以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記において説明した内容により本発明が限定されるものではない。また、下記における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本実施形態は、駆動力の発生源となる動力発生手段の発生する動力(出力)を操作する出力操作手段と、それぞれの車輪の制動力を調整可能な制動力調整機構とを備える車両を制御するものであり、車両が備える車輪の制動力を調整して前記車両の挙動を制御する車両挙動制御が少なくとも介入しているときには、前記出力操作手段への操作に対して前記動力発生手段が発生する動力の応答を示す操作感度が、前記出力操作手段に対する出力増加操作に対して前記動力発生手段の動力がより増加しやすくなるように変更される点に特徴がある。すなわち、少なくとも前記車両挙動制御が介入しているときには、前記動力発生手段の発生する動力を増加させる指令に対して、前記動力発生手段が実際に発生する動力が出やすくなるようにする。
例えば、前記出力操作手段が車両のアクセルである場合、少なくとも前記車両挙動制御が介入しているときには、前記車両挙動制御が介入していないときと同じだけアクセルを開く操作(動力発生手段の動力を増加させる操作)をしても、動力発生手段が発生する動力(例えば、トルク)は、前記車両挙動制御が介入していないときよりも出やすく、すなわち増加しやすくなる。また、車両挙動制御とは、車両がコーナーを走行しているとき等のように、車両に横加速度が発生する場合に、前記車両が備える車輪の制動力を調整して前記車両の姿勢を制御することをいう。
図1は、本実施形態に係る運転制御装置を備える車両の構成例を示す構成概略図である。図1において、車両1は、図1の矢印X方向に前進するものとする。車両1が前進する方向は、車両1の運転者が座る運転席からステアリングホイール9Hへ向かう方向である。左右の区別は、車両1の前進する方向(図1の矢印X方向)を基準とする。すなわち、「左」とは、車両1の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両1の前進する方向に向かって右側をいう。また、車両1の前後は、車両1が前進する方向を前とし、車両1が後進する方向、すなわち車両1が前進する方向とは反対の方向を後とする。
まず、車両1の全体構成を説明する。車両1は、左側前輪5FL、右側前輪5FR、左側後輪5RL及び右側後輪5RRの4個の車輪を備える。車両1は、内燃機関2を動力発生手段としている。本実施形態において、内燃機関2は、車両1の進行方向(図1中の矢印X方向)前方に搭載される。内燃機関2が発生した動力は、まず変速装置3に入力されて、車両1を走行させるために適した回転数に減速されてから、駆動軸4を介して駆動輪である左側前輪5FL及び右側前輪5FRへ伝達される。これによって、車両1が走行する。なお、本実施形態において、内燃機関2はガソリンを燃料とするレシプロ式の火花点火式内燃機関であるが、内燃機関2はこれに限定されるものではない。また、車両1に対する内燃機関2の搭載位置は、本実施形態に記載したものに限定されるものではない。
また、車両1の動力発生手段は内燃機関に限定されるものではない。例えば、内燃機関と電動機とを組み合わせた、いわゆるハイブリッド方式の動力発生手段を備えていてもよいし、電動機のみを動力発生手段として備えてもよい。電動機のみを動力発生手段とする場合には、各車輪にそれぞれ電動機を備える、いわゆるインホイールモータ方式としてもよい。なお、本実施形態では、車両1は、左側前輪5FLの駆動力と、右側前輪5FRの駆動力とを変更することができる機能、いわゆる駆動力配分機能を備えていないものとするが、駆動力配分機能を備える車両を除外するものではない。
内燃機関2の発生する動力の大きさは、出力調整手段であるスロットル弁40によって調整される。スロットル弁40は、内燃機関2へ供給する燃焼用空気の量を調整する。そして、内燃機関2へ供給される燃焼用空気の量に応じた燃料が内燃機関2へ供給されて内燃機関2の燃焼室で燃焼し、内燃機関2に動力を発生させる。なお、内燃機関2がディーゼル機関である場合、原則として内燃機関へ供給される燃焼用空気の量は一定で、内燃機関2の発生する動力の大きさは、内燃機関2へ供給される燃料の量で調整される。内燃機関2がディーゼル機関である場合、内燃機関の燃焼室へ燃料を供給する燃料噴射弁が、出力調整手段となる。
スロットル弁40は、吸気通路の通路断面積を変更する弁体40Vと、弁体40Vの開度を調整するスロットルアクチュエータ40Aとで構成される。スロットルアクチュエータ40Aは、ECU(Electronic Control Unit)10によって制御され、その結果として、弁体40Vの開度が調整される。ECU10は、アクセルペダル41Pに取り付けられたアクセル開度センサ41からアクセルペダル41Pの開度(アクセルペダル41Pの操作量であり、アクセル開度という)を取得し、取得したアクセル開度に応じてスロットルアクチュエータ40Aを駆動して、弁体40Vの開度を調整する。これによって、内燃機関2へ供給される燃焼用空気の量が調整される。このように、本実施形態では、いわゆるアクセル・バイ・ワイヤシステムにより、内燃機関2の発生する動力を調整するが、出力調整手段はこれに限定されるものではない。例えば、アクセルペダル41Pの操作を、ワイヤ等の伝達手段によってスロットル弁へ伝達して、スロットル弁の開度を調整する出力調整手段を用いてもよい。なお、内燃機関2が希薄燃焼(リーンバーン)で運転される場合、燃焼用空気を過多とするため、通常、スロットル弁40を構成する弁体40Vは全開となる。
車両1の左側前輪5FL及び右側前輪5FRは、車両1の駆動輪であるとともに、操舵輪としても機能する。また、左側後輪5RL及び右側後輪5RRは車両1の従動輪である。このように、車両1は、いわゆるFF(Front engine Front drive)形式の駆動形式を採用する。なお、車両1の駆動形式はFF形式に限られず、いわゆるFR(Front engine Rear drive)形式や、4WD(4 Wheel Drive:4輪駆動)形式であってもよい。
本実施形態に係る車両1では、運転者によるステアリングホイール9Hの操作は、操舵補助装置9を介して左側前輪5FL及び右側前輪5FRに伝達され、これによって、左側前輪5FL及び右側前輪5FRが操舵される。操舵補助装置9は、操舵力補助機能と操舵特性変更機能とを備える。操舵力補助機能は、電動機等によってステアリング機構に補助操舵力を与えることにより、運転者の操舵力を低減するものである。操舵特性変更機能は、車両1の運転状態(例えば車両1の速度や車両1の周辺環境)に応じて、ステアリングホイール9Hの操作量に対する左側前輪5FL及び右側前輪5FRの操舵角を変更するものである。ここで、操舵補助装置9は、ECU10や運転制御装置20によって制御される。このように、車両1は、ECU10や運転制御装置20、操舵補助装置9等で構成される、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムを備える。運転制御装置20は、ECU10に備えられており、本実施形態に係る運転制御を実行する。
左側前輪5FL及び右側前輪5FR及び左側後輪5RL及び右側後輪5RRには、それぞれブレーキシリンダ6FL、6FR、6RL、6RR及びブレーキローター7FL、7FR、7RL、7RRが設けられる。それぞれのブレーキシリンダ6FL、6FR、6RL、6RRは、ブレーキ配管BL1、BL2、BL3、BL4によってブレーキアクチュエータ8と接続されている。ブレーキアクチュエータ8は、車両1の運転者がブレーキペダル8Pを踏み込むことにより発生する入力を、ブレーキ配管BL1、BL2、BL3、BL4内のブレーキ油を介してそれぞれのブレーキシリンダ6FL、6FR、6RL、6RRへ伝達する。そして、ブレーキシリンダ6FL、6FR、6RL、6RRは、伝達された入力によってブレーキパッドを介してブレーキローター7FL、7FR、7RL、7RRを挟み込むことにより、左側前輪5FL及び右側前輪5FR及び左側後輪5RL及び右側後輪5RRに制動力を発生させる。
ブレーキアクチュエータ8は、ECU10や運転制御装置20によって制御されて、左側前輪5FLと、右側前輪5FRと、左側後輪5RLと、右側後輪5RRとに発生させる制動力をそれぞれ独立に異ならせることができる。このように、ブレーキアクチュエータ8は、車両1が備えるそれぞれの車輪の制動力、すなわち、左側前輪5FLの制動力と、右側前輪5FRの制動力と、左側後輪5RLの制動力と、右側後輪5RRの制動力とを、それぞれ独立に調整可能な制動力調整機構である。
また、例えば、車両1が先行車両や前方の障害物へ急接近したことをECU10や運転制御装置20が検出した場合、ブレーキアクチュエータ8は、ECU10や運転制御装置20によって制御されて、運転者によるブレーキに関わらず、左側前輪5FL及び右側前輪5FR及び左側後輪5RL及び右側後輪5RRに制動力を発生させる。このように、ECU10や運転制御装置20、ブレーキアクチュエータ8、ブレーキシリンダ6FL、6FR、6RL、6RR等で構成される車両1の制動システムは、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤシステムである。
ブレーキアクチュエータ8は、ECU10や運転制御装置20によって制御されて、車両1が備えるそれぞれの車輪の制動力を変更することにより、車両1の挙動を制御できる。ECU10や運転制御装置20が、車両1の姿勢等をセンサによって感知し、オーバーステアと判断すると、ECU10や運転制御装置20は、ブレーキアクチュエータ8を制御することにより、コーナー外側の前輪を制動し、逆にアンダーステアと判断した場合は、内燃機関2が発生する動力を低下させるとともに、コーナー内側の後輪を制動する等の制御を、車両1の運転状況に応じて自動的に実行する。これによって、例えば、車両1が、オーバースピードでコーナーに侵入したり、急激なハンドル操作等によって車両1の姿勢が乱れたりした際に、車両1の横滑りを防ぎ、優れた走行安定性を発揮させる。このように、車両1は、制動により、車両1の旋回性能を制御したり、車両1の走行安定性を向上させたりできる駆動システムを備えている。
車両1には、車両1の周辺環境の情報、例えば、車線を区分する境界線に関する情報等を検出するセンサ類、及び車両1の運転状態、例えば、車両1のヨーレートや加速度を検出するためのセンサ類、及び車両1に対する操作の情報、例えば、アクセル開度や操舵角度を検出するためのセンサ類が備えられる。車両1の周辺環境の情報を検出するセンサ(周辺環境情報検出手段)としては、進行方向情報検出センサ43、ナビゲーション装置48がある。進行方向情報検出センサ43は、車両1の進行方向前方に設けられて、車両1の周辺環境、特に車両1の進行方向における情報、例えば、車両の走行する車線を区分する境界線の情報、車線の増減等を検出する。進行方向情報検出センサ43は、例えば、カメラが用いられる。
また、ナビゲーション装置48は、GPS(Global Positioning System)を用いて、自車両の現在位置、及び自車両の現在位置における周辺環境(例えば、道路情報)を検出することができる。ナビゲーション装置48が備える地図情報や、VICS等の交通情報報知システムからナビゲーション装置48が取得した交通情報により、運転制御装置20は、道路の線形、道路の幅員、道路の曲率半径、あるいはその道路の制限速度等を得ることができる。これらの情報に基づき、運転制御装置20は、自車両が将来走行する将来走行軌跡を設定する。
車両1の運動状態を検出するセンサ(車両状態検出手段)としては、加速度センサ46、ヨーレートセンサ47によって検出される。本実施形態において、加速度センサ46は、3次元の加速度センサであり、車両1の前後方向加速度及び横加速度及び上下方向加速度を検出できる。なお、加速度センサ46は、一方向の加速度を検出する加速度センサを3個組み合わせて、それぞれの加速度センサにより、車両1の前後方向加速度及び横加速度及び上下方向加速度を検出するように構成してもよい。車両1の運動状態は、例えば、車両1の前後速度(車両1の前後方向における速度)や前後加速度、車両1の横速度(前後方向に直交する方向における速度)や横加速度、車両1のヨー角、ヨー角速度、ヨー角加速度、車両1のスリップ角、スリップ角速度、スリップ角加速度等によって決定される。
車両1に対する操作の情報を検出するセンサとして(操作情報検出手段)は、アクセル開度センサ41、ステアリングホイール9Hの操舵角を検出する操舵角センサ44、ステアリングホイール9Hの操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ45がある。なお、上述した周辺環境情報検出手段、車両状態検出手段及び操作情報検出手段は一例であって、上述したセンサ類に限定されるものではない。
図2は、本実施形態に係る運転制御装置の構成を示す説明図である。運転制御装置20は、図1に示すECU10内に設けられ、ECU10の1機能として、本実施形態に係る運転制御を実現するものとして構成される。運転制御装置20は、いわゆるマイクロコンピュータで構成される処理部20Pを備えており、記憶部16に格納されている本実施形態に係る運転制御を実現するためのコンピュータプログラムに従って、本実施形態に係る運転制御を実行する。ここで、例えば、車両1のECU10がトラクションコントロールシステムや、VSC(Vehicle Stability Control:車両安定性制御システム)、あるいはVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management:アクティブステアリング統合制御システム)を備える場合、操舵補助装置9やブレーキアクチュエータ8に対する制御は、これらのシステムの制御を利用して実現してもよい。
処理部20Pと記憶部16とは、データバス11cによって接続されて、相互に通信できるようになっている。運転制御装置20は、処理部20Pが、本実施形態に係る運転制御に必要な情報を取得するために、入力ポート12及び入力インターフェース13を備える。また、運転制御装置20は制御対象を動作させるため、出力ポート14及び出力インターフェース15を備える。処理部20Pと入力ポート12とは、データバス11aによって接続され、また、処理部20Pと出力ポート14とは、データバス11bによって接続される。
入力ポート12には、入力インターフェース13が接続されている。入力インターフェース13には、アクセル開度センサ41、操舵角センサ44、操舵トルクセンサ45、加速度センサ46、ヨーレートセンサ47、ナビゲーション装置48が接続される。これらのセンサ類から、運転制御装置20は、本実施形態に係る運転制御に必要な情報を取得する。これらの検出手段から出力される信号は、入力インターフェース13内のA/Dコンバータ13aやディジタル入力バッファ13bにより、処理部20Pが利用できる信号に変換されて入力ポート12へ送られる。これにより、運転制御装置20の処理部20Pは、本実施形態に係る運転制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート14には、出力インターフェース15が接続されている。出力インターフェース15には、本実施形態に係る運転制御における制御対象として、スロットル弁40の弁体40Vを制御するスロットルアクチュエータ40Aが接続されている。出力インターフェース15には、制御回路15a、15b等が設けられており、処理部20Pで演算された制御信号に基づき、スロットルアクチュエータ40Aやブレーキアクチュエータ8を動作させる。
図2に示すように、処理部20Pは、走行軌跡設定部21と、制御条件判定部22と、操作感度変更部23とを含んで構成される。これらが、本実施形態に係る運転制御を実行する。なお、本実施形態に係る運転制御は、少なくとも操作感度変更部23によって実現できる。走行軌跡設定部21と制御条件判定部22と操作感度変更部23とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成されている。
走行軌跡設定部21は、車両1が将来、すなわち、現時点以降に走行する走行軌跡である将来走行軌跡を設定する。制御条件判定部22は、走行軌跡設定部21が設定した将来走行軌跡から、車両1が備える車輪の制動力を独立に調整して、車両1の挙動を制御する車両挙動制御の介入が予測されるか否かを判定する。操作感度変更部23は、車両挙動制御の介入が予測されると制御条件判定部22が判定した場合、車両1が備える内燃機関2の出力操作手段への操作に対して内燃機関2が発生する動力の応答を示す操作感度を、出力操作手段に対する出力増加操作に対して内燃機関2の動力が、車両挙動制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように変更可能とする。操作感度を変更可能とするとは、車両挙動制御の介入が予測された場合、実際に操作感度を変更することの他、車両挙動制御の介入が予測された場合には、操作感度を変更する準備状態とし、操作感度を変更することの両方を含む。
記憶部16には、車両1の制御に用いるコンピュータプログラムやデータマップの他、本実施形態に係る運転制御の処理手順を含むコンピュータプログラムやデータマップ等が格納されている。記憶部16は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性のメモリ、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。なお、上述したコンピュータプログラムは、運転制御装置20が既に備えているコンピュータプログラムと組み合わせることによって、本実施形態に係る運転制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、上述したコンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて運転制御装置20を構成して、本実施形態に係る運転制御を実現するようにしてもよい。次に、本実施形態に係る運転制御を説明する。本実施形態に係る運転制御は、図2に示す運転制御装置20によって実現できる。
図3は、本実施形態に係る運転制御の手順を示すフローチャートである。図4〜図6は、将来走行軌跡の設定方法の説明図である。本実施形態に係る運転制御を実行するにあたり、ステップS101で、運転制御装置20の処理部20Pを構成する走行軌跡設定部21は、将来走行軌跡を設定する。ここで、将来走行軌跡の設定方法例を説明する。
将来走行軌跡は、例えば、車両1が搭載するナビゲーション装置48の有する道路情報に基づいて求められる。この場合、走行軌跡設定部21は、ナビゲーション装置48の有する道路情報、及びナビゲーション装置48が取得した車両1の現在位置から、車両1がこれから走行しようとする道路102A(図4参照)の情報を取得する。道路102Aの情報は、例えば、図4に示すように、走行車線両端の境界線103L、103Rの位置、及び境界線103L、103R間の距離Waである。そして、走行軌跡設定部21は、例えば、道路102Aの幅方向中央部分を、将来走行軌跡に設定する。すなわち、走行軌跡設定部21は、いずれの境界線103L、103RからもWa/2の距離にある座標を道路102Aが延在する方向に向かってつなげて得られる軌跡を、将来走行軌跡TRとする。
また、道路の形状やその他の周辺状況に応じて、将来目標軌跡を設定してもよい。例えば、車両1が備える進行方向情報検出センサ43を用いて、車両1の前方に存在する道路102Aの境界線103L、103Rを撮像する。これによって、車両1の進行方向に存在する道路102A、すなわち、車両1がこれから走行しようとする道路102Aの情報が得られる。取得し、得られた画像に対してフィルタリング処理やエッジ抽出処理等の画像処理を施すことにより得られる。走行軌跡設定部21は、撮像された道路102Aの画像に対してフィルタリング処理やエッジ抽出処理等の画像処理を施して、境界線103L、103Rを抽出する。そして、走行軌跡設定部21は、境界線103L、103R間の距離Waを求めて、いずれの境界線103L、103RからもWa/2の距離にある線を生成し、これを将来走行軌跡TRとする。
また、車両1の周辺環境情報、及び車両1の状態量、及び車両1やその周辺環境の拘束条件を用いて、数学的、力学的に最適となるようにして、将来走行軌跡TRを生成してもよい。車両1の周辺環境情報は、車両1がこれから走行しようとする道路の道路線形、曲率、勾配についての情報である。また、車両1の状態量は、現時点における車両1の状態を表す物理量で、例えば、現時点における車両1の走行速度、走行抵抗、重量、内燃機関2の発生する動力(出力)、駆動輪と路面との摩擦係数等である。
将来走行軌跡は、例えば、次に説明する方法で生成される。この方法は、最適化問題を解くことにより将来走行軌跡を生成するものである(以下、最適化手法という)。例えば、優先したい車両1の特性を評価関数(目的関数)化し、車両1を運動力学的にモデル化した車両モデルを用いて、例えば、非線形計画法やSCGRA(Sequential Conjugate Gradient Restoration Algorithm)等で最適化問題を解くことで、前記評価関数を最大又は最小にするような車両1の走行軌跡を得るものである。
この方法において、図5に示すように、車両モデル1Mは、例えば図1に示す車両1を運動力学的にモデル化したものであり、本実施形態では質点モデルとする。そして、車両1の駆動輪(車両1では左側前輪5FL及び右側前輪5FR)と路面との間の摩擦係数μ、内燃機関2の出力Pe、走行抵抗rを考慮に入れる。車両モデル1Mの運動方程式は、xy座標系においては式(1)から(4)で表される。
m×vx’’=fx−rx・・・(1)
m×vy’’=fy−ry・・・(2)
x’=vx・・・(3)
y’=vy・・・(4)
ここで、x、yは車両モデル1Mの位置、mは車両モデル1Mの重量(車両1の重量に相当)、fx、fyは車両モデル1Mの車輪が発生するタイヤ力、dx、dyは車両モデル1Mの走行抵抗(車両1の走行抵抗に相当)、vx、vyは車両モデル1Mの速度である。なお、x、yが他の文字とともに用いられる場合、xはx方向の成分を、yはy方向の成分を意味する。また、「’」は時間微分を意味し、その個数で微分の階数を表す。すなわち、x’’、y’’は、それぞれx方向の加速度、y方向の加速度を表す。
タイヤ力の拘束条件(制約条件)は式(5)で、内燃機関2の出力の拘束条件は式(6)で、走行抵抗は式(7)、(8)で表される。
fx2+fy2≦(μ×m_n)・・・(5)
fx×vx+fy×vy≦Pemax・・・(6)
rx=(Cd×v2+d0)×(vx/v)・・・(7)
ry=(Cd×v2+d0)×(vy/v)・・・(8)
ここで、m_nは車両モデル1Mの垂直荷重、Pemaxは内燃機関2の最大出力、Cdは抗力係数、d0はv=0における走行抵抗、vは、√(vx2+vy2)である。
また、車両モデル1Mが走行する、モデル化された道路(道路モデル)102は、2本の境界線103L、103Rで仕切られた内側である。車両モデル1Mは、道路モデル102内を走行するという拘束条件があり、これは、式(9)、式(10)で表される。なお、式(9)は曲線の道路に対応し、式(10)は直線の道路に対応する。すなわち、本実施形態に係る最適化手法では、少なくとも道路の幅を拘束条件とする。
Ri2≦x2+y2≦Ro2・・・(9)
h1≦y≦h2・・・(10)
ここで、Riは曲線道路の内側における車両区分線の半径であり、図6ではIからi1までの区間におけるR1と、i1からi2までの区間におけるR4である。Roは曲線道路の外側における車両区分線の半径であり、図6ではIからi1までの区間におけるR2と、i1からi2までの区間におけるR3である。また、h1は、直線道路において、一方の車両区分線のy座標であり、h2は他方の車両区分線のy座標である。したがって、h2=h1+Wとなる。Wは、道路モデル102の幅(道幅)である。
例えば、図6に示すような道路モデル102の所定区間(IからEまでの区間)を車両モデル1Mが走行するときに、最も少ない時間で、すなわち最も速い速度で前記所定区間を走行したい場合、前記所定区間を走行する時間tを評価関数Fとする。そして、非線形計画法やSCGRA等を用いて、上述した拘束条件の下においてこの評価関数Fを最小にする最適化問題を解くことにより得られた軌跡、すなわち各時間における座標(x、y)の集まりが、将来走行軌跡TRとなる。なお、初期条件としては、所定区間Iに車両モデル1Mが進入するときにおける車両モデル1Mの状態量を用いる。また、各時間における座標(x、y)は、速度vx、vyをそれぞれ積分することで得られる。このとき、将来走行軌跡TR上の各座標におけるタイヤ力fも得られる。
また、駆動輪の負担率を最も小さくしたい場合、タイヤ力f=√(fx2+fy2)の総和Σf:(I→E)を評価関数Fとした上で、上述した拘束条件の下においてこの評価関数Fを最小にする最適化問題を解くことにより、将来走行軌跡TRを得る。評価関数Fは、最適化したい車両1の特性に応じて作成する。そして、評価関数Fの特性に応じて、評価関数Fを最大又は最小にする最適化問題を解く。最適化したい車両1の特性は、例えば、車両1の燃料消費率(最小が目標)、車両1の安定性(例えば、ロールモーメントを最小とする)等がある。
最適化したい特性は、予め一つに設定しておいてもよいし、車両1の走行条件に応じて変更してもよい。例えば、スポーツ走行モードで車両1が走行している場合、制御条件判定部22は、将来走行軌跡として、所定区間における車両1の通過速度を最大にするような走行軌跡を生成し、経済走行モードで車両1が走行している場合、走行軌跡設定部21は、将来走行軌跡として、車両1の燃料消費率を最小にするような走行軌跡を生成する。このようにして、走行軌跡設定部21は、設定された車両1の特性を最適化できる走行軌跡を生成する。この最適化手法によれば、車両1の諸特性(例えば、燃料消費率や走行速度等)を最適化した走行軌跡が得られるので、最適化した特性については、高い性能が得られる。
この最適化手法は、ナビゲーション装置48や進行方向情報検出センサ43等から車両1がこれから走行しようとする道路の情報(線形、曲率半径、幅等)を取得し、走行軌跡設定部21は、車両1の走行中にリアルタイムで将来走行軌跡TRを生成してもよい。この場合、演算速度を優先して、最適化手法におけるモデル化やアルゴリズム等を簡略化する場合がある。また、サーキット等のように、車両1がこれから走行しようとする道路の情報が予め分かっている場合、運転制御装置20とは異なる演算装置を用いて、予め将来走行軌跡TRを生成して運転制御装置20の記憶部16に格納しておく。この場合、最適化手法におけるモデル化やアルゴリズム等を、精度を優先したものとすることができる。そして、サーキット等を走行する場合、記憶部16に格納された将来走行軌跡TRやタイヤ力fを用いて、本実施形態に係る運転制御を実行する。
上述した方法により、将来走行軌跡TRが生成されたら、ステップS102へ進む。ステップS102において、運転制御装置20の処理部20Pを構成する制御条件判定部22は、将来走行軌跡TR上で、車両挙動制御の一種であるUS(アンダーステア)抑制制御の介入が予測されるか否かを判定する。アンダーステア抑制制御とは、車両1の旋回中にアンダーステアが発生した場合、これを抑制する制御であり、本実施形態では、例えば、コーナー内側の車輪(例えば後輪)を制動することによりアンダーステアを抑制する。すなわち、制動のみを用いてUS抑制制御を実行する。次に、US抑制制御の介入を予測する方法について説明する。
図7〜図10は、US抑制制御の介入を予測する方法の説明図である。例えば、図7に示すように、将来走行軌跡TRの曲率半径がRのカーブCA(x2〜x3の部分であり、車両1がこれから走行するカーブ)が前方に存在し、かつ制限速度がVcである道路102Aを車両1が走行している場合を考える。制限速度Vcは、例えば、制御条件判定部22が、ナビゲーション装置48の有する道路情報やインフラの情報に、ナビゲーション装置48が取得した車両1の現在位置を対応させて求める。
一般に、US抑制制御は、車両1の横加速度が、所定のUS抑制制御開始判定閾値Gyc(例えば、4m/s2)以上になった場合、又は車両1の横加速度又はヨーレートが目標(規範)の値に達していない場合に開始される。本予測方法では、車両1がこれから走行するカーブにおいて、車両1に作用すると予測される横加速度を用いて、US抑制制御の介入を予測する。ここで、車両1に作用すると予測される横加速度は、制限速度Vcと車両1がこれから走行するカーブの曲率半径Rとを用いて、Vc2/Rで求められる。そして、Gycと、Vc2/Rとが、式(11)の関係を満たすときに、車両1がこれから走行するカーブでUS抑制制御の介入が開始されると判定される。
Gyc≦Vc2/R・・・(11)
制御条件判定部22は、記憶部16に格納されているUS抑制制御開始判定閾値Gycを取得して、式(11)に基づき、US抑制制御の介入が開始されるか否かを判定する。本予測方法では、将来走行軌跡TRを用いて、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径Rを求め、ナビゲーション装置48等を用いて車両1がこれから走行するカーブの制限速度Vcを求め、US抑制制御の介入を予測する。これにより、本予測方法では、車両1が実際に道路を走行する前に、US抑制制御の介入を予測できる。
また、US抑制制御の介入は、次のような予測方法で予測してもよい。この予測方法においては、まず、道路102AのカーブCAの直前に存在する直線ST1における車両1の平均速度Vmを求める。制御条件判定部22は、例えば、車両1のステアリングホイール9Hの操舵角δの絶対値|δ|が、所定の操舵角閾値δc(例えば30度)以下である場合に、車両1は直線ST1を走行していると判定する。車両1の平均速度Vmは、直線ST1において、車両1の前後加速度Gxの絶対値|Gx|が、所定の前後加速度閾値Gxc(例えば0.1m/s2)以下である場合を満たす部分の平均速度とする。例えば、図8に示す例では、時間t1〜t2までの車両速度Vを平均した値が、車両1の平均速度Vmとなる。
制御条件判定部22は、操舵角センサ44からステアリングホイール9Hの操舵角δを取得し、また加速度センサ46から車両1の前後加速度Gxを取得する。そして、制御条件判定部22は、記憶部16に格納される操舵角閾値δc及び前後加速度閾値Gxcを記憶部16から読み出して、取得した操舵角δ及び前後加速度Gxと比較する。これによって、|δ|≦δcかつ|Gx|≦Gcを満たす部分における車両1の車両速度Vの平均値(平均速度)Vmを求める。
本予測方法でも、車両1がこれから走行するカーブにおいて、車両1に作用すると予測される横加速度を用いて、US抑制制御の介入を予測する。本予測方法では、車両1に作用すると予測される横加速度は、車両1の平均速度Vmと車両1がこれから走行するカーブの曲率半径Rとを用いて、Vm2/Rで求められる。そして、Gycと、Vm2/Rとが、式(12)の関係を満たすときに、車両1がこれから走行するカーブでUS抑制制御の介入が開始されると判定される。なお、Rは、上述したように、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径であり、将来走行軌跡TRの曲率半径を用いる。
Gyc≦Vm2/R・・・(12)
制御条件判定部22は、記憶部16に格納されているUS抑制制御開始判定閾値Gycを取得して、式(12)に基づき、US抑制制御の介入が開始されるか否かを判定する。本予測方法では、将来走行軌跡TRを用いて、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径Rを求め、車両1が前記カーブへ進入する前における車両1の前後加速度を用いて、車両1がこれから走行するカーブの制限速度Vcを求め、US抑制制御の介入を予測する。これにより、本予測方法では、車両1が実際に道路を走行する前に、US抑制制御の介入を予測できる。
ここで、例えば、図9に示すように、車両1がこれから走行するカーブCA1(将来走行軌跡TRのIaからEまでの区間)は、曲率半径がそれぞれ異なる第1カーブaと第2カーブbと第3カーブcとが組み合わされて構成される。第1カーブaの曲率半径はRaであり(中心はCa)、第2カーブbの曲率半径はRbであり(中心はCb)、第3カーブcの曲率半径はRcである(中心はCc)。そして、Rc>Ra>Rbである。
このように、車両1がこれから走行するカーブCA1が、曲率半径の異なる複数のカーブで構成される場合、上述した、US抑制制御の介入を予測する方法においては、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径として、最も曲率半径が小さいものを用いる。図9に示す例では、第2カーブbの曲率半径Rbを用いて、US抑制制御の介入が予測される。通常、カーブが急、すなわち、カーブの曲率半径が小さい程、US抑制制御が介入しやすくなるので、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径として、最も曲率半径が小さいものを用いることにより、US抑制制御の介入の予測精度が向上する。
さらに、上述した最適化手法により将来走行軌跡TRを生成した場合、将来走行軌跡TR上の各座標において、車両モデル1Mの車輪が発生するタイヤ力、すなわち、車両1の車輪が発生すると予測されるタイヤ力f(fx、fy)が得られるので、これを用いてUS抑制制御の介入を予測してもよい。ここで、fyはタイヤ力の横方向成分であり、fxはタイヤ力の前後方向成分である。例えば、図10に示すように、上述した最適化手法により生成された車両モデル1Mの将来走行軌跡TRは、曲率半径の異なる第1カーブA(曲率半径RA)、第2カーブB(曲率半径RB)、第3カーブC(曲率半径RC)で構成されるカーブCA(SP〜EPの区間)を含んでいる。上述した最適化手法によれば、将来走行軌跡TRの各座標において、車両1のタイヤ力が得られる。例えば、座標P1におけるタイヤ力f1は(fx1、fy1)であり、座標P2におけるタイヤ力f2は(fx2、fy2)であり、座標P3におけるタイヤ力f3は(fx3、fy3)である。
車両1の重量をmとすると、車両1が発生可能な横加速度(発生可能横加速度)は、車両1のタイヤ力の横方向成分fy(絶対値)と車両1の重量mとを用いて、|fy|/mで求められる。すなわち、発生可能横加速度は、最適化手法により将来走行軌跡TRが求められる過程で得られる車両1の車輪が発生するタイヤ力fの横方向成分fyを、車両1の重量mで除した値である。そして、上述したUS抑制制御開始判定閾値Gycと、|fy|/mとが、式(13)の関係を満たすときに、車両1がこれから走行するカーブでUS抑制制御の介入が開始されると判定される。
Gyc≦|fy|/m・・・(13)
制御条件判定部22は、記憶部16に格納されているUS抑制制御開始判定閾値Gycを取得して、式(12)に基づき、US抑制制御の介入が開始されるか否かを判定する。例えば、図10に示す例において、カーブCAの手前において、座標P1において車両1に作用すると予測される横加速度|fy1|/mはUS抑制制御開始判定閾値Gycよりも小さいが、座標P2において車両1に作用すると予測される横加速度|fy2|/mがUS抑制制御開始判定閾値Gyc以上になると予測される場合、座標P2でUS抑制制御が介入すると予測される。そして、座標P3において車両1に作用すると予測される横加速度|fy3|/mがUS抑制制御開始判定閾値Gycよりも小さくなる場合、座標P3ではUS抑制制御の介入が終了すると予測される。すなわち、制御条件判定部22は、前記発生可能横加速度に基づいて、US抑制制御が介入を開始するタイミング及びUS抑制制御の介入が終了するタイミングを予測する。
このように、本予測方法では、最適化手法により生成された将来走行軌跡TR及びタイヤ力fを用いてUS抑制制御の介入を予測する。最適化手法により生成されたタイヤ力fにより、車両1がこれから走行しようとする道路において、車両1にどのような横加速度が作用するかを予め知ることができるので、車両1が実際に道路を走行する前に、US抑制制御の介入を予測できる。なお、制御条件判定部22は、将来走行軌跡TRから、車両1がこれから走行しようとする道路にカーブがある場合には、US抑制制御が介入すると予測してもよい。
ステップS102においてYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部22が、車両1がこれから走行しようとする道路において、US抑制制御が介入すると予測した場合、ステップS103に進む。ステップS103において、運転制御装置20の処理部20Pを構成する操作感度変更部23は、出力操作手段であるアクセルペダル41Pの操作感度を変更する。操作感度とは、出力操作手段(アクセルペダル41P)への操作に対して動力発生手段である内燃機関2が発生する動力の応答を示す尺度である。ステップS103において、操作感度は、アクセルペダル41Pへの操作に対して動力発生手段である内燃機関2が発生する動力の応答が、車両挙動制御であるUS抑制制御の介入がない場合よりも高くなるように変更される。すなわち、操作感度は、内燃機関2が発生する動力を増加させるようにアクセルペダル41Pを操作すること(出力増加操作)に対して、内燃機関2の動力が、US抑制制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように変更される。
図11は、動力発生手段の発生する動力を制御する際のゲインと横加速度比との関係を記述したゲイン決定マップの模式図である。操作感度は、例えば、次のように変更される。ここで、操作感度は、アクセルペダル41Pの開度に対する内燃機関2が発生する動力(より具体的にはトルクTe)の応答であり、操作感度変更部23は、アクセルペダル41Pの開度に対して内燃機関2の発生するトルクTeが、US抑制制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように、操作感度を変更する。すなわち、操作感度が、US抑制制御の介入がない場合よりも敏感になるように変更される。例えば、図1に示す車両1において、操作感度がUS抑制制御の介入がない場合よりも敏感になるように変更されると、US抑制制御の介入がない場合よりも、アクセルペダル41Pの操作に対して、スロットル弁40の弁体40Vが開きやすくなる。
本実施形態に係る運転制御において、例えば、アクセルペダル41Pの開度(アクセル開度)OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係は、式(14)に規定されるものと式(15)に規定されるものとを用いる。そして、US抑制制御の介入が予測されない場合、操作感度変更部23は、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(14)に規定されるものに設定し、US抑制制御の介入が予測される場合、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(15)に規定されるものに設定する。ECU10は、式(14)に規定される関係を用いて内燃機関2の発生するトルク(Te)を制御し、US抑制制御の介入が予測される場合、ECU10は、式(15)に規定される関係を用いて内燃機関2の発生するトルク(Te)を制御する。
Te=Fa(OP_A)・・・(14)
Te=K×Fa(OP_A)・・・(15)
ここで、Faは、アクセル開度OP_Aに応じて内燃機関2が発生するトルクTeを決定するための関数であり、例えば、アクセル開度OP_Aの一次関数、二次関数、指数関数等である。また、Kは、ゲインであり、操作感度を変更する際に用いる操作感度変更係数である。式(15)は、ゲインK=1である場合には式(14)と同じであり、ゲインKが1を超えると、操作感度がUS抑制制御の介入がない場合よりも敏感になるように変更される。すなわち、ゲインKが1を超えると、同じアクセルペダル41Pの操作量であれば、式(15)を用いた場合には、式(14)よりも内燃機関2の発生するトルクTeは増加しやすくなり、かつ同じアクセル開度OP_Aでは、より大きいトルクTeが発生する。
ゲインKは、US抑制制御を介入させるために必要な車両1の横加速度であるUS抑制制御開始判定閾値Gyc(第1の横加速度)と、車両1の実際の車両速度Vr及び車両1が走行している道路の曲率半径Rから求められる第2の横加速度(推定横加速度)Gy*とに基づいて決定される。より具体的には、推定横加速度Gy*とUS抑制制御開始判定閾値Gycとの比(横加速度比)Gy_R(=Gy*/Gyc)に基づいてゲインKが決定される。ここで、推定横加速度Gy*は、Vr/Rで求められる。なお、Vrは、車両1の実際の車両速度である。また、Rは、車両1がこれから走行するカーブの曲率半径であり、将来走行軌跡TRの曲率半径を用いる。
図11のゲイン決定マップ60に示すように、横加速度比Gy_RがGy_R1以下のとき、ゲインK=K1とし、横加速度比Gy_RがGy_R2以上のとき、ゲインK=K2とし、Gy_R1からGy_R2まで、ゲインKをK1からK2まで単調に増加(より具体的には線形で増加)させる。本実施形態では、Gy_R1=1、すなわち、US抑制制御開始判定閾値Gycと推定横加速度Gy*とが等しい場合、K=1とする。横加速度比Gy_Rが1を超えると、推定横加速度Gy*の方がUS抑制制御開始判定閾値Gycよりも大きくなるので、US抑制制御が介入した状態であると予測できる。本実施形態に係る運転制御では、US予測制御の介入が予測されると(ステップS102:Yes)、操作感度変更部23は、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(14)から式(15)に変更する。すなわち、操作感度変更部23は、操作感度を変更する準備状態(必要があれば操作感度を変更できる状態)とする。
そして、横加速度比Gy_Rが1以上になったら、操作感度変更部23は、記憶部16に格納されるゲイン決定マップ60を読み出して、式(15)のゲインKを1以上に変更し、ECU10は、ゲイン変更後の式(15)を用いて、内燃機関2の発生するトルクTeを制御する。なお、横加速度比Gy_Rが1以上である場合のゲインKは、1よりも大きい定数としてもよい。このようにすれば、制御負荷を低減できる。その後、横加速度比Gy_Rが1を下回ったら、制御条件判定部22は、US抑制制御の介入はないと判定し、操作感度変更部23は、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(15)から式(14)に変更する。そして、ECU10は、(14)を用いて、内燃機関2の発生するトルクを制御する。このように、少なくともUS抑制制御が介入している場合には、アクセルペダル41Pに対する出力増加操作に対して内燃機関2の発生するトルクTeが、前記車両挙動制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように、操作感度が変更される。
なお、車両1の運転者がアクセルペダル41Pを戻す操作をした場合に、操作感度変更部23は、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(15)から式(14)に変更し、ECU10は、(14)を用いて、内燃機関2の発生するトルクを制御するようにしてもよい。これによって、カーブを抜けた後にアクセルペダル41Pが踏み込まれた状態であれば、運転者には車両1を加速させたい意思があると判断できるので、この場合には、アクセルペダル41Pの踏み込み操作に対して内燃機関2のトルクが増加しやすくなるようにした方が、運転者の加速の意思に沿った制御となる。
これによって、US抑制制御の介入がない場合よりも操作感度が敏感になるので、本実施形態に係る運転制御では、US抑制制御が介入した場合には、アクセルペダル41Pの操作(踏み込み)に対する内燃機関2のトルク増加の応答が速くなる。制動力のみによるUS抑制制御が介入した場合、旋回加速時におけるプッシュアンダーは抑制できるが、車両1に減速度が作用する。しかし、本実施形態に係る運転制御では、US抑制制御の介入時に操作感度が敏感になるように変更するので、アクセルペダル41Pの操作に対する車両1の加速のもたつきが低減され、車両1は、運転者の意図に近い挙動を示すので、ドライバビリティの低下を抑制できる。また、横加速度比Gy_Rが1以上になってからゲインKを1以上の値に変更するので、確実にUS抑制制御が介入してから、操作感度を変更できる。また、US抑制制御が介入する前には操作感度を変更しないので、アクセルペダル41Pに操作に対して内燃機関2のトルクが急激に上昇する等の操作に対する応答の過敏さを低減できる。
上記説明では、横加速度比Gy_Rの大きさに基づいて、操作感度変更部23が式(15)のゲインKを変更した。横加速度比Gy_Rが1以上になると、US抑制制御が介入するので、上記説明においては、US抑制制御が介入すると予測されたときには、操作感度変更部23は、操作感度を変更する準備状態(必要があれば操作感度を変更できる状態)とし、US抑制制御が介入したら、実際に操作感度を変更する。しかし、本実施形態における操作感度の変更のタイミングは、これに限定されるものではない。例えば、制御条件判定部22がUS抑制制御の介入を予測した時点で、操作感度変更部23はアクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(15)から式(14)に変更し、かつ式(15)のゲインKを1よりも大きい値に設定する。これによって、例えば、車両1がカーブに進入する前からゲインKが変更される。
そして、その後、操作感度変更部23は、横加速度比Gy_Rの大きさに基づいて式(15)のゲインKを変更してもよい。このようにすれば、横加速度比Gy_Rが1以上になり、US抑制制御が介入を開始した時点では、US抑制制御が介入する前よりも操作感度が敏感になるように変更されているので、アクセル操作に対する内燃機関2のトルク変化の応答性が良好になる。なお、横加速度比Gy_Rが1以上である場合のゲインKは、1よりも大きい定数としてもよい。
上述した最適化手法により将来走行軌跡TRを生成した場合、将来走行軌跡TR上における車両1のタイヤ力fも得られる。この場合、推定横加速度Gy*を、将来走行軌跡TR上の各ポイントにおける車両1のタイヤ力の横方向成分fy(絶対値)と車両1の重量mとから求める。すなわち、推定横加速度Gy*は、|fy|/mとなる。この推定横加速度Gy*と、US抑制制御開始判定閾値Gycとの比(横加速度比)Gy_R(=Gy*/Gyc)に基づき、操作感度変更部23は、例えば、制御条件判定部22によって予測された、US抑制制御が介入を開始するタイミングからUS抑制制御の介入が終了するタイミングまでの間に、ゲイン決定マップ60を用いて、生成された将来走行軌跡TR上の各ポイントにおいてゲインKを決定する。これによって、将来走行軌跡TR上でUS抑制制御が介入を開始するポイントからUS抑制制御の介入が終了するポイントまでの間(上述した図10に示す例では、P2〜P3までの区間)に、アクセルペダル41Pに対する出力増加操作に対して内燃機関2のトルクが、US抑制制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように操作感度が変更される。
図12は、操作感度を変更する構造を示す模式図である。図12は、出力調整手段であるアクセルペダル41Pの反力(アクセル反力)Pを変更できる構造を示している。アクセルペダル41Pは、アクセルアーム41Sに支持されており、アクセルアーム41Sは、アクセル開度センサ41の回転軸を中心として回動する。アクセルアーム41Sには、アクセル反力調整手段である反力調整アクチュエータ41Aが取り付けられる。反力調整アクチュエータ41Aは、アクセルペダル41Pが踏み込まれたとき、その踏力の方向と反対方向の力、すなわちアクセル反力をアクセルペダル41Pに発生させるものである。このように、アクセルペダル41Pは、反力を調整できる機構を備える。反力調整アクチュエータ41Aが発生するアクセル反力Pは、運転制御装置20により制御される。
図12に示す構造を用いる場合、US抑制制御の介入が予測される場合、US抑制制御の介入が予測されない場合よりもアクセル反力Pを小さくする。これによって、操作感度、すなわち、アクセルペダル41Pの開度に対する内燃機関2が発生するトルクの応答は、US抑制制御の介入が予測される場合の方が、US抑制制御の介入が予測されない場合よりも向上する。すなわち、アクセルペダル41Pの開度に対して内燃機関2のトルクが、US抑制制御の介入がない場合よりも増加しやすくなる。
本実施形態に係る運転制御において、図12に示す構造を用いる場合、例えば、アクセルペダル41Pの開度(アクセル開度)OP_Aとアクセル反力Pとの関係は、式(16)に規定されるものと式(17)に規定されるものとを用いる。そして、US抑制制御の介入が予測されない場合、式(16)に規定される関係を用いてアクセル反力Pを発生させ、US抑制制御の介入が予測される場合には、式(17)に規定される関係を用いてアクセル反力Pを発生させる。操作感度変更部23は、US抑制制御の介入が予測されない場合、アクセル開度OP_Aとアクセル反力Pとを式(16)に規定される関係に設定し、US抑制制御の介入が予測される場合には、式(17)に規定される関係に設定する。
P=Ff(OP_A)・・・(16)
P=Ff(OP_A)/K・・・(17)
ここで、Ffは、アクセル開度OP_Aに応じてアクセル反力Pを決定するための関数であり、例えば、アクセル開度OP_Aの一次関数、二次関数、指数関数、マップ等である。また、Kはゲインであり、操作感度を変更する際に用いる操作感度変更係数である。ゲインKは、図11に示すゲイン決定マップ60に示すものと同様であり、横加速度比Gy_Rの増加により、ゲインKが増加するように変化する。
式(17)は、ゲインK=1である場合には式(16)と同じであり、ゲインKが1を超えると、アクセル反力Pは、US抑制制御の介入がない場合よりも小さくなるので、操作感度は、US抑制制御の介入がない場合よりも敏感になるように変更される。すなわち、ゲインKが1を超えると、アクセルペダル41Pに対する踏力が同じであれば、式(17)を用いた場合には、式(16)よりもアクセルペダル41Pがより踏み込まれ、スロットル弁40の弁体40Vが開きやすくなる。その結果、内燃機関2の発生するトルクTeは増加しやすくなり、かつ同じアクセル開度OP_Aでは、より大きいトルクTeが発生する。
これによって、US抑制制御の介入がない場合よりも操作感度が敏感になるので、図12に示す構造を用いた場合も、US抑制制御が介入した場合には、アクセルペダル41Pの操作(踏み込み)に対する内燃機関2のトルク増加の応答が速くなる。その結果、US抑制制御の介入時に操作感度が敏感になるように変更されるので、アクセルペダル41Pの操作に対する車両1の加速のもたつきが低減され、車両1は、運転者の意図に近い挙動を示し、ドライバビリティの低下が抑制される。
ステップS102でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部22が、車両1がこれから走行しようとする道路において、US抑制制御が介入しないと予測した場合、ステップS104に進む。ステップS104において、制御条件判定部22は、車両1が限界を超えない状態でUS抑制制御が介入しているか否かを判定する。車両1が限界を超えておらず、かつUS抑制制御が介入している場合(ステップS104:Yes)、US抑制制御による減速感を低減する。この場合、ステップS103へ進み、操作感度変更部23は、操作感度が敏感になるように、すなわち、アクセルペダル41Pに対する出力増加操作に対して内燃機関2の発生するトルクが、前記車両挙動制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように変更する。
車両1が限界を超えている場合、例えば、車両1に横滑り等が発生しているようなときには、車両1の車輪に制動力を発生させて車両1の横滑り等を抑制しようとする車両姿勢安定化制御が介入する。また、車両姿勢安定化制御は介入していないが、車両1は限界を超えている場合には、いずれ車両姿勢安定化制御が介入する。一方、車両1が限界を超えておらず、かつUS抑制制御が介入していない場合、US抑制制御による減速感は発生しない。
したがって、ステップS104でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部22が、車両1が限界を超えている場合と、US抑制制御が介入していない場合との少なくとも一方が成立する場合、ステップS105に進み、操作感度変更部23は、操作感度を変更しない。すなわち、操作感度変更部23は、アクセル開度OP_Aと内燃機関2の発生するトルクTeとの関係を、式(14)に規定されるものに設定し、あるいは、アクセル開度OP_Aとアクセル反力Pとを式(16)に規定される関係に設定する。
車両1が限界を超えない状態でUS抑制制御が介入しているか否かは、次のように判定される。まず、車両1が限界を超えているか否かは、車両1の実ヨーレートγと、目標ヨーレートγ*との関係が、式(18)に示す関係を満たした場合、制御条件判定部22は、車両1が限界を超えたと判定する。目標ヨーレートγ*は、式(19)で求められ、実ヨーレートは、ヨーレートセンサ47によって検出される。
|γ*−γ|≧Err・・・(18)
γ*=(V×δ)/(n×L×kh×v2)・・・(19)
Errは、限界判定閾値であり、例えば、0.05rad/sec程度である。また、nはステアリングギヤ比、Lは車両1のホイールベース(前後車軸間距離)、khはスタビリティファクタ、Vは車両1の車両速度、δは操舵角である。
また、アクセルON(アクセルペダル41Pが踏み込まれる)かつブレーキOFF(ブレーキペダル8Pが開放される)であるにも関わらず、ECU10から制動指令が発信されていたら、制御条件判定部22は、US抑制制御が介入していると判断する。|γ*−γ|<ErrかつアクセルONかつブレーキOFFである場合、制御条件判定部22は、車両1は限界を超えておらず、かつUS抑制制御が介入していると判定する。この場合は、ステップS104におけるYesの判定なので、ステップS103へ進む。(a)車両1が限界を超えており、かつUS抑制制御が介入している場合、(b)車両1は限界を超えているが、US抑制制御は介入していない場合、(c)車両1は限界を超えておらず、US抑制制御も介入していない場合、のいずれかであると制御条件判定部22が判定した場合、ステップS104におけるNoの判定なので、ステップS105へ進む。
以上、本実施形態では、車両挙動制御(制動力の調整のみによって、少なくとも左右の駆動輪間の前後力に差を与えて車両の旋回性能を制御する)が少なくとも介入しているときには、車両の動力発生手段を操作する出力操作手段への操作に対して動力発生手段が発生する動力の応答を示す操作感度(出力操作手段への操作に対して動力発生手段が発生する動力の応答を示す指標)を、出力操作手段に対する出力増加操作に対して、動力発生手段の動力が車両挙動制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるように変更する。また、本実施形態では、車両の将来走行軌跡から車両挙動制御の介入が予測された場合には、操作感度を、出力操作手段に対する出力増加操作に対して、動力発生手段の動力が車両挙動制御の介入がない場合よりも増加しやすくなるようにする。これによって、出力操作手段への出力増加操作(動力発生手段の発生する動力を増加させる操作)に対して動力発生手段の発生する動力の増加の応答が速くなる。その結果、制動力のみによる車両挙動制御の介入時には、出力操作手段への出力増加操作に対する車両の加速のもたつきが低減されるので、車両挙動制御の制動による減速感が低減される。そして、車両は、運転者の意図に近い挙動を示すので、ドライバビリティの低下を抑制できる。
また、本実施形態では、制動力の調整のみによる車両挙動制御を用いることができるので、複雑なギヤやクラッチを用いた左右駆動力配分機構は不要である。このため、車両の質量増加が抑制されるので、燃料消費量の増加が抑制される。また、車両の製造コストも低減できる。さらに、車両挙動制御で発生した制動力を動力発生手段(内燃機関や電動機等)の発生する動力で補償する方法は、ショックや遅れの少ない制御は困難であるが、本実施形態では、出力操作手段の操作感度を変更するのみなので、ショックや遅れの少ない制御が可能となる。