JP5059719B2 - パネルの取付方法及びパネルの取付構造 - Google Patents

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この発明は、橋梁や高架橋など桁構造を有する構造物において、その構造物の桁に取り付けられるパネルの取付方法、及びそのパネルの取付構造に関するものである。
橋梁や高架橋等の桁構造を有する構造物には、その桁構造物の下を通行する車両の騒音が、桁下面で反射して周囲に拡がるのを防止するために、吸音性を有する吸音パネルが取り付けられる。また、桁下面の美粧化を目的として、化粧パネルが取付けられる場合もある。
これらのパネルの取付構造について説明すると、例えば、図6に示すように、床板4を支える断面I型の桁2の下に、固定用治具5を用いて取付梁1を設置する。取付梁1は、複数本が並行に又は格子状に設けられ、その相対する取付梁1間に掛け渡すようにパネル3が固定される。
通常、このパネル3の取付け箇所は高所であるために、桁2の下に足場(図示せず)を組んで施工される。足場は、地上から立ち上げられる場合もあるが、桁2の下に道路などが通っている場合、足場は桁2から吊りおろされる。
その足場上に作業者が乗って、前記固定用治具5及び取付梁1等を用いて、パネル3の桁2への取付作業を行う(例えば、特許文献1、2又は3参照)。
取付梁1へのパネル3の取付構造としては、例えば、図5に示す固定手段20を用いたものが挙げられる。この取付構造では、前記パネル3に上向きの締付ボルト7を取り付けて、その締付ボルト7をパネル3の両端間を結ぶ方向(図中の長孔3bの伸びる方向)にスライド可能とし、前記取付梁1の下フランジ1bには、前記締付ボルト7が挿通される長孔1dを、前記締付ボルト7のスライド方向に交差する方向に形成する。
その長孔1dに、前記締付ボルト7の軸部7cを頭部7bを下向きにして挿通し、その軸部7cにナット7aをねじ込む。そのねじ込みによる締結によって、前記取付梁1にパネル3を取付ける。なお、前記長孔3bは断面T字状であり、ボルト7の頭部7bを収容可能な嵌合部3cと、その嵌合部3cの上方に位置し、前記頭部7bが通り抜けない幅の係止部3dとを備えている。
締付ボルト7の位置がパネル3の長さ方向に対して調整でき、また、その締付ボルト7の取付梁1への係止位置は長孔1dに沿って調整できる(例えば、特許文献4参照)。
特開平11−181718号公報 特開平11−181726号公報 特開2004−052382号公報 特開2004−156392号公報
従来、桁2へのパネル3の取り付けは、桁2上に床板4を施工した後に行っていた。これは、仮に、パネル3の取り付け後に床板4を施工すると、その床板4の自重で桁2が撓むので、その桁2の撓みによって、取付梁1が変形し、パネル3が変形あるいは脱落する恐れがあるからである。あるいは、パネル3の変形や脱落が生じないまでも、パネル3の取付け位置によって桁2の撓み量が異なるため、隣り合うパネル3同士に段差ができたり、意図しない勾配が生じたりし、美観を損なうからである。
このように、床板4の施工を待ってパネル3を取り付けると、長い工期を必要とする。この種の構造物の施工に求められる一般的な要請として、工期はできる限り短いことが望ましい。
そこで、この発明は、床板の施工前に、あるいは施工中に、桁に対してパネルを取り付けできるようにすることを課題とする。
上記の課題を解決するために、この発明は、床板を桁で支えた構造物に、前記桁の下面を覆うパネルを取り付けるパネルの取付方法において、前記桁に、高さ調整手段を備えた吊部材を介して取付梁を吊し、その取付梁に前記パネルを固定した後、前記桁上に床板を施工するとともに、前記高さ調整手段により、前記床板の施工に伴う前記桁の各部の撓み量に応じて前記桁と前記取付梁との高低差を調整することを特徴とするパネルの取付方法を採用した。
このようにすれば、床板の施工によって桁が撓んだ際に、高さ調整手段により、桁の各部の撓み量に応じてその桁と取付梁との高低差を調整することができる。このため、桁の撓みによるパネルの変形や脱落を防止することができる。すなわち、床板施工前の桁に対してパネルを取り付けできる。
なお、前記高さ調整手段として、部材の伸縮等によって高さの調整が可能となる周知の手段を採用してよいが、その手段として、例えば、ターンバックルを採用することができる。
また、前記高さ調整手段を、連続する一つの取付け梁を支える少なくとも二つの前記吊部材にそれぞれ設けた構成を採用することができる。すなわち、高さ調整手段は、一枚のパネルに対して、そのパネルに対応する取付梁に少なくとも1箇所設けることによって所定の効果を発揮し得るが、一枚のパネルに対して対応する取付梁に複数の高さ調整手段を設けた構成とすることが望ましい。パネルに対して複数の高さ調整手段が寄与することによって、桁の撓みに対するきめ細かな高さ調整が可能である。
また、前記高さ調整手段を備えた少なくとも二つの前記吊部材の間に、一方の前記吊部材の上端と他方の前記吊部材の下端とを結ぶブレースを設けることができる。そのブレースに加え、他方の前記吊部材の上端と一方の前記吊部材の下端とを結ぶブレースを設けてもよい。ブレースを設けることにより、交通による振動や風や地震などの力により取付梁やパネルが揺れるのを防止することができる。
これらのパネルの取付方法によるパネルの取付構造として、以下の構造を採用することができる。
すなわち、前記桁に、高さ調整手段を備えた吊部材を介して取付梁を吊し、その取付梁に固定手段によって前記パネルが固定されており、前記高さ調整手段により、前記桁上への床板の施工に伴う前記桁の各部の撓み量に応じて前記桁と前記取付梁との高低差を調整可能となっていることを特徴とするパネルの取付構造である。
なお、前記高さ調整手段として、例えば、ターンバックルを採用することができる。また、前記高さ調整手段を、連続する一つの取付梁を支える少なくとも二つの前記吊部材にそれぞれ設けた構成を採用することができる。
また、前記高さ調整手段を備えた少なくとも二つの前記吊部材の間に、一方の前記吊部材の上端と他方の前記吊部材の下端とを結ぶブレースを設けた構成を採用することができる。そのブレースに加え、他方の前記吊部材の上端と一方の前記吊部材の下端とを結ぶブレースを設けてもよい。ブレースを設けることにより、交通による振動や風や地震などの力により取付梁やパネルが揺れるのを防止することができる。
この発明は、床板の施工によって桁が撓んだ際に、高さ調整手段により、桁の各部の撓み量に応じてその桁と取付梁との高低差を調整できるので、床板の施工前に、あるいは施工中に、桁に対してパネルを取り付けできる。
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、橋梁に用いられる桁2の全体図である。
この桁2が、添接板等を介して橋軸方向(図1(a)(b)に示す左右方向)に複数連結され、その連結された桁2が、クレーン等により橋脚や橋台の上に架設される。
その架設された桁2には、その下面を覆う吸音用のパネル3が取り付けられている。また、その桁2の上には、鋼、コンクリート等による床板4が施工されて桁2と床板4とが一体である(図6参照)。なお、図1、図2(a)〜図2(d)は、連結される前の桁2を示しているから、床板4、橋脚、橋台等は図示していない。
以下、この桁2の架設、及び、その桁2へのパネル3の取り付け、床板4の施工について、順に説明する。
図2(a)は、前記桁2を橋脚や橋台の上に架設した状態を示す。この状態で、床板4は未施工である。その桁2の下に、吊足場(足場)6が設置されている。吊足場6は、桁2にワイヤ等で吊り下げられて支持されている。
この吊足場6上に作業者が立って、桁2に取付梁1を固定する作業を行う。この実施形態では、桁2は、図2(a)に示すように、上フランジ2aと下フランジ2b、及びその上下フランジ2a,2b間を結ぶウェブ2cとを備えたI桁である。
そのI桁の前記下フランジ2bに、図2(b)に示すように、吊部材11の固定治具13を固定する。固定治具13は、下フランジ2bの上面に接する上部部材13aと、下フランジ2bの下面に接する下部部材13bとを、それぞれ前記ウェブ2cを挟んで両側に有している。
その上部部材13aと下部部材13bとの間の隙間13cに、前記桁2の下フランジ2bの幅方向両端がそれぞれ嵌め込まれ、その状態で、適宜の締付け手段によって桁2に対して動かないように固定されている。
また、吊部材11は、高さ調整手段10としてのターンバックル12を備えている。前記固定治具13には、図2(b)に示すように、係止部13dが備えられている。その係止部13dに前記ターンバックル12の上端12aが係止され、そのターンバックル12の下端12bには前記取付梁1が係止される。これにより、取付梁1は、吊部材11を介してその桁2に吊りさげられた状態となる。
取付梁1は、図1(a)(b)に示すように、橋軸方向に沿って長い縦梁14と、橋軸直角方向に向く横梁15とが格子状に組まれた形態となっている。縦梁14は桁2の下フランジ2bの下方に位置し、横梁15は、その縦梁14の長さ方向に沿って数カ所に設けられている。
その取付梁1は、上フランジ1aと下フランジ1bと、その上下フランジ1a,1b間を結ぶウェブ1cとを有すH形鋼である。なお、前記ターンバックル12の下端12bは、前記上フランジ1aに溶接固定された係止部に係止されている。
取付梁1が設けられた後、続いて、パネル3を取付梁1に取付ける作業に取り掛かる。このパネル3の取付けに際し、桁2から足場6を吊っているワイヤーがパネル3と干渉するため、ワイヤーは横梁15から吊すようにもりかえる(図2(c)参照)。その後、前記足場6又は横梁15等に掛け渡した足場等を利用して、パネル3を取付梁1に固定する。このとき、横梁15の下フランジには、パネル3同士の隙間を通るような取付金具が予め設置してあり、ワイヤーはパネル3と干渉しないようになっている。
なお、パネル3の取付梁1への固定は、例えば、前述の固定手段20等を採用することができる(例えば、図5(a)(b)参照)。
このように取付梁1にパネル3を固定した後、その桁2上に床板4を施工する。床板4は、コンクリート床板や合成床板等を採用することができる。
床板4を施工すると、その床板4の自重が桁2に作用して、桁2が下方に撓む。この撓み量は径間の中央で大きく、支点に近づくほど徐々に小さくなるので、桁2の全長に亘って撓み量は場所ごとに異なる。
この桁2の撓みに伴って、その桁2の下に取り付けた取付梁1も撓んでいく。このとき、高さ調整手段10のターンバックル12の上端12aと下端12b間の長さを調節することにより、桁2の各部の撓み量に応じて、その桁2と取付梁1との高低差を調整し、取付梁1の歪みを解消することができる。
また、この実施形態では、図2(d)に示すように、橋軸直角方向に隣り合う前記吊部材11,11の間において、一方の前記吊部材11の上端と他方の前記吊部材11の下端とを結ぶブレース16、及び、他方の前記吊部材11の上端と一方の前記吊部材11の下端とを結ぶブレース16を設けて、ブレース16,16同士をクロスさせて配置している。
このブレース16は、交通による振動や風や地震などの力により取付梁1やパネル3に横揺れが生じないようにする振れ止めの効果を発揮している。
また、この実施形態では、図1に示すように、橋軸方向に隣り合う前記吊部材11,11の間において、他方の前記吊部材11の上端と一方の前記吊部材11の下端とを結ぶブレース17を設けているので、橋軸直角方向の前記ブレース16と同様、前記振れ止めの効果を発揮している。
さらに、この橋軸方向のブレース17について、前記橋軸直角方向のブレース16と同様に、一方の前記吊部材11の上端と他方の前記吊部材11の下端とを結ぶブレース17、及び、他方の前記吊部材11の上端と一方の前記吊部材11の下端とを結ぶブレース17を設けて、そのブレース17,17同士をクロスさせて配置してもよい。
また、これらのブレース16,17を掛け渡す二つの吊部材11,11は、一つの連続する取付梁1を支える複数の吊部材11の中から、任意の二つを選択することができる。このため、例えば、平面視橋軸方向及び橋軸直角方向に交差する方向に沿って、すなわち、格子状の前記取付梁1に対して平面視対角線方向に前記ブレース16,17を配置してもよい。
また、これらのブレース16,17を取付ける位置は、必ずしも吊部材11の上端や下端ではなくとも、振れ止めの効果を発揮できる箇所であれば他の箇所でもよい。例えば、図3に示すように、ブレースの下端は、取付梁1上の適当な箇所を選択できる。さらに、ブレースの上端も桁2の適当な箇所とすることができる。
さらに、例えば、図4に示すように、橋軸直角方向に相互に隣り合う複数の前記吊部材11,11,11の間において、一つの前記吊部材11の上端とその両側に隣接する他の前記吊部材11,11の下端とを結ぶブレース16をそれぞれ設けてもよい。すなわち、図2(d)に示すように、2本のブレース16,16を隣り合う吊部材11,11間でクロスさせない構成とすることもできる。
なお、これらのブレース16,17にターンバックルを用いれば、長さ及び張力の調整が行いやすい。
また、これらの各実施形態では、床板4の施工前にパネル3の取付けを行う実施形態を示したが、床板4の施工中に同時に実施することもできる。さらに、床板4の施工後であっても、桁2に撓みを生じさせる地覆、高欄、防音壁、舗装などの施工前、あるいは施工中であれば、高さ調整ができる機能やパネル3の変形や脱落を防止できる機能を有効に活かすことができる。
これらの実施形態では、桁2の構成としてI桁が橋軸直角方向に並列した構成について説明したが、例えば、ボックス桁にも有効であり、それ以外にも、床板4をトラス桁で支えた構成などにおいても、この発明のパネルの取付構造、取付方法を採用することができる。
(a)は一実施形態の正面図、(b)はその平面図 桁の下に吊足場を組んだ状態を示す側面図 桁の下に吊部材を介して取付梁を設けた状態を示す側面図 吊足場を取付梁から吊すようにもりかえた後の側面図 取付梁にパネルを固定した状態を示す側面図 (a)は他の実施形態の正面図、(b)はその平面図 他の実施形態の正面図 固定手段の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は側面図 従来例の側面図
符号の説明
1 取付梁
1a,2a 上フランジ
1b,2b 下フランジ
1c,2c ウェブ
1d,3b 長孔
2 桁
3 パネル
3c 嵌合部
3d 係止部
4 床板
5 固定用治具
6 足場(吊足場)
7 ボルト
7a ナット
7b 頭部
7c 軸部
10 高さ調整手段
11 吊部材
12 ターンバックル
12a 上端
12b 下端
13 固定治具
13a 上部部材
13b 下部部材
13c 隙間
13d 係止部
14 縦梁
15 横梁
16,17 ブレース
20 固定手段

Claims (10)

  1. 床板(4)を桁(2)で支えた構造物に、前記桁(2)の下面を覆うパネル(3)を取り付けるパネルの取付方法において、
    前記桁(2)に、高さ調整手段(10)を備えた吊部材(11)を介して取付梁(1)を吊し、その取付梁(1)に前記パネル(3)を固定した後、前記桁(2)上に床板(4)を施工するとともに、前記高さ調整手段(10)により、前記床板(4)の施工に伴う前記桁(2)の各部の撓み量に応じて前記桁(2)と前記取付梁(1)との高低差を調整することを特徴とするパネルの取付方法。
  2. 前記高さ調整手段(10)はターンバックルであることを特徴とする請求項1に記載のパネルの取付方法。
  3. 前記高さ調整手段(10)は、連続する一つの取付梁(1)を支える少なくとも二つの前記吊部材(11,11)にそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネルの取付方法。
  4. 前記高さ調整手段(10)を備えた少なくとも二つの前記吊部材(11,11)の間に、一方の前記吊部材(11)の上端と他方の前記吊部材(11)の下端とを結ぶブレース(16,17)を設けることを特徴とする請求項3に記載のパネルの取付方法。
  5. 前記高さ調整手段(10)を備えた少なくとも二つの前記吊部材(11,11)の間に、他方の前記吊部材(11)の上端と一方の前記吊部材(11)の下端とを結ぶブレース(16,17)を設けることを特徴とする請求項4に記載のパネルの取付方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のパネルの取付方法によるパネルの取付構造であって、前記桁(2)に、高さ調整手段(10)を備えた吊部材(11)を介して取付梁(1)を吊し、その取付梁(1)に固定手段(20)によって前記パネル(3)が固定されており、前記高さ調整手段(10)により、前記桁(2)上への床板(4)の施工に伴う前記桁(2)の各部の撓み量に応じて前記桁(2)と前記取付梁(1)との高低差が調整可能となっていることを特徴とするパネルの取付構造。
  7. 前記高さ調整手段(10)はターンバックルであることを特徴とする請求項6に記載のパネルの取付構造。
  8. 前記高さ調整手段(10)を、連続する一つの取付梁(1)を支える少なくとも二つの前記吊部材(11,11)にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項6又は7に記載のパネルの取付構造。
  9. 前記高さ調整手段(10)を備えた少なくとも二つの前記吊部材(11,11)の間に、一方の前記吊部材(11)の上端と他方の前記吊部材(11)の下端とを結ぶブレース(16,17)を設けたことを特徴とする請求項8に記載のパネルの取付構造。
  10. 前記高さ調整手段(10)を備えた少なくとも二つの前記吊部材(11,11)の間に、他方の前記吊部材(11)の上端と一方の前記吊部材(11)の下端とを結ぶブレース(16,17)を設けたことを特徴とする請求項9に記載のパネルの取付構造。
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