JP5057306B2 - 合成樹脂製壜体 - Google Patents

Description

本発明は、胴部に減圧吸収パネルを備える合成樹脂製壜体に関するものである。

従来、殺菌を必要とするたとえば果汁飲料、お茶等のポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）樹脂製の壜体（ペットボトル）等の合成樹脂製壜体への充填方法として、所謂、高温充填と呼ばれる方法があるが、９０℃前後の温度で内容液を壜体に充填し、キャップをして密封後、冷却するものであり、冷却後には壜体内がかなりの減圧状態となる。

このため、上記のような高温充填を伴う用途については、胴部に減圧吸収パネルを形成し、減圧に伴なう壜体の減容変形を、壜体がいびつに変形した感じを与えることなく、目立たないように吸収（緩和）する機能、所謂、減圧吸収機能を発揮するようにした所謂、耐熱ボトルが用いられている。
たとえば、特許文献１には胴部に中心軸に対して軸対称に、６ケの縦長の減圧吸収パネルを凹状に陥没形成した丸型壜体に係る発明が記載されている。

また、５００ｍｌ、３５０ｍｌ、３００ｍｌ、２００ｍｌなど、壜体の内容量が小容量になるに従い、当然、その胴部の表面積も小さくなり、必要な減圧吸収容量に対する減圧吸収パネルの面積の確保がし難くなるが、減圧吸収機能をより効果的に発揮させるための減圧吸収パネルの形状に係る提案が従来よりされている。（例えば特許文献１参照）
特開２００３−６３５１６号公報

上記したように、減圧吸収機能をより効果的に発揮させるための減圧吸収パネルの形状設計に係る提案が従来よりされているが、一方で、高温充填で充填直後にキャップで密閉すると壜体内部が加圧状態になり、それに伴ない壜体胴部が膨出状に変形する。
このため、たとえば減圧吸収機能を効果的に発揮させるために減圧吸収パネルの左右中央部に陥没変形の起点としての機能を発揮する縦溝を配設する場合には、高温充填に伴なう膨張変形によりこの縦溝が開くように変形し、常温状態となっても変形が回復せず、減圧時に陥没変形の起点としての機能が発揮できなくなってしまうという問題がある。

本発明は、こうした問題点を解消するためのものであり、合成樹脂製壜体において、減圧吸収機能を損なうことなく、高温充填に伴なう膨出変形を抑制することのできる減圧吸収パネルの形状を創出することを課題とするものである。

本発明の主たる構成は、合成樹脂製壜体において、胴部に複数の減圧吸収パネルを周方向に並列状に陥没形成し、この減圧吸収パネルの左右中央部に減圧時における陥没変形の起点としての機能を発揮する縦溝を形成し、この縦溝の溝深さを前記減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくする、と云うものである。

減圧吸収パネルは壜体の胴部に、周方向に並列して矩形状に陥没状に形成されるが、その左右中央部に縦溝を形成する場合が多い。
この縦溝は、減圧時における陥没変形の起点としての機能を発揮し、陥没変形を減圧吸収パネルの中央部から左右上下方向にスムーズに進展させて、減圧吸収パネル自体がいびつに変形しないようにすると共に、減圧吸収機能を十分に発揮できるようにしている。

しかし、縦溝は一方で高温充填時における膨出変形の起点としても作用し、特に、減圧吸収パネルの周縁部による拘束の小さい上下中央部で胴壁が、高温で剛性が低くなることも相俟って大きく膨出変形し、特に縦溝が左右に開くように変形し、室温状態となっても変形が回復せず、減圧時に陥没変形の起点としての機能が十分発揮できなくなってしまう。

ここで、上記した主たる構成は、縦溝の溝深さを減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくすることにより、陥没変形や膨出変形の起点を減圧吸収パネルの中央部から、上部および下部にすることを意図したものであり、この上部と下部では、減圧吸収パネルの周縁部による変形、特に膨出変形が拘束され、高温充填に伴なう膨出変形を効果的に抑制することが可能となる。
また、減圧吸収パネルの周縁部による拘束の小さな上下中央部においても縦溝の溝深さを小さくすることにより、それだけ周方向への伸張長さが短くなり、膨出変形を小さく抑制することができる。

一方、減圧時における陥没変形は、溝深さの大きな縦溝の上端部と下端部を基点として、中央部へスムーズに進展させることができ、加圧状態での膨出変形の抑制と、減圧状態における陥没変形のスムーズな進行を両立することが可能となる。

本発明の他の構成は、上記主たる構成に加えて減圧吸収パネルの上下中央部位置を溝欠部とするものである。

上記構成により、減圧吸収パネルの上下中央部位置を縦溝が形成されない溝欠部とすることにより、上下中央部での膨出変形をより効果的に抑制することが可能となる。

本発明のさらに他の構成は、縦溝の幅を減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくすると云うものである。

上記構成により、減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて縦溝の深さと共に、幅を大きくすることにより、さらに効果的に変形の起点を縦溝の上端部および下端部にすることが可能となる。

本発明のさらに他の構成は、減圧吸収パネルの中央部に平坦な頂面を有する平坦突出部を形成し、この平坦突出部に縦溝を形成すると云うものである。

上記構成により、減圧時の平坦突出部の反転状の陥没変形により、減圧吸収容量をより大きくすることが可能となる。

本発明の主たる構成のものにあっては、
縦溝の深さを前記減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくすることにより、陥没変形や膨出変形の起点を減圧吸収パネルの上下中央部から、上部および下部にすることを意図したものであり、高温充填に伴なう膨出変形を効果的に抑制することができると共に、一方で減圧時における陥没変形を縦溝の上端部と下端部を基点として、中央部へスムーズに進展させることができ、加圧状態での膨出変形の抑制と、減圧状態における陥没変形のスムーズな進行を両立することができる。

減圧吸収パネルの上下中央部位置を溝欠部とするものにあっては、上下中央部での膨出変形をより効果的に抑制することができる。

縦溝の幅を減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくするものにあっては、減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて縦溝の深さと共に、幅を大きくすることにより、さらに効果的に変形の起点を縦溝の上端部および下端部にすることができる。

減圧吸収パネルの中央部に平坦な頂面を有する平坦突出部を形成し、この平坦突出部に縦溝を形成するものにあっては、減圧時の平坦突出部の反転状の陥没変形により、減圧吸収容量をより大きくすることができる。

以下、本願の発明の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図１〜図５は本発明の合成樹脂製壜体の一実施例の壜体であり、図１は正面図、図２は図１中のＡ−Ａ線に沿って示す平断面図、図３は図１の壜体１の減圧吸収パネル１２の（ａ）正面図、および（ｂ）左右中央部における縦断面図、そして、図４、図５はそれぞれ図３（ａ）中のＢ−Ｂ線とＣ−Ｃ線に沿って示す一つの減圧吸収パネル１２近傍の平断面図ある。

この壜体１はＰＥＴ樹脂製の２軸延伸ブロー成形品で、内容量が５００ｍｌで口筒部２、肩部３、胴部４、底部５からなり、その基本的な形状は丸型ボトルである。円筒状の胴部４には、周方向に縦長矩形状の６ケの減圧吸収パネル１２が並列状に陥没形成され、胴部４の平断面形状は図２に示されるように６角形状となっている。また、隣接する減圧吸収パネル１２の間には壜体１の剛性や座屈強度を担う６ケの柱部６が形成されている。
また、減圧吸収パネル１２の上端直上位置には短円筒部７ａ、下端直下位置には短円筒部７ｂと周溝８を形成し膨張変形や、陥没変形に対する周リブとしての機能を発揮するようにしている。

縦長矩形状の減圧吸収パネル１２は段部１１でその周囲を囲うようにして、胴部４に陥没形成されている。また、この減圧吸収パネル１２の中央部には縦長矩形状の平坦な頂面を有する平坦突出部１３が形成されており、さらにこの平坦突出部１３の左右中央位置に、この平坦突出部１３の略全高さに亘って縦溝１４が形成されている。

ここで、上下中央部は平坦突出部１３と同一平面にした溝欠部となっており、縦溝１４は、上下に分割されたように見え、上下中央部から上端部および下端部方向かけて、溝のない状態から１．５ｍｍの溝深さまで、横幅を５ｍｍまで徐々に大きくなるようにしている。（図３（ａ）、（ｂ）、図４、図５参照）

図６は実施例の壜体１の特徴を明らかにするために用意した比較例の壜体１０１の正面図である。この比較例の壜体１０１は他の部分の形状はそのままに、減圧吸収パネル１２の縦溝１４の形状を縦長菱形状としたものである。
図７、８はこの比較例の壜体１０１の減圧吸収パネル１１２を示すものであり、図７（ａ）、（ｂ）は正面図および左右中央部における縦断面図、また図８は図７（ａ）中のＤ−Ｄ線に沿って示す一つの減圧吸収パネル１１２近傍の平断面図ある。
これら図７、８から判るように縦溝１１４は平坦突出部１１３に、縦長菱形状に形成され、上下中央部分が減圧時の陥没変形の起点となるように上記実施例の縦溝１４とは逆に、上下中央部から上端部および下端部方向かけて、溝の深さを１．５ｍｍから、さらに横幅を５ｍｍから徐々に小さくなるようにしている。

次に、上記実施例の壜体１と比較例の壜体１０１について次の耐熱試験と減圧吸収容量に係る試験を実施した。
（１）耐熱試験
８７℃の水を充填し、キャップをした状態で壜体の不正変形を観察する。
（２）減圧吸収容量測定試験
測定する壜体に水を満量充填し、その口部にゴム栓付ビューレットを装着し、真空ポンプを作動させ、マノメータで３ｍｍＨｇ／秒のスピードで減圧し、壜体が不正変形した時の減圧度を読んで減圧強度とし、同時にテスト前後のビューレットの値差から減圧吸収容量を算出する。なお、１ｍｍＨｇは、約１３３ｋＰａ（キロパスカル）に相当する。

上記試験の結果は次のようであった。
（１）耐熱試験
実施例の壜体１では、どの減圧吸収パネル１２でも中央高さ位置の膨出変形状態Ｓ１は概略図４中の２点鎖線で示した程度であり、外観上あるいは生産ライン適性の点でも問題のない範囲であり、壜体１が冷却されるに従って、定常状態Ｓ０を経て陥没変形状態にスムーズに進行した。
一方比較例の壜体１０１では６ケのうち２ケの減圧吸収パネル１１２の中央高さ位置で、概略図８中の２点鎖線で示した大きな膨出変形状態Ｓ１となると云う不正変形が発生した。特に溝１１４が大きく開くように変形し、永久変形が残り、壜体１０１の冷却が進行しても定常状態Ｓ０に戻らない結果となった。
（２）減圧吸収容量測定試験
実施例の壜体１では減圧強度は１４２ｍｍＨｇ、減圧吸収容量は２７ｍｌであり、比較例の壜体１０１では減圧強度は１３３ｍｍＨｇ、減圧吸収容量は２６ｍｌであった。

上記結果から、実施例の壜体１は、比較例の壜体１０１に比較して減圧吸収機能を損なうことなく、むしろ向上させながら高温充填時における膨出変形、特には減圧吸収パネル１２の中央高さ位置における膨出変形の程度を効果的に抑制でき、耐熱性が大きく向上したことが確認された。

以上、実施例に沿って本願発明の実施の形態とその作用効果について説明したが、本願の実施の形態はこの実施例に限定されるものではない。
上記実施例では、ＰＥＴ樹脂製の５００ｍｌ、丸型壜体の例を示したが、本願発明の作用効果は他の合成樹脂製のもの、さらに小型あるいは大型の壜体、また丸型壜体に限らず角形壜体についても十分発揮されるものである。

縦溝の形状についても、膨張変形や陥没変形の起点としての機能性の他にも、減圧吸収パネルの剛性の向上や、意匠性も考慮して、溝の深さを減圧吸収パネルの上下中央部から上方および下方に向けて大きくすると云う範囲内でさまざまな形状とすることができる。
たとえば、本実施例のように必ずしも上下中央部で溝欠部とする必要はないし、全高さ範囲で同幅とし、溝深さだけを上端と下端方向に深くするようにすることもできる。さらに、縦溝を左右中央部に２本並列状に配設したり、１本の縦溝を上下少し離して分断状に配設することもできる。

以上説明したように、本発明の合成樹脂製壜体は減圧吸収パネルによる減圧吸収機能を損なうことなく、高温充填時における膨出変形の程度を効果的抑制して耐熱性を大きく向上したものであり、高温充填工程を要する製品分野での幅広い使用展開が期待される。

本発明の合成樹脂製壜体の一実施例の正面図である。 図１中のＡ−Ａ線に沿って示す平断面図である。 図１の壜体の減圧吸収パネルの（ａ）正面図、および（ｂ）左右中央部における縦断面図である。 図３（ａ）中のＢ−Ｂ線に沿って示す減圧吸収パネル近傍の平断面図である。 図３（ａ）中のＣ−Ｃ線に沿って示す減圧吸収パネル近傍の平断面図である。 合成樹脂製壜体の比較例の正面図である。 図６の壜体の減圧吸収パネルの形状を示す（ａ）正面図、および（ｂ）左右中央部における縦断面図である。 図７（ａ）中のＤ−Ｄ線に沿って示す減圧吸収パネル近傍の平断面図である。

符号の説明

１、１０１；壜体
２ ；口筒部
３ ；肩部
４ ；胴部
５ ；底部
６、１０６；柱部
７ａ、７ｂ；端円筒部
８ ；周溝
１１、１１１；段部
１２、１１２；減圧吸収パネル
１３、１１３；平坦突出部
１４、１１４；縦溝
Ｓ０；定形状態
Ｓ１；膨出変形状態

Claims (4)

1. 胴部(4)に複数の減圧吸収パネル(12)を周方向に並列状に陥没形成し、該減圧吸収パネル(12)の左右中央部に減圧時における陥没変形の起点としての機能を発揮する縦溝(14)を形成し、該縦溝(14)の溝深さを前記減圧吸収パネル(12)の上下中央部から上方および下方に向けて大きくしたことを特徴とする合成樹脂製壜体。
2. 減圧吸収パネル(12)の上下中央部位置を溝欠部とした請求項１記載の合成樹脂製壜体
3. 縦溝(14)の横幅を減圧吸収パネル(12)の上下中央部から上方および下方に向けて大きくした請求項１または２記載の合成樹脂製壜体。
4. 減圧吸収パネル(12)の中央部に平坦な頂面を有する平坦突出部(13)を形成し、該平坦突出部(13)に縦溝(14)を形成する構成とした請求項１、２または３記載の合成樹脂製壜体。

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