JP5055664B2 - 射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物およびそれからなる射出発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インスツルメントパネル等の自動車内装材を軽量化、かつ低コスト化するためにプロピレン系樹脂などのオレフィン系樹脂を用いた射出発泡成形体の適用が試みられている。
【0003】
例えば、特開平11−179752号公報には、メルトフローレート(MFR)が10〜200g/10分というオレフィン系樹脂を成形原料として自動車内装部品を製造する方法が開示され、具体的にはMFRが50g/10分および80g/10分という高MFRのプロピレン・エチレンブロック共重合体樹脂をそれぞれ単独で使用した例が具体的に示されている。
【0004】
しかし、このような高MFRのオレフィン系樹脂を樹脂原料として単独で使用した場合には、成形加工性は良好であるが、得られた発泡成形体の耐衝撃性が低下するという問題があり、成形加工性に優れるとともに、得られた成形体が耐衝撃性を有する発泡成形材料の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明者らは、成型加工性に優れるとともに、得られた射出発泡成形体が耐衝撃性を有する射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を開発すべく検討の結果、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、メルトフローレート(MFR)がそれぞれ50g/10分以上および50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を、(A):(B)=60〜99:1〜40(重量比)の範囲で含有してなる射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を提供するものであり、また、係る射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を射出発泡成形してなる射出発泡成形体を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)がそれぞれ50g/10分以上および50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を含有してなるオレフィン系樹脂組成物からなっている。
【0008】
本発明における一方の樹脂成分であるオレフィン系樹脂(A)のMFRは、それが高いほどオレフィン系樹脂組成物の溶融時の流動性が向上するため、50g/10分以上であることが必要であるが、MFRが高くなるほど耐衝撃性が低下する傾向があるため、その上限は300g/10分程度である。
【0009】
このようなオレフィン系樹脂(A)としては、例えば、プロピレン、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の単独重合体または共重合体が挙げられ、中でも、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。
ポリプロピレン系樹脂は、公知のプロピレンを主体とする重合体であり、そのような例としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等を挙げることができ、この中でも、ポリプロピレン−エチレンブロック共重合体が特に望ましい。
【0010】
このようなオレフィン系樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来より知られている各種の方法で製造され、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体についても、例えば、公知の触媒であるチーグラー・ナッタ触媒系、及び/又はメタロセン触媒系を用いて、公知の重合方法であるバルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法又は気相重合法、あるいはこれらの重合法を任意に組み合わせて製造することができる。
しかし、いずれの方法で製造されても、オレフィン系樹脂(A)として使用するためには、得られたオレフィン系樹脂のMFRが50g/10分以上であることが必要である。
【0011】
本発明における他の樹脂成分であるオレフィン系樹脂(B)のMFRは、それが小さいほど得られた成形体の耐衝撃性が向上するため、50g/10分未満であることが必要であるが、MFRが小さくなりすぎると成形過程でのオレフィン系樹脂組成物の溶融時の流動性を極端に悪化させるため、下限は0.1g/10分程度である。
【0012】
このようなオレフィン系樹脂成分(B)としては、プロピレン、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の単独重合体または共重合体を用いることができる。
これらもまた、従来より知られている各種の方法で製造され、その製造方法は任意であるが、オレフィン系樹脂(B)として使用するためには、得られたオレフィン系樹脂のMFRが50g/10分未満であることが必要である。
【0013】
オレフィン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)との組み合わせにおいて、オレフィン系樹脂(B)は組み合わせて使用されるオレフィン系樹脂(A)との相溶性や分散性などに応じて適宜選択され、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)としてプロピレン単独重合体やプロピレン・エチレンブロック共重合体などを用いた場合には、オレフィン系樹脂(B)としては同種のポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましく、また、僅かに架橋したり、あるいは分子鎖に分岐を有するポリオレフィン系樹脂を用いることもできる。
【0014】
また、本発明においてはオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)のそれぞれのMFRについては上記規定の範囲内にあっても、その組み合わせにおいては両者のMFRの差が20g/10分以上望ましくは40g/10分となるように組み合わせることが必要である。
【0015】
本発明の樹脂組成物においては、両オレフィン系樹脂(A)および(B)のMFRの差が大きくなるほど、高い流動性と高い耐衝撃性を得ることができる。
例えば、オレフィン系樹脂(A)としてMFRが55g/10分のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた場合に、良好な流動性(成形加工性)と耐衝撃性を得るには、オレフィン系樹脂(B)のMFRは35g/10分以下であることが必要であり、特に15g/10分以下であることが好ましい。
また、オレフィン系樹脂(A)としてMFRが100g/10分のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた場合には、オレフィン系樹脂(B)のMFRは50g/10分未満であることが必要であり、このような場合に、たとえオレフィン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(A)とのMFRの差が20g/10分以上であっても、オレフィン系樹脂(B)のMFRが50g/10分以上であると所望の効果が得られない。
【0016】
オレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)の混合割合は、重量比で(A):(B)=60〜99:1〜40、望ましくは(A):(B)=70〜95:5〜30である。
両成分の混合割合は用いるオレフィン系樹脂(A)および(B)の種類、必要とする流動性などの諸性質により適宜決定されるが、上記混合割合を外れると満足する諸性能が得られなくなる。
例えば、オレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)のMFRの差が20g/10分以上ではあっても、その差が比較的小さく20g/10分に近い場合には、オレフィン系樹脂(B)の混合割合を比較的高くすることで高い流動性と耐衝撃性を得ることができる。
また、逆に、オレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)のMFRの差が大きく、たとえばその差が40g/10分を大きく超えるような場合には、オレフィン系樹脂(B)の混合割合を比較的少なくすることにより高い流動性と耐衝撃性を得ることができる。
【0017】
オレフィン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)の混合方法としては、例えば、公知の多段重合等により重合段階で混合する方法、または、あらかじめそれぞれ準備しておいたペレットを押出機を用いて溶融混練する方法や、ペレットブレンドしたものを直接射出成形機等により溶融混練する方法が挙げられ、その方法は任意であるが、汎用性の面では後者のペレットブレンドしたものを押し出し機や射出成形機により溶融混練する方法が好ましい。
【0018】
尚、上記におけるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)はそれぞれにおいて単独のオレフィン系樹脂である必要はなく、必要に応じてオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)のいずれか一方または両方が前記したMFRの範囲内において、それぞれのMFRが異なる2種以上のオレフィン系樹脂からなる混合物であってもよい。
例えば、それぞれ単独の場合のMFRが50g/10分以上のオレフィン系樹脂を2種以上混合してなる樹脂混合物をオレフィン系樹脂(A)としてもよく、同様に、それぞれ単独の場合のMFRが50g/10分未満のオレフィン系樹脂を2種以上混合してなる樹脂混合物をオレフィン系樹脂(B)としてもよく、このような混合物からなるオレフィン系樹脂(A)および(B)のMFRはこれらの混合物におけるMFRとすればよい。
また、上記のようなオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)が混合物である場合には、それぞれの混合物をオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)として、前記した割合で混合すればよい。
【0019】
このようなオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を含有するオレフィン系樹脂組成物を用いて射出発泡成形体を製造するにあたっては、該組成物中に発泡成分が配合される。
この際の発泡成分としては、従来より公知の手法により炭酸ガスや窒素ガスなどの気体あるいはこれらを超臨界状態に液化したものを溶融状のオレフィン系樹脂組成物中に直接圧入して用いてもよいし、従来より公知の有機系や無機系の化学発泡剤のそれぞれ単独、あるいはこれらの混合物を用いてもよく、あるいはこれらを併用してもよい。炭酸ガスや窒素ガスを使用する場合には、例えば特開平10−230528に示されるような装置を用い、溶融樹脂内に直接圧入し、混練される。
【0020】
化学発泡剤を用いる場合には、オレフィン系樹脂組成物への分散性に優れる面で粉末状の発泡剤を用いることが望ましい。
化学発泡剤は、オレフィン系樹脂組成物との溶融混練時にそのまま添加、配合してもよいが、一般的には化学発泡剤をその含量が20〜80重量%になるように熱可塑性樹脂に練りこんだマスターバッチとし、該マスターバッチをオレフィン系樹脂組成物にブレンドして用いられる。
【0021】
ここで、有機系化学発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、ヒドラゾジカルボンアミド等が挙げられ、無機系化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、琥珀酸、アジピン酸などが挙げられる。
【0022】
炭酸ガスや窒素ガスを気体状あるいは超臨界状態で溶融樹脂に直接圧入する場合、それらのガス量は通常オレフィン系樹脂組成物100重量部に対し0.5〜10重量部である。また、化学発泡剤を用いる場合には、その使用量は通常オレフィン系樹脂組成物100重量部に対し発泡剤として0.5〜5重量部である。
【0023】
本発明のオレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度に必要に応じて、各種添加剤、例えば、中和剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、タルク等のフィラー、造核剤等を添加することができる。
【0024】
次に、以上述べたオレフィン系樹脂組成物を用いた射出発泡成形体の製造方法について述べるが、射出発泡成形方法それ自体については従来より公知の方法が適用されて特に限定されず、例えば、以下に述べるように、雌雄一対からなる金型の金型キャビティ内に発泡成分を含む溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給、充填した後、所望の製品形状に応じて金型の一部もしくは全部の金型キャビティを拡大し、前記溶融状オレフィン系樹脂組成物を発泡させることにより射出発泡成形体を得ることができる。
【0025】
図1はこの方法に使用する金型の例をその概略断面図で示したものである。
この金型は、雄型(1)および雌型(2)の雌雄一対からなり、両金型は通常そのいずれか一方がプレス装置等の型締め装置に接続され、他方は固定されて縦方向または横方向に両金型が開閉可能となっている。
図では、雄型(1)が固定され、雌型(2)がプレス装置(図示せず)に接続されて、両金型が縦方向に開閉するようになっている。
【0026】
金型キャビティ内への溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給方法は任意であるが、一般的には金型内に設けた樹脂供給路(4)を介して後述する流体圧入装置が付設された射出機などの樹脂供給装置(5)と結ばれた樹脂供給口(6)を雌雄いずれかもしくは両方の金型の成形面に設け、該樹脂供給口からキャビティ内に溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給する方法が好ましい。
この場合、樹脂供給口(6)近傍の樹脂供給路(4)には任意に制御可能な開閉弁を設け、樹脂供給装置に貯えられた溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給、停止が任意に制御できるようにしておくことが望ましい。
【0027】
このような金型により形成される金型キャビティ内に溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)の供給を行う。(図2)
金型キャビティ内への溶融状オレフィン系樹脂組成物の充填は、所定のキャビティクリアランスにおいて両金型を閉じた状態での射出充填による方法であってもよいし、開放状態にある両金型間に溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給したのち両金型の型締め動作によって充填してもよいが、より安定的に良好な発泡成形体を得るには、両金型を閉じた状態での射出充填による方法が好ましい。
射出充填による場合、発泡前の成形体厚みより小さいキャビティクリアランスあるいは発泡前の成形体厚みになるように両金型を閉じた状態で溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)を供給することができる。このとき、あらかじめ金型キャビティ内を0.1〜10MPa程度の加圧流体で満たしておいても良い。
【0028】
発泡前の成形体厚みより小さいキャビティクリアランスになるように両金型を閉じた状態で溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)の供給を開始する場合、供給開始時のキャビティクリアランスはその時のキャビティ容積が所要量の溶融状オレフィン系樹脂組成物の発泡前の容積に対して通常5容量%以上、100容量%未満となる範囲、より望ましくは30容量%以上、70容量%未満である。
溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給が進むにつれて、キャビティクリアランスは拡大され、所要量の溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給が完了する。この時点で、供給した溶融状オレフィン系樹脂組成物の容積とキャビティ容積とが略等しくなり、キャビティ内に溶融状オレフィン系樹脂組成物が充填される。
【0029】
この際、溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給が完了した時点で溶融状オレフィン系樹脂組成物の容量よりもキャビティ容積が大きくなることがあるが、この場合には、所定のキャビティクリアランスになるように型締めを行うことでキャビティ内に溶融状オレフィン系樹脂組成物が充填される。(図3)
溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給が長時間にわたって行われると、供給中のオレフィン系樹脂組成物の温度低下を来たすため、溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給は速やかに行うことが好ましく、ここでは0.5〜5秒程度である。
【0030】
前記のキャビティクリアランスの拡大は、拡大量を制御しながら金型が取り付けたプレス装置などによって積極的に行なってもよいし、供給する溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給圧力を利用して拡大してもよい。
【0031】
発泡前の成形体厚みと同じキャビティクリアランスになるように両金型を位置させた状態で溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)を供給してキャビティ内に充填する場合には、通常の射出成形における場合と同様に、溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給開始から供給完了までキャビティクリアランスを発泡前の成形体厚みと同じになるように保持しておけばよい。
【0032】
両金型の型締め動作により溶融状オレフィン系樹脂組成物をキャビティ内に充填する方法としては、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みよりも大きくなるように両金型を開放した状態で所要量の溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給し、この状態で溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給した後または供給完了と同時にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるように型締めして充填する方法や、キャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みより大きくなるように両金型を開放した状態で溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給を開始し、溶融状オレフィン系樹脂組成物を供給しつつ型締めを開始して、溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給と型締めを平行して行ないつつ溶融状オレフィン系樹脂組成物の供給完了と同時または供給完了後にキャビティクリアランスが発泡前の成形体厚みと同じになるように型締めを行う方法が挙げられる。
【0033】
供給する溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)の温度は、原料オレフィン系樹脂組成物の種類や各種添加剤あるいは各種混合材などにより適宜選択されるが、例えば、溶融温度が160℃のプロピレン・エチレンブロック共重合体をオレフィン系樹脂(A)として用いた場合、170〜230℃望ましくは180〜210℃程度である。
【0034】
上記したような方法により溶融状オレフィン系樹脂組成物(3)が充填された金型キャビティは、高圧状態に保たれ、殆ど空隙が存在しない状態にある。
この状態で、金型成形面に接する溶融状オレフィン系樹脂組成物の表面を固化させて未発泡層(7)を形成せしめるが、一般に金型温度は使用するオレフィン系樹脂の融点または軟化点よりも低い温度に設定されているため、この状態を保持して冷却を行なうと、供給された溶融状オレフィン系樹脂組成物は金型成形面に接する表面部分より固化しはじめ、やがて空隙の殆どない未発泡層(7)が形成される。
【0035】
金型の温度は用いるオレフィン系樹脂により適宜決定されるが、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体をオレフィン系樹脂(A)として用いた場合は、20℃〜80℃程度、望ましくは30〜60℃程度である。この場合、上記した冷却時間は0.1〜5秒程度である。
【0036】
所定の未発泡層(7)が形成された後、金型キャビティを成形体の厚み方向に開放すると、供給された溶融状オレフィン系樹脂組成物中に閉じ込められていた気泡核が膨張しながら発泡層(8)を形成すると同時に、全体として金型の開き方向、すなわち厚み方向に厚みを増す。(図4)
【0037】
キャビティクリアランスが発泡後の最終成形体厚みになった時点で金型の開放動作を停止し、キャビティクリアランスをこの厚みに保持しつつ、成形体を冷却する。
【0038】
このとき、キャビティクリアランスを一旦最終成形体厚みより大きくなるように金型を開放した後、オレフィン系樹脂組成物の発泡層の一部がまだ溶融状態にある間に最終成形体厚みになるまで型締めしてもよい。
この場合には、発泡成形体表面と金型成形面との密着性をよりよくすることができ、金型形状をより忠実に再現するとともに、冷却効率を上げることもできる。このときの型締め動作は、機械的に制御してもよいし、両金型が上下方向に開放される場合には上型の自重によりキャビティを縮小してもよい。
【0039】
冷却が完了した後、金型を完全に開放し、最終成形体であるオレフィン系樹脂射出発泡成形体を金型より取り出せば(図5)、表面に未発泡層(7)を有し、その内部に発泡層(8)を有する射出発泡成形体(9)を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本願発明がこれら実施例に限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例で用いた樹脂成分及び組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
(2)耐衝撃性(デュポンインパクト)
φ300mmの円盤状オレフィン系樹脂発泡成形体の任意の平面箇所より60mm×60mmの試料を切り出し、試験温度23℃、荷重9.8N、ダート先端r=1/4inにて荷重落下衝撃試験を行った。荷重を落下させる高さを変化させ、それぞれの高さについて各5枚ずつ荷重落下試験を行い、全ての試料において亀裂が発生しない高さを求めた。この時のエネルギ値(J)をデュポンインパクトの値とした。
【0041】
実施例1
MFR=55g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット状)90重量部とMFR=10g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット状)10重量部を混合し、樹脂材料とした。
この樹脂材料100重量部に発泡成分として無機系発泡剤を40重量%含んだマスターバッチ(セルマイクMB3064:三協化成社製)を3重量部添加した成形材料をφ70mm、理論射出容量750ccのインライン式射出機により、200℃で溶融混練し、約130g計量した。φ305mm、厚さ2mmのキャビティを有し、金型温度が50℃に保たれた一対の円盤状金型内に約1.5秒で射出充填した。充填完了1秒後にキャビティ厚みが増す方向に金型の開放を開始し、約2秒後にキャビティ厚みが4mmとなったときにキャビティの開放動作を停止した。その状態を維持したまま30秒間発泡体を冷却した後、両金型を開放し、オレフィン系樹脂発泡成形体を取り出した。
得られたφ300mm、厚さ4mmのオレフィン系樹脂射出発泡成形体の耐衝撃性を第1表に示した。
本実施例で使用したオレフィン樹脂組成物はMFRが高く、優れた流動性を有していて成型加工性に優れており、かつ、得られた発泡成形体の耐衝撃性は優れていた。
【0042】
実施例2
オレフィン系樹脂として、MFR=55g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット状)を70重量部、MFR=30g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体(ペレット状)を30重量部使用すること以外は実施例1と同様にしてφ300mm、厚さ4mmのオレフィン系樹脂射出発泡成形体を得た。
得られたオレフィン系樹脂射出発泡成形体の耐衝撃性を第1表に示した。
本実施例で使用したオレフィン樹脂組成物はMFRが高く、優れた流動性を有していて成型加工性に優れており、かつ、得られた発泡成形体の耐衝撃性は優れていた。
【0043】
【表1】
【0044】
比較例1
オレフィン系樹脂としてMFR=100g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体の単独を使用すること以外は実施例1と同様にしてφ300mm、厚さ4mmのオレフィン系樹脂射出発泡成形体を得た。
この例では、溶融樹脂の流動性が高く、成型加工性は優れていたが、得られた発泡成形体のデュポン衝撃値(J)は0.49と低かった。
【0045】
比較例2
オレフィン系樹脂としてMFR=55g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体の単独を使用すること以外は実施例1と同様にしてφ300mm、厚さ4mmのオレフィン系樹脂射出発泡成形体を得た。
この例では、溶融樹脂の流動性が高く、成型加工性は優れていたが、得られた発泡成形体のデュポン衝撃値(J)は0.56と低かった。
【0046】
比較例3
オレフィン系樹脂としてMFR=30g/分のプロピレン−エチレンブロック共重合体の単独を使用すること以外は実施例1と同様にしてφ300mm、厚さ4mmのオレフィン系樹脂射出発泡成形体を得た。
この例では、得られた発泡成形体のデュポン衝撃値(J)は0.69と高く、耐衝撃性は優れていたが、溶融樹脂の流動性が比較的低く、成型加工性に劣っていた。
【0047】
【発明の効果】
本発明の射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物は溶融時の流動性が高いために成形加工性に優れ、しかもこれより得られた射出発泡成形体は耐衝撃性に優れており、自動車内装材をはじめとする自動車分野や家電、建材分野に幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】射出発泡成形体の製造に用いられる金型例をその概略断面図で示したものである。
【図2】射出発泡成形体の製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図3】射出発泡成形体の製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図4】射出発泡成形体の製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【図5】射出発泡成形体の製造工程を金型の概略断面図で示したものである。
【符号の説明】
1:雄型
2:雌型
3:溶融状オレフィン系樹脂組成物
4:樹脂供給路
5:樹脂供給装置
6:樹脂供給口
7:非発泡層
8:発泡層
Claims (2)
- 230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)がそれぞれ50〜300g/10分及び0.1g/10分以上、50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を、(A):(B)=60〜99:1〜40(重量比)の範囲で含有してなることを特徴とする射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のMFRの差が40g/10分以上である請求項1記載の射出発泡成形用ポリプロピレン系樹脂組成物。
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