JP5060439B2 - 薄膜基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は窒化アルミニウム基板を用いた薄膜基板の製造方法に関する。
マイクロ波集積回路は、半導体チップをマイクロ波帯のインピーダンス整合回路と直接接続することができるため、パッケージやリード線により生じる寄生リアクタンスの影響を極めて低減することができる。その結果、小型でかつ高精度のマイクロ波周波数帯能動回路を実現することが可能となる。このようなマイクロ波集積回路の特徴を活かして、最近では光通信用ハイブリッドIC、移動体通信用ハイブリッドIC、レーザダイオード用ハイブリッドIC、自動車用ハイブリッドIC等に急速に使用されはじめている。
マイクロ波集積回路においては、回路の高精度化や高信頼性化等が要求されることから、回路形成にはスパッタ法、真空蒸着法、CVD法等の薄膜形成技術、特にPVD(Physical Vapor Deposition:物理的気相成長)法を適用することが一般的である。PVD法等の薄膜形成技術を適用した回路(薄膜回路)は、パターン精度が厚膜回路に比べて1桁以上優れており、また膜材の純度も高く、さらに膜素子の精度、雑音特性、温度特性、安定性等に優れるという利点を有している。
薄膜回路を適用した薄膜ハイブリッドICにおいては、回路を高集積化することが可能であることから、回路動作に伴う発熱量は増大する傾向にある。さらに、半導体チップ自体のハイパワー化等も進められており、半導体チップからの発熱量も年々増大している。このため、マイクロ波集積回路用の基板は放熱性に優れることが重要であり、熱伝導性に優れる窒化アルミニウム基板が多用されるようになってきている。このように、マイクロ波集積回路用基板には熱伝導性に優れる窒化アルミニウム基板に薄膜回路を形成した薄膜基板が多用されるようになってきている。薄膜基板はレーザダイオードのサブマウント基板等としても使用されている。
さらに、マイクロ波集積回路用基板には放熱性に加えて、薄膜回路を精度よく形成することが可能な表面性を有することが求められている。すなわち、スパッタ法等で薄膜回路を形成する場合、薄膜被着面(回路形成面)の表面性が重要であり、表面に凹凸等が存在していると回路の形成精度を低下させることになる。このため、例えば特許文献1に記載されているように、窒化アルミニウム焼結体等を薄膜形成用基板として用いる場合には、表面に鏡面加工を施すことが一般的である。なお、上記公報では窒化アルミニウム基板等の絶縁基板の表面粗さRaを0.1μm以下としている。
特に、窒化アルミニウム焼結体においては、放熱性を向上させるにあたって、熱伝導率の低下原因となる液相を形成する焼結助剤の添加量を少なくする傾向がある。焼結助剤の添加量を少なくした場合には、焼結温度を高くしないと焼結性が悪くなるが、焼結温度を上げると焼結助剤成分(粒界相成分)の焼結体表面への析出が進むと同時に、窒化アルミニウム結晶粒の粒成長が起こりやすくなる。基板表面に存在する焼結助剤成分は薄膜の接合強度を低下させる。さらに、基板表面に必要以上に粒成長した窒化アルミニウム結晶粒が存在すると、基板表面の平坦性が損なわれるため、均一な薄膜を形成することが困難になる。そこで、窒化アルミニウム焼結体(基板)の表面に薄膜を形成する場合には、上述したように薄膜形成面を鏡面加工することが一般的である。さらに、鏡面加工後に酸洗いを実施して、基板表面に付着した汚れ等を除去することも有効である。
ところで、従来の窒化アルミニウム焼結体においては、鏡面加工時や酸洗い時に焼結体表面に存在する粒界相成分の脱落や溶解等が生じやすく、このために薄膜を精度よく形成することが難しいという問題がある。上述した特許文献1に記載されているように、従来の窒化アルミニウム焼結体の表面を単に鏡面研磨しただけでは、表面に析出した粒界相成分や窒化アルミニウム結晶粒が脱落したり、また酸洗い時に粒界相成分の溶解等が生じやすい。これらは比較的大きな凹部の発生原因となる。このような凹部を有する基板表面に薄膜を形成すると、薄膜と基板との間に空隙が生じてしまう。窒化アルミニウム基板と薄膜との間の空隙は、その後の製造工程や回路使用時に印加される熱により膨れを生じさせ、回路精度の低下や薄膜の剥がれの原因となる。
なお、窒化アルミニウム基板の表面性に関しては、例えば特許文献2に部品搭載面や回路形成面のスキューネスを0以下とした基板が記載されている。ここでは銅板等の金属板との接合強度を高めるために、基板表面のスキューネスを研磨条件等に基づいて制御している。しかし、単に窒化アルミニウム焼結体の研磨条件等を制御しただけでは、薄膜の形成面に求められる特性を必ずしも十分に満足させることはできない。
また、特許文献3には窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率や機械的強度を高めるために、内部結晶組織における粒界相の最大径を1μm以下とし、さらに気孔の最大径を1μm以下とした窒化アルミニウム焼結体が記載されている。これら焼結体内部の粒界相や気孔の削減は熱伝導率等の向上には寄与するものの、上述したように薄膜形成用基板では表面状態が問題となるため、焼結体内部の粒界相量等を制御しただけでは、薄膜形成面に求められる特性を十分に満足させることはできない。特に、高熱伝導率化を図った窒化アルミニウム焼結体では、焼結体表面に粒界相成分が析出しやすいため、焼結体内部の粒界相量等を制御しただけでは逆に表面特性が悪化するおそれがある。
特開平11−031869号公報 特開2000−281427号公報 特開平5−238830号公報
本発明は、窒化アルミニウム基板の高放熱特性を活かした上で、各種回路の形成等に使用される金属薄膜との密着性や薄膜形成精度等を高めることを可能にした窒化アルミニウム基板を用いることによって、信頼性や動作特性等の向上を図った薄膜基板の製造方法を提供することを目的としている。
本発明の薄膜基板の製造方法は、焼結助剤として2〜6質量%の範囲の希土類酸化物を含み、焼結助剤の総量が酸化物換算で2〜12質量%の範囲であり、窒化アルミニウム結晶粒の平均粒径が3〜5μmの範囲で、かつ粒径分布の標準偏差が2μm以下であり、かつ常温での熱伝導率が160W/m・K以上である窒化アルミニウム焼結体を作製する工程と、前記窒化アルミニウム焼結体の表面を、加工後の表面のスキューネスRskが−1以上となるように、ダイヤモンド砥石で中仕上げ加工する工程と、前記中仕上げ加工された窒化アルミニウム焼結体の表面を、算術平均粗さRaが0.05μm以下となるように鏡面加工し、加工表面のスキューネスRskを0以上1以下に仕上げ加工して、前記加工表面に存在する焼結助剤成分の凝集体の大きさが20μm以下であると共に、前記加工表面の単位面積当りに占める前記凝集体の面積の総和が5%以下であり、かつ前記加工表面の100×100μmの単位面積当りに存在する、大きさ10μm以上の前記焼結助剤成分の凝集体およびポアの数が、合計数で3個以下であり、厚さが1.5mm以下である窒化アルミニウム基板を作製する工程と、前記窒化アルミニウム基板の前記加工表面上に金属薄膜を形成する工程とを具備することを特徴としている。
本発明によれば、窒化アルミニウム基板の放熱性等を活かした上で、金属薄膜との密着性や金属薄膜の形成精度を高めることができる。従って、このような窒化アルミニウム基板を用いた薄膜基板によれば、マイクロ波集積回路等の薄膜回路デバイスや各種電子部品のサブマウント基板の信頼性や動作特性を高めることが可能となる。特に、窒化アルミニウム基板の厚さを薄くした場合においても薄膜基板の信頼性を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明の窒化アルミニウム基板を使用した薄膜基板の一実施形態の概略構成を示す断面図である。同図において、1は窒化アルミニウム(AlN)焼結体からなる基板である。この薄膜形成用基板としてのAlN基板1の厚さは1.5mm以下であることが好ましい。AlN基板1の表面1aには研磨加工等が施されており、この加工表面1aが薄膜形成面とされている。
加工表面1a上には金属薄膜2が形成されており、これらにより薄膜基板3が構成されている。ここで、加工表面1aの表面粗さはJIS B0601−1994で規定する算術平均粗さRaで0.5μm以下とされている。算術平均粗さRaが0.5μmを超えるような加工表面1aは、金属薄膜2の形成面としての要求特性を満たすことができない。
AlN基板1を構成するAlN焼結体は、AlN結晶粒とこれらAlN結晶粒間に存在する粒界相とから主として構成されている。AlN焼結体は例えば常温での熱伝導率が160W/m・K以上の放熱性を有することが好ましい。AlN焼結体の常温での熱伝導率が160W/m・K未満であると、薄膜基板3を例えばマイクロ波集積回路等に適用する際に、十分な放熱性を確保することができず、AlN基板1を用いることの利点が損なわれてしまう。
AlN焼結体は、例えばAlN粉末に焼結助剤を添加し、さらにバインダ等を加えて混合した後に所定の基板形状に成形し、この成形体を焼結することにより得られるものである。焼結助剤には種々の金属化合物が使用されるが、AlN焼結体の低温焼結を可能にすると共に、主として焼結助剤成分からなる粒界相の偏析や凝集(特に表面1aでの偏析や凝集)を抑制する上で、少なくとも希土類酸化物を使用するものとする。
希土類酸化物としては、例えば酸化イットリウム(Y)、酸化エルビウム(Er)、酸化イッテルビウム(Yb)等が挙げられ、これらのうちでも特に酸化イットリウムを使用することが好ましい。希土類酸化物の配合量は、AlN粉末に対して1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。希土類酸化物の配合量が10質量%を超えると、主として焼結助剤成分からなる粒界相が凝集しやすくなり、AlN基板1の加工表面1aにおける焼結助剤成分の凝集体の存在量が増加しやすくなる。一方、希土類酸化物の配合量が1質量%未満であると、AlN焼結体の焼結性等が低下してポアの増大等を招いたり、また熱伝導性が低下するおそれがある。希土類酸化物の配合量は2〜6質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
焼結助剤としては希土類酸化物に加えて、Ca、Ba、Sr等のアルカリ土類金属元素の酸化物、SiOやSi等のSi化合物、B、BC、TiB、LaB等の硼素化合物等を併用してもよい。なお、希土類酸化物やアルカリ土類酸化物等は、焼成時に酸化物となる炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、フッ化物等として配合してもよい。また、TiO、HfO、ZrO等の黒色化材を併用することも可能である。これらの化合物を希土類酸化物と併用する場合には、焼結助剤の総量が酸化物換算で2〜12質量%の範囲となるように添加量を調整することが好ましい。
上述したAlN基板1においては、図2の拡大模式図に示すように、Raが0.5μm以下となるように加工した後の表面1aに存在する焼結助剤成分の凝集体4の大きさが20μm以下とされている。これによって、鏡面加工後や酸洗い後に大きな凹部(陥没部)が基板表面1aに発生することを防止している。なお、図2において、符号5はAlN結晶粒を示している。
すなわち、希土類酸化物等の焼結助剤は、例えばAlNもしくはAlN粉末中の不純物アルミナ(不純物酸素)と反応して、希土類元素−Al−O(−N)系化合物等として粒界相に存在する。そして、希土類酸化物を含む焼結助剤成分は、粒界相を構成する化合物の形態で、もしくはそれより希土類元素がリッチな化合物等として、AlN焼結体の表面に析出して凝集体4を形成する。このような焼結助剤成分の凝集体4の大きさが20μmを超えると、鏡面加工時や酸洗い工程時に凝集体4の脱落や溶解が起こりやすくなる。特に、上記した粒界相を構成する化合物は酸に溶けやすいため、鏡面加工後の酸洗い工程時に凝集体4が溶解することで大きな凹部(陥没部)が発生してしまう。焼結助剤成分の凝集体4が脱落や溶解することで、AlN結晶粒5の脱粒等も生じやすくなる。
そこで、本発明においては、AlN基板1の加工表面1aに存在する焼結助剤成分の凝集体4の大きさを20μm以下に制御している。ここで言う焼結助剤成分の凝集体4の大きさとは最大径を示すものである。このように、AlN焼結体の表面における焼結助剤成分の凝集を抑え、AlN基板1の加工表面1aに存在する凝集体4の大きさを20μm以下に制御することによって、鏡面加工工程や酸洗い工程における凝集体4の脱落や溶解に起因する凹部(陥没部)の発生を抑制することができる。AlN基板1の加工表面1aに存在する焼結助剤成分の凝集体4の大きさは10μm以下であることがより好ましい。
さらに、AlN基板1は加工表面1aの単位面積(例えば100×100μm)当りに占める焼結助剤成分の凝集体4の面積の総和を5%以下としている。凝集体4の個々の大きさを小さくすることに加えて、加工表面1aの単位面積当りに占める凝集体4の総面積の比率を小さくすることによって、凝集体4の脱落や溶解に起因する凹部の発生量を低減することができる。AlN基板1の加工表面1aの単位面積当りに占める焼結助剤成分の凝集体4の総面積の比率は3%以下とすることがより好ましい。なお、焼結助剤成分の凝集体4の大きさや総面積を低減する方法については後に詳述する。
ここで、AlN基板1の加工表面1aに存在する焼結助剤成分の凝集体4は、加工表面1aを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したり、あるいは加工表面1aの元素分布を電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)で調べることにより確認することができる。焼結助剤成分の凝集体4は、AlN結晶粒5間に存在する粒界相とは存在形態が明らかに異なるものであり、SEMやEPMAにより確認することができる。例えば、焼結助剤としてYを使用した場合、Yを含む化合物(例えばY−Al−O(−N)系の化合物)の凝集体4をEPMAで確認すると、Yの濃度比が粒界相より濃く検出される。SEM像においても、Yを含む化合物の凝集体4はAlN結晶粒5間に存在する粒界相とは異なる濃度で写し出される。
焼結助剤成分の凝集体4の大きさは、AlN基板1の加工表面1aについて、任意の位置のEPMA像やSEM像を撮り、これらに写し出された焼結助剤成分の凝集体4の最大径を示すものとする。さらに、凝集体4の面積率は、上記したEPMA像やSEM像の単位面積(100×100μm)当りに存在する焼結助剤成分の凝集体4の総面積を求め、この凝集体4の総面積の単位面積に対する比率を示すものとする。この面積率は任意の3箇所以上について測定し、その平均値として求めるものとする。
上述した加工表面1aにおける焼結助剤成分の凝集体4の構成(大きさおよび面積比)に基づいて、AlN基板1は酸洗い時における凝集体4の溶解等が抑制される。具体的には、AlN基板1を40℃に保温された20%希釈濃度の酸液に60分間浸漬した際に、酸液浸漬後の質量減少率が0.1%以下という特性を満足するものである。AlN基板1の酸洗いに用いる酸液としては、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)等が挙げられる。
このように、焼結助剤成分の凝集体4の脱落や溶解等に起因する凹部の発生を抑制することで、最終的なAlN基板1の表面1a、すなわち薄膜形成面としての基板表面の平滑性を高めることが可能となる。ここで言う平滑性とは、特に大きな陥没が生じていない状態を指すものである。従って、スパッタ法等により金属薄膜2を形成した際に、金属薄膜2の膜厚が不均一になったり、またAlN基板1と金属薄膜2との間に空隙が生じることが抑制される。このような基板表面1aに形成した金属薄膜2によれば、例えば回路の高精度化を図ったり、その後の工程や回路使用時の熱による膨れを抑制することができる。
さらに、焼結助剤成分の凝集体4の溶解等に起因する質量減少を抑制することによって、酸洗い工程後の機械強度の低下を防ぐことができる。具体的には、AlN基板1を40℃に保温された20%希釈濃度の酸液(硫酸、塩酸、硝酸等)に60分間浸漬した後に3点曲げ強度を測定したとき、酸液に浸漬する前の3点曲げ強度値に対する酸液に浸漬した後の3点曲げ強度値の減少率を30%以下に保つことができる。これは薄膜基板3を各種の装置に実装する際の信頼性の向上等に大きく寄与する。なお、ここでは酸洗いの具体例として40℃に保温された20%希釈濃度の酸液に60分間浸漬する酸洗いを挙げたが、実際にAlN基板に酸洗いする場合にはこれらの条件に限定されるものではなく、実使用条件に応じて酸洗い条件を変更することができる。
薄膜形成面となるAlN基板1の表面1aは、上述したように表面粗さが少なくとも算術平均粗さRaで0.5μm以下となるように加工される。基板表面1aの薄膜形成面としての特性をより一層高める上で、AlN基板1の表面1aはRaが0.05μm以下となるように鏡面加工することが好ましい。Raを0.05μm以下とした鏡面加工面によれば、金属薄膜2の形成精度や密着性をさらに高めることができる。
表面粗さRaを0.05μm以下とした基板表面は、さらにJIS B0601−1994で規定するスキューネス(ゆがみ値)Rskの値が0以上1以下であることが好ましい。すなわち、AlN基板1の鏡面加工面の表面粗さが、Raで0.05μm以下であると共に、スキューネスRskで0以上1以下である場合に、スパッタ法や蒸着法等により形成する金属薄膜2の密着性や形成精度等を大幅に高めることが可能となる。
ここで、スキューネスRskは表面のゆがみを表した値であり、以下のようにして求められる。すなわち、振幅分布曲線と呼ばれる粗さ曲線の最も高い山頂と最も低い谷底との間を等間隔に分割し、2本の平行線内の領域に存在するデータの数と全データ数との比を横軸に、各データの粗さ曲線における高さ方向の値を縦軸にとってプロットする。このプロットの上下方向の偏りを表す。
このようなスキューネスRskが0未満(Rsk<0)、すなわちマイナスの値を示すということは、下方にへこみが多いことを表し、主として焼結助剤成分の凝集体の脱落やAlN結晶粒の脱粒等により基板表面に形成されるポアが多数発生していることを示す。なお、基板表面に形成されるポアは、研磨加工時に発生する脱粒痕のみではなく、基板表面に形成されたAlN結晶粒等の欠落した部分を含むものである。従って、金属薄膜2を形成した際に膜厚が不均一になったり、AlN基板1と金属薄膜2との間に空隙等が生じやすくなる。これらは金属薄膜2を用いて形成した回路の精度低下や剥がれの原因となる。
一方、鏡面加工面のスキューネスRskが1を超える(Rsk>1)と、全体的に上方への山が多くなりすぎ、このような場合にも金属薄膜2による回路の形成精度が低下することになる。言い換えると、AlN基板1の鏡面加工面のRaを0.05μm以下とすると共に、スキューネスRskを0以上1以下に制御することによって、薄膜回路等として使用される金属薄膜2の密着性や形成精度等を大幅に高めることが可能となる。
AlN基板1の表面1aをRaが0.05μm以下となるように鏡面加工する場合には、当然ながらRaを0.5μm以下とする場合に比べて、より厳しい条件下で研磨加工等を施す必要がある。具体的には、基板表面に遊離砥粒を用いたポリッシング加工を施す。このような場合においても、AlN焼結体の表面に析出する焼結助剤成分の凝集体の大きさや総面積を低減することによって、Raが0.05μm以下の鏡面加工面を再現性よく得ることが可能となる。
スキューネスRskの値にも焼結助剤成分の凝集体の大きさや総面積が影響する。AlN焼結体の表面に析出する焼結助剤成分の凝集体の大きさや総面積を低減することは、鏡面加工面のスキューネスRskを0以上1以下に制御する上で有効である。さらに、このようなスキューネスRskを達成する上で、比較的大きな凹部の発生を抑制することが望ましい。このため、大きさが10μm以上の焼結助剤成分の凝集体、および同様な大きさを有するポアの存在数(これらの合計数)は、鏡面加工面の100×100μmという単位面積当りに3個以下(零を含む)とすることが好ましい。さらに、大きさが10μm未満の焼結助剤成分の凝集体やポアについては、鏡面加工面の100×100μmという単位面積当りに占める面積比を3%以下とすることが好ましい。言い換えれば、AlN基板(焼結体)は表面粗さRaを0.5μm以下、さらには0.05μm以下に加工したとしても、加工面に形成されるポアが小さくかつ少ないものといえる。このように、本発明のAlN基板は研磨加工を施しても脱粒等が発生しにくいものである。
上記した粗大な焼結助剤成分の凝集体やポア(大きさ10μm以上)が100×100μmの単位面積当りに3個を超えて存在すると、AlN基板1の鏡面加工面のスキューネスRskがマイナス(Rsk<0)になるおそれがおおきい。同様に、大きさが10μm未満の焼結助剤成分の凝集体やポアの比率(面積比)が3%を超えるとスキューネスRskが低下する。さらに、AlN基板1の鏡面加工面のスキューネスRskを0以上1以下の範囲とする上で、表面加工の際の加工条件を適切化すると共に、基材としてのAlN焼結体の結晶粒径や粒径分布等を制御することも重要である。これらの点については後に詳述する。
上述したAlN基板1の加工表面1aにおける焼結助剤成分の凝集体4の大きさ、並びに凝集体4の総面積は、例えばAlN焼結体の結晶粒を微細化すると共に、その粒径分布をシャープにすることで低減することができる。具体的には、AlN結晶粒の平均粒径を3〜5μmの範囲とすると共に、粒径分布の標準偏差を2μm以下とすることが好ましい。AlN結晶粒の粒径を微細化すると共に、粒径分布をシャープにすることによって、焼結助剤成分(粒界相成分)の析出並びに凝集を抑制することができる。AlN結晶粒の粒径はそれを含む最小円の直径(AlN結晶粒の最大径)を示すものとする。
AlN結晶粒の平均粒径が5μmを超えると、AlN結晶粒同士の隙間(例えば三重点)が大きくなるため、焼結助剤成分(粒界相成分)の析出量が増大し、焼結助剤成分の凝集体4が大きくなると共に、凝集体4の面積の総和が増大する傾向を示す。結晶粒径分布の標準偏差についても同様であり、その値が2μmを超えると焼結助剤成分の焼結体表面への析出量が増大する。一方、AlN結晶粒の平均粒径が3μm未満になると、AlN焼結体の熱伝導率の低下が著しくなり、例えば常温で160W/m・K以上という熱伝導率を満たさなくなるおそれがある。これは薄膜基板3の特性低下に繋がる。
AlN結晶粒の平均粒径や粒径分布は、AlN基板1の表面に鏡面加工を施した場合のスキューネスRskに対しても影響を及ぼす。すなわち、AlN結晶粒の平均粒径が5μmを超えると、研削・研磨加工時にAlN結晶粒が脱粒しやすくなると共に、脱粒痕のスキューネスRskに与える影響が増大する。従って、AlN基板1の鏡面加工面のスキューネスRskがマイナス(Rsk<0)になりやすくなる。粒径分布の標準偏差についても同様であり、その値が2μmを超えると脱粒したAlN結晶粒の影響が増大する。
上述したような微細な結晶粒径およびシャープな粒径分布を有するAlN焼結体は、例えば以下に示すような製造方法を適用することにより再現性よく得ることができる。焼結助剤成分の凝集体4の大きさおよび総面積は、AlN結晶粒の平均粒径や粒径分布のみに左右されるものではなく、AlN焼結体を作製する際の各工程条件も大きく影響する。この点からも、AlN基板1の基材として使用するAlN焼結体は、以下に示す製造方法を適用して作製することが好ましい。
まず、平均粒子径が1μm以下で、かつ不純物酸素濃度が1質量%以下のAlN原料粉末を用意する。AlN粉末の平均粒子径が1μmを超えると、得られるAlN結晶粒が粗大化しやすい。同様に、不純物酸素濃度が1質量%を超えると、AlN結晶粒が必要以上に粒成長したり、またAlN焼結体の熱伝導率が低下する。このようなAlN粉末に所定量の焼結助剤粉末を添加して十分に混合する。この際、焼結助剤成分(粒界相成分)の凝集を抑制する上で、焼結助剤粉末の凝集を防止するような添加方法を適用することも重要となる。
すなわち、原料粉末段階で焼結助剤粉末が凝集していると粒界相が偏析しやすくなり、その結果としてAlN焼結体の表面における焼結助剤成分の凝集体の大きさや総面積が増大しやすい。そこで、焼結助剤粉末を予め有機溶媒中に分散させ、この状態でAlN粉末もしくはAlN粉末を有機溶媒中に分散させたスラリー中に添加することが好ましい。焼結助剤粉末の有機溶媒中への分散時間(撹拌時間)は10分以上とすることが好ましい。分散時間は1時間以上3時間以下とすることがより好ましい。分散工程を3時間を超えて行ってもよいが、分散時間をあまり長く設定してもそれ以上の効果が得にくく、かえって製造時間を長引かせるだけになってしまう。さらに、有機溶媒中に分散させた焼結助剤粉末とAlN粉末との混合はボールミル等を用いて十分に行う。
上述したような焼結助剤粉末の添加方法を適用することによって、焼結助剤成分の凝集体の大きさ、並びに凝集体の面積の総和を低減することができる。さらに、焼結助剤粉末自体については、高純度で微細な粉末を使用することが好ましい。例えば、Y粉末等の希土類酸化物粉末は、純度が99%以上で、かつ1次粒子径(D50)が1.5μm以下の粉末を使用することが好ましい。
次に、AlN粉末と焼結助剤粉末との混合物にバインダ成分や有機溶媒等を加えてさらに混合した後、ドクターブレード法等の通常のシート成形法を適用して成形体(グリーンシート)を作製する。このようなAlN成形体を脱脂処理した後に焼成する。AlN焼結体の結晶粒径や焼結助剤成分の存在形態を制御する上で、脱脂工程は十分に実施することが好ましい。脱脂工程は窒素やアルゴン等の非酸化性雰囲気中にて600〜800℃の温度で実施することが好ましい。
脱脂処理を施したAlN成形体は、例えばAlN、BN等からなる焼成容器中に配置する。焼成容器は蓋付きの密閉型を使用することが好ましい。この際、焼成容器内へのAlN成形体の充填量は体積比で50〜70%の範囲とすることが好ましい。また、AlN成形体は敷板上に一定の間隔を空けて対称に配置することが好ましい。図3(a)および図3(b)にAlN成形体の対称配置の例を示す。これらの図において、11はAlN成形体、12は焼成容器の底面または焼成容器内に収めた敷板である。図3(a)はAlN成形体11を左右(または前後)に対称に配置した例である。図3(b)はAlN成形体11を左右および前後に対称に配置した例である。
このようなAlN成形体を充填した焼成容器を焼成炉内に配置する。焼成炉内への焼成容器の充填量は体積比で40〜70%の範囲とすることが好ましい。なお、焼成容器はカーボン製容器収納部材(円筒状部材)中に入れて焼成炉内に配置することがある。このような二重容器を使用する場合には、カーボン製容器収納部材への焼成容器の充填量を体積比で40〜70%の範囲とすることが好ましい。図4に二重容器の一構成例を示す。図4において、13は焼成容器、14は容器収納部材である。焼成容器13が収納された容器収納部材14を重ねて使用したり、複数の焼成容器13を重ねて容器収納部材14内に収納してもよい。
上記したような状態で焼成炉内に配置したAlN成形体は窒素雰囲気のような不活性雰囲気中にて1650〜1900℃の範囲の温度で1〜10時間焼成される。焼成工程は常圧もしくは雰囲気加圧下で行われる。このような焼成工程によって、上述したような特性を有するAlN焼結体が得られる。焼成時の雰囲気ガスは純度99%以上の窒素ガスを使用することが好ましい。焼成炉内の圧力は2×10〜10×10Paの範囲とすることが好ましい。また、焼成炉内の圧力は設定値に対して±1×10Paの範囲となるように調整することが好ましく、さらに好ましくは±0.3×10Paの範囲である。
上述したような製造条件を適用してAlN焼結体を作製することによって、AlN結晶粒の平均粒径が3〜5μmの範囲である共に、結晶粒径分布の標準偏差が2μm以下のAlN焼結体を再現性よく得ることができる。さらに、このようなAlN結晶粒の平均粒径および粒径分布と各製造条件に基づいて、AlN基板1の加工表面(Ra≦0.5μm)1aに存在する焼結助剤成分の凝集体4の大きさを20μm以下とすると共に、加工表面1aの単位面積当りに占める凝集体の総面積の比率を5%以下とすることが可能となる。なお、単に結晶粒径を微細化しただけでは、AlN焼結体の熱伝導率の低下が著しくなるおそれがあるが、例えば脱脂後の残留炭素量を低減する等によって、AlN結晶粒の平均粒径を微細化した上で160W/m・K以上という熱伝導率を満足させることができる。
この実施形態のAlN基板(薄膜形成用基板)1は、上述した製造工程に基づいて作製したAlN焼結体の表面(少なくとも薄膜形成面)1aを、算術平均粗さRaが0.5μm以下となるように研磨加工し、さらに例えば20%程度に希釈された硫酸、塩酸、硝酸等の酸液を用いて酸洗いすることにより得られる。酸洗い工程はAlN焼結体全体を酸液中に浸漬して実施することが好ましい。
AlN基板1の表面を算術平均粗さRaが0.05μm以下となるように鏡面加工する場合には、スキューネスRskを0以上1以下の範囲に制御する上で、表面加工条件を適切化することも重要である。具体的には、AlN焼結体の表面を例えば325〜400メッシュのダイヤモンド砥石で中仕上げする際に、加工面のスキューネスRskが−1以上(Rsk≧−1)となるように加工する。
AlN焼結体をダイヤモンド砥石で中仕上げする際の加工面の表面粗さを制御することによって、鏡面加工後の表面粗さを所望の値にすることができる。すなわち、ダイヤモンド砥石による中仕上げ後の加工面のスキューネスRskが−1より小さい(Rsk<−1)と、その後の鏡面加工条件を制御しても、鏡面加工面の表面粗さを所望の値とすることができないおそれが大きい。そして、中仕上げ後の加工面に対して、Raが0.05μm以下となるように鏡面加工を施す。これによって、最終的な鏡面加工面のスキューネスRskを0以上1以下の範囲とすることができる。
また、AlN基板1は研磨加工を行った後であっても、脱粒等によるポアが発生しにくいため、研磨加工による基板厚さの調整がしやすい。このため、AlN基板1の厚さを1.5mm以下、さらには0.8mm以下に調整する際の基板厚さの精度を高めることができる。AlN基板1の厚さはさらに0.1〜0.4mmの間で高精度に調整することができる。
AlN基板1の加工表面(薄膜形成面)1aには金属薄膜2が形成され、これにより薄膜基板3が構成される。金属薄膜2は、例えばスパッタ法、真空蒸着法、分子線エピタキシー(MBE)法、イオンプレーティング法、レーザデポジション法、イオンビームデポジション法等のPVD法により形成される。また場合によっては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等のCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法を適用してもよい。金属薄膜2は回路構造を有するものに限らず、ベタ膜であってもよい。金属薄膜2は単一の金属膜および複数の金属膜の積層膜のいずれであってもよいが、膜の総厚は3μm以下とする。
上述したように、焼結助剤成分の凝集体4の大きさや凝集体の面積の総和を低減したAlN基板1の加工表面1a上に金属薄膜2を形成することによって、その密着性並びに形成精度を大幅に高めることが可能となる。特に、基板表面の凹部が原因となって生じる、金属薄膜2の膜厚の不均一化やAlN基板1と金属薄膜2との間の空隙等が抑制できることから、金属薄膜2による回路の精度や信頼性を大幅に高めることが可能となる。なお、AlN基板1は薄膜形成面が所定の構成を有していれば所期の効果を得ることができる。従って、薄膜を形成しない基板表面は必ずしも上述したような構成とする必要はない。
このような金属薄膜(回路)2を有する薄膜基板3は、例えば光通信用ハイブリッドIC、移動体通信用ハイブリッドIC、レーザダイオード用ハイブリッドIC、自動車用ハイブリッドIC等のマイクロ波集積回路用の基板として好適に用いられるものである。さらに、金属薄膜2を有する薄膜基板3は、VLD(Visible Laser Diode)等のレーザダイオードが搭載されるサブマウント基板としても有効である。特に、本発明のAlN基板は板厚を0.1〜1.5mmの間で調整可能であることから、マイクロ波集積回路用基板やサブマウント基板等の様々な分野に適用することができる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
参考例1
まず、焼結助剤として純度99%、平均粒子径が1.0μmのY粉末を用意し、このY粉末を有機溶媒(エタノール)中に投入して撹拌した。撹拌はボールミルを使用して実施した。このY粉末の撹拌時間(予備混合時間)は10分とした。一方、平均粒子径が1.0μmで、不純物酸素量が0.8質量%のAlN粉末に、適量の有機バインダと溶媒等を加えて混合してスラリー状とした。上記したY粉末の分散体をAlNスラリーに、Yの配合量が5質量%となるように添加した。これをさらにボールミルで24時間混合した。各原料の条件は表1に示す通りである。
次に、上記した原料スラリーをドクターブレード法により板状に成形し、このAlN成形体を600〜800℃の温度で脱脂した。この脱脂後のAlN成形体を以下のようにして焼成した。すなわち、脱脂後の複数のAlN成形体を、高純度AlN(純度99.9質量%以上)製の密閉型焼成容器中に配置した。焼成容器中へのAlN成形体の充填量は体積比で50%とした。このような焼成容器をカーボン製円筒部材中に入れた状態で焼成炉内に配置した。二重容器内の焼成容器の充填量は体積比で40%とした。焼成は1750〜1900℃×1〜8時間の条件で実施した。焼成雰囲気は純度99%以上の窒素ガスとし、焼成炉内の圧力は3×10〜7×10Paの範囲とした。さらに設定圧力値に対して炉内圧力が±0.3×10Paの範囲となるように調整した。焼成条件は表2に示す通りである。
このようにして得たAlN焼結体の平均結晶粒径と結晶粒径分布を調べた。AlN結晶粒の粒径については、AlN焼結体の破断面の任意の3箇所で単位面積50×50μm内の結晶粒径を測定し、これらの平均値に基づいて平均粒径および粒径分布を求めた。なお、結晶粒径を測定する単位面積のうち、少なくとも1箇所は加工面に隣接するAlN結晶粒を含む箇所とすることが望ましい。さらに、AlN焼結体の熱伝導率を測定した。これらの測定結果を表3に示す。
次に、上記したAlN焼結体にダイヤモンド砥石による中仕上げ加工と鏡面加工(Raで0.5μm以下に設定)を施してAlN基板(厚さ0.635mm)を作製した。このAlN基板の加工表面に存在する焼結助剤成分の凝集体の大きさおよび面積率(総和)を測定した。焼結助剤成分の凝集体の存在形態については、鏡面加工面の任意の3箇所をSEM(必要に応じてEPMAを使用)で観察し、これらの観察結果から凝集体の大きさと単位面積(100×100μm)当りに占める凝集体の面積率(平均値)を求めた。さらに、AlN基板を20%硫酸(40℃)に60分間浸漬した。そして、酸液に浸漬した後の質量減少率と3点曲げ強度の減少率を調べた。これらの測定結果を表4に示す。
参考例2〜9、比較例1〜7
AlN粉末と焼結助剤粉末に関する条件と焼成条件をそれぞれ表1および表2に示す条件に変更する以外は、上記した参考例1と同様にして、それぞれAlN焼結体を作製した。これらAlN焼結体の平均結晶粒径および結晶粒径分布の標準偏差、熱伝導率を参考例1と同様して評価した。これらの値を表3に示す。
さらに、各AlN焼結体に参考例1と同様な加工を施して、それぞれAlN基板を作製した後、加工表面に存在する焼結助剤成分の凝集体の大きさおよび面積率を測定した。参考例1と同様にして、AlN基板の酸液浸漬後の質量減少率と3点曲げ強度の減少率を調べた。酸洗いに使用した酸液は表4に示す通りである。これらの測定結果を表4に示す。
Figure 0005060439
Figure 0005060439
Figure 0005060439
Figure 0005060439
表3に示したように、参考例1〜9による各AlN焼結体は、いずれもAlN結晶粒の粒径が微細であると共に、粒径分布の標準偏差が小さいことが分かる。これらAlN結晶粒の粒径状態やAlN焼結体の製造条件に基づいて、各参考例のAlN基板は表4に示したように、加工表面における焼結助剤成分の凝集体の大きさが20μm以下であり、かつ単位面積当りに占める凝集体の面積の総和が5%以下という値を有している。そして、これらの構成に基づいて、酸液に浸漬した後の質量減少率および3点曲げ強度の減少率が共に小さいことが分かる。
参考例10〜14、比較例8〜9
上述した参考例1、参考例2、参考例4、参考例7、参考例8、比較例1、および比較例2による各AlN基板を用いて、それぞれ加工面上にTi膜(厚さ100nm)/Pt膜(厚さ200nm)/Au膜(厚さ500nm)構造の金属薄膜を真空蒸着法(真空圧:10−5Pa)により成膜した。このようにしてそれぞれ薄膜基板を作製した。
このようにして得た各薄膜基板について、金属薄膜(厚さ約800nmの多層薄膜)のピール強度を測定した。ピール強度はスコッチテープ法により測定した。具体的には、金属薄膜の面積より広いスコッチテープ(住友スリーエム社製)を貼り、テープを一気に剥がした際に残存する薄膜の面積比(残存面積率=(試験後の残存面積/試験前の面積)×100%)を測定した。また、同様にして作製した各薄膜基板をホットプレート上にて450℃×10分の条件、および600℃×10分の条件でそれぞれ加熱し、これら加熱処理後の金属薄膜の膨れの有無を調べた。これらの測定、評価結果を表5に示す。
Figure 0005060439
表5から明らかなように、参考例10〜14の各薄膜基板はいずれも薄膜回路の密着性に優れ、さらに加熱した際に膨れ等が生じることもないため、マイクロ波集積回路用基板やレーザダイオード用サブマウント基板等に好適であることが分かる。
実施例、比較例10〜12
上述した参考例3と同様にして、複数のAlN焼結体を作製した。ただし、焼成温度は1730〜1840℃、焼成時間は3〜6時間の範囲で変化させた。得られた各AlN焼結体の平均結晶粒径、結晶粒径分布の標準偏差、および熱伝導率は表6に示す通りである。これらは参考例1と同様して測定した。
次に、上記した各AlN焼結体に対して、表6に示す条件でそれぞれダイヤモンド砥石による中仕上げ加工(第1の加工工程)と鏡面加工(第2の加工工程)を施し、鏡面加工面の表面状態が異なる複数のAlN基板を作製した。このようにして得た各AlN基板について、鏡面加工面に存在する焼結助剤成分の凝集体およびポアの数や面積比、さらに鏡面加工面のスキューネスRsk、ポア(AlN結晶粒および凝集体の脱粒痕)の最大径を測定した。これらの測定結果を表7に示す。
なお、スキューネスRskは表面粗さ測定器・フォームタリサーフS4C(テーラーボブソン社製)を用いて測定した。焼結助剤成分の凝集体およびポアの存在形態については、鏡面加工面の任意の3箇所をSEMおよびEPMAにて観察し、これらの観察結果から大きさ10μm以上の凝集体およびポアの単位面積(100×100μm)当りの存在数、さらに大きさ10μm未満の凝集体およびポアの単位面積(100×100μm)当りの存在比率(面積比)を、それぞれ平均値として求めた。ポアの最大径については、鏡面加工面の任意の3箇所について測定し、そのうちの最大径の大きさで示した。
Figure 0005060439
Figure 0005060439
表6および表7に示したように、実施例による各AlN基板はいずれも160W/m・K以上の熱伝導率を有すると共に、鏡面加工面のスキューネスRskが0以上1以下という値を示している。このような表面状態に基づいてAlN結晶粒の脱粒痕の最大値が小さいことが分かる。このことはAlN結晶粒の脱粒が抑制されていることを示す。
一方、比較例10のAlN基板は、AlN結晶粒の平均粒径が大きいことに加えて、表面に10μmを超える焼結助剤成分の凝集体やポアが多く存在していることから、鏡面加工面のスキューネスRskがマイナスの値を示しており、さらにAlN結晶粒の脱粒痕も大きい。また、比較例11においては、鏡面加工面のスキューネスRskやAlN結晶粒の脱粒痕は比較的良好な値を示しているものの、AlN結晶粒の平均粒径が小さすぎることから熱伝導率が小さい。
実施例10、比較例13〜15
実施例および比較例10〜12による各AlN基板を用いて、それぞれ鏡面加工面(比較例12のAlN基板についてはダイヤモンド砥石による加工面)上に、Ti膜(厚さ100nm)/Pt膜(厚さ200nm)/Au膜(厚さ500nm)構造の金属薄膜をスパッタ法により成膜した。このようにしてそれぞれ薄膜基板を作製した。
このようにして得た各薄膜基板について、金属薄膜(厚さ約800nmの多層膜)のピール強度を測定した。ピール強度はスコッチテープ法により測定した。具体的には、薄膜回路の面積より広いスコッチテープ(住友スリーエム社製)を貼り、テープを一気に剥がした際に残存する薄膜回路の面積比(残存面積率=(試験後の残存面積/試験前の面積)×100%)を測定した。また、同様にして作製した各薄膜回路基板をホットプレート上にて450℃×10分の条件で加熱し、その際の金属薄膜の膨れの有無を調べた。これらの測定結果を表8に示す。
Figure 0005060439
表8から明らかなように、実施例10の各薄膜基板はいずれも薄膜回路の密着性に優れ、また加熱した際に膨れ等が生じることもなく、マイクロ波集積回路用基板やレーザダイオード用サブマウント基板に好適であることが分かる。さらに、実施例10の各薄膜基板は、AlN基板の薄膜形成面の表面粗さRaが参考例1〜9のAlN基板に比べて小さいことから、金属薄膜による回路の形成精度がより一層優れるものであった。
実施例1114参考例15〜17、比較例16〜17
AlN基板の板厚を表9に示す厚さに変更する以外は参考例13、実施例、比較例14と同様にして、AlN基板を有する薄膜基板をそれぞれ作製した。これら各薄膜基板を実施例13と同様にホットプレート上で450℃×10分および600℃×10分の条件で加熱して、その際の金属薄膜の膨れの有無を調べた。これらの結果を表9に示す。
Figure 0005060439
表9から明らかなように、実施例1114および参考例15〜17の各薄膜基板はAlN基板の厚さを変更した場合においても良好な特性を示すことが分かる。一方、比較例16、17のように、熱伝導率が160W/m・K未満と低いAlN基板を用いた場合には、基板厚さを薄くした際に膨れが生じやすい。これは熱伝導率が低い基板では放熱性が低下するため、基板厚さを薄くした際に金属薄膜に悪影響がでたものと考えられる。
本発明の窒化アルミニウム基板を用いた薄膜基板の一実施形態の概略構成を示す断面図である。 図1に示す窒化アルミニウム基板の加工表面の微構造を拡大して示す模式図である。 本発明の窒化アルミニウム基板の焼成工程における成形体の配置例を示す図である。 本発明の窒化アルミニウム基板の焼成工程に適用する二重容器の一構成例を一部切り欠いて示す斜視図である。
符号の説明
1…AlN基板(AlN焼結体)、2…金属薄膜、3…薄膜基板、4…焼結助剤成分の凝集体、5…AlN結晶粒。

Claims (4)

  1. 焼結助剤として2〜6質量%の範囲の希土類酸化物を含み、焼結助剤の総量が酸化物換算で2〜12質量%の範囲であり、窒化アルミニウム結晶粒の平均粒径が3〜5μmの範囲で、かつ粒径分布の標準偏差が2μm以下であり、かつ常温での熱伝導率が160W/m・K以上である窒化アルミニウム焼結体を作製する工程と、
    前記窒化アルミニウム焼結体の表面を、加工後の表面のスキューネスRskが−1以上となるように、ダイヤモンド砥石で中仕上げ加工する工程と、
    前記中仕上げ加工された前記窒化アルミニウム焼結体の表面を、算術平均粗さRaが0.05μm以下となるように鏡面加工し、加工表面のスキューネスRskを0以上1以下に仕上げ加工して、前記加工表面に存在する焼結助剤成分の凝集体の大きさが20μm以下であると共に、前記加工表面の単位面積当りに占める前記凝集体の面積の総和が5%以下であり、かつ前記加工表面の100×100μmの単位面積当りに存在する、大きさ10μm以上の前記焼結助剤成分の凝集体およびポアの数が、合計数で3個以下であり、厚さが1.5mm以下である窒化アルミニウム基板を作製する工程と、
    前記窒化アルミニウム基板の前記加工表面上に金属薄膜を形成する工程と
    を具備することを特徴とする薄膜基板の製造方法。
  2. 請求項1記載の薄膜基板の製造方法において、
    前記金属薄膜の厚さが3μm以下であることを特徴とする薄膜基板の製造方法。
  3. 請求項1または2記載の薄膜基板の製造方法において、
    前記中仕上げ加工を325〜400メッシュのダイヤモンド砥石を用いて行うことを特徴とする薄膜基板の製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項のいずれか1項記載の薄膜基板の製造方法において、
    前記仕上げ加工した加工表面を酸洗いすることを特徴とする薄膜基板の製造方法。
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