
上記従来の保持器では、外輪の軌道肩部に案内される樹脂外皮の部分が、上記外輪の軌道肩部の内周面との接触に起因して、上記芯材から剥離することがある。
また、従来、工作機械において、高速回転する主軸を回転自在に支持する転がり軸受において、摺動部の摩擦に起因する温度上昇が発生し、この転がり軸受の温度上昇に起因して工作機械の主軸が熱膨張し、工作機械の加工精度が低下することが知られている。このことから、転がり軸受の温度上昇を抑制することが所望されている。
特開平9−177794号公報(第1図)
そこで、本発明の課題は、転がり軸受の温度上昇を抑制できて、軌道輪の周面に案内される案内面が剥離しにくい転がり軸受の保持器を提供することにある。
上記課題を解決するため、この発明の転がり軸受の保持器は、
転がり軸受の軌道部材の周面に案内される環状の案内面を有する樹脂部と、
上記案内面の少なくとも一部に、上記案内面の径方向に重なる箇所に位置する案内面対向部を有すると共に、上記樹脂部が固着されている環状の金属部と
を備え、
上記金属部は、
上記転がり軸受の転動体を収容する複数の転動体収容部と、
上記金属部の外周面と上記金属部の内周面とに開口すると共に、全ての上記転動体収容部に対して間隔をおいて位置する一以上の貫通穴と
を有し、
上記樹脂部は、
上記貫通穴に対して上記貫通穴の上記案内面側に位置すると共に、上記案内面を含む第1部分と、
上記貫通穴に対して上記貫通穴の上記案内面側とは反対側に位置する第2部分と、
上記貫通穴内に充填されていると共に、上記第1部分と上記第2部分とを連結する第3部分と
を有し、
上記案内面は、上記軌道部材の軌道肩部の周面に案内されるようになっており、
上記案内面が上記軌道肩部の周面に案内されている状態において、
上記金属部は、
上記軌道肩部に上記径方向に重なる位置に存在する上記貫通穴と、
上記軌道部材において上記軌道肩部に隣接する軌道面に上記径方向に重なる位置に存在する上記貫通穴と
を有することを特徴としている。
本発明によれば、上記樹脂部における上記案内面を含む第1部分が、金属部の貫通穴に充填された第3部分を介して、上記貫通穴に対して上記貫通穴の上記案内面側とは反対側に位置する第2部分につながっているから、案内面を含む第1部分が、第3部分を介して第2部分に常時引っ張られ、第1部分の案内面が金属部から剥離しにくくなる。
また、本発明によれば、樹脂部が環状の金属部に固着される構成であるから、樹脂部の案内面で摩擦によって発生する熱の一部を、金属部の案内面対向部を介して、金属部の全体に伝導させることができて、案内面の近傍で局所的に発生した熱を、金属部によって大局的に拡散でき、保持器全体で均一化させることができる。したがって、この保持器を有する転がり軸受の温度上昇を抑制することができる。
また、本発明によれば、上記軌道肩部に上記径方向に重なる位置と、上記軌道部材において上記軌道肩部に隣接する軌道面に上記径方向に重なる位置とに貫通穴が存在していて、樹脂の剥離が最も発生し易い軌道肩部の軌道面側の角部(エッジ部)に対して軸方向の両側に、貫通穴が存在しているから、角部を挟んだ二つの貫通穴の存在位置において、第1部分が第2部分にひっぱられ、このことによって、案内面が金属部から浮上することを抑制できる。したがって、案内面の近傍において、樹脂の剥離を抑制する力を、大きくできる。
また、仮に、案内面の近傍で剥離が発生したとしても、角部に対して軸方向の両側の貫通穴の存在位置で、剥離した部分の樹脂部からの離れを防止できる。したがって、剥離した部分が切断されて、この切断された部分の噛み込み等が発生することを確実に防止でき、転がり軸受の損傷が大きくなることを防止できる。
本発明の転がり軸受の保持器によれば、樹脂部における案内面を含む第1部分が、金属部の貫通穴に充填された第3部分を介して、貫通穴に対して貫通穴の上記案内面側とは反対側に位置する第2部分につながっているから、案内面を含む第1部分が、第3部分を介して第2部分に常時引っ張られ、第1部分の案内面が金属部から剥離しにくくなる。
また、本発明の転がり軸受の保持器によれば、樹脂部が環状の金属部に固着される構成であるから、樹脂部の案内面で摩擦によって発生する熱の一部を、金属部の案内面対向部を介して金属部の全体に伝導させることができて、案内面の近傍で局所的に発生した熱を金属部によって大局的に拡散でき、保持器全体で均一化させることができる。したがって、この保持器を有する転がり軸受の温度上昇を抑制することができる。
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。
この玉軸受は、工作機械の主軸(図示せず)を回転自在に支持している。
この玉軸受は、軌道部材としての外輪1、内輪2、転動体としての複数の玉3、この発明の第1実施形態の保持器5を備える。
上記外輪1は、図示しない工作機械のハウジングの内周面に内嵌されて固定されている。上記外輪1は、内周に、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝11を有している。上記外輪1は、軌道溝11の軸方向の一方の側のみに、軌道肩部16を有している。
上記内輪2は、上記主軸の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2は、外周に軌道溝12を有している。また、上記複数の玉3は、外輪1の軌道溝11と、内輪2の軌道溝12との間に、保持器5によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
上記保持器5は、樹脂部21と、環状の金属の板材からなる金属部22とを有している。上記樹脂部21は、金属部22に固着されている。詳しくは、上記金属部22と樹脂部21とは、射出成形によるインサート成形で一体化されている。
上記金属部22の軸中心と、保持器5の軸中心とは、略一致している。上記金属部22の径方向の厚さは、保持器5の径方向の厚さの10〜40%になっている。上記樹脂部44は、ナイロン、ポリイミド、フェノール、ポリアミド、またはポリアミドにカーボンを混入したもの、あるいはポリプロピレン等からなり、金属部22は、アルミ、鉄、黄銅等の金属材料からなっている。
上記保持器5は、外輪1の軌道肩部16に案内されるようになっている。詳しくは、上記樹脂部21は、上記軌道肩部16の内周面17に径方向に重なる位置に、軌道肩部16の内周面17に案内される案内面25を有している。
図1に示すように、上記金属部22は、樹脂部21の内部に存在している。上記金属部22は、樹脂部21の外周面に沿うように、樹脂部21の内部であって樹脂部21の外周側の表層部側に存在している。
上記保持器5が、玉軸受の所定の位置に配置されている状態で、上記金属部22は、軌道肩部16の内周面17に径方向に重なる箇所に、第1貫通穴24aを有し、軌道溝11に径方向に重なる箇所に、第2貫通穴24bを有し、軌道肩部16および軌道溝11に径方向に重ならない箇所に、第3貫通穴24cを有している。各貫通穴24a,24b,24cは、金属部22の外周面と内周面の両方に開口している。
上記樹脂部21は、第1部分36、第2部分37および第3部分38を有している。
上記第1部分36は、貫通穴24a,24b,24cに対して貫通穴24a,24b,24cの径方向の案内面25側に位置している。上記第1部分36は、案内面25を有している。上記第2部分37は、貫通穴24a,24b,24cに対して貫通穴24a,24b,24cの径方向の案内面25側とは反対側に位置している。また、上記第3部分38は、貫通穴24a,24b,24c内に充填されていて、第1部分36と第2部分37とを連結している。
上記第1部分36の径方向の寸法は、第2部分37の径方向の寸法よりも小さくなっている。このようにして、案内面25の近傍で摩擦により発生する熱が、円滑に金属部22に伝達するようにしている。
図2は、上記環状の金属部22を、その金属部22の径方向の外方からみたときの模式図である。
尚、図2において、斜線で示す領域40は、金属部22の外周面において、軌道肩部16(図1参照)の内周面17に、外輪1の径方向に重なる領域(案内面対向部の外周面)を示している。また、図2において、24aで示す貫通穴は、図1に示す第1貫通穴24aであり、24bで示す貫通穴は、図1に示す第2貫通穴24bであり、24cで示す貫通穴は、図1に示す第3貫通穴24cである。
上記金属部22は、金属部22の軸方向の中央部に、複数の玉収容部27を有している。各玉収容部27は、金属部22を径方向に貫通するする貫通穴からなる。上記複数の玉収容部27は、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。上記樹脂部22において玉収容部27の内面に固着された部分の内面は、保持器5のポケットを構成している。上記玉収容部27は、転動体収容部になっている。
図2に示すように、第1乃至第3貫通穴24a,24b,24cは、金属部22において、周方向において、隣接する玉収容部27の間に形成されている。第1乃至第3貫通穴24a,24b,24cは、丸穴であり、径方向に延在している。
上記第1貫通穴24aは、金属部22において、軌道肩部16に径方向に重なる領域かつ玉収容部27よりも軸方向の外方に位置している。また、上記第2貫通穴24bは、金属部22において、玉収容部27に周方向に重なる箇所に位置している。尚、図2において、AA線を含む径方向の断面図が、図1における保持器5の断面図に対応している。
上記第1実施形態の保持器によれば、樹脂部21における案内面25を含む第1部分36が、金属部22の貫通穴24a,24b,24cに充填された第3部分38を介して、貫通穴24a,24b,24cに対して貫通穴24a,24b,24cの径方向の案内面25側とは反対側に位置する第2部分37につながっているから、案内面25を含む第1部分36が、第3部分38を介して第2部分37に常時引っ張られ、第1部分36の案内面25が金属部22から剥離しにくくなる。
また、上記第1実施形態の保持器によれば、上記樹脂部21が、環状の金属部22に固着される構成であるから、樹脂部21の案内面25で摩擦によって発生する熱の一部を、金属部22の案内面対向部の外周面40を介して金属部22の全体に伝導させることができて、案内面25の近傍で局所的に発生した熱を、金属部22によって大局的に拡散でき、保持器5全体で均一化させることができる。したがって、この保持器5を有する玉軸受の温度上昇を抑制できる。
また、上記第1実施形態の保持器によれば、軌道肩部16の内周面17に径方向に重なる位置に第1貫通穴24aが存在すると共に、外輪5において軌道肩部16に隣接する軌道溝11に径方向に重なる位置に第2貫通穴24bが存在していて、樹脂部21の剥離が最も発生し易い軌道肩部16の軌道溝11側の角部(エッジ部)29(図1参照)に対して軸方向の両側に、貫通穴24a,24bが存在しているから、角部29を挟んだ二つの第1および第2貫通穴24a,24bの存在位置において、第1部分36が第2部分37にひっぱられ、このことによって、案内面25が金属部22から浮上することを抑制できる。したがって、案内面25の近傍において、樹脂の剥離を抑制する力を、大きくできる。
また、仮に、案内面25の近傍で剥離が発生したとしても、角部29に対して軸方向の両側の第1および第2貫通穴24a,24bの存在位置で、剥離した部分の樹脂部21からの離れを防止できる。したがって、剥離した部分が切断されて、この切断された部分の噛み込み等が発生することを確実に防止でき、玉軸受の損傷が大きくなることを防止できる。
尚、上記第1実施形態の保持器5では、保持器5の案内面25は、外輪1の内周面に案内されるようになっていたが、この発明では、保持器の案内面は、内輪の外周面に案内されるようになっていても良い。
また、上記第1実施形態の保持器5では、貫通穴24a,24b,24cが複数形成されていたが、この発明では、貫通穴は、一つであっても良い。
また、上記第1実施形態の保持器では、金属部22が、軌道肩部16に径方向に重なる部分に、貫通穴24aを有していたが、この発明では、貫通穴は、必ずしも、軌道肩部に径方向に重なる部分に、形成されていなくても良い。貫通穴は、転動体収容部に間隔をおいた位置であれば、金属部の如何なる位置に形成されても良い。例えば、この発明では、第1実施形態と異なり、貫通穴は、金属部において、転動体収容部に環状の金属部の軸方向に重なる位置に、形成されても良い。
また、上記第1実施形態の保持器5は、転動体収容部27が穴であったが、この発明の保持器は、転動体収容部が凹部である所謂冠型保持器であっても良い。
また、上記第1実施形態の保持器5では、転動体収容部の一例としての玉収容部27に玉3が収容されるようになっていたが、この発明では、転動体収容部に収容される転動体は、玉でなくて、ころ(円筒ころ、円錐ころ、球面ころ)であっても良い。
図3は、この発明の第2実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。
第2実施形態の保持器105では、第1実施形態の保持器5と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにする。尚、図3において、1は、外輪を示し、2は、内輪2を示し、3は、玉を示す。
第2実施形態の保持器105では、金属部122が、樹脂部121の内部に存在している点が、第1実施形態の保持器5と同じである一方、金属部122の軸方向の両側の端部が、外輪1の径方向の内方に屈曲している点が、第1実施形態の保持器5と異なる。
上記第2実施形態の保持器105によれば、金属部122の軸方向の両側の端部が、外輪1の径方向の内方に屈曲しているから、保持器105の剛性を大きくすることができる。
図4は、この発明の第3実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。
第3実施形態の保持器205では、第1実施形態の保持器5と共通の作用効果および変形例については説明を省略することにする。尚、図4において、1は、外輪を示し、2は、内輪2を示し、3は、玉を示す。
第3実施形態の保持器205は、金属部222の軸方向の両側の端部が、軸方向から外輪1の径方向の内方に屈曲して径方向に延在している点と、径方向に延在している径方向延在部231,232の夫々の軸方向の外方の端面234,235が、樹脂部221から外部に露出している点が、第1実施形態の保持器5と異なる。
上記第3実施形態の保持器205によれば、金属部222の軸方向の両側の端部が、外輪1の径方向の内方に屈曲しているから、保持器205の剛性を大きくすることができる。
また、上記第3実施形態の保持器205によれば、径方向に延在している径方向延在部231,232の夫々の軸方向の外方の端面234,235が、樹脂部221から外部に露出しているから、金属部222から外部への熱の放熱性を大きくすることができる。したがって、保持器205の温度上昇を更に抑制できる。
尚、上記第3実施形態の保持器205では、金属部222が、樹脂部221の軸方向の端面から露出しているが、この発明では、金属部は、樹脂部の周面(樹脂部の外周面および樹脂部の内周面のうちの少なくとも一方)から露出していても良い。また、この発明では、金属部は、樹脂部の軸方向の端面および樹脂部の周面の両方(案内面は除く)から露出していても良い。
尚、この発明の保持器は、工作機械の主軸を回転自在に支持する転がり軸受に使用されれば好適である。しかしながら、この発明の保持器を、工作機械の主軸の支持以外の用途の転がり軸受に使用しても良いことは、言うまでもない。
本発明の第1実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。 第1実施形態の保持器において、環状の金属部を、その金属部の径方向の外方からみたときの模式図である。 本発明の第2実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。 本発明の第3実施形態の保持器を備える玉軸受の軸方向の断面図である。
1 外輪
2 内輪
3 玉
5,105,205 保持器
11 軌道溝
16 軌道肩部
21,121,221 樹脂部
22,122,222 金属部
24a,24b,24c 貫通穴
25 案内面
27 玉収容部
36 第1部分
37 第2部分
38 第3部分
40 案内面対向部の外周面

Claims (1)

  1. 転がり軸受の軌道部材の周面に案内される環状の案内面を有する樹脂部と、
    上記案内面の少なくとも一部に、上記案内面の径方向に重なる箇所に位置する案内面対向部を有すると共に、上記樹脂部が固着されている環状の金属部と
    を備え、
    上記金属部は、
    上記転がり軸受の転動体を収容する複数の転動体収容部と、
    上記金属部の外周面と上記金属部の内周面とに開口すると共に、全ての上記転動体収容部に対して間隔をおいて位置する一以上の貫通穴と
    を有し、
    上記樹脂部は、
    上記貫通穴に対して上記貫通穴の上記案内面側に位置すると共に、上記案内面を含む第1部分と、
    上記貫通穴に対して上記貫通穴の上記案内面側とは反対側に位置する第2部分と、
    上記貫通穴内に充填されていると共に、上記第1部分と上記第2部分とを連結する第3部分と
    を有し、
    上記案内面は、上記軌道部材の軌道肩部の周面に案内されるようになっており、
    上記案内面が上記軌道肩部の周面に案内されている状態において、
    上記金属部は、
    上記軌道肩部に上記径方向に重なる位置に存在する上記貫通穴と、
    上記軌道部材において上記軌道肩部に隣接する軌道面に上記径方向に重なる位置に存在する上記貫通穴と
    を有することを特徴とする転がり軸受の保持器。
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